IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-乗用型田植機 図1
  • 特開-乗用型田植機 図2
  • 特開-乗用型田植機 図3
  • 特開-乗用型田植機 図4
  • 特開-乗用型田植機 図5
  • 特開-乗用型田植機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031757
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】乗用型田植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 23/00 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
A01C23/00 E
A01C23/00 F
A01C23/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137448
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大森 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】渡里 圭介
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052BA03
2B052BB07
2B052BC09
2B052BC16
2B052DA03
2B052EA03
2B052EA10
(57)【要約】
【課題】前輪と後輪を備える走行機体に苗の植付装置と土壌に肥料を施す施肥装置を設けて、苗の植付作業に合わせて施肥作業を行う場合に、この施肥装置の肥料タンクへの肥料補給の省力化を図ると共に、その肥料タンクに補給しようとする肥料を走行機体を走行させる際の姿勢の安定に役立たせることができる、乗用型田植機を提供する。
【解決手段】走行機体の後部に設けるリヤステップ近くの比較的高い位置に施肥装置48の駆動装置と肥料タンクを設けると共に、この肥料タンク49、50より前方で走行機体の前部に設けるフロントステップ近くの比較的低い位置に補給タンク66、67を設け、また、この補給タンクに肥料又は水を貯留するか、或いは補給タンクに貯留する肥料又は水を送出手段69によって後方の肥料タンクに供給可能に構成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と後輪を備える走行機体に苗の植付装置と土壌に肥料を施す施肥装置を設ける乗用型田植機にあって、前記走行機体の後部に設けるリヤステップ近くの比較的高い位置に施肥装置の駆動装置と肥料タンクを設けると共に、この肥料タンクより前方で走行機体の前部に設けるフロントステップ近くの比較的低い位置に補給タンクを設け、また、この補給タンクに肥料又は水を貯留するか、或いは補給タンクに貯留する肥料又は水を送出手段によって後方の肥料タンクに供給可能に構成する乗用型田植機。
【請求項2】
前記肥料タンクに貯留する肥料又は水を移送手段によって前方の補給タンクに逆戻可能に構成する請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記送出手段を、補給タンクと肥料タンクを繋ぐ流路に設ける電動式の補給ポンプによって構成する請求項1又は請求項2に記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記移送手段を、肥料タンクと補給タンクを繋ぐ流路に設ける電動式の補給ポンプ又はストップバルブによって構成する請求項2又は請求項3に記載の乗用型田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田に稲苗を植え付ける乗用型田植機に係り、詳しくは苗の植付装置とともに土壌に肥料を施す施肥装置を設ける乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に乗用型田植機は、左右の前輪と後輪を備える走行機体の後部に植付装置を設け、この植付装置によって水田に稲苗を植え付ける。また、係る乗用型田植機は、稲作体系における施肥量の低減や労力の軽減を図るために走行機体に施肥装置を設け、この施肥装置によって苗の植付作業と同時に施肥作業を行えるようにしている。なお、施肥装置としては粘度の高い液状のペースト肥料を土壌に施すペースト施肥機や、固形の粒状肥料を土壌に施す粒状施肥機が用いられている。
【0003】
そして、このように乗用型田植機にペースト施肥機や粒状施肥機を設ける場合、これ等の施肥装置はそれなりの重量を備えるので、装着後の機体の前後バランスや左右バランスを考慮しながら施肥装置を走行機体に適切に配設しなければならない。そこで、従来では、肥料を貯留してかなりな重量となる肥料タンクを、走行機体の前部や後部の左右に振り分けて設け、また、植付装置に設ける肥料の吐出口(ノズル)に向けて肥料を送るポンプや繰出し装置等の駆動装置を、走行機体や肥料タンクの底部等に設けている(特許文献1参照)。
【0004】
なお、走行機体に設ける肥料タンクに肥料を補給する際には、作業者が肥料袋等に入った肥料を走行機体に持ち込んだうえに、この肥料袋を肥料タンクの供給口まで持ち上げて肥料を供給することになるため、この肥料補給作業が重労働となる。そこで、走行機体に肥料補給ポンプを設け、この肥料補給ポンプを駆動することによって肥料をホースを介して肥料タンクに補給することが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、側条用と深層用の2種類の施肥を行う施肥機にあって、走行機体に補助タンクを設けて、この補助タンクから各施肥経路に適宜肥料を補給することによって、肥料の補給作業の回数を減らすこと、或いは、側条用施肥経路の肥料を深層用施肥経路に補給したり、逆に深層用施肥経路の肥料を側条用施肥経路に補給するポンプを設けて、肥料の補給作業の回数を減らすことが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-32822号公報
【特許文献2】特開2006-115746号公報
【特許文献3】特開平10-178844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、乗用型田植機に施肥装置を設けると、苗の植え付けと同時に植え付けた苗の近くの土壌に肥料を効果的に施すことができ、施肥量を低減しながら増収を図ることができる。また、施肥作業を単独で行う場合より労力を軽減することができる。しかし、このように苗の植え付けと施肥を同時に行うと、作業走行に伴って走行機体側に苗や肥料が無くなると、作業をその都度中断して、これ等の苗や肥料の補給を行わなければならず、作業者は返って重労働を強いられることになる。
【0008】
そのため、これ等の労力を軽減して作業の効率化を図るべく、例えば苗の補給作業であれば、走行機体の前部に設ける予備苗載台の苗載置枚数を多くしたり、スライド式の予備苗載台を設けて畦際からの予備苗の補給作業を楽に行えるようにするといった対応が図られている。しかし、肥料の補給作業の面では肥料タンクを大型化して容量の増大による補給回数の低減を図るといった点で改良が行われてはきているが、更なる労力の低減が臨まれる。
【0009】
所で、乗用型田植機は、深田での作業走行を可能にするために地上高を高くするから重心も必然的に高くなり、また、植付作業の最後に行う枕地での植え付け周回数を少なくするために走行機体の全長を出来るだけ短くする必要があることから、走行機体の特に前後バランスの面で配慮が必要となる。即ち、植付作業終了後の水田からの脱出や畦越えの際等に、前輪が畦等に乗り上がって後バランスになると前輪が浮き上がって後輪走行となり易く、それにより走行機体の姿勢が不安定となって脱出に難渋するといった問題がある。
【0010】
また他方、バランスウェイト等を用いて走行機体を予め前バランスにしておくと、前述の問題は解消することになるが、この場合、例えば走行機体を比較的高速で走行させている際に、作業者が急ブレーキをかけて停止しようとすると、その反動で前のめりとなって後輪が浮き上がって走行機体が不安定となり、最悪の場合は転倒の虞もある。従って、走行機体の姿勢を安定させるために設けるバランスウェイトが、逆に走行機体のバランスを崩す側に作用する場合もあり、このような点でも問題の解決が望まれる。
【0011】
そこで、本発明は、前述のような問題点に鑑みて、前輪と後輪を備える走行機体に苗の植付装置と土壌に肥料を施す施肥装置を設けて、苗の植付作業に合わせて施肥作業を行う場合に、この施肥装置の肥料タンクへの肥料補給の省力化を図ると共に、その肥料タンクに補給しようとする肥料を走行機体を走行させる際の姿勢の安定に役立たせることができる、乗用型田植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の乗用型田植機は、上記課題を解決するため、前輪と後輪を備える走行機体に苗の植付装置と土壌に肥料を施す施肥装置を設ける乗用型田植機にあって、前記走行機体の後部に設けるリヤステップ近くの比較的高い位置に施肥装置の駆動装置と肥料タンクを設けると共に、この肥料タンクより前方で走行機体の前部に設けるフロントステップ近くの比較的低い位置に補給タンクを設け、また、この補給タンクに肥料又は水を貯留するか、或いは補給タンクに貯留する肥料又は水を送出手段によって後方の肥料タンクに供給可能に構成する。
【0013】
また、本発明の乗用型田植機は、前記肥料タンクに貯留する肥料又は水を移送手段によって前方の補給タンクに逆戻可能に構成する。さらに、本発明の乗用型田植機は、前記送出手段を、補給タンクと肥料タンクを繋ぐ流路に設ける電動式の補給ポンプによって構成する。そして、本発明の乗用型田植機は、前記移送手段を、肥料タンクと補給タンクを繋ぐ流路に設ける電動式の補給ポンプ又はストップバルブによって構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の乗用型田植機によれば、前輪と後輪を備える走行機体に苗の植付装置と土壌に肥料を施す施肥装置を設ける乗用型田植機にあって、前記走行機体の後部に設けるリヤステップ近くの比較的高い位置に施肥装置の駆動装置と肥料タンクを設けると共に、この肥料タンクより前方で走行機体の前部に設けるフロントステップ近くの比較的低い位置に補給タンクを設け、また、この補給タンクに肥料又は水を貯留するか、或いは補給タンクに貯留する肥料又は水を送出手段によって後方の肥料タンクに供給可能に構成するから、苗の植え付けと同時に水田の土壌に肥料を効果的に施すことができる。
【0015】
そして、この場合、走行機体の後部に設けるリヤステップ近くの比較的高い位置に施肥装置の駆動装置と肥料タンクを設けるから、これまで田面に近い走行機体の低い位置に駆動装置を設けていた場合のように、駆動装置が車輪等によって跳ね飛ばされた泥水等に晒される環境から逃れて、植付装置とも近くなる走行機体の後部の高い位置に肥料タンクと共に引っ越すことができる。そのため、駆動装置である施肥ポンプ又は肥料の繰出装置やその動力伝達装置のメンテナンス性が向上して、錆の発生や故障の発生も少なく耐久性を向上させることができる。
【0016】
また、走行機体の前部に設けるフロントステップ近くの比較的低い位置に、これまで設けていた肥料タンクの代わりに今度は補給タンクを設けるので、植付施肥作業を開始する前に肥料タンクや補給タンクに肥料を供給する場合には、これまでと同様に畦際から肥料袋を走行機体の前部に持ち上げて、次に、肥料袋に貯留する肥料を補給タンクに投入する。また、補給タンクに投入した肥料は、労せずして送出手段によって肥料タンクに供給することができる。
【0017】
さらに、植付施肥作業の進捗に伴って肥料タンクに貯留する肥料が少なくなった場合には、植付施肥作業を殆ど中断することなく、補給タンクに貯留する肥料を送出手段によって肥料タンクに補給することができる。従って、このような肥料の補給作業において作業者は、走行機体の後部に設ける肥料タンクまで重い肥料袋を持ち上げて運搬する必要はないから、作業者に負担をかけずに肥料の補給作業を楽に行うことができ、しかも、畦際からの肥料の供給回数を少なくして作業能率を向上させることができる。
【0018】
一方、田植えを行う水田への移動のために農道を比較的高速で走行させる際には、予め補給タンクに肥料又は水を投入した後、送出手段によって肥料又は水を肥料タンクに移しておくと、走行機体はこの肥料又は水の重量によって後バランスに変更することができる。そのため、走行中に作業者が急ブレーキをかけて停止しようとする場合でも、走行機体が前バランスによって前のめりとなるような挙動を抑制して安全に停止させることができる。
【0019】
また、植付施肥作業を終えて水田から脱出する際や隣の水田に向かうために畦越え等を行う際には、予め補給タンクに肥料又は水を投入しておくと、走行機体はこの肥料又は水の重量によって走行機体を前バランスに変更することができる。そのため、前輪が畦等に乗り上がって走行機体が傾斜しても前輪が浮き上がって後輪走行となることを防ぐことができるので、係る畦越えや水田からの脱出を安全に行うことができる。
【0020】
また、本発明の乗用型田植機によれば、前記肥料タンクに貯留する肥料又は水を移送手段によって前方の補給タンクに逆戻可能に構成する。そのため、前述の植付施肥作業を終えて水田から脱出する際や隣の水田に向かうために畦越え等を行う際に、肥料タンクに肥料又は水が相当に残っている場合には、補給タンクに畦際から肥料又は水を投入することを省いて、この肥料又は水を移送手段によって補給タンクに逆戻する。
【0021】
そのため、走行機体の後部の肥料タンクに貯留する肥料又は水の重量は減ることになって、逆に走行機体の前部の補給タンクに貯留する肥料又は水の重量は増えることになるので、走行機体を効果的に前バランスに変更することができて、畦越えや水田からの脱出を安全に行うことができる。
【0022】
さらに、本発明の乗用型田植機によれば、前記送出手段を、補給タンクと肥料タンクを繋ぐ流路に設ける電動式の補給ポンプによって構成する。そのため、補給ポンプをエンジン動力によって駆動するための動力伝達装置等を走行機体側に新たに設けることなく、バッテリ電源によって作動させることができて、比較的簡単安価に走行機体に装置することができる。なお、この電動式の補給ポンプは自吸式で吸い上げ形態で用いるので、車輪等によって跳ね飛ばされた泥水等に晒される環境から外れた走行機体の比較的に高い位置に設けることができる。
【0023】
そして、本発明の乗用型田植機によれば、前記移送手段を、肥料タンクと補給タンクを繋ぐ流路に設ける電動式の補給ポンプ又はストップバルブによって構成する。そのため、電動式の補給ポンプを送出手段と移送手段に兼用して設けることができ、送出手段と移送手段に別々にポンプを設ける場合より安価で設置場所も少なくすることができる。また、移送手段をストップバルブを開くと肥料又は水を流下させて逆戻するように構成すると、補給ポンプ等を設けるよりかなり安価に移送手段を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用する乗用型田植機の側面図である。
図2】乗用型田植機の平面図である。
図3】パネルカバーに設けるレバー等の配置を示す背面図である。
図4】走行機体の側面図であり、(a)は後バランスとした状態を、(b)は前バランスとした状態を示す。
図5】施肥機の配管系統図である。
図6】第2実施形態の施肥機の配管系統図であり、(a)は肥料タンクへの肥料の送出状態を、(b)は補給タンクへの肥料の逆戻状態を、(c)は肥料の回収状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように乗用型田植機1は、左右の前輪2と後輪3を備える走行機体4の後部にリンク機構5を介して作業機としての植付装置6をローリング自在に連結する。そして、この植付装置6は、走行機体4の後部とリンク機構5の後部に亘って取付ける油圧シリンダ7によって下降させた作業姿勢と上昇させた非作業姿勢に亘って昇降自在に設ける。
【0026】
なお、後輪3と植付装置6との間には、走行機体4の旋回によって荒れた枕地を均す整地ロータ8を設け、この整地ロータ8は植付装置6と共に昇降するように設ける。一方、走行機体4は、左右のサイドメンバーに複数のクロスメンバーを固着して構成するシャーシフレーム9に、トランスミッションケース10、左右のフロントアクスルケース11、リヤアクスルケース12等を取付けて一体的に構成する。
【0027】
また、トランスミッションケース10の前部寄りにエンジンフレームを取付け、このエンジンフレームにはエンジン13を搭載する。さらに、エンジン13後方のシャ-シフレーム9に取付けるトランスミッションケース10の上面にパワーステアリング装置を構成するトルクジェネレータを取付ける。そして、このトルクジェネレータには、上方に延出するステアリングシャフト14とこのステアリングシャフト14を内包するステアリングコラム15を立設する。また、ステアリングシャフト14の上端部には、前輪2を操舵するステアリングハンドル16を取付ける。
【0028】
一方、前述のステアリングコラム15の中途部にブラケットを固着し、このブラケットの左右に主変速レバー17、副変速レバー18、及びエンジンコントロールレバー19を回動自在に取付け、これ等の基部側を覆うと共にクイックアップレバー20やモニタパネル21を備えるパネルカバー22を設ける。また、パネルカバー22の下方側には、スタータスイッチ23等を取付けるリヤカバー24を設け、パネルカバー22とリヤカバー24の前方側には、前照灯を備えてエンジン13の後方側と下方側を除いてこれを覆うボンネット25を設ける。
【0029】
さらに、前記シャーシフレーム9には、合成樹脂製のフロントステップ26とリヤステップ27を設ける。この内、フロントステップ26は、ボンネット25の左右側方となる左右のフロントステップ部26aと、これに続いてリヤカバー24の後方となるフロアステップ部26bを備える。一方、リヤステップ27は、フロアステップ部26bの後部寄りから階段状に立ち上がり、シャーシフレーム9の後部に設けるシートフレームに取付ける。
【0030】
そして、このリヤステップ27は、その上部中央に運転席28を設け、また、運転席28の左右にはリヤサイドステップ部27aを設ける。なお、フロアステップ部26bの前部中央寄りには株間調節レバーを通す開口を、また、前部右寄りにはブレーキぺダル29を通す開口を設ける。なお、30はフロアステップ部26bの左右に設ける延長ステップであって、この右延長ステップ30と右リヤサイドステップ部27aの下方にはエンジン13の燃料タンクを設ける。
【0031】
ここで、乗用型田植機1の動力伝達系について簡単に説明すると、エンジン13は伝動ベルトを介してトランスミッションケース10に取付けるHST(静油圧式無段変速装置:主変速装置)を駆動する。また、HSTからトランスミッションケース10内に伝達された動力は、トランスミッションケース10内に設ける歯車変速装置によって構成する副変速装置、及び前輪2の差動歯車装置を経由して、左右のフロントアクスルケース11及びキングピンケース内に設ける伝動軸を介して左右の前輪2を駆動する。さらに、副変速装置からリヤアクスルケース12内に設ける左右の湿式ディスク型のサイドクラッチを介して後輪3を駆動する。
【0032】
なお、副変速装置から左右のサイドクラッチに動力を伝達する伝動軸にはディスクブレーキを設け、前述のブレーキぺダル29を踏み込むと主変速レバー17は中立位置に戻ってHSTは中立となり、また、ディスクブレーキが作動して前輪2と後輪3に四輪ブレーキがかかる。さらに、田植機1を枕地で旋回させる際にステアリングハンドル16を所定量以上に回すと旋回側となるサイドクラッチが切られて、その側の後輪3は自由回転状態になる。
【0033】
また、植付装置6への伝動は、トランスミッションケース10内に設ける第1株間変速装置とトルクリミッタと植付クラッチを介してギヤケースに設ける第2株間変速装置を駆動する。そして、第2株間変速装置からドライブシャフト31を介して植付装置6のドライブケースに設ける植付入力シャフトを駆動する。なお、整地ロータ8は走行系のディスクブレーキと左右のサイドクラッチの間から分岐した動力をロータクラッチとロータドライブシャフト32を介してロータドライブケース33内に設ける伝動軸によって駆動する。
【0034】
ここで、植付装置6の構造について簡単に説明すると、この植付装置6は8条植えとなして走行機体4の後部にローリング自在に連結する植付フレームを備える。また、植付フレームには前高後低状に傾斜して複数のマット苗を載置する苗載台34、苗載台34の下端から1株分ずつ苗を植付爪35により掻き取って田面に植付けるロータリ植付機構36、走行跡や旋回跡を整地しながら植付け箇所を均すフロート37等を備えて構成する。
【0035】
そして、前述のドライブケースに入った動力によってスクリュシャフトを回転させて苗載台34を左右往復スライド移動させる。また、ドライブケースに入った動力によってロータリ植付機構36を構成するプランタケース38に動力を伝達し、ロータリケース39を回転駆動する。また、ロータリケース39に取付けたプランタアーム40に装着した植付爪35が苗載台34の下端から1株分ずつ苗を掻き取ると共に、掻き取った苗をフォークで押出して苗を田面に植付ける。
【0036】
なお、次行程における作業走行の目印を田面に付ける左右のマーカー41は、植付装置6の植付フレームにその基部を回動自在に支持する支持杆42の先端部に回転自在に取り付け、マーカー駆動モータ43が支持杆42を作動させることによってマーカー41は、田面に接地してマーキングする作用位置と植付装置6の上方に退避した非作用位置に切り換えることができる。また、シャーシフレーム9の前部にはセンターポール44を前後方向に回動自在に設け、シャーシフレーム9の左右にはトレースマーカー45を設ける。
【0037】
また、乗用型田植機1は、マット苗を収容した苗箱をその回動自在に設けるローラ上に載せて、走行機体4の前方から後方にスライド移動させることによって、植付装置6の苗載台34にマット苗を供給するスライド式予備苗台46を設ける。なお、この予備苗台46は走行機体4の前部の左右に設けるフロントステップ部26aを越えて、その外側方に立ち上げて設ける取付フレーム47の上部に折り畳み自在に設ける。
【0038】
そのため、農道等から苗補給を行う際には、中央の苗台46aに対して前後の苗台46b、46cを夫々展開した後、補給する苗を農道等から苗台46bの先端に供給すると、下り傾斜となる搬送面に沿って苗載台34の近くまで移動させることができ、苗補給を楽に行うことができる。また、スライド式予備苗台46上に苗をストックしながら植付作業を行うと、作業中途でこのストックした苗を苗載台34に補給することができる。
【0039】
以上、乗用型田植機1の概要について説明したが、次に、走行機体4に植付装置6と共に設ける施肥装置について説明すると、この施肥装置は図5に示すように粘度の高い液状のペースト肥料を植え付けた苗の近くの浅層と深層の土壌に施す2段ペースト施肥機48を用いる。そして、このペースト施肥機48は、運転席28の後方にペースト肥料を貯留する左右の肥料タンク49、50を設け、この肥料タンク49、50は走行機体4の後部に設ける施肥フレーム51に、その長手方向を左右方向として並べて設ける。
【0040】
また、この左右の肥料タンク49、50の下方となる施肥フレーム51の下部には、前方のトランスミッションケース10のPTO軸から伝動軸を介して伝えられる動力を施肥機48に断続して伝える施肥クラッチや、施肥量を変更する歯車変速装置、並びに歯車変速装置の出力軸から施肥機48の施肥ポンプ52を駆動するスプロケットやチェーン、或いはギヤ等の駆動部品を備える駆動装置53をカバー等によって覆って設ける。
【0041】
そのため、この駆動装置53はリヤサイドステップ部27aの後方で走行機体4の後部の比較的高い位置に設けることになるので、前輪2や後輪3等によって跳ね飛ばされた泥水等に晒される環境から逃れた場所に設けることができ、メンテナンス性にも優れている。なお、施肥機48の施肥ポンプ52は、決められた施肥量に基づいてペースト肥料を正確に吐出させるために容積式のネジポンプを用いており、このネジポンプは4基ずつケースに纏めた3つのポンプ集合体54~56として、施肥機48の駆動装置53と共に左右の肥料タンク49、50の下方に設ける。
【0042】
さらに、ペースト施肥機48は、そのペースト肥料を土中に注入する浅層用の8個のノズル57と深層用の4個のノズル58を植付装置6のフロート37に深さ調節自在に設ける。また、左右の肥料タンク49、50の底部に設ける排出口と左右の浅層用ポンプ集合体54、56の吸込口をホース59、60によって連通させる共に、このホース59、60の中途から分岐するホース61、62によって深層用ポンプ集合体55の2つの吸込口も左右の肥料タンク49、50の排出口と連通させる。
【0043】
そして、左右の浅層用ポンプ集合体54、56の各4つのポンプ吐出口と浅層用の8個のノズル57の基端部を各々のパイプ63によって連結すると共に、深層用ポンプ集合体55の4つのポンプ吐出口と深層用の4個のノズル58の基端部を各々のパイプ64によって連結する。そのため、苗の植付作業と合わせて土壌への施肥作業を行う場合、操縦部に設けるクイックアップレバー20の操作によって植付クラッチが入りになると施肥クラッチも連動して入りとなって、施肥機48の駆動装置53によってポンプ集合体54~56が駆動される。
【0044】
また、ポンプ集合体54~56の各施肥ポンプ52は駆動されると、肥料タンク49、50に貯留するペースト肥料をホース59~62によって構成する吸込流路を通して吸い込み、また、パイプ63、64によって構成する吐出流路に圧送されたペースト肥料は、各ノズル57、58先端から植え付けた苗の近くの土壌に注入される。そして、この場合、ポンプ集合体54~56は主変速レバー17によって変速された走行系から取り出した動力によって駆動されるので、ペースト肥料を土壌に車速に比例して過不足なく施すことができる。
【0045】
以上、ペースト施肥機48の概要について説明したが、次に、係るペースト施肥機48に新たに設ける肥料の補給装置について説明すると、走行機体4の前部の左右に設けるフロントステップ部26aを越えて、その外側方に立ち上げて設ける取付フレーム65に左右の補給タンク66、67をその長手方向を前後方向として、スライド式予備苗台46の下方に重なるように設ける。また、運転席28を取り付けるシートフレームを覆う下部カバー68内に電動モータを一体に備えた補給ポンプ69を設ける。
【0046】
なお、この補給ポンプ69は、正逆両方向回転可能な容積型ポンプである例えば、可撓インペラ型自吸式ポンプ(モノフレックスポンプ)を採用する。また、左右の補給タンク66、67の底部に設ける排出口と補給ポンプ69を正回転駆動した際に吸い込み側となる吸込口をホース70によって連通させる。さらに、補給ポンプ69を正回転駆動した際に吐出側となる吐出口と左右の肥料タンク49、50の底部に設ける排出口をホース71によって連通させる。そして、その先端部となる排出口の近傍にストップバルブ72を備えるドレンホース73の基端部を分岐させて、前述の2つのホース70、71の中途に連通させる。
【0047】
一方、前述の肥料タンク49、50と補給タンク66、67の上面にはペースト肥料を供給可能な肥料供給口49a、50a、66a、67aを形成し、また、この供給口49a、50a、66a、67aを閉鎖する蓋49b、50b、66b、67bを設けている。そのため、走行機体4の後部の比較的高い位置に設ける肥料タンク49、50にペースト肥料を供給(補給)する際には、例えば、走行機体4の前部のフロントステップ部26a上に立った作業者が畦際にいる補助者からペースト肥料が入った肥料袋を受け取って、これを走行機体4の後部のリヤサイドステップ部27aまで持ち運ぶ。
【0048】
そして、蓋49b、50bを開いた肥料タンク49、50の肥料供給口49a、50aにキャップを外した肥料袋の取出口を臨ませて、肥料袋に入っているペースト肥料をその取出口から肥料タンク49、50内に流出させて投入する。しかし、係る肥料タンク49、50への肥料の補給作業は、肥料袋がビニール等の柔軟な素材で作られていて持ち運び難いものとなっていると共に、相当な重量を備えるペースト肥料を収容する肥料袋の度重なる運搬は作業者にとって重労働となる。
【0049】
そこで、前述の補給方法に代わる新たな肥料タンク49、50へのペースト肥料の補給方法は、作業者が走行機体4の前部のフロントステップ部26a上に立って補助者から肥料袋を受け取るまでは一緒であるが、次に、作業者はすぐ近くの走行機体4の比較的低い位置に設ける補給タンク66、67の肥料供給口66a、67aに、キャップを外した肥料袋の取出口を臨ませて、肥料袋に入っているペースト肥料をその取出口から補給タンク66、67内に流出させて投入する。また、この作業を数回繰り返し行って補給タンク66、67を満タンにする。
【0050】
そして、操縦部のパネルカバー22に設ける操作用スイッチ74を前方に倒すと、補給ポンプ69はバッテリー電源によって正回転駆動し、補給タンク66、67に貯留するペースト肥料を肥料タンク49、50に圧送(送出)する。また、これにより肥料タンク49、50が満タンになって、肥料タンク49、50に設ける残量レベルゲージが満タンの警報を発したり、或いはモニタパネル21に設ける肥料タンク49、50の肥料残量モニタの満タン表示を確認して操作用スイッチ74の操作を止めて肥料タンク49、50への肥料の圧送を停止する。
【0051】
さらに、以上の操作によって肥料タンク49、50を満タンにすると補給タンク66、67は空になるので、補給タンク66、67への前述の作業者によるペースト肥料の供給作業を続けて行う。そのため、その後の植付施肥作業において肥料タンク49、50の肥料残量が少なくなった場合には、操作用スイッチ74を同様に操作して補給タンク66、67に貯留する肥料を肥料タンク49、50に供給すればよいから、植付施肥作業を殆ど中断することなく能率的に作業を継続することができて、一連の肥料の畦際からの補給作業回数を減らすことができる。
【0052】
なお、ここで用いる補給ポンプ69は自吸式のポンプを採用するので、補給タンク66、67より高い位置となるシートフレームを覆う下部カバー68内に設けても、手数をかけずにペースト肥料を吸い上げて、更に高い位置にある肥料タンク49、50に送出することができる。そのため、電動式の補給ポンプ69を車輪等によって跳ね飛ばされた泥水等に晒される環境から外れた走行機体4の比較的に高い位置に設けることができて、補器ポンプ69自体の故障を少なくすることができる。
【0053】
また、補給ポンプ69は可撓インペラ型のポンプを採用するので、補給ポンプ69の駆動を止めても高い位置にある肥料タンク49、50から低い位置にある補給タンク66、67側に肥料が流れ落ちることがなく、例えば、補給ポンプ69の吐出流路にチェックバルブ等の逆流防止手段を設ける必要がなくなるので安価に装置することができる。
【0054】
さらに、植付施肥作業を終えて肥料タンク49、50や補給タンク66、67に残留する肥料を回収する際には、ドレンホース73の先端部となる排出口を空の肥料袋に入れたりバケツに臨ませて、ストップバルブ72を開けば肥料を一時に流出させて回収することができる。また、施肥装置を洗浄する際には、用水路等の水を補給タンク66、67にバケツ等を用いて投入した後、同様に補給ポンプ69を作動させると、肥料タンク49、50に洗浄水を労せずして供給することができるので、これを用いてタンク内の清掃を行うことができる。
【0055】
以上、新たな肥料の補給方法について説明したが、次にこの補給装置を用いて走行機体4の走行姿勢を安定させる方法について説明すると、先ず、乗用型田植機1を運転して田植えを行う水田へ移動するために、副変速レバー18によって路上速度に変速して農道を比較的高速で走行させる際には、事前に補給タンク66、67にペースト肥料又は水を投入した後、通常の肥料タンク49、50への肥料の補給作業と同様に補給ポンプ69を作動させて、ペースト肥料又は水を肥料タンク49、50に移しておく。
【0056】
そして、このように肥料タンク49、50にペースト肥料又は水を溜めておくと、走行機体4はこの肥料又は水の重量によって走行機体4を後バランスに変更することができる(図4(a)参照)。そのため、走行中に作業者がブレーキぺダル29を踏んで急ブレーキをかけて停止しようとする場合でも、走行機体4が前バランスになっていた場合のような、前のめりとなって後輪3が浮き上がるといった挙動を抑制して、安全に乗用型田植機1を停止させることができる。
【0057】
また、植付施肥作業を終えて水田から脱出する際や、隣の水田に向かうために畦越え等を行う際には、予め補給タンク66、67にペースト肥料又は水を投入しておく(図4(b)参照)。そして、このように補給タンク66、67にペースト肥料又は水を溜めておくと、走行機体4はこの肥料又は水の重量によって走行機体4を前バランスに変更することができる。そのため、前輪2が畦等に乗り上がって走行機体4が傾斜しても、前輪2が浮き上がって後輪走行となること(図4参照)を防ぐことができるので、係る畦越えや水田からの脱出を安全に行うことができる。
【0058】
なお、この場合、肥料タンク49、50にペースト肥料又は水が残っている場合は、事前にこの肥料や水を補給タンク66、67に移しておく方が、走行機体4を前バランスに変更するうえで有利である。従って、この場合、操縦部のパネルカバー22に設ける操作用スイッチ74を後方に倒して、補給ポンプ69をバッテリー電源によって逆回転駆動し、肥料タンク49、50に残留するペースト肥料又は水を補給タンク66、67に逆戻する。また、逆戻しても補給タンク66、67にペースト肥料又は水が足らなければ、作業者が後から自ら継ぎ足せばよい。
【0059】
さらに、水田の出入り口等にスロープがあって、且つその路面が荒れている場合の走行において、走行機体4が谷側等に傾いて横転する虞がある場合には、山側等に走行機体4の重心を移すことによって横転を防ぎやすくなる。そこで、肥料の補給装置にあっては左右の肥料タンク49、50と左右の補給タンク66、67を連通させるホース71a、70aの中途に夫々ストップバルブ75~78を設ける。
【0060】
そして、通常はこれ等のストップバルブ75~78を全て開いておくことによって、左右のタンク49,50、66,67どおしの肥料残量を等しくして、走行機体4の左右バランスを偏りなくしている。しかし、例えば、走行機体4が右側に傾く場合には、重心を逆側の左側に移動させれば横転の虞は少なくなるから、この場合、左側に設ける肥料タンク49と補給タンク66に貯留する肥料又は水の量を、右側に設ける肥料タンク50と補給タンク67に貯留する肥料又は水の量より多くすればよい。
【0061】
従って、スロープに入る前に例えば、補給ポンプ69を作動させて左右の補給タンク66、67に貯留するペースト肥料又は水を左右の肥料タンク49、50に移す。次に、左側の肥料タンク49側に設けるストップバルブ75と右側の補給タンク67側に設けるストップバルブ78を閉じる。そして、補給ポンプ69を逆回転駆動させて右側の肥料タンク50に貯留するペースト肥料又は水を左側の補給タンク66に移せば、走行機体4の重心を左側に移動させることができ、その後、スロープに入って走行すれば横転の虞を少なくすることができる。
【0062】
以上、肥料の補給装置にあって、補給タンク66、67に貯留する肥料又は水を肥料タンク49、50に供給する送出手段として補給ポンプ69を正回転駆動すること、また、肥料タンク49、50に貯留する肥料又は水を補給タンク66、67に逆戻する移送手段として補給ポンプ69を逆回転駆動することによって行う実施形態について説明したが、次にこれ等の送出手段や移送手段を変更する第2の実施形態について説明する。
【0063】
すなわち、図6に示す配管系統図において補給タンク66、67に貯留する肥料又は水を肥料タンク49、50に供給する送出手段として用いる補給ポンプ79は、第1の実施形態に示す補給ポンプ69と同様に自吸式のポンプを使用するが、正逆両方向回転可能なポンプや容積型ポンプでなくともよく、ある程度送液量が多い電動式の安価な非容積式ポンプが望ましい。また、この補給ポンプ79はその作動を止めた際に自ら流体の逆流を防ぐことができないものであっても支障がないように、補給ポンプ79の吐出口に繋ぐホース80の他端を肥料タンク49、50の上部空間に連通させて設ける。
【0064】
一方、肥料タンク49、50に貯留する肥料又は水を補給タンク66、67に逆戻する移送手段として、肥料タンク49、50の底部に設ける排出口と補給タンク66、67の底部又は上部等に設ける排出口とを連通させるホース81を設けると共に、このホース81によって構成する肥料又は水の帰還流路にストップバルブ82を設ける。従って、第1の実施形態と同様に操作用スイッチ74を用いて補給ポンプ79を作動させると、ホース80によって構成する補給流路を通して補給タンク66、67に貯留する肥料又は水を肥料タンク49、50に圧送することができる(図6(a)参照)。
【0065】
また、肥料タンク49、50に貯留する肥料又は水を補給タンク66、67に逆戻する場合には、フロアステップ部26b等にその操作具を臨ませるストップバルブ82を操作して帰還流路を開くと、肥料タンク49、50に貯留する肥料又は水を補給タンク66、67に流下させて逆戻することができる(図6(b)参照)。なお、このストップバルブ82を電磁バルブに変更すると、操作用スイッチ74によって補給ポンプ79の作動とストップバルブ82の開閉を電気的に遠隔制御することができる。
【0066】
以上、第2の実施形態の肥料の補給装置について説明したが、前述の補給ポンプ69、79は電動モータによって駆動する電動式に換えて、エンジン13の動力によって機械的に駆動するようにしてもよく、その場合に第1の実施形態の補給ポンプ69であれば、その正逆回転切換を可能になす変速装置を設けて対応することになる。また、前述の走行機体4の左右バランスを肥料の補給装置において制御する場合、各ストップバルブ75~78を電磁バルブに変更した上で、左右の重心移動の手順をプログラム化して操作用スイッチの指令に基づいて自動的に行うようにしてもよい。
【0067】
さらに、肥料タンク49、50への肥料の補給は、肥料タンクの残量がレベルゲージによって少なくなったことをもって自動的に補給ポンプ69、79を作動制御したり、或いは、前後バランス、又は左右バランスにおける走行機体4の姿勢の安定における肥料又は水の移動も、走行機体4のピッチングやローリングを検出する傾斜センサや、車速を検出するピックアップセンサを用いて自動的に制御してもよい。
【0068】
そして、実施形態においてはペースト施肥機を用いた施肥装置について説明したが、肥料タンクに貯留する粒状肥料を肥料タンクの下方に設ける繰り出し装置によって土壌に施す粒状施肥機にあって、その粒状肥料を走行機体の前部に設ける補給タンクから走行機体の後部に設ける肥料タンクに同様な手段を用いて供給することも当然考えられ、本発明は必ずしも前述の実施形態に限定して解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0069】
1 乗用型田植機
4 走行機体
6 植付装置
26a フロントステップ部(フロントステップ)
27a リヤサイドステップ部(リヤステップ)
48 ペースト施肥機(施肥装置)
49 左肥料タンク
50 右肥料タンク
53 駆動装置
66 左補給タンク
67 右補給タンク
69 施肥ポンプ(送出手段、移送手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6