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  • 特開-抗菌シート及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003169
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】抗菌シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/02 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
A61L2/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104180
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】507212768
【氏名又は名称】三菱ケミカルグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】齊田 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴朗
(72)【発明者】
【氏名】益田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】柳下 崇
(72)【発明者】
【氏名】エレーナ イバノバ
(72)【発明者】
【氏名】デンバー リンクレイター
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA21
4C058AA25
4C058BB02
4C058EE29
(57)【要約】
【課題】ナノピラー構造による抗菌効果を有する、新規な抗菌シートの提供。
【解決手段】表面に複数のナノピラー12を有する熱可塑性樹脂層14を備え、熱可塑性樹脂層14がナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンからなる群から選ばれる1種以上を含み、ナノピラー12の高さが25~300nmである、抗菌シート10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のナノピラーを有する熱可塑性樹脂層を備え、
前記熱可塑性樹脂層がナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンからなる群から選ばれる1種以上を含み、
前記ナノピラーの高さが25~300nmである、抗菌シート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂がナイロンである、請求項1に記載の抗菌シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗菌シートを製造する方法であって、熱インプリント法で前記熱可塑性樹脂層を形成する工程を有する、抗菌シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生剤は、人や家畜の疾病治療、農畜水産物の生産性の向上、食品の保存等の目的で、医薬品、動物用医薬品、農薬、飼料添加物、食品添加物等として用いられている。
近年、複数種類の抗生剤に対して抵抗性を有し、抗生剤が効かない、又は効きにくくなった耐性菌の出現が問題になっている。そのため、耐性菌の出現の抑制等を目的として抗生剤の使用が制限される傾向にある。
【0003】
抗生剤を用いることなく抗菌効果を発揮できる技術として、物品の表面にナノサイズの凸部(ナノピラー)をける方法が知られている。
特許文献1、2には、表面に複数の凸部を有する合成高分子膜であって、前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の凸部の2次元的な大きさが20nm超500nm未満の範囲内にあり、前記表面が殺菌効果を有する合成高分子膜が記載されている。実施例では、光インプリント法により、紫外線硬化性樹脂の硬化膜表面に凸部を形成する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/163018号
【特許文献2】特開2016-120478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光インプリント法は転写性に優れ、ナノピラーを形成する方法として好適であるが、使用できる樹脂材料が限定的である。
抗菌性を有する物品は、その用途拡大に伴って材質の多様化が期待されている。
本発明は、ナノピラー構造による抗菌効果を有する、新規な抗菌シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 表面に複数のナノピラーを有する熱可塑性樹脂層を備え、前記熱可塑性樹脂層がナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンからなる群から選ばれる1種以上を含み、前記ナノピラーの高さが25~300nmである、抗菌シート。
[2] 前記熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂がナイロンである、[1]の抗菌シート。
[3] 前記[1]又は[2]の抗菌シートを製造する方法であって、熱インプリント法で前記熱可塑性樹脂層を形成する工程を有する、抗菌シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ナノピラー構造による抗菌効果を有する抗菌シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の抗菌シートの一例を示す断面図である。
図2】本発明の抗菌シートの他の例を示す断面図である。
図3】例4の抗菌シートの表面の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の両側の数値をその範囲内に含む。
「菌」とは、細菌、菌類等を意味する。細菌としては、黄色ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌、乳酸菌、緑膿菌、レンサ球菌等が挙げられる。菌類としては、糸状菌(カビ、キノコ)、酵母等が挙げられる。酵母としては、サッカロマイセス、シゾサッカロマイセス、クリプトコッカス、カンジタ等が挙げられる。
【0010】
<抗菌シート>
図1は、抗菌シートの一例を示す断面図である。図2は、抗菌シートの他の例を示す断面図である。
図1、2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。また、図2において、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の抗菌シート10、20は、表面に複数のナノピラー(微細な凸部)12を有する熱可塑性樹脂層14を備える。
図1の抗菌シート10は熱可塑性樹脂層14からなる。熱可塑性樹脂層14の厚さ(ナノピラーの高さを含む)は、例えば1~1000μmが好ましい。
【0011】
図2の抗菌シート20は、熱可塑性樹脂層14のナノピラー12とは反対の面上に、他の熱可塑性樹脂層16が積層された積層体である。他の熱可塑性樹脂層16の両面はナノピラー構造を有しない平坦面である。熱可塑性樹脂層14と他の熱可塑性樹脂層16とは、材質が同じであってもよく、異なってもよい。
【0012】
なお、図示していないが、熱可塑性樹脂層14のナノピラー12とは反対の面上に、他の熱可塑性樹脂層16が2層以上積層されていてもよい。2層以上の他の熱可塑性樹脂層16の材質は互いに同じでもよく、異なってもよい。
また、抗菌シートの表側及び裏側の最外層が、ナノピラー12を有する熱可塑性樹脂層14であってもよい。すなわち、抗菌シートの表面及び裏面の両方にナノピラー12が存在してもよい。表面のナノピラー12の材質及び形状と、裏面のナノピラー12の材質及び形状とは同じであってもよく、異なってもよい。
また、抗菌シートの表側及び裏側の最外層がナノピラー12を有する熱可塑性樹脂層14であり、その間に、他の熱可塑性樹脂層16の1層以上が積層された積層体であってもよい。
【0013】
抗菌シートが熱可塑性樹脂層14及び他の熱可塑性樹脂層16を有する場合、抗菌シートの厚さ(ナノピラーの高さを含む)は、例えば1~1000μmが好ましい。
【0014】
熱可塑性樹脂層14を構成する樹脂は、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレン(PE)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
これらの樹脂は、食品包装用シートの材料として好適であるという利点を有する。特に、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方に対して優れた抗菌効果が得られやすい点でナイロンが好ましい。
熱可塑性樹脂層14は、樹脂のほかに添加剤を含んでもよい。添加剤は、熱可塑性樹脂において公知のものを使用できる。例えば食品包材用途において公知の添加剤が挙げられる。
【0015】
他の熱可塑性樹脂層16を構成する樹脂は特に限定されない。公知の熱可塑性樹脂を使用できる。具体例としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂等が挙げられる。
他の熱可塑性樹脂層16は、樹脂のほかに添加剤を含んでもよい。添加剤は、熱可塑性樹脂において公知のものを使用できる。
【0016】
ナノピラー12の高さは25~300nmであり、25~270nmが好ましく、25~250nmがより好ましい。ナノピラー12の高さが前記範囲の下限値以上であると、充分な抗菌効果が得られやすい。上限値以下であると、複数のナノピラー12を形成しやすい。
「ナノピラー12の高さ」は、走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察して、ナノピラー12の最頂部と、ナノピラー12間に存在する凹部の最底部との高低差Hを測定した。
20か所の高低差Hの度数分布(階級幅5nm)を求め、最も度数が高い階級の代表値(60nm、65nm、70nm…等)を「ナノピラー12の高さ」とした。
例えば、57.5nm以上62.5nm未満の階級の度数が最も多いときのナノピラー12の高さは60nmであり、62.5nm以上67.5nm未満の階級の度数が最も多いときのナノピラー12の高さは65nmである。
【0017】
隣接するナノピラー12のピッチは、30~100nmが好ましく、40~80nmがより好ましく、50~70nmがさらに好ましい。ナノピラー12のピッチが前記範囲の下限値以上であると、複数のナノピラー12を形成しやすい。上限値以下であると、充分な抗菌効果が得られやすい。
「隣接するナノピラー12のピッチ」は、SEMで断面を観察して、ナノピラー12の最頂部の中心から隣接するナノピラー12の最頂部の中心までの距離Pを測定した。20か所の距離Pの度数分布(階級幅10nm)を求め、最も度数が多い階級の代表値(50nm、60nm、70nm…等)を「ナノピラー12のピッチ」とした。
例えば、55nm以上65nm未満の階級の度数が最も多いときのナノピラー12のピッチは60nmであり、65nm以上75nm未満の階級の度数が最も多いときのナノピラー12のピッチは70nmである。
【0018】
「ナノピラー12の高さ」を「ナノピラー12のピッチ」で除したアスペクト比(高さ/ピッチ)は、0.25~10が好ましく、0.33~6.75がより好ましく、0.38~5.0がさらに好ましい。ナノピラー12のアスペクト比が前記範囲の下限値以上であると、充分な抗菌効果が得られやすい。上限値以下であると、ナノピラー12の充分な耐久性が得られやすい。
【0019】
ナノピラー12の形状は、略円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が例示できる。特に、円錐形状、角錐形状等のように、高さ方向に直交する断面の面積が、頂部から底部に向かって連続的に増加する形状が好ましい。
【0020】
<抗菌シートの製造方法>
本実施形態の抗菌シートの製造方法は、複数のナノピラー12を表面に有する熱可塑性樹脂層14を形成する工程を有する。
熱可塑性樹脂層14を形成する方法は、工業的に低コストで大面積を製造できるという点から、熱インプリント法が好ましい。
【0021】
熱インプリント法は公知の方法を用いることができる。
例えば、成形された熱可塑性樹脂層の表面を、加熱軟化させるとともに、複数の凹部を表面に有するモールドで、前記熱可塑性樹脂層の表面を押圧する工程(プレス工程)を有する方法が好ましい。
プレス工程は、例えば、加熱したモールドを熱可塑性樹脂層に接触させて押圧する方法、加熱していないモールドを加熱した熱可塑性樹脂層に接触させて押圧する方法、又は加熱したモールドを加熱した熱可塑性樹脂層に接触させて押圧する方法等で実施できる。
熱可塑性樹脂層の表面を加熱軟化させる際の温度は、熱プレス時にモールドの深い箇所に十分入り込む程度に柔らかく、かつ簡単に流れ落ちてモールドから逃げてしまわない程度に硬さを保持させる範囲が好ましい。例えば、熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+5℃が好ましく、ガラス転移温度~ガラス転移温度+3℃がより好ましく、ガラス転移温度~ガラス転移温度+2℃がさらに好ましい。熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂が結晶性樹脂の場合は同様の理由で、例えば、融点~融点+5℃が好ましく、融点~融点+3℃がより好ましく、融点~融点+2℃がさらに好ましい。
プレス工程では押圧した状態を所定時間(プレス時間)保持し、その後、熱可塑性樹脂層を冷却固化させ、モールドと熱可塑性樹脂層とを分離する。こうして、表面にナノピラーを有する熱可塑性樹脂層が得られる。
【0022】
モールドとしては、例えば、下記のモールドが挙げられる。
・リソグラフィ法によって複数の凹部表面に設けたモールド。
・レーザー加工によって複数の凹部を表面に設けたモールド。
・複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールド。
・複数の凸部を有するマザーモールドから電鋳法等で複製されたレプリカモールド。
特に、低コストで大面積のモールドを製造しやすい点から、陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドが好ましい。
【0023】
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法は公知の方法を用いることができる。
好ましい実施態様では、まず、アルミニウムシートを、酸性浴中で所定の電圧にて陽極酸化する方法で、アルミニウムシートの表面に多孔質の陽極酸化皮膜(以下、ポーラスアルミナ層ともいう。)を形成する。
アルミニウムの純度は、細孔の規則性を高めやすい点で、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。
酸性浴の電解液としては硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液等を使用できる。陽極酸化条件(浴温、電圧、電解時間)によってポーラスアルミナ層の凹凸形状を調整できる。
【0024】
さらに、ポーラスアルミナ層に対してエッチングを行い、細孔の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理ともいう。)を行うことが好ましい。好ましくは、酸化皮膜を溶解するエッチング液に、ポーラスアルミナ層を浸漬する方法で細孔径拡大処理を行う。エッチング液として、例えばリン酸水溶液を使用できる。エッチング条件(エッチング液の濃度、エッチング液の温度、浸漬時間)によってポーラスアルミナ層の凹凸形状を調整できる。
【0025】
細孔径拡大処理の後に、再び陽極酸化することが好ましい。これにより、細孔の底部に小径の細孔を形成できる。
さらに、細孔径拡大処理と、細孔径拡大処理後の陽極酸化を繰り返すことが好ましい。これにより、開口部から深さ方向に向かって直径が連続的に減少する形状の細孔を形成できる。前記細孔径拡大処理と陽極酸化を繰り返す場合、最後は陽極酸化で終わることが好ましい。陽極酸化および細孔径拡大処理の時間、回数、条件等によって細孔の形状を調整できる。
【0026】
熱可塑性樹脂層14におけるナノピラー12のピッチは、ポーラスアルミナ層における細孔のピッチに対応する。ポーラスアルミナ層における細孔のピッチは、電解液の種類や陽極酸化の電圧によって調整できる。電解液については、硫酸、シュウ酸、リン酸の順に細孔のピッチが大きくなる傾向がある。陽極酸化の電圧については、電圧を低くすると細孔間のピッチが小さくなり、電圧を高くすると細孔のピッチが大きくなる傾向がある。
【0027】
こうして得られたポーラスアルミナ層をモールドとして使用する前に、離型剤を表面に付与する離型処理を行ってもよい。離型処理の方法は、例えば、フッ素含有シラン化合物をコーティングする方法、シリコーン樹脂またはフッ素含有ポリマーをコーティングする方法、フッ素含有化合物を蒸着する方法等が挙げられる。
【実施例0028】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
[例1~5]
本例では熱インプリント法で表1に示す抗菌シートを製造した。例1~5は実施例である。
【0030】
(モールドの製造)
アルミニウムを陽極酸化する方法でモールドを作成した。
(a)純度99.99%のアルミニウムシートを、酸性浴中で陽極酸化し、表面にポーラスアルミナ層を形成した。陽極酸化条件は目的とする凹凸形状に応じて下記の範囲で変更した。
電解液:硫酸又はシュウ酸の希薄水溶液。
浴温:0~30℃
電圧:10~25V
電解時間:3秒~20分間
(b)ポーラスアルミナ層が形成されたアルミニウムシートを、リン酸(HPO)水溶液中に浸漬してエッチングする方法で細孔径拡大処理を行った。ポーラスアルミナ層のエッチング条件は目的とする凹凸形状に応じて下記の範囲で変更した。
リン酸水溶液のリン酸濃度:5~30質量%
リン酸水溶液の温度:0~30℃
浸漬時間:2~270秒間
(c)上記工程(b)の後に、再び上記工程(a)を行う操作を、工程(b)が1回~5回となるように、かつ最後が工程(a)となるように繰り返して熱インプリント用モールドを作製した。
得られたポーラスアルミナ層の表面をフッ素系離型剤で離型処理したものを、モールドとして熱インプリントに使用した。フッ素系離型剤としては、フルオロアルキルシラン(ダイキン工業社製品名「オプツールDSX」)を用いた。
【0031】
(抗菌シートの製造)
上記で得たモールドを用い、三菱ケミカル社製の小型卓上プレス設備にて、熱可塑性樹脂フィルムの熱インプリントを行った。熱可塑性樹脂フィルムとして下記を使用した。
例1~3:ナイロン単層フィルム、三菱ケミカル社製品名「ダイアミロンCz」、フィルム厚さ100μm。
例4:ポリエチレンテレフタレート単層フィルム、ジェイフィルム社製品名「ノバクリアーSP307」、フィルム厚さ250μm。
例5:最外層がポリプロピレン層である多層フィルム、三菱ケミカル社製品名「ダイアミロンH436」、フィルム厚さ130μm。
【0032】
表1に示すプレス条件でプレス工程を行った後、室温17℃まで冷却し、固化した熱可塑性樹脂フィルムを離型して抗菌シートを得た。
得られた抗菌シートの断面をSEMで観察し、ナノピラーの高さ及びピッチを測定した。測定結果を表1に示す。
図3は、例4の抗菌シートの表面の走査型電子顕微鏡像である。
【0033】
(抗菌効果の評価方法)
ATCCから購入した緑膿菌(9721)と、CIPフランスから購入した黄色ブドウ球菌(T65.8)を用いて抗菌効果を確認した。
緑膿菌と黄色ブドウ球菌をそれぞれ栄養寒天培地で継代培養し、Oxoid製栄養ブロス中、OD600が0.1になるように懸濁液を調製した。
各例の抗菌シートから10mm×10mmの大きさのサンプルを切り出した。ポリスチレン製24穴の細胞培養プレートを用い、各ウェルに上記懸濁液の1mLと上記サンプルを入れ、25℃で18時間、暗所で静かに培養した。培養後、サンプルを取り出し、蒸留水で優しく洗い、生細胞・死細胞同時染色キット(LIVE/DEAD(登録商標)Baclight(商標))を用いて染色した。共焦点レーザー顕微鏡で観察し、観察された全菌数に対する死菌数の割合(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0034】
[参考例1~3]
参考例1~3は、熱インプリントを行う前の熱可塑性樹脂フィルムから10mm×10mmの大きさのサンプルを切り出し、上記と同様にして死菌数割合(%)を調べた。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果に示されるように、表面にナノピラーを形成した例1~3の抗菌シートは、熱インプリントを行う前の参考例1に比べて死菌数割合が高かった。
同様に例4の抗菌シートは参考例2に比べて死菌数割合が高く、例5の抗菌シートは、参考例3に比べて死菌数割合が高かった。
特に例2の抗菌シートは、グラム陰性菌である緑膿菌及びグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌の両方に対して、優れた抗菌性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の抗菌シートは、食品の包装材料として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0038】
10、20 抗菌シート
12 ナノピラー
14 熱可塑性樹脂層
16 他の熱可塑性樹脂層
図1
図2
図3