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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031768
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】抗老化用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20230302BHJP
   A61K 35/644 20150101ALI20230302BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230302BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230302BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K35/644
A61P43/00 107
A61Q19/08
A61K48/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137463
(22)【出願日】2021-08-25
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593084649
【氏名又は名称】日本コルマー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591045471
【氏名又は名称】アピ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】池田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中井 隆人
(72)【発明者】
【氏名】西浦 英樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真悟
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083CC04
4C083EE12
4C084AA13
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZC52
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB22
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZC52
(57)【要約】
【課題】飲食品、化粧品、医薬品等の様々な用途に利用できるものとして、花粉荷抽出物を含有するものであり、優れた皮膚の抗老化作用を発揮する抗老化用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の抗老化用組成物は、花粉荷抽出物を有効成分として含有し、老化に関与する遺伝子の発現量を調整することによって皮膚の抗老化作用を発揮するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉荷抽出物を有効成分として含有し、老化に関与する遺伝子の発現量を調整することによって皮膚の抗老化作用を発揮する抗老化用組成物。
【請求項2】
前記抗老化作用は、インボルクリンを産生する遺伝子、フィラグリンを産生する遺伝子、及びケラチン10を産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進して発揮される角化促進を介した作用である請求項1に記載の抗老化用組成物。
【請求項3】
前記抗老化作用は、Nrf2-ARE経路の抗酸化に関連する遺伝子の発現量を調整することによって発揮される抗酸化を介した作用である請求項1に記載の抗老化用組成物。
【請求項4】
前記抗酸化は、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニットを産生する遺伝子、キノンオキシドレダクターゼを産生する遺伝子、及びヘムオキシゲナーゼを産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進することによって発揮される請求項3に記載の抗老化用組成物。
【請求項5】
前記抗老化作用は、炎症性サイトカインを産生する遺伝子の発現を抑制して発揮される抗炎症を介した作用である請求項1に記載の抗老化用組成物。
【請求項6】
前記抗老化作用は、LC3Bを産生する遺伝子及びベクリン1を産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進することによって発揮されるオートファジー活性化を介した作用である請求項1に記載の抗老化用組成物。
【請求項7】
化粧品又は皮膚外用剤として適用される請求項1~6のいずれか一項に記載の抗老化用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉荷抽出物を含有する抗老化用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、花粉荷は、蜜蜂が植物の雄しべから花粉を得て、蜂蜜や唾液で丸めて団子状に固めたもので、良質なタンパク質、ビタミン及びミネラル等の多種多様な栄養素を含んでいる事から「パーフェクトフード」とも呼ばれている。花粉荷は、採集器等により蜜蜂から容易に回収され、主に栄養補助食品等として摂取されている。
【0003】
従来より、花粉荷は、いくつかの薬理効果を有することが知られている。花粉荷の薬理効果を利用した発明として、例えば特許文献1,2に開示される組成物が知られている。特許文献1は、花粉荷を有効成分として含有する骨量増進組成物について開示する。特許文献2は、花粉荷を有効成分として含有する糖尿病性疾患の予防・治療用組成物について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-016014号公報
【特許文献2】特開2008-105982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新たに飲食品、化粧品、医薬品等の様々な用途に利用できるものとして、花粉荷抽出物を含有するものであり、優れた皮膚の抗老化作用を発揮する抗老化用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、花粉荷抽出物を含有する抗老化用組成物が優れた皮膚の抗老化作用を発揮することを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の抗老化用組成物は、花粉荷抽出物を有効成分として含有し、老化に関与する遺伝子の発現量を調整することによって皮膚の抗老化作用を発揮することを要旨とする。
【0007】
前記抗老化用組成物において、前記抗老化作用は、インボルクリンを産生する遺伝子、フィラグリンを産生する遺伝子、及びケラチン10を産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進して発揮される角化促進を介した作用であってもよい。
【0008】
前記抗老化用組成物において、前記抗老化作用は、Nrf2-ARE経路の抗酸化に関連する遺伝子の発現量を調整することによって発揮される抗酸化を介した作用であってもよい。
【0009】
前記抗老化用組成物において、前記抗酸化は、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニットを産生する遺伝子、キノンオキシドレダクターゼを産生する遺伝子、及びヘムオキシゲナーゼを産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進することによって発揮されてもよい。
【0010】
前記抗老化用組成物において、前記抗老化作用は、炎症性サイトカインを産生する遺伝子の発現を抑制して発揮される抗炎症を介した作用であってもよい。
前記抗老化用組成物において、前記抗老化作用は、LC3Bを産生する遺伝子及びベクリン1を産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進することによって発揮されるオートファジー活性化を介した作用であってもよい。
【0011】
前記抗老化用組成物において、化粧品又は皮膚外用剤として適用されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた皮膚の抗老化作用を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】試験例2における花粉荷抽出物の添加から24時間後の各角化関連遺伝子の発現量を示すグラフ。(a)IVLのグラフ。(b)FLGのグラフ。(c)K10のグラフ。
図2】試験例2における花粉荷抽出物の添加から48時間後の各角化関連遺伝子の発現量を示すグラフ。(a)IVLのグラフ。(b)FLGのグラフ。(c)K10のグラフ。
図3】試験例2における花粉荷抽出物の添加から24時間又は48時間後のNHEK細胞の顕微鏡写真。(a)24時間後の顕微鏡写真。(b)48時間後の顕微鏡写真。
図4】試験例3における花粉荷抽出物の添加から6時間後の各抗酸化関連遺伝子の発現量を示すグラフ。(a)GCLCのグラフ。(b)NQO1のグラフ。(c)HO1のグラフ。
図5】試験例3における花粉荷抽出物の添加から24時間後の各抗酸化関連遺伝子の発現量を示すグラフ。(a)GCLCのグラフ。(b)NQO1のグラフ。(c)HO1のグラフ。
図6】試験例4における過酸化水素を用いたDCFH-DAによる活性酸素種の除去能を示すグラフ。
図7】試験例5における花粉荷抽出物によるIL-6タンパク質量を示すグラフ。(a)6時間培養した際のグラフ。(b)24時間培養した際のグラフ。
図8】試験例6における花粉荷抽出物の添加から6時間後の各オートファジー関連遺伝子の発現量を示すグラフ。(a)LC3Bのグラフ。(b)BECN1のグラフ。
図9】試験例6における花粉荷抽出物の添加から24時間後の各オートファジー関連遺伝子の発現量を示すグラフ。(a)LC3Bのグラフ。(b)BECN1のグラフ。
図10】試験例6における花粉荷抽出物の添加から48時間後の各オートファジー関連遺伝子の発現量を示すグラフ。(a)LC3Bのグラフ。(b)BECN1のグラフ。
図11】試験例7における花粉荷抽出物で処理前後の皮膚の角層面積のばらつきの変化率を示すグラフ。
図12】試験例7における花粉荷抽出物の処理前後の皮膚角層の顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の抗老化用組成物を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の抗老化用組成物は、花粉荷抽出物を有効成分として含有する。花粉荷抽出物の原料となる花粉荷は、上述したように蜜蜂が植物の雄しべから花粉を得て、蜂蜜や唾液で丸めて団子状に固めたもので、ビタミン及びミネラル等の多種多様な栄養素を含んでいる。本実施形態に用いられる花粉荷の原産地は、特に限定されず、例えば日本、中国、ブラジル、スペイン等のヨーロッパ諸国、オセアニア諸国、及びアメリカ等のいずれであってもよい。特に外国の花粉荷を使用する場合、原料を産地から工場に輸送する際、輸送中の花粉荷の酸化防止や虫の発生を防止するために、真空処理、不活性ガス等によりガス置換包装を施すことが好ましい。例えば10~20秒の間、真空処理により容器内の酸素を排除し、さらに好ましくは1~5秒の間、窒素、或いは、窒素と二酸化炭素の混合ガスを容器に充填し、ガス置換包装を施す工程を実施できる。
【0015】
また、花粉荷の原料となる花粉の起源植物としては、特に限定されず、蜜蜂が採取したものであればいずれも使用できる。花粉の起源植物としては、例えば、ハンニチバナ科、ツツジ科、シソ科、ムラサキ科、ブナ科、キク科、モクセイ科、アブラナ科、マメ科、バラ科、及びヤナギ科が挙げられる。これらの中で、ハンニチバナ科、及びアブラナ科が入手容易性の観点から好ましい。ハンニチバナ科としては、例えばシスタス属ジャラが挙げられる。アブラナ科としては、例えばアブラナ属ナタネ、及びダイコン属ダイコンが挙げられる。花粉荷の採集方法としては、特に限定されず公知の方法を適宜採用できる。例えば、巣箱の出入り口に取り付けられ、格子状の剥取多孔板を備えてなる花粉採集器を用いる方法、巣板又は蜜蜂に付着した花粉荷を直接採集する方法等が挙げられる。得られた花粉荷は、湿式粉砕する前に選別、採取時に混入するゴミ等の夾雑物の除去、洗浄処理等を行ってもよい。選別は、目視による直接的な選別の他、比重選別機、風力選別機を通すことで異物除去できる。
【0016】
抽出処理に使用される溶媒としては、例えば水、親水性有機溶媒、水/親水性有機溶媒の混合液が挙げられる。親水性有機溶媒としては、水に溶解する性質を有するエタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコールのほか、プロピレングリコール(PG)、1,3-ブチレングリコール(BG)、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン等の多価アルコール、アセトンやエーテル類、クロロホルム等を適宜選択して使用できる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これら溶媒の中でも、抗老化作用により優れる観点から1,3-ブチレングリコールが好ましい。また、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコールが用いられる場合、抽出物の固形分中における単位質量当たりの総アミノ酸量、総フラボノイド量が、原料花粉荷よりも増加している。水/親水性有機溶媒の混合液が用いられる場合、混合液中の親水性有機溶媒の含有比率は、特に限定されないが、好ましくは20~80質量%、より好ましくは40~60質量%である。
【0017】
抽出溶媒として例えば1,3-ブチレングリコール50質量%水溶液が使用される場合、溶媒の花粉荷に対する添加量は、抽出効率の点から、花粉荷1質量部に対して1~100質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましく、5~25質量部が最も好ましい。これらの抽出溶媒は、花粉荷とともに混合及び撹拌される。抽出温度は溶媒の種類等により適宜設定されるが、例えば1,3-ブチレングリコール50質量%水溶液の場合、有効成分の抽出効率の観点から10~40℃であることが好ましい。抽出温度が10℃以上の場合には、溶解成分と不溶性成分の分離効率をより向上できる。逆に抽出温度が40℃以下の場合、抽出溶媒の蒸発を抑制しながら抽出効率をより向上させる。抽出の時間は、抽出温度等により適宜設定されるが、例えば1~48時間程度が好ましく、1~3時間程度がより好ましい。得られた抽出物は、溶媒に可溶性の画分と沈殿物からなる不溶性の画分から構成される。これらの可溶性画分と不溶性画分は、公知の方法、例えば濾過処理、及び遠心分離を用いることにより、容易に分離できる。このうち可溶性画分を溶媒抽出物として使用できる。また、抽出効率を向上させる観点から、分離された溶媒不溶性の画分に再度溶媒を添加し、抽出処理を行ってもよい。
【0018】
なお、抽出処理前に抽出効率を高める観点から事前に花粉荷を粉砕処理してもよい。粉砕処理は、抽出処理と同時に行ってもよい。粉砕処理は、公知の粉砕装置を採用できる。具体的には、ホモミキサー、ホモジナイザー、ホモディスパー、ビーズミル、サンドミル、アトライター等の媒体を用いる粉砕機、超音波ホモジナイザー、パイプミキサー、アニューラーミル、高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの粉砕方法は、1種のみを適用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。その際の粉砕時間は、媒体の種類及び装置の種類により適宜設定されるが、好ましくは3~20分、より好ましくは5~15分、さらに好ましくは7~13分である。粉砕時間が3分以上の場合、ペースト状の花粉荷の塊を花粉の微粒子単位まで分散させることができる。一方、粉砕時間を20分以下とすることにより、粉砕処理の効率化を図ることができる。
【0019】
抽出処理により得られた花粉荷抽出物は、上記抽出液をそのまま化粧品、飲食品等の原料として適用してもよく、溶媒を蒸発させて濃縮処理して適用してもよく、乾燥及び粉末化してから適用してもよい。抽出液の濃縮及び乾燥には、公知の減圧濃縮、膜濃縮、凍結濃縮、真空乾燥、噴霧乾燥、又は凍結乾燥が採用可能である。
【0020】
本発明の抗老化用組成物は、老化に関与する遺伝子の発現量を調整することによって皮膚の抗老化作用を発揮する。老化に関与する遺伝子としては、例えば角化関連遺伝子、抗酸化関連遺伝子、炎症関連遺伝子、オートファジー関連遺伝子等が挙げられる。
【0021】
角化関連遺伝子の具体例としては、例えばインボルクリン(IVL)を産生する遺伝子、フィラグリン(FLG)を産生する遺伝子、及びケラチン10(K10)を産生する遺伝子等が挙げられる。抗老化作用は、インボルクリンを産生する遺伝子、フィラグリンを産生する遺伝子、及びケラチン10を産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進して発揮される角化促進を介した作用であることが好ましい。その作用により、特に角層面積のばらつきの改善、ターンオーバーの正常化により均一な角層の形成が促される。
【0022】
また、抗酸化関連遺伝の具体例としては、例えばグルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニットを産生する遺伝子(GCLC)、キノンオキシドレダクターゼを産生する遺伝子(NOQ1)、ヘムオキシゲナーゼ(HO1)等のNrf2-ARE経路の抗酸化に関連する遺伝子等が挙げられる。抗老化作用は、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニットを産生する遺伝子、キノンオキシドレダクターゼを産生する遺伝子、ヘムオキシゲナーゼ等のNrf2-ARE経路の抗酸化に関連する遺伝子の発現量を調整することによって発揮される抗酸化を介した作用であることが好ましい。
【0023】
また、炎症関連遺伝子の具体例としては、例えばインターロイキン(IL-6)等の炎症性サイトカインを産生する遺伝子等が挙げられる。抗老化作用は、炎症性サイトカインを産生する遺伝子の発現を抑制して発揮される抗炎症を介した作用であることが好ましい。
【0024】
また、オートファジー関連遺伝子の具体例としては、例えばオートファゴソーム膜に局在するタンパク質の遺伝子であるLC3Bを産生する遺伝子、オートファジー誘導因子であるベクリン1(BECN1)を産生する遺伝子等が挙げられる。抗老化作用は、LC3Bを産生する遺伝子及びベクリン1を産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進することによって発揮されるオートファジー活性化を介した作用であることが好ましい。
【0025】
本発明の抗老化用組成物の具体的な適用形態として、上記の作用効果を得ることを目的とした化粧品、皮膚外用剤、飲食品、医薬品等が挙げられる。本発明の抗老化用組成物を化粧品又は皮膚外用剤に適用する場合、化粧品又は皮膚外用剤用の基材に配合することにより製造できる。化粧品又は皮膚外用剤の形態は、水溶液、乳液、クリーム、粉末等のいずれであってもよい。基材は、公知の素材、例えば、油分、精製水及びアルコールを主要成分として、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、増粘剤、抗脂漏剤、血行促進剤、pH調整剤、色素顔料、防腐剤及び香料から選択される少なくとも一種を適宜配合してもよい。
【0026】
飲食品は、種々の食品素材又は飲料品素材、例えば健康食品、サプリメント等の飲食品として用いることができる。飲食品の形態としては、特に限定されず、液状、粉末、ゲル状、固形等のいずれであってもよく、また剤形としては、錠剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル等)、顆粒剤、ドリンク剤等のいずれであってもよい。その中でも、カプセル剤の形態の場合、吸湿性が抑えられ、保存安定性を向上できる。
【0027】
飲食品は、その他の成分としてゲル化剤含有食品、糖類、香料、甘味料、油脂、基材、賦形剤、食品添加剤、副素材、増量剤等を適宜配合してもよい。また、飲食品の用途としては、特に限定されず、いわゆる一般食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、病者用食品として適用できる。
【0028】
老化に関与する遺伝子の発現量を調整することによって発揮される皮膚の抗老化作用については、包装、容器等のパッケージ、説明書、パンフレット等の広告媒体、ウェブサイト等の電子媒体において、表示するものを例示できる。
【0029】
表示内容としては、上述した老化に関与する遺伝子の発現量を調整することによって発揮される皮膚の抗老化作用等の表示の他、皮膚の老化に関連した各症状の改善、予防、悪化の防止、又は症状の遅延を示唆する表示や、皮膚機能の維持や保全を示唆する表示も含まれる。本発明の抗老化用組成物の一日当たりの摂取量は、飲食品用途においては特に限定されない。
【0030】
本発明の抗老化用組成物を医薬品として使用する場合は、目的等に応じ公知の投与方法を適宜採用できる。例えば皮膚表面への塗布、経口摂取(服用)により投与する場合の他、血管内投与、経皮投与等のあらゆる投与方法を採用できる。
【0031】
本実施形態の抗老化用組成物の効果について説明する。
(1)本実施形態の抗老化用組成物は、有効成分として花粉荷抽出物を含有する。それにより、老化に関与する遺伝子の発現量を調整することによって優れた皮膚の抗老化作用を発揮する。
【0032】
特に有効成分によりインボルクリンを産生する遺伝子、フィラグリンを産生する遺伝子、ケラチン10を産生する遺伝子等の角化関連遺伝子の発現を促進して、角化促進を介した作用が発揮される。また、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニットを産生する遺伝子、キノンオキシドレダクターゼを産生する遺伝子、ヘムオキシゲナーゼ等のNrf2-ARE経路の抗酸化に関連する遺伝子の発現量を調整することによって抗酸化作用が発揮される。また、インターロイキン等の炎症性サイトカインを産生する遺伝子の発現を抑制することによって抗炎症作用が発揮される。また、LC3Bを産生する遺伝子及びベクリン1を産生する遺伝子のうち少なくとも一つの遺伝子の発現を促進することによってオートファジー活性化作用が発揮される。これらの作用を介して優れた皮膚の抗老化作用が発揮される。
【0033】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の抗老化用組成物は、ヒトに適用される組成物のみならず、家畜等の飼養動物に適用してもよい。
【実施例0034】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。
(製造例1)
半径2~3キロ以内の周辺植物としてシスタス属ジャラ等が存在するセイヨウミツバチの巣箱から花粉荷を得た。抽出溶媒として1,3-ブチレングリコール50質量%水溶液を使用した。抽出溶媒に花粉荷を10質量%となるように溶解し、室温で1時間撹拌した。撹拌後、ろ紙で粗ろ過し、ろ液を4℃で3日間静置して澱出しを行った。澱出し後、ガラスフィルター、0.4μmメンブレンフィルター、0.2μmメンブレンフィルターの順でろ過した。得られたろ液を製造例1における花粉荷抽出物(花粉荷1,3-ブチレングリコール水溶液抽出物)とした。
【0035】
<試験例1:花粉荷抽出物で処理した場合における網羅的遺伝子発現解析>
花粉荷抽出物を正常ヒト表皮角化細胞(NHEK細胞)に処理した際の網羅的遺伝子発現解析を行った。
【0036】
培養したNHEK細胞に花粉荷抽出物を100ppm又は500ppm(固形分濃度)になるように処理した。なお、コントロールは、培地を添加した。6時間又は24時間培養後、QuickGene RNA cultured cell kit S(クラボウ社製)を用いてRNAを抽出した。次にHuman Gene 2.0 ST Array(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用してDNAマイクロアレイを行った。網羅的遺伝子発現解析により、コントロールと比較して遺伝子の発現量が変化する遺伝子数を表1に示される項目毎に測定した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
表1に示されるように、ケラチノサイト関連、酸化還元関連、炎症関連、オートファジー関連の遺伝子群が変動を示した。
【0038】
<試験例2:花粉荷抽出物で処理した場合における角化促進評価>
試験例1のDNAマイクロアレイによる解析により、ケラチノサイト関連の遺伝子群の発現量の変動が確認された。さらに角化関連遺伝子としてインボルクリン(IVL)を産生する遺伝子、フィラグリン(FLG)を産生する遺伝子、ケラチン10(K10)を産生する遺伝子について解析を行った。それらの各遺伝子について、リアルタイムPCRを用い、遺伝子発現量について解析した。
【0039】
培養したNHEK細胞に花粉荷抽出物を100ppm又は500ppm(固形分濃度)になるように処理した。なお、コントロールは、培地を添加した。24時間又は48時間培養後、QuickGene RNA cultured cell kit S(クラボウ社製)を用いてRNAを抽出した。QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社製)を使用してcDNAへ逆転写を行った。LightCycler 96 system(ロシュ社製)を用いてリアルタイムPCRを行い、インボルクリン(IVL)、フィラグリン(FLG)、ケラチン10(K10)について遺伝子発現度合いを測定した。得られた数値は平均±標準偏差として、24時間培養した結果を図1(a)(b)(c)に、48時間培養した結果を図2(a)(b)(c)にそれぞれ示す。また、添加から24時間又は48時間後のNHEK細胞について顕微鏡写真を図3(a)(b)にそれぞれ示す。
【0040】
図1,2に示されるように、NHEK細胞への花粉荷抽出物の処理により、各角化関連遺伝子の発現の増加が確認された。また、図3に示されるように、花粉荷抽出物により角化の促進効果が直接確認された。
【0041】
<試験例3:花粉荷抽出物で処理した場合における抗酸化評価1>
試験例1のDNAマイクロアレイによる解析により、酸化還元関連の遺伝子群の発現量の変動が確認された。さらに酸化還元関連遺伝子としてNrf2-ARE経路の抗酸化に関連する遺伝子としてグルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)を産生する遺伝子、キノンオキシドレダクターゼ(NOQ1)を産生する遺伝子、及びヘムオキシゲナーゼ(HO1)を産生する遺伝子について解析を行った。それらの各遺伝子について、リアルタイムPCRを用い、遺伝子発現量について解析した。
【0042】
培養したNHEK細胞に花粉荷抽出物を100ppm又は500ppm(固形分濃度)になるように処理した。なお、コントロールは、培地を添加した。6時間又は24時間培養後、QuickGene RNA cultured cell kit S(クラボウ社製)を用いてRNAを抽出した。QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社製)を使用してcDNAへ逆転写を行った。LightCycler 96 system(ロシュ社製)を用いてリアルタイムPCRを行い、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(catalytic subunit)(GCLC)、キノンオキシドレダクターゼ(NOQ1)、ヘムオキシゲナーゼ(HO1)について遺伝子発現度合いを測定した。得られた数値は平均±標準偏差(N=4)として、6時間培養した結果を図4(a)(b)(c)に、24時間培養した結果を図5(a)(b)(c)にそれぞれ示す。なお、図中の*はP<0.05、**はP<0.01、****はP<0.0001 vs control(Dunnett)を示す。
【0043】
図4,5に示されるように、NHEK細胞への花粉荷抽出物の処理により、Nrf2-ARE経路の各抗酸化関連遺伝子の発現の増加が確認された。
<試験例4:花粉荷抽出物で処理した場合における抗酸化評価2>
試験例3の結果より、NHEK細胞への花粉荷抽出物の処理により、Nrf2-ARE経路の抗酸化システムに関与している可能性が示唆された。花粉荷抽出物を前処理した細胞に酸化ストレス処理を行い、抗酸化効果を獲得するかについて検証した。
【0044】
培養したNHEK細胞に花粉荷抽出物を100ppm又は500ppm(固形分濃度)になるように処理した。なお、コントロールは、培地を添加した。24時間培養後、細胞浸透性蛍光プローブDCFH-DAを処理し、1時間培養後100μM又は500μMのH2O2を処理した。1時間培養後、細胞内で活性酸素種(ROS)によって酸化され蛍光を発するDCFをVARIOSKAN FLASH(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて蛍光強度測定を行った。得られた数値は平均±標準偏差(N=6)として、図6に結果を示す。なお、図中****はP<0.0001 vs control(Dunnett)を示す。
【0045】
図6に示されるように、過酸化水素を処理することで蛍光強度が増加するが、花粉荷抽出物を前処理すると蛍光強度の増加が抑えられた。つまり、花粉荷抽出物を前処理し抗酸化力を高めておくことで酸化ストレスを抑制できることが確認された。
【0046】
<試験例5:花粉荷抽出物で処理した場合における抗炎症評価>
試験例1のDNAマイクロアレイによる解析により、炎症関連の遺伝子群の発現量の変動が確認された。さらに炎症関連遺伝子としてインターロイキン(IL-6)に着目し、そのタンパク質量について解析を行った。
【0047】
培養したNHEK細胞に花粉荷抽出物を100ppm又は500ppm(固形分濃度)になるように処理した。なお、コントロールは、培地を添加した。24時間培養後、ハンクス平衡塩溶液に培地交換し、20mJ/cmの強度でUV-Bを照射した。UV-B照射後、花粉荷抽出物100ppm又は500ppm含有培地に培地交換した。6時間又は24時間培養後、培地を回収しHuman IL-6 ELISA Kit(invitrogen社製)を用いてIL-6の定量を行った。得られたIL-6定量値は回収したタンパク質量で補正した。得られた数値は平均±標準偏差(N=3)として、図7(a)(b)に結果をそれぞれ示す。なお、*はP<0.05、**はP<0.01 vs control(Dunnett)を示す。
【0048】
図7に示されるように、特に6時間培養のものが、花粉荷抽出物の濃度依存的にIL-6タンパク質産生抑制効果が確認された。この結果から花粉荷抽出物には抗炎症効果を有することが示唆された。
【0049】
<試験例6:花粉荷抽出物で処理した場合におけるオートファジー活性化評価>
試験例1のDNAマイクロアレイによる解析により、オートファジー関連の遺伝子群の発現量の変動が確認された。さらにオートファジー関連遺伝子としてLC3Bを産生する遺伝子及びベクリン1(BECN1)を産生する遺伝子について解析を行った。それらの各遺伝子について、リアルタイムPCRを用い、遺伝子発現量について解析した。
【0050】
培養したNHEK細胞に花粉荷抽出物を100ppm又は500ppm(固形分濃度)になるように処理した。なお、コントロールは、培地を添加した。6時間、24時間、又は48時間培養後、QuickGene RNA cultured cell kit S(クラボウ社製)を用いてRNAを抽出し、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社製)を使用してcDNAへ逆転写を行った。LightCycler 96 system(ロシュ社製)を用いてリアルタイムPCRを行い、LC3B、ベクリン1(BECN1)について遺伝子発現度合いを測定した。得られた数値は平均±標準偏差(N=4)として、6時間培養した結果を図8(a)(b)に、24時間培養した結果を図9(a)(b)に、48時間培養した結果を図10(a)(b)にそれぞれ示す。
【0051】
図8~10に示されるように、NHEK細胞への花粉荷抽出物の処理により、オートファジー関連遺伝子の発現の増加が確認された。
<試験例7:花粉荷抽出物で処理した場合における角層面積のばらつきの評価>
花粉荷抽出物を1質量%配合した美容液を調製した。
【0052】
被験者は、10名(男性6名、女性4名、平均年齢33.7歳)とした。
右半顔に花粉荷抽出物を含有した美容液、左半顔に花粉荷抽出物を含有していない美容液(プラセボ)を使用した。1日2回(朝晩)、4週間塗布した。
【0053】
角層面積は、テープストリッピングにより角層を採種し、ブリリアントグリーン・ゲンチアナバイオレット染色を行うことで角層面積の測定を行った。角層面積の標準偏差をもとに角層面積のばらつきを評価した。使用前を100とした場合のばらつき変化率(%)を求めた。平均値±標準誤差(N=10)で示し、有意差はt-検定を使用し決定した。結果を図11に示す。また、花粉荷抽出物の使用前と4週間使用した後の角層の写真を図12に示す。なお、図11中の†はp<0.1 vs 使用前を示す。
【0054】
図11,12に示されるように、花粉荷抽出物の塗布により、角層面積のばらつきが改善された。つまり、花粉荷抽出物の使用によりターンオーバーの正常化により均一な角層の形成が促されることが期待される。
【0055】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記花粉荷抽出物は、抽出溶媒として1,3-ブチレングリコールが用いられる前記抗老化用組成物。
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