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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031624
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】振動センサ
(51)【国際特許分類】
   G01H 11/08 20060101AFI20230302BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G01H11/08
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137234
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】國見 敬
(72)【発明者】
【氏名】井▲崎▼ 透
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】西井 朋也
(72)【発明者】
【氏名】岸本 豪太
【テーマコード(参考)】
2G047
2G064
【Fターム(参考)】
2G047AA09
2G047AB04
2G047BA03
2G047BB04
2G047BC09
2G047CA01
2G047EA15
2G047GA01
2G047GB23
2G064BA07
2G064BA08
2G064BA21
2G064BD18
2G064BD62
2G064DD23
(57)【要約】
【課題】エネルギー不足や感度不足を抑制しつつ、振動センサを小型化する。
【解決手段】振動センサ10は、対象物へ当接される先端部14を有する振動伝達子12と、電気信号を印加する又は取り出すための配線28に接続された圧電振動板18と、振動伝達子12及び圧電振動板18を内部に収容すると共に、先端部14が突出する突出孔36を有するケース体32とを含み、振動伝達子12と圧電振動板18とが電気的及び物理的に接続され、振動伝達子12がグランド電位に設定されている。このため、振動伝達子12と圧電振動板18との間で振動を直接的に伝達しながらも、対象物へ当接される振動伝達子12に起因するノイズを大幅に低減することができる。これにより、必要なS/N比などを確保することができるため、エネルギー不足や感度不足を抑制しつつ、振動センサ10の小型化に寄与することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物へ振動を加える又は前記対象物から振動を受けるための振動センサであって、
前記対象物へ当接される先端部を有する振動伝達子と、
電気信号を印加する又は取り出すための配線に接続された圧電振動板と、
前記振動伝達子及び前記圧電振動板を内部に収容すると共に、前記先端部が突出する突出孔を有するケース体と、を含み、
前記振動伝達子と前記圧電振動板とが電気的及び物理的に接続され、前記振動伝達子がグランド電位に設定されていることを特徴とする振動センサ。
【請求項2】
前記振動伝達子及び前記圧電振動板は、前記ケース体の内部において、前記先端部の突出方向と平行な方向に摺動可能に収容されると共に、前記突出方向へとスプリングによって付勢されていることを特徴とする請求項1記載の振動センサ。
【請求項3】
前記振動伝達子及び前記圧電振動板と、前記ケース体の内部の摺動面との間に、第1ダンパ部材が介在していることを特徴とする請求項2記載の振動センサ。
【請求項4】
前記突出孔の、前記ケース体の内部側の縁部と、前記振動伝達子との間に、第2ダンパ部材が配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の振動センサ。
【請求項5】
前記圧電振動板を2枚含み、該2枚の圧電振動板が、金属電極板を挟んで、向かい合わせで電気的及び物理的に接続され、
前記配線を介して前記2枚の圧電振動板へ電気信号が印加され、前記振動伝達子を介して前記対象物へ振動を加える加振センサとして使用されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の振動センサ。
【請求項6】
前記圧電振動板を1枚含み、
前記振動伝達子を介して前記対象物から振動を受けて、前記配線を介して前記1枚の圧電振動板から電気信号が取り出される受振センサとして使用されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の振動センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物へ振動を加える又は対象物から振動を受けるための振動センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な用途で用いられる種々のセンサには、常に小型化が求められている。例えば、タイルの剥離検知装置などに用いられる、振動を発生又は受けるための圧電振動板を利用した振動センサもその1つであり、効率よく検査を行うために装置への多点設置が求められる結果、振動センサの小型化が必須となっている。なお、特許文献1には、圧電振動板の小型化に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-357080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような振動センサを小型化するためには、従来のものよりも面積が小さい圧電振動板を使用する必要がある。しかしながら、圧電振動板の面積が小さくなると、振動を発生する用途においてはエネルギー不足、振動を受ける用途においては感度不足となる虞があり、これらについての対策が求められる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エネルギー不足や感度不足を抑制しつつ、振動センサを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)対象物へ振動を加える又は前記対象物から振動を受けるための振動センサであって、前記対象物へ当接される先端部を有する振動伝達子と、電気信号を印加する又は取り出すための配線に接続された圧電振動板と、前記振動伝達子及び前記圧電振動板を内部に収容すると共に、前記先端部が突出する突出孔を有するケース体と、を含み、前記振動伝達子と前記圧電振動板とが電気的及び物理的に接続され、前記振動伝達子がグランド電位に設定されている振動センサ(請求項1)。
【0007】
本項に記載の振動センサは、対象物へ振動を加える、或いは対象物から振動を受けるためのものであり、振動伝達子、圧電振動板、及びケース体を含んでいる。振動伝達子は、振動の出力先又は入力元である対象物へ当接される先端部を有しており、その先端部を介して、対象物へ振動を伝達する、或いは対象物からの振動を取り込むものである。圧電振動板は、電気信号を印加する又は取り出すための配線に接続されており、配線から印加された電気信号から振動を発生、或いは、振動を電気信号へ変換して配線へ送信するものである。ケース体は、振動伝達子及び圧電振動板を内部に収容するものであって、このとき、ケース体に形成された突出孔から振動伝達子の先端部が突出する態様で、振動伝達子及び圧電振動板を収容する。
【0008】
また、振動伝達子と圧電振動板とは、電気的及び物理的に接続されており、物理的に接続されていることで、振動伝達子と圧電振動板との間で振動が直接的に伝達される。すなわち、対象物へ振動を加える用途の際は、配線から印加された電気信号から圧電振動板により振動が発生され、その発生された振動が圧電振動板から振動伝達子へと直接的に伝達され、更に振動伝達子から対象物へと振動が伝達されるものである。これに対し、対象物から振動を受ける用途の際は、対象物からの振動が振動伝達子を介して取り込まれ、その振動が振動伝達子から圧電振動板へと直接的に伝達され、更に伝達された振動が圧電振動板により電気信号へ変換されて配線へ送信されるものである。
【0009】
更に、振動伝達子と圧電振動板とが電気的に接続され、振動伝達子がグランド電位に設定されている。すなわち、振動伝達子は、圧電振動板の2つの電極のうちの一方の電極と電気的に接続され、その一方の電極に配線を介してグランド電位が付加されるものである。このようにして、振動伝達子がグランド電位に設定されることにより、対象物へ当接される振動伝達子に起因するノイズが大幅に低減される。これにより、取り込んだ振動から圧電振動板により変換した電気信号のレベルが小さいといった、圧電振動板が小さくなった場合に想定される事象が発生しても、上述したノイズ対策により必要なS/N比などが確保されるため、エネルギー不足や感度不足が抑制されつつ、振動センサの小型化に寄与するものとなる。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記振動伝達子及び前記圧電振動板は、前記ケース体の内部において、前記先端部の突出方向と平行な方向に摺動可能に収容されると共に、前記突出方向へとスプリングによって付勢されている振動センサ(請求項2)。
本項に記載の振動センサは、ケース体の内部に収容される振動伝達子と圧電振動板とが、振動伝達子の先端部がケース体の突出孔から突出する方向と平行な方向に摺動可能に収容されたものである。更に、振動伝達子及び圧電振動板は、摺動可能な一方の方向である、振動伝達子の先端部の突出方向へとスプリングによって付勢されている。このため、振動伝達子の先端部が対象物へ当接されると、振動伝達子及びそれに接続された圧電振動板は、ケース体の内部で先端部の突出方向と反対方向へ僅かに摺動されつつ、対象物の方向へとスプリングによって付勢された状態になる。これにより、対象物に凹凸などがあっても、振動伝達子の先端部が対象物に対して確実に接触するものとなり、また、複数の振動センサが対象物へ同時に当接されるような場合であっても、全ての振動センサへの荷重が略均等の状態で対象物へ接触するものとなる。
【0011】
(3)上記(2)項において、前記振動伝達子及び前記圧電振動板と、前記ケース体の内部の摺動面との間に、第1ダンパ部材が介在している振動センサ(請求項3)。
本項に記載の振動センサは、ケース体の内部に摺動可能に収容される振動伝達子及び圧電振動板と、ケース体の内部の摺動面との間に、第1ダンパ部材が介在しているものである。これにより、対象物へ振動を加える用途の際は、圧電振動板により発生させた振動が、ケース体の摺動面を介してケース体へ伝わることが抑制され、対象物から振動を受ける用途の際は、外因によるケース体の振動が、ケース体の摺動面を介して圧電振動板へ伝わることが抑制されるものとなる。ここで、例えばタイルの剥離検知装置などでは、対象物へ振動を加える振動センサと対象物から振動を受ける振動センサとが、ベース部材に同時に固定されて使用される。本項に記載の振動センサは、そのような用途に使用されても、上述のような第1ダンパ部材が介在しているため、振動を加える振動センサの圧電振動板により発生させた振動が、その振動センサのケース体やベース部材を介して、振動を受ける振動センサへと伝わることが防止され、振動の干渉による誤検知が防止されるものである。
【0012】
(4)上記(2)(3)項において、前記突出孔の、前記ケース体の内部側の縁部と、前記振動伝達子との間に、第2ダンパ部材が配置されている振動センサ(請求項4)。
本項に記載の振動センサは、ケース体に設けられた突出孔の、ケース体の内部側の縁部と、振動伝達子との間に、第2ダンパ部材が配置されたものである。すなわち、振動伝達子は、その先端部がケース体の突出孔から突出する方向へとスプリングにより付勢されているため、上述した突出孔の縁部へと押し付けられるものであり、振動伝達子の先端部が対象物へ当接された状態であっても、部分的に突出孔の縁部へ接触している場合がある。そこで、上述したような位置に第2ダンパ部材が配置されていることで、突出孔の縁部を介して、圧電振動板により発生させた振動がケース体へ伝わることや、外因によるケース体の振動が圧電振動板へ伝わることが抑制されるものとなる。このため、上記(3)項に記載したような2つの用途に同時に使用される場合であっても、振動を加える振動センサの圧電振動板により発生させた振動が、その振動センサのケース体やベース部材を介して、振動を受ける振動センサへと伝わることが防止され、振動の干渉による誤検知が防止されるものである。
【0013】
(5)上記(1)から(4)項において、前記圧電振動板を2枚含み、該2枚の圧電振動板が、金属電極板を挟んで、向かい合わせで電気的及び物理的に接続され、前記配線を介して前記2枚の圧電振動板へ電気信号が印加され、前記振動伝達子を介して前記対象物へ振動を加える加振センサとして使用される振動センサ(請求項5)。
本項に記載の振動センサは、対象物へ振動を加える加振センサとして使用されるものであって、圧電振動板を2枚含んでいる。そして、それら2枚の圧電振動板が、金属電極板を挟んで、向かい合わせで電気的及び物理的に接続されている。このため、2枚の圧電振動板のうちの一方に対して、物理的及び電気的に振動伝達子が接続され、更にもう一方の圧電振動板が電気的に接続され、それらの接続先が、グランド電位が付加される各圧電振動板の電極になっている。
【0014】
また、2枚の圧電振動板に挟まれる金属電極板は、圧電振動板の2つの電極のうち、グランド電位が付加される電極と異なる電極の役割を果たすものとなり、グランド電位と対となる電位が配線を介して付加される。このため、金属電極板を挟んで向かい合わせで接続された2枚の圧電振動板は、配線を介して電気信号が印加されると、双方が同時に振動することになり、圧電振動板が1枚の場合と比較して、発生する振動が増大されるものである。これにより、圧電振動板が小さくなっても、2枚の圧電振動板によりエネルギーが増大された振動が発生するため、圧電振動板が小さくなった場合に懸念されるエネルギー不足が抑制され、振動センサの小型化に対応するものとなる。更に、加振センサへ印加する電気信号として、パワーアンプなどで増幅された電気信号を使用することとすれば、加振センサが小型化されても、対象物へ加える振動として必要十分な大きさの振動が発生されるものである。
【0015】
(6)上記(1)から(4)項において、前記圧電振動板を1枚含み、前記振動伝達子を介して前記対象物から振動を受けて、前記配線を介して前記1枚の圧電振動板から電気信号が取り出される振動センサ(請求項6)。
本項に記載の振動センサは、受振センサとして使用されるものであって、圧電振動板を1枚含んでいる。このため、振動伝達子を介して対象物から受けた振動が、振動伝達子と物理的に接続された1枚の圧電振動板へ伝達され、その伝達された振動から圧電振動板により変換された電気信号が、配線を介して取り出されるものである。そして、取り出された電気信号が、例えばチャージアンプなどによって増幅されることとすれば、受振センサが小型化されても、上記(1)項に記載したようなノイズ対策と相まって、解析のために必要十分な大きさの電気信号が得られるため、圧電振動板が小さくなった場合に懸念される感度不足が解消されものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のような構成であるため、エネルギー不足や感度不足を抑制しつつ、振動センサを小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】加振センサとして使用される、本発明の実施の形態に係る振動センサの構造の一例を示すイメージ構造図である。
図2図1の加振センサの圧電振動板近傍の拡大図である。
図3】加振センサの圧電振動板の電気的接続を示すイメージ図である。
図4】受振センサとして使用される、本発明の実施の形態に係る振動センサの構造の一例を示すイメージ構造図である。
図5図4の受振センサの圧電振動板近傍の拡大図である。
図6】受振センサの圧電振動板の電気的接続を示すイメージ図である。
図7】本発明の実施の形態に係る振動センサが利用された、タイル剥離検知器の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図8図7のタイル剥離検知器の加振センサ及び受振センサの配置例を示す平面図及びイメージ断面図である。
図9図7のタイル剥離検知器の振動入力部から入力するパルス波の例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、また、図面の全体にわたって、同一部分若しくは対応する部分は、同一の符号で示している。
図1図6は、本発明の実施の形態に係る振動センサ10の構造を示している。まず、図1に示されている振動センサ10は、対象物へ振動を加える加振センサ10Aとして使用されるものであって、後述するベース部62へネジ止めなどで固定された状態で図示されている。なお、ここでは、振動を加える対象物を、これに限定されるものではないが、図7に示されたタイルTとして説明するものとする。図1(a)は加振センサ10Aの平面図、図1(b)は加振センサ10Aを側方から視て一部を破断したイメージ断面図である。図示のように、加振センサ10Aは、振動伝達子12、圧電振動板18、ケース体32、摺動部材50、スプリング52、第1ダンパ部材54、及び第2ダンパ部材56を含んでいる。
【0019】
ケース体32は、加振センサ10Aの他の構成要素の大部分を収容するものであって、円筒状の壁部40の両開口端に、平面視円形の蓋部34及び底部44がネジ止めなどで接続された構成を有しており、それらで囲まれた収容空間が内部に形成されている。また、蓋部34には振動伝達子12用の突出孔36が、底部44には後述する配線28用などの貫通孔(図示略)が、それぞれ形成されている。ケース体32は、例えば各種の樹脂などで形成され、特に取り付け先のベース部62との間に介在する底部44は、例えばゴムなどの弾性を有する材料で形成されることで、振動センサ10とベース部62との間の振動の伝達を抑制するダンパ部材(第3ダンパ部材)44として機能するようになっている。なお、振動センサ10をベース部62へ固定するための取付ネジを、ベース部62及びケース体32の底部44へのみ挿通させることで、底部44により取付ネジをフローティングしてもよい。また、これに限定されるものではないが、ケース体32の外径は、例えば24mm程度である。
【0020】
振動伝達子12は、図2にも図示されているように、先端が丸みを帯びた円錐状の先端部14、先端部14の下端に接続された円柱部15、及び円柱部15の下端に接続されて円柱部15より径が大きい円板部16を有し、円板部16を貫通して円柱部15まで延びる円柱状の内部空間が形成されている。加振センサ10Aの振動伝達子12は、その先端部14がタイルTへ当接された状態で、後述するように圧電振動板18により発生された振動をタイルTへ伝達するものである。更に、振動伝達子12は、上記のような形状であることで、圧電振動板18とタイルTとの音響インピーダンスを整合する役割も果たしている。振動伝達子12は、例えば導電性を有する金属などの材料で形成される。
【0021】
また、振動伝達子12は、ケース体32の内部において、後述するようにスプリング52によって図1(b)における上方へと付勢されており、その円柱部15の一部及び先端部14が、ケース体32の蓋部34に設けられた突出孔36から、ケース体32の外部へと突出している。すなわち、突出孔36は、円柱部15の外径より大きく、且つ、円板部16の外径よりも小さい内径を有している。このような状態で、円板部16の上面と蓋部34の突出孔36の縁部36aとの間には、第2ダンパ部材56が介在している。第2ダンパ部材56は、本実施形態では円板部16側に取り付けられて円柱部15が挿通された環状のものであり、振動伝達子12と共に図1(b)における上下方向へ移動するようになっている。第2ダンパ部材56は、例えばゴムなどの弾性を有する材料で形成されており、振動伝達子12と蓋部34(ケース体32)との間の振動の伝達を抑制するようになっている。
【0022】
圧電振動板18は、ここでは加振用圧電振動板18とも呼称し、図2に示すように、2枚の圧電振動板18a、18bが、金属電極板24を挟んで接続された構成を有している。すなわち、図3も参照して、本実施形態において、2枚の圧電振動板18a、18bは、各々がセラミック板20と金属板22とを有し、双方のセラミック板20側が向かい合わせで、金属電極板24に対して電気的及び物理的に接続されている。また、圧電振動板18aの金属板22と圧電振動板18bの金属板22とが、接続部25を介して電気的に接続されている。なお、2枚の圧電振動板18a、18bの各々には、コスト低減の観点から市販の圧電振動板を使用することが望ましく、また、これに限定されるものではないが、圧電振動板18a、18bの外径は12mm程度である。
【0023】
そして、2本の配線28が、金属電極板24と一方の金属板22(本実施形態では圧電振動板18bの金属板22)とに半田付けなどで接続されることで、2枚の圧電振動板18a、18bのセラミック板20側と金属板22側とに、対となる2つの電位(図3では「+」「-」と図示)が付加されるようになっている。このとき、金属板22側には、グランド電位が付加される。また、2枚の圧電振動板18a、18bのうち、図中上方に位置する圧電振動板18aの金属板22には、例えばペースト半田やエポキシ系接着剤などにより、振動伝達子12の円板部16が電気的及び物理的に接続されている。このため、振動伝達子12には、一方の配線28及び金属板22を介して、グランド電位が付加されるようになっている。
【0024】
図1及び図2を参照して、加振用圧電振動板18の図中下側(圧電振動板18b側)には、第1ダンパ部材54が配置されている。本実施形態の第1ダンパ部材54は、図2に示すように、紙面と直交する方向に2つ割りにされた第1部材54aと、円筒状の第2部材54bとで構成されている。第2部材54bの下方には、円環状のシム57が配置されている。そして、図2に図示された、振動伝達子12、第2ダンパ部材56、加振用圧電振動板18、第1ダンパ部材54、及びシム57は、図1に示すように、第1ダンパ部材54及びシム57がカップ状の摺動部材50に収容されることで、摺動部材50を介して、ケース体32の内部を摺動面40aに沿って図中上下方向に摺動可能になっている。
【0025】
また、摺動部材50とケース体32の底部44との間において、スプリング52は、図2に図示された部材を摺動部材50と共に、図中上方向へと付勢するように設置されている。このため、通常状態において、振動伝達子12は、第2ダンパ部材56を挟んでケース体32の蓋部34へと押し付けられている。また、上述したような位置に配置された第1ダンパ部材54は、例えばゴムなどの弾性を有する材料で形成されることで、圧電振動板18と摺動部材50との間、換言すれば圧電振動板18とケース体32との間の、振動の伝達を抑制するようになっている。
【0026】
上記のような構成の加振センサ10Aは、振動伝達子12の先端部14がタイルTへ当接された状態で、配線28を介して圧電振動板18に振動発生用の電気信号が印加されると、圧電振動板18により振動が発生される。すると、発生した振動が、圧電振動板18に物理的に接続された振動伝達子12を介してタイルTへと伝達され、タイルTへ振動が加えられるものである。ここで、図1及び図2を参照して、圧電振動板18へ接続される配線28は、例えば、圧電振動板18から、2つ割りの第1部材54aの割れ目、円筒状の第2部材54bの中心孔、円環状のシム57の中心孔、摺動部材50に設けられた貫通孔、及び底部44に設けられた貫通孔などを通って、ケース体32の内部から外部へとルーティングされる。
【0027】
次に、図4図6に図示された、対象物(タイルT)から振動を受ける受振センサ10Bとして使用される、本発明の実施の形態に係る振動センサ10について説明する。しかしながら、受振センサ10Bは、図1図3に示した加振センサ10Aと、圧電振動板18の構成のみが異なるものである。このため、ここでは圧電振動板18に関する点について説明することとし、加振センサ10Aと同様の構成部分については説明を省略する。
受振センサ10Bの圧電振動板18は、ここでは受振用圧電振動板18とも呼称し、図5及び図6に示すように、1枚の圧電振動板18で構成されている。そして、2本の配線28が、その1枚の圧電振動板18のセラミック板20側と金属板22側とに半田付けなどで接続されることで、それらに対となる2つの電位(図6では「+」「-」と図示)が付加されるようになっている。このとき、金属板22側には、グランド電位が付加される。
【0028】
また、受振用圧電振動板18の金属板22には、例えば銀ペーストとエポキシ系接着剤又は導電性接着剤などにより、振動伝達子12の円板部16が電気的及び物理的に接続されている。このため、振動伝達子12には、一方の配線28及び金属板22を介して、グランド電位が付加される。受振用圧電振動板18の図中下側には、第1ダンパ部材54とシム57とが配置されている。このような構成の受振センサ10Bは、振動伝達子12の先端部14がタイルTへ当接された状態で、タイルTが振動していると、その振動が振動伝達子12へ伝わり、更に振動伝達子12と物理的に接続された圧電振動板18へと伝達される。すると、伝達された振動が、圧電振動板18によって電気信号へと変換され、それが受振電気信号として配線28を介して取り出されるものである。
【0029】
続いて、図7は、上述したような本発明の実施の形態に係る振動センサ10を使用した、タイル剥離検知器60の構成を概略的に示している。図示のように、タイル剥離検知器60は、建築物に利用されているタイルTの剥離を検知するものであり、振動入力部66、複数の振動センサ10、及び解析部74を含んでいる。複数の振動センサ10は、本実施形態では、1つの加振センサ10Aと、6つの受振センサ10Bとを含んでいる。加振センサ10Aは、図1図3に関連して説明したように、振動伝達子12が対象物としてのタイルTへ当接された状態で、タイルTへ振動を加えるためのものであり、受振センサ10Bは、図4図6に関連して説明したように、振動伝達子12が対象物としてのタイルTへ当接された状態で、タイルTから振動を受けるためのものである。
【0030】
上述した複数の振動センサ10は、例えば図8に示すような位置関係で、板状のベース部62に固定される。すなわち、図8(b)で確認できるように、1つの加振センサ10Aが、平面視で長方形をなすベース部62の中央近傍に固定され、その加振センサ10Aを囲うようにして、6つの受振センサ10Bが配置されている。より詳しくは、1つ加振センサ10A及び6つの受振センサ10Bが、略等間隔で加振センサ10Aを中心とした千鳥格子状に配置されている。このような配置は、図8(b)に二点鎖線で示されているような大きさ及び形状のタイルTに適合されたものであり、これに限定されるものではないが、そのタイルTの大きさは例えば95mm×45mmである。これに対応するベース部62の大きさの例として、図8(b)に示される横幅Wが約130mm、縦幅Dが約95mmである。
【0031】
また、加振センサ10A及び受振センサ10Bの各々は、第3ダンパ部材(ケース体32の底部)44を介して、ネジ止めなどによってベース部62へ固定されている。ベース部62には、その複数の振動センサ10が取り付けられた面とは反対側の面の両端部に、コの字状の2つの把持部材86が取り付けられている。なお、図8(a)には、図8(b)における上下方向の中心近傍でのイメージ断面を示し、図8(c)には、図8(b)における左右方向の中心近傍でのイメージ断面を示しているが、各振動センサ10の内部の図示は省略している。
【0032】
図7に戻り、振動入力部66は、加振センサ10Aへ振動発生用の電気信号を印加するためのものであって、本実施形態では、信号発生器68及びパワーアンプ70を含んでいる。信号発生器68は、振動発生用の電気信号を発生するものであり、本実施形態ではそのような電気信号として、例えば図9に示すような正弦半波(ハーフサイン波)90の単発のパルス波を繰り返し発生する。これらに限定されるものではないが、正弦半波90は、例えば周波数が14kHz、出力電圧が10Vp-p、デューティサイクルが80msである。また、パワーアンプ70は、信号発生器68により発生させた電気信号を増幅させるものであって、例えば信号発生器68で10Vp-pの電気信号が発生された場合、それを50Vp-p~100Vp-p程度まで増幅させる。そして、このように増幅された振動発生用の電気信号が、配線28などを介して加振センサ10Aへと印加される。信号発生器68及びパワーアンプ70には、任意の信号発生装置及びパワーアンプを使用してよい。
【0033】
解析部74は、受振センサ10Bの各々から配線28などを介して受ける電気信号を解析するためのものであって、本実施形態では、チャージアンプ76、AD変換器78、FFT解析部80、及び表示部82を含んでいる。チャージアンプ76は、受振センサ10Bから受ける受振電気信号を増幅させるものであって、解析に必要な電圧まで受振電気信号を増幅させる。このとき、ハイパスフィルタを用いて、生活振動などの低い周波数成分を除去するようにしてもよい。また、受振センサ10Bからチャージアンプ76までの経路やチャージアンプ76には、可能な限りのノイズ対策を施すことが好ましい。チャージアンプ76には、多チャンネルの任意のチャージアンプを使用してよい。
【0034】
AD変換器78は、チャージアンプ76によって増幅された受振電気信号を、アナログ信号からデジタル信号へと変換するものであり、後述するFFT解析に必要なサンプリングレート及び分解能で変換を行う。例えば、信号発生器68で周波数14kHzの正弦半波90を発生させていた場合は、40kHz程度でサンプリングを行い、分解能は16bit程度でよい。また、AD変換器78は、複数の受振センサ10Bからの受振電気信号がチャージアンプ76によって増幅された各々の信号をAD変換するため、上記のような性能を有する多チャンネルの任意のAD変換装置が使用される。
【0035】
FFT解析部80は、AD変換器78によってデジタル信号へと変換された受振電気信号をFFT解析するものであって、例えばFFT解析を行うソフトウェアがインストールされた任意のコンピュータで構成される。FFT解析では、AD変換器78からのデジタル信号を高速フーリエ変換により周波数成分に分解し、その結果のピーク周波数及びピーク電圧から、タイルTの剥離状況を推察する。また、FFT解析部80は、複数の受振センサ10Bからの受振電気信号を個別でFFT解析し、各受振センサ10Bと加振センサ10Aとの位置関係を使用して、タイルTで剥離が発生している部分を推定する。このとき、剥離が発生していると推定された位置や度合いなどに応じて、タイルTが健全に接着されているか否かを判定してもよい。表示部82は、FFT解析部80での解析結果などを表示するものであって、任意のディスプレイ装置が使用される。
【0036】
上記のような構成のタイル剥離検知器60は、使用時に、図8に示されたようにベース部62に固定された複数の振動センサ10が、例えば図8(b)に二点鎖線で示された位置を目安にしてタイルTへと押し付けられ、全ての振動センサ10の振動伝達子12がタイルTへ当接される。この状態で、振動入力部66の信号発生器68から図9に示すような正弦半波90が発生され、それがパワーアンプ70によって増幅されて、加振センサ10Aへ印加される。加振センサ10は、印加された電気信号から振動を発生させ、それをタイルTへと加える。すると、タイルTの剥離が発生していない部分では、タイルTの接着先へも振動が伝搬するため、振動エネルギーが小さくなってタイルT内を伝搬し、タイルTの剥離が発生している部分では、タイルTの接着先へ伝搬する振動が小さいため、振動エネルギーの損失が少ない状態でタイルT内を伝搬する。このようにしてタイルT内を伝搬した振動が、各受振センサ10Bによって受けられ、それが電気信号へ変換されて解析部74へ送られる。解析部74では、チャージアンプ76によって複数の振動センサ10からの電気信号が増幅され、それがAD変換器78によってデジタル信号へと変換された後、FFT解析部80によってFFT解析され、タイルT剥離の推定などが行われる。
【0037】
ここで、本発明の実施の形態に係る振動センサ10は、図1図6の構成に限定されるものではなく、振動を加える又は受ける対象物や状況などに応じて、図1図6に示した構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成であってもよい。すなわち、振動センサ10は、対象物がタイルT以外のものであってもよく、例えば建築物などに使用されている様々な部材へ振動を加える、又は振動を受ける用途で使用されてよい。また、振動伝達子12、ケース体32、摺動部材50、及び各ダンパ部材44、54、56の形状や大きさなどは、振動センサ10の用途や目的などに合わせて、任意に設定してよい。
【0038】
一方、本発明の実施の形態に係る振動センサ10を使用するタイル剥離検知器60の構成も、図7の構成に限定されるものではなく、検査対象のタイルTや状況などに応じて、図7に示した構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成であってもよい。例えば、複数の振動センサ10は、加振センサ10A及び受振センサ10Bの数量や位置関係が、タイルTの大きさなどに応じて変更されてもよく、一例として、図8(b)の例における加振センサ10Aと受振センサ10Bとの数量及び位置が入れ替わってもよい。また、加振センサ10A又は受振センサ10Bを囲うようにして、4つや8つの受振センサ10B又は加振センサ10Aが配置されてもよく、加振センサ10Aと受振センサ10Bとの双方が複数含まれていてもよい。
【0039】
更に、加振センサ10Aの配線28の接続先と、受振センサ10Bの配線28の接続先とを入れ替えることで、加振センサ10Aと受振センサ10Bとの位置を物理的に交換することなく、振動を加える又は受ける役割のみを入れ替えてもよい。また、振動入力部66から加振センサ10Aへ入力する電気信号は、図9に示したような正弦半波90に限定されるものではなく、他の形状の単発のパルス波やスウィープ波を入力してもよい。加えて、例えば、図8に示したような1枚のタイルTに使用するための構成を、図7の他の必要な構成要素も含めて複数セット用意し、それらを検査対象のタイルTの配列に合わせた位置関係で組み合わせて、複数枚のタイルTを同時に検査するようにしてもよい。
【0040】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る振動センサ10は、対象物(例えば図7のタイルT)へ振動を加える、或いは対象物から振動を受けるためのものであり、図1及び図4に示すように、振動伝達子12、圧電振動板18、及びケース体32を含んでいる。振動伝達子12は、振動の出力先又は入力元である対象物へ当接される先端部14を有しており、その先端部14を介して、対象物へ振動を伝達する、或いは対象物からの振動を取り込むものである。圧電振動板18は、電気信号を印加する又は取り出すための配線28に接続されており、配線28から印加された電気信号から振動を発生、或いは、振動を電気信号へ変換して配線28へ送信するものである。ケース体32は、振動伝達子12及び圧電振動板18を内部に収容するものであって、このとき、ケース体32に形成された突出孔36から振動伝達子12の先端部14が突出する態様で、振動伝達子12及び圧電振動板18を収容する。
【0041】
また、振動伝達子12と圧電振動板18とは、電気的及び物理的に接続されており、物理的に接続されていることで、振動伝達子12と圧電振動板18との間で振動が直接的に伝達される。すなわち、対象物へ振動を加える用途の際は、配線28から印加された電気信号から圧電振動板18により振動が発生され、その発生された振動が圧電振動板18から振動伝達子12へと直接的に伝達され、更に振動伝達子12から対象物へと振動が伝達されるものである。これに対し、対象物から振動を受ける用途の際は、対象物からの振動が振動伝達子12を介して取り込まれ、その振動が振動伝達子12から圧電振動板18へと直接的に伝達され、更に伝達された振動が圧電振動板18により電気信号へ変換されて配線28へ送信されるものである。
【0042】
更に、振動伝達子12と圧電振動板18とが電気的に接続され、振動伝達子12がグランド電位に設定されている。すなわち、振動伝達子12は、図3及び図6に示すように、圧電振動板18の2つの電極のうちの一方の電極と電気的に接続され、その一方の電極に配線28を介してグランド電位が付加されるものである。このようにして、振動伝達子12がグランド電位に設定されることにより、対象物へ当接される振動伝達子12に起因するノイズを大幅に低減することができる。これにより、取り込んだ振動から圧電振動板18により変換した電気信号のレベルが小さいといった、圧電振動板18が小さくなった場合に想定される事象が発生しても、上述したノイズ対策により必要なS/N比などを確保することができるため、エネルギー不足や感度不足を抑制しつつ、振動センサ10の小型化に寄与することが可能となる。
【0043】
また、本発明の実施の形態に係る振動センサ10は、図1及び図4に示すように、ケース体32の内部に収容される振動伝達子12と圧電振動板18とが、振動伝達子12の先端部14がケース体32の突出孔36から突出する方向と平行な方向(図中上下方向)に摺動可能に収容されたものである。更に、振動伝達子12及び圧電振動板18は、摺動可能な一方の方向である、振動伝達子12の先端部14の突出方向(図中上方向)へとスプリング52によって付勢されている。このため、振動伝達子12の先端部14が対象物へ当接されると、振動伝達子12及びそれに接続された圧電振動板18は、ケース体32の内部で先端部14の突出方向と反対方向(図中下方向)へ僅かに摺動されつつ、対象物の方向へとスプリング52によって付勢された状態になる。これにより、対象物に凹凸などがあっても、振動伝達子12の先端部14を対象物に対して確実に接触させることができ、また、複数の振動センサ10が対象物へ同時に当接されるような場合であっても、全ての振動センサ10への荷重を略均等にした状態で対象物へ接触させることができる。
【0044】
更に、本発明の実施の形態に係る振動センサ10は、ケース体32の内部に摺動可能に収容される振動伝達子12及び圧電振動板18と、ケース体32の内部の摺動面40aとの間に、第1ダンパ部材54が介在しているものである。図示の例では、振動伝達子12及び圧電振動板18と摺動部材50との間に、第1ダンパ部材54が介在している。これにより、対象物へ振動を加える用途の際は、圧電振動板18により発生させた振動が、ケース体32の摺動面40aを介してケース体32へ伝わることを抑制することができ、対象物から振動を受ける用途の際は、外因によるケース体32の振動が、ケース体32の摺動面40aを介して圧電振動板18へ伝わることを抑制することができる。
【0045】
ここで、例えばタイル剥離検知器60(図7及び図8参照)などでは、対象物へ振動を加える加振センサ10Aと対象物から振動を受ける受振センサ10Bとが、ベース部62に同時に固定されて使用される。本発明の実施の形態に係る振動センサ10は、そのような用途に使用されても、上述のような第1ダンパ部材54が介在しているため、加振センサ10Aの圧電振動板18により発生させた振動が、加振センサ10Aのケース体32やベース部62を介して、受振センサ10Bへと伝わることを防止することができ、振動の干渉による誤検知を防止することが可能となる。
【0046】
また、本発明の実施の形態に係る振動センサ10は、ケース体32に設けられた突出孔36の、ケース体32の内部側の縁部36aと、振動伝達子12との間に、第2ダンパ部材56が配置されたものである。すなわち、振動伝達子12は、その先端部14がケース体32の突出孔36から突出する方向へとスプリング52により付勢されているため、上述した突出孔36の縁部36aへと押し付けられるものであり、振動伝達子12の先端部14が対象物へ当接された状態であっても、部分的に突出孔36の縁部36aへ接触している場合がある。そこで、上述したような位置に第2ダンパ部材56が配置されていることで、突出孔36の縁部36aを介して、圧電振動板18により発生させた振動がケース体32へ伝わることや、外因によるケース体32の振動が圧電振動板18へ伝わることを抑制することができる。このため、タイル剥離検知器60におけるような2つの用途に同時に使用される場合であっても、振動を加える加振センサ10Aの圧電振動板18により発生させた振動が、その加振センサ10Aのケース体32やベース部62を介して、振動を受ける受振センサ10Bへと伝わることを防止することができ、振動の干渉による誤検知を防止することができる。
【0047】
加えて、本発明の実施の形態に係る振動センサ10は、図1図3に示すような、対象物へ振動を加える加振センサ10Aとして使用される場合に、2枚の圧電振動板18a、18bを含んでいる。そして、それら2枚の圧電振動板18a、18bが、金属電極板24を挟んで、向かい合わせで電気的及び物理的に接続されている。このため、2枚の圧電振動板18a、18bのうちの一方の圧電振動板18aに対して、物理的及び電気的に振動伝達子12が接続され、更にもう一方の圧電振動板18bが電気的に接続され、それらの接続先が、グランド電位が付加される各圧電振動板18の電極になっている。また、2枚の圧電振動板18a、18bに挟まれる金属電極板24は、圧電振動板18の2つの電極のうち、グランド電位が付加される電極と異なる電極の役割を果たすものとなり、グランド電位と対となる電位が配線28を介して付加される。
【0048】
このため、金属電極板24を挟んで向かい合わせで接続された2枚の圧電振動板18a、18bは、配線28を介して電気信号が印加されると、双方が同時に振動することになり、圧電振動板18が1枚の場合と比較して、発生する振動を増大させることができる。これにより、圧電振動板18が小さくなっても、2枚の圧電振動板18a、18bによりエネルギーを増大させた振動が発生するため、圧電振動板18が小さくなった場合に懸念されるエネルギー不足を抑制することができ、振動センサ10の小型化に対応することが可能となる。更に、加振センサ10Aへ印加する電気信号として、パワーアンプ70(図7参照)などで増幅させた電気信号を使用することとすれば、加振センサ10Aが小型化されても、対象物へ加える振動として必要十分な大きさの振動を発生させることが可能となる。
【0049】
また、本発明の実施の形態に係る振動センサ10は、図4図6に示すような、受振センサ10Bとして使用される場合に、1枚の圧電振動板18を含んでいる。このため、振動伝達子12を介して対象物から受けた振動が、振動伝達子12と物理的に接続された1枚の圧電振動板18へ伝達され、その伝達された振動から圧電振動板18により変換された電気信号が、配線28を介して取り出されるものである。そして、取り出された電気信号を、例えばチャージアンプ76(図7参照)などによって増幅させることとすれば、受振センサ10Bが小型化されても、振動伝達子12にグランド電位を付加するノイズ対策と相まって、解析のために必要十分な大きさの電気信号を得ることができるため、圧電振動板18が小さくなった場合に懸念される感度不足を解消することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
10:振動センサ、10A:加振センサ、10B:受振センサ、12:振動伝達子、14:先端部、18(18a、18b):圧電振動板、24:金属電極板、28:配線、32:ケース体、36:突出孔、36a:縁部、40a:摺動面、52:スプリング、54:第1ダンパ部材、56:第2ダンパ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9