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特開2023-31761電動開閉体制御装置、電動開閉システム、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031761
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】電動開閉体制御装置、電動開閉システム、プログラム
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/68 20060101AFI20230302BHJP
   E05F 7/00 20060101ALI20230302BHJP
   E05F 15/75 20150101ALI20230302BHJP
   E05F 15/41 20150101ALI20230302BHJP
【FI】
E06B9/68 A
E05F7/00 G
E05F15/75
E05F15/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137455
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】中原 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山田 颯一郎
【テーマコード(参考)】
2E042
2E052
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042CA01
2E042CB01
2E042CB02
2E042CC10
2E042DA01
2E052AA04
2E052CA06
2E052DA02
2E052DB02
2E052EA14
2E052EC01
2E052GA08
2E052GB06
2E052GC02
2E052GC06
2E052GD09
(57)【要約】
【課題】電動シャッターにおける異常の発生を検出する技術を提供する。
【解決手段】第2検出部424は、モータ86による巻き取り軸の回転の過程において、巻き取り軸の回転角度に応じたシャッターカーテンへの荷重を検出する。記憶部454は、所定のタイミングにおいて、巻き取り軸の回転角度に応じたシャッターカーテンへの荷重を基準値として記憶する。第3検出部428は、シャッターカーテンを繰り出す場合に第2検出部424が検出した第1の荷重と、シャッターカーテンを巻き取る場合に第2検出部424が検出した第2の荷重とに対して、記憶部454に記憶した基準値を比較し、比較結果を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッターカーテンを巻き取り可能な巻き取り軸に回転動力を出力する電動部と、
前記電動部による前記巻き取り軸の回転の過程において、前記巻き取り軸の回転角度に応じた前記シャッターカーテンへの荷重を検出する検出部と、
所定のタイミングにおいて、前記巻き取り軸の回転角度に応じた前記シャッターカーテンへの荷重を基準値として記憶する記憶部と、
前記シャッターカーテンを繰り出す方向に前記巻き取り軸を回転させるための回転動力を前記電動部が出力している場合に前記検出部が検出した第1の荷重と、前記シャッターカーテンを巻き取る方向に前記巻き取り軸を回転させるための回転動力を前記電動部が出力している場合に前記検出部が検出した第2の荷重とに対して、前記記憶部に記憶した前記基準値を比較し、比較結果を出力する出力部と、
を備える、電動開閉体制御装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記第1の荷重と前記基準値との差異が第1範囲以内であり、かつ前記第2の荷重と前記基準値との差異が第2範囲以内である場合に、シャッターカーテンの設置状態が正常であることを知らせるための情報を出力する、
請求項1に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記第1の荷重と前記基準値との差異が第1範囲を超え、かつ前記第2の荷重と前記基準値との差異が第2範囲を超える場合に、シャッターカーテンの設置状態が異常であること、または設置状態が変化したことを知らせるための情報を出力する、
請求項1に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項4】
シャッターカーテンを巻き取り可能な巻き取り軸に回転動力を出力する電動部と、
前記電動部による前記巻き取り軸の回転の過程において、前記巻き取り軸の回転角度に応じた前記シャッターカーテンへの荷重を検出する検出部と、
所定のタイミングにおいて、前記巻き取り軸の回転角度に応じた前記シャッターカーテンへの荷重を基準値として記憶する記憶部と、
前記検出部が検出した前記荷重と、前記記憶部に記憶した前記基準値との比較結果を出力する出力部とを備え、
前記出力部は、前記荷重と前記基準値との差異が第1範囲を超えている場合に、挟み込みの発生を知らせるための情報を出力し、前記荷重と前記基準値との差異が第1範囲以内であり、第2範囲を超えている場合に、シャッターカーテンの設置状態が異常であること、または設置状態が変化したことを知らせるための情報を出力し、
前記第2範囲は前記第1範囲よりも狭い、
電動開閉体制御装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記荷重と前記基準値との差異が第2範囲以内である場合に、シャッターカーテンの設置状態が正常であることを知らせるための情報を出力する、
請求項4に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記電動部を回転させるための電流の値の変化をもとに前記荷重を検出する請求項1から5のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項7】
前記記憶部が記憶する前記基準値は更新可能である請求項1から6のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項8】
前記出力部から出力される情報の宛先は携帯端末装置である請求項1から7のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置と、
前記電動開閉体制御装置と接続される電動開閉体と、
を備える電動開閉システム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉体技術に関し、電動により電動開閉体を開閉する電動開閉体制御装置、電動開閉システム、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動シャッター装置には、シャッターに人等を誤って引き込まない仕組みが必要になる。つまり、シャッターカーテンの作動が障害物などにより妨げられると、モータが過負荷に陥りうるので、モータに負荷がかかり過ぎる過負荷状態を検知する装置が求められる。例えば、シャッターカーテンの位置情報と、モータの負荷状態に関する電流情報とが関連づけて記憶され、運用状態において計測した電流値が、そのときの位置情報に対応した電流情報を逸脱した場合に、過負荷状態が検出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-307471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータにおいて過負荷が検出されると、モータへの電流の供給を停止することによってモータが停止され、シャッターカーテンの繰り下がりも停止される。一方、シャッターカーテンが移動する場合のガイドとなるガイドレールに歪み等の異常が存在する場合においても、シャッターカーテンとガイドレールとの間の接触摩擦が増加することによって、モータの過負荷が検出される。しかしながら、人等を挟み込んだ場合の過負荷は一時的に発生するが、異常が存在する場合の過負荷は継続するので、異常が存在する場合においてモータが劣化しやすくなる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、電動シャッターにおける異常の発生を検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電動開閉体制御装置は、シャッターカーテンを巻き取り可能な巻き取り軸に回転動力を出力する電動部と、電動部による巻き取り軸の回転の過程において、巻き取り軸の回転角度に応じたシャッターカーテンへの荷重を検出する検出部と、所定のタイミングにおいて、巻き取り軸の回転角度に応じたシャッターカーテンへの荷重を基準値として記憶する記憶部と、シャッターカーテンを繰り出す方向に巻き取り軸を回転させるための回転動力を電動部が出力している場合に検出部が検出した第1の荷重と、シャッターカーテンを巻き取る方向に巻き取り軸を回転させるための回転動力を電動部が出力している場合に検出部が検出した第2の荷重とに対して、記憶部に記憶した基準値を比較し、比較結果を出力する出力部と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、電動開閉体制御装置である。この装置は、シャッターカーテンを巻き取り可能な巻き取り軸に回転動力を出力する電動部と、電動部による巻き取り軸の回転の過程において、巻き取り軸の回転角度に応じたシャッターカーテンへの荷重を検出する検出部と、所定のタイミングにおいて、巻き取り軸の回転角度に応じたシャッターカーテンへの荷重を基準値として記憶する記憶部と、検出部が検出した荷重と、記憶部に記憶した基準値との比較結果を出力する出力部とを備える。出力部は、荷重と基準値との差異が第1範囲を超えている場合に、挟み込みの発生を知らせるための情報を出力し、荷重と基準値との差異が第1範囲以内であり、第2範囲を超えている場合に、シャッターカーテンの設置状態が異常であること、または設置状態が変化したことを知らせるための情報を出力し、第2範囲は第1範囲よりも狭い。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、またはコンピュータプログラムを記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電動シャッターにおける異常の発生を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)-(b)は、実施例に係るシャッターシステムの構造を示す図である。
図2図1(a)-(b)のシャッターシステムの内部構造を示す図である。
図3図1(a)-(b)のシャッターシステムの構成を示すブロック図である。
図4図4(a)-(h)は、図1(a)-(b)のシャッターシステムにおける枠の歪みを示す図である。
図5図1(a)-(b)のシャッターシステムにおいて挟み込みが発生した場合の図3の電動化ユニットの動作概要を示す図である。
図6図3の第2検出部においてなされる2軸変換の概要を示す図である。
図7図7(a)-(b)は、図3の電動化ユニットの動作概要を示す図である。
図8図3の第3検出部における検出処理を示す図である。
図9図9(a)-(c)は、図3の携帯端末装置に表示される画面を示す図である。
図10図3の電動化ユニットによる検出手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、本実施例の概要を説明する。実施例は、住宅等の施設の開口部に設置されるシャッターシステムに関する。シャッターシステムは電動シャッターであり、電動シャッターはシャッター動作を自動化する。電動シャッターは、一般的に、シャッターカーテンが開状態でユーザが「閉」ボタンを一度押すと、シャッターカーテンのスラットが最下部に到達するまで閉動作を続ける。電動シャッターの開閉動作は、シャッターの施工状態に影響を受けるので、施工時に規格値を満たすかが確認される。規格値を超過するような異常が発生した場合、ガイドレールとスラットの隙間がなくなって接触摩擦が増加する。これにより、動作速度が不安定になったり、モータの負荷が過剰に増加したりして、電動シャッターの製品寿命が短くなりうる。これまで電動シャッターの設置状態が規格値を満たすかを確認するために、メジャーを使用してなどで寸法が測定されていた。
【0012】
しかしながら、電動シャッターは、例えば高さ3m、幅が2mを有するので、このような設置状態に関する寸法測定は困難である。また、設置状態の異常は、施工時のみに発生するとは限らず、設置する躯体形状の経年的な変形によっても発生する。そのため、電動シャッター設置状態の測定を簡単化することが求められる。また、施工時以外のタイミングでも、設置状態を検出することが求められる。
【0013】
本実施例に係る電動シャッターは、電動シャッターを実際に動作させたときの摩擦力が大きくなるとモータの負荷電流が大きくなることを利用して、モータに作用する負荷電流を測定することによって電動シャッターの設置状態を確認する。モータの負荷電流の測定は、トルク相関電流を抽出することによってなされる。
【0014】
図1(a)-(b)は、シャッターシステム1000の構造を示す。図1(a)は、施設を屋外から見た場合の構成を示し、図1(b)は、施設を屋内から見た場合の構成を示す。シャッターシステム1000は、ガイドレール20、シャッターカーテン30、シャッターケース40、通信線200、コントローラ300を含み、シャッターカーテン30は、スラット32を含む。ここで、ガイドレール20、シャッターカーテン30、シャッターケース40はシャッターに含まれる。
【0015】
図1(a)に示されるように、開閉体であるシャッターは、住宅やビル等の施設において内外を仕切る外壁に形成された開口部10に設置される。開口部10は、施設において内外を連通する空間である。2つのガイドレール20は、上下方向に延びる形状を有するとともに、開口部10の左右方向の両側に互いに離間して、開口部10に設置されたサッシ等の枠材と外壁とに固定される。各ガイドレール20は、横断面略コ字状の内部構造を有する中空状の部材であり、2つのガイドレール20は、コ字状の開口が対向するように固定される。
【0016】
シャッターカーテン30は、ガイドレール20の長手方向に沿って上下に移動し、開口部10を開閉する。具体的には、シャッターカーテン30の左右方向両端部がガイドレール20に挿入されることによって、シャッターカーテン30の左右方向両端部は、ガイドレール20によって上下方向に移動可能である。シャッターカーテン30は、複数のスラット32の組合せによって構成される。各スラット32は、開口部10の左右方向に沿って延在する板状の部材であって、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウム等により形成される。各スラット32の上端部と下端部にカール部(図示せず)が設けられており、隣接する2つのスラット32のうち、上側のスラット32の下端部のカール部と、下側のスラット32の上端部のカール部とは、回転自在に連結される。
【0017】
シャッターケース40は、開口部10およびガイドレール20の上方に設けられる縦断面略矩形状の収容体である。シャッターケース40は内部に収納空間を有するとともに、シャッターケース40の下面に設けられた貫通孔を介して収納空間は外部につながる。収納空間には、貫通孔を介してシャッターカーテン30を巻き取ったり、あるいは繰り出したりするための巻き取り機構が設けられる。ここで、「巻き取り」とは、シャッターカーテン30がガイドレール20に沿って上昇し、開口部10が開放されることであり、「繰り出し」とは、シャッターカーテン30がガイドレール20に沿って降下し、開口部10が閉鎖されることである。
【0018】
図1(b)に示されるように、開口部10を囲むようにサッシ12が取り付けられる。図1(a)のシャッターケース40に接続された通信線200は、サッシ12の内部に埋没されて屋内まで延びる。屋内の壁面にはコントローラ300が設置され、コントローラ300に通信線200が接続される。このように通信線200は、屋外に設置された電動化ユニット100と、屋内に設置されたコントローラ300とを接続する。
【0019】
図2は、シャッターシステム1000の内部構造を示す。シャッターシステム1000は、シャッターカーテン30、シャッターケース40、巻き取り軸60を含む。シャッターカーテン30は、スラット32、ねじ34を含み、シャッターケース40は、ブラケット42と総称される第1ブラケット42a、第2ブラケット42b、支持軸44と総称される第1支持軸44a、第2支持軸44bを含む。巻き取り軸60は、回転枠62と総称される第1回転枠62a、第2回転枠62b、従動輪64、巻き取りばね66、固定部72、電動化ユニット80を含み、電動化ユニット80は、本体82、駆動輪84を含み、本体82は、モータ86、制御部88、減速機90、通信線200を含む。電動化ユニット80は、電動開閉体制御装置とも呼ばれる。
【0020】
ここでは、シャッターケース40の内部構造を示すためにシャッターケース40が透明にして示される。シャッターケース40には、図1(a)のガイドレール20の左右の方向に延びる筒状の支柱である巻き取り軸60が配置される。巻き取り軸60には複数の固定部72が設けられており、複数のねじ34を使用して複数の固定部72にシャッターカーテン30が固定される。そのため、巻き取り軸60は、シャッターカーテン30を巻き取り可能な軸であるといえる。
【0021】
シャッターケース40の収納空間の左側端部と右側端部には、巻き取り軸60を左右から挟むように、ブラケット42と総称される第1ブラケット42aと第2ブラケット42bが設けられる。具体的には、巻き取り軸60の左側には第1ブラケット42aが配置され、巻き取り軸60の右側には第2ブラケット42bが配置される。第1ブラケット42aは、巻き取り軸60の左側端部を回転可能に支持する支持部であり、第2ブラケット42bは、巻き取り軸60の右側端部を回転可能に支持する支持部である。巻き取り軸60の左側端部を「第1端部」と呼ぶ場合、巻き取り軸60の右側端部は「第2端部」と呼ばれる。
【0022】
第1ブラケット42aの右側面には、右側に向かって突出する第1支持軸44aが設けられる。第1支持軸44aは筒形状を有し、第1支持軸44aの側面には第1回転枠62aが嵌合される。第1回転枠62aは、巻き取り軸60の左側端部に配置されるとともに、第1支持軸44aの側面を囲む形状を有する。このような構造により、第1ブラケット42aに固定された第1支持軸44aを中心にして、第1回転枠62aが回転する。第2ブラケット42bの左側面には、左側に向かって突出する第2支持軸44bが設けられる。第2支持軸44bは筒形状を有し、第2支持軸44bの側面には第2回転枠62bが嵌合される。第2回転枠62bは、巻き取り軸60の右側端部に配置されるとともに、第2支持軸44bの側面を囲む形状を有する。このような構造により、第2ブラケット42bに固定された第2支持軸44bを中心にして、第2回転枠62bが回転する。さらに、第1回転枠62aと第2回転枠62bの回転によって巻き取り軸60も回転する。
【0023】
巻き取り軸60の内部の右側領域には、保持部(図示せず)が配置され、保持部に電動化ユニット80が取り付けられる。電動化ユニット80は、巻き取り軸60に回転動力を出力する電動装置である。電動化ユニット80は、筒形状を有する本体82と、本体82の左側に配置される駆動輪84を含む。このような駆動輪84は、電動化ユニット80において巻き取り軸60の中央側を向いているともいえる。本体82の内部にはモータ86、制御部88、減速機90が搭載されており、モータ86の回転によって減速機90と駆動輪84も回転する。制御部88はモータ86の回転を制御する。特に、制御部88は、電動化ユニット80のモータ86を回転させるための電流の値を制御する。
【0024】
巻き取り軸60の内部において、保持部の左側の領域、つまり電動化ユニット80に対して巻き取り軸60の中央側の領域には、従動輪64が設けられる。従動輪64は、駆動輪84の左側に配置されており、駆動輪84と組み合わされた場合に駆動輪84の回転によって回転する。また、従動輪64の回転によって巻き取り軸60も回転する。その結果、巻き取り軸60は、電動化ユニット80からの回転動力により回転するといえる。一方、駆動輪84と従動輪64とが組み合わされていない場合、巻き取り軸60は、電動化ユニット80からの回転動力ではなく、手動の回転動力により回転する。手動による巻き取り軸60の回転については説明を省略する。
【0025】
ここで、保持部は、本体82の側面の一部分、例えば、本体82の側面のうち、下側を含む部分を保持する。また、保持部の右側端部は第2支持軸44bに接続される。この接続により保持部は第2ブラケット42bに固定されるので、巻き取り軸60が回転する場合であっても、保持部に保持される本体82は回転しない。
【0026】
さらに詳細に説明すると、電動化ユニット80の本体82では、制御部88による制御によってモータ86が回転する。減速機90は、モータ86の回転動力のトルクを増幅させる。減速機90には公知の技術が使用されればよいが、例えば、太陽歯車を中心として、複数の遊星歯車が自転しつつ公転する構造を有する。減速機90の回転により駆動輪84が回転すると、駆動輪84と組み合わされた従動輪64も回転し、巻き取り軸60が回転する。
【0027】
図1(a)のようにシャッターカーテン30が開口部10を閉鎖した全閉状態から、巻き取り軸60が巻き取りの方向に回転すると、シャッターカーテン30は、巻き取り軸60の外周面に沿って巻き取られながら開口部10を開放する。この回転が継続すると、シャッターカーテン30は、1周目の回転において巻き取られたシャッターカーテン30上に積層されながら巻き取られ、開口部10の全域を開放する。また、シャッターカーテン30が開口部10を開放した全開状態から、巻き取り軸60が繰り出しの方向に回転すると、巻き取り軸60の外周面に積層されたシャッターカーテン30が順次繰り出される。この回転が継続すると、シャッターカーテン30は開口部10の全域を閉鎖する。
【0028】
図3は、シャッターシステム1000の構成を示すブロック図である。シャッターシステム1000は、電動化ユニット80、通信線200、コントローラ300を含む。電動化ユニット80は、ネットワーク502を介してサーバ500、携帯端末装置510に接続される。電動化ユニット80は、モータ86、制御部88を含み、制御部88は、第1接続部410、第1有線通信部412、位置制御部414、第1検出部416、速度制御部418、微分部420、電流制御部422、第2検出部424、第3検出部428、通信部450、導出部452、記憶部454を含む。コントローラ300は、操作部310、操作制御部312、第2有線通信部314、第2接続部316を含む。
【0029】
コントローラ300の操作部310は、複数のボタンを有するユーザインターフェイスであり、ユーザの操作を受けつける。コントローラ300の表面には、開ボタン、停止ボタン、閉ボタンが設けられる。開ボタン、停止ボタン、閉ボタンは例えば平面スイッチで構成される。開ボタンは、開口部10を開放するようにシャッターカーテン30を移動させるための指示(以下、「開放指示」という)を受けつけるボタンである。停止ボタンは、移動しているシャッターカーテン30を停止させるための指示(以下、「停止指示」という)を受けつけるボタンである。閉ボタンは、開口部10を閉鎖するようにシャッターカーテン30を移動させるための指示(以下、「閉鎖指示」という)を受けつけるボタンである。開ボタン、停止ボタン、閉ボタンのうちの1つが押し下げられることによって、開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つに応じた操作信号が操作部310から操作制御部312に出力される。
【0030】
操作制御部312は、操作部310から操作信号を受けつける。操作制御部312は、操作信号において示された開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つが含まれた指示信号を生成する。第2有線通信部314は、操作制御部312から指示信号を受けつけ、第2接続部316、通信線200を介して指示信号を電動化ユニット80に送信する。
【0031】
第2接続部316は、コントローラ300に通信線200を接続するためのインターフェイスである。また、電動化ユニット80の第1接続部410も通信線200を接続するためのインターフェイスである。第2接続部316に通信線200が接続されるとともに、第1接続部410に通信線200が接続されることによって、通信線200は、コントローラ300と電動化ユニット80とを接続する。このような接続によって、コントローラ300から電動化ユニット80に向かって、通信線200は、指示信号を伝送する。コントローラ300は屋内に設置され、電動化ユニット80は屋外に設置されるので、屋内から屋外に指示信号が送信される。
【0032】
第1有線通信部412は、第2接続部316、通信線200、第1接続部410を介して、第2有線通信部314からの指示信号を受信する。第1有線通信部412は、指示信号に含まれた開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つを位置制御部414に出力する。位置制御部414は、開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つを第1有線通信部412から受けつける。
【0033】
位置制御部414は、受けつけた開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つに応じて、シャッターカーテン30の位置(下端の位置)の目標値を更新する。例えば、位置制御部414は、開放指示を受けつけている場合に、これまでの目標値を高くするように更新する。また、位置制御部414は、第1検出部416からシャッターカーテン30の位置の帰還値を受けつける。第1検出部416における位置の帰還値の検出方法については後述する。ここで、シャッターカーテン30の位置はモータ86の回転の角度として示されてもよいが、以下では説明を明瞭にするために角度も位置に含める。位置制御部414は、目標値と帰還値の少なくとも1つが上限位置あるいは下限位置に達するまで、あるいは停止指示があるまでは非ゼロの一定速度で動作させるための速度の目標値を出力する。
【0034】
微分部420は、第1検出部416からシャッターカーテン30の位置の帰還値を受けつけ、位置の帰還値を微分することによって、速度の帰還値を導出する。微分部420は速度の帰還値を速度制御部418に出力する。速度制御部418は、位置制御部414から速度の目標値を受けつけ、微分部420から速度の帰還値を受けつける。速度制御部418は、速度の目標値から速度の帰還値を減じることによって速度偏差を導出してから、比例・積分制御等の速度ループ処理を行ってトルク(電流)の目標値を導出する。
【0035】
電流制御部422は、速度制御部418からトルク(電流)の目標値を受けつける。また、電流制御部422からモータ86に出力される電流の大きさ、つまり電動化ユニット80のモータ86に供給される総電流の値は第2検出部424において検出され、電流制御部422は、検出された電流の帰還値を受けつける。第2検出部424は例えばシャント抵抗により構成される。電流制御部422は、電流の帰還値がトルク(電流)の目標値に近づくように、モータ86に出力すべき電流の大きさを決定する。これは、モータ86を回転させるための電流を制御することに相当し、この決定には公知の技術が使用されればよい。つまり、速度制御部418と電流制御部422は、第1検出部416において検出した位置の変化、つまり速度に応じて、モータ86を回転させるための電流の値を決定する。
【0036】
電流制御部422から出力される電流の値に応じた速度でモータ86が回転する。モータ86は、巻き取り軸60に回転動力を出力する。モータ86が3相ブラシレスモータである場合、電流制御部422からは3相の直流電流が出力される。
【0037】
このような構成により、制御部88は、制御信号が開放指示に相当する場合、巻き取り軸60が巻き取りの方向に回転するようにモータ86を回転させ、制御信号が閉鎖指示に相当する場合、巻き取り軸60が繰り出しの方向に回転するようにモータ86を回転させる。巻き取り方向におけるモータ86の回転方向と、繰り出しの方向におけるモータ86の回転方向とは逆方向である。一方、制御部88は、制御信号が停止指示に相当する場合、モータ86の回転を停止させる。モータ86は制御部88に応じて回転し、開口部10を開閉するシャッターカーテン30、巻き取り軸60等に動力を供給する。
【0038】
モータ86の回転方向に応じてシャッターカーテン30が開閉される場合に、シャッターカーテン30の位置は第1検出部416で検出される。第1検出部416は、例えば、モータ86の側部に設けられ、モータ86の回転数を機械的にカウントして開閉位置あるいは上下限位置を検出するカウンタ式リミットスイッチにより構成される。また、第1検出部416は、モータ86に設けられたエンコーダによりパルスをカウントすることによって、シャッターカーテン30の開閉位置あるいは上下限位置を検出する構成であってもよい。また、第1検出部416は、モータ86の電流検出回路で構成され、モータ86に加わる負荷変動に対応した電流値変化から開閉位置あるいは上下限位置を検出する構成であってもよい。さらに、第1検出部416は、ガイドレール20の上下に設けられてシャッターカーテン30の開閉位置あるいは上下限位置を直接検出する機械的あるいは電気的なリミットスイッチであってもよい。第1検出部416において検出された位置は、位置制御部414、微分部420に出力される。
【0039】
このようなシャッターシステム1000において、設置状態の異常が発生したり、人等の挟み込みが発生したりする。ここでは、シャッターシステム1000における設置状態の異常の発生を説明するために図4(a)-(h)を使用する。図4(a)-(h)は、シャッターシステム1000における枠の歪みを示し、シャッターシステム1000は、上枠600、側枠610と総称される第1側枠610a、第2側枠610b、下枠602を含む。第1側枠610a、第2側枠610bは、図1(a)の2つのガイドレール20に対応し、上下方向に延びる。第1側枠610aの上端と第2側枠610bの上端は、左右方向に延びる上枠600により接続され、第1側枠610aの下端と第2側枠610bの下端は、左右方向に延びる下枠602により接続される。
【0040】
図4(a)-(b)では、第1側枠610aと第2側枠610bとが上下方向の中央部分において変形することによって、第1側枠610aと第2側枠610bとの間隔が上下方向において異なる。図4(c)では、第1側枠610aと第2側枠610bが同一方向に傾くように変形することによって、第1側枠610aと第2側枠610bとが上下方向を向かなくなる。図4(d)-(e)では、上枠600と側枠610とが左右方向の中央部分において変形することによって、第1側枠610aと第2側枠610bとの間隔が狭くなる。図4(f)-(g)では、上枠600、側枠610、下枠602が前後方向に歪むことによって、第1側枠610aと第2側枠610bとが上下方向を向かなくなる。これらのような変形により、側枠610であるガイドレール20と、スラット32との隙間がなくなって接触摩擦が増加する。このようなシャッターシステム1000の設置状態の異常は、施工時に発生したり、経年的な変形によっても発生したりする。
【0041】
また、シャッターシステム1000における人等の挟み込みの発生を説明するために、図5を使用する。図5は、シャッターシステム1000において挟み込みが発生した場合の電動化ユニット80の動作概要を示す。これは、コントローラ300の閉ボタンが押し下げられて、シャッターカーテン30が繰り出されている状況において、シャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生する状況に相当する。モータ86に出力される電流の大きさ、つまり第2検出部424において検出される電流の大きさの時間変化が示される。時間0からT1まで、シャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生していない。そのため、モータ86の負荷がほぼ一定であるので、電流の大きさもほぼ一定である。このような状態においてシャッターカーテン30が繰り出される。
【0042】
時間T1においてシャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生すると、モータ86の負荷が増加する。例えば、モータ86の負荷は時間T1から時間T2に向かって増加する。これは、障害物の挟み込みの発生によって、シャッターカーテン30が繰り出されない状況であるといえる。時間T1においてシャッターカーテン30による障害物の挟み込みが発生すると、電流が増加する。これは、モータ86の負荷が増加している状況において、シャッターカーテン30を繰り出すための制御がなされるので、モータ86に出力する電流が増加するからである。
【0043】
設置状態の異常の発生を検出したり、人等の挟み込みの発生を検出したりするために、本実施例に係る電動化ユニット80は、モータ86における電流の値の変化を利用する。前述の第2検出部424は、電流値のトルク成分を検出する。モータ86が3相ブラシレスモータである場合、3相ブラシレスモータに出力される3相の直流電流は、u相、v相、w相と示される。また、各相の電流ベクトルの合成ベクトルが周期的に角度を変化することによって、3相ブラシレスモータは回転する。第2検出部424は、u相、v相、w相の電流ベクトルを受けつけ、これらに対してq軸、d軸への2軸変換を実行する。このような変換には公知の行列演算が実行されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0044】
図6は、第2検出部424においてなされる2軸変換の概要を示す。互い直交したu相、v相、w相が示されるとともに、互いに直交したd軸とq軸が示される。ここで、d軸は励磁成分を示しq軸はトルク成分を示す。合成ベクトルは、2軸変換により、d軸方向の励磁ベクトルとq軸方向のトルクベクトルの組合せに変換される。これは、3相ブラシレスモータにおける3相の電流を、励磁成分とトルク成分との組合せに変換することに相当する。励磁成分とトルク成分のうち、トルク成分は外力による負荷に比例する特性がある。つまり、トルク成分には、合計荷重のトルクの変化が反映される。図3に戻る。
【0045】
コントローラ300に対する操作により、電動化ユニット80のモータ86が回転することによってシャッターカーテン30の開閉動作がなされる。その際、第1検出部416は、シャッターカーテン30の位置を検出し、第2検出部424は、モータ86を回転させるための電流値、例えば3相の電流のトルク成分を検出する。これは、モータ86による巻き取り軸60の回転の過程において、巻き取り軸60の回転角度に応じたシャッターカーテン30への荷重を検出することに相当する。また、第2検出部424は、モータ86を回転させるための電流値の変化をもとに荷重を検出するともいえる。第1検出部416は、位置の情報を導出部452、第3検出部428に出力し、第2検出部424は、電流値の情報を導出部452、第3検出部428に出力する。
【0046】
図7(a)-(b)は、電動化ユニット80の動作概要を示す。図7(a)における縦軸がシャッターカーテン30の位置を示し、横軸が電流値を示す。例えば、設置状態の異常と人等の挟み込みが発生していない正常時において、第1検出部416から受けつけた位置と、第2検出部424から受けつけた電流値とをプロットした結果が正常状態700である。
【0047】
正常状態700では、シャッターカーテン30の位置「H」より上側において、位置が上になるとともに電流値が増加する。また、シャッターカーテン30の位置「L」より下側において、位置が下になるとともに電流値が増加する。これらの増加は、シャッターカーテン30が上限位置に到達するときと下限位置に到達するときに、摩擦による反力が増加するためである。導出部452には、位置「H」および位置「L」が自動あるいは手動により登録される。位置「H」および位置「L」の登録には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。また、シャッターカーテン30の位置「H」と位置「L」の間では、巻き取り軸60からスラット32を繰り出すときの摩擦による反力の変動により、電流値が、大きくなったり小さくなったりを繰り返すように変動する。正常状態700は、シャッターカーテン30が巻き取られる場合と、シャッターカーテン30が繰り出される場合とにおいて同様に示される。
【0048】
シャッターカーテン30の位置「P1」に人等が存在する場合、シャッターカーテン30が全開状態から繰り出されると、位置「H」から位置「P1」において正常状態700と同様の電流値が検出される。シャッターカーテン30が位置「P1」からさらに繰り出されると、人等によりモータ86に加わる荷重が増加するので、電流値も挟み込み状態702のように増加する。挟み込み状態702は、シャッターカーテン30が繰り出される場合に示され、シャッターカーテン30が巻き取られる場合に示されない。
【0049】
シャッターカーテン30の位置「P2」から位置「L」の間において、設置状態の異常によりスラット32とガイドレール20との隙間がない場合、シャッターカーテン30が全開状態から繰り出されると、位置「H」から位置「P2」において正常状態700と同様の電流値が検出される。シャッターカーテン30が位置「P2」からさらに繰り出されると、モータ86に加わる荷重が増加するので、電流値も異常状態704のように増加する。シャッターカーテン30の位置「L」において、正常状態700と同様の電流値が検出される。異常状態704は、シャッターカーテン30が巻き取られる場合と、シャッターカーテン30が繰り出される場合とにおいて同様に示される。
【0050】
図3の導出部452は、例えば、シャッターシステム1000を設置した場合において、第1検出部416からの位置の情報と、第2検出部424からの電流値の情報とを受けつける。シャッターシステム1000に異常が存在しない場合、位置と電流値との関係は図7(a)の正常状態700のように示される。導出部452は、正常状態700における電流値をもとに基準値を導出する。例えば、導出部452は、位置「H」と位置「L」との間における電流値の平均値を基準値として導出する。図7(b)は、図7(a)と同様の位置と電流値との対応関係を示す。図7(b)には基準値が示される。図3に戻る。シャッターシステム1000が設置された後、導出部452は、位置の情報と電流値の情報を定期的に受けつけ、位置と電流値とをもとに基準値を導出することによって、基準値を更新してもよい。導出部452は、基準値を記憶部454に出力する。
【0051】
記憶部454は、導出部452から受けつけた基準値を記憶する。つまり、記憶部454は、所定のタイミングにおいて、巻き取り軸60の回転角度に応じたシャッターカーテン30への荷重を基準値として記憶する。記憶部454が記憶する基準値は更新可能である。記憶部454は、正常状態700のような位置と電流値との関係を記憶してもよい。また、記憶部454は、図7(b)に示される異常検出範囲と挟み込み検出範囲も記憶する。異常検出範囲と挟み込み検出範囲は、基準値に対する範囲として規定されており、異常検出範囲の方が挟み込み検出範囲よりも広くされる。
【0052】
第3検出部428は、第1検出部416から位置の情報を受けつけるとともに、第2検出部424から電流値の情報を受けつける。第3検出部428は、位置の情報の時間変化をもとに、位置が下降する方向に変化しているか、位置が上昇する方向に変更しているか、位置が変わらないかを判定する。位置が下降する方向に変化する場合は、シャッターカーテン30を繰り出す方向に巻き取り軸60を回転させるための回転動力をモータ86が出力している場合(以下、「繰り出し時」という)に相当する。位置が上昇する方向に変更する場合は、シャッターカーテン30を巻き取る方向に巻き取り軸60を回転させるための回転動力をモータ86が出力している場合(以下、「巻き取り時」という)に相当する。位置が変わらない場合、巻き取り軸60を回転させない場合に相当する。
【0053】
図8は、第3検出部428における検出処理を示す。第3検出部428は、繰り出し時において電流値が挟み込み検出範囲を超えている場合、挟み込みの発生を検出する。ここで、第3検出部428は、巻き取り時において電流値が挟み込み検出範囲を超えるか否かを判定しない。また、第3検出部428は、繰り出し時と巻き取り時において、電流値が挟み込み検出範囲以内であり、かつ異常検出範囲を超える場合、異常の発生を検出する。第3検出部428は、繰り出し時と巻き取り時のいずれかだけにおいて、電流値が挟み込み検出範囲以内であり、かつ異常検出範囲を超える場合、異常の発生を検出してもよい。挟み込み検出範囲を「第1範囲」と呼ぶ場合、異常検出範囲は「第2範囲」と呼ばれる。そのため、繰り出し時の電流値に対応する荷重と基準値との差異が第1範囲を超えている場合に、挟み込みの発生が検出され、繰り出し時と巻き取り時の電流値に対応する荷重と基準値との差異が第1範囲以内であり、第2範囲を超えている場合に、異常が検出されるといえる。
【0054】
以上の説明において、繰り出し時における異常検出範囲を「第1異常検出範囲」とする場合、巻き取り時における異常検出範囲は「第2異常検出範囲」とされる。第3検出部428は、繰り出し時の電流値が挟み込み検出範囲以内であり、かつ第1異常検出範囲を超える場合と、巻き取り時の電流値が挟み込み検出範囲以内であり、かつ第2異常検出範囲を超える場合とを満たすときに、異常の発生を検出する。そのため、繰り出し時の電流値に対応する第1の荷重と基準値との差異が第1異常検出範囲を超え、巻き取り時の電流値に対応する第2の荷重と基準値との差異が第2異常検出範囲を超える場合に、異常が検出されるといえる。第1異常検出範囲と第2異常検出範囲は、同一の値であってもよく、異なった値であってもよい。また、「第1異常検出範囲」を「第1範囲」と呼ぶ場合に、「第2異常検出範囲」は「第2範囲」と呼ばれてもよい。
【0055】
さらに、第3検出部428は、電流値が異常検出範囲内である場合に、シャッターカーテン30の設置状態が正常であることを検出する。これは、前述の第1の荷重と基準値との差異が第1異常検出範囲以内であり、かつ第2の荷重と基準値との差異が第2異常検出範囲以内である場合に、シャッターカーテン30の設置状態が正常であることを検出するともいえる。図3に戻る。
【0056】
第3検出部428は、挟み込みの発生を検出した場合、モータ86の回転を停止させるための指示を電流制御部422に出力する。電流制御部422は、モータ86の回転を停止させるための指示を第3検出部428から受けつけると、モータ86の回転を停止させるように、モータ86に出力すべき電流の大きさを制御する。また、第3検出部428は、挟み込みの発生を検出した場合、モータ86を巻き取りの方向に回転させるための指示を電流制御部422に出力してもよい。その際、電流制御部422は、モータ86を巻き取りの方向に回転させるために電流を制御する。さらに、第3検出部428は、挟み込みが発生したことを知らせるための情報(以下、「第1情報」という)を通信部450に出力する。
【0057】
第3検出部428は、異常の発生を検出した場合、シャッターカーテン30の設置状態が異常であること、または設置状態が変化したことを知らせるための情報(以下、「第2情報」という)を通信部450に出力する。第3検出部428は、設置状態が正常であることを検出した場合、シャッターカーテン30の設置状態が正常であることを知らせるための情報(以下、「第3情報」という)を通信部450に出力する。第1情報から第3情報は、第3検出部428における電流値と基準値との比較結果ともいえる。
【0058】
通信部450は、第1情報から第3情報のいずれかを第3検出部428から受けつけると、受けつけた第1情報から第3情報のいずれかをネットワーク502経由でサーバ500に送信する。通信部450から送信される第1情報から第3情報のいずれかには、電動化ユニット80を識別するための識別情報(以下、「電動化ユニットID」という)が含まれる。
【0059】
サーバ500は、第1情報から第3情報のいずれかをネットワーク502経由で電動化ユニット80から受信する。サーバ500は、受信した第1情報から第3情報のいずれかに含まれた電動ユニットIDを抽出する。サーバ500は、電動ユニットIDと、携帯端末装置510を識別するための識別情報(以下、「携帯端末装置ID」という)との対応関係を記憶する。サーバ500は、対応関係を参照して、抽出した電動ユニットIDに対応した携帯端末装置IDを取得する。サーバ500は、取得した携帯端末装置IDを宛先として、受信した第1情報から第3情報のいずれかをネットワーク502経由で送信する。
【0060】
携帯端末装置510は、例えばスマートフォン、タブレット端末装置等の通信装置であり、ネットワーク502を介してサーバ500と通信可能である。携帯端末装置510は、第1情報から第3情報のいずれかをサーバ500から受信する。そのため、第3検出部428から出力される第1情報から第3情報のいずれかの宛先は携帯端末装置510であるともいえる。
【0061】
携帯端末装置510は、受信した第1情報から第3情報のいずれかを画面に表示する。図9(a)-(c)は、携帯端末装置510に表示される画面を示す。図9(a)は、第1情報を受信した場合に表示される画面である。「電動シャッターで挟み込みが発生しました」のメッセージが示される。図9(b)は、第2情報を受信した場合に表示される画面である。「電動シャッターに異常が発生しました」のメッセージが示される。図9(c)は、第3情報を受信した場合に表示される画面である。「電動シャッターは正常です」のメッセージが示される。例えば、携帯端末装置510からサーバ500に情報の提供が要求され、これに応じてサーバ500が第1情報から第3情報のいずれかを送信してから、携帯端末装置510は図9(a)-(c)のような画面を表示する。図3に戻る。携帯端末装置510は、ネットワーク502、サーバ500を介さずに通信部450と直接通信してもよく、コントローラ300であってもよい。
【0062】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0063】
以上の構成によるシャッターシステム1000の動作を説明する。図10は、電動化ユニット80による検出手順を示すフローチャートである。繰り出し時の電流値が挟み込み検出範囲を超える場合(S10のY)、第3検出部428は挟み込みの発生を検出する(S12)。繰り出し時の電流値が挟み込み検出範囲を超えず(S10のN)、繰り出し時と巻き取り時の電流値が異常検出範囲を超える場合(S14のY)、第3検出部428は異常の発生を検出する(S16)。繰り出し時と巻き取り時の電流値が異常検出範囲を超えない場合(S14のN)、第3検出部428は正常であることを検出する(S18)。
【0064】
本実施例によれば、シャッターカーテン30が繰り出す方向に回転してる場合の荷重と、シャッターカーテン30が巻き取る方向に回転している場合の荷重とに対して、基準値を比較するので、基準値からのずれをもとに電動シャッターにおける異常の発生を検出できる。また、シャッターカーテン30が繰り出す方向に回転してる場合の荷重と、シャッターカーテン30が巻き取る方向に回転している場合の荷重とが異常検出範囲以内である場合に、シャッターカーテン30の設置状態が正常であることを検出するので、検出精度を向上できる。また、シャッターカーテン30が繰り出す方向に回転してる場合の荷重と、シャッターカーテン30が巻き取る方向に回転している場合の荷重とが異常検出範囲を超える場合に、設置状態が異常であることを検出するので、検出精度を向上できる。
【0065】
また、シャッターカーテン30への荷重が挟み込み検出範囲以内である場合に挟み込みの発生を検出し、シャッターカーテン30への荷重が挟み込み検出範囲以内であり、異常検出範囲を超えている場合に、設置状態が異常であることを検出するので、電動シャッターにおける挟み込みの発生を検出できる。また、シャッターカーテン30への荷重が挟み込み検出範囲以内である場合に挟み込みの発生を検出し、シャッターカーテン30への荷重が挟み込み検出範囲以内であり、異常検出範囲を超えている場合に、設置状態が異常であることを検出するので、電動シャッターにおける異常の発生を検出できる。また、モータ86を回転させるための電流の値の変化をもとに荷重を検出するので、荷重の検出精度を向上できる。また、基準値は更新可能であるので、最新の状態に基準値を維持できる。また、最新の状態に基準値が維持されるので、検出精度を向上できる。
【0066】
また、検出した結果の情報は携帯端末装置510において表示されるので、検出した結果を知らせることができる。また、検出した結果の情報は携帯端末装置510において表示されるので、電動シャッターの開閉時に作用する荷重を可視化できる。また、電動シャッターの開閉時に作用する荷重が可視化されるので、施工時における設置状態の良否を判定できる。また、電動シャッターの開閉時に作用する荷重が可視化されるので、経年時における設置状態の変化を検出できる。また、モータ86を回転させるための電流の値の変化をもとにシャッターシステム1000の設置状態を測定するので、電動シャッター設置状態の測定を簡単化できる。また、モータ86を回転させるための電流の値の変化をもとにシャッターシステム1000の設置状態を測定するので、施工時以外のタイミングでも、設置状態を検出できる。
【0067】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の電動開閉体制御装置(80)は、シャッターカーテン(30)を巻き取り可能な巻き取り軸(60)に回転動力を出力する電動部(86)と、電動部(86)による巻き取り軸(60)の回転の過程において、巻き取り軸(60)の回転角度に応じたシャッターカーテン(30)への荷重を検出する検出部(424)と、所定のタイミングにおいて、巻き取り軸(60)の回転角度に応じたシャッターカーテン(30)への荷重を基準値として記憶する記憶部(454)と、シャッターカーテン(30)を繰り出す方向に巻き取り軸(60)を回転させるための回転動力を電動部(86)が出力している場合に検出部(424)が検出した第1の荷重と、シャッターカーテン(30)を巻き取る方向に巻き取り軸(60)を回転させるための回転動力を電動部(86)が出力している場合に検出部(424)が検出した第2の荷重とに対して、記憶部(454)に記憶した基準値を比較し、比較結果を出力する出力部(428)と、を備える。
【0068】
出力部(428)は、第1の荷重と基準値との差異が第1範囲以内であり、かつ第2の荷重と基準値との差異が第2範囲以内である場合に、シャッターカーテン(30)の設置状態が正常であることを知らせるための情報を出力する。
【0069】
出力部(428)は、第1の荷重と基準値との差異が第1範囲を超え、かつ第2の荷重と基準値との差異が第2範囲を超える場合に、シャッターカーテン(30)の設置状態が異常であること、または設置状態が変化したことを知らせるための情報を出力する。
【0070】
本開示の別の態様は、電動開閉体制御装置(80)である。この装置は、シャッターカーテン(30)を巻き取り可能な巻き取り軸(60)に回転動力を出力する電動部(86)と、電動部(86)による巻き取り軸(60)の回転の過程において、巻き取り軸(60)の回転角度に応じたシャッターカーテン(30)への荷重を検出する検出部(424)と、所定のタイミングにおいて、巻き取り軸(60)の回転角度に応じたシャッターカーテン(30)への荷重を基準値として記憶する記憶部(454)と、検出部(424)が検出した荷重と、記憶部(454)に記憶した基準値との比較結果を出力する出力部(428)とを備える。出力部(428)は、荷重と基準値との差異が第1範囲を超えている場合に、挟み込みの発生を知らせるための情報を出力し、荷重と基準値との差異が第1範囲以内であり、第2範囲を超えている場合に、シャッターカーテン(30)の設置状態が異常であること、または設置状態が変化したことを知らせるための情報を出力し、第2範囲は第1範囲よりも狭い。
【0071】
出力部(428)は、荷重と基準値との差異が第2範囲以内である場合に、シャッターカーテン(30)の設置状態が正常であることを知らせるための情報を出力する。
【0072】
検出部(424)は、電動部(86)を回転させるための電流の値の変化をもとに荷重を検出してもよい。
【0073】
記憶部(454)が記憶する基準値は更新可能であってもよい。
【0074】
出力部(428)から出力される情報の宛先は携帯端末装置(510)であってもよい。
【0075】
電動開閉体制御装置(80)と、電動開閉体制御装置(80)と接続される電動開閉体と、を備えてもよい。
【0076】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0077】
本実施例における第3検出部428は、挟み込みの発生と異常の発生とを検出可能である。しかしながらこれに限らず例えば、第3検出部428は、異常の発生を検出可能であり、挟み込みの発生を検出できなくてもよい。本変形例によれば、構成を簡易にできる。
【符号の説明】
【0078】
10 開口部、 12 サッシ、 20 ガイドレール、 30 シャッターカーテン、 32 スラット、 34 ねじ、 40 シャッターケース、 42 ブラケット、 44 支持軸、 60 巻き取り軸、 62 回転枠、 64 従動輪、 66 巻き取りばね、 72 固定部、 80 電動化ユニット(電動開閉体制御装置)、 82 本体、 84 駆動輪、 86 モータ、 88 制御部、 90 減速機、 200 通信線、 300 コントローラ、 310 操作部、 312 操作制御部、 314 第2有線通信部、 316 第2接続部、 410 第1接続部、 412 第1有線通信部、 414 位置制御部、 416 第1検出部、 418 速度制御部、 420 微分部、 422 電流制御部、 424 第2検出部(検出部)、 428 第3検出部(出力部)、 450 通信部、 452 導出部、 454 記憶部、 500 サーバ、 502 ネットワーク、 510 携帯端末装置、 600 上枠、 602 下枠、 610 側枠、 700 正常状態、 702 挟み込み状態、 704 異常状態、 1000 シャッターシステム。
図1
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図10