(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003174
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】フィルム一体ガスケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20221228BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20221228BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20221228BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20221228BHJP
H01M 8/0286 20160101ALI20221228BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221228BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/12
B29C45/26
H01M8/0273
H01M8/0286
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104187
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 創平
(72)【発明者】
【氏名】浦川 哲也
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5H126
【Fターム(参考)】
4F202AA26
4F202AA40
4F202AD05
4F202AD08
4F202AD19
4F202AD20
4F202AG03
4F202AH33
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB27
4F202CQ01
4F206AA26
4F206AA40
4F206AD05
4F206AD08
4F206AD19
4F206AD20
4F206AG03
4F206AH33
4F206AR12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB25
4F206JL02
4F206JN12
4F206JQ81
5H126AA13
5H126BB06
5H126EE11
(57)【要約】
【課題】成形不良の抑制を図ることのできるフィルム一体ガスケットの製造方法を提供する。
【解決手段】第1下型310と、第1上型320とを、第1下型310と第1上型320との間に樹脂フィルム120が配された状態で型締めし、第1キャビティ321に成形材料を充填し、第1ガスケット131を成形する第1工程と、第1ガスケット131が配される溝331を有する第2下型330と、第2上型340とを、第2下型330と第2上型340との間に、第1ガスケット131が一体的に設けられた樹脂フィルム120が配された状態で型締めし、第2キャビティ341に成形材料を充填し、第2ガスケットを成形する第2工程と、を有し、第1開口幅W32は、第2開口幅W34よりも狭いことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの一方の面に第1ガスケットが一体的に設けられ、かつ前記フィルムの他方の面であって第1ガスケットの真裏の位置に第1ガスケットに沿うように第2ガスケットが一体的に設けられる部分を有するフィルム一体ガスケットの製造方法であって、
第1下型と、第1ガスケットを成形する第1キャビティを有する第1上型とを、第1下型と第1上型との間に前記フィルムが配された状態で型締めし、第1キャビティに成形材料を充填し、第1ガスケットを成形する第1工程と、
第1ガスケットが配される溝を有する第2下型と、第2ガスケットを成形する第2キャビティを有する第2上型とを、第2下型と第2上型との間に、第1ガスケットが一体的に設けられた前記フィルムが配された状態で型締めし、第2キャビティに成形材料を充填し、第2ガスケットを成形する第2工程と、
を有し、
第1キャビティにおける第1キャビティが伸びる方向に対して垂直方向の前記フィルム側の第1開口幅は、第2キャビティにおける第2キャビティが伸びる方向に対して垂直方向の前記フィルム側の第2開口幅よりも狭いことを特徴とするフィルム一体ガスケットの製造方法。
【請求項2】
第2開口幅は、前記溝における前記溝が伸びる方向に対して垂直方向の前記フィルム側の第3開口幅以上であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム一体ガスケットの製造方法。
【請求項3】
前記フィルムを介して、第2開口幅の中心の真裏の位置に、第3開口幅の中心が位置することを特徴とする請求項2に記載のフィルム一体ガスケットの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムは、燃料電池に設けられる電解質膜を補強する樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1,2または3に記載のフィルム一体ガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの両面にガスケットが一体的に設けられるフィルム一体ガスケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池には、電解質膜が備えられている。この電解質膜を樹脂フィルムによって補強する技術が知られている。また、燃料電池を組み立てる際など、取り扱い性を高めるために、樹脂フィルムの両面にガスケットを一体的に設ける技術も知られている。
図4及び
図5を参照して、このような従来技術に係るフィルム一体ガスケット、及びその製造方法について説明する。
図4は従来技術に係るフィルム一体ガスケットの断面図の一部である。
図5は従来技術に係るフィルム一体ガスケットの製造工程図であり、フィルム一体ガスケット及び金型の断面図の一部を示している。
【0003】
従来技術に係るフィルム一体ガスケット500は、樹脂フィルム510と、樹脂フィルム510の両面に樹脂フィルム510に対して一体的に設けられる第1ガスケット521及び第2ガスケット522とを備えている。第2ガスケット522は、第1ガスケット521と寸法及び形状が同一で、かつ樹脂フィルム510を介して第1ガスケット521の真裏の位置に第1ガスケット521に沿うように設けられている。
【0004】
図5を参照して、フィルム一体ガスケット500の製造方法ついて説明する。まず、第1下型610と、第1ガスケット521を成形するキャビティ621を有する上型620とが、第1下型610と上型620との間に樹脂フィルム510が配された状態で型締めされる(
図5(a)参照)。そして、キャビティ621に成形材料が充填され、第1ガスケット521が成形される。その後、型が開かれて、第1ガスケット521が一体的に成形された樹脂フィルム510が取り出される。
【0005】
次に、第1ガスケット521が配される溝631を有する第2下型630と、第2ガスケット522を成形するキャビティ621を有する上型620とが、第2下型630と上型620との間に、第1ガスケット521が一体的に設けられた樹脂フィルム510が配された状態で型締めされる(
図5(b)参照)。そして、キャビティ621に成形材料が充填され、第2ガスケット522が成形される。その後、型が開かれて、第1ガスケット521及び第2ガスケット522が一体的に成形された樹脂フィルム510が取り出される。
【0006】
上記の通り、第1ガスケット521及び第2ガスケット522を成形するためのキャビティ621を有する上型620は、同一の金型、又は、同一の寸法形状のキャビティ621を有する金型が用いられる。これに対し、下型については、第1ガスケット521を成形する場合には、上面のうち、少なくとも上型620のキャビティ621に対向する部位が平面で構成される第1下型610が用いられる。そして、第2ガスケット522を成形する場合には、第1ガスケット521が干渉しないように、第1ガスケット521が配される溝631を有する第2下型630が用いられる。
【0007】
溝631と第1ガスケット521とが干渉しないように、溝631の両側面及び下面と、第1ガスケット521との間には隙間が形成されるように構成されている。従って、溝631における溝631が伸びる方向に対して垂直方向の樹脂フィルム側の開口幅W63は、キャビティ621におけるキャビティ621が伸びる方向に対して垂直方向の樹脂フィルム側の開口幅W62よりも広くなるように構成されている。そのため、第2ガスケッ
ト522を成形するために型締めを行った際においては、第1ガスケット521と溝631の両側面との間には、それぞれ隙間Sが形成された状態となる。これにより、樹脂フィルム510を介して、上型620におけるキャビティ621の両側の部分の真裏側には、上記の隙間Sが存在することになる。従って、樹脂フィルム510は柔軟性があるため、図中、丸で囲んだX部分においては、上型620の樹脂フィルム510に対する押圧力が不十分になり易い。そのため、バリが生じ易く後処理が大変だったり、成形材料が漏れてしまったりするなど成形不良が生じてしまうことがある。
【0008】
なお、燃料電池に備えられるフィルム一体ガスケットを製造する場合に限らず、特に、柔軟性を有するフィルムの両面にガスケットが一体的に設けられるフィルム一体ガスケットであれば、製造時において、同様の問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-67371号公報
【特許文献2】特開2009-99531号公報
【特許文献3】特開2006-344541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、成形不良の抑制を図ることのできるフィルム一体ガスケットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0012】
すなわち、本発明のフィルム一体ガスケットの製造方法は、フィルムの一方の面に第1ガスケットが一体的に設けられ、かつ前記フィルムの他方の面であって第1ガスケットの真裏の位置に第1ガスケットに沿うように第2ガスケットが一体的に設けられる部分を有するフィルム一体ガスケットの製造方法であって、
第1下型と、第1ガスケットを成形する第1キャビティを有する第1上型とを、第1下型と第1上型との間に前記フィルムが配された状態で型締めし、第1キャビティに成形材料を充填し、第1ガスケットを成形する第1工程と、
第1ガスケットが配される溝を有する第2下型と、第2ガスケットを成形する第2キャビティを有する第2上型とを、第2下型と第2上型との間に、第1ガスケットが一体的に設けられた前記フィルムが配された状態で型締めし、第2キャビティに成形材料を充填し、第2ガスケットを成形する第2工程と、を有し、
第1キャビティにおける第1キャビティが伸びる方向に対して垂直方向の前記フィルム側の第1開口幅は、第2キャビティにおける第2キャビティが伸びる方向に対して垂直方向の前記フィルム側の第2開口幅よりも狭いことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、第1キャビティにより成形される第1ガスケットにおけるフィルム側の幅は、第2キャビティにおける第2開口幅よりも狭い。これにより、第2下型における溝の溝幅を狭くすることができる。そのため、フィルムを介して、第2上型における第2キャビティの両側の部分の真裏側に形成される隙間を狭くする、または、そのような隙間をなくすことが可能となる。
【0014】
第2開口幅は、前記溝における前記溝が伸びる方向に対して垂直方向の前記フィルム側の第3開口幅以上であるとよい。
【0015】
これにより、フィルムを介して、第2上型における第2キャビティの両側の部分の真裏側に隙間ができないようにすることができる。
【0016】
前記フィルムを介して、第2開口幅の中心の真裏の位置に、第3開口幅の中心が位置することを特徴とする。
【0017】
これにより、フィルムを介して、第2上型における第2キャビティの両側の部分の真裏側に隙間はできなくなる。
【0018】
前記フィルムは、燃料電池に設けられる電解質膜を補強する樹脂フィルムであるとよい。
【0019】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、成形不良の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明の実施例に係るフィルム一体ガスケットの平面図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例に係るフィルム一体ガスケットを備える燃料電池の断面図の一部である。
【
図3】
図3は本発明の実施例に係るフィルム一体ガスケットの製造工程図である。
【
図4】
図4は従来技術に係るフィルム一体ガスケットの断面図の一部である。
【
図5】
図5は従来技術に係るフィルム一体ガスケットの製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下の実施例においては、燃料電池に用いられるフィルム一体ガスケットの場合を例にして説明する。
【0023】
(実施例)
図1~
図3を参照して、本発明の実施例に係るフィルム一体ガスケットの製造方法について説明する。
図1は本発明の実施例に係るフィルム一体ガスケットの平面図である。
図2は本発明の実施例に係るフィルム一体ガスケットを備える燃料電池の断面図の一部であり、図中のフィルム一体ガスケットの断面図は、
図1中のAA断面図に相当する。
図3は本発明の実施例に係るフィルム一体ガスケットの製造工程図であり、フィルム一体ガスケット及び金型の断面図の一部を示している。
【0024】
<燃料電池>
図2を参照して、本実施例に係るフィルム一体ガスケットを備える燃料電池について説明する。一般的に、燃料電池は、複数の単セルからなるセルスタックとして構成される。
図2においては、複数の単セルからなるセルスタックのうちの一部の断面図を示している。セルスタックは、MEA(Membrane Electrode Assembly)110を一体的に備えるフィルム一体ガスケット100と、セパレータ200が交互に積層されるように構成される。そして、フィルム一体ガスケット100と、その両面に設けられる一対のセパレータ200によって、単セル10が構成される。
図2においては、一つの単セルについてのみ示している。
【0025】
MEA110は、電解質膜111と、電解質膜111の両面に備えられる一対のガス拡散層112とを備えている。また、セパレータ200において、ガス拡散層112に対向する面には、燃料ガスや酸化剤ガスや冷却液などが流れる流路(不図示)が形成されている。
【0026】
本実施例においては、電解質膜111を補強する樹脂フィルム120が、MEA110と一体的に設けられている。樹脂フィルム120は、電解質膜111の両面を支持するように、一対のフィルム121,122により構成されている。樹脂フィルム120の好適な材料としては、PEN(ポリエチレンナフタレート)やPI(ポリイミド)などの樹脂材料を挙げることができる。
【0027】
そして、樹脂フィルム120とセパレータ200との間には、燃料ガスや酸化剤ガスや冷却液などが漏れるのを防ぐために、第1ガスケット131及び第2ガスケット132が設けられている。本実施例においては、樹脂フィルム120に、これらの第1ガスケット131及び第2ガスケット132が一体的に設けられている。このように、樹脂フィルム120に第1ガスケット131及び第2ガスケット132が一体的に設けられた部材を、「フィルム一体ガスケット」と呼ぶことができる。第1ガスケット131及び第2ガスケット132の好適な材料としては、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やVMQ(ビニルメチルシリコーンゴム)などのゴム材料を挙げることができる。
【0028】
<フィルム一体ガスケット>
燃料電池に備えられるフィルム一体ガスケット100について、より詳細に説明する。上記の通り、フィルム一体ガスケット100は、MEA110と、MEA110に一体的に設けられる樹脂フィルム120とを備えている。そして、樹脂フィルム120には、複数のマニホルド101が設けられている。マニホルド101は、燃料ガス,酸化剤ガス、及び冷却液などを各セルに分配するために設けられている。
【0029】
そして、上記の燃料ガスなどが外部などに漏れてしまうことを防止するために、MEA110が設けられている領域の周囲、及びマニホルド101の周囲に、それぞれ第1ガスケット131及び第2ガスケット132が樹脂フィルム120に一体的に設けられている。なお、
図1においては、第2ガスケット132が設けられている部位を太線にて示している。
【0030】
第1ガスケット131は、樹脂フィルム120の一方の面に、樹脂フィルム120に対して一体的に設けられている。そして、第2ガスケット132は、樹脂フィルム120の他方の面であって第1ガスケット131の真裏の位置に第1ガスケット131に沿うように樹脂フィルム120に対して一体的に設けられている。ただし、セルスタックの構造に応じて、第2ガスケット132は、第1ガスケット131が設けられている全域に対して、その真裏の位置に設けられる場合もあるし、一部の領域に対して、その真裏の位置に設けられる場合もある。また、第1ガスケット131における第1ガスケット131が伸びる方向に対して垂直方向の樹脂フィルム120側の幅W1は、第2ガスケット132における第2ガスケット132が伸びる方向に対して垂直方向の樹脂フィルム120側の幅W2よりも狭くなるように構成されている。更に、第2ガスケット132における幅W2の中心は、樹脂フィルム120を介して、第1ガスケット131における幅W1の中心の真裏に位置するように構成されている。ただし、本発明においては、W2の中心が、樹脂フィルム120を介してW1の中心の真裏の位置にない場合を排除するものではない。なお、本実施例における第1ガスケット131は、密封性を高めるために、セパレータ200に接する側に、樹脂フィルム120側の幅W1よりも幅の狭いシール突起131aが設けられている。第2ガスケット132にも同様のシール突起132aが設けられている。
【0031】
<フィルム一体ガスケットの製造方法>
図3を参照して、本実施例に係るフィルム一体ガスケット100の製造方法について説明する。本実施例においては、樹脂フィルム120をインサート部品として第1ガスケット131を成形するインサート成形工程(第1工程)と、第1ガスケット131を一体的に備える樹脂フィルム120をインサート部品として第2ガスケット132を成形するインサート成形工程(第2工程)とを有している。
【0032】
図3(a)は第1工程について示している。第1工程において用いられるインサート成形用の金型は、第1下型310と、第1上型320とを備えている。第1上型320に、第1ガスケット131を成形する第1キャビティ321が設けられている。第1下型310については、上面のうち、少なくとも第1上型320の第1キャビティ321に対向する部位は平面で構成される。以上のように構成される金型を用い、第1下型310と第1上型320との間に樹脂フィルム120が配された状態で型締めされる。そして、第1キャビティ321に成形材料が充填され、第1ガスケット131が成形される。
【0033】
以上の第1工程の後に、型が開かれて、第1ガスケット131が一体的に成形された樹脂フィルム120が取り出される。
【0034】
図3(b)は第2工程について示している。第2工程において用いられるインサート成形用の金型は、第2下型330と、第2上型340とを備えている。第2上型340に、第2ガスケット132を成形する第2キャビティ341が設けられている。また、第2下型330には、第1ガスケット131が配される溝331が設けられている。以上のように構成される金型を用い、第2下型330と第2上型340との間に、第1ガスケット131が一体的に設けられた樹脂フィルム120が配された状態で型締めされる。なお、第1ガスケット131が溝331に配された状態で、型締めがなされる。型締め後に、第2キャビティ341に成形材料が充填され、第2ガスケット132が成形される。
【0035】
以上の第2工程の後に、型が開かれて、第1ガスケット131及び第2ガスケット132が一体的に成形された樹脂フィルム120が取り出される。その後、必要に応じてバリ取りなどの後処置が行われて、フィルム一体ガスケット100を得ることができる。
【0036】
ここで、第1上型320の第1キャビティ321における第1キャビティ321が伸びる方向に対して垂直方向の樹脂フィルム120側の開口幅を第1開口幅W32とする。また、第2上型340の第2キャビティ341における第2キャビティ341が伸びる方向に対して垂直方向の樹脂フィルム120側の開口幅を第2開口幅W34とする。更に、第2下型330の溝331における溝331が伸びる方向に対して垂直方向の樹脂フィルム120側の開口幅を第3開口幅W33とする。
【0037】
すると、第1開口幅W32<第2開口幅W34を満たすように構成されている。なお、第1キャビティ321により成形される第1ガスケット131における上記の幅W1は第1開口幅W32とほぼ等しくなる。また、第2キャビティ341により成形される第2ガスケット132における上記の幅W2は第2開口幅W34とほぼ等しくなる。
【0038】
また、本実施例においては、第2開口幅W34≧第3開口幅W33を満たすように構成されている。更に、樹脂フィルム120を介して、第2開口幅W34の中心の真裏の位置に、第3開口幅W33の中心が位置するように構成されている(
図3(b)参照)。
【0039】
<本実施例に係るフィルム一体ガスケットの製造方法の優れた点>
本実施例に係る製造方法によれば、第1開口幅W32<第2開口幅W34を満たすように構成されている。これにより、第2下型330における溝331の溝幅(第3開口幅W
33)を狭くすることができる。そのため、樹脂フィルム120を介して、第2上型340における第2キャビティ341の両側の部分の真裏側に形成される隙間を狭くする、または、そのような隙間をなくすことが可能となる。従って、第2上型340における第2キャビティ341の両側部分の樹脂フィルム120に対する押圧力が不十分になることを抑制することができる。これにより、バリの発生、及び成形材料の漏れを抑制することができ、成形不良を抑制することができる。
【0040】
そして、本実施例においては、第2開口幅W34≧第3開口幅W33を満たすように構成されているので、樹脂フィルム120を介して、第2上型340における第2キャビティ341の両側の部分の真裏側に隙間ができないようにすることができる。
【0041】
また、本実施例においては、第2開口幅W34≧第3開口幅W33を満たしつつ、樹脂フィルム120を介して、第2開口幅W34の中心の真裏の位置に、第3開口幅W33の中心が位置するように構成されている。これにより、第2開口幅W34=第3開口幅W33と設定しても、樹脂フィルム120を介して、第2上型340における第2キャビティ341の両側の部分の真裏側に隙間はできなくなる。
【0042】
このように、樹脂フィルム120を介して、第2上型340における第2キャビティ341の両側の部分の真裏側に隙間ができないようにすることで、第2上型340における第2キャビティ341の両側部分の樹脂フィルム120に対する押圧力を十分高めることができる。
【0043】
(その他)
上記実施例においては、第2開口幅W34≧第3開口幅W33を満たす場合の構成について示した。しかしながら、少なくとも、第1開口幅W32<第2開口幅W34を満たすように構成すれば、第2下型330における溝331の溝幅(第3開口幅W33)を狭くすることができる。従って、第1開口幅W32=第2開口幅W34とする場合に比べて、樹脂フィルム120を介して、第2上型340における第2キャビティ341の両側の部分の真裏側に形成される隙間を狭くすることができ、成形不良を抑制することが可能となる。
【0044】
また、本実施例においては、第2開口幅W34≧第3開口幅W33を満たしつつ、樹脂フィルム120を介して、第2開口幅W34の中心の真裏の位置に、第3開口幅W33の中心が位置するように構成する場合を示した。開口幅の中心の位置関係を、このように構成しない場合には、樹脂フィルム120を介して、第2上型340における第2キャビティ341の片側の部分の真裏側に隙間が形成され得る。しかしながら、第2開口幅W34≧第3開口幅W33を満たしていれば、そのような隙間は狭くできるので、成形不良を抑制することが可能となる。
【0045】
本実施例においては、フィルム一体ガスケットの一例として、燃料電池に備えられるフィルム一体ガスケットの場合を示した。しかしながら、本発明に係るフィルム一体ガスケットについては、燃料電池用に限らず、各種装置に適用することができる。また、フィルムの材料についても樹脂材に限定されることはない。特に、柔軟性が高いフィルムにより構成されるフィルム一体ガスケットの製造方法に本発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 単セル
100 フィルム一体ガスケット
101 マニホルド
110 MEA
111 電解質膜
112 ガス拡散層
120 樹脂フィルム
121,122 フィルム
131 第1ガスケット
131a シール突起
132 第2ガスケット
132a シール突起
200 セパレータ
310 第1下型
320 第1上型
321 第1キャビティ
330 第2下型
331 溝
340 第2上型
341 第2キャビティ
W32 第1開口幅
W33 第3開口幅
W34 第2開口幅