(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031644
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】栽培養殖システムおよび栽培養殖方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230302BHJP
A01G 31/06 20060101ALI20230302BHJP
A01K 63/00 20170101ALI20230302BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
A01G31/06
A01K63/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137263
(22)【出願日】2021-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】508200078
【氏名又は名称】オオノ開發株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】神野 浩
(72)【発明者】
【氏名】神野 太郎
【テーマコード(参考)】
2B104
2B314
【Fターム(参考)】
2B104CA07
2B104CB29
2B104CB34
2B104EA01
2B104EB04
2B104EF09
2B314MA62
2B314NA23
(57)【要約】
【課題】植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽との間での水の循環を維持しつつ、所定期間栽培槽の植物への水の供給を停止可能な栽培養殖システムを得ること。
【解決手段】本発明の栽培養殖システム1000は、植物Ptを栽培する栽培槽100と魚類Fsを養殖する養殖槽200とを備え、栽培槽と養殖槽との間で水を循環させるものであって、養殖槽200は、第1の高さに位置するバルブ付き第1排水口210と、第1の高さより高い第2の高さに位置する第2排水口220とを備え、栽培槽は、植物を栽培するための栽培棚110を備え、栽培養殖システムは、バルブ付き第1排水口210からの排水を栽培槽100内において栽培棚110より低い位置に流すための第1配管1と、第2排水口220からの排水を栽培槽内において栽培棚より高い位置に流すための第2配管2と、養殖槽から栽培槽に流れる水を栽培槽から養殖槽に戻す第3配管3とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽とを備え、前記栽培槽と前記養殖槽との間で水を循環可能な栽培養殖システムであって、
前記養殖槽は、
第1の高さに位置するバルブ付き第1排水口と、
前記第1の高さより高い第2の高さに位置する第2排水口と
を備え、
前記栽培槽は、
前記植物を栽培するための栽培棚を備え、
前記栽培養殖システムは、
前記バルブ付き第1排水口からの排水を前記栽培槽内において前記栽培棚より低い位置に流すための第1配管と、
前記第2排水口からの排水を前記栽培槽内において前記栽培棚より高い位置に流すための第2配管と、
前記養殖槽から前記栽培槽に流れる水を前記栽培槽から前記養殖槽に戻すための第3配管とを備える、栽培養殖システム。
【請求項2】
前記バルブ付き第1排水口を制御する制御部を備え、
前記バルブ付き第1排水口を開くことによって、前記バルブ付き第1排水口からの排水が可能となり、前記バルブ付き第1排水口を閉じることによって、前記第2排水口からの排水が可能となるように、前記制御部は前記バルブ付き第1排水口の開閉を行う、請求項1に記載の栽培養殖システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記バルブ付き第1排水口を開いた状態と、前記バルブ付き第1排水口を閉じた状態とを一定期間ごとに交互に切り替えるように前記バルブ付き第1排水口の開閉を制御する、請求項2に記載の栽培養殖システム。
【請求項4】
前記栽培槽は栽培槽側フィルターを備え、
前記第1配管および前記第2配管は前記栽培槽側フィルターと直接または間接的に接続されている、請求項1~3のいずれか一項に栽培養殖システム。
【請求項5】
さらに、前記養殖槽に微細気泡を含む気液を供給する気液供給手段を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の栽培養殖システム。
【請求項6】
前記養殖槽から前記栽培槽への水の流れが水位の落差により生ずるように前記栽培槽から前記養殖槽へ水を送る送水手段をさらに備えた、請求項1に記載の栽培養殖システム。
【請求項7】
栽培槽で植物を栽培し、養殖槽で魚類を養殖する方法であって、
前記養殖槽内には、バルブ付き第1排水口が第1の高さに位置するように配置されるとともに、第2排水口が前記第1の高さより高い第2の高さに位置するように配置されており、
前記栽培槽から前記養殖槽への送水は送水手段により行い、
前記養殖槽から前記栽培槽への送水は、
前記バルブ付き第1排水口を開いた状態によって前記バルブ付き第1排水口からの排水を第1配管により前記栽培棚より低い位置に流す第1排水モードと、前記バルブ付き第1排水口を閉めた状態によって、前記第2排水口からの排水を第2配管により前記栽培棚より高い位置に流す第2排水モードとを有し、
前記第1の排水モードと前記第2の排水モードとを前記バルブ付き第1排水口の開閉により交互に切り替えることによって行われる、栽培養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽とを備えた栽培養殖システムおよび栽培槽と養殖槽との間で水の循環を行う栽培養殖方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、植物を水耕栽培するための水耕栽培槽と魚類の養殖を行う魚類養殖槽とを備え、魚類養殖槽と水耕栽培槽との間で水を循環させるようにしたシステムがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、このようなシステムとして、魚類養殖槽で生じた養分を含む汚染水を水耕栽培槽に供給してその養分を植物の生育に利用すると同時に、植物による養分の吸収により浄化された水を魚類養殖槽に戻すようにした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の装置では、植物へ常に水が供給されるため、植物が根腐りするという課題があった。
【0006】
本発明は、植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽との間での水の循環を維持しつつ、所定期間栽培槽の植物への水の供給を停止可能な栽培養殖システムおよび栽培養殖方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽とを備え、前記栽培槽と前記養殖槽との間で水を循環可能な栽培養殖システムであって、
前記養殖槽は、
第1の高さに位置するバルブ付き第1排水口と、
前記第1の高さより高い第2の高さに位置する第2排水口と
を備え、
前記栽培槽は、
前記植物を栽培するための栽培棚を備え、
前記栽培養殖システムは、
前記バルブ付き第1排水口からの排水を前記栽培槽内において前記栽培棚より低い位置に流すための第1配管と、
前記第2排水口からの排水を前記栽培槽内において前記栽培棚より高い位置に流すための第2配管と、
前記養殖槽から前記栽培槽に流れる水を前記栽培槽から前記養殖槽に戻すための第3配管とを備える、栽培養殖システム。
(項目2)
前記バルブ付き第1排水口を制御する制御部を備え、
前記バルブ付き第1排水口を開くことによって、前記バルブ付き第1排水口からの排水が可能となり、前記バルブ付き第1排水口を閉じることによって、前記第2排水口からの排水が可能となるように、前記制御部は前記バルブ付き第1排水口の開閉を行う、項目1に記載の栽培養殖システム。
(項目3)
前記制御部は、前記バルブ付き第1排水口を開いた状態と、前記バルブ付き第1排水口を閉じた状態とを一定期間ごとに交互に切り替えるように前記バルブ付き第1排水口の開閉を制御する、項目2に記載の栽培養殖システム。
(項目4)
前記栽培槽は栽培槽側フィルターを備え、
前記第1配管および前記第2配管は前記栽培槽側フィルターと直接または間接的に接続されている、項目1~3のいずれか一項に栽培養殖システム。
(項目5)
さらに、前記養殖槽に微細気泡を含む気液を供給する気液供給手段を備える、項目1~4のいずれか一項に記載の栽培養殖システム。
(項目6)
前記養殖槽から前記栽培槽への水の流れが水位の落差により生ずるように前記栽培槽から前記養殖槽へ水を送る送水手段をさらに備えた、項目1に記載の栽培養殖システム。
(項目7)
栽培槽で植物を栽培し、養殖槽で魚類を養殖する方法であって、
前記養殖槽内には、バルブ付き第1排水口が第1の高さに位置するように配置されるとともに、第2排水口が前記第1の高さより高い第2の高さに位置するように配置されており、
前記栽培槽から前記養殖槽への送水は送水手段により行い、
前記養殖槽から前記栽培槽への送水は、
前記バルブ付き第1排水口を開いた状態によって前記バルブ付き第1排水口からの排水を第1配管により前記栽培棚より低い位置に流す第1排水モードと、前記バルブ付き第1排水口を閉めた状態によって、前記第2排水口からの排水を第2配管により前記栽培棚より高い位置に流す第2排水モードとを有し、
前記第1の排水モードと前記第2の排水モードとを前記バルブ付き第1排水口の開閉により交互に切り替えることによって行われる、栽培養殖方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽との間での水の循環を維持しつつ、所定期間栽培槽の植物への水の供給を停止可能な栽培養殖システムおよび栽培養殖方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1による栽培養殖システム1000を説明するための斜視図である。
【
図2】
図1に示す栽培養殖システム1000の側面図であり、
図2(a)は、
図1の紙面手前側から見た栽培養殖システムの構造を模式的に示し、
図2(b)は、
図2(a)のA部分(一点鎖線で囲んだ部分)を拡大して模式的に示す。
【
図3】
図1に示す栽培養殖システムの平面図であり、
図1の紙面の上から見た栽培養殖システムの構造を模式的に示す。
【
図4】
図1に示す栽培養殖システムの動作を説明するための側面図であり、養殖槽の水位がバルブ付き第1排水口210の上端位置から上昇する様子を示す図。
【
図5】
図1に示す栽培養殖システムの動作を説明するための側面図であり、養殖槽の水位が第2排水口220の上端位置まで上昇した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0011】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0012】
本発明は、植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽との間での水の循環を維持しつつ、所定期間栽培槽の植物への水の供給を停止可能な栽培養殖システムを得ることを課題とし、
植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽とを備え、栽培槽と養殖槽との間で水を循環させる栽培養殖システムであって、
養殖槽は、第1の高さに位置するバルブ付き第1排水口と、第1の高さより高い第2の高さに位置する第2排水口とを備え、
栽培槽は、植物を栽培するための栽培棚を備え、
栽培養殖システムは、バルブ付き第1排水口からの排水を栽培槽内において栽培棚より低い位置に流すための第1配管と、第2排水口からの排水を栽培槽内において栽培棚より高い位置に流すための第2配管と、養殖槽から栽培槽に流れる水を栽培槽から養殖槽に戻す第3配管とを備えている、栽培養殖システムを提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0013】
要するに、本発明の栽培養殖システムは、植物の栽培槽と魚類の養殖槽とを備え、栽培槽と養殖槽との間で水を循環させるものであって、養殖槽が、設置位置の高さが異なる2つの排水バルブを有し、栽培槽が栽培棚を有し、低位置の排水バルブからの排水が栽培槽内の栽培棚より低い位置に流れ込み、高位置の排水バルブからの排水が栽培槽内の栽培棚より高い位置に流れ込み、養殖槽から栽培槽に流れ込んだ水が第3配管を通って栽培槽から養殖槽に送られるものあれば、その他の構成は限定されるものではない。
【0014】
このような本発明の栽培養殖システムは、バルブ付き第1排水口の開閉を制御する制御部を有することが好ましい。このような制御部を有することにより、栽培養殖システムの自動運転が可能となる。
【0015】
以下、本発明の栽培養殖システムにおける栽培槽、養殖槽、バルブ付き第1排水口、第2排水口、制御部、第1配管、第2配管、第3配管について個別に説明する。
【0016】
(栽培槽)
栽培槽は、栽培槽本体と植物を栽培するための栽培棚とを有する。栽培槽本体は、水を所定量貯留可能な貯留部を有し、栽培棚はその貯留部よりも高い位置に設けられ得る。栽培槽本体の形状や構成材料は任意であり得る。
【0017】
また、栽培槽は、養殖槽から栽培槽内に流れる水を浄化する栽培槽側フィルターを有し得る。ここで、フィルターの種類は任意であり得る。例えば、綿フィルターおよび3Dフィルターであってもよいし、砂や石などであってもよい。また、これらの組み合わせであってもよい。3Dフィルターは綿フィルターよりも目の粗い樹脂(例えば、ポリ塩化ビリニデン樹脂など)を不織布状に加工したものであり得る。1つの実施形態において、栽培槽の底面には、砂などが敷き詰められている。このようにすることで魚類などの排泄物を止め、それらを植物の養分とすることが可能となる。また、砂などの下層には多孔質物質(例えば、マテラ石などの石材、セラミックなど)からなる層が敷き詰められている。このようにすることにより排泄物内の微生物の分解を促進することが可能となる。さらに、多孔質物質からなる層の下流側に3Dフィルターを、その後に綿フィルターを設けている。このようにすることで、3Dフィルターで比較的大きな汚物を分解し、綿フィルターで比較的小さな汚物を分解することが可能となる。これらのフィルターを用いることによって、バクテリアによる水質浄化を行うことが可能となります。
【0018】
ここで、栽培棚は植物の栽培が可能なものであれば、その具体的な構成は任意であり得る。例えば、栽培棚は、植物を収容してその水耕栽培が可能な構造を有する部材である。あるいは、栽培棚は、植物を収容してその土壌栽培が可能な構造を有する部材である。栽培棚の形状や構成材料は、任意であり得る。
【0019】
(養殖槽)
養殖槽は、魚類を収容する容器である養殖槽本体を有する。養殖槽本体の形状および構成材料は任意であり得る。魚類の種類は任意であり得る、なお、本発明において魚類には、貝類や藻類も包含される。栽培槽で水を浄化する栽培槽側フィルターを設けた場合は、水を浄化するフィルターを養殖槽側フィルターとしては不要であるが、養殖槽側フィルターとして水を浄化するフィルターを備えてもよい。水を浄化する際の養殖槽側フィルターは、栽培槽側フィルターと同様のフィルターであってもよいし、異なるフィルターであってもよい。
【0020】
好ましい実施形態において、養殖槽の底部は2重構造を有し得る。2重構造は、後述する気液混合装置から送り出される微細気泡を含む水を排出するための所定寸法の複数の孔を有するパンチングされた仕切り板を有するとともに、この仕切り板の上部には多孔質物質(例えば、砂砂利やマテラ石など)が備えられる。このようにすることで、気液混合装置から送り出される微細気泡を含む水が仕切り板の孔を介して均等に水が養殖槽内に供給される。また、微細気泡を含む水が多孔質物質を介すことで多孔質物質内に存在する微生物に高濃度の微細気泡を含む水が供給されることで微生物が活性化され、餌の食べ残しや糞などを分解することが可能となる。そして、水に含まれる気泡の力によって分解物が養殖槽内に浮上し、バルブ付き第1配管または第2配管を介して栽培槽に移動され、それが栽培槽の植物への肥料とすることが可能となる。
【0021】
(バルブ付き第1排水口)
栽培槽は、栽培槽本体において第1の高さ以上の水位の水を排水するためのバルブ付き第1排水口を有する。バルブ付き第1排水口は、養殖槽本体における第1の高さ以上の水位の水の排水を排水するか否かを制御可能であれば、任意の形態であり得る。例えば、バルブ付き第1排水口は、第1排水口の開閉が手動操作で行われる手動バルブであってもよいし、開閉が自動制御される自動バルブ(例えば、電磁バルブ)であってもよい。
【0022】
(第2排水口)
栽培槽は、栽培槽本体において、第1の高さよりも高い第2の高さ以上の水位の水を排水するための第2排水口を有する。第2排水口は、バルブ付き第1排水口の高さより高い位置に設けられたものであれば、任意の形態であり得る。例えば、単なる配管であってもよいし、第2排水口の開閉が手動操作で行われる手動バルブを備えていてもよいし、第2排水口の開閉が自動制御される自動バルブ(例えば、電磁バルブ)を備えていてもよい。
【0023】
ここで、バルブ付き第1排水口および第2排水口が電磁バルブを備える場合、これらの排水バルブは、栽培養殖システムに設けられている操作系により、自動で開閉する動作と手動操作による開閉動作との切り替えが可能となり得る。操作系は、一例として、操作者が操作する操作部と、操作部での操作あるいは設定に基づいてこれらの排水バルブを制御する制御部とを有するものでもよい。
【0024】
(制御部)
制御部は、バルブ付き第1排水口および/または電磁バルブを備えた第2排水口の開閉を制御可能であれば、その具体的な形態は任意であり得る。例えば、制御部は、栽培槽本体の第1の高さ以上の水位の水を排水したい場合には、バルブ付き第1排水口を開くように制御する。また、制御部は、栽培槽本体の第2の高さ以上の水位の水を排水したい場合には、バルブ付き第1排水口を閉じるように制御する。
【0025】
また、第2排水口が電磁バルブを備えている場合は、常に第2排水口を開く状態に制御しても良いし、栽培槽本体の第2の高さ以上の水位の水を排水したい場合以外は、第2排水口を閉じるように制御してもよい。
【0026】
また、制御部は、バルブ付き第1排水口の開閉の交互の切り替えを、一定周期で行うものでもよいし、予め設定された時間帯で開状態を維持し、予め設定された他の時間帯で閉状態を維持するものでもよい。さらに、制御部は、操作者が操作部でバルブ付き第1排水口あるいは第2排水口を開ける操作、あるいは閉じる操作をしたタイミングで、これらの排水バルブを開閉するものでもよい。バルブの開閉を行う周期をそれぞれ異なるように調整してもよい。
【0027】
制御部は、バルブ付き第1排水口(低い位置の排水バルブ)からの排水を栽培槽内の栽培棚より低い位置に流す第1排水モードと、第2排水口(高位置の排水バルブ)からの排水を栽培槽内の栽培棚より高い位置に流す第2排水モードとが切り替わるように排水バルブを制御可能なものであればよい。
【0028】
なお、バルブ付き第1排水口および/または第2排水口は上述した操作パネルでの操作に基づいて自動で開閉する自動バルブに限定されるものではなく、手動操作で開閉する手動バルブでもよい。
【0029】
(第1配管)
第1配管は、バルブ付き第1排水口からの排水を栽培槽内において栽培棚より低い位置に流すものであれば、任意の形態であり得る。例えば、第1配管は、1つの管材で構成され、一端側開口がバルブ付き第1排水口に接続され、他端側開口が栽培槽内で栽培棚より低い位置に位置するものであってもよいし、第1配管は、栽培槽に設けられた栽培槽側配管(第1給水管)と、養殖槽に設けられた養殖槽側配管(第1排水管)と、栽培槽と養殖槽との間に設けられた中間配管(第1中継管)とで構成されたものであってもよい。この場合、栽培槽側配管(第1給水管)の一端側開口は栽培槽の栽培棚より低い位置に配置されており、養殖槽側配管(第1排水管)の一端側開口はバルブ付き第1排水口の排水口に接続され、栽培槽側配管(第1給水管)の他端側開口と養殖槽側配管(第1排水管)の他端側開口とは中間配管(第1中継管)により連結される。
【0030】
第1配管を構成する1つの管材、あるいは第1配管を構成する栽培槽側配管、中間配管、養殖槽側配管の構成材料は任意であり得る。例えば、金属配管でもよいし、あるいは樹脂配管でもよいし、ゴム製のフレキシブル配管であってもよい。第1配管は、上述した栽培槽側フィルターと直接あるいは間接的に接続されていることが好ましい。このようにすることで、養殖槽の水位が第2の高さ位置よりも低く、第1の高さ以上の場合にける第1配管からの排水を栽培槽側で浄化することができる。上述した配管の構成は、必要に応じて第2配管の構成にも適用され得る。
【0031】
(第2配管)
第2配管は、第2排水口からの排水を栽培槽内において栽培棚より高い位置に流すものであれば、第1配管と同様に任意の形態であり得る。1つの実施形態において、第2配管は第1配管と同じ構成である。しかしながら本発明はこれに限定されない、第1配管と第2配管との構成を異なるようにしてもよい。
【0032】
また、第2配管は、栽培槽側フィルターと直接あるいは間接的に接続されていることが好ましい。この場合、第2配管からの排水を栽培槽側で浄化することができる。
【0033】
(第3配管)
第3配管は、養殖槽から栽培槽に流れる水を栽培槽から養殖槽に送るためのものであれば、任意の形態であり得る。なお、第3配管には、栽培槽から養殖槽に水を強制的に移動させる送水手段が介在している。送水手段は、水を送り出す機能を有すれば任意の形態であり得る。送水手段としては、例えば、ラインポンプなどのポンプである。また、第3配管には、ポンプの下流側に設けられた、栽培槽から排出された排水に空気および酸素の少なくとも一方を混合し、微細気泡を含む気液を生成する気液混合装置が介在していることが好ましい。このようにすることにより、養殖槽へ戻す水に含まれる酸素の量を増大させることができ、養殖槽での魚類の養殖環境を良好に維持することが可能となる。また、微細気泡を含む気液を供給することにより、魚類が排出する植物栽培に有害な菌を殺菌することが可能となる。
【0034】
また、第3配管は、養殖槽側フィルターと直接あるいは間接的に接続されていることが好ましい。この場合、栽培槽から第3配管を介して送られてくる水を養殖槽側で浄化することができる。
【0035】
ただし、以下の実施形態の栽培養殖システムでは、養殖槽におけるバルブ付き第1排水口および第2排水口はそれぞれ、制御部により自動制御される自動バルブとし、栽培棚は、植物を収容してその水耕栽培が可能なものとし、第1配管は、栽培槽側配管(第1給水管)と養殖槽側配管(第1排水管)と中間配管(第1中継管)とを備えたものとし、第2配管は、栽培槽側配管(第2給水管)と養殖槽側配管(第2排水管)と中間配管(第2中継管)とを備えたものとし、第3配管は、一部に循環ポンプおよび気液混合装置が介在しているものとする。
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による栽培養殖システム1000を説明するための斜視図であり、この栽培養殖システムの外観を模式的に示している。
図2は、
図1に示す栽培養殖システム1000の側面図であり、
図2(a)は、
図1の紙面手前側から見た栽培養殖システムの構造を模式的に示し、
図2(b)は、
図2(a)のA部分(一点鎖線で囲んだ部分)を拡大して模式的に示している。
図3は、
図1に示す栽培養殖システムの平面図であり、
図1の紙面の上から見た栽培養殖システムの構造を模式的に示している。
【0038】
この実施形態の栽培養殖システム1000は、植物Ptを栽培する栽培槽100と魚類Fsを養殖する養殖槽200とを備え、栽培槽100と養殖槽200との間で水が循環するように構成されている。
【0039】
(栽培槽100)
栽培槽100は、植物Ptを収容する容器としての栽培槽本体100aと、植物Ptを水耕栽培することが可能な栽培棚110とを有しており、栽培棚110は栽培槽本体100a内に着脱可能に設置されている。
【0040】
ここで、栽培槽本体100aは、外形として直方体形状を有し、上面が開口した構造となっている。具体的には、栽培槽本体100aにはアクリル製水槽が用いられている。
【0041】
ここで、栽培棚110の構成材料には、アクリルなどの樹脂材料が用いられているが、これに限定されず、セラミック(陶器)でもよいし、あるいはステンレスなどの金属材料でもよい。
【0042】
また、栽培槽100の底部には栽培槽仕切板120が設けられており、その栽培槽仕切板120の下側の領域には、養殖槽200から栽培槽100内に流れ込んだ水を浄化する栽培槽側フィルター150a~150cが設けられている。
【0043】
ここで、栽培槽仕切板120には、水を通過させ、植物の葉っぱや枝は通過できない程度の小孔が設けられている。また、栽培槽仕切板120の下側に配置される栽培槽側フィルターとして、綿フィルター150a、第1の3Dフィルター150b、第2の3Dフィルター150cが設けられており、栽培槽100から排出される水がこれらのフィルター150a~150cの少なくとも1つを通過するようになっている。
【0044】
(養殖槽200)
この栽培養殖システム1000では、養殖槽200は、魚類Fsの養殖を行うための容器としての養殖槽本体200aと、第1の高さに位置するバルブ付き第1排水口210と、第1の高さより高い第2の高さに位置する第2排水口220とを備えており、これらの排水バルブは、養殖槽本体200a内に配置されている。
【0045】
ここで、養殖槽本体200aは、外形として直方体形状を有し、上面が開口した構造となっている。具体的には、養殖槽本体200aにはアクリル製水槽が用いられている。
【0046】
また、バルブ付き第1排水口210および第2排水口220は電磁バルブを備えてあり、これらのバルブ付き第1排水口210および第2排水口220は、栽培養殖システム1000に設けられている操作パネル50での動作設定により、自動で開閉する動作と、手動操作による開閉動作との切り替えが可能となっている。また、ここでは、バルブ付き第1排水口210および第2排水口220の取水口(つまり、養殖槽200の水が排水バルブに吸い込まれる流入口)は、これらの排水バルブの上端位置に設けられている。
【0047】
また、この養殖槽本体200aの底部には、養殖槽仕切板240が設けられており、その養殖槽仕切板240の下側の領域は、気液混合装置20からの気液をろ過する養殖槽側フィルター250が収容されている。この養殖槽側フィルター250は、生物の細胞を活性化させる力を付与する多孔質物質やマテラ石を含んでいてもよい。多孔質物質からなるフィルターを用いることによって、微生物によるろ過能力を促進することが可能となる。
あるいは、養殖槽本体200aにおける養殖槽仕切板240の下側の領域にはマテラ石のみが収容されていてもよい。養殖槽仕切版240には、水を通過させ、魚類が通過できない程度の小孔が設けられている。
【0048】
(操作系)
操作系50は、操作者が操作する操作部51と、操作部での操作あるいは設定に基づいて、バルブ付き第1排水口210および第2排水口220の開閉動作を制御する制御部52とを有している。
【0049】
ここでは、制御部は、第2排水口220を常に開いた状態に維持するとともに、バルブ付き第1排水口210からの排水を行うときにはバルブ付き第1排水口210を開き、第2排水口220の排水を行うときにはバルブ付き第1排水口210を閉じる構成となっている。このような制御部50の構成では、バルブ付き第1排水口210の開閉制御のみで、バルブ付き第1排水口210からの排水と第2排水口220からの排水を切り替えることができる。この制御部50は、バルブ付き第1排水口210からの排水を行うときにはバルブ付き第1排水口210を開くように制御し、第2排水口220からの排水を行うときにはバルブ付き第1排水口210を閉じるとともに、第2排水口220を開けるように制御される。第2の排水口は、第2排水口から排水する場合以外は、閉ざした状態であってもよいし、開いた状態であってもよい。第2排水口にはバルブを設けず、常に第2排水口を開いた状態としていてもよい。
【0050】
また、この実施形態では、制御部は、バルブ付き第1排水口210および第2排水口220の開閉の切り替えを、操作部で設定された所定周期で行うように構成されている。所定周期の間隔は、根腐りが防止できる範囲で任意であり得る。例えば、第2排水口から栽培棚の植物の根に水を供給する時間を約30分間~約120分間、好ましくは約45分間~約60分間とし、その後、約3分間~約30分間、好ましくは約5分間~約20分間バルブ付き第1排水口から栽培棚の植物の根に水を供給されないようにする。このようにすることで、根における水切りが行え、根腐りを防止することが可能となる。また、1つの実施形態において、第2排水口から栽培棚の植物の根に水を供給する時間を約50分間とし、その後、バルブ付き第1排水口から栽培棚の植物の根に水を供給されないようにする時間を約10分間とする。ただし、制御部は、操作部で予め設定された時刻になるとバルブ付き第1排水口210および第2排水口220を開状態あるいは閉状態とするものでもよい。さらに、制御部は、操作者が操作部でバルブ付き第1排水口210あるいは第2排水口220を開ける操作、あるいは閉じる操作をしたタイミングで、これらの排水バルブを開閉するものでもよい。
【0051】
要するに、制御部は、バルブ付き第1排水口(低い位置の排水バルブ)210からの排水が栽培槽本体100a内の栽培棚110より低い位置に流れる第1排水モードと、第2排水口(高位置の排水バルブ)220からの排水が栽培槽本体100a内の栽培棚110より高い位置に流れる第2排水モードとが切り替わるようにこれらの排水バルブを制御するものであればよい。
【0052】
また、この栽培養殖システム1000は、バルブ付き第1排水口210からの排水を栽培棚110より低い位置に流すための第1配管1と、第2排水口220からの排水を栽培棚110より高い位置に流すための第2配管2と、養殖槽200から栽培槽100に流れる水を栽培槽100から養殖槽200に戻すための第3配管3とを有しており、以下に説明する。
【0053】
(第1配管)
この栽培養殖システム1000では、第1配管1は、栽培槽本体100a内に設けられた栽培槽側配管(第1給水管)111と、養殖槽本体200a内に設けられた養殖槽側配管(第1排水管)211と、栽培槽本体100aと養殖槽本体200aとの間に設けられた中間配管(第1中継管)11とを有する。
【0054】
ここで、第1給水管111は、栽培槽本体100a内にその底面に平行に伸びるように設けられた直線状の配管であり、一方の開口端111aが栽培槽本体100aの側壁から外部に突出するように栽培棚110の下側に配置されている。他方の開口端111bは栽培槽本体100aの側壁の内面から所定距離離れて栽培槽本体100a内の栽培棚110よりも低い位置に位置している。
【0055】
第1排水管211は、略L字状に折り曲げられた形状を有し、一方の先端部211aが養殖槽本体200aの側壁から外部に突出するように養殖槽本体200a内に配置されており、他方の先端部211bが養殖槽本体200a内でバルブ付き第1排水口210に接続されている。
【0056】
第1中継管11は、栽培槽本体100aと養殖槽本体200aとの間に配置され、第1中継管11の一方の開口端11aが第1給水管の一方の開口端111aに接続され、第1中継管11の他方の開口端11bが第1排水管211の一方の開口端211aに接続されている(
図2(b)参照)。その結果、第1給水管111と第1排水管211とが第1中継管11により連結されることとなり、これにより、バルブ付き第1排水口210からの排水を栽培槽本体100a内の栽培棚110より低い位置に流す第1配管1が形成されている。
【0057】
(第2配管2)
第2配管2は、栽培槽本体100a内に設けられた栽培槽側配管(第2給水管)112と、養殖槽本体200a内に設けられた養殖槽側配管(第2排水管)212と、栽培槽本体100aと養殖槽本体200aとの間に設けられた中間配管(第2中継管)12とを有する。
【0058】
ここで、第2給水管112は、直線状の給水基管112aと給水基管112aの側面に取り付けられた複数の直線状の給水枝管112bとを有し、給水基管112aは、栽培棚110と第1給水管111との間に、栽培槽本体100aの底面に平行となるように設けられている。給水基管112aの開口している一方の端部112cは、栽培槽本体100aの側壁から外部に突出し、給水基管112aの塞がれている他方の端部112eは、栽培槽本体100aの側壁の内面から所定距離離れて位置している。また、給水基管112aの側面に取り付けられた複数の給水枝管112bは、給水基管112aの上端縁(稜線)に沿って一定間隔で複数配置されており、これらの給水枝管112bは栽培棚110を貫通してその上側に突出するように配置されており、給水枝管112bの上端の開口112dは、栽培棚110より高い位置に位置している。
【0059】
第2排水管212は、略L字状に折り曲げられた形状を有し、一方の先端部212aが養殖槽本体200aの側壁から外部に突出するように配置されており、他方の先端部212bが養殖槽本体200a内で第2排水口210に接続されている。
【0060】
第2中継管12は、栽培槽本体100aと養殖槽本体200aとの間に配置され、第2中継管12の一方の開口端12aが第2給水管112の給水基管112aの一方の開口端112cに接続され、第2中継管12の他方の開口端12bが第2排水管212の一方の開口端212aに接続されている(
図2(b)参照)。その結果、第2給水管112と第2排水管212とが第2中継管12により連結されることとなり、これにより、第2排水口220からの排水を栽培槽本体100a内の栽培棚110より高い位置に流し込む第2配管2が形成されている。
【0061】
(第3配管3)
第3配管3は、栽培槽100の水を養殖槽200に戻すための配管を有する。第3配管3は栽培槽100から養殖槽200に水を強制的に移動させる手段としてポンプ10が設けられ得る。さらに、第3配管のポンプ下流側には気液混合装置20が設けられ得る。この気液混合装置20は、栽培槽100から排出された排水に空気および酸素の少なくとも一方(ここでは、空気と酸素の両方)を混合して養殖槽200に送るように構成されている。
【0062】
さらに具体的に説明する。
【0063】
第3配管3は、さらに、栽培槽本体100aおよび養殖槽本体200aの外部に配置された槽外配管113と、養殖槽本体200a内に配置された養殖槽内配管213とを有する。
【0064】
ここで、養殖槽内配管213は、養殖槽本体200a内の養殖槽仕切板240の下側に気液混合装置20からの気液を供給する、対向する一対の第1養殖槽側配管213aおよび第2養殖槽側配管213bを含み得る。
【0065】
また、槽外配管113は、栽培槽本体100aの底部と循環ポンプ10とを接続するポンプ上流側配管113aと、循環ポンプ10と気液混合装置20とをつなぐポンプ下流側配管113bと、気液混合装置20で得られた気液を対向する一対の養殖槽側配管213aおよび213bに送り込む気液供給管113cとを有する。
【0066】
また、栽培養殖システム1000は、養殖槽本体200a内での水位が第2排水口220を超えて上昇したときに、水が養殖槽本体200aから溢れるのを回避するためのオーバーフロー配管4を有している。
【0067】
このオーバーフロー配管4は、養殖槽本体200aの第2排水口220よりも高い位置に設けられたオーバーフロー排水管214と、栽培槽本体100aの第2給水管112の給水枝管112bの水の出口(開口)112dよりも高い位置に設けられたオーバーフロー給水管114と、オーバーフロー排水管214とオーバーフロー給水管114とをつなぐオーバーフロー中継管14とを有している。ここで、養殖槽本体200aのオーバーフロー排水管214からオーバーフロー中継管14およびオーバーフロー給水管114を介して栽培槽本体100aに流れ込んだ水は、栽培棚110を経由せずに栽培槽本体100a内の底部に溜まるようにオーバーフロー給水管114の先端開口(水出口)は、栽培棚110から離れた位置に配置されている。
【0068】
この実施形態1の栽培養殖システム1000では、このような構成のオーバーフロー配管4を備えることで、何かの異常により養殖槽本体200a内で水位が第2排水口220を超えて上昇したときでも、水が養殖槽本体200aから溢れるのを回避することができる。
【0069】
また、栽培養殖システム1000では、水の蒸発により栽培槽100と養殖槽200との間で循環する水の全体量が所定の下限値より低下したときには、例えば、栽培槽100と養殖槽200の両方に設けた水位センサの出力に基づいて、循環水の水量が規定の下限値を下回ったことを検出し、図示しない水補給管を介して外部から循環水が補給されるようになっている。
【0070】
次に動作について説明する。
【0071】
図4および
図5は、
図1に示す栽培養殖システムの動作を説明するための側面図であり、養殖槽での水位がバルブ付き第1排水口210の上端位置から上昇する様子を示し、
図5は、養殖槽での水位が第2排水口220の上端位置まで上昇した状態を示す。
【0072】
操作者はこの栽培養殖システム1000の利用を開始する際には、栽培槽100および養殖槽200での貯水量が運転開始時の適切な水量となるように外部の水源(図示せず)から栽培槽100および養殖槽200に水を供給する。
【0073】
ここで、運転開始時は、例えば、養殖槽200での水位が第2排水口220の上端位置にあり、かつ、栽培槽100での水位が第1給水管111と第2給水管112との中間位置にある。図に示す実施形態においては、栽培槽100の水位は第1給水管111と第2給水管112との中間位置としているが、本発明はこれに限定されない。養殖槽および栽培槽の効率などによって変化し得るものである。例えば、栽培槽における植物の作付け表面積を広くし、養殖槽における養殖表面積を狭くした場合には、栽培槽100での水位が第1給水管111と第2給水管112との中間よりも高い位置になり得る。
【0074】
その後、養殖槽200に養殖の対象となる魚類を投入し、栽培槽100に栽培の対象となる植物Ptを収容した栽培棚110を設置し、操作パネル50の操作により制御部による栽培養殖システム1000の自動運転を開始する。
【0075】
なお、この実施形態1では、制御部は、循環ポンプ10を駆動することにより栽培槽100と養殖槽200との間で水を循環させ、バルブ付き第1排水口210および第2排水口220の開閉制御を行うことにより、水の循環を継続しつつ、植物に水が供給される状態と供給されない状態とを切り替える。
【0076】
以下具体的に説明する。
【0077】
栽培養殖システム1000では、循環ポンプ10の駆動により、水位の落差により養殖槽200から栽培槽100への水の流れが生ずるように栽培槽100の水が養殖槽200に移動する。
【0078】
この状態で、制御部は、バルブ付き第1排水口210が開いた状態と、バルブ付き第1排水口210が閉じた状態とが所定期間の周期で交互に切り替わるようにバルブ付き第1排水口210の開閉を制御する。
【0079】
(バルブ付き第1排水口210が閉じた状態での水の流れ)
バルブ付き第1排水口210の閉状態では、バルブ付き第1排水口210からの排水は行われないため、養殖槽200の水位は、
図4に示すように徐々に上昇し、
図5に示すように、開状態である第2排水口220の上端の高さまで上昇すると、そこで維持される。
【0080】
なぜなら、バルブ付き第1排水口210が閉じている状態では、栽培槽100から養殖槽200に水が戻ってくることで養殖槽200の水位がバルブ付き第1排水口210の上端位置より高くなっても、バルブ付き第1排水口210からの排水は行われず、養殖槽200の水位が第2排水口220の上端位置まで上昇したときに、初めて、養殖槽200内の水が第2排水口220の上端位置にある取水口220aから排出されるからである。
【0081】
従って、バルブ付き第1排水口210を閉じた状態では、養殖槽200からは、第2排水口220および第2配管2を介して栽培槽100に水が流れることになる。このとき、栽培槽100では、養殖槽200からの水が第2配管2により栽培棚110より高い位置に流し込まれることとなり、栽培棚110で栽培されている植物Ptに水が供給されることとなる。栽培棚110に供給された水は、栽培棚110から落下して栽培槽本体100aの下部に溜まることとなる。
【0082】
栽培槽本体100aの底部に溜まっている水は各フィルター150a~150cにてろ過されて栽培槽本願100aからポンプ上流側配管113aを介して循環ポンプ10に至り、さらにポンプ下流側配管113bを介して気液混合装置20に至る。
【0083】
気液混合装置20では、栽培槽100から排出された水に空気および酸素が混入されて気液が生成され、生成された気液は気液供給管113cを介して、養殖槽本体200a内に設けられている第1の養殖槽側配管213aおよび第2養殖槽側配管213bに流れる。
【0084】
これらの配管213aおよび213bに流れ込んだ気液は、これらの配管213aおよび213bに形成されている養殖側給水口13bから養殖槽本体200aの底部に流出して、活性化剤(マテラ石)を含む養殖槽側フィルター250を通過して養殖槽仕切板240を超えて養殖槽本体200a内を上昇し、第2排水口220の上端の高さに達すると、第2排水口220から再び栽培槽100に排出される。
【0085】
そして、バルブ付き第1排水口210が閉じた状態で所定期間が経過すると、制御部は、タイマー機能によりバルブ付き第1排水口210の閉状態が所定期間続いたことを検出してバルブ付き第1排水口210が開くようにバルブ付き第1排水口210を制御する。
【0086】
(バルブ付き第1排水口210が開いた状態での水の流れ)
バルブ付き第1排水口210が開くと、バルブ付き第1排水口210から養殖槽200内の水が排水され、このことから、養殖槽200内の水位は、第2排水口220の上端位置からバルブ付き第1排水口210の上端位置まで降下することとなる。その結果、第2排水口220からの排水は行われなくなる。
【0087】
従って、バルブ付き第1排水口210が開いた状態では、養殖槽200からは、バルブ付き第1排水口210および第1配管1を介して栽培槽100に水が流れる。このとき、栽培槽100では、養殖槽200からの水が栽培棚110より低い位置に流し込まれることとなり、栽培棚110で栽培されている植物Ptに水が供給されないこととなる。
【0088】
栽培槽100内の栽培棚110より低い位置に流し込まれる水は、そのまま落下して栽培槽本体100aの下部に溜まることとなる。
【0089】
このようにして栽培槽本体100aの底部に溜まっている水も、栽培棚110を通って栽培棚110から落下して栽培槽本体100aの下部に溜まった水と同様に、各フィルター150a~150cにてろ過されて栽培槽本体100aからポンプ上流側配管113aを介して循環ポンプ10に至り、さらにポンプ下流側配管113bを介して気液混合装置20に至る。
【0090】
気液混合装置20では、栽培槽100から排出された水は空気および酸素を混入されて気液として、第1の養殖槽側配管213aおよび第2養殖槽側配管213bを介して養殖槽200に戻る。
【0091】
そして、バルブ付き第1排水口210が開いた状態で一定期間が経過すると、制御部はタイマー機能によりバルブ付き第1排水口210の開状態が一定期間続いたことを検出してバルブ付き第1排水口210が閉じるようにバルブ付き第1排水口210を制御する。
【0092】
その後は、上述したようにバルブ付き第1排水口210からの排出は行われなくなり、養殖槽200の水位が第2排水口220の上端位置まで上昇した時点で、第2排水口220からの排水が再度行われる。
【0093】
このように、本実施形態1の栽培養殖システム1000では、栽培槽100と養殖槽200との間での水の循環を維持しつつ、バルブ付き第1排水口210が開いている状態とバルブ付き第1排水口210が閉じている状態とを所定の期間が経過するたびに切り替えることにより、養殖槽200からの排水が栽培槽100の栽培棚110より高い位置に供給される状態と、養殖槽200からの排水が栽培槽100の栽培棚110より低い位置に給水される状態とが切り替えられる。
【0094】
その結果、本発明は、簡単な排水口のバルブ制御という簡単な構成で、植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽との間での水の循環を維持しつつ、所定期間栽培槽の植物への水の供給を停止可能な栽培養殖システムおよび栽培養殖方法を得ることができる。その結果、植物の栽培において植物の根腐りを防止することが可能となった。また、植物の根元が水に接触する状態と空気に接触する状態とが繰り返されることによって、植物の成長に有益な刺激を与えることが可能となり、植物の成長のさらなる効率化を図ることが可能となる。さらに、養殖槽の水位を第1の位置と第2の位置とで所定期間交互に繰り返すことで、特に潮の干満に影響を受ける海水で育つ魚類(貝類や藻類も含む)への成長の促進効果が期待できる。
【0095】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、植物を栽培する栽培槽と魚類を養殖する養殖槽との間での水の循環を維持しつつ、所定期間栽培槽の植物への水の供給を停止可能な栽培養殖システムおよび栽培養殖方法を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 第1配管
2 第2配管
3 第3配管
100 栽培槽
110 栽培棚
200 養殖槽
210 バルブ付き第1排水口
220 第2排水口
1000 栽培養殖システム