(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031643
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】配線基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/10 20060101AFI20230302BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H05K3/10 E
H05K3/18 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137262
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】山地 範男
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA17
5E343BB02
5E343BB24
5E343BB25
5E343CC62
5E343CC73
5E343DD03
5E343DD33
5E343DD43
5E343GG02
5E343GG16
(57)【要約】
【課題】配線基板の信頼性を向上させる。
【解決手段】配線基板1は、絶縁層2と、絶縁層2の上面7上に形成された導体パターン3と、絶縁層2の下面8上に形成された導体パターン4と、絶縁層2の開口部内に形成された電極6と、を備えている。電極6は、導体パターン3と導体パターン4とを電気的に接続する。電極6は、導体パターン3と一体的に形成されており、絶縁層2の上面7側において、電極6の表面は、導体パターン3の表面に対して窪んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する開口部と、を有する絶縁層と、
前記絶縁層の前記第1主面上に形成された第1導体パターンと、
前記絶縁層の前記第2主面上に形成された第2導体パターンと、
前記開口部内に形成され、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとを電気的に接続する電極と、
を備え、
前記電極は、前記第2導体パターンと一体的に形成されており、
前記第2主面側において、前記電極の表面は、前記第2導体パターンの表面に対して窪んでいる、配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板において、
前記第1導体パターンの一部は、前記第1主面側において、前記開口部を覆っている、配線基板。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板において、
前記第2主面側において、前記電極の表面は、前記第2主面よりも高さ位置が低い部分を有する、配線基板。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板において、
前記第2導体パターンおよび前記電極は、シード層と、前記シード層上に形成されためっき層とを有する、配線基板。
【請求項5】
請求項4記載の配線基板において、
前記シード層は、前記第2主面上と前記開口部の側壁上とに形成されている、配線基板。
【請求項6】
請求項5記載の配線基板において、
前記シード層は、複数の金属粒子が結合した構造を有する、配線基板。
【請求項7】
請求項5記載の配線基板において、
前記シード層は、複数の銅粒子が結合した構造を有する、配線基板。
【請求項8】
請求項5記載の配線基板において、
前記シード層は、複数の銀粒子が結合した構造を有する、配線基板。
【請求項9】
請求項5記載の配線基板において、
前記シード層は、金属ペーストにより形成されている、配線基板。
【請求項10】
請求項9記載の配線基板において、
前記金属ペーストは、金属ナノ粒子を含有する、配線基板。
【請求項11】
(a)第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する開口部と、前記第1主面上に形成された第1導体パターンと、を有する絶縁層を用意する工程、
(b)前記絶縁層の前記第2主面上に第2導体パターンを形成し、前記開口部内に電極を形成する工程、
を含み、
前記電極は、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとを電気的に接続し、
前記電極は、前記第2導体パターンと一体的に形成され、
前記電極の表面は、前記第2導体パターンの表面に対して窪んでいる、配線基板の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の配線基板の製造方法において、
前記第1導体パターンの一部は、前記第1主面側において、前記開口部を覆っている、配線基板の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の配線基板の製造方法において、
前記第2主面側において、前記電極の表面は、前記第2主面よりも高さ位置が低い部分を有する、配線基板の製造方法。
【請求項14】
請求項11記載の配線基板の製造方法において、
前記(b)工程は、
(c)前記絶縁層の前記第2主面上と前記開口部の側壁上とに、シード層を形成する工程、
(d)前記シード層上に、めっき層を形成する工程、
を含み、
前記第2導体パターンおよび前記電極は、前記シード層と前記めっき層とにより形成される、配線基板の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の配線基板の製造方法において、
前記(c)工程では、金属ペーストを用いて前記シード層を形成し、
前記(d)工程では、電解めっき法により、前記めっき層を形成する、配線基板の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の配線基板の製造方法において、
前記金属ペーストは、金属ナノ粒子を含有する、配線基板の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の配線基板の製造方法において、
前記金属ナノ粒子は、銅ナノ粒子または銀ナノ粒子である、配線基板の製造方法。
【請求項18】
請求項16記載の配線基板の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c1)前記絶縁層の前記第2主面上と前記開口部の側壁上とに、前記金属ペーストを印刷法により供給する工程、
(c2)前記(c1)工程後で、前記(d)工程前に、前記金属ペーストに熱処理を施す工程、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の配線基板の製造方法において、
前記(c2)工程では、250℃から300℃の温度範囲で前記熱処理を施す、配線基板の製造方法。
【請求項20】
請求項15記載の配線基板の製造方法において、
前記絶縁層は、シリカフィラーを含有する、配線基板の製造方法。
【請求項21】
請求項15記載の配線基板の製造方法において、
前記絶縁層は、酸化シリコンの誘電率以下の誘電率を有する、配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の回路形成において種々の形成方法が提案されている。その中で、例えばアディティブ方式では、銅パターンを必要なところに形成し絶縁層を介して積層していくことで多層板となる。ところで、多層に形成された配線パターンは、各々表裏の関係となる層間で貫通穴を設けて電気的に導通させビア・フィリングとする必要がある。また、これらの配線パターンやビア・フィリングでは、銅の無電解めっきによるシード層を形成し、その後電解めっきで銅を積層する方法が一般的に行われている。
【0003】
また、一方で、昨今の配線基板では、5Gを始めとして高速信号伝搬用途が出現してきており、それに伴い使用される絶縁層はこれまでのFR4材を使用した配線基板から、低誘電率となる材料の必要性が高まっている。
【0004】
特開2018-195754号公報(特許文献1)には、層間絶縁膜貫通電極に関する技術が記載されている。
【0005】
特開2019-62113号公報(特許文献2)には、配線層の製造方法に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-195754号公報
【特許文献2】特開2019-62113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絶縁体の低誘電率化を実現するために、例えば、エポキシ系の基材にフィラーとしてSiO2(酸化シリコン、シリカ)が含有された材料がある。この絶縁材を用いた絶縁層の表裏に形成された配線間の導通を取るためには、要所毎にビアを形成して表裏間で電気的に導通させる必要があり、そのためには先ずレーザー等により貫通穴を絶縁層に形成する。ここで、レーザー光による絶縁層への貫通穴の形成は瞬時の高熱を伴う加工となるため、貫通穴の側壁面では基体となるエポキシが昇華してSiO2がリッチな状態となっている。この状態で貫通穴の側壁面にシード層となる銅を無電解めっきで形成しようとすると、次のような懸念が生ずる。すなわち、SiO2上に無電解めっきで銅を付着させる必要があるが、SiO2自体の誘電率が約4であることでLow-k材の分類となるため、無電解の銅めっきの還元剤となるパラジウムを化学的な結合で付着させる官能基がSiO2上には生成し難くなるため、シード層となるはずの銅が形成できない。また、例え形成できたとしても、貫通穴の側壁面との密着力が悪く信頼性に問題を抱えることになる。
【0008】
更には、配線形成後の配線基板に半導体素子をワイヤーボンディングやフェースダウン等の手法により実装を行った後、エポキシ系の樹脂で封止される。この時、特にハイパワー系の用途等では高熱を伴うことになるため、膨張収縮を繰り返した結果、各部材間の線膨張係数の差による配線基板と封止樹脂との間での剥離が懸念される。
【0009】
配線基板および配線基板を用いて製造した電子装置において、信頼性を向上させることが望まれる。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施の形態によれば、配線基板は、開口部を有する絶縁層と、前記絶縁層の第1主面上に形成された第1導体パターンと、前記絶縁層の第2主面上に形成された第2導体パターンと、前記開口部内に形成され、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとを電気的に接続する電極と、を備えている。前記電極は、前記第2導体パターンと一体的に形成されている。前記第2主面側において、前記電極の表面は、前記第2導体パターンの表面に対して窪んでいる。
【0012】
一実施の形態によれば、配線基板の製造方法は、(a)第1主面および第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する開口部と、前記第1主面上に形成された第1導体パターンと、を有する絶縁層を用意する工程、(b)前記絶縁層の前記第2主面上に第2導体パターンを形成し、前記開口部内に電極を形成する工程、を含む。前記電極は、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとを電気的に接続する。前記電極は、前記第2導体パターンと一体的に形成され、前記電極の表面は、前記第2導体パターンの表面に対して窪んでいる。
【発明の効果】
【0013】
一実施の形態によれば、高信頼性を有する配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施の形態の配線基板の要部断面図である。
【
図2】一実施の形態の配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図3】
図2に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図4】
図3に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図5】
図4に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図6】
図5に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図7】
図6に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図9】
図8に示される検討例の配線基板上に絶縁体が形成された状態を示す要部断面図である。
【
図10】
図1に示される配線基板上に絶縁体が形成された状態を示す要部断面図である。
【
図11】他の実施の形態の配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図12】
図11に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図13】
図12に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図14】
図13に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図15】他の実施の形態の配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図16】
図15に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図17】
図16に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【
図18】
図17に続く配線基板の製造工程中の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0016】
(実施の形態1)
<配線基板の構造について>
図1を参照して、本実施の形態の配線基板1の構造について説明する。
図1は、本実施の形態の配線基板1の要部断面図である。
【0017】
配線基板(プリント基板)1は、絶縁層2と、絶縁層2の上面(主面)7上に形成された導体パターン(導体層)3と、絶縁層2の下面(主面)8上に形成された導体パターン(導体層)4と、絶縁層2の開口部(貫通孔)5内に形成された電極(ビア電極、貫通電極)6と、を有している。
【0018】
ここで、絶縁層2の下面8に形成される導体パターン4は、実際には支持板(後述の支持板21に対応)上にアディティブ方式等を使用して形成されるが、支持板を含めた構造は図示していない。
【0019】
開口部5は、断面の形状が略直方体となる絶縁層2の上面7と反対側の下面8とを貫通するように形成されている。この時、開口部5は絶縁層2の下面8に配置された導体パターン4上に形成され、その導体パターン4は上面7に形成された導体パターン3と電極6を介して電気的に接続する。この時、電極6の上面7側は窪み部9を有するようにする。具体的には、窪み部9の底部は、絶縁層2の上面7よりも低くするのが望ましい。
【0020】
また、配線基板1を半導体ユニットとして構成するためには、上面7に半導体素子(半導体チップ)をベアチップとして搭載してバンプ接続やワイヤーボンディング接続することにより成し得るが、必要となる外装めっきやベアチップ、接続形態等は図示していない。
【0021】
以下、具体的に説明する。
【0022】
絶縁層2は、絶縁性の基材層(ベース層)として機能する。絶縁層2の上面7と下面8とは、互いに反対側に位置する主面である。導体パターン3により、絶縁層2の上面7上に、すなわち配線基板1の上面側に、配線、端子または電極などが形成される。また、導体パターン4により、絶縁層2の下面8上に、すなわち配線基板1の下面側に、配線、端子または電極などが形成される。
【0023】
電極6は、配線基板1の上面側の導体パターン3と、配線基板1の下面側の導体パターン4とを、電気的に接続するために設けられている。例えば、
図1の場合は、配線基板1の上面側の導体パターン3は、導体パターン3a,3bを含んでおり、配線基板1の下面側の導体パターン4は、導体パターン4a,4b,4cを含んでおり、配線基板1の上面側の導体パターン3aと、配線基板1の下面側の導体パターン4aとが、電極6を介して電気的に接続されている。電極6は、絶縁層2に形成された開口部5内に設けられている。開口部5は、絶縁層2に形成された貫通孔であり、絶縁層2の上面7と下面8との間を貫通している。絶縁層2は、低誘電率の絶縁層であることが好ましく、酸化シリコン(SiO
2)の誘電率以下の誘電率を有することがより好ましい。絶縁層2は、例えば、酸化シリコンのフィラー(シリカフィラー)を含有することにより、低誘電率化されている。
【0024】
配線基板1の下面側の導体パターン4は、導電層からなるが、好ましくは金属層からなり、更に好ましくは、銅(Cu)層からなる。配線基板1の上面側の導体パターン3は、導電層からなるが、好ましくは金属層からなり、更に好ましくは、銅(Cu)層からなる。導体パターン3は、シード層11と、シード層11上に形成されためっき層(電解めっき層)12とからなる。すなわち、配線基板1の上面側の導体パターン3は、シード層11とシード層11上のめっき層12との積層膜からなる。めっき層12は、電解めっき法により形成された電解めっき層であり、金属からなる。シード層11は、めっき層12を電解めっき法で形成する際のシード層として機能する。シード層11は、銅(Cu)または銀(Ag)からなることが好ましく、めっき層12は、銅(Cu)からなることが好ましい。このため、シード層11は、好ましくは銅または銀のシード層であり、めっき層12は、好ましくは銅めっき層である。
【0025】
絶縁層2の開口部5内の電極6は、配線基板1の上面側の導体パターン3と同工程で形成されており、配線基板1の上面側の導体パターン3と一体的に形成されている。例えば、
図1の場合は、絶縁層2の開口部5内の電極6は、配線基板1の上面側の導体パターン3aと一体的に形成されている。このため、絶縁層2の開口部5内の電極6も、シード層11と、シード層11上に形成されためっき層12とからなる。シード層11とシード層11上のめっき層12との積層膜のうち、絶縁層2の上面7上に形成(配置)されている部分が、導体パターン3であり、シード層11とシード層11上のめっき層12との積層膜のうち、開口部5内に形成(配置)されている部分が、電極6である。すなわち、導体パターン3は、絶縁層2の上面7上に形成(配置)されているシード層11とその上のめっき層12とからなり、また、電極6は、絶縁層2の開口部5内に形成(配置)されているシード層11およびめっき層12からなる。
図1の場合は、絶縁層2の開口部5内の電極6を構成するシード層11は、絶縁層2の上面7上の導体パターン3aを構成するシード層11と一体的に形成されており、かつ、絶縁層2の開口部5内の電極6を構成するめっき層12は、絶縁層2の上面7上の導体パターン3aを構成するめっき層12と一体的に形成されている。
【0026】
絶縁層2の下面8において、絶縁層2の開口部5は導体パターン4(
図1の場合は導体パターン4a)により覆われている。すなわち、絶縁層2の下面8において、開口部5を覆うように、導体パターン4(
図1の場合は導体パターン4a)が形成されている。このため、絶縁層2の開口部5の底面は、開口部5を覆う部分の導体パターン4(
図1の場合は導体パターン4a)により構成されている。電極6を構成するシード層11は、絶縁層2の開口部5内において、絶縁層2の開口部5の側壁(側面)上と、絶縁層2の開口部5の底面上(すなわち絶縁層2の下面8側において開口部5を覆う導体パターン4上)とに、形成されている。電極6を構成するめっき層12は、絶縁層2の開口部5内において、シード層11上に形成されている。
【0027】
電極6(より特定的には電極6を構成するシード層11)は、開口部5を覆う導体パターン4aと接することにより、その導体パターン4aと電気的に接続されている。また、電極6(より特定的には電極6を構成するシード層11およびめっき層12)は、絶縁層2の上面7上の導体パターン3a(より特定的には導体パターン3aを構成するシード層11およびめっき層12)と一体的に形成されていることにより、その導体パターン3aと電気的に接続されている。このため、絶縁層2の上面7上の導体パターン3aと、絶縁層2の下面8上の導体パターン4aとは、絶縁層2の開口部5内の電極6を介して、電気的に接続される。これにより、配線基板1の上面側の導体パターン3と配線基板1の下面側の導体パターン4とを、必要に応じて電気的に接続することができ、絶縁層2の開口部5内の電極6は、配線基板1の上面側の導体パターン3と配線基板1の下面側の導体パターン4とを電気的に接続する電極(ビア電極または貫通電極)として機能することができる。
【0028】
図1にも示されるように、絶縁層2の上面7側において、開口部5内の電極6の表面(上面)は、電極6と一体的に形成された導体パターン3(
図1の場合は導体パターン3a)の表面(上面)に対して窪んでいる。具体的には、電極6およびそれと一体的に形成された導体パターン3aを構成するめっき層12の表面は、開口部5と平面視で重なる位置において窪んでおり、開口部5と平面視で重なる位置に窪み部(凹部)9を有している。ここで、導体パターン3の表面は、導体パターン3を構成するめっき層12の表面に対応し、電極6の表面は、導体パターン3を構成するめっき層12の表面に対応している。また、めっき層12の表面は、めっき層におけるシード層11に接する側とは反対側の面に対応している。また、平面視とは、絶縁層2の上面7または下面8に略平行な平面で見た場合に対応している。
【0029】
また、窪み部9の深さはある程度深いことが好ましい。具体的には、窪み部9の底部は、絶縁層2の上面7よりも高さ位置(配線基板1の厚さ方向における高さ位置)が低いことが好ましい。すなわち、絶縁層2の上面7側において、電極6の表面は、絶縁層2の上面7よりも高さ位置が低い部分を有することが好ましい。別の見方をすると、絶縁層2の厚さ方向において、電極6の表面の一部(窪み部9の底部)は、絶縁層2の厚さの途中に位置していることが好ましい。
【0030】
また、配線基板1は、上下を逆にすることもできる。
【0031】
<配線基板の製造工程について>
次に、
図2~
図7を参照して、本実施の形態の配線基板1の製造工程について説明する。
図2~
図7は、本実施の形態の配線基板1の製造工程中の要部断面図である。
【0032】
本実施の形態の配線基板1を製造するには、まず、
図2に示されるように、支持板(支持基板)21を用意する。支持板21は、今後の工程を流動させる目的で用いられているため、堅牢性を有していれば良い。例えばガラス基板や銅板等の金属板等が支持板21として使用できる。
【0033】
次に、
図2に示されるように、支持板21の上面(主面)21a上に、導体パターン4を形成する。また、導体パターン4は、材料は銅を主材とする金属材料であり、セミアディティブやサブトラクティブ等の手法によって形成することができる。
【0034】
次に、
図3に示されるように、支持板21の上面21a上に、導体パターン4を覆うように、絶縁層2を、ラミネートあるいは樹脂硬化等のプロセスを経て形成する。この時、絶縁層2の支持板21側の面(下面8)は、隙間なく導体パターン4と支持板21に追従するように密着され、絶縁層2の支持板21との反対の面である上面7は、支持板21の上面21aと略平行になるように形成される。ここで、絶縁層2は絶縁性を有する材料であり、エポキシ系の樹脂材料等が好適な例として挙げられる。以下の説明では、絶縁層2に低誘電率化を付加した誘電率が約4以下のLow-k材として、SiO
2が50wt%以上含有されたエポキシ樹脂を例に取り説明を行う。
【0035】
絶縁層2の下面8は、支持板21の上面21aに隣接する側の主面であり、支持板21の上面21aは、支持板21の上面21aに隣接する側とは反対側の主面である。支持板21の上面21a上に、導体パターン4を覆うように、絶縁層2を形成するため、絶縁層2を形成すると、導体パターン4は絶縁層2の下面8上に形成された状態となる。
【0036】
次に、
図4に示されるように、絶縁層2の上面7上から絶縁層2に対してレーザー光等を照射することなどにより、絶縁層2に開口部(貫通孔)5を形成する。この開口部5は、絶縁層2の上面7側に形成される導体パターン3と支持板側21に形成される導体パターン4とを電気的に接続するために設けられるため、導体パターン4上の絶縁層2に形成される。
【0037】
このため、開口部5は、絶縁層2を貫通するように形成されるが、開口部5は、平面視において、導体パターン4に内包される位置に形成される。
図4の場合は、開口部5は、平面視において、導体パターン4aに内包される位置に形成される。ここで、平面視とは、絶縁層2の上面7、絶縁層2の下面8または支持板21の上面21aに略平行な平面で見た場合に対応している。開口部5は、絶縁層2を貫通するが、導体パターン4および支持板21は貫通せずに、開口部5の底部では、導体パターン4が残存する。
【0038】
この時、絶縁層2の上面7と、導体パターン4の表面とは直角方向となる開口部5の側壁とでは、同一のエポキシ樹脂であっても状態が異なる。即ち、上面7ではエポキシ樹脂で覆われていることに対し、開口部5の側壁面は、レーザー光の照射により露出したものであるため、一瞬にしてエポキシ樹脂が昇華した結果、SiO2がリッチな状態となる。
【0039】
次に、
図5に示されるように、絶縁層2の上面7上と、開口部5の側壁(側面)および底面上とに、シード層11を形成する。開口部5の底面は、導体パターン4(
図5の場合は導体パターン4a)で構成されているため、絶縁層2の上面7上と、開口部5の側壁上と、開口部5の底面を構成する導体パターン4(4a)上とに、シード層11が形成される。
【0040】
開口部5の側壁は、Low-kの材料として分類されるSiO2がリッチな状態となっていることから官能基が生成しづらく、めっき等の手法で開口部5の側壁に金属膜を生成することが高難易度である。このため、シード層11は、スクリーン印刷等の印刷法を用いて形成することが好ましく、スクリーン印刷等で金属ペースト(厚膜ペースト)を使用してシード層11を形成する。シード層11をスクリーン印刷等の印刷法で形成することで、スキージングされるスクリーンの面が、絶縁層2の上面7に近く、開口部5のシード層11の上面が遠くなる関係になることで、開口部5においては、シード層11の上面の位置は絶縁層2の上面7よりも低く形成することができる。
【0041】
シード層11をスクリーン印刷等の印刷法を用いて形成する場合、具体的には、シード層11用の金属ペーストを印刷用のマスクを用いて絶縁層2の上面7上と開口部5内(開口部5の側壁および底面上)とに供給(印刷)してから、熱処理(焼成)を行うことにより、シード層11が形成される。
【0042】
シード層11を印刷法で形成する際に使用する金属ペースト(厚膜ペースト)は、金属(金属粒子)を含有するペースト材であるが、銅(銅粒子)を含有する銅ペーストまたは銀(銀粒子)を含有する銀ペーストが好ましい。また、シード層11用のペースト材に含有される金属材料(金属粒子)としては、金属ナノ粒子が特に好適であり、従って、銅(Cu)からなる金属ナノ粒子である銅ナノ粒子、または銀(Ag)からなる金属ナノ粒子である銀ナノ粒子が最も好ましい。ここで、典型的には、平均粒径が1μm未満(1~数百nm)の金属粒子からなる金属材料を金属ナノ粒子と呼ぶ。
【0043】
このため、シード層11を印刷法で形成する際に使用する金属ペーストは、好ましくは、銅或いは銀の材料を使用した粒径が1μm未満の金属材料を主とするフリット型の材料である。銅或いは銀の金属材料の粒径を1μm未満とすることで(すなわち銅ナノ粒子または銀ナノ粒子を用いることにより)、銅或いは銀の粒子、各々の金属間結合を促すことができるため、比較的低温での熱処理(印刷後の焼成)でも、シード層11を的確に形成することができる。このため、銅ナノ粒子または銀ナノ粒子を使用した金属ペーストを用いれば、印刷後の熱処理を、絶縁層2を構成する樹脂の熱分解温度よりも低温で行うことができるため、熱処理に起因した絶縁層2の変質などを防止することができる。具体的には、絶縁層2がエポキシ系の樹脂であれば熱分解温度は通常、最大温度が300℃程度であるため、印刷後に300℃以下(250~300℃程度)、最適には250℃の低温で焼成してシード層11を形成することができる。勿論、200℃程度の焼成温度でもシード層11を形成することが可能であるが、銅或いは銀の粒子のシンタリングが焼成温度の低下と共に促進しづらくなり、結果としてシード層11の配線抵抗値が高抵抗となるため、絶縁層2として使用するエポキシ樹脂の特性と合わせて焼成温度を調整することが望ましい。
【0044】
シード層11は、複数の金属粒子を含有する金属ペーストを用いて形成しているため、シード層11(熱処理後のシード層11)は、複数の金属粒子が結合した構造を有する。シード層11が、複数の金属ナノ粒子を含有する金属ペーストを用いて形成された場合は、シード層11(熱処理後のシード層11)は、複数の金属ナノ粒子が結合した構造を有する。シード層11が、複数の銅ナノ粒子を含有する銅ペーストを用いて形成された場合は、シード層11(熱処理後のシード層11)は、複数の銅ナノ粒子が結合した構造を有する。シード層11が、複数の銀ナノ粒子を含有する銀ペーストを用いて形成された場合は、シード層11(熱処理後のシード層11)は、複数の銀ナノ粒子が結合した構造を有する。それら複数の金属ナノ粒子(銅ナノ粒子または銀ナノ粒子)は、ファンデルワールス力およびシンタリング(焼結)により結合している。
【0045】
次に、
図6に示されるように、シード層11上に、電解めっき法を用いて、めっき層12を形成する。シード層11は、電解めっきのシード層として機能する。めっき層12は、好ましくは銅めっき層である。めっき層12は、絶縁層2の上面7上のシード層11上と、開口部5内のシード層11上とに、形成される。
【0046】
絶縁層2の上面7上のシード層11と、その上のめっき層12とにより、導体パターン3が絶縁層2の上面7上に形成され、開口部5内のシード層11とその上のめっき層12とにより、電極6が絶縁層2の開口部5内に形成される。絶縁層2の上面7上において、導体パターン3が形成されるべきではない領域にもシード層11が形成されている場合には、シード層11およびめっき層12を形成した後に、フォトレジスト技術およびエッチング技術などを用いて、導体パターン3が形成されるべきではない領域におけるシード層11を除去することができる。
【0047】
すなわち、シード層11は印刷法を用いて形成するため、シード層11を選択的に形成することができる。このため、開口部5内と絶縁層2の上面7の所定領域(導体パターン3形成予定領域)上とにシード層11を形成する場合と、開口部5内と絶縁層2の上面7全体上とにシード層11を形成する場合とがあり得る。シード層11形成工程で開口部5内と絶縁層2の上面7全体上とにシード層11を形成した場合は、めっき層12形成工程でめっき層12はシード層11全体上に形成されるため、シード層11とめっき層12との積層膜が、開口部5内と絶縁層2の上面7全体上とに形成されることになる。この場合は、めっき層12を形成した後に、フォトレジスト技術およびエッチング技術などを用いてシード層11とめっき層12との積層膜をパターニングすることにより、導体パターン3および電極6を形成することができる。一方、シード層11形成工程で、導体パターン3および電極6の形成予定領域にシード層11を選択的に形成する場合は、めっき層12形成工程では、そのシード層11上に選択的にめっき層12が形成され、そのシード層11とめっき層12との積層膜により導体パターン3および電極6が形成される。この場合は、めっき層12を形成した後のフォトレジスト技術およびエッチング技術などを用いたパターニング工程(シード層11とめっき層12との積層膜のパターニング工程)は、行わなくともよい。
【0048】
シード層11を銅或いは銀の金属ペースト(厚膜ペースト)で形成しているので、印刷後の焼成時に金属粒子がシンタリングを起こし、シード層11は多孔質な状態となっている。更には、印刷後の焼成温度を低い温度にすると、金属粒子のシンタリングが弱まり、結果として配線抵抗値が上昇することにもなる。しかしながら、シード層11上に銅(めっき層12)を電解めっきで一体形成することで、シード層11の多孔質な部分にも銅メッキ(めっき層12)が浸入し、それが電気的な接続だけでなくアンカー的に作用する。その結果、シード層11とめっき層12との密着強度を上げ、緻密性を増した導体パターン3を形成することができる。
【0049】
更には、シード層11とめっき層12とが積層状態となることで電気的には並列関係となる。即ち、シード層11の焼成温度を低めに設定して形成した結果、配線抵抗が大きくなったとしても、めっき層12が並列接続された構造となるので、合成抵抗は、銅のバルク値である2μΩcmに近づけることが可能となる。
【0050】
次に、導体パターン4、絶縁層2、導体パターン3および電極6からなる構造体から支持板21を剥離することにより、
図7に示されるように、配線基板1を得ることができる。また、支持板21を剥離した後に配線基板を切断することにより、複数の配線基板1を得る場合もあり得る。また、支持板21を剥離せずに、支持板21も配線基板1の一部として用いる場合もあり得るが、その場合は、支持板21による導体パターン4の短絡が生じないように、支持板21は絶縁体からなることが好ましい。
【0051】
<主要な特徴と効果について>
次に、本実施の形態の主要な特徴と効果について説明する。
【0052】
本実施の形態の配線基板1は、絶縁層2と、絶縁層2の一方の主面(ここでは上面7)上に形成された導体パターン3と、絶縁層2の他方の主面(ここでは下面8)上に形成された導体パターン4と、絶縁層2の開口部5内に形成され、導体パターン3と導体パターン4とを電気的に接続する電極6と、を備えている。
【0053】
本実施の主要な特徴のうちの一つは、絶縁層2の開口部5内に形成された電極6は、絶縁層2の主面(ここでは上面7)上に形成された導体パターン3(
図1の場合は導体パターン3a)と一体的に形成されており、開口部5内の電極6の表面は、導体パターン3(
図1の場合は導体パターン3a)の表面に対して窪んでいることである。具体的には、電極6およびそれと一体的に形成された導体パターン3aを構成するめっき層12の表面は、開口部5と平面視で重なる位置において窪んでおり、開口部5と平面視で重なる位置に窪み部9を有している。
【0054】
図8は、本発明者が検討した検討例の配線基板101を示す要部断面図であり、上記
図1に相当するものである。
図8に示される検討例の配線基板101は、絶縁層102と、絶縁層102の下面上に形成された導体パターン104と、絶縁層102の上面上に形成された導体パターン103と、絶縁層102の開口部105内に形成され、導体パターン103と導体パターン104とを電気的に接続する電極106と、を備えている。絶縁層102の開口部105内に形成された電極106は、絶縁層102の上面上に形成された導体パターン103(
図8の場合は導体パターン103a)と一体的に形成されているが、開口部105内の電極106の表面は、導体パターン103(
図8の場合は導体パターン103a)の表面に対して窪んではいない。すなわち、電極106および導体パターン103は、シード層111とその上のめっき層112との積層膜により形成されているが、めっき層112の表面は、開口部105上の表面と開口部105上以外の表面とがほぼ面一になるように形成されており、窪んでいない。つまり、めっき層112の表面は、開口部105と平面視において重なる位置でも窪んではおらず、電極106および導体パターン103aにわたってほぼ平坦になっている。
【0055】
このような構造の検討例の配線基板101を用いて、種々の電子装置などを製造した場合には、次のような不具合が生じる虞があることが、本発明者の検討により分かった。
図9は、
図8に示される検討例の配線基板101上に、絶縁体122が形成された状態を示す要部断面図である。配線基板101を用いて種々の電子装置を製造する場合には、配線基板101上に種々の絶縁体122を形成することが多い。絶縁体122は、例えば、配線基板101上に電子部品をベアチップとして搭載した場合に、その電子部品を封止するために形成した封止樹脂である。
【0056】
配線基板101上に絶縁体122を形成した状態では、温度変化が生ずると、双方の熱膨張係数の違いにより配線基板101と絶縁体122との界面でバイメタル作用により機械的応力が発生する。特にパワー系のような大電流を流すようなアプリケーションでは、それがより顕著になる。このような場合、配線基板101と絶縁体122との界面で剥離が生ずる懸念がある。また、完全に剥離しないまでも、配線基板101と絶縁体122との界面より水分等が毛細管現象で配線基板101上に浸入することで、信頼性の低下を招くことになる。これは、配線基板101や、配線基板101を用いて製造した電子装置などにおいて、信頼性の低下につながる。
【0057】
図10は、
図1に示される本実施の形態の配線基板1上に、絶縁体22が形成された状態を示す要部断面図である。配線基板1を用いて種々の電子装置を製造する場合には、配線基板1上に種々の絶縁体22を形成することが多い。絶縁体22は、例えば、配線基板1上に電子部品をベアチップとして搭載した場合に、その電子部品を封止するために形成した封止樹脂である。封止部は、配線基板1上に搭載した電子部品を覆うように、配線基板1上に形成され得る。
【0058】
本実施の形態の配線基板1は、開口部5内の電極6の表面は、電極6と一体的に形成された導体パターン3(導体パターン3a)の表面に対して窪んでいる。具体的には、電極6およびそれと一体的に形成された導体パターン3aを構成するめっき層12の表面は、開口部5と平面視で重なる位置において窪んでおり、開口部5と平面視で重なる位置に窪み部9を有している。このため、
図10に示されるように、配線基板1上に絶縁体22が形成された場合は、必然的に窪み部9の中にも絶縁体22の一部が入り込む状態で充填されることになる。窪み部9に絶縁体22の一部が入り込んだことによるアンカー効果により、絶縁体22は配線基板1から剥離しにくくなる。このため、配線基板1上に絶縁体22を形成した状態で、温度変化が生じても、絶縁体22が配線基板1から剥離してしまうのを抑制または防止することができる。また、配線基板1と絶縁体22との界面より水分等が毛細管現象で配線基板1上に浸入することを抑制または防止することができる。これにより、配線基板1の信頼性を向上させることができ、また、配線基板1を用いて製造した電子装置などの信頼性を向上させることができる。
【0059】
また、このアンカー効果を向上させるためには、開口部5の平面寸法(平面積、直径)を絶縁層2の厚みに対してある程度大きくすることが有効である。開口部5の平面寸法を大きくするほど、開口部5内の電極6の表面が、電極6と一体的に形成された導体パターン3の表面に対して窪んだ状態になり易く、また、開口部5の平面寸法を小さくすると、窪み部9が形成しづらくなる。このため、開口部の5の平面寸法は、「(開口部5の直径/絶縁層2の厚み)≧1」の関係が成り立つように設定することが望ましい。すなわち、開口部5の直径は、絶縁層2の厚さ以上に設定することが望ましい。絶縁層2の厚さにもよるが、開口部5の直径(開口径)は、例えば50~80μm程度とすることができる。
【0060】
また、シード層11を形成するために使用する金属ペーストの粘度や、めっき層12を電解めっき法で形成する際の条件などによっても、開口部5内の電極6の表面が、電極6と一体的に形成された導体パターン3(導体パターン3a)の表面に対して窪んだ状態になりやすくなる。このため、開口部5の平面寸法、シード層11およびめっき層12の厚さ、シード層11を形成するために使用する金属ペーストの粘度、および、めっき層12を電解めっき法で形成する際の条件などを、適宜調整することにより、開口部5内の電極6の表面が、電極6と一体的に形成された導体パターン3(導体パターン3a)の表面に対して窪んだ状態を、実現することができる。
【0061】
また、上述したアンカー効果を高めるためには、窪み部9の深さはある程度深いことが好ましい。具体的には、窪み部9の底部は、絶縁層2の上面7よりも高さ位置が低いことが好ましい。すなわち、絶縁層2の上面7側において、電極6の表面は、絶縁層2の上面7よりも高さ位置が低い部分を有することが好ましい。別の見方をすると、絶縁層2の厚さ方向において、電極6の表面の一部(窪み部9の底部)は、絶縁層2の厚さの途中に位置していることが好ましい。これにより、窪み部9の深さが深くなるため、窪み部9に絶縁体22の一部が入り込んだことによるアンカー効果を高めることができ、上記絶縁体22は配線基板1から更に剥離しにくくなる。
【0062】
また、本実施の形態では、導体パターン3は、金属ペーストを用いて絶縁層2に形成されたシード層11上にめっき層12を形成した構造を有している。これにより、絶縁層2が含有するSiO2などの低誘電率のフィラーが開口部5の側壁面に露出するような場合であっても、シード層11を形成する際に、開口部5の側壁に露出しているSiO2上に官能基を生成する必要がなくなるため、開口部5の側壁に対する密着性がよい導体パターン3を形成することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、シード層11は金属ペーストで形成されている。具体的には、銅または銀からなる金属ナノ粒子(1μm未満の粒子)を主成分とする金属ペースト(金属ナノペースト)を使用して印刷し、印刷後に250~300℃の温度で焼成(熱処理)して、シード層11を形成している。これは、絶縁層2の主成分がエポキシ等の樹脂であることで、300℃以上の温度はたいていの場合、熱分解温度の領域となるためである。また、銅または銀からなる金属ナノ粒子を主成分とする金属ペーストは、一般的には200℃以下の温度で焼成することが推奨されている。しかしながら、銅または銀からなる金属ナノ粒子を主成分とする金属ペーストを使用した場合には、金属同士の金属間結合を促し、金属保有の融点(約1000℃以上)よりも極めて低い温度でシード層11を形成できるが、シード層11の体積抵抗率は、バルク値での抵抗率よりも大きくなってしまう。具体的には、銅または銀の体積抵抗率は、バルク値で双方ともに2μΩcmであるところ、印刷後の焼成温度が200℃以下の場合はシード層11の体積抵抗率は8~9μΩcm程度となる。ここで、印刷後の焼成温度を250~300℃まで上げることで、シード層11は2~3μΩcmの体積抵抗率となることが実験的に確かめられており、極めてバルク値に近いシード層11の体積抵抗率が実現できる。
【0064】
更に、シード層11上に銅などのめっき層12を積層することで、より安定的な抵抗値を有する配線(導体パターン3)が形成できる。
【0065】
(実施の形態2)
図11~
図14は、本実施の形態2の配線基板1の製造工程を示す要部断面図である。本実施の形態2の配線基板1を、以下では、符号1aを付して配線基板1aと称することとする。
【0066】
本実施の形態2の配線基板1aの製造工程を、
図11~
図14を参照して説明する。
【0067】
上記実施の形態1とほぼ同様に
図2~
図4の工程を行って上記
図4の構造を得た後、本実施の形態2では、
図11に示されるように、絶縁層2の上面7上と、開口部5の側壁および底面上とに、無電解めっき法を用いてシード層11aを形成する。シード層11aは、好ましくは、銅の無電解めっき層である。シード層11aは、上記シード層11に相当するものであるが、上記実施の形態1とは異なり、金属ペーストを用いて形成されたものではなく、無電解めっき法により形成される。なお、上記実施の形態1では、絶縁層2は、好ましくは酸化シリコン(SiO
2)のフィラーを含有していたが、本実施の形態2では、絶縁層2は、酸化シリコン(SiO
2)のフィラーを含まない材料からなる。
【0068】
次に、
図12に示されるように、シード層11a上に、電解めっき法を用いて、めっき層12aを形成する。めっき層12aは、好ましくは、銅の電解めっき層である。めっき層12aは、上記めっき層12に相当するものであり、上記実施の形態1と同様に、電解めっき法により形成される。絶縁層2の上面7上において、導体パターン3が形成されるべきではない領域にもシード層11aおよびめっき層12aが形成されている場合には、シード層11aおよびめっき層12aを形成した後に、シード層11aとめっき層12aの積層膜をフォトレジスト技術およびエッチング技術などを用いてパターニングする。これにより、
図13に示されるように、導体パターン3が形成されるべきではない領域におけるシード層11aおよびめっき層12aを除去することができる。
【0069】
絶縁層2の上面7上のシード層11aと、その上のめっき層12aとにより、導体パターン3が絶縁層2の上面7上に形成され、開口部5内のシード層11aとその上のめっき層12aとにより、電極6が絶縁層2の開口部5内に形成される。
【0070】
本実施の形態2の電極6および導体パターン3は、上記シード層11に相当するシード層11aが無電解めっき法により形成されていること以外は、上記実施の形態1の電極6および導体パターン3とほぼ同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0071】
次に、導体パターン4、絶縁層2、導体パターン3および電極6からなる構造体から支持板21剥離することで、
図14に示されるように、配線基板1aを得ることができる。また、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2においても、支持板21を剥離した後に配線基板を切断することにより、複数の配線基板1aを得る場合もあり得る。また、支持板21を剥離せずに、支持板21も配線基板1aの一部として用いる場合もあり得る。
【0072】
本実施の形態2の配線基板1aの場合も、開口部5内の電極6の表面は、電極6と一体的に形成された導体パターン3(導体パターン3a)の表面に対して窪んでいる。具体的には、電極6およびそれと一体的に形成された導体パターン3aを構成するめっき層12aの表面は、開口部5と平面視で重なる位置において窪んでおり、開口部5と平面視で重なる位置に窪み部9を有している。このため、配線基板1a上に上記絶縁体22が形成された場合は、その窪み部9に上記絶縁体22の一部が入り込む(充填される)ことになる。これにより、アンカー効果により、上記絶縁体22は配線基板1aから剥離しにくくなるため、配線基板1a上に上記絶縁体22を形成した状態で、温度変化が生じても、上記絶縁体22が配線基板1aから剥離してしまうのを抑制または防止することができる。これにより、配線基板1aの信頼性を向上させることができ、また、配線基板1aを用いて製造した電子装置などの信頼性を向上させることができる。
【0073】
また、上記実施の形態1で述べたように、絶縁層2がSiO2のフィラーを含む場合は、開口部5の側壁上に銅の無電解めっき層を形成することは難しい。実際、配線密度の向上に伴い開口径は小さくなる。その結果、デスミアはドライで処理することになるが、相反して開口部側壁のSiO2がリッチな状態となるためである。このため、上記実施の形態1では、シード層11を、金属ペーストを用いて印刷法で形成している。しかしながら、本実施の形態2で使用した絶縁層2は、低誘電率となるSiO2などを含まない材料からなる。そのため、シード層11aを、例えば銅の無電解めっき法で形成する際の前処理として、触媒としてのパラジウムを絶縁層2の開口部5の側壁に付着させる時、開口部5の側壁の官能基に化学結合するため、その後の無電解銅めっきも安定的に形成されることになる。このため、無電解めっき法でシード層11aを形成することができる。
【0074】
一方、絶縁層2がSiO2のフィラーを含む場合は、上記実施の形態1を適用することが望ましい。
【0075】
(実施の形態3)
図15~
図18は、本実施の形態3の配線基板1の製造工程を示す要部断面図である。本実施の形態3の配線基板1を、以下では、符号1bを付して配線基板1bと称することとする。
【0076】
本実施の形態3の配線基板1bの製造工程を、
図15~
図18を参照して説明する。
【0077】
上記実施の形態1と同様に上記
図2~
図6の工程を行って上記
図6の構造を得た後、本実施の形態3では、
図15に示されるように、絶縁層2の上面7上に、導体パターン3および電極6を覆うように、絶縁層2bを形成する。絶縁層2bは、例えば、上記絶縁層2と同様の材料からなり、上記絶縁層2と同様の手法を用いて形成することができる。
【0078】
次に、
図16に示されるように、絶縁層2bに開口部(貫通孔)5bを形成する。開口部5bは、上記実施の形態1における開口部5と同様の手法により形成することができ、絶縁層2bを貫通するように形成される。但し、開口部5bは、平面視において、導体パターン3(
図16の場合は導体パターン3a)に内包される位置に形成され、すなわち、開口部5bは、導体パターン3(
図16の場合は導体パターン3a)を露出させる位置に形成される。開口部5bは、絶縁層2bを貫通するが、導体パターン3(3a)および絶縁層2は貫通せずに、開口部5bの底部では、導体パターン3(3a)が残存して露出する。
【0079】
次に、
図17に示されるように、絶縁層2bの上面上と、開口部5bの側壁(側面)および底面上とに、シード層11bを形成する。開口部5bの底面は、導体パターン3(
図17の場合は導体パターン3a)で構成されているため、絶縁層2bの上面上と、開口部5bの側壁上と、開口部5bの底面を構成する導体パターン3(3a)上とに、シード層11bが形成される。シード層11bは、上記実施の形態1におけるシード層11と同様の手法(金属ペーストを用いた印刷法および印刷後の熱処理)により形成することができる。シード層11bを形成する手法と用いる金属ペーストについては、上記シード層11を形成する際と同様とすることができるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0080】
次に、シード層11b上に、電解めっき法を用いて、めっき層12bを形成する。めっき層12bの形成法は、上記実施の形態1におけるめっき層12の形成法と同様である。めっき層12と同様に、めっき層12bも、好ましくは銅(Cu)のめっき層である。めっき層12bは、絶縁層2bの上面上のシード層11b上と、開口部5b内のシード層11b上とに、形成される。
【0081】
絶縁層2bの上面上のシード層11bと、その上のめっき層12bとにより、導体パターン23が絶縁層2bの上面上に形成され、開口部5b内のシード層11bとその上のめっき層12bとにより、電極(ビア電極、貫通電極)6bが絶縁層2bの開口部5b内に形成される。電極6bは、絶縁層2bの上面に形成された導体パターン23(
図17の場合は導体パターン23a)と一体的に形成され、かつ、絶縁層2bの下面側で開口部5bを覆う導体パターン3(
図17の場合は導体パターン3a)と接している。このため、絶縁層2bの上面の導体パターン23(23a)と、絶縁層2,2b間に形成されている導体パターン3(3a)とは、開口部5b内の電極6bを介して電気的に接続される。
【0082】
絶縁層2bの上面上において、導体パターン23が形成されるべきではない領域にもシード層11bが形成されている場合には、シード層11bおよびめっき層12bを形成した後に、フォトレジスト技術およびエッチング技術などを用いて、導体パターン23が形成されるべきではない領域におけるシード層11bを除去することができる。
【0083】
次に、導体パターン4、絶縁層2、導体パターン3、電極6、絶縁層2b、導体パターン23および電極6bからなる構造体から支持板21を剥離することにより、
図18に示されるように、配線基板1bを得ることができる。また、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態3においても、支持板21を剥離した後に配線基板を切断することにより、複数の配線基板1bを得る場合もあり得る。また、支持板21を剥離せずに、支持板21も配線基板1bの一部として用いる場合もあり得る。
【0084】
本実施の形態3の配線基板1bは、複数の絶縁層2,2bを有し、各絶縁層2,2bを貫通する開口部5,5b内に形成された電極6,6bにより、各絶縁層2,2bの両面に形成された導体パターンが電気的に接続されている。すなわち、絶縁層2の開口部5内に形成された電極6により、絶縁層2の両面(上面および下面)に形成された導体パターン3,4が電気的に接続され、絶縁層2bの開口部5b内に形成された電極6bにより、絶縁層2bの両面(上面および下面)に形成された導体パターン23,3が電気的に接続されている。
【0085】
上記実施の形態1と同様に、本実施の形態3においても、開口部5内の電極6の表面は、電極6と一体的に形成された導体パターン3(導体パターン3a)の表面に対して窪んでいる。具体的には、電極6およびそれと一体的に形成された導体パターン3aを構成するめっき層12の表面は、開口部5と平面視で重なる位置において窪んでおり、開口部5と平面視で重なる位置に窪み部9を有している。このため、絶縁層2bを形成すると、絶縁層2bの一部が窪み部9に入り込んで充填されることになる。窪み部9に絶縁層2bの一部が入り込んだことによるアンカー効果により、絶縁層2bは絶縁層2bよりも下の構造体から剥離しにくくなる。このため、配線基板1bに温度変化が生じても、絶縁層2bが絶縁層2bよりも下の構造体から剥離してしまうのを抑制または防止することができる。これにより、配線基板1bの信頼性を向上させることができ、また、配線基板1bを用いて製造した電子装置などの信頼性を向上させることができる。
【0086】
また、本実施の形態3では、開口部5b内の電極6bは、開口部5内の電極6と同様の手法により形成され、開口部5内の電極6と同様の構造を有している。このため、開口部5b内の電極6b表面は、電極6bと一体的に形成された導体パターン23(
図18の場合は導体パターン23a)の表面に対して窪んでいる。具体的には、電極6bおよびそれと一体的に形成された導体パターン23aを構成するめっき層12bの表面は、開口部5bと平面視で重なる位置において窪んでおり、開口部5bと平面視で重なる位置に窪み部9b(窪み部9に相当)を有している。このため、配線基板1b上に上記絶縁体22を形成すると、上記絶縁体22の一部が窪み部9bに入り込んで充填されることになる。窪み部9bに上記絶縁体22の一部が入り込んだことによるアンカー効果により、上記絶縁体22は配線基板1bから剥離しにくくなる。このため、配線基板1bに温度変化が生じても、上記絶縁体22が配線基板1bから剥離してしまうのを抑制または防止することができる。これにより、配線基板1bの信頼性を向上させることができ、また、配線基板1bを用いて製造した電子装置などの信頼性を向上させることができる。
【0087】
また、
図15~
図17の工程を繰り返すことにより、配線基板が有する絶縁層および導体パターンの数(層数)を増やすこともできる。
【0088】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0089】
1 配線基板
2,2b 絶縁層
3,3a,3b 導体パターン
4,4a,4b,4c 導体パターン
5,5b 開口部
6,6b 電極
7 上面
8 下面
9,9b 窪み部
11,11a,11b シード層
12,12a,12b めっき層
21 支持板
22 絶縁体
23,23a 導体パターン
101 配線基板
102 絶縁層
103,103a 導体パターン
104 導体パターン
105 開口部
106 電極
111 シード層
112 めっき層
122 絶縁体