(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031595
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】グレーチングおよびグレーチングの製造方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/06 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
E03F5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137187
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岡 安英
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CB02
2D063CB07
2D063CB30
(57)【要約】
【課題】重量、部品強度および部品剛性の各特性のバランスに優れたグレーチングおよびグレーチングの製造方法を提供する。
【解決手段】グレーチング1は、複数のベアリングバー10と、複数の接続部材とを備える。複数のベアリングバー10は、降伏応力295MPa以上の高強度鋼板からなり、上下方向に延びる縦板部10Aと、前記縦板部10Aの上端部に接続される曲げ部10Kと、少なくとも上下方向と交差する方向に延びる部分を有し曲げ部10Kを介して縦板部10Aに接続される荷重受け部であって、前記上面部の一部を構成し上方から作用する荷重を受けることが可能な荷重受け部10Bとを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部を有し水平な第1方向および当該第1方向と直交する水平な第2方向にそれぞれ延びる直方体形状のグレーチングであって、
前記第1方向および上下方向にそれぞれ延びる板形状を有し、前記第2方向に互いに間隔をおいて配置される複数のベアリングバーと、
前記複数のベアリングバーを前記第2方向に沿って接続する複数の接続部材と、
を備え、
前記複数のベアリングバーは、それぞれ、
降伏応力295MPa以上の高強度鋼板からなり、前記第2方向および上下方向を含む断面で見た場合、
上下方向に延びる縦板部と、
前記縦板部の上端部に接続される曲げ部と、
少なくとも上下方向と交差する方向に延びる部分を有し前記曲げ部を介して前記縦板部に接続される荷重受け部であって、前記上面部の一部を構成し上方から作用する荷重を受けることが可能な荷重受け部と、
を含む、グレーチング。
【請求項2】
前記第2方向および上下方向を含む断面で見た場合、前記荷重受け部は、前記曲げ部を通る水平な基準面に対して-20度以上+20度以内の角度で交差するように、前記曲げ部に接続されている、請求項1に記載のグレーチング。
【請求項3】
前記第2方向および上下方向を含む断面で見た場合、前記荷重受け部は、前記曲げ部を通る水平な基準面に直交するように、前記曲げ部に接続されている、請求項1に記載のグレーチング。
【請求項4】
前記縦板部は、前記第2方向において所定の板厚を有し、
前記荷重受け部は、前記上面部の一部を構成し上方から作用する前記荷重を受けることが可能な水平な荷重受け面であって、前記縦板部の前記板厚よりも大きな幅を有する荷重受け面を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載のグレーチング。
【請求項5】
前記荷重受け面は、凹凸形状を有する、請求項4に記載のグレーチング。
【請求項6】
前記荷重受け面は、所定の模様を有し、当該模様が前記凹凸形状を有している、請求項5に記載のグレーチング。
【請求項7】
前記荷重受け部は、前記曲げ部とは異なる位置に配置され、前記荷重受け部の一部が延びる方向を変化させる少なくとも一つの補助曲げ部を含む、請求項1乃至6の何れか1項に記載のグレーチング。
【請求項8】
前記複数のベアリングバーは、前記第2方向および上下方向を含む断面で見た場合、
前記縦板部の下端部に接続される下側曲げ部と、
前記下側曲げ部に接続される下側延び部と、
をそれぞれ有する、請求項1乃至7の何れか1項に記載のグレーチング。
【請求項9】
前記第2方向において前記複数のベアリングバーのうち互いに隣接するベアリングバーの間にそれぞれ配置され、上下方向に直線的に延びる複数の補助ベアリングバーを更に備える、請求項1乃至8の何れか1項に記載のグレーチング。
【請求項10】
上面部を有し水平な第1方向および当該第1方向と直交する水平な第2方向にそれぞれ延びる直方体形状のグレーチングの製造方法であって、
降伏応力295MPa以上の高強度鋼板からなり、前記第1方向および上下方向にそれぞれ延びる板形状を有する複数の基材を準備する基材準備工程と、
前記複数の基材のそれぞれについて、前記基材の上側部分を前記第2方向に曲げ加工した上で前記第2方向に互いに間隔をおいて配置することで、複数のベアリングバーを製造するベアリングバー製造工程と、
前記複数のベアリングバーのうち前記第2方向に曲げられた部分の少なくとも一部が、前記上面部の一部を構成し上方から作用する荷重を受けることが可能な荷重受け部として機能するように、前記第2方向に延びる複数の接続部材によって前記複数のベアリングバーを前記第2方向に沿って接続するベアリングバー接続工程と、
を備える、グレーチングの製造方法。
【請求項11】
前記複数の接続部材は、前記第2方向にそれぞれ延びるとともに前記第1方向に互いに間隔をおいて配置される複数のクロスバーを含み、
前記ベアリングバー接続工程は、前記複数のベアリングバーのうち前記第2方向に曲げられた部分の一部が、前記クロスバーとともに前記グレーチングの前記上面部を構成するように、前記複数のクロスバーによって前記複数のベアリングバーの上端部を前記第2方向に沿って接続することを含む、請求項10に記載のグレーチングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーチングおよびグレーチングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の側溝などの蓋として用いられ、複数の格子窓を有するグレーチングが知られている。特許文献1には、このようなグレーチングとして、互いに平行に並べられ矩形断面形状を有する複数のベアリングバーと、当該複数のベアリングバーの上端部同士および下端部同士を互いに接続する複数のクロスバーと、前記複数のベアリングバーの両端部同士を互いに接続する一対のエンドバーとを有するものが開示されている。このようなグレーチングには一般構造用圧延鋼材SS400(規格下限降伏応力245MPa)が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、グレーチングの重量、部品強度および部品剛性の各特性のバランスを取ることが難しいという問題があった。
【0005】
具体的に、グレーチングには、その上に人や車両がのった際に掛かる荷重によって変形しないことや破壊しないことが求められるため、所定の部品強度、部品剛性が必要となる。たとえば、重量物が上に載った際のたわみを抑制するためには、部品剛性が必要となる。一方で、部品強度や部品剛性を確保しようとすると、グレーチングを構成する部品の板厚や幅を厚くする必要があるため、結果的にグレーチング全体が重くなる。しかしながら、グレーチングを取り扱う作業現場では、作業性を向上するためにグレーチングが軽量であることが望ましく、グレーチングの重量と部品強度および部品剛性との両立が困難であった。特許文献1に記載された技術では、部品強度を保ちながら軽量化を行うためにベアリングバーに高張力鋼板が用いられているが、このような大きな荷重が掛かりやすいベアリングバーへの高張力鋼板の適用は、グレーチングの部品剛性が不足しやすく、疲労特性が低下しやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、重量、部品強度および部品剛性の各特性のバランスに優れたグレーチングおよびグレーチングの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、グレーチングの少なくとも一部に高張力鋼板を適用するにあたって、軽量化および部品強度の維持を図りつつ、いかにして部品剛性を確保するかという問題について鋭意検討を重ねた結果、高張力鋼板を用いたベアリングバーの形状に特徴を持たせることで部品剛性を確保するという新たな着想を得るに至った。このような技術思想に基づいた本発明によって提供されるのは、上面部を有し水平な第1方向および当該第1方向と直交する水平な第2方向にそれぞれ延びる直方体形状のグレーチングである。当該グレーチングは、前記第1方向および上下方向にそれぞれ延びる板形状を有し、前記第2方向に互いに間隔をおいて配置される複数のベアリングバーと、前記複数のベアリングバーを前記第2方向に沿って接続する複数の接続部材と、を備える。前記複数のベアリングバーは、それぞれ、降伏応力295MPa以上の高強度鋼板からなり、前記第2方向および上下方向を含む断面で見た場合、上下方向に延びる縦板部と、前記縦板部の上端部に接続される曲げ部と、少なくとも上下方向と交差する方向に延びる部分を有し前記曲げ部を介して前記縦板部に接続される荷重受け部であって、前記上面部の一部を構成し上方から作用する荷重を受けることが可能な荷重受け部と、を含む。
【0008】
本構成によれば、ベアリングバーの上側部分に曲げ部が形成され、当該曲げ部によって上下方向と交差する方向に延びる荷重受け部が設けられている。この結果、高強度鋼板からなるベアリングバーを従来の一般構造用圧延鋼材よりも薄肉化することで、部品強度を維持しつつ軽量化するとともに、荷重付与時の塑性変形を抑制することができる。特に、ベアリングバーの上側に曲げ部を設けることで、部品剛性(断面二次モーメント)を確保することが可能となり、グレーチングの重量、部品強度、部品剛性の3つの特性のバランスを向上することができる。
【0009】
上記の構成において、前記第2方向および上下方向を含む断面で見た場合、前記荷重受け部は、前記曲げ部を通る水平な基準面に対して-20度以上+20度以内の角度で交差するように、前記曲げ部に接続されていることが望ましい。特に、前記第2方向および上下方向を含む断面で見た場合、前記荷重受け部は、前記曲げ部を通る水平な基準面と平行になるように、前記曲げ部に接続されていることが望ましい。
【0010】
本構成によれば、ベアリングバーの部品剛性を特に高めることができる。
【0011】
上記の構成において、前記縦板部は、前記第2方向において所定の板厚を有し、前記荷重受け部は、前記上面部の一部を構成し上方から作用する前記荷重を受けることが可能な水平な荷重受け面であって、前記第2方向において前記縦板部の前記板厚よりも大きな幅を有する荷重受け面を含むことが望ましい。
【0012】
本構成によれば、縦板部の板厚よりも大きな荷重受け面を設けることで、グレーチングに掛かる荷重を安定して受け止めることができるとともに、ベアリングバーの剛性を特に高めることができる。
【0013】
上記の構成において、前記荷重受け面は、凹凸形状を有することが望ましい。この際、前記荷重受け面は、所定の模様を有し、当該模様が前記凹凸形状を有していることが望ましい。
【0014】
本構成によれば、側溝に設置されたグレーチングの外観が良好とされるとともに、グレーチング上を歩行する人や走行する車(自転車を含む)が雨水などによって滑ることが防止される。
【0015】
上記の構成において、前記荷重受け部は、前記曲げ部とは異なる位置に配置され、前記荷重受け部の一部が延びる方向を変化させる少なくとも一つの補助曲げ部を含むことが望ましい。
【0016】
本構成によれば、荷重受け部の剛性を更に高めることができる。
【0017】
上記の構成において、前記複数のベアリングバーは、前記第2方向および上下方向を含む断面で見た場合、前記縦板部の下端部に接続される下側曲げ部と、前記下側曲げ部に接続される下側延び部と、をそれぞれ有することが望ましい。
【0018】
本構成によれば、ベアリングバーの下端側の部品剛性を高めることができる。
【0019】
上記の構成において、前記複数のベアリングバーのうち前記第2の方向において互いに隣接するベアリングバーの間にそれぞれ配置され、上下方向に直線的に延びる複数の補助ベアリングバーを更に備えることが望ましい。
【0020】
本構成によれば、第2方向において一定の間隔で高強度鋼板からなるベアリングバーが配置されるため、グレーチングの重量、部品強度、部品剛性の3つの特性のバランスを向上することができる。
【0021】
また、本発明によって提供されるのは、上面部を有し水平な第1方向および当該第1方向と直交する水平な第2方向にそれぞれ延びる直方体形状のグレーチングの製造方法である。当該製造方法は、降伏応力295MPa以上の高強度鋼板からなり、前記第1方向および上下方向にそれぞれ延びる板形状を有する複数の基材を準備する基材準備工程と、前記複数の基材のそれぞれについて、前記基材の上側部分を前記第2方向に曲げ加工した上で前記第2方向に互いに間隔をおいて配置することで、複数のベアリングバーを製造するベアリングバー製造工程と、前記複数のベアリングバーのうち前記第2方向に曲げられた部分の少なくとも一部が、前記上面部の一部を構成し上方から作用する荷重を受ける荷重受け部として機能するように、前記第2方向に延びる複数の接続部材によって前記複数のベアリングバーを前記第2方向に沿って接続するベアリングバー接続工程と、を備える。
【0022】
本方法によれば、重量、部品強度、部品剛性の3つの特性のバランスを向上することが可能なグレーチングを提供することができる。
【0023】
上記の方法において、前記複数の接続部材は、前記第2方向にそれぞれ延びるとともに前記第1方向に互いに間隔をおいて配置される複数のクロスバーを含み、前記ベアリングバー接続工程は、前記複数のベアリングバーのうち前記第2方向に曲げられた部分の一部が、前記クロスバーとともに前記グレーチングの前記上面部を構成するように、前記複数のクロスバーによって前記複数のベアリングバーの上端部を前記第2方向に沿って接続することを含むことが望ましい。
【0024】
本方法によれば、複数のベアリングバーおよび複数のクロスバーによって、グレーチングの重量、部品強度、部品剛性の3つの特性のバランスを向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、重量、部品強度および部品剛性の各特性のバランスに優れたグレーチングおよびグレーチングの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るグレーチングの斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図5】本発明の第1変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図6】本発明の第2変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図7】本発明の第3変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図8】本発明の第4変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図9】本発明の第5変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図10】本発明の第6変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図11】本発明の第7変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図12】本発明の第8変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図13】本発明の第9変形実施形態に係るグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図14】たわみ量比と軽量化率との関係を示すグラフである。
【
図15】本発明と比較される従来のグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【
図16】本発明と比較される従来のグレーチングのベアリングバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明のグレーチング1の各実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るグレーチング1の斜視図である。
図2は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。グレーチング1は、たとえば
図1に示すように、側溝100に形成されたグレーチング支持部101にはめ込まれることで、側溝100への雨水の進入を許容しながら側溝100を上方から塞ぐ蓋としての機能を有している。なお、グレーチング1の機能は上記に限定されるものではなく、側溝100の床板などとして機能してもよく、クリーンルームや多数階駐車場などの床板、階段の踏み板として機能するものでもよい。また、以後の説明では、
図1の前後、上下および左右の各方向を用いるが、当該方向は本発明に係るグレーチング1、グレーチング1の製造方法を限定するものではない。なお、グレーチング1が傾斜した路面の側溝に配置される場合には、各図の上下方向が必ずしも鉛直方向と平行にはならない。同様に、各図の前後方向、左右方向は必ずしも水平方向と平行にはならない。各図の方向はグレーチング1の構造を説明するための相対的な方向である。
【0028】
図1を参照して、グレーチング1は、上面部を有し左右方向(水平な第1方向)および前後方向(第1方向と直交する水平な第2方向)にそれぞれ延びる直方体形状からなる。グレーチング1は、複数のベアリングバー10と、複数のクロスバー20と、左右一対のエンドバー30とを有する。
【0029】
複数のベアリングバー10は、左右方向および上下方向にそれぞれ延びる板形状を有し、前後方向に互いに間隔をおいて配置される。
【0030】
複数のクロスバー20および左右一対のエンドバー30(いずれも接続部材)は、複数のベアリングバー10を前後方向に沿って接続する。特に、複数のクロスバー20は、前後方向に延びる棒状部材であり、左右方向に間隔をおいて配置されている。左右一対のエンドバー30は、複数のベアリングバー10の左右両端部同士を前後方向に沿って接続する。
【0031】
グレーチング1を製造するにあたって、各ベアリングバー10を上下(鉛直)方向に沿って立てた状態で平行に並べ、突合せ抵抗溶接によりベアリングバー10の上端側をクロスバー20で連結して
図1に示すような複数の格子窓を形成し、ベアリングバー10の両端部をそれぞれエンドバー30で連結する。なお、突合せ抵抗溶接は、抵抗溶接(溶接継手部に大電流を流し、ここに発生する抵抗熱によって加熱し、圧力を加えて行う溶接)の一種であり、溶接する母材の溶接継手の端面を突き合わせて接触させた端面を、抵抗熱で加熱・溶融とともに加圧して接合する抵抗溶接のことである。なお、ベアリングバー10とクロスバー20およびエンドバー30との接続方法は、上記に限定されるものではない。
【0032】
本実施形態では、ベアリングバー10は降伏応力295MPa以上の高強度鋼板からなり、クロスバー20およびエンドバー30は、それぞれ一般構造用圧延鋼材SS400(規格下限降伏応力245MPa)からなる。
【0033】
ここで、高張力鋼とは、基本としては、JIS G3129、G3134、G3135に規定された高張力鋼が例示されるが、これらに限定されず、一般構造用圧延鋼材であるSS400の強度の2倍程度以上の強度を持ち、高張力鋼や、高強度鋼と称されるものでもよい。なお、本実施形態に係るベアリングバー10としての機能を奏するために、その降伏応力は、上記のように295MPa以上が望ましく、325MPa以上が更に望ましく、355MPa以上が最も望ましい。
【0034】
一例として、このような高張力鋼として、例えば、HT80(降伏点=365N/mm2以上、引張強さ=780N/mm2以上)を用いた場合、ベアリングバー10の板厚Tを、従来の同じ仕様のSS400の約半分とすることができるため、グレーチング1の重量も約半分まで軽量化することができる。
【0035】
本実施形態では、高張力鋼板の基材が曲げ加工されることで、ベアリングバー10の形状が形成される。
図2に示すように、前後方向および上下方向を含む断面で見た場合、複数のベアリングバー10は、それぞれ、縦板部10Aと、上側曲げ部10K(曲げ部)と、第1延び部10Bとを有する。また、各ベアリングバー10は、曲げ加工前の高強度鋼板の先端部10Sと基端部10Tとを有する。
【0036】
縦板部10Aは、ベアリングバー10の下側部分から構成され、上下方向に延びる部分である。上側曲げ部10Kは、縦板部10Aの上端部に接続され、前記基材に曲げ加工が施された部分である。
【0037】
第1延び部10Bは、少なくとも上下方向と交差する方向に延びる部分を有し、上側曲げ部10Kを介して縦板部10Aに接続される。第1延び部10Bは、グレーチング1の上面部の一部を構成し、上方から作用する荷重を受けることが可能な荷重受け部として機能する。このため、第1延び部10Bの上面部には、前記荷重を受ける荷重受け面10Hが配置されている。
図2には、荷重受け面10Hの幅(上面幅)がWで図示されている。
【0038】
次に、本実施形態に係るベアリングバー10の部品強度、部品剛性について説明する。
従来のベアリングバー10の断面は一般的に決まっており、高強度鋼を適用する場合、1グレード低い断面にすることで、許容負荷応力を一般的な素材を適用した時の強度と同等にしながら、軽量化を図ることができる。ベアリングバー10の断面による部材性能は、以下の2つの因子(断面二次モーメントI、断面係数Z)で評価される。
【0039】
【0040】
【0041】
また、このベアリングバー10の性能を評価する際、部品強度については、グレーチング1に荷重が付与された際に発生する負荷応力が使用素材の降伏応力を超えるかどうかで評価される。また、部品剛性についてはグレーチング1に荷重が付与された際のたわみ量で評価される。この時、負荷応力σは、グレーチング1に係る荷重N、グレーチング1に載るタイヤの向き、グレーチング1の幅、衝撃係数、ベアリングバー10のピッチ、ベアリングバー10の断面係数Zから求められる。また、たわみ量δは、負荷荷重、グレーチング1の幅(支点間距離)、素材の縦弾性係数(鉄などは192GPa)、グレーチング1の断面二次モーメントIで求められる。以下に、負荷応力σ、たわみ量δの式をそれぞれ示す。
【0042】
【0043】
【0044】
なお、上記の式において、Lは複数のベアリングバー10の支点間距離(mm)、L1は ベアリングバー10上の荷重長(mm)、iは衝撃係数(0.4)、Pは後輪一輪荷重(kN)、Pbはベアリングバー10のピッチ(mm)、a×bは車輪設置面積(mm2)、Iは断面二次モーメント、eはベアリングバー10の断面の図心から上端部もしくは下端部までの距離のうちの小さい方(mm)、yはベアリングバー10の断面の図心からの距離(mm)、Aはベアリングバー10の断面積(mm2)、Wは上面幅(mm)である。
【0045】
ここで、部品強度を確保するためには、素材の降伏応力が上記で求められる負荷応力よりも高くなるように設定する必要がある。また、断面二次モーメントIは剛性を表す指標であり、荷重をかけた際のたわみ量δは、断面二次モーメントIの逆数に比例するため、断面二次モーメントIが高い方が、剛性が高く好ましい。グレーチング1の重量は、ベアリングバー10の断面積、長さ、本数の積に比例するため、長さ、本数が変わらないとすると、ベアリングバー10の断面積で評価することができる。
【0046】
本実施形態では、ベアリングバー10の上側に上側曲げ部10Kが形成され、当該上側曲げ部10Kによって上下方向と交差する方向に延びる第1延び部10Bが設けられている。この結果、高強度鋼板からなるベアリングバー10を従来の一般構造用圧延鋼材(SS400)よりも薄肉化することで、部品強度(断面係数)を維持しつつ、軽量化するとともに、荷重付与時の塑性変形を抑制することができる。特に、ベアリングバー10の上側に上側曲げ部10Kを設けることで、部品剛性(断面二次モーメント)を確保することが可能となり、ベアリングバー10の重量、部品強度、部品剛性の3つの特性のバランスを向上することができる。
【0047】
また、本実施形態では、前後方向および上下方向を含む断面で見た場合、第1延び部10Bは、上側曲げ部10Kを通る水平な基準面に対して-20度以上+20度以内の角度で交差するように、上側曲げ部10Kに接続されている。特に、第1延び部10Bは、上側曲げ部10Kを通る水平な基準面と平行になるように、上側曲げ部10Kに接続されている。換言すれば、
図2において、縦板部10Aと第1延び部10Bとは互いに直交するように配置されている。
【0048】
このような構成によれば、ベアリングバー10の部品剛性を特に高めることができる。
【0049】
また、縦板部10Aは、前後方向において所定の板厚T(
図2)を有し、第1延び部10Bの荷重受け面10Hは、前後方向において縦板部10Aの板厚Tよりも大きな幅を有する。
【0050】
このような構成によれば、縦板部10Aの板厚よりも大きな荷重受け面10Hを設けることで、グレーチング1に掛かる荷重を安定して受け止めることができるとともに、ベアリングバー10の剛性を特に高めることができる。
【0051】
なお、荷重受け面10Hは、凹凸形状を有するものでもよい。特に、荷重受け面10Hは、所定の模様を有し、当該模様が前記凹凸形状を有しているものでもよい。この場合、側溝100に設置されたグレーチング1の外観が良好とされるとともに、グレーチング1上を歩行する人や走行する車(自転車を含む)が雨水などによって滑ることが防止される。
【0052】
なお、上記のようなグレーチング1の製造方法について更に説明すると、当該製造方法は、上面部を有し水平な第1方向(左右方向)および当該第1方向と直交する水平な第2方向(前後方向)にそれぞれ延びる直方体形状のグレーチング1の製造方法である。当該製造方法は、基材準備工程と、ベアリングバー製造工程と、ベアリングバー接続工程とを有する。
【0053】
基材準備工程では、降伏応力400MPa以上の高強度鋼板からなり、前記第1方向および上下方向にそれぞれ延びる板形状を有する複数の基材を準備する。
【0054】
ベアリングバー製造工程では、前記複数の基材のそれぞれについて、前記基材の上側部分を前記第2方向に曲げ加工した上で前記第2方向に互いに間隔をおいて配置することで、複数のベアリングバー10を製造する。
【0055】
ベアリングバー接続工程では、複数のベアリングバー10のうち前記第2方向に曲げられた部分の少なくとも一部が、グレーチング1の上面部の一部を構成し上方から作用する荷重を受けることが可能な荷重受け部として機能するように、前記第2方向に延びる複数の接続部材によって前記複数のベアリングバー10を前記第2方向に沿って接続する。本実施形態では、前述のように、複数のクロスバー20および一対のエンドバー30が接続部材を構成する。
【0056】
このように、本実施形態に係るグレーチング1の製造方法では、重量、部品強度、部品剛性の3つの特性のバランスを向上することが可能なベアリングバー10を提供することができる。
【0057】
また、前記複数の接続部材は、前記第2方向にそれぞれ延びるとともに前記第1方向に互いに間隔をおいて配置される複数のクロスバー20を含む。そしT、前記ベアリングバー接続工程は、前記複数のベアリングバー10のうち前記第2方向に曲げられた部分の一部が、前記クロスバー20とともに前記グレーチング1の前記上面部を構成するように、前記複数のクロスバー20によって前記複数のベアリングバー10の上端部を前記第2方向に沿って接続することを含む。
【0058】
このような方法によれば、グレーチング1の重量、部品強度、部品剛性の3つの特性のバランスを向上することができる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図3は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。以下では、先の第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する(後記の実施形態も同様)。
【0060】
本実施形態では、
図3に示すように、ベアリングバー10の下端部にも曲げ加工が施されている。具体的に、前後方向および上下方向を含む断面で見た場合、ベアリングバー10は、下側曲げ部10Jと、下側延び部10Rとを有する。下側曲げ部10Jは、縦板部10Aの下端部に接続され、ベアリングバー10の基材の下側部分が180度折り返されることで形成される。下側延び部10Rは、下側曲げ部10Jに接続される部分であって上下方向に延びるとともに、ベアリングバー10の基材の基端部10Tを含む。なお、
図3に示すように、下側延び部10Rの長さ(高さ)がhで示されている。本実施形態では、第1実施形態と比較して、ベアリングバー10の下端側の部品剛性を高めることができる。なお、
図3では図示を省略しているが、複数のベアリングバー10の下側曲げ部10Jの近傍も、不図示のクロスバー20によって接続されている(
図12、
図13参照)。
【0061】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図4は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本実施形態では、ベアリングバー10の下端部が、先の第2実施形態と同様の構成を有している。一方、ベアリングバー10の上端部では、第1、第2実施形態と比較して、ベアリングバー10が更に曲げ部を有している。
【0062】
具体的に、ベアリングバー10は、第1延び部10Bの先端部に接続される上側曲げ部10L(補助曲げ部)および第2延び部10Cを更に有する。すなわち、本実施形態では、ベアリングバー10を構成する基材の上側部分が2か所において曲げ加工を施されている。上側曲げ部10Lは、上側曲げ部10Kとは異なる位置(上側曲げ部10Kよりも先端部10S側)に配置され、荷重受け部の一部が延びる方向を変化させる。本実施形態では、上側曲げ部10Lは、ベアリングバー10の一部が180度折り返されることで形成される。上側曲げ部10Lよりも先端部10S側の第2延び部10Cは、第1延び部10Bのすぐ下方に配置される。この結果、先端部10Sが上側曲げ部10Kの近傍に配置される。このような構成によれば、上側曲げ部10Kから延びる荷重受け部の剛性を更に高めることができる。また、第2延び部10Cが、荷重受け面10Hを含む第1延び部10Bを下方から支持することができる。
【0063】
以上、本発明の各実施形態に係るグレーチング1およびグレーチング1の製造方法について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下のような変形実施形態が可能である。
【0064】
<第1変形実施形態>
以下に、本発明の第1変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図5は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本変形実施形態では、先の第3実施形態と比較して、上側曲げ部10Lにおいてベアリングバー10の基材が90度曲げられることで、第2延び部10Cが上側曲げ部10Lから下方に延びるように配置される。このような構成においても、ベアリングバー10のうち第1延び部10Bの先端側の剛性を高めることができる。
【0065】
<第2変形実施形態>
図6は、本発明の第2変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本変形実施形態では、先の第3実施形態と比較して、第2延び部10Cの長さが相対的に短く、上側曲げ部10LがU字形状を有している。このような構成においても、ベアリングバー10のうち第1延び部10Bの先端側の剛性を高めることができる。
【0066】
<第3変形実施形態>
次に、本発明の第3変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図7は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本変形実施形態では、先の第3実施形態と比較して、上側曲げ部10Lにおいてベアリングバー10の基材が90度曲げられることで、第2延び部10Cが上側曲げ部10Lから下方に延びるように配置されるとともに、その先端部が更に上方に曲げられる。具体的に、ベアリングバー10は、上側曲げ部10Mと第3延び部10Dとを更に有する。上側曲げ部10Mは、第2延び部10Cの下端部に形成された曲げ部であり、ベアリングバー10の先端側部分が、下方から上方に向かって180度折り返されることで形成される。第3延び部10Dは、先端部10Sを含み、上側曲げ部10Mから上方に向かって延びる。この結果、先端部10Sは、第1延び部10Bの直ぐ下方に配置される。このような構成においても、ベアリングバー10のうち第1延び部10Bの先端側の剛性を高めることができる。
【0067】
<第4変形実施形態>
次に、本発明の第4変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図8は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本実施形態では、上側曲げ部10Lにおいて、ベアリングバー10の一部が上方かつ後方に向かって折り返されることで、第1延び部10Bの上方に第2延び部10Cが配置される。第2延び部10Cは、上側曲げ部10Kの上方を超えて、縦板部10Aに対して第1延び部10Bと反対側まで延びている。また、本実施形態では、第2延び部10Cの上面部に荷重受け面10Hが形成される。換言すれば、本実施形態では、ベアリングバー10が、曲げ加工によってT字状の断面形状を有している。
【0068】
<第5変形実施形態>
次に、本発明の第5変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図9は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、上側曲げ部10Kの曲げ角度が相違している。換言すれば、第1延び部10Bは、縦板部10Aに対して直交しておらず、鈍角で交わっている。なお、第1延び部10Bは、上側曲げ部10Kを通る水平な基準面に対して、+20度の角度で交差している。なお、当該角度は20度以下に設定されることが望ましい。
【0069】
本実施形態では、
図9に示すように、第1延び部10Bの上面部が傾斜面10H1を有しており、隣接するベアリングバー10同士の傾斜面10H1がクロスバー20によって接続される。この際、傾斜面10H1の先端である荷重受け点10H2がクロスバー20の上面部と面一とされることが望ましい。この場合も、ベアリングバー10の一部が、クロスバー20とともに、グレーチング1に掛かる荷重を受けとめることができる。したがって、グレーチング1の部品強度、部品剛性を維持することが可能となる。
【0070】
更に、本実施形態では、傾斜面10H1がクロスバー20の上面部よりも下方に位置するため、グレーチング1の上を歩行する人や走行する車が傾斜面10H1に接し難く、滑りが防止される。また、傾斜面10H1が傾斜しているため、雨水が当該傾斜面10H1に沿って速やかにグレーチング1の下方に落下することができる。
【0071】
なお、他の実施形態において、
図9の第1延び部10Bが上側曲げ部10Kから離れるに連れて下方に延びるように、上側曲げ部10Kの曲げ角度が設定されてもよい。この場合、上側曲げ部10Kを通る水平な基準面と第1延び部10Bとがなす角度は、-20度以上0度以下に設定されることが望ましい(0度は、第1実施形態に相当)。
【0072】
<第6変形実施形態>
次に、本発明の第6変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図10は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本実施形態では、上記の第5変形実施形態(
図9)と同様に、第1延び部10Bが縦板部10Aと直交することなく、上側曲げ部10Kにおいて縦板部10Aに約20度で交差するように配置されている。更に、第1延び部10Bの先端部に第2延び部10Cが上側曲げ部10Lを介して接続され、当該第2延び部10Cが水平方向に延びている。第2延び部10Cの上面部には荷重受け面10Hが形成されている。
【0073】
<第7変形実施形態>
次に、本発明の第7変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図11は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本実施形態では、上側曲げ部10Kにおいて90度の曲げ加工が施され、第1延び部10Bが形成されるとともに、第1延び部10Bの先端側が上側曲げ部10Lにおいて下方に曲げられ、第2延び部10Cが形成される。第2延び部10Cは、第1延び部10Bよりも短く設定され、上側曲げ部10Lにおいて略20度に曲げられている。このような構成においても、ベアリングバー10の上側部分の剛性を高めることができる。
【0074】
<第8変形実施形態>
次に、本発明の第8変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図12は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本実施形態では、ベアリングバー10の上側部分が先の第1実施形態と同様の構造を有するとともに、ベアリングバー10の下側部分が下側曲げ部10Pにおいて90度曲げられ、下側延び部10Qが形成されている。下側延び部10Qは、基端部10Tを含む。また、本実施形態では、複数のベアリングバー10の下側延び部10Q同士が、下側のクロスバー20によって接続される。この場合、クロスバー20とベアリングバー10の下側部分との接続面積を増やすことができるため、グレーチング1の剛性、強度を更に高めることができる。
【0075】
<第9変形実施形態>
次に、本発明の第9変形実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10について説明する。
図13は、本実施形態に係るグレーチング1のベアリングバー10の断面図である。本実施形態では、先の第8変形実施形態と比較して、下側延び部10Qが、下側曲げ部10Pにおいて上方にU字状に折り返される点で相違する。このような構成においても、ベアリングバー10の下側部分の剛性を更に高めることができる。
【0076】
なお、これまで説明した各実施形態に係るベアリングバー10は、前述のように曲げ加工によってその形が形成されるものであるため、各曲げ部(上側曲げ部10K、上側曲げ部10Kなど)において、ベアリングバー10の一部が前後方向の一方にのみ変形するものであり、二股形状は含まれない。また、曲げ部は、所定の基材に曲げ加工などによって形成されるものであり、複数の基材が溶接などによって接合されるものを含むものではない。
【0077】
<第10変形実施形態>
上記の各実施形態では、同じ構造のベアリングバー10が前後方向に隣接して配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。各グレーチング1は、複数のベアリングバー10のうち前後方向(第2の方向)において互いに隣接するベアリングバー10の間にそれぞれ配置され、上下方向に直線的に延びる複数の補助ベアリングバー(不図示)を更に備えるものでもよい。すなわち、
図2において隣接するベアリングバー10同士の間に、後述する
図15、
図16に示すようなベアリングバー10Zが配置されてもよい。この場合、間に配置されるベアリングバー10Zは1つでも良いし、2つ以上でもよい。また、これらのベアリングバー10の配列は上記に限定されるものではなく、2つのベアリングバー10の次に2つのベアリングバー10Zが配列されるような態様でもよい。以上のような構成においても、ベアリングバー10の重量、部品強度、部品剛性の3つの特性のバランスを向上することができる。
【実施例0078】
次に、実施例に基づいて、本発明について更に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図15および
図16は、それぞれ、本発明と比較される従来のグレーチング(比較例)のベアリングバー10Zの断面図である。
図15は、後記の比較例1に対応し、
図16は同比較例2に対応する。比較例2は、比較例1に対してベアリングバー10Zの板厚を減肉化したものである。
【0079】
本発明に係るベアリングバー10と比較される形状のベアリングバー10Zは、
図15、
図16に示すように、上下方向に沿って直線的に延びている。各ベアリングバー10Zは、その上端部および下端部に部分的に幅が拡大した上側拡大部10Z1、下側拡大部10Z2を有する。
【0080】
表1は、本発明の各実施例および各比較例の仕様の一覧を示すものである。上面幅Wは、荷重受け面10Hの前後方向における幅を示す(
図2など参照)。板厚Tはベアリングバー10の縦板部10Aにおける前後方向の厚さを示す(
図2など参照)。下側折返長さhは、ベアリングバー10の下端部の折り返し長さを示す(
図3参照)。また、各実施例および各比較例におけるベアリングバー10の断面形状は、
図2~
図4、
図15、
図16に対応する。なお、各比較例、各実施例ともに、ベアリングバー10の高さは50mmに設定されている。各図には一部の条件が寸法表示されている。断面二次モーメントおよび断面係数は、前述の式1、式2で算出される。表1の断面積は、
図2などに示される断面における各ベアリングバー10の断面積である。
【0081】
【0082】
また、表2は、各実施例および各比較例の想定利用条件を示すものである。想定利用条件は、国土交通省によって定められた道路橋示方書に基づくものを含む。支点間距離Lは、ベアリングバー10が両端支持された梁と仮定した場合の支点間距離(長さ)であり、
図1における左右のグレーチング支持部101間の距離に相当する。後輪一輪荷重Nは、グレーチング1上にトラックなどの車両が載った場合にグレーチング1に掛かる荷重を意味する。車両総重量を、車両重量+(乗車定員×平均体重)+最大積載量とした場合、輪荷重は車両の前輪片側に10%、後輪片側に40%の割合で荷重がかかるとして、後輪の一輪に掛かる荷重として算出される。車輪接地面積a×bは、グレーチング1に車輪が接地する面積であり、左右方向の接地幅a、前後方向の接地幅bの積として算出される。ベアリングバーピッチPbは、隣接するベアリングバー10同士の距離であり、35.3mmに設定される(
図2など参照)。なお、衝撃係数iは、道路橋示方書に基づき0.4に設定される。また、負荷応力σは、前述の式3で算出される。
【0083】
【0084】
また、表3は、各実施例および各比較例における評価結果を示す。部品強度は、素材降伏応力が負荷応力よりも大きい場合に〇とし、素材降伏応力が負荷応力以下の場合は×としている。たわみ量比は、前述の式4で算出されるたわみ量を比較例1のたわみ量を1として相対的に示すものである。同様に、軽量化率は、比較例1におけるベアリングバー10Zの重量を1として相対的に示すものである。
【0085】
【0086】
前述のように、比較例1は、従来の標準的なI型断面のベアリングバー10Zの断面形状を有し、部品強度、部品剛性(たわみ)、重量について、各実施例の基準となる。
【0087】
比較例2は、比較例1のI型断面のベアリングバー10Zに対して、厚さ方向に25%減肉化した断面を有するものである。ここでは、比較例2として高強度鋼板を用いて板厚を薄くすることで、24.6%の軽量化が実現されるが、たわみ量比が1.32となっている。
【0088】
比較例3は、
図2に示すように、ベアリングバー10の上面のみを水平に曲げた断面を有することで、板厚Tよりも大きな幅の荷重受け面10Hを形成している。しかしながら、基材材料として汎用鋼(SS400)を用いているため、比較例1と同等の部品剛性(たわみ量比1.0)を維持しながら、1.7%の軽量化を実現しているが、負荷応力σが素材強度を上回るため、部品強度が不足する結果となった。
【0089】
実施例1は、比較例3と同様に、ベアリングバー10の上面のみを水平に曲げた断面を有しつつ、基材材料として降伏応力420MPaの高張力鋼を用いることで、比較例1と同等の部品剛性(たわみ量比1.0)を維持しつつ、部品強度も満足し、かつ、1.7%の軽量化を実現するに至った。
【0090】
比較例4は、比較例3と同様の断面を有するが、上面幅Wを広げ、板厚Tを2.6mmに薄くした汎用鋼(SS400)を用いたものである。当該比較例4では、比較例1より部品剛性は劣るものの、既存のI断面を単純に板厚減少した比較例2と同等の部品剛性(たわみ量比1.32)を維持しつつ、軽量化率27.0%と比較例2を上回る軽量化を実現している。しかしながら、既存の汎用鋼を用いているため、負荷応力σが素材降伏応力を上回るため、部品強度が不足する結果となった。
【0091】
実施例2は、実施例1と同様の断面形状を有する高強度鋼を用いるものであるが、上面幅Wを広げ、板厚Tを薄くしたものである。降伏応力420MPaの高強度鋼板を適用することで、部品強度も満足し、かつ、比較例1よりも部品剛性は若干劣るものの、既存のI断面を単純に板厚減少した比較例2と同等の部品剛性(たわみ量比1.32)を維持し、軽量化率27.0%と比較例2を上回る軽量化を実現する結果となった。
【0092】
実施例3は、高強度鋼板を用いたものであり、
図3に示すように、ベアリングバー10の上側部分を水平に曲げると共に下側を180度密着曲げすることで、部品剛性を高められるようにした断面形状を有する。比較例1と同等の部品剛性を維持するとともに、部品強度を満足しつつ、12%の軽量化を実現できる結果となった。
【0093】
実施例4は、高強度鋼板を用いたものであり、実施例3と同様にベアリングバー10の上側部分を水平に曲げると共に、下側部分を180度密着曲げすることで、重量比の剛性を高めた断面形状を有する。実施例3より板厚Tを薄めに設定し、上面幅Wを広めにすることで、比較例2と同等の部品剛性(たわみ量)を維持しつつ、比較例1に対して約37%の軽量化、すなわち、比較例2よりも約12%の軽量化効果アップを実現することができた。
【0094】
実施例5は、高強度鋼板を用いたものであり、
図4に示すように、ベアリングバー10の上側部分を2回折り曲げて2重に重ねると共に、下側部分を180度密着曲げすることで、重量比の剛性を高めた断面形状を有する。実施例3より板厚Tを薄めに設定し、上面幅Wを広めにすることで、比較例2と同等の部品剛性(たわみ量)を維持しつつ、比較例1に対して約39%の軽量化、すなわち、比較例2よりも約14%の軽量化効果アップを実現することができた。なお、実施例5では、下側折返長さhを実施例3、4よりも大きく設定している。
【0095】
更に、本発明者は、重量と部品剛性のバランスの良し悪しについて鋭意検討を重ねたところ、重量とたわみ量がほぼ反比例の関係にあり、「重量比=(100-軽量化率)」と「たわみ量比」とを掛け合わせた値で評価することで、重量と部品剛性のバランスを定量的に示せることを新たに知見した。表3には、各実施例、比較例について、この「重量-部品剛性バランス」の評価結果を良好な順に、二重丸、丸、バツで示している。また、
図14は、この評価結果、すなわち、たわみ量比と軽量化率との関係を示すグラフである。
【0096】
表3に示すように、I型断面のベアリングバー10Z(比較例1、2)では多少形状を変更しても、「重量-部品剛性バランス」は100程度であるが、各実施例では、99以下と、重量-部品剛性バランスを改善する結果を得ることができた。また、
図14に示すように、各実施例は、「重量-部品剛性バランス」が99%以下の範囲に分布している。
【0097】
なお、上記のように演算される「重量-部品剛性バランス」は、99以下が良好であり、97以下がより好ましく、95以下が特に好ましい条件といえる。
【0098】
以上のように、各実施例では、ベアリングバー10の少なくとも上側部分に曲げ加工を施し、その部品剛性を高めることで、比較例よりも重量、部品強度および部品剛性の各特性のバランスに優れたグレーチングを提供することが可能となった。