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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031742
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】貯留式災害用水洗トイレシステム
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20230302BHJP
   A47K 11/00 20060101ALI20230302BHJP
   E03F 5/10 20060101ALI20230302BHJP
   E03F 3/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
E03D11/00 A
A47K11/00 101
E03F5/10 Z
E03F3/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137420
(22)【出願日】2021-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】395017313
【氏名又は名称】三和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】綾 久
【テーマコード(参考)】
2D036
2D039
2D063
【Fターム(参考)】
2D036AA02
2D036BA31
2D036CA01
2D039AA02
2D039AB01
2D039CB02
2D039CC09
2D063BA14
2D063DA06
(57)【要約】
【課題】水洗式の便器を使用するとともに、排泄物の貯留期間を長くすることができる貯留式災害用水洗トイレシステムを提供する。
【解決手段】貯留式災害用水洗トイレシステム1aは、水を供給する給水部と、排泄物を受ける受け部を有し、汲水部から供給される地下水によって受け部が洗浄される便器と、便器から排出された排水W2が流通し、地中に埋設された上流側排水管7と、上流側排水管と接続され、排水を貯留する貯留部10と、貯留部と接続され、貯留部から排出された排水が流通する下流側排水管11と、貯留部における下流側排水管に接続された部分よりも上方の部分及び下流側排水管にそれぞれ接続され、貯留部から排出された排水が流通する溢れ管12と、下流側排水管における、貯留部に接続された部分と溢れ管に接続された部分との間の部分を開閉する開閉弁13と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を供給する給水部と、
排泄物を受ける受け部を有し、前記給水部から供給される前記水によって前記受け部が洗浄される便器と、
前記便器から排出された排水が流通し、地中に埋設された上流側排水管と、
前記上流側排水管と接続され、前記排水を貯留する貯留部と、
前記貯留部と接続され、前記貯留部から排出された前記排水が流通する下流側排水管と、
前記貯留部における前記下流側排水管に接続された部分よりも上方の部分及び前記下流側排水管にそれぞれ接続され、前記貯留部から排出された前記排水が流通する溢れ管と、
前記下流側排水管における、前記貯留部に接続された部分と前記溢れ管に接続された部分との間の部分を開閉する開閉弁と、
を備える貯留式災害用水洗トイレシステム。
【請求項2】
前記上流側排水管は、
前記便器及び前記貯留部とそれぞれ接続された排水管本体と、
前記貯留部における前記排水管本体に接続された部分よりも下方の部分、及び前記排水管本体にそれぞれ接続された分岐管と、
を有する請求項1に記載の貯留式災害用水洗トイレシステム。
【請求項3】
前記溢れ管における前記貯留部に接続される部分の高さは、前記排水管本体における前記貯留部に接続される部分の高さよりも上方に位置している請求項2に記載の貯留式災害用水洗トイレシステム。
【請求項4】
前記給水部は、
井戸と、
前記井戸から、前記水である地下水を汲み上げる汲水部と、
前記地下水を地表まで供給する供給部と、
前記地表で前記供給部に着脱可能に接続される着脱ポンプ部とを有し、
前記便器は、前記汲水部及び前記上流側排水管に着脱可能に接続される請求項1から3のいずれか一項に記載の貯留式災害用水洗トイレシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留式災害用水洗トイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震や洪水等の災害によって、建物や住居の施設機能の低下やライフラインである上下水道が損傷してしまう場合がある。この場合、施設内の水洗トイレが使用できなくなる。このような場合には、小学校や公園等の避難場所にて、仮設トイレが使用されている。
【0003】
このような仮設トイレとして、例えば、特許文献1には、予め避難場所に設置しておく貯留式災害用トイレシステムが挙げられている。この貯留式災害用トイレシステムは、排水管と、複数の縦管と、マンホール(貯留部)と、流出管(下流側排水管)と、を備えている。排水管は、地表面に沿って地中に埋設されている。複数の縦管は、上下方向に延伸する。複数の縦管は、排水管に、その長手方向に沿って互いに間隔をあけて接続される。マンホールには、排水管の一端部が接続される。流出管は、マンホールの側壁に接続され、マンホールと既設の下水管とを連結する。
【0004】
災害発生時には、各縦管の上端部に、仮設トイレ(便器)が留置される。予め、プール等の水を、排水管にためておく。貯留式災害用トイレシステムの仮設トイレを使用した場合は、縦管、排水管を介して、マンホール内に排泄物を排出できる。この貯留式災害用トイレシステムは、約100人が仮設トイレを使用した後で、水とともに排泄物を流す、いわゆる落下式マンホールトイレである。
特許文献1の貯留式災害用トイレシステムは、排泄物を貯める貯留式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-040387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この貯留式災害用トイレシステムは、仮設トイレが水で洗浄される水洗式ではない。従って、複数の利用者によって利用された場合には、においや雑菌等の衛生上の観点からも好ましくないという問題も有している。
また、仮設トイレを水で洗浄する場合には、この水もマンホールに流れ込む。このため、マンホールにおいて、排泄物を貯留可能となる、排泄物の貯留期間が短くなるという問題も有している。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、水洗式の便器を使用するとともに、排泄物の貯留期間を長くすることが可能な貯留式災害用水洗トイレシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一態様における貯留式災害用水洗トイレシステムは、水を供給する給水部と、排泄物を受ける受け部を有し、前記給水部から供給される前記水によって前記受け部が洗浄される便器と、前記便器から排出された排水が流通し、地中に埋設される上流側排水管と、前記上流側排水管と接続され、前記排水を貯留する貯留部と、前記貯留部と接続され、前記貯留部から排出された前記排水が流通する下流側排水管と、前記貯留部における前記下流側排水管に接続された部分よりも上方の部分及び前記下流側排水管にそれぞれ接続され、前記貯留部から排出された前記排水が流通する溢れ管と、前記下流側排水管における、前記貯留部に接続された部分と前記溢れ管に接続された部分との間の部分を開閉する開閉弁と、を備えることを特徴としている。
【0009】
この発明では、例えば、井戸によって汲み上げられた地下水、プールや貯水タンクの水である、給水部によって供給された水を利用して、便器の受け部を洗浄することができる。特に、災害時のような水を確保することが困難な状況であっても、便器の受け部を水で洗浄して、水洗式の便器を使用することができる。なお、貯留式災害用水洗トイレシステムは、感染症の対策にも有効である。
また、便器から排出された排水(排泄物及び水)は、災害時に下流側排水管の破損が無い場合には、上流側排水管を流通して貯留部に流れ込む。開閉弁を開いておくことで、排水は、貯留部から下流側排水管を下流側に流通する。
一方で、災害時に下流側排水管が破損した場合には、開閉弁を閉じておくことで、貯留部に貯留された排水は、下流側排水管から下流側に流通せず、貯留部で貯留される。
便器を一定期間使用すると、排水が、貯留部における溢れ管が接続された位置を超えるまで貯留される場合がある。このような場合であっても、排水における上澄み液は、貯留部から溢れ管、及び下流側排水管における溢れ管に接続された部分よりも下流側の部分を通して、下流側に流通する。
従って、貯留式災害用水洗トイレシステムにおいて、排泄物を貯留可能となる、排泄物の貯留期間を長くすることができる。
【0010】
また、前記貯留式災害用水洗トイレシステムにおいて、前記上流側排水管は、前記便器及び前記貯留部とそれぞれ接続された排水管本体と、前記貯留部における前記排水管本体に接続された部分よりも下方の部分、及び前記排水管本体にそれぞれ接続された分岐管と、を有してもよい。
この発明では、便器から排出された排水は、災害時に下流側排水管の破損が無い場合には、排水管本体における分岐管に接続された部分よりも上流側の部分、及び分岐管を流通して、貯留部に流れ込む。便器から排出された排水は、排水の流量が比較的多くなると、排水管本体全体及び分岐管をそれぞれ流通して、貯留部に流れ込む。従って、排水の流量が比較的少ない場合には、排水を貯留部における比較的下方の部分から貯留部に流れ込ませるとともに、排水の流量が比較的多い場合には、排水を貯留部における比較的下方の部分及び比較的上方の部分の両方から貯留部に流れ込ませることができる。
【0011】
また、前記貯留式災害用水洗トイレシステムにおいて、前記溢れ管における前記貯留部に接続される部分の高さは、前記排水管本体における前記貯留部に接続される部分の高さよりも上方に位置していてもよい。
この発明では、貯留部に貯留された排水の上端の位置が、排水管本体における貯留部に接続される部分の高さを超え、排水における上澄み液が排水管本体にある程度逆流しやすくなる場合がある。このような場合であっても、この上澄み液を、溢れ管、及び下流側排水管における溢れ管に接続された部分よりも下流側の部分を通して、下流側に流通させることができる。
【0012】
また、前記貯留式災害用水洗トイレシステムにおいて、前記給水部は、井戸と、前記井戸から、前記水である地下水を汲み上げる汲水部と、前記地下水を地表まで供給する供給部と、前記地表で前記供給部に着脱可能に接続される着脱ポンプ部とを有し、前記便器は、前記汲水部及び前記上流側排水管に着脱可能に接続されてもよい。
この発明では、災害時のような水を確保することが困難な状況であっても、安定して供給可能な地下水を井戸から汲み上げて利用することで、便器の受け部を地下水で洗浄して、便器を衛生的に使用することができる。また、便器が汲水部及び上流側排水管に対して、着脱ポンプ部が供給部に対してそれぞれ着脱可能とされている。このため、災害の発生していない通常時には、便器や着脱ポンプ部を、例えば保管用のボックス(収納箱)に収納し、災害倉庫にて管理することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の貯留式災害用水洗トイレシステムでは、水洗式の便器を使用するとともに、排泄物の貯留期間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る貯留式災害用水洗トイレシステムの一部を説明する模式図である。
図2】同貯留式災害用水洗トイレシステムの残部を説明する模式図である。
図3】同貯留式災害用水洗トイレシステムの便器、着脱ポンプ部、及びテント部を説明する要部平面図である。
図4】同貯留式災害用水洗トイレシステムにおける要部の断面図である。
図5】同貯留式災害用水洗トイレシステムにおいて、便器、着脱ポンプ部、及びテント部が設置される前の状態を説明する模式図である。
図6図2中の切断線A1-A1の断面図である。
図7】同貯留式災害用水洗トイレシステムにおいて、便器、着脱ポンプ部、及びテント部が収容されている状態を説明する模式図である。
図8】同貯留式災害用水洗トイレシステムにおいて、便器及び着脱ポンプ部が設置された状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施形態の貯留式災害用水洗トイレシステム1aについて図1から図8を参照して説明する。
本実施形態の貯留式災害用水洗トイレシステム1aは、地震等の災害が発生時に避難場所となる学校等に予め設けておくことで、災害時に貯留式及び水洗式の仮設トイレとして使用するものである。
図1及び図2に示すように、この例では、貯留式災害用水洗トイレシステム1aが設置される地表Gの下方では、土G1上に、砕石等の路盤G2、及び、加熱アスファルト混合物等の表層G3が配置されている。地表Gは、表層G3の上面である。
貯留式災害用水洗トイレシステム1aは、給水部1Aと、複数の便器4と、被固定部5と、テント部6と、上流側排水管7と、貯留槽(貯留部)10と、下流側排水管11と、オーバーフロー管(溢れ管)12と、開閉弁13と、を備えている。
【0016】
図1に示すように、給水部1Aは、地下水(水)Wを供給する。給水部1Aは、井戸2と、汲水部3と、を有する。
なお、給水部は、プールや貯水タンク、及びこれらの中の水を便器4に供給するポンプを備えてもよい。
井戸2は、地表Gから地中に向かって地下水源まで貫通する穴である。井戸2は、地表Gから下方(鉛直方向下方)に向かって設けられている。本実施形態の井戸2は、例えば、30m程度の深さにある地下水Wを採取可能な深井戸である。井戸2では、井戸ケーシング21が上下方向に延在して埋設されていることで、井戸2の内壁が支持されている。
井戸ケーシング21は、後述する揚水管311が挿通可能な大きさの断面形状をなす管材である。
【0017】
汲水部3は、井戸2から地下水Wを汲み上げる。汲水部3は、地表Gに設けられる便器4に汲み上げた地下水Wを供給する。汲水部3は、地下水Wを地表Gまで供給する供給部31と、地表Gで供給部31から便器4に地下水Wを供給する着脱ポンプ部32とを有する。
【0018】
供給部31は、井戸2の深部から地表Gの着脱ポンプ部32まで地下水Wを供給させる。図1及び図3に示すように、供給部31は、地表Gに設けられる深井戸ポンプ部313と、井戸2内から深井戸ポンプ部313まで地下水Wを送る揚水管311と、井戸2から汲み上げられた地下水Wを貯水する貯水槽312と、深井戸ポンプ部313から貯水槽312に地下水Wを導く導水管315と、貯水槽312から延びる接続管314と、接続管314における貯水槽312側とは反対側の端部が配置された雨水浸透マス316と、接続管314に着脱可能に取り付けられている吸込管317と、を有する。
なお、図3では、テント部6を二点鎖線で示している。
【0019】
図1に示すように、深井戸ポンプ部313は、貯水槽312に地下水Wを供給する。深井戸ポンプ部313は、本実施形態では、30m程度の深さの井戸2から地下水Wを汲み上げる深井戸用の手押しポンプである。深井戸ポンプ部313は、井戸2の上方(鉛直方向上方)の地表Gに予め設けられている。本実施形態の深井戸ポンプ部313は、地下水Wを汲み上げる深井戸ポンプ本体313aと、深井戸ポンプ本体313aに地下水Wの汲み上げを行わせる深井戸ポンプレバー313bと、深井戸ポンプ本体313aに設けられて地下水Wを吐出する深井戸ポンプ水口313cと、深井戸ポンプ水口313cに設けられた切り替え機構313dと、切り替え機構313dを操作するための切り替えレバー313eと、を有している。
【0020】
深井戸ポンプ本体313aは、架台を介して地表Gに設置されている。深井戸ポンプ本体313aは、内部にピストンを有している。深井戸ポンプ本体313aは、ピストンを上下方向に動かすことで揚水管311を介して地下水Wを引き上げて、井戸2内から地下水Wを汲み上げている。
【0021】
深井戸ポンプレバー313bは、深井戸ポンプ本体313aに取り付けられている。深井戸ポンプレバー313bは、上下方向に動かされることで、深井戸ポンプ本体313a内のピストンを上下方向に動かしている。
【0022】
深井戸ポンプ水口313cは、深井戸ポンプ本体313aに取り付けられている吐出口である。深井戸ポンプ水口313cは、深井戸ポンプ本体313aが汲み上げた地下水Wを下方に向けて吐出している。
切り替え機構313dには、導水管315の端部が接続されている。切り替え機構313dでは、図示はしないが、機構本体内に、切り替え弁が内蔵されている。切り替え弁が機構本体内で第1位置に配置されていると、深井戸ポンプ本体313aが汲み上げた地下水Wは、導水管315に流れ込む。一方で、切り替え弁が機構本体内で第1位置とは異なる第2位置に配置されていると、深井戸ポンプ本体313aが汲み上げた地下水Wは、深井戸ポンプ水口313cから吐出する。
切り替えレバー313eは、機構本体内での切り替え弁の位置を、第1位置と第2位置との間で切り替える。
【0023】
深井戸ポンプ水口313cの下方の地中には、水受け313fが埋め込まれている。水受け313fは、深井戸ポンプ水口313cから排出された地下水Wを受け、地中に排出する。
【0024】
揚水管311は、深井戸ポンプ部313に接続されている。揚水管311は、井戸2の井戸ケーシング21内に配置されている。具体的には、本実施形態の揚水管311は、深井戸ポンプ本体313aに固定されて地下水Wまで延在する揚水管本体311aと、揚水管本体311aに固定される中間シリンダー311bとを備えている。
【0025】
揚水管本体311aは、深井戸ポンプ本体313aから下方に向かって延在する配管である。揚水管本体311aは、地下水Wを地表Gの深井戸ポンプ本体313aまで流通させている。揚水管本体311aは、本実施形態では例えば、管径が40mmの管材で構成される。
【0026】
中間シリンダー311bは、地下水Wに浸かる位置に配置され、揚水管本体311aの途中に設けられている。中間シリンダー311bは、深井戸ポンプ部313の最高揚程を向上させる。本実施形態の中間シリンダー311bは、深井戸ポンプレバー313bの動きに連動している。中間シリンダー311bは、深井戸ポンプレバー313bが動かされることで、中間シリンダー311bが配置された位置まで大気圧で地下水Wを汲み上げる。その後、中間シリンダー311bは、深井戸ポンプレバー313bがさらに手動で動かされることで、中間シリンダー311bが配置された位置まで汲み上げられた地下水Wを人力で持ち上げるようにして深井戸ポンプ本体313aが配置された位置まで水を汲み上げる。したがって、中間シリンダー311bは、深さ20m以上の深井戸に対しても手動で地下水Wを汲み上げることを可能としている。
【0027】
貯水槽312は、深井戸ポンプ部313によって揚水管311を介して汲み上げられた地下水Wを溜める。貯水槽312は、地下水Wを溜めておく貯水槽本体312aと、貯水槽本体312aの貯水量が所定の量を超えた場合に、地下水Wを上流側排水管7に排出する貯水配管312bとを有する。
なお、貯水配管312bは、オーバーフロー管に該当する。
【0028】
貯水槽本体312aは、複数の便器4の間における地中に埋設されており、上方が地表Gで開口している。貯水槽本体312aは、貯留槽10の後述する貯留蓋103のような貯水蓋312cを有している。貯水槽本体312aは、貯水蓋312cを取り外すことで深井戸ポンプ水口313cから排出される地下水Wを受けて、貯水可能とされている。貯水槽本体312aは、塩化ビニル樹脂によって形成され、100L(リットル)程度の地下水Wを貯水可能とされている。
【0029】
貯水配管312bは、貯水槽本体312aから地下水Wがあふれ出ないように、貯水配管312bの貯水量が所定の量が超えた場合に、地下水Wを上流側排水管7に排出する。本実施形態の貯水配管312bは、貯水槽本体312aの貯水量を超える上下方向の途中の位置で、貯水槽本体312aと接続されている。
【0030】
例えば、導水管315は塩化ビニル樹脂等で形成されている。導水管315は、深井戸ポンプ部313の切り替え機構313d及び貯水槽本体312aにそれぞれ接続されている。
図3に示すように、雨水浸透マス316は、設置される便器4ごとに配置されている。図4に示すように、雨水浸透マス316は、マス本体316aと、第1マス蓋316bと、を有している。
マス本体316aは、有底筒状に形成されている。マス本体316aには、複数の貫通孔(不図示)が形成されている。マス本体316aは、設置される便器4ごとの脇における地中に配置されている。
例えば、第1マス蓋316bは、円板状に形成された樹脂製の蓋である。第1マス蓋316bには、切り欠き316b1が形成されている。第1マス蓋316bは、マス本体316aの上端部に形成された開口を塞いでいる。第1マス蓋316bは、マス本体316aに着脱可能に取り付けられている。
【0031】
以上のように構成された雨水浸透マス316では、例えば、第1マス蓋316bの切り欠き316b1を通してマス本体316a内に雨水が流れ込むことがある。このような場合でも、マス本体316aの複数の貫通孔を通して、マス本体316aの外部に雨水を地中に排出することができる。
【0032】
接続管314は、貯水槽312の内部から雨水浸透マス316まで延びている。接続管314の端部は、雨水浸透マス316のマス本体316a内に配置され、マス本体316aに固定されている。接続管314は、設置される便器4ごとに設けられている。
例えば、吸込管317は、金属で曲げられるように形成されている。吸込管317の第1端部は、第1マス蓋316bの切り欠き316b1を通して、接続管314に着脱可能に取り付けられている。吸込管317における第1端部とは反対側の第2端部は、着脱ポンプ部32に対して着脱可能に接続されている。
【0033】
着脱ポンプ部32は、貯水槽312に溜められた地下水Wを汲み上げて便器4に供給する。着脱ポンプ部32は、地表Gに設けられた被固定部5(後述する第1被固定部5A)で供給部31に対して着脱可能に接続される。着脱ポンプ部32は、便器4に対して着脱可能に接続される。着脱ポンプ部32は、設置される便器4ごとに設けられている。本実施形態の着脱ポンプ部32は、浅井戸用の手押しポンプである。
本実施形態の着脱ポンプ部32は、図4に示すように、地下水Wを汲み上げる着脱ポンプ部本体321と、着脱ポンプ部本体321に地下水Wの汲み上げを行わせる着脱ポンプ部レバー322と、着脱ポンプ部本体321と便器4とを接続するフレキホース323とを有している。
【0034】
着脱ポンプ部本体321は、被固定部5(第1被固定部5A)で吸込管317に対して着脱可能とされている。着脱ポンプ部本体321は、底部分に外側に向かって広がるフランジ部321aを有している。このフランジ部321aには、貫通孔が形成されている。
着脱ポンプ部本体321は、内部にピストンを有している。着脱ポンプ部本体321は、このピストンを上下方向に動かすことで、接続管314を介して貯水槽312内の地下水Wを汲み上げている。
【0035】
着脱ポンプ部レバー322は、着脱ポンプ部本体321に取り付けられている。着脱ポンプ部レバー322は、上下方向に動かされることで、着脱ポンプ部本体321内のピストンを上下方向に動かしている。
【0036】
フレキホース323は、着脱ポンプ部本体321及び便器4に対してそれぞれ着脱可能に接続されている。フレキホース323は、着脱ポンプ部本体321が汲み上げた地下水Wを便器4に向かって流通させる。本実施形態のフレキホース323は、高い可撓性を有する配管である。
【0037】
例えば、被固定部5は、駐車場53における地表Gに設けられている。被固定部5には、便器4及び着脱ポンプ部32が固定される。本実施形態の被固定部5は、第1被固定部5Aと、第2被固定部5Bと、を有している。被固定部5A,5Bは、コンクリートによってそれぞれ平板状に形成されている。被固定部5A,5Bは、地表Gに沿って並べて配置されている。被固定部5A,5Bの上面は、地表Gと面一である。
本実施形態の被固定部5は、設置される便器4ごとに設けられている。第2被固定部5Bには、雨水浸透マス316が配置されている。
被固定部5は、図5に示すように、接続管314の開口を閉塞する第2マス蓋51と、上流側排水管7の開口を閉塞する排水管蓋52と、を有している。
【0038】
第2マス蓋51は、円板状に形成された金属製の蓋である。この第2マス蓋51には、切り欠きは形成されていない。第2マス蓋51は、マス本体316aの上端部に形成された開口を塞いでいる。第2マス蓋51は、マス本体316aに着脱可能に取り付けられている。
第2マス蓋51は、着脱ポンプ部32が設置され、吸込管317が接続される際には、マス本体316aの開口上から取り外される。
【0039】
排水管蓋52は、平板状をなしている。排水管蓋52は、上流側排水管7の開口上に配置されることで、上流側排水管7の開口を閉塞する。排水管蓋52は、便器4が設置されていない状態で、後述する上流側排水管7の縦管75の開口を閉塞している。排水管蓋52は、便器4が設置される際には、上流側排水管7の開口上から取り外される。
【0040】
本実施形態の第1被固定部5Aの上方を向く面において、上流側排水管7の開口の周りには、ボルト固定用孔が複数形成されている。一方で、便器4及び着脱ポンプ部32には、不図示の貫通孔がそれぞれ設けられている。
固定具であるボルトが、便器4及び着脱ポンプ部32の貫通孔を挿通した状態で、第1被固定部5Aの複数のボルト固定用孔に固定されることで、便器4及び着脱ポンプ部32が第1被固定部5Aに着脱可能に固定される。
被固定部5の周囲における地表Gには、車止め54が固定されている。この車止め54を用いて、駐車場53に自動車145が駐車できる。
【0041】
なお、便器4及び着脱ポンプ部32と第1被固定部5Aとの固定構造は、本実施形態のような構造に限定されるものではなく、第1被固定部5Aに対して着脱可能な構造であればよい。
【0042】
便器4は、陶器製の洋式便器である。図1に示すように、便器4は、互いに離間して複数箇所に配置されている。本実施形態では例えば、便器4は、二ケ所に配置されている。便器4は、地表Gに設けられた被固定部5で汲水部3及び上流側排水管7に対して着脱可能に接続されている。便器4には、汲水部3から地下水Wが供給される。
本実施形態の便器4は、図4に示すように、利用者が排泄した排泄物を受ける受け部41と、フレキホース323と接続され、受け部41に地下水Wを流入する流入部42とを有する。
【0043】
受け部41は、利用者が排泄した排泄物を受けるために便器4の内部に形成される面を有する。受け部41は、流入部42を介して汲水部3から供給される地下水Wによって洗浄される。本実施形態の受け部41は、便器4内で上面に開口する漏斗状の空間を形成する。受け部41の底部分には、排出用開口41aが形成されている。
【0044】
排出用開口41aは、便器4が第1被固定部5Aに固定された状態で、上流側排水管7の開口に対して上方に配置される。
流入部42は、フレキホース323と接続される。流入部42は、フレキホース323を介して着脱ポンプ部本体321から送られてくる地下水Wを受け部41に流入させる。
【0045】
テント部6は、地表Gで組み立てられて便器4及び着脱ポンプ部32を覆う。本実施形態のテント部6は、上下方向に長い縦長のドーム形状をなしている。テント部6は、折り畳み式となっている。
例えば、災害の発生していない通常時には、テント部6は、折りたたまれて収容されている。災害の発生した緊急時にテント部6を広げて組み立てることで、テント部6は、便器4及び着脱ポンプ部32の周りに設置される。テント部6には、利用者の入室時、退室時に開閉自由なファスナー(不図示)が設けられている。テント部6は、このファスナーを閉めることで、外部から内部が見えないように形成されている。ファスナーの先端には、テント部6の外部からのファスナーの開閉を防ぐロック機構(不図示)が備えられている。
【0046】
貯留槽10は、便器4で処理された排泄物及び地下水Wを含む、便器4から排出された排水W2を貯留する。図2及び図6に示すように、貯留槽10は、本体101と、筒状部102と、貯留蓋103と、を有している。
本体101は、いわゆる角形マンホールである。本体101は、中空の直方体状に形成されている。本体101は、水平面に沿う所定の方向Dに延びている。本体101は、底壁105と、天壁106と、一対の第1側壁107、108と、一対の第2側壁109、110と、を有している。
底壁105、天壁106、第1側壁107、108、及び第2側壁109、110は、それぞれ平板状である。
底壁105は、平面視で所定の方向Dに長い矩形状を呈する。底壁105の上面には、所定の方向Dに延びるインバート(溝)105aが形成されている。インバート105aは、所定の方向Dに見たときに半円形状を呈する。
天壁106の中央部には、天壁106を上下方向に貫通する貫通孔106aが形成されている。貫通孔106aは、平面視で円形状を呈する。
【0047】
第1側壁107、108は、底壁105における所定の方向Dの端縁に設けられている。第1側壁107、108は、底壁105から上方に向かって延びている。第1側壁107は、第1側壁108よりも、排水W2が流通する上流側に配置されている。
第1側壁107には、第1側壁107における他の部分よりも上流側に向かって張り出す張り出し部107a、107bが形成されている。張り出し部107a、107bは、上下方向に並べるとともに、互いに離間するように配置されている。張り出し部107aは、張り出し部107bよりも上方に配置されている。
【0048】
第1側壁108には、第1側壁108における他の部分よりも、排水W2が流通する下流側に向かって張り出す張り出し部108a、108bが形成されている。張り出し部108a、108bは、上下方向に並べるとともに、互いに離間するように配置されている。張り出し部108aは、張り出し部108bよりも上方に配置されている。
第2側壁109、110は、底壁105における、水平面に沿うとともに所定の方向Dに直交する方向の端縁に設けられている。第2側壁109、110は、底壁105から上方に向かって延びている。
【0049】
例えば、本体101の容積は、3.0m(3000L)である。
以上のように構成された本体101を配置するために、図2に示すように、地中において、砕石141上に敷モルタル142が配置されている。本体101の底壁105は、敷モルタル142上に設置されている。
【0050】
図2及び図6に示すように、筒状部102は、円筒状に形成されている。筒状部102は、本体101の天壁106のうち貫通孔106aの周縁部から上方に向かって延びている。筒状部102の上端部は、地表Gに達している。
貯留蓋103は、円板状に形成された鉄製の蓋である。貯留蓋103は、筒状部102の上端部に形成された開口を塞いでいる。貯留蓋103は、筒状部102に着脱可能に取り付けられている。
本体101及び筒状部102は、一般的なコンクリートよりも比重が小さい、いわゆる軽量コンクリートで形成されていることが好ましい。このように形成されると、本体101及び筒状部102(貯留槽10)の設置が容易になる。
【0051】
図1及び図2に示すように、上流側排水管7は、地中に埋設されている。上流側排水管7では、排水W2が流通する。上流側排水管7は、排水W2を貯留槽10まで流通させている。上流側排水管7は、排水管本体71と、分岐管72と、を有している。
排水管本体71は、複数の便器4及び貯留槽10とそれぞれ接続されている。図1に示すように、排水管本体71は、横管74と、横管74と各便器4とを接続する縦管75とを有している。
【0052】
横管74は、水平面に沿う所定の方向Dに延びている。横管74は、下流側に向かって下り勾配で傾斜している。本実施形態の横管74は、上流側で、貯水配管312bと接続されている。図2に示すように、横管74は、下流側で、貯留槽10の本体101の第1側壁107の張り出し部107aと接続されている。
図1に示すように、縦管75は、地表Gから下方に延び、横管74まで連通する管材である。縦管75は、横管74の延在方向に沿って離間して、設置される便器4に対応して複数箇所に配置されている。縦管75は、便器4が被固定部5の第1被固定部5Aに取り付けられることで、受け部41の排出用開口41aと連通する。
【0053】
図2に示すように、分岐管72は、分岐縦管77と、曲がり管78と、分岐横管79と、を有している。
分岐縦管77は、排水管本体71の横管74に接続されている。分岐縦管77は、横管74における、複数の縦管75に接続された部分よりも下流側の部分に接続されている。分岐縦管77は、横管74における貯留槽10の本体101に接続された部分よりも上流側の部分から、下方に向かって延びている。
分岐横管79は、所定の方向Dに延びている。分岐横管79における所定の方向Dの中間部は、貯留槽10の本体101の第1側壁107の張り出し部107bと接続されている。すなわち、分岐横管79は、貯留槽10における排水管本体71に接続された部分よりも下方の部分に接続されている。分岐横管79の下流側の端部は、底壁105のインバート105aにおける上流側の端部内に配置されている。
曲がり管78は、分岐縦管77の下端部と分岐横管79の上流側の端部とを接続している。
以上のように、貯留槽10の本体101には、上流側排水管7の横管74及び分岐管72の分岐横管79がそれぞれ接続されている。
【0054】
下流側排水管11は、所定の方向Dに延びている。下流側排水管11は、下流側に向かって下り勾配で傾斜している。下流側排水管11の上流側の端部は、貯留槽10の本体101の第1側壁108の張り出し部108bと接続されている。下流側排水管11の上流側の端部は、底壁105のインバート105aにおける下流側の端部内に配置されている。下流側排水管11における貯留槽10に接続される部分の高さ、及び分岐管72における貯留槽10に接続される部分の高さは、互いに同等である。
下流側排水管11の下流側の端部は、下水道の汚水管(不図示)に接続されている。
下流側排水管11には、貯留槽10から排出された排水W2が流通する。
【0055】
図2及び図6に示すように、オーバーフロー管12は、分岐横管121と、曲がり管122と、分岐縦管123と、を有している。
分岐横管121は、所定の方向Dに延びている。より詳しく説明すると、分岐横管121は、図6に示す平面視で、所定の方向Dに対して傾斜するように延びている。図2に示すように、分岐横管121は、下流側に向かって下り勾配で傾斜している。分岐横管121の上流側の端部は、貯留槽10の本体101の第1側壁108の張り出し部108aに接続されている。分岐横管121は、貯留槽10における下流側排水管11に接続された部分よりも上方の部分に接続されている。オーバーフロー管12の分岐横管121における貯留槽10に接続される部分の高さは、排水管本体71の横管74における貯留槽10に接続される部分の高さよりも上方に位置している。
分岐縦管123は、下流側排水管11から上方に向かって延びている。すなわち、分岐縦管123は、下流側排水管11に接続されている。
曲がり管122は、分岐横管121における下流側の端部と分岐縦管123の上端部とを接続している。
オーバーフロー管12には、10から排出された排水W2が流通する。
【0056】
なお、これらオーバーフロー管12、下流側排水管11、及び上流側排水管7には、外径が15cm~20cmの、この分野における一般的なサイズの管が用いられる。
【0057】
図2及び図6に示すように、開閉弁13はゲートバルブである。開閉弁13は、弁本体131と、立ち上がり管132と、弁用蓋134と、を有している。
弁本体131は、下流側排水管11におけるオーバーフロー管12が接続された部分と貯留槽10が接続された部分との間の部分に設けられている。弁本体131内には、図示しないゲートが配置されている。例えば、ゲートの上部には、凹凸形状が形成されている。
立ち上がり管132は、弁本体131から上方に向かって、地表G近くまで延びている。前記オーバーフロー管12の分岐横管121は、立ち上がり管132に干渉しないように、平面視で所定の方向Dに対して傾斜するように延びている。
【0058】
例えば、地表G上から、長尺状の工具(金具)D6を立ち上がり管132内に挿入し、ゲートの凹凸形状に嵌め合わせる。なお、図2中に工具D6を二点鎖線で示す。工具D6を、工具D6の軸線回りに回転させると、ゲートが上下方向に移動し、下流側排水管11が開閉する。すなわち、開閉弁13は、下流側排水管11における、貯留槽10に接続された部分とオーバーフロー管12に接続された部分との間の部分を開閉する。ここで言う下流側排水管11を開くとは、下流側排水管11内を排水W2が流通可能な状態にすることを意味する。下流側排水管11を閉じるとは、下流側排水管11内を排水W2が流通不能な状態にすることを意味する。
【0059】
弁用蓋134は、円板状である。弁用蓋134は、地表G上であって、立ち上がり管132の上方の開口を塞いでいる。
開閉弁13を操作する際には、貯留式災害用水洗トイレシステム1aを管理する管理者は、弁用蓋134を取り外す。例えば、地表G上から、工具D6をゲートの凹凸形状に嵌め合わせ、ゲートを上下方向に移動させることにより、下流側排水管11を開閉する。
【0060】
次に、上記構成の貯留式災害用水洗トイレシステム1aの施工方法について説明する。
図5に示すように、本実施形態の貯留式災害用水洗トイレシステム1aでは、災害の発生していない通常時には被固定部5から便器4や着脱ポンプ部32が外されている。また、テント部6も、折りたたまれて収納されている。この際、被固定部5では、排水管蓋52が配置されることで縦管75の開口が閉塞され、第2マス蓋51が配置されることでマス本体316aの開口が閉塞されている。
また、被固定部5から外されている便器4や着脱ポンプ部32は、それぞれ分解されて、図7に示すような収納箱150にそれぞれ収められている。収納箱150は、例えば、学校の災害倉庫にて管理される。
【0061】
地震等の災害の発生した緊急時には、図8に示すように、災害倉庫で管理されていた収納箱150から、便器4や着脱ポンプ部32やテント部6を取り出して、被固定部5の第1被固定部5Aに固定する。具体的には、本実施形態では、例えば、収納箱150から便器4を取り出して組み立てる。便器4の底部分の貫通孔と、縦管75の開口の周りに設けられた第1被固定部5Aのボルト固定用孔との位置を合わせる。その後、ボルトを挿通させることで、便器4を第1被固定部5Aに固定する。このように便器4を第1被固定部5Aに対して取り付けることで、便器4の受け部41の排出用開口41aと縦管75の開口とがつながった状態となっている。
【0062】
同様に、収納箱150から着脱ポンプ部本体321を取り出して組み立てる。着脱ポンプ部本体321の底部分のフランジ部321aの貫通孔と、接続管314の開口の周りに設けられた第1被固定部5Aのボルト固定用孔との位置を合わせる。その後、ボルトを挿通させることで、着脱ポンプ部本体321を第1被固定部5Aに固定する。
【0063】
マス本体316aから第2マス蓋51を取外す。吸込管317を、接続管314及び着脱ポンプ部32にそれぞれ接続する。マス本体316aの開口を、第1マス蓋316bで塞ぐ。
着脱ポンプ部本体321を第1被固定部5Aに取り付けた状態で、フレキホース323によって着脱ポンプ部本体321と便器4の流入部42とを接続し、便器4と着脱ポンプ部32とを設置する。
便器4及び着脱ポンプ部32を第1被固定部5Aに設置した後に、テント部6を組み立てて、図4のように、テント部6によって便器4及び着脱ポンプ部32を覆う。
【0064】
次に、上記構成の貯留式災害用水洗トイレシステム1aの作用について説明する。
上記のような本実施形態の貯留式災害用水洗トイレシステム1aは、地震等の災害が起きた際に学校や公園等の避難所で使用される。貯留式災害用水洗トイレシステム1aが上述したような施工方法によって設置され、利用者が使用するときには、事前に貯水槽312に地下水Wを溜めておく。開閉弁13を開いておく。切り替えレバー313eを操作して、深井戸ポンプ本体313aが汲み上げた地下水Wが、導水管315に流れ込むようにしておく。
具体的には、深井戸ポンプレバー313bを動かし、深井戸ポンプ本体313aによって地下水Wを汲み上げる。地下水Wは、中間シリンダー311bを介して揚水管本体311a内を流通して深井戸ポンプ本体313aまで汲み上げられて、深井戸ポンプ水口313cから導水管315を通して貯水槽本体312a内に吐出される。貯水槽本体312a内に予め定めた量の地下水Wを溜められるまで、深井戸ポンプレバー313bを動かして、導水管315から貯水槽本体312a内に吐出し続ける。
【0065】
なお、貯水槽本体312a内の地下水Wの貯水量が予め定めた量を超えた場合には、貯水配管312bから排水管本体71に排出される。このため、貯水槽本体312aから地表Gに地下水Wがあふれ出ないようにされている。
【0066】
貯水槽本体312aに地下水Wが溜められた状態で、利用者はテント部6の中に入りファスナー部を閉めることで、テント部6の内部で排泄を行う。利用者が排泄した排泄物は、受け部41から排出用開口41aを介して縦管75内を横管74に向かって落下する。
【0067】
その後、利用者が、着脱ポンプ部レバー322を動かし、着脱ポンプ部本体321によって貯水槽本体312a内の地下水Wを汲み上げる。地下水Wは、接続管314及び吸込管317内を流通して着脱ポンプ部本体321まで汲み上げられて、フレキホース323から便器4の流入部42に送られる。流入部42に送られた地下水Wは、受け部41内に流入し、受け部41を洗浄する。受け部41を洗浄した地下水Wは、排出用開口41aを介して縦管75内を横管74に向かって落下する。排泄物及び受け部41を洗浄した地下水Wを含む排水W2は、横管74を貯留槽10に向かって流通する。排水W2は、流量が比較的少ない場合には、排水管本体71における分岐管72に接続された部分よりも上流側の部分、及び分岐管72を流通して、貯留槽10に流れ込む。排水W2の流量が比較的多い場合には、排水管本体71全体及び分岐管72をそれぞれ流通して、貯留槽10に流れ込む。
利用者は、汲み上げられた地下水Wで手を洗うことができるため、感染症等を防ぐことができる。
【0068】
貯留槽10の底壁105上に流れ込んだ排水W2は、インバート105aに流れ込みやすい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の貯留式災害用水洗トイレシステム1aでは、給水部1Aが供給した地下水Wを利用して、便器4の受け部41を洗浄することができる。従って、例えば、災害時のような水を確保することが困難な状況であっても、安定して供給可能な地下水Wを井戸2から汲み上げて利用することで、便器4の受け部41を地下水Wで洗浄して、水洗式の便器4を使用することができる。
また、便器4から排出された排水W2は、災害時に下流側排水管11の破損が無い場合には、上流側排水管7を流通して貯留槽10に流れ込む。開閉弁13を開いておくことで、排水W2は、貯留槽10から下流側排水管11を下流側の汚水管に流通する。
一方で、災害時に下流側排水管11が破損した場合には、開閉弁13を閉じておくことで、貯留槽10に貯留された排水W2は、下流側排水管11から下流側に流通せず、貯留槽10で貯留される。
便器4を一定期間使用すると、排水W2が、貯留槽10におけるオーバーフロー管12が接続された位置を超えるまで貯留される場合がある。このような場合であっても、排水W2における上澄み液は、貯留槽10からオーバーフロー管12、及び下流側排水管11におけるオーバーフロー管12に接続された部分よりも下流側の部分を通して、下流側に流通する。ここで言う上澄み液とは、排水W2のうち、固形部分を比較的含まない、液状部分を主に含む部分を意味する。
従って、貯留式災害用水洗トイレシステム1aにおいて、排泄物を貯留可能となる、排泄物の貯留期間を長くすることができる。
【0070】
例えば、利用者は、貯留式災害用水洗トイレシステム1aを、最低3日間使用することができる。
貯留式災害用水洗トイレシステム1aを使用したら、例えば、管理者は、貯留槽10内の排水W2を、バキュームカー(吸上車)により処理する。
【0071】
上流側排水管7は、排水管本体71と、分岐管72と、を有している。便器4から排出された排水W2は、排水W2の流量が比較的少ない場合には、排水管本体71における分岐管72に接続された部分よりも上流側の部分、及び分岐管72を流通して、貯留槽10に流れ込む。一方で、便器4から排出された排水W2は、排水W2の流量が比較的多い場合には、排水管本体71全体及び分岐管72をそれぞれ流通して、貯留槽10に流れ込む。従って、排水W2の流量が比較的少ない場合には、排水W2を貯留槽10における比較的下方の部分から貯留槽10に流れ込ませるとともに、排水W2の流量が比較的多い場合には、排水W2を貯留槽10における比較的下方の部分及び比較的上方の部分の両方から貯留槽10に流れ込ませることができる。
【0072】
オーバーフロー管12における貯留槽10に接続される部分の高さは、排水管本体71における貯留槽10に接続される部分の高さよりも上方に位置している。貯留槽10に貯留された排水W2の上端の位置が、排水管本体71における貯留槽10に接続される部分の高さを超え、排水W2における上澄み液が排水管本体71にある程度逆流しやすくなる場合がある。このような場合であっても、この上澄み液を、オーバーフロー管12、及び下流側排水管11におけるオーバーフロー管12に接続された部分よりも下流側の部分を通して、下流側に流通させることができる。
給水部1Aが、井戸2、汲水部3、供給部31、及び着脱ポンプ部32を有する。さらに、便器4が汲水部3及び上流側排水管7に対して、着脱ポンプ部32が供給部31に対してそれぞれ着脱可能とされている。このため、災害時のような水を確保することが困難な状況であっても、安定して供給可能な地下水Wを井戸2から汲み上げて利用することで、便器4の受け部41を地下水Wで洗浄して、便器4を衛生的に使用することができる。また、災害の発生していない通常時には、地表Gから便器4や着脱ポンプ部32を撤去することができる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、上流側排水管7は分岐管72を有さなくてもよい。
オーバーフロー管12における貯留槽10に接続される部分の高さは、排水管本体71における貯留槽10に接続される部分の高さと同等に位置するか、その高さよりも下方に位置していてもよい。
便器4が汲水部3及び上流側排水管7に対して固定されていてもよいし、着脱ポンプ部32が供給部31に対して固定されていてもよい。
貯留式災害用水洗トイレシステム1aが備えるの便器4の数は、1つでもよい。
【0074】
横管74の貯留槽10に向かう下り勾配の角度は、特に限定されるものではなく、貯留式災害用水洗トイレシステム1aが設置される場所や、設置する便器4の数に合わせて適宜選択すればよい。即ち、横管74の下り勾配を大きくすれば、地下水Wの流れる速度を上げることができ、多くの排泄物を一度に処理することが可能となる。
【0075】
また、井戸2の深さが浅く、地下水Wの水面が地表Gから7m以内の浅井戸であれば、本実施形態のように揚水管311を用いた構造に限定されるものではない。例えば、貯水槽312を設けずに、着脱ポンプ部32に接続された接続管314を井戸ケーシング21内に複数挿通する構造としてもよい。このような構造とすることで、接続管314から井戸2内の地下水Wを直接汲み上げて着脱ポンプ部32まで供給することができる。したがって、貯水槽312や深井戸ポンプ部313等の構成が不要となり、簡易な構造で水洗式の仮設トイレを構成することができる。
【0076】
また、被固定部5は、本願発明のように地表Gと面一に形成される形状に限定されるものではなく、地表Gから上方に飛び出すように形成されてもよい。被固定部5は、便器4や着脱ポンプ部32を安定して上流側排水管7や接続管314に接続させることができればよい。
例えば、災害の発生してない通常時には駐車場又は駐輪場として利用するなどのように、貯留式災害用水洗トイレシステム1aが設置される地表Gを有効活用することができる。
貯留式災害用水洗トイレシステム1aは、被固定部5、テント部6を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1a…貯留式災害用水洗トイレシステム 1A…給水部 2…井戸 4…便器 7…上流側排水管 10…貯留槽(貯留部) 11…下流側排水管 12…オーバーフロー管(溢れ管) 13…開閉弁 31…供給部 32…着脱ポンプ部 41…受け部 71…排水管本体 72…分岐管 W…地下水 W2…排水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8