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特開2023-31495船舶用舵制御装置及び船舶用舵制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031495
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】船舶用舵制御装置及び船舶用舵制御方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/04 20060101AFI20230302BHJP
   B63H 25/30 20060101ALI20230302BHJP
   B63B 79/10 20200101ALI20230302BHJP
【FI】
B63H25/04 H
B63H25/30
B63B79/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137020
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000232357
【氏名又は名称】株式会社YDKテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健作
(72)【発明者】
【氏名】東原 昌弘
(57)【要約】
【課題】油圧システムの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止可能な船舶用舵制御装置及び船舶用舵制御方法を提供する。
【解決手段】指令に対して舵が追従していない状態を示す舵追従異常検出信号を出力する舵追従異常検出部と、舵取機の油圧システムの異常を示す油圧異常検出信号を出力する油圧異常検出部と、舵追従異常検出信号及び油圧異常検出信号に基づいて油圧システムを停止させる異常制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令に対して舵が追従していない状態を示す舵追従異常検出信号を出力する舵追従異常検出部と、
舵取機の油圧システムの異常を示す油圧異常検出信号を生成する油圧異常検出部と、
前記舵追従異常検出信号及び前記油圧異常検出信号に基づいて前記油圧システムを停止させる異常制御部と
を備えることを特徴とする船舶用舵制御装置。
【請求項2】
前記異常制御部は、前記油圧システムに含まれる油圧ポンプを停止させることによって前記油圧システムを停止させることを特徴とする請求項1に記載の船舶用舵制御装置。
【請求項3】
前記舵追従異常検出部は、少なくとも前記舵が前記指令の方向に対して逆側に回動している場合に前記舵追従異常検出信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の船舶用舵制御装置。
【請求項4】
前記舵追従異常検出信号または前記油圧異常検出信号の少なくともいずれかを履歴データとして記憶する記憶部をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の船舶用舵制御装置。
【請求項5】
前記指令に対して舵が追従していない状態または前記油圧システムの異常の少なくともいずれかを操船者に通知する通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の船舶用舵制御装置。
【請求項6】
指令に対して舵が追従していない状態を検出する第1工程と、
舵取機の油圧システムの異常を検出する第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程の検出結果に基づいて前記油圧システムを停止させる第3工程と
を有することを特徴とする船舶用舵制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用舵制御装置及び船舶用舵制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶において舵が適切に制御されていることを確認するための技術が知られている。例えば特許文献1には、舵角差(命令舵角信号と実舵角信号の差の絶対値)と、転舵速度(舵スピードの絶対値)と、転舵方向(舵スピードの方向)と、を用いることにより、舵が操舵指令の方向に正常な速度で動作しているか否かを確認可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-220094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
舵が適切に制御されていない状況(つまり、舵が操舵指令の方向に正常な速度で動作していない状況)では、予期していない方向に船舶が航行してしまうことが懸念される。したがって、このような状況では操船者または船舶システムによる適切な処置が求められる。
【0005】
ところで、舵が適切に制御されなくなる要因としては、複数の要因が考えられる。この要因の一例としては、操舵指令を出力する機器から舵を動作させる舵取機までの信号経路の異常、または舵取機の油圧システムの異常が挙げられる。これらの要因のうち、操舵指令を出力する機器から舵取機までの信号経路の異常などの電気的異常に起因するものについては、操舵指令を出力する機器から舵取機までの信号経路をリレー回路などにより電気的に遮断することによって、舵をその場で停止させる処置をとることができる。したがって、予期していない方向に船舶が航行してしまうことを抑止することができる。
【0006】
一方、舵取機の油圧システムの異常に起因して舵を適切に制御できなくなった場合には、操舵指令を出力する機器から舵取機までの信号経路を電気的に遮断しても舵をその場で停止することができない。よって、一般的にこのような場合には、操船者による手動での対処(例えば、異常が発生している油圧システムの停止操作)が行われる。しかし、このような船舶に異常が発生している状況においては、操船者の混乱などに起因して的確な処置を行うことが困難となる場合がある。したがって、このような状況において的確な処置を可能とする技術が望まれている。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、油圧システムの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止可能な船舶用舵制御装置及び船舶用舵制御方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、船舶用舵制御装置に係る第1の解決手段として、指令に対して舵が追従していない状態を示す舵追従異常検出信号を出力する舵追従異常検出部と、舵取機の油圧システムの異常を示す油圧異常検出信号を出力する油圧異常検出部と、前記舵追従異常検出信号及び前記油圧異常検出信号に基づいて前記油圧システムを停止させる異常制御部とを備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、船舶用舵制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記異常制御部は、前記油圧システムに含まれる油圧ポンプを停止させることによって前記油圧システムを停止させる、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、船舶用舵制御装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記舵追従異常検出部は、少なくとも前記舵が前記指令の方向に対して逆側に回動している場合に前記舵追従異常検出信号を出力する、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、船舶用舵制御装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記舵追従異常検出信号または前記油圧異常検出信号の少なくともいずれかを履歴データとして記憶する記憶部をさらに備える、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、船舶用舵制御装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記指令に対して舵が追従していない状態または前記油圧システムの異常の少なくともいずれかを操船者に通知する通知部をさらに備える、という手段を採用する。
【0013】
また、本発明では、船舶用舵制御方法に係る解決手段として、指令に対して舵が追従していない状態を検出する第1工程と、舵取機の油圧システムの異常を検出する第2工程と、前記第1工程及び前記第2工程の検出結果に基づいて前記油圧システムを停止させる第3工程とを有する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油圧システムの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止可能な船舶用舵制御装置及び船舶用舵制御方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る操舵装置Aの全体構成及び当該操舵装置Aに備えられる異常制御装置Bの機能構成を示すブロック図である。
図2】同実施形態に係る異常制御装置Bの動作を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態に係る操舵装置A1の全体構成及び異常制御装置B1の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
最初に、本発明の第1実施形態に係る操舵装置Aについて図1を参照しながら説明する。この操舵装置Aは、船舶に装備される舵1を制御する装置であり、舵取機2、実舵角検知部3、アンプユニット4、第1切替部5、船首方位制御装置6、操舵輪7、第2切替部8、NFUレバー9、舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11及び異常制御部12を備えている。
【0017】
ここで、操舵装置Aを構成する上記各構成要素のうち、舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11及び異常制御部12は、図示するように本第1実施形態に係る異常制御装置B(船舶用舵制御装置)を構成している。本第1実施形態に係る異常制御装置Bは、舵1、舵取機2、実舵角検知部3、アンプユニット4、第1切替部5、船首方位制御装置6、操舵輪7、第2切替部8及びNFUレバー9によって構成される基本構成に対して追加される付加構成である。
【0018】
舵1は、船舶の船尾付近において、推進器であるスクリュの後方(船首から船尾を臨む後方)に設けられた略板状の部材である。この舵1には、回動可能な舵軸(回動軸)が船体船首尾方向及び船体正横方向に対して垂直姿勢となるように設けられており、スクリュが回転することによって当該スクリュの後方に発生した水流は、舵1の回動角(舵角)に応じて右舷側あるいは左舷側に偏向する。それにより、船舶の進行方向が直進方向、右舷方向あるいは左舷方向に変化する。
【0019】
舵取機2は、油圧システム13を含み、当該油圧システム13により発生する油圧によって舵1を回動させる油圧式舵取機(油圧機構)である。この舵取機2は、油圧シリンダと、油圧シリンダに設けられる油圧シリンダピンとをさらに備える。油圧シリンダピンは、舵1の舵軸と機械的に係合されており、油圧シリンダの位置が油圧により移動することによって油圧シリンダピンを介して舵1が回動するように構成されている。
【0020】
実舵角検知部3は、舵1の舵角を検知する機械的かつ電気的な構成要素であり、リンク機構等の連結機構を介して舵1の舵軸と機械的に連結されているとともに、舵追従異常検出部10及びアンプユニット4と電気的に接続されている。この実舵角検知部3は、舵1の舵軸の回動角に基づいて舵1の舵角を実舵角として検知し、当該実舵角を示す実舵角信号C1を舵追従異常検出部10及びアンプユニット4に出力する。
【0021】
アンプユニット4は、2つの信号の差分を増幅して出力する差動増幅器である。このアンプユニット4は、実舵角信号C1と第1切替部5から入力される目標舵角指令信号C2との差分を増幅した信号であるFU(フォロアップ)駆動指令信号C3を第2切替部8に出力する。
【0022】
第1切替部5は、船首方位制御装置6から入力される目標舵角指令信号C4と操舵輪7から入力される目標舵角指令信号C5とを択一的に選択する選択スイッチである。この第1切替部5は、択一的に選択した目標舵角指令信号C4あるいは目標舵角指令信号C5を上記目標舵角指令信号C2としてアンプユニット4に出力する。
【0023】
船首方位制御装置6は、船舶の船首方位を操船者により設定される設定針路に維持する制御装置である。この船首方位制御装置6は、舵1の舵角を制御することにより船舶の船首方位を上記設定針路に維持する。具体的には、船首方位制御装置6には現在の船首方位を検出するためのジャイロコンパスが接続されており、船首方位制御装置6は、このようなジャイロコンパスから得られた船首方位を設定針路に合わせるために必要な舵1の舵角(目標舵角)を計算する。そして、船首方位制御装置6は、このような計算に基づいて算出された目標舵角を示す信号を目標舵角指令信号C4として第1切替部5に出力する。なお、以下説明では、船首方位制御装置6を用いた操舵を自動操舵とも称する。
【0024】
操舵輪7は、操船者が手動で舵1を任意の舵角に設定するための操作部である。この操舵輪7は、操船者の操作に応じた目標舵角を示す信号を目標舵角指令信号C5として第1切替部5に出力する。具体的には、操舵輪7には目標舵角を示す目盛りが設けられており、操船者により所定の目盛り位置まで操舵輪7が回されると、当該目盛り位置に応じた目標舵角指令信号C5が第1切替部5に出力される。なお、以下説明では、操舵輪7を用いた操舵を手動操舵とも称する。
【0025】
第2切替部8は、アンプユニット4から入力されるFU駆動指令信号C3とNFUレバー9から入力されるNFU駆動指令信号C6とを択一的に選択する選択スイッチである。この第2切替部8は、択一的に選択したFU駆動指令信号C3あるいはNFU駆動指令信号C6を駆動指令信号C7として舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11及び油圧システム13に出力する。
【0026】
NFUレバー9は、操船者がノンフォロアップ (NFU)操舵をする際に用いる操作部である。このNFUレバー9は、操船者の操作に応じた信号をNFU駆動指令信号C6として第2切替部8に出力する。具体的には、NFUレバー9が操船者により右側に倒された場合、舵1を右舷側に回動させる指令信号がNFU駆動指令信号C6として第2切替部8に出力される。また、NFUレバー9が操船者により左側に倒された場合、舵1を左舷側に回動させる指令信号がNFU駆動指令信号C6として第2切替部8に出力される。
【0027】
ここで、上記ノンフォロアップ (NFU)操舵は、舵1の制御モードの1つであり、アンプユニット4で生成されるFU駆動指令信号C3に依らず、NFU駆動指令信号C6に基づいて舵1を制御する制御モードである。つまり、ノンフォロアップ (NFU)操舵では、目標舵角と実舵角との差分に関係なく舵1の制御が行われる。
【0028】
また、舵1の制御モードには、このようなノンフォロアップ (NFU)操舵の他にフォロアップ (FU)操舵がある。このフォロアップ (FU)操舵は、アンプユニット4で生成されるFU駆動指令信号C3に基づいて舵1を制御する制御モードである。つまり、フォロアップ (FU)操舵では、目標舵角と実舵角との差分に基づいて舵1の制御が行われる。したがって、上述した第2切替部8は、このようなノンフォロアップ (NFU)操舵とフォロアップ (FU)操舵とを切り替える選択スイッチであると言える。
【0029】
舵追従異常検出部10は、実舵角検知部3、第2切替部8及び異常制御部12と電気的に接続されており、実舵角信号C1と駆動指令信号C7とに基づいて舵1の追従異常(舵追従異常)を検出する。
【0030】
具体的には、この舵追従異常検出部10は、実舵角信号C1と駆動指令信号C7とに基づいて、舵1が駆動指令信号C7に追従しているか否かを判定する。そして、舵追従異常検出部10は、舵1が駆動指令信号C7に追従していない場合には、舵追従異常を検出する。
【0031】
例えば、舵追従異常検出部10は、駆動指令信号C7が舵1を右舷側に回動させる指令信号であるにも関わらず、舵1が左舷側に回動している場合、または、駆動指令信号C7が舵1を左舷側に回動させる指令信号であるにも関わらず、舵1が右舷側に回動している場合に、舵追従異常(逆進)を検出する。また、例えば、舵追従異常検出部10は、駆動指令信号C7が舵1を右舷側または左舷側に回動させる指令信号であるにも関わらず、舵1が回動していない場合、舵追従異常(無応答)を検出する。
【0032】
また、例えば、舵追従異常検出部10は、駆動指令信号C7が出力されているにも関わらず、舵1が回動する速度が本来想定される速度と比較して遅い場合、舵追従異常(追従遅延)を検出する。そして、舵追従異常検出部10は、このような舵追従異常を検出すると、当該舵追従異常を示す舵追従異常検出信号C8を異常制御部12に出力する。
【0033】
油圧異常検出部11は、第2切替部8、異常制御部12及び油圧システム13と電気的に接続されており、駆動指令信号C7と油圧検出信号C11とに基づいて油圧システム13の異常(油圧異常)を検出する。ここで、油圧検出信号C11は、油圧システム13に設けられた近接スイッチ等の油圧システムセンサから出力される油圧システム13の動作状態を示す信号である。
【0034】
具体的には、この油圧異常検出部11は、駆動指令信号C7と油圧検出信号C11とに基づいて、油圧システム13が駆動指令信号C7に従って正常に動作しているか否かを判定する。そして、油圧異常検出部11は、油圧システム13が駆動指令信号C7に従って正常に動作していない場合には、油圧異常を検出する。
【0035】
例えば、油圧異常検出部11は、駆動指令信号C7が舵1を右舷側に回動させる指令信号であるにも関わらず、油圧システム13が舵1を左舷側に回動させる動作をしている場合、または、駆動指令信号C7が舵1を左舷側に回動させる指令信号であるにも関わらず、油圧システム13が舵1を右舷側に回動させる動作をしている場合に、油圧異常(逆進)を検出する。また、例えば、油圧異常検出部11は、駆動指令信号C7が舵1を右舷側または左舷側に回動させる指令信号であるにも関わらず、油圧システム13が舵1を回動させる動作をしていない場合、油圧異常(無応答)を検出する。
【0036】
また、例えば、油圧異常検出部11は、駆動指令信号C7が出力されているにも関わらず、舵1を本来期待される速度で回動させるために必要な油圧を油圧システム13が生成できていない場合、油圧異常(油圧不足)を検出する。そして、油圧異常検出部11は、油圧異常を検出すると、当該油圧異常を示す油圧異常検出信号C9を異常制御部12に出力する。
【0037】
異常制御部12は、舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11及び油圧システム13と電気的に接続されている。この異常制御部12は、舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9に基づいて油圧システム13を制御する。具体的には、この異常制御部12は、舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9がともに入力された場合、油圧システム13を停止させる。
【0038】
より具体的には、この異常制御部12は、舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9がともに入力された場合、油圧システム13に異常が発生したことに起因して舵1が駆動指令信号C7に従って正常に動作していない(つまり、油圧システム13の異常に起因して舵1が適切に制御されていない)と判定する。そして、このような判定をした異常制御部12は、油圧システム13を停止させる油圧システム停止信号C10を生成し、当該油圧システム停止信号C10を油圧システム13に出力する。
【0039】
上述した舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11及び異常制御部12は、例えばアナログ回路により構成される。なお、舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11及び異常制御部12は、アナログ回路による構成に限定されず、デジタル回路あるいは制御プログラム(ソフトウエア資源)等により構成されてもよい。
【0040】
油圧システム13は、舵取機2を構成するシステムの1つであり、駆動指令信号C7に基づいて舵取機2の油圧を制御する。この油圧システム13は、圧油を発生させる油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動させる電動機と、油圧ポンプと舵取機2の油圧シリンダとを接続する油路と、油路に設けられる方向切替弁(電磁弁)と、方向切替弁の動作状態を検出する近接スイッチ等の油圧システムセンサとを少なくとも備える。
【0041】
このような油圧システム13では、方向切替弁(電磁弁)が制御されることにより油圧ポンプから油圧シリンダへの油路が切り替えられる。それにより、油圧シリンダの移動方向及び移動量が決定され、舵1の回動方向及び回動量が決定される。なお、以下では方向切替弁(電磁弁)をアクチュエータとも称する。
【0042】
また、この油圧システム13は、上述した油圧システムセンサの検出信号(つまり、油圧システム13の動作状態を示す信号)を油圧検出信号C11として油圧異常検出部11に出力する。
【0043】
次に、第1実施形態に係る異常制御装置Bの動作について、図2のフローチャートに沿って詳しく説明する。この異常制御装置Bの動作は、第1実施形態に係る制御方法(船舶用舵制御方法)を示すものである。
【0044】
最初に、操舵装置Aにおける舵1の制御動作について説明する。操舵装置Aでは、操船者によりノンフォロアップ (NFU)操舵とフォロアップ (FU)操舵とが切り替えられる。例えば、操船者がノンフォロアップ (NFU)操舵を選択した場合、第2切替部8がNFUレバー9側に切り替えられ、NFU駆動指令信号C6が駆動指令信号C7として第2切替部8から出力される。第2切替部8から出力された駆動指令信号C7は油圧システム13に入力され、油圧システム13では駆動指令信号C7に基づいてアクチュエータが制御されることにより油圧ポンプから油圧シリンダへの油路が切り替えられる。その結果、油圧シリンダの移動方向及び移動量が決定されることにより、舵1の回動方向及び回動量が決定される。
【0045】
一方、操船者がフォロアップ (FU)操舵を選択した場合、第2切替部8がアンプユニット4側に切り替えられる。ここで、操舵装置Aでは、操船者がフォロアップ (FU)操舵を選択した場合、操船者により更に自動操舵と手動操舵とが切り替えられる。すなわち、操船者が自動操舵を選択すると、第1切替部5が船首方位制御装置6側に切り替えられ、目標舵角指令信号C4が目標舵角指令信号C2として第1切替部5から出力される。一方、操船者が手動操舵を選択すると、第1切替部5が操舵輪7側に切り替えられ、目標舵角指令信号C5が目標舵角指令信号C2として第1切替部5から出力される。
【0046】
第1切替部5から出力された目標舵角指令信号C2(目標舵角指令信号C4あるいは目標舵角指令信号C5)はアンプユニット4に入力され、アンプユニット4では実舵角検知部3から出力される実舵角信号C1と目標舵角指令信号C2との差分が算出される。そして、アンプユニット4は、当該差分を増幅した信号であるFU駆動指令信号C3を第2切替部8に出力する。その結果、FU駆動指令信号C3が駆動指令信号C7として第2切替部8から出力される。第2切替部8から出力された駆動指令信号C7は油圧システム13に入力され、油圧システム13では駆動指令信号C7に基づいてアクチュエータが制御されることにより油圧ポンプから油圧シリンダへの油路が切り替えられる。その結果、油圧シリンダの移動方向及び移動量が決定されることにより、舵1の回動方向及び回動量が決定される。
【0047】
このように、操舵装置Aでは、ノンフォロアップ(NFU)操舵が選択されているか、あるいはフォロアップ(FU)操舵が選択されているかに関わらず、油圧システム13に入力される駆動指令信号C7に基づいて舵1の回動方向及び回動量が決定される。そして、このように舵1の制御が行われることにより、船舶は針路を任意の方向に設定しながら航行する。
【0048】
このような船舶の航行状態において、異常制御装置Bは、舵追従異常及び油圧異常の検出有無を監視する。具体的には、舵追従異常検出部10は、実舵角信号C1と駆動指令信号C7とに基づいて、舵1が駆動指令信号C7に追従しているか否かを判定する。そして、舵追従異常検出部10は、舵1が駆動指令信号C7に追従していない場合には、舵追従異常を検出し、舵追従異常検出信号C8を異常制御部12に出力する(ステップS1:第1工程)。
【0049】
油圧異常検出部11は、駆動指令信号C7と油圧検出信号C11とに基づいて、油圧システム13が駆動指令信号C7に従って正常に動作しているか否かを判定する。そして、油圧異常検出部11は、油圧システム13が駆動指令信号C7に従って正常に動作していない場合には、油圧異常を検出し、油圧異常検出信号C9を異常制御部12に出力する(ステップS2:第2工程)。
【0050】
そして、異常制御部12は、舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9がともに入力されると、油圧システム13の異常に起因して舵1が適切に制御されていないと判定し、油圧システム停止信号C10を生成して油圧システム13に出力する。この結果、油圧システム13が停止し、舵取機2の油圧シリンダに対する圧油の供給が停止する(ステップS3:第3工程)。それにより、舵1が停止する。
【0051】
ここで、油圧システム13は、異常制御部12から油圧システム停止信号C10が入力されると、例えば油圧ポンプを停止させることによって油圧シリンダに対する圧油の供給を停止する。なお、油圧シリンダに対する圧油の供給を停止する手段としては、油圧ポンプの停止に限定されず、例えば油路に設けられた圧油遮断弁の遮断によって行われてもよい。
【0052】
このような第1実施形態によれば、油圧システム13の異常に起因して舵1が適切に制御されていない場合に、操船者を介さずに舵1を停止させることが可能となる。すなわち、本第1実施形態によれば、油圧システム13の異常に起因して舵1を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止可能となる。
【0053】
また、本第1実施形態によれば、油圧システムセンサの異常により油圧異常が誤検出された場合であっても、舵1は適切に制御されているので舵追従異常は検出されない。つまり、不要に舵1が停止させられることがないという効果も奏する。
【0054】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る操舵装置A1について図3を参照しながら説明する。この操舵装置A1は、船舶に装備される舵1を制御する装置であり、図3に示すように、舵取機2A、実舵角検知部3、アンプユニット4、第1切替部5、船首方位制御装置6、操舵輪7、第2切替部8、NFUレバー9、舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11A、異常制御部12A、記憶部14及び通知部15を備えている。
【0055】
舵取機2Aは、2つの油圧システム13A,13Bを含む点において第1実施形態の舵取機2と相違する。2つの油圧システム13A,13Bは、それぞれ単独で舵1を回動させる能力を備えており、駆動指令信号C7に基づいて舵取機2Aの油圧を制御する。舵取機2Aでは、一方の油圧システム13Aが動作中の場合、他方の油圧システム13Bは休止状態であり、油圧システム13Aにより舵取機2Aの油圧が制御される。
【0056】
これら2つの油圧システム13A,13Bは、それぞれ油圧異常検出部11Aと電気的に接続されている。一方の油圧システム13Aは自身の動作状態を示す油圧検出信号C11aを油圧異常検出部11Aに出力し、他方の油圧システム13Bは、自身の動作状態を示す油圧検出信号C11bを油圧異常検出部11Aに出力する。
【0057】
第2実施形態に係る異常制御装置B1(船舶用舵制御装置)は、舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11A、異常制御部12A、記憶部14及び通知部15を備える。第2実施形態に係る異常制御装置B1は、舵1、舵取機2A、実舵角検知部3、アンプユニット4、第1切替部5、船首方位制御装置6、操舵輪7、第2切替部8及びNFUレバー9によって構成される基本構成に対して追加される付加構成である。
【0058】
油圧異常検出部11Aは、第2切替部8、異常制御部12A及び2つの油圧システム13A,13Bと電気的に接続されており、駆動指令信号C7と油圧検出信号C11a,C11bとに基づいて動作中の油圧システム13A,13Bの油圧異常を検出する。ここで、油圧検出信号C11a,C11bは、油圧システム13A,13Bにそれぞれ設けられた油圧システムセンサから出力される油圧システム13A,13Bそれぞれの動作状態を示す信号である。
【0059】
この油圧異常検出部11Aは、動作中の油圧システム13A,13Bの油圧異常を検出すると、当該動作中の油圧システム13A,13Bの油圧異常を示す油圧異常検出信号C9aを異常制御部12Aに出力する。
【0060】
異常制御部12Aは、舵追従異常検出部10、油圧異常検出部11A及び2つの油圧システム13A,13Bと電気的に接続されている。この異常制御部12Aは、舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9aに基づいて2つの油圧システム13A,13Bを制御する。具体的には、この異常制御部12Aは、舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9aがともに入力されている場合、動作中の油圧システム(例えば油圧システム13A)を停止させるとともに、休止中の油圧システム(例えば油圧システム13B)を起動させる。
【0061】
より具体的には、この異常制御部12Aは、舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9aがともに入力されている場合、動作中の油圧システム(例えば油圧システム13A)に異常が発生したことに起因して舵1が駆動指令信号C7に従って正常に動作していない(つまり、動作中の油圧システムの異常に起因して舵1が適切に制御されていない)と判定する。そして、このような判定をした異常制御部12Aは、動作中の油圧システム(例えば油圧システム13A)の動作を停止させるとともに休止中の油圧システム(例えば油圧システム13B)を起動させる油圧システム制御信号C10aを生成し、当該油圧システム制御信号C10aを油圧システム13A,13Bに出力する。
【0062】
また、この異常制御部12Aは、記憶部14及び通知部15と電気的に接続されており、舵追従異常検出部10から入力される舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出部11Aから入力される油圧異常検出信号C9aをバイパスして記憶部14及び通知部15に出力する。
【0063】
記憶部14は、異常制御部12Aから入力される舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9aに基づいて、舵追従異常または油圧異常の少なくともいずれかの検出をタイムスタンプ付きの履歴データとして記憶する。記憶部14は、例えば不揮発性又は揮発性の各種メモリ、ストレージ等を含んで構成される。
【0064】
具体的には、記憶部14は、舵追従異常検出信号C8が入力された場合、舵追従異常の検出をタイムスタンプとともに記憶する。また、記憶部14は、油圧異常検出信号C9aが入力された場合、油圧異常の検出をタイムスタンプとともに記憶する。
【0065】
通知部15は、異常制御部12Aから入力される舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9aに基づいて、舵追従異常または油圧異常の少なくともいずれかの検出を操船者に通知する。通知部15は、例えばブザー、表示装置等を含んで構成される。
【0066】
具体的には、通知部15は、舵追従異常検出信号C8が入力された場合、舵追従異常の検出を操船者に通知する。また、通知部15は、油圧異常検出信号C9aが入力された場合、油圧異常の検出を操船者に通知する。
【0067】
なお、この通知部15は、舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9aがともに入力されている場合、舵追従異常の検出及び油圧異常の検出をそれぞれ個別に操船者に通知することに代えて、油圧システムの異常に起因して舵1が適切に制御されていない旨を操船者に通知することもできる。
【0068】
このような異常制御装置B1は、例えば以下のように動作する。
異常制御部12Aは、例えば一方の油圧システム13Aが動作中であり、他方の油圧システム13Bが休止中の場合に、舵追従異常検出部10から舵追従異常検出信号C8が入力され、かつ、油圧異常検出部11Aから油圧異常検出信号C9aが入力されると、油圧システム13Aの異常に起因して舵1が適切に制御されていないと判定する。そして、異常制御部12Aは、動作中の油圧システム13Aの動作を停止させるとともに休止中の油圧システム13Bを起動させる油圧システム制御信号C10aを生成し、油圧システム13A,13Bに出力する。
【0069】
この結果、油圧システム13Aの動作が停止するとともに油圧システム13Bが起動する。つまり、舵取機2Aでは、異常が発生した油圧システム13Aに代わって油圧システム13Bにより油圧の制御が行われる。したがって、一方の油圧システム13Aに異常が発生した場合であっても、舵1の制御が継続される。
【0070】
このとき、舵追従異常検出部10から出力された舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出部11Aから出力された油圧異常検出信号C9aは、異常制御部12Aを介して記憶部14及び通知部15に入力される。この結果、舵追従異常及び油圧異常が検出されたことがタイムスタンプとともに記憶部14に記憶されるとともに、舵追従異常及び油圧異常が検出されたことが操船者に通知される。
【0071】
このような第2実施形態によれば、動作中の油圧システムの異常に起因して舵1が適切に制御されていない場合に、自動的に動作中の油圧システムが停止するとともに休止中の油圧システムが起動することにより舵1を継続して制御可能となる。すなわち、本第2実施形態によれば、油圧システムの異常に起因して舵1を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止することができる。
【0072】
また、本第2実施形態によれば、舵追従異常が検出された場合には舵追従異常の検出がタイムスタンプとともに履歴データとして記憶部14に記憶され、油圧異常が検出された場合には油圧異常の検出がタイムスタンプとともに履歴データとして記憶部14に記憶される。この履歴データは、操舵装置A1における異常要因の特定に用いられる。
【0073】
例えば、記憶部14に舵追従異常の検出が記憶されており油圧異常の検出が記憶されていない場合、船舶において油圧システムの異常以外の要因により舵追従異常が発生したことを特定することができる。また例えば、記憶部14に舵追従異常の検出が記憶されておらず油圧異常の検出が記憶されている場合、船舶において油圧システムセンサの異常が発生したことを特定することができる。また例えば、記憶部14に舵追従異常の検出及び油圧異常の検出が記憶されている場合、船舶において油圧システムの異常に起因して舵追従異常が発生したことを特定することができる。
【0074】
このように、本第2実施形態によれば、操舵装置A1における異常要因の特定が容易になる。それにより、操舵装置A1に異常が発生した場合に早い段階で適切な処置を行うことが可能となる。したがって、油圧システムの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることをより確実に抑止することができる。
【0075】
また、本第2実施形態によれば、舵追従異常が検出された場合には通知部15により舵追従異常の検出が操船者に通知され、油圧異常が検出された場合には通知部15により油圧異常の検出が操船者に通知される。それにより、操船者は操舵装置A1の状態を速やかに認知することができる。
【0076】
例えば、舵追従異常の検出が通知され油圧異常の検出が通知されない場合、船舶において油圧システムの異常以外の要因により舵追従異常が発生したことを操船者は認知することができる。また例えば、舵追従異常の検出が通知されず油圧異常の検出が通知された場合、船舶において油圧システムセンサの異常が発生したことを操船者は認知することができる。また例えば、舵追従異常の検出及び油圧異常の検出が通知された場合、船舶において油圧システムの異常に起因して舵追従異常が発生したことを操船者は認知することができる。
【0077】
このように、本第2実施形態によれば、操船者は操舵装置A1の状態を速やかに認知することができる。それにより、操舵装置A1に異常が発生した場合に早い段階で適切な処置を行うことが可能となる。したがって、油圧システムの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることをより確実に抑止することができる。
【0078】
なお、本第2実施形態によれば、舵追従異常及び油圧異常がともに検出された場合、舵追従異常の検出及び油圧異常の検出がそれぞれ個別に操船者に通知されることに代えて、油圧システムの異常に起因して舵1が適切に制御されていないことが操船者に通知されるように設定することも可能である。それにより、操船者は操舵装置A1の状態をより速やかに認知することができる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、舵追従異常検出部10は、舵追従異常(逆進)、舵追従異常(無応答)または舵追従異常(追従遅延)を検出した場合に舵追従異常検出信号C8を出力したが、本発明はこれに限定されない。舵追従異常検出部10は、舵追従異常(逆進)、舵追従異常(無応答)または舵追従異常(追従遅延)のいずれか1つまたは2つを検出した場合にのみ舵追従異常検出信号C8を出力してもよい。
【0080】
例えば、舵追従異常検出部10は、舵追従異常(逆進)を検出した場合にのみ舵追従異常検出信号C8を出力してもよい。すなわち、上記実施形態において舵追従異常(無応答)が検出される状況では、舵1は回動しない状態であるので油圧システム13,13A,13Bを停止させる必要性は比較的低い。また、上記実施形態において舵追従異常(追従遅延)が検出される状況では、舵1が回動する速度が本来想定される速度と比較して遅いものの、舵1の回動自体は行われているため、油圧システム13,13A,13Bを停止させることにより舵1を停止させる必要性は低い。一方で、舵追従異常(逆進)が検出される状況では、操船者の意図と異なる方向に舵1が回動することにより船舶の進行方向を予期することが困難となるため、油圧システム13,13A,13Bを停止させることにより舵1を停止させる必要性が高い。
【0081】
本変形例によれば、舵1を停止させる必要性に応じて油圧システム13,13A,13Bを停止させることが可能となる。つまり、本変形例によれば、不要不急な状況で油圧システム13,13A,13Bを停止させることを抑止しつつ、油圧システム13,13A,13Bの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止することができる。
【0082】
(2)上記実施形態では、油圧異常検出部11,11Aは、油圧異常(逆進)、油圧異常(無応答)または油圧異常(油圧不足)を検出した場合に油圧異常検出信号C9,C9aを出力したが、本発明はこれに限定されない。油圧異常検出部11,11Aは、油圧異常(逆進)、油圧異常(無応答)または油圧異常(油圧不足)のいずれか1つまたは2つを検出した場合にのみ舵追従異常検出信号C8を出力してもよい。
【0083】
例えば、油圧異常検出部11,11Aは、油圧異常(逆進)を検出した場合にのみ油圧異常検出信号C9,C9aを出力してもよい。すなわち、上記実施形態において油圧異常(無応答)が検出される状況では、舵1は回動しない状態であるので油圧システム13,13A,13Bを停止させる必要性は比較的低い。また、上記実施形態において油圧異常(油圧不足)が検出される状況では、舵1が回動する速度が本来想定される速度と比較して遅いものの、舵1の回動自体は行われているため、油圧システム13,13A,13Bを停止させることにより舵1を停止させる必要性は低い。一方で、油圧異常(逆進)が検出される状況では、操船者の意図と異なる方向に舵1が回動することにより船舶の進行方向を予期することが困難となるため、油圧システム13,13A,13Bを停止させることにより舵1を停止させる必要性が高い。
【0084】
本変形例によれば、舵1を停止させる必要性に応じて油圧システム13,13A,13Bを停止させることが可能となる。つまり、本変形例によれば、不要不急な状況で油圧システム13,13A,13Bを停止させることを抑止しつつ、油圧システムの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止することができる。
【0085】
(3)上記実施形態では、フォロアップ(FU)操舵またはノンフォロアップ(NFU)操舵のいずれが選択されているかに関わらず、舵追従異常及び油圧異常がともに検出された場合に油圧システム13を停止させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、フォロアップ(FU)操舵が選択されているときのみ舵追従異常及び油圧異常の検出に基づいて油圧システム13を停止させ、ノンフォロアップ(NFU)操舵が選択されているときには油圧異常の検出のみに基づいて油圧システム13を停止させてもよい。
【0086】
一般的に、ノンフォロアップ(NFU)操舵は、フォロアップ(FU)操舵が使用できないような緊急時に選択される。したがって、ノンフォロアップ(NFU)操舵が選択されている状態では、より早期に操舵装置A,A1の異常に対処することが求められる。ところで、油圧異常に起因して舵追従異常が発生する場合、油圧異常が発生してから舵追従異常が検出されるまでには一定の時間を要する。つまり、油圧異常の検出と比べた場合、舵追従異常の検出にはより長い時間を要する。
【0087】
本変形例によれば、ノンフォロアップ(NFU)操舵が選択されている場合には、油圧異常が検出されたときにより迅速に油圧システム13を停止させることを可能とするとともに、フォロアップ(FU)操舵が選択されている場合には、油圧システムの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止することができる。
【0088】
(4)上記実施形態では、実舵角信号C1及び油圧検出信号C11,C11a,C11bを各々にそれぞれ単一の信号としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、実舵角検知部3及び油圧検出部11,11Aを複数設けることにより、これら実舵角信号C1及び油圧検出信号C11,C11a,C11bを複数化してもよい。それにより、実舵角信号C1及び油圧検出信号C11,C11a,C11bの冗長性を向上させることができる。
【0089】
(5)上記第2実施形態では、通知部15によって舵追従異常または油圧異常の少なくともいずれかの検出を操船者に通知したが、本発明はこれに限定されない。例えば、異常を検出したことの通知に加えて、当該異常に対する対処方法を操船者に通知してもよい。
【0090】
具体的には、通知部15は、舵追従異常のみが検出された場合と、油圧異常のみが検出された場合と、舵追従異常及び油圧異常が検出された場合とにおけるそれぞれの対処方法に関する情報を予め記憶しておく。通知部15は、これらの各異常が検出された場合、予め記憶された各異常に対する対処方法に関する情報を読み出して操船者に通知する。
【0091】
本変形例によれば、操船者は、操舵装置A1にて検出された各異常に応じた対処をより迅速かつ的確に実行することが可能となる。したがって、油圧システム13A,13Bの異常に起因して舵1を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることをより確実に抑止することができる。
【0092】
(6)上記では、第2実施形態に係る異常制御装置B1のみに記憶部14及び通知部15を設けたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1実施形態に係る異常制御装置Bにも記憶部14及び通知部15を設けてもよい。
【0093】
(7)上記各実施形態では、油圧システム13,13A,13Bに設けられた方向切替弁(電磁弁)により油圧ポンプから油圧シリンダへの油路が切り替えられたが、本発明はこれに限定されない。例えば、油圧ポンプが斜軸ポンプとして構成されている場合、斜軸ポンプの斜軸の傾転角を変えることにより油圧ポンプから油圧シリンダへの油路が切り替えられてもよい。
【0094】
(8)上記第2実施形態では、一方の油圧システム13Aが動作中の場合には他方の油圧システム13Bが休止状態であったが、本発明はこれに限定されない。舵取機2Aに含まれる2つの油圧システム13A,13Bは、同時に動作可能に構成されてもよい。
【0095】
本変形例によれば、一方の油圧システム13Aの異常に起因して舵1が適切に制御されていないと判定された場合には、油圧システム13Aの動作が停止されるものの、動作中であった他方の油圧システム13Bにより継続して舵1の制御が行われる。したがって、油圧システム13Aの異常に起因して舵を適切に制御できない状態で船舶が航行し続けることを抑止することができる。
【0096】
(9)上記第2実施形態では、舵追従異常検出部10から出力される舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出部11Aから出力される油圧異常検出信号C9aは、異常制御部12Aを介して記憶部14及び通知部15に入力されていたが、本発明はこれに限定されない。舵追従異常検出信号C8及び油圧異常検出信号C9aは、舵追従異常検出部10及び油圧異常検出部11Aから記憶部14及び通知部15に直接入力されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
A,A1 操舵装置
B,B1 異常制御装置
1 舵
2,2A 舵取機
3 実舵角検知部
4 アンプユニット
5 第1切替部
6 船首方位制御装置
7 操舵輪
8 第2切替部
9 NFUレバー
10 舵追従異常検出部
11,11A 油圧異常検出部
12,12A 異常制御部
13,13A,13B 油圧システム
14 記憶部
15 通知部
図1
図2
図3