(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031731
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ジオポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20230302BHJP
C04B 24/30 20060101ALI20230302BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20230302BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B24/30 Z
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C04B18/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137404
(22)【出願日】2021-08-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年3月30日 https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20210330_1.html https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20210330_100.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】518208716
【氏名又は名称】ポゾリス ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富井 孝喜
(72)【発明者】
【氏名】青木 峻二
(72)【発明者】
【氏名】木谷 憶人
(72)【発明者】
【氏名】シダート ロイ チョウドゥリー
(72)【発明者】
【氏名】ジン チェ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA27
4G112PA29
4G112PB34
4G112PC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可使時間が長く、ポンプ圧送により現場打設が可能な、常温で硬化する耐熱性のジオポリマー組成物の提供。
【解決手段】活性フィラー、及びアルカリ活性剤を含有するジオポリマー組成物であり、前記アルカリ活性剤が、分散剤を含有し、前記分散剤が、少なくとも下記構成単位A、B、C及びDを含む重縮合物を含有し、前記分散剤の含有量が、前記活性フィラーに対して、1.2質量%~1.5質量%であることを特徴とする、ポンプ圧送により現場打設が可能な耐熱性ジオポリマー組成物。
A)特定のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニエーテル、又は、フォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性フィラー、及びアルカリ活性剤、を含有するジオポリマー組成物であり、
前記アルカリ活性剤が、分散剤を含有し、
前記分散剤が、少なくとも下記構成単位A、B、C及びDを含む重縮合物を含有し、
前記分散剤の含有量が、前記活性フィラーに対して、1.2質量%~1.5質量%であることを特徴とする、ポンプ圧送により現場打設が可能な耐熱性ジオポリマー組成物。
A)下式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
【化1】
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニエーテル、又は、フォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類
【請求項2】
前記活性フィラーが、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含有する請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項3】
前記活性フィラーは、前記フライアッシュ、前記高炉スラグ微粉末、及び前記シリカフュームの合計量が少なくとも90%であり、
前記フライアッシュ、前記高炉スラグ微粉末、及び前記シリカフュームの配合比(質量比)が、前記フライアッシュ:前記高炉スラグ微粉末:前記シリカフューム=20%-75%:15%-70%:5%-20%であり、
前記フライアッシュがJIS II種灰である請求項2に記載のジオポリマー組成物。
【請求項4】
前記フライアッシュ、前記高炉スラグ微粉末、及び前記シリカフュームの質量比が、6:3:1である請求項3に記載のジオポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な産業に対し、二酸化炭素の排出量を減少させることが要請されている。建築物についても例外ではなく、二酸化炭素を排出しない材料の提供が望まれている。
従来、建築物には、コンクリート組成物やモルタル組成物などの水硬化性組成物を用いることが多い。これらの組成物には、製造過程において多量の二酸化炭素を排出するセメントが多く使用されている。従って、二酸化炭素の排出量を減少させる観点から、水硬化性組成物においてセメントの使用量を低減させることが望まれている。
【0003】
そこで、セメントを用いずに硬化させることができるジオポリマーコンクリートが提案されている。一般的に、ジオポリマーコンクリートは、アルミナ及びケイ酸を含有する活性フィラーと、アルカリとが重縮合した物質である。そして、活性フィラーとして用いる化合物、及びアルカリとして用いる化合物については、種々の検討がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジオポリマーは、例えば、特許文献1に記載されたものをはじめとして、多くのものが提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載されたジオポリマー組成物は、粘性が高く、製造後20分間~30分間程度で固まり始めるため、ポンプ圧送が難しかった。よって、従来のジオポリマー組成物は、大断面の補修への適用や、狭あいな場所への打ち込み及び充填等への適用ができず、使用できる場面が限られていることが問題であった。
【0006】
本発明は、可使時間が長く、ポンプ圧送により現場打設が可能な常温で硬化する耐熱性のジオポリマー組成物を提供することを目的とする。
なお、本発明において可使時間が長いとは、ジオポリマー組成物を製造してから、硬化するまでの時間が、従来のジオポリマーコンクリートより長いことを指す。従来のジオポリマーコンクリートが硬化するまでの時間は、約60分間程度である。
【0007】
可使時間が長いか否かについては、ジオポリマー組成物のフロー値(スランプフロー値又はフロー値)の経時変化により調べることができる。ジオポリマー組成物を製造してから60分間以上、フロー値が大幅に低下しないことが、可使時間が長いことになる。製造してから一定時間、ジオポリマー組成物のフロー値が大幅に低下しないことは、ジオポリマー組成物の粘度がある程度低いまま保っていられることと言える。このため、フロー値が大幅に低下しないことは、ポンプ圧送している間、粘度を低く保っていられるということである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、
活性フィラー、及びアルカリ活性剤を含有し、
前記アルカリ活性剤が、分散剤を含有し、
前記分散剤が、少なくとも下記構成単位A、B、C及びDを含む重縮合物を含有し、
前記分散剤の含有量が、前記活性フィラーに対して、1.2質量%~1.5質量%である、ポンプ圧送により現場打設が可能な耐熱性ジオポリマー組成物である。
A)下式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
【化1】
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニエーテル、又は、フォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類
また、本発明のジオポリマー組成物は、活性フィラーが、フライアッシュ、及び高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含有することが好ましい。
前記活性フィラーは、前記フライアッシュ、前記高炉スラグ微粉末、及び前記シリカフュームの合計量が少なくとも90%であり、
前記フライアッシュ、前記高炉スラグ微粉末、及び前記シリカフュームの配合比(質量比)が、前記フライアッシュ:前記高炉スラグ微粉末:前記シリカフューム=20%-75%:15%-70%:5%-20%であり、前記フライアッシュがJIS II種灰であることが好ましい。
また、本発明のジオポリマー組成物は、前記フライアッシュ、前記高炉スラグ微粉末、及び前記シリカフュームの質量比が、6:3:1であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可使時間が長く、ポンプ圧送により現場打設が可能な常温で硬化する耐熱性のジオポリマー組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1~4、及び比較例1のモルタル組成物のフロー値の経時変化を示した図である。
【
図2】
図2は、実施例5~6のコンクリート組成物のスランプフロー値の経時変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ジオポリマー組成物)
本発明のジオポリマー組成物は、活性フィラー、及びアルカリ活性剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有することが好ましい。
【0012】
<活性フィラー>
活性フィラーは、後述のアルカリ活性剤と接すると、活性フィラーから溶出した金属イオンと、シリカとが架橋して脱水縮重合する。
活性フィラーは、上記のような反応を行うことができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、メタカオリン(粘土鉱物の焼成物)、もみ殻灰、油ヤシの搾りかすを焼成したパームアッシュ、廃ガラスや都市ごみ焼却灰や下水道汚泥の焼却灰などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、入手しやすさから、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームが好ましい。
【0013】
<<フライアッシュ(FA)>>
フライアッシュは、石炭火力発電所において発生する産業廃棄物である。
フライアッシュは、シリカ(SiO2)、及びアルミナ(Al2O3)を多く含み、これらの他に、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウムを含む。
ジオポリマー組成物に用いられるフライアッシュは、4種類の品質(フライアッシュI種~IV種)がJISに規定されている。本発明では、どの品質でも用いることができるが、これらの中でも、硬化物の強度を高める点から、II種のフライアッシュ(JIS II種灰)が好ましい。
【0014】
フライアッシュの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、100kg/m3以上350kg/m3以下が好ましく、250kg/m3以上350kg/m3以下が好ましい。フライアッシュの含有量が、この数値範囲内であるとジオポリマー組成物の硬化物の強度を保持しつつ、硬化物の熱及び酸に対しての耐性を強化できる。
【0015】
<<高炉スラグ微粉末(BS)>>
高炉スラグ微粉末(以下、「高炉スラグ」と略記することがある)は、鉄鉱石から銑鉄を製造する工程において、鉄鉱石に含まれる鉄以外の成分と、副原料の石灰石及びコークス中の灰をあわせて回収したもの(副産物)である。高炉スラグには、CaO、SiO2、Al2O3、MgOなどが含有されている。
【0016】
高炉スラグは、通常のジオポリマー組成物に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。高炉スラグとしては、例えば、JIS R 5211「高炉セメント」において使用される高炉スラグ、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に適合する高炉スラグなどが挙げられる。
【0017】
高炉スラグの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100kg/m3以上350kg/m3以下が好ましく、125kg/m3以上175kg/m3以下がより好ましい。高炉スラグ微粉末の含有量が、この数値範囲内であると、ジオポリマー組成物の硬化物の強度を高めることができる。
【0018】
<<シリカフューム(SF)>>
シリカフュームとは、フェロシリコン、電融ジルコニア、金属シリコン等の精錬過程で発生する排ガスを集塵して得られる微粒子(一次粒子の平均粒子径が0.1μm~1.0μm程度)である。シリカフュームは、非晶質SiO2を主成分とし、その他にアルミナ、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化チタンなどを含有する。
【0019】
シリカフュームの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10kg/m3以上60kg/m3以下が好ましく、45kg/m3以上55kg/m3以下がより好ましい。シリカフュームの含有量が、この数値範囲内であると、ジオポリマー組成物の硬化物の流動性を良好にできる。
【0020】
-活性フィラーの内訳-
活性フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームの合計量が、90%以上であることが好ましい。
【0021】
-活性フィラーの質量比-
活性フィラーの質量比は、目的に応じて適宜選択できるが、ジオポリマー組成物の可使時間を長くする点、及びジオポリマー組成物の硬化物の強度の点から、フライアッシュ:高炉スラグ微粉末:シリカフューム=2.0~7.5:1.5~7.0:0.5~2.0(20%~75%:15%~70%:5%~20%)が好ましく、3.0~7.0:2.0~6.0:0.5~1.5がより好ましく、5.0~7.0:2.0~3.5:0.5~1.5がさらに好ましく、6:3:1が特に好ましい。
【0022】
<アルカリ活性剤>
アルカリ活性剤は、LiやNaやKといった金属アルカリを含み、さらに分散剤を含有する溶液である。更に必要に応じてその他の成分を含有しても良い。
【0023】
<<分散剤>>
分散剤は、ジオポリマー組成物の粘度を低下させるために含有される。
分散剤は、少なくとも下記構成単位A、B、C及びDを含む重縮合物を含有する。
A)下記式(I)のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル
【化2】
[式中、mは、3~280の整数である]
B)少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体
C)フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニエーテル、又は、フォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体
D)アルデヒド類
【0024】
構成単位Bは、少なくとも1つの水酸基を持つ環式化合物及びその誘導体である。構成単位Bの具体的としては、例えば、ベンゼン-1,2-ジオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシフタル酸、2,3-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,2-ジヒドロキシナフタレン-5-スルホン酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-5-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種の芳香族化合物が挙げられる。
【0025】
構成単位Cは、フェノール、エチレンオキサイドの繰り返し数が1若しくは2のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、又は、フォスフェート若しくはフォスホネートを含むフェノキシエチル誘導体である。構成単位Cの具体例としては、例えば、フェノール、2-フェノキシエタノール、2-フェノキシエチルホスフェート、2-フェノキシエチルホスホネート、2-フェノキシ酢酸、2-(2-フェノキシエトキシ)エタノール、2-(2-フェノキシエトキシ)エチルホスフェート、2-(2-フェノキシエトキシ)エチルホスホネート、2-[-(2-ヒドロキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスフェート、2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスホネート、2-[4-(2-ホスホナトオキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスフェート、2-[4-(2-ホスホナトオキシエトキシ)フェノキシ]エチルホスホネート、メトキシフェノール並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種の他の芳香族化合物が挙げられる。
【0026】
構成単位Dは、アルデヒド類である。構成単位Dの具体例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキシル酸、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドスルホン酸、ベンズアルデヒドジスルホン酸、バニリン及びイソバニリン、並びにそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1種のアルデヒドなどが挙げられる。
【0027】
分散剤の含有量は、ジオポリマー組成物の可使時間の点から、活性フィラーに対して、1.2質量%~1.5質量%であり、1.2質量%~1.4質量%が好ましく、1.25質量%~1.35質量%がより好ましい。分散剤の含有量が、上記の数値範囲内であると、十分に長い可使時間を有するジオポリマー組成物が得られる。
なお、分散剤の含有量は、固形分に換算した値である。
【0028】
<<その他の成分>>
アルカリ活性剤に含有されるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、アクティベーター、消泡剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
<その他の成分>
その他の成分としては、通常のコンクリート組成物に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細骨材、粗骨材、繊維、水などが挙げられる。
【0030】
<<細骨材>>
細骨材としては、通常のコンクリート組成物に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、天然物であっても人工物であってもよい。細骨材の具体例としては、例えば、フェロニッケルスラグ(日本工業規格JIS A 5011-2のFNS1.2A適合品、FNS5A適合品)、銅スラグ(日本工業規格JIS A 5011-3のCUS1.2適合品)、電気炉酸化スラグ(日本工業規格JIS A 5011-4のEFS1.2のN又はH適合品)、硬質砂岩砕砂、珪砂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
細骨材の含有量は、700kg/m3以上900kg/m3以下が好ましい。細骨材の含有量が、前記数値範囲内であれば、ジオポリマー組成物の硬化物の強度が良好になる。
【0032】
<<粗骨材>>
粗骨材は、通常のコンクリート組成物に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、天然物であっても人工物(合成粗骨材)であってもよい。
天然産粗骨材は、例えば、日本工業規格JIS A 5005「コンクリート用砕石」の砕石2015、砕石2013、砕石2010、砕石1505、砕石1305、日本工業規格JIS A 001「道路用砕石」の5号又は6号等に適合する粗骨材などが挙げられる。その具体例としては、例えば、硬質砂岩砕石、安山岩砕石、玄武岩砕石、石英片岩砕石、石灰砕石などが挙げられる。
合成粗骨材としては、例えば、日本工業規格JIS A 5011-2のフェロニッケルスラグ骨材(フェロニッケル製造時の副産物)に適合する粗骨材などが挙げられる。その具体例としては、例えば、人造コランダム、焼結ボーキサイト等が挙げられる。
【0033】
粗骨材の含有量としては、700kg/m3以上950kg/m3以下が好ましい。粗骨材の含有量が、前記数値範囲内であれば、ジオポリマー組成物の流動性及びジオポリマー性組成物の硬化物の強度が良好になる。
【0034】
<<繊維>>
繊維は、通常のコンクリート組成物に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、鋼繊維、有機繊維、天然物であっても人工物であってもよい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオポリマー組成物の硬化物の強度を向上させることができる点から、鋼繊維が好ましい。
鋼繊維は、直径0.1mm~0.7mm、アスペクト比20~100程度のものを用いることが好ましい。
【0035】
繊維の含有量としては、20kg/m3以上80kg/m3以下が好ましい。繊維の含有量が、前記数値範囲内であれば、ジオポリマー組成物の流動性及びジオポリマー組成物の硬化物の強度が良好になる。
【0036】
<<水>>
水は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
水の添加量としては、50kg/m3以上60kg/m3以下が好ましい。水の添加量が、前記数値範囲内であれば、ジオポリマー組成物の流動性及びジオポリマー組成物の硬化物の強度が良好になる。
【0037】
本発明において、水(W)と活性フィラー(P)との質量比をW/Pと表記することがある。この場合、Wとは、前記の添加する水、アルカリ活性剤に含まれる水及び骨材の表面水などを含む、ジオポリマー組成物中に含まれる全ての水の質量を意味し、Pとはセメント組成物中に含まれる全ての活性フィラーの質量を意味する。すなわち、W/Pとはジオポリマー組成物中に含まれる全ての水の質量をジオポリマー組成物中に含まれる全ての活性フィラーの質量で除した質量比を意味する。
【0038】
<ジオポリマー組成物の製造方法>
ジオポリマー組成物の製造方法は、通常のジオポリマー組成物の製造方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。また、ジオポリマー組成物の製造に用いる装置についても、通常のジオポリマー組成物の製造に用いる装置を用いることができる。
【実施例0039】
以下、開示の技術の実施例を説明するが、開示の技術は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(製造例1)
<ポリマー1の合成>
撹拌機と計量供給ポンプとを備えた加熱可能な反応器に、2-フェノキシエタノール621.8質量部を20℃で窒素下に充填した。次いで、冷却下にポリリン酸449.7質量部を、温度が35℃を上回らないようにして100分間にわたって添加した。計量供給後、この反応混合物を約70℃でさらに15分間撹拌し、凝固前に移し換え、2-フェノキシエチルホスフェートを得た。
【0041】
撹拌機と計量供給ポンプとを備えた加熱可能な反応器に、ポリ(エチレングリコール)モノフェニルエーテル(平均分子量2000g/モル)300質量部、3,4-ジヒドロキシ安息香酸46.2質量部、2-フェノキシエチルホスフェート33質量部、及びパラホルムアルデヒド19.9質量部を、90℃で窒素下に充填した。この反応混合物を撹拌下に110℃に加熱し、次いでメタンスルホン酸(70%)41質量部を、反応温度が115℃を上回らないようにして25分間以内で添加した。計量供給後、この反応混合物を110℃でさらに2.5時間撹拌した。その後、冷却し、水350質量部と混合し、30分間100℃に加熱し、50%苛性ソーダ液で中和してpH値を約7.0にし、ポリマー1を得た。
【0042】
(製造例2)
<ポリマー2の合成>
撹拌機、pH装置、温度計、及び滴下ロートを備えた反応容器中に、単量体として、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(25EO)80質量部、アクリル酸ナトリウム20質量部、水122質量部、3-メルカプトプロピオン酸1.0質量部、30質量%過酸化水素水1.9質量部、及び硫酸第一鉄七水和物0.03質量部を投入した後、撹拌を行いながら、温度30℃以下、pH6.0以下に保った状態で反応を行った。反応中は、温度30℃以下、pH6.0以下になるように調整しながら撹拌を継続し、還元剤としてロンガリット(ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム)3.0質量部を添加して30分反応させ、ポリマー2を含有する水溶液227gを得た。得られたポリマー2をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより質量平均分子量を測定し、ポリエチレングリコール換算値で、20,000であった。
なお、上記のEOは、エチレンオキサイドの略称である。
【0043】
(実施例1~4、比較例1)
<モルタル組成物の作成>
表1に示す配合により、実施例1~4、比較例1のモルタル組成物(ジオポリマー組成物の一種)を作製した。各モルタル組成物は、容器に細骨材の半量、活性フィラー、細骨材の半量の順に入れ、20秒間練り混ぜを行った。その後、水、及びアルカリ活性剤を入れ、60秒間練り混ぜを行い、掻き落とし(壁面に付着した粉体を容器の中央に入れる作業)を行い、120秒間練り混ぜを行い、モルタル組成物を得た。なお、モルタル組成物の作製に用いた成分の詳細については、表2に示した。
【0044】
作成したモルタル組成物のフロー値、凝結時間、及び圧縮強度を測定した。測定結果を表1に示す。また、フロー値の経時変化を
図1に示した。
フロー値は、JIS R 5201に準拠して測定した。ただし、一部の試験を除いて15打のタンピングを行わないフロー値とした。また、凝結時間はJIS A 1147の手順により測定し、圧縮強度は、JIS A 1108の手順により測定した。
【0045】
【0046】
表1中の数値は、以下の量を示している。
アクティベーターの含有量は、アクティベーターの固形分の活性フィラーに対する割合(質量%)である。
分散剤1の含有量は、分散剤1の固形分の活性フィラーに対する割合(質量%)である。
分散剤2の含有量は、分散剤2の固形分の活性フィラーに対する割合(質量%)である。
細骨材の含有量は、活性フィラーに対する割合(質量%)である。
【0047】
【0048】
実施例1~4のモルタル組成物は、フロー値がすべて180cm以上であり、120分間後においても、その値が大幅に減少しなかったのに対し、比較例1のモルタル組成物は10分の段階において、既に固い組成物となり、60分間後にはフロー値の測定ができないほど硬化した。このため、特定の分散剤を含有することで、フロー値の低下を抑制できることが明らかになった。
次に、活性フィラーにおける質量比については、FA:BS:SF=3:6:1では、120分間後のフロー値がごくわずかであるが減少していることがわかった。また、FA:BS:SF=7:2:1であると、1日での圧縮強度が3.9N/mm2であり、小さいことがわかった。
このため、FA:BS:SF=6:3:1がより好ましい割合であることがわかった。
【0049】
(実施例5~6)
<コンクリート組成物の作成1(実験室における練り混ぜ)>
表3に示す配合により、実施例5~6のコンクリート組成物(ジオポリマー組成物の一種)を作製した。各コンクリート組成物は、容器に細骨材の半量、活性フィラー、細骨材の半量、粗骨材、鋼繊維の順に入れ、20秒間練り混ぜを行った。その後、水、及びアルカリ活性剤を入れ、60秒間練り混ぜを行い、掻き落とし(壁面に付着した粉体を容器の中央に入れる作業)を行い、120秒間練り混ぜを行って、作製した。なお、コンクリート組成物の作成に用いた成分は、上述のモルタル組成物と同様のものを用いた。
【0050】
【0051】
表3中の数値は、以下の量を示している。
アクティベーターの含有量は、アクティベーターの固形分の活性フィラーの量に対する割合(質量%)である。
分散剤1の含有量は、分散剤1の固形分の活性フィラーに対する割合(質量%)である。
細骨材の含有量は、活性フィラーに対する割合(質量%)である。
粗骨材の含有量は、活性フィラーに対する割合(質量%)である。
鋼繊維の含有量は、配合容積(L)ジオポリマー組成物全体の体積(1,000L)に対する割合(容積%)である。
【0052】
実施例5、6のスランプフロー値は、120分間後においても、大幅な減少を示さなかった。
また、実施例6の1日後の圧縮強度においては、脱型できなかったため、強度が非常に小さいことが明らかになった。
したがって、活性フィラーの質量比は、FA:BS:SF=6:3:1が好ましいことが明らかになった。
【0053】
以上のモルタル組成物、及びコンクリート組成物の実験結果から、活性フィラーの質量比は、FA:BS:SF=6:3:1に固定し、スケールアップしたコンクリート組成物の作製を行うこととした。
【0054】
(実施例7~12、比較例2~3)
<コンクリート組成物の作製2(スケールアップした練り混ぜ)>
表4に示す基本配合(1.0m3換算)に基づき、コンクリート組成物を製造した。なお、分散剤については、フレッシュ性状を確認して、水と分散剤との量を調整しながら練り混ぜを実施し、最終的には、表5のW/P及び分散剤量となるように調製した。なお、使用した材料の詳細は、表4に記載した。
細骨材、粗骨材、及び活性フィラーを計量し、合計量で500L分を現場練り型ミキサ(容量:1.0m3)に入れ、空練りを60秒間行った。次に、アルカリ活性剤を入れ、180秒間練り混ぜを行った。更に、鋼繊維を入れ、練り混ぜを60秒間~120秒間行い、コンクリート組成物を得た。
【0055】
【0056】
<コンクリート組成物の評価>
得られたコンクリート組成物について、スランプフロー値を測定し、材料の分離の有無について目視で観察した。スランプフロー値及び分離の有無からポンプ圧送性を評価した。スランプフロー値は、JIS A 1101に準拠して測定した。
ポンプ圧送性は、スランプフロー値が、555mm~718mmであり、材料の分離がないものをポンプ圧送性が良好(〇)と評価した。評価結果は、表5に示した。
【0057】
【0058】
表5中、分散剤の含有量は、分散剤の固形分の活性フィラーに対する割合(質量%)である。
なお、得られたコンクリート組成物は、すべて材料分離していなかった。
【0059】
分散剤の含有量が1.1質量%以下である比較例2、3は、スランプフロー値が小さく、ポンプ圧送に耐えられる程度の固さのコンクリート組成物とはならなかったのに対し、分散剤の含有量が、1.3質量%である実施例7~12は、ポンプ圧送に耐えられる程度のスランプフロー値を示すコンクリート組成物となった。
なお、分散剤は、活性フィラー及びアルカリ活性剤の混合物の粘土の急激な上昇を防止するために使用するものであるので、1.3質量%においてポンプ圧送性が良好であったということは、1.5質量%程度であっても、ポンプ圧送性が良好であると言える。
【0060】
(実施例13~14、比較例4)
<コンクリート組成物の耐熱性試験>
表6に示す組成のコンクリート組成物を製造した。
実施例13~14のコンクリート組成物は、容器に細骨材の半量、活性フィラー、細骨材の半量、粗骨材、鋼繊維の順に入れ、30秒間練り混ぜを行った。その後、水、及びアルカリ活性剤を入れ、60秒間練り混ぜを行い、掻き落とし(壁面に付着した粉体を容器の中央に入れる作業)を行い、120秒間練り混ぜを行って、作製した。なお、実施例13~14のコンクリート組成物の作成に用いた成分は、上述のポンプ圧送試験に用いたコンクリート組成物と同様のものを用いた。なお、使用材料は表4に記載されたものと同じとした。
比較例4のコンクリート組成物は、容器に細骨材の半量、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)、細骨材の半量、粗骨材、鋼繊維の順に入れ、30秒間練り混ぜを行った。その後、水を入れ、60秒間練り混ぜを行い、掻き落とし(壁面に付着した粉体を容器の中央に入れる作業)を行い、120秒間練り混ぜを行って、作製した。なお、使用材料のうち普通ポルトランドセメント以外は表4に記載されているものと同じとした。
【0061】
得られたコンクリート組成物を型に入れ、乾燥させ、500mm(縦)×500mm(横)×200mm(厚み)の試験体を作製した。
得られた試験体を片面から600℃、5時間加熱した。
加熱前後の圧縮強度をJIS A 1108の手順により測定し、加熱前後の圧縮強度の低下率を下記の式に基づき、算出した。測定結果、及び計算結果は表6に記載した。
(式) 加熱後の圧縮強度(N/mm2)/加熱前の圧縮強度(N/mm2)×100
【0062】
【0063】
表6中の数値は、以下の量を示している。
アクティベーターは、アクティベーターの固形分の活性フィラーに対する割合(質量%)である。
分散剤の含有量は、分散剤1の固形分の活性フィラーに対する割合(質量%)である。
細骨材の含有量は、活性フィラーに対する割合(質量%)である。
粗骨材の含有量は、活性フィラーに対する割合(質量%)である。
鋼繊維の含有量は、配合容積(L)ジオポリマー組成物全体の体積(1,000L)に対する割合(容積%)である。
【0064】
ジオポリマーコンクリートである実施例13、14は、圧縮強度の低下率が96~98%であり、加熱前後の圧縮強度がほぼ変化しなかったのに対し、通常のセメントコンクリートである比較例4は、圧縮強度の低下率が75%であり、加熱すると圧縮強度が低下することがわかった。これらの結果から、ジオポリマー組成物は優れた耐熱性を有することが明らかになった。