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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031509
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
F04C18/02 311U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137036
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】390028495
【氏名又は名称】アネスト岩田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159134
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】谷川 志郎
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA12
3H039BB15
3H039CC05
3H039CC28
(57)【要約】
【課題】吸込口に大気圧より高圧な流体が導入された場合においても、ハウジングの隙間を介して圧縮室から外部に対してエア漏れが生じることを防止する。
【解決手段】スクロール圧縮機は、それぞれ端板にラップが立設されてなる固定スクロール及び旋回スクロールが相対的に回転することにより流体を圧縮する。固定スクロール及び旋回スクロールのうち一方の端板には流体導入口が設けられている。固定スクロール及び旋回スクロールの各々のラップは、第1ラップ及び第2ラップを含む。第1ラップは、流体導入口より径方向内側に前記第1圧縮室を形成する。第2ラップは、第1ラップより径方向外側に位置し、径方向内側において第1圧縮室に連通する第2圧縮室を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ端板にラップが立設されてなる固定スクロール及び旋回スクロールが相対的に回転することにより流体を圧縮可能なスクロール圧縮機であって、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールのうち一方の前記端板には、前記流体を第1圧縮室に導入するための流体導入口が設けられており、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールの各々の前記ラップは、
前記流体導入口より径方向内側に前記第1圧縮室を形成する第1ラップと、
前記第1ラップより径方向外側に位置し、径方向内側において前記第1圧縮室に連通する第2圧縮室を形成する第2ラップと、
を含む、スクロール圧縮機。
【請求項2】
前記第2圧縮室は前記第1圧縮室より容積が小さい、請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記第2ラップは前記第1ラップより前記端板に対する高さが小さい、請求項2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記第2ラップは、前記第1ラップより巻き数が少ない、請求項2又は3に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記固定スクロール及び旋回スクロールの少なくとも一方の前記端板のうち前記第2圧縮室より径方向外側に設けられた第1ダストシールを更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記固定スクロール及び旋回スクロールの少なくとも一方の前記端板のうち前記第1圧縮室と前記第2圧縮室との間に設けられた第2ダストシールを更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記第1ラップ及び前記第2ラップは非連続に形成される、請求項1から6の何れか一項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
前記第1ラップ及び前記第2ラップは連続に形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項9】
前記流体導入口には予め大気圧以上に加圧された前記流体が供給される、請求項1から8のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
気体や液体を含む流体を圧縮するためのスクロール圧縮機が知られている。スクロール圧縮機では、それぞれ端板上にラップが立設されてなる一対の旋回スクロールと固定スクロールとが組み合わされて圧縮室が形成され、スクロール圧縮機の回転に伴って、圧縮室が内周側に移動しながらその容積が減少することで、流体の圧縮が行われる。例えば特許文献1にはスクロール圧縮機の一例が開示されており、この例では、圧縮室を構成する旋回スクロール及び固定スクロールのラップの外周側にダストシールを配置することで、外部から粉塵等がハウジングの隙間を介して圧縮室に侵入することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005―320885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、圧縮室を構成する固定スクロール及び旋回スクロールのラップの外周側にダストシールを設けることで、外部からの粉塵が圧縮室に侵入することを防止している。このようなダストシールは、圧縮室を外部に対してシールする機能を少なからず兼ねているが、吸込口に導入される流体が略大気圧である場合を想定して設計されている。そのため、例えば予め大気圧以上に圧縮された流体を更に圧縮する、いわゆるブースター圧縮機のように、吸込口に大気圧より高圧な流体が導入されると、外部の大気圧との差圧によってダストシールのシール機能が不足し、圧縮室から流体の漏れ出し(エア漏れ)が生じてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、吸込口に大気圧より高圧な流体が導入された場合においても、ハウジングの隙間を介して圧縮室から外部に対してエア漏れが生じることを防止可能なスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るスクロール圧縮機は、上記課題を解決するために それぞれ端板にラップが立設されてなる固定スクロール及び旋回スクロールが相対的に回転することにより流体を圧縮可能なスクロール圧縮機であって、
前記固定スクロール及び旋回スクロールのうち一方の前記端板には、前記流体を第1圧縮室に導入するための流体導入口が設けられており、
前記固定スクロール及び旋回スクロールの各々の前記ラップは、
前記流体導入口より径方向内側に前記第1圧縮室を形成する第1ラップと、
前記第1ラップより径方向外側に位置し、径方向内側において前記第1圧縮室に連通する第2圧縮室を形成する第2ラップと、
を含む。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、吸込口に大気圧より高圧な流体が導入された場合においても、ハウジングの隙間を介して圧縮室から外部に対してエア漏れが生じることを防止可能なスクロール圧縮機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るスクロール圧縮機の駆動軸に沿った断面図である。
図2図1の固定スクロールを旋回ラップとともに軸方向後方側から示す図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図2の一変形例である。
図5図2の他の変形例である。
図6図2の他の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0010】
<1.スクロール圧縮機>
まず図1を参照して、一実施形態に係るスクロール圧縮機の全体構成について説明する。図1は一実施形態に係るスクロール圧縮機1の駆動軸22に沿った断面図である。以下の説明では、図1において左側を前方、右側を後方と称して述べる。
【0011】
スクロール圧縮機1は、空気等の流体(気体又は液体)を圧縮するための圧縮機である。スクロール圧縮機1は、流体の圧縮を行う圧縮機本体4と、動力源(不図示)からの動力をスクロール圧縮機1の各部に伝達するための動力伝達ユニット6と、スクロール圧縮機1の冷却風を送風するための送風ユニット8と、を備える。圧縮機本体4はスクロール圧縮機1の前方に配置されており、その後方に、動力伝達ユニット6及び送風ユニット8が順に配置されている。
【0012】
圧縮機本体4は、圧縮機ハウジング16を備える。圧縮機ハウジング16は、例えばアルミ合金等で成形される。圧縮機ハウジング16の前方上部には、圧縮対象となる流体を導入するための吸入口15が設けられる。吸入口15から導入された流体は、所定の導入路(不図示)を介して、圧縮機本体4の内部に導入され、後述の流体導入口60に連通する(図2等を参照)。また圧縮機ハウジング16の後方は、複数のボルト(不図示)により、動力伝達ユニット6を構成するベアリングケース42に接続されている。
【0013】
圧縮機ハウジング16は、第1ハウジング16a及び第2ハウジング16bが組み合わされて構成される。第1ハウジング16a及び第2ハウジング16bは、不図示のボルト等の締結部材によって連結されるが、両者の間には少なからず隙間があるため、当該隙間には内部にある圧縮室36に粉塵等のダストを除去するための第1ダストシール70が設けられる。
【0014】
図1では、圧縮機ハウジング16のうち第1ハウジング16aの第2ハウジング16bに対向する面上に、周方向に沿って延在する溝部61が形成されており、当該溝部61に第1ダストシール70が全周にわたってリング状に配置されている。尚、圧縮機ハウジング16のうち第2ハウジング16bの第1ハウジング16aに対向する面上に、周方向に沿って延在する溝部61を形成し、当該溝部61に第1ダストシール70を配置してもよい。このような第1ダストシール70は、隙間からの粉塵等のダストの侵入を防止するとともに、隙間を介して圧縮室36から流体が漏れ出さないようにシールする機能を有する。
【0015】
圧縮機ハウジング16内には、固定スクロール18及び旋回スクロール20が収容されている。圧縮機ハウジング16は、固定スクロール18が固定される第1ハウジング16aと、第1ハウジング16aとベアリングケース42とを連結する第2ハウジング16bとを備えて構成されている。旋回スクロール20は、圧縮機ハウジング16内において、第1ハウジング16aに固定された固定スクロール18に対向するように、第2ハウジング16bの内側に配置されている。旋回スクロール20は、駆動軸22の先端に設けられた偏心軸部23に枢支されており、動力伝達ユニット6から伝達される動力によって回転駆動される。
【0016】
固定スクロール18は、略円板形状の固定端板19を備える。固定端板19のうち旋回スクロール20に対向する面上には、渦巻き状の固定ラップ21が立設されており、その反対側の面上には、放熱用の放熱フィン24が設けられている。放熱フィン24には、後述するように、送風ユニット8から送られる冷却風が供給され、固定スクロール18の冷却が行われる。
【0017】
旋回スクロール20は、略円板形状の旋回端板26を備える。旋回端板26のうち固定スクロール18に対向する面上には、渦巻き状の旋回ラップ28が立設されており、その反対側の面上には、放熱用の放熱フィン30が設けられている。放熱フィン30には、後述するように、送風ユニット8から供給される冷却風が導入され、旋回スクロール20の冷却が行われる。
【0018】
尚、固定スクロール18の固定ラップ21の長さと、旋回スクロール20の旋回ラップ28の長さとは異なっていてもよい(すなわち、スクロール圧縮機1は、いわゆる非対称ラップ形スクロール圧縮機であってもよい)。また固定ラップ21の長さと旋回ラップ28の長さとは同一であってもよい(すなわち、スクロール圧縮機1は、いわゆる対称ラップ形スクロール圧縮機であってもよい)。
【0019】
旋回スクロール20の後方側には、略円板形状を有する旋回プレート32が、駆動軸22の偏心軸部23に直結された状態で固定される。旋回プレート32には軸受部37が一体的に形成されている。軸受部37には、駆動軸22の先端に設けられた偏心軸部23を回転可能に支持するための回転軸受が配置されている。旋回プレート32と圧縮機ハウジング16との間には、旋回スクロール20の自転運動を阻止しつつ公転運動させるための複数の自転防止機構34が旋回プレート32、すなわち旋回スクロール20の周方向に沿って略等間隔で設けられる。
【0020】
動力伝達ユニット6からの動力によって駆動軸22が回転駆動されると、旋回スクロール20は公転運動を行い、これに伴って、固定スクロール18及び旋回スクロール20間に形成される圧縮室36の容積が外周側から内周側に向かって漸次減少し、吸入、圧縮が行われる。このような圧縮室36は、より詳しくは、固定ラップ21と旋回ラップ28とにより仕切られることにより、略三日月状に形成される。これにより、吸入口15から圧縮機本体4に導入された流体は、内周側に向かって漸次圧縮される。圧縮室36で生成された加圧気体は、固定スクロール18の中心部に設けられた吐出口38から吐出される。
【0021】
動力伝達ユニット6は、外部の動力源(不図示)から供給される動力を、スクロール圧縮機1の各部に伝達する機能を有するユニットである。本実施形態では、動力伝達ユニット6は、送風ユニット8の後方に突出する駆動軸22の後端部に、外部の動力源からの動力が入力可能な従動プーリ40を有する。従動プーリ40には、例えば、スクロール圧縮機1の下方に設置される電動機やエンジン等の動力源の出力軸に止着された主動プーリ(図示略)に下部が掛け回された無端状の伝動ベルト(不図示)の上部が掛け回されることにより、動力源の回転が駆動軸22に伝達される。従動プーリ40に入力された動力は駆動軸22を回転させ、圧縮機本体4及び送風ユニット8などのスクロール圧縮機1の各部にそれぞれ伝達される。
【0022】
尚、動力伝達ユニット6の筐体を構成するベアリングケース42は、圧縮機ハウジング16に比べて高強度の例えば鋳物等によって成形される。ベアリングケース42内には、前後方向へ互いに所定量離間して設けられるボールベアリング44、46が配置されており、駆動軸22が回転可能に支持されている。
【0023】
送風ユニット8は、ファンケーシング51内に送風ファン53を収容してなる。送風ファン53は、駆動軸22に接続されており、動力伝達ユニット6から伝達される動力によって回転駆動可能に構成されている。送風ファン53は例えばシロッコファンである。
【0024】
送風ファン53が駆動すると、送風ユニット8はファンケーシング51の前方に設けられた開口部55から外気(空気)を吸い込み、不図示のダクトを介してスクロール圧縮機1の各部に冷却風として供給する。
【0025】
図2図1の固定スクロール18を旋回ラップ28とともに軸方向後方側(すなわち図1の右側)から示す図である。固定スクロール18及び旋回スクロール20の間に形成される圧縮室36は、第1圧縮室36a及び第2圧縮室36bを含む。固定端板19には前述の吸入口15に連通する流体導入口60が設けられており、第1圧縮室36aは流体導入口60より径方向内側に設けられる。第1圧縮室36aは、固定ラップ21のうち流体導入口60より径方向内側にある第1固定ラップ21aと、旋回ラップ28のうち流体導入口60より径方向内側にある第1旋回ラップ28aとによって形成される。第1圧縮室36aは、スクロール圧縮機1の運転時に径方向内側に回転しながら移動するに従って容積が次第に減少することで、流体導入口60から導入された流体を圧縮し、中央部にある吐出口38から外部に吐出する。
【0026】
第2圧縮室36bは、流体導入口60より径方向外側に位置し、前述の第1圧縮室36aに連通するように構成される。第2圧縮室36bは、固定ラップ21のうち流体導入口60より径方向外側にある第2固定ラップ21bと、旋回ラップ28のうち流体導入口60より径方向外側にある第2旋回ラップ28bとによって構成される。第2圧縮室36bは、スクロール圧縮機1の運転時に径方向内側に回転しながら移動するに従って容積が次第に減少することで、流体導入口60から導入された流体が大気圧以上の圧力を有する場合であっても、流体導入口60から径方向外側に向けて流体が拡散することを抑制する。これにより、第1ハウジング16a及び第2ハウジング16bの間にある隙間の内側(すなわち圧縮室36側)に作用する流体の圧力を減少させ、第1ダストシール70に対する径方向内外における差圧を低減できる。その結果、当該差圧によって第1ダストシール70が設けられた隙間を介した外部への流体の漏れを効果的に防止することができる。
【0027】
また図2に示す実施形態では、固定ラップ21を構成する第1固定ラップ21a及び第2固定ラップ21b、並びに、旋回ラップ28を構成する第1旋回ラップ28a及び第2旋回ラップ28bは、それぞれ非連続に形成される。すなわち、第1固定ラップ21a及び第2固定ラップ21bは互いに独立するように別体として固定端板19上に形成されるとともに、第1旋回ラップ28a及び第2旋回ラップ28bは互いに独立するように別体として旋回端板26上に形成される。そして、径方向内側にある第1固定ラップ21a及び第1旋回ラップ28aと、径方向外側にある第2固定ラップ21b及び第2旋回ラップ28bとの間に、流体導入口60が設けられている。
【0028】
これにより、流体導入口60から導入された流体は、径方向内側にある第1固定ラップ21a及び第1旋回ラップ28aによって形成される第1圧縮室36aによって圧縮されるとともに、仮に流体導入口60から導入された流体が大気圧以上の圧力がある場合であっても、径方向外側にある第2固定ラップ21b及び第2旋回ラップ28bによって形成される第2圧縮室36bによって、第1ダストシール70の径方向内外における差圧を効果的に低減できる。
【0029】
尚、第2圧縮室36bは、前述のように第1ダストシール70の径方向内外における差圧を低減するための構成であるため、スクロール圧縮機の主な機能である流体の圧縮に関する第1圧縮室36aに比べて容量が小さく構成されてもよい。これを実現するための一手段として、第2圧縮室36bを構成する第2固定ラップ21b及び第2旋回ラップ28bは、それぞれ第1圧縮室36aを構成する第1固定ラップ21a及び第1旋回ラップ28aより巻き数が少なく構成してもよい。この場合、流体導入口60に導入される流体の圧力に応じて、第2圧縮室36bを構成する第2固定ラップ21b及び第2旋回ラップ28bと、それぞれ第1圧縮室36aを構成する第1固定ラップ21a及び第1旋回ラップ28との巻き数比を調整してもよい。
【0030】
また他の手段として、第2圧縮室36bを構成する第2固定ラップ21b及び第2旋回ラップ28bは、第1圧縮室36aを構成する第1固定ラップ21a及び第1旋回ラップ28aより、端板に対する高さが小さく構成されてもよい。ここで図3図2のA-A断面図である。図3では、径方向外側において固定端板19の厚さが大きくなることにより、第2固定ラップ21b及び第2旋回ラップ28bの高さが、第1固定ラップ21a及び第1旋回ラップ28aより小さくなることで、第2圧縮室36bの容積が第1圧縮室36aより小さくなっている。
【0031】
図4図2の一変形例である。図4に示す変形例では、固定端板19上に設けられた第1固定ラップ21a及び第2固定ラップ21b、並びに、旋回端板26上に設けられた第1旋回ラップ28a及び第2旋回ラップ28bがそれぞれ連続に形成されている。すなわち、固定ラップ21が有する第1固定ラップ21a及び第2固定ラップ21bが一体的に構成されるとともに、旋回ラップ28が有する第1旋回ラップ28a及び第2旋回ラップ28bが一体的に構成される。これにより、固定端板19及び旋回端板26上に設けられるラップの数を減らすことができ、より少ない部材数で上記構成を実現できる。
【0032】
図5図2の他の変形例である。図5に示す変形例では、第2固定ラップ21b及び第2旋回ラップ28bによって構成される第2圧縮室36bより径方向外側に設けられた第1ダストシール70に代えて、第1圧縮室36aと第2圧縮室36bとの間に設けられた第2ダストシール80を備える。第2ダストシール80は、第1圧縮室36aと第2圧縮室36bとの間にある隙間のうち、流体導入口60より径方向外側に設けられる。このように流体導入口60の近傍に第2ダストシール80を設けることで、圧縮室36を囲む圧縮機ハウジング16にダストシール(例えば、前述の第1ダストシール70)を省略することができるため、圧縮機ハウジング16の構成を簡略化することで、よりコンパクトなスクロール圧縮機1を実現することができる。
【0033】
図6図2の他の変形例である。図6に示す変形例では、前述の第1ダストシール70及び第2ダストシール80の両方が設けられる。これにより、第1圧縮室36aは外部に対して2つのダストシールによって二重に保護されるため、圧縮される流体への粉塵などの侵入をより効果的に防止できる。
【0034】
以上説明したように上記各実施形態によれば、吸込口15に大気圧より高圧な流体が導入された場合においても、圧縮機ハウジング16の隙間を介して圧縮室36から外部に対してエア漏れが生じることを防止可能なスクロール圧縮機1を提供できる。
【0035】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0036】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)一態様に係るスクロール圧縮機は、
それぞれ端板(19,26)にラップ(21,28)が立設されてなる固定スクロール(18)及び旋回スクロール(20)が相対的に回転することにより流体を圧縮可能なスクロール圧縮機(1)であって、
前記固定スクロール及び旋回スクロールのうち一方の前記端板には、前記流体を第1圧縮室(36a)に導入するための流体導入口(60)が設けられており、
前記固定スクロール及び旋回スクロールの各々の前記ラップは、
前記流体導入口より径方向内側に前記第1圧縮室を形成する第1ラップ(21a、28a)と、
前記第1ラップより径方向外側に位置し、径方向内側において前記第1圧縮室に連通する第2圧縮室(36b)を形成する第2ラップ(21b、28b)と、
を含む。
【0038】
上記(1)の態様によれば、固定スクロール及び旋回スクロールのラップによって形成される圧縮室が、流体導入口より径方向内側にある第1圧縮室と、流体導入口より径方向外側にある第2圧縮室とを含んで構成される。第1圧縮室は、固定スクロール及び旋回スクロールのラップのうち流体導入口より径方向内側にある第1ラップによって形成され、第2圧縮室は、固定スクロール及び旋回スクロールのラップのうち流体導入口より径方向外側にある第2ラップによって形成される。第2圧縮室は、スクロール圧縮機の運転時に径方向内側に回転しながら移動するに従って容積が次第に減少することで、流体導入口から導入された流体が大気圧以上の圧力を有する場合であっても、流体導入口から径方向外側に向けて流体が拡散することを抑制する。これにより、圧縮室を囲むハウジングに隙間があった場合であっても、当該隙間に作用する流体の圧力を低減して、外部への流体の漏れを効果的に防止できる。
【0039】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記第2圧縮室は前記第1圧縮室より容積が小さい。
【0040】
上記(2)の態様によれば、外部への流体の漏れを防止するための第2圧縮室の容積は、流体導入口から導入される流体を圧縮するための第1圧縮室より少なく構成してもよい。
【0041】
(3)他の態様では、上記(2)の態様において、
前記第2ラップは前記第1ラップより前記端板に対する高さが小さい。
【0042】
上記(3)の態様によれば、第2圧縮室を形成する第2ラップの高さを、第1圧縮室を形成する第1ラップの高さより小さくすることで、第1圧縮室より容積が小さな第2圧縮室を効率的なレイアウトで実現できる。
【0043】
(4)他の態様では、上記(2)又は(3)の態様において、
前記第2ラップは、前記第1ラップより巻き数が少ない。
【0044】
上記(4)の態様によれば、第2圧縮室を形成する第2ラップの巻き数を、第1圧縮室を形成する第1ラップの巻き数より少なくすることで、第1圧縮室より容積が小さな第2圧縮室を効率的なレイアウトで実現できる。
【0045】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記固定スクロール及び旋回スクロールの少なくとも一方の前記端板のうち前記第2圧縮室より径方向外側に設けられた第1ダストシール(70)を更に備える。
【0046】
上記(5)の態様によれば、第2圧縮室より径方向外側に第1ダストシールを設けることで、圧縮室を囲むハウジングに隙間があった場合でも、当該隙間を介して外部から圧縮室に粉塵等のダストが侵入することを防止できる。
【0047】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記固定スクロール及び旋回スクロールの少なくとも一方の前記端板のうち前記第1圧縮室と前記第2圧縮室との間に設けられた第2ダストシール(80)を更に備える。
【0048】
上記(6)の態様によれば、第1圧縮室と第2圧縮室の間に第2ダストシール80を設けることで、圧縮室の径方向外側に前述の第1ダストシールを設ける場合に比べて、圧縮室を囲むハウジングの構成を簡略化することで、よりコンパクトなスクロール圧縮機を実現することができる。
【0049】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記第1ラップ及び前記第2ラップは非連続に形成される。
【0050】
上記(7)の態様によれば、第1圧縮室及び第2圧縮室をそれぞれ別の構成である第1ラップ及び第2ラップから構成することができる。
【0051】
(8)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記第1ラップ及び前記第2ラップは連続に形成される。
【0052】
上記(8)の態様によれば、第1圧縮室及び第2圧縮室をそれぞれ連続した構成である第1ラップ及び第2ラップから構成することができる。これにより、少ない構成部材で前述のスクロール圧縮機を実現できる。
【0053】
(9)他の態様では、上記(1)から(8)のいずれか一態様において、
前記流体導入口には予め大気圧以上に加圧された前記流体が供給される。
【0054】
上記(9)の態様によれば、流体導入口から導入された流体が大気圧以上の圧力を有するが、第2圧縮室によって流体導入口から径方向外側に向けて流体が拡散することが抑制される。これにより、圧縮室を囲むハウジングに隙間があった場合であっても、当該隙間に作用する流体の圧力を低減して、外部への流体の漏れを効果的に防止できる。
【符号の説明】
【0055】
1 スクロール圧縮機
4 圧縮機本体
6 動力伝達ユニット
8 送風ユニット
15 吸入口
16 圧縮機ハウジング
16a 第1ハウジング
16b 第2ハウジング
18 固定スクロール
19 固定端板
20 旋回スクロール
21 固定ラップ
21a 第1固定ラップ
21b 第2固定ラップ
22 駆動軸
23 偏心軸部
24 放熱フィン
26 旋回端板
28 旋回ラップ
28a 第1旋回ラップ
28b 第2旋回ラップ
30 放熱フィン
32 旋回プレート
34 自転防止機構
36 圧縮室
36a 第1圧縮室
36b 第2圧縮室
37 軸受部
38 吐出口
40 従動プーリ
42 ベアリングケース
44 ボールベアリング
51 ファンケーシング
53 送風ファン
55 開口部
60 流体導入口
61 溝部
70 第1ダストシール
80 第2ダストシール
図1
図2
図3
図4
図5
図6