(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031811
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】搬送車両の停止判定装置
(51)【国際特許分類】
G01P 13/00 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
G01P13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137530
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 大希
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 善夫
【テーマコード(参考)】
2F034
【Fターム(参考)】
2F034AA15
2F034BA01
(57)【要約】
【課題】搬送車両を判定対象とする場合でも複数種類の信号を監視することなく、精度の高い停止状態の判定を可能にする停止判定装置を提供する。
【解決手段】フォークリフトが前進状態、又は後退状態から停止に移行する場合に、車体前後方向の加速度の信号を監視して、特有のG値挙動パターンを検出し停止の判定に利用する。停止前挙動BP1-A等の領域で、X軸方向のG値がGx基準値Gx0に対してマイナス側でスタートする第1状態の挙動の後、Gx基準値Gx0に対してプラス側でスタートする第2状態の挙動を検出し、X軸方向のG値がGx基準値Gx0に収束し安定した後で停止を判定する。後退の場合は、X軸方向のG値がプラス側から低下する速度の傾きを監視する。車種別に用意したパラメータを利用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車両上に設置された所定の加速度センサが取得した測定値に基づいて前記搬送車両の停止判定を行う停止判定装置であって、
前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値について、所定の基準値よりマイナス値でスタートする第1状態を検知する第1状態検知部と、
前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値について、前記基準値よりプラス値でスタートする第2状態を検知する第2状態検知部と、
前記第1状態検知部の検知状態、及び前記第2状態検知部の検知状態に基づいて前記搬送車両の停止を判定する最終判定部と、
を備えた搬送車両の停止判定装置。
【請求項2】
前記搬送車両の前進と後退とを区別する進行方向検知部を備え、
前記最終判定部は、前記搬送車両の前進/後退の違いを、判定条件の違いに反映する、
請求項1に記載の搬送車両の停止判定装置。
【請求項3】
前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値について、所定の基準値よりプラス方向から下降する変化の傾きを検知する下降傾き検知部を備える、
請求項1又は請求項2に記載の搬送車両の停止判定装置。
【請求項4】
前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値の中から、前記搬送車両上で発生する機械振動成分、及び路面状態に起因する振動成分をノイズとして排除するノイズフィルタを備える、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の搬送車両の停止判定装置。
【請求項5】
前記搬送車両の車種の違いに依存する補正値を車種毎にそれぞれ保持する車種別補正データベースを備え、
前記第1状態検知部、前記第2状態検知部、及び前記最終判定部の少なくとも1つは、前記車種別補正データベースから取得した補正値を処理の内容に反映する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の搬送車両の停止判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォークリフトのような搬送車両において停止状態を自動判定するために利用可能な搬送車両の停止判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば乗用車のような一般的な車両や、フォークリフトのような搬送車両においてその状態が停止しているか否かを自動的に判定することは非常に重要である。また、車両における停止状態を判定する装置においては、判定精度を上げるために、通常は加速度値、ブレーキ信号、車速信号などの複数の信号が用いられる。
【0003】
一方、特許文献1の車両監視システムは、一般的な車両に設けた加速度センサからの加速度情報に基づいて、車両が静止している静止状態、車両が走行している走行状態、および車両が運搬されている運搬状態の何れかを車両の動作状態として判定することを示している。更に、判定した動作状態と、加速度情報とに基づいて、車両の動作状態以外の状態情報を取得することを示している。
【0004】
また、特許文献2はフォークリフトの移動の停止を正確に判定するための技術を開示している。具体的には、フォークリフトの移動速度と、その移動方向が前進と後退のいずれであるかを表す識別信号とをデータレコーダで取得し、この移動速度と移動方向との組み合わせが所定の条件を満たすときに、フォークリフトが備えるセンサの検出結果に関わらず、フォークリフトの移動が停止したと判定して、この判定結果を含む運行データを記録媒体に記録し、この記録データを運行管理装置で解析することを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-117423号公報
【特許文献2】特許第4908654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フォークリフトのような搬送車両上で検出される加速度の挙動は乗用車のような一般的な車両の場合とは大きく異なるので、搬送車両を対象とする用途では特許文献1の技術をそのまま利用できない。
【0007】
また、特許文献2の技術を利用する場合には、フォークリフトの進行方向を把握するためにバック信号を加速度信号と共に監視しなければならない。そのため、判定を実施するECU(電子制御ユニット)における処理の負荷が増大する。また、車載器を車両に取り付ける際の接続作業の手間が増える。
【0008】
更に、実際に検出される加速度の挙動は、バッテリー車/エンジン車などの車種の違い、車両サイズの違いなどの影響や、走行する路面の凹凸などの影響を大きく受けるので、加速度の値を単純に閾値と比較するような判定を実施する場合には停止状態の誤判定が生じやすい。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送車両を判定対象とする場合でも複数種類の信号を監視することなく、精度の高い停止状態の判定が可能な搬送車両の停止判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
【0011】
搬送車両上に設置された所定の加速度センサが取得した測定値に基づいて前記搬送車両の停止判定を行う停止判定装置であって、
前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値について、所定の基準値よりマイナス値でスタートする第1状態を検知する第1状態検知部と、
前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値について、前記基準値よりプラス値でスタートする第2状態を検知する第2状態検知部と、
前記第1状態検知部の検知状態、及び前記第2状態検知部の検知状態に基づいて前記搬送車両の停止を判定する最終判定部と、
を備えた搬送車両の停止判定装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送車両の停止判定装置によれば、搬送車両を判定対象とする場合でも加速度センサが取得した測定値を監視するだけで、精度の高い停止状態の判定が可能になる。すなわち、前記第1状態および前記第2状態の組み合わせによる特徴的な加速度変化パターンの検知により、搬送車両の停止の有無を高精度で判定できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)、
図1(b)、及び
図1(c)は、それぞれ車種が異なる車両で前進時に検出された各軸方向加速度の変化例を示すタイムチャートである。
【
図2】
図2(a)、
図2(b)、及び
図2(c)は、それぞれ車種が異なる車両で後退時に検出された各軸方向加速度の変化例を示すタイムチャートである。
【
図3】
図3は、前進時に停止状態を判定するための処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、停止判定車載器の機能上の構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実績データ管理装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
まず、監視対象の加速度の変化例を、フォークリフトが前進する場合について説明する。
【0017】
それぞれ車種が異なるフォークリフトの車両が前進方向に移動する時に検出されたX、Y、Z各軸方向加速度の変化例を
図1(a)、
図1(b)、及び
図1(c)に示す。各図において、横軸は時間(秒)、縦軸は加速度値を表している。また、X軸は車両の前後方向、Y軸は車両の左右方向、Z軸は上下方向を表す。また、車種の違いはバッテリー車/エンジン車の違いや、車両サイズの違いなどに相当する。
【0018】
図1(a)においては、「車種A」のフォークリフト上に設置された加速度センサにより検出された3軸方向の加速度、すなわちX軸方向G(加速度)値DXG-A、Y軸方向G値DYG-A、Z軸方向G値DZG-Aの時系列変化が示されている。
【0019】
同様に、
図1(b)においては、「車種B」のフォークリフトにおけるX軸方向G値DXG-B、Y軸方向G値DYG-B、Z軸方向G値DZG-Bの時系列変化が示されている。また、
図1(c)においては、「車種C」のフォークリフトにおけるX軸方向G値DXG-C、Y軸方向G値DYG-C、Z軸方向G値DZG-Cの時系列変化が示されている。
【0020】
また、
図1(a)~
図1(c)中の各停止中判定区間Aspは、監視対象のフォークリフトが停止状態であると判定できる区間を表している。つまり、フォークリフトの前後方向及び左右方向の移動が停止し、且つフォーク等の上下方向移動も停止していると認識すべき状態が停止中判定区間Aspに相当する。
【0021】
したがって、前進状態のフォークリフトが実際に停止したか否かを自動判定する場合には、
図1(a)~
図1(c)中の各停止中判定区間Aspの範囲内か否かを正しく判定できることが重要になる。
【0022】
図1(a)~
図1(c)中の停止開始点tssは、フォークリフトの停止に関する自動判定処理の開始条件を満たした点のタイミングを表している。また、
図1(a)~
図1(c)中の各停止前挙動BP1-A、BP1-B、BP1-Cは、停止開始点tssの後、停止中判定区間Aspに移行するまでの間にX軸方向の加速度信号Gx(DXG-A、DXG-B、DXG-C)に発生する特徴的な挙動パターンの領域を表している。
【0023】
図1(a)に示した例では、停止前挙動BP1-Aの時間領域において、X軸方向G値DXG-AがGx基準値Gx0に比べてマイナス方向(進行方向の逆方向)に変化する「第1状態」が発生している。また、前記「第1状態」の後で、X軸方向G値DXG-AがGx基準値Gx0に比べてプラス方向(進行方向と同じ方向)に変化する「第2状態」が発生している。更に、前記「第2状態」の後で、X軸方向G値DXG-AがGx基準値Gx0と一致する状態に収束している。また、X軸方向G値DXG-AがGx基準値Gx0と一致した後、停止中判定区間Aspの範囲内ではX軸方向G値DXG-Aの変動量は比較的小さい。
【0024】
一方、
図1(b)に示した例では、停止前挙動BP1-Bの時間領域において、
図1(a)中の停止前挙動BP1-Aと同じように、前記「第1状態」、及び前記「第2状態」を経てX軸方向G値DXG-BがGx基準値Gx0と一致する状態に収束している。なお、
図1(b)中のGx基準値Gx0は、
図1(a)中のGx基準値Gx0と異なる場合もある。
【0025】
また、
図1(c)に示した例では、停止前挙動BP1-Cの時間領域において、
図1(a)中の停止前挙動BP1-Aと同じように、前記「第1状態」、及び前記「第2状態」を経てX軸方向G値DXG-CがGx基準値Gx0と一致する状態に収束している。なお、
図1(c)中のGx基準値Gx0は、
図1(a)中のGx基準値Gx0と異なる場合もある。
【0026】
つまり、停止前挙動BP1-A、BP1-B、BP1-CにおけるX軸方向G値の挙動パターンは互いに非常によく似ているので、この特徴的な挙動のパターンを認識することで、フォークリフトが前進状態から停止に遷移する時の停止の判定を高精度で行うことが可能になる。
【0027】
なお、例えばフォークリフトがエンジン車の場合には、車両が停止状態であってもエンジンの振動の影響がX軸方向G値に比較的小さい挙動として現れる。また、フォークリフトが走行する路面の凹凸の影響もX軸方向G値に挙動として現れる。したがって、フォークリフトの停止状態を判定する場合には、車両自体に発生する振動や路面の影響に起因する振動などのノイズの影響を排除する必要がある。
【0028】
次に、監視対象の加速度の変化例を、フォークリフトが後退する場合について説明する。
【0029】
それぞれ車種が異なるフォークリフトの車両が後退方向に移動する時に検出されたX、Y、Z各軸方向加速度の変化例を
図2(a)、
図2(b)、及び
図2(c)に示す。
【0030】
図2(a)においては、「車種B」のフォークリフト上に設置された加速度センサにより検出された3軸方向の加速度、すなわちX軸方向G値DXG-B、Y軸方向G値DYG-B、Z軸方向G値DZG-Bの時系列変化が示されている。
【0031】
同様に、
図2(b)においては、「車種B」のフォークリフトにおけるX軸方向G値DXG-B、Y軸方向G値DYG-B、Z軸方向G値DZG-Bの時系列変化が示されている。また、
図2(c)においては、「車種A」のフォークリフトにおけるX軸方向G値DXG-A、Y軸方向G値DYG-A、Z軸方向G値DZG-Aの時系列変化が示されている。
【0032】
また、
図2(a)~
図2(c)中の各停止中判定区間Aspは、監視対象のフォークリフトが停止状態であると判定できる区間を表している。つまり、フォークリフトの前後方向及び左右方向の移動が停止し、且つフォーク等の上下方向移動も停止していると認識すべき状態が停止中判定区間Aspに相当する。
【0033】
したがって、後退状態のフォークリフトが実際に停止したか否かを自動判定する場合には、
図2(a)~
図2(c)中の各停止中判定区間Aspの範囲内か否かを正しく判定できることが重要になる。
【0034】
図2(a)~
図2(c)中の停止開始点tssは、フォークリフトの停止に関する自動判定処理の開始条件を満たした点のタイミングを表している。また、
図2(a)~
図2(c)中の各停止前挙動BP2-A、BP2-B、BP2-Cは、停止開始点tssの後、停止中判定区間Aspに移行するまでの間にX軸方向の加速度信号Gx(DXG-A、DXG-B、DXG-C)に発生する特徴的な挙動パターンの領域を表している。
【0035】
図2(a)に示した例では、停止前挙動BP2-Aの時間領域において、X軸方向G値DXG-BがGx基準値Gx0に比べてプラス方向から緩やかな傾きで減少して、Gx基準値Gx0と一致する状態に収束している。また、X軸方向G値DXG-BがGx基準値Gx0と一致した後、停止中判定区間Aspの範囲内ではX軸方向G値DXG-Bの変動量は比較的小さい。
【0036】
また、
図2(b)の停止前挙動BP2-B、及び
図2(c)の停止前挙動BP2-Cのいずれの時間領域においても、
図2(a)の例と同じように、X軸方向G値がGx基準値Gx0に比べてプラス方向から緩やかな傾きで減少して、Gx基準値Gx0と一致する状態に収束している。
【0037】
つまり、停止前挙動BP2-A、BP2-B、BP2-CにおけるX軸方向G値の挙動パターンは互いに非常によく似ているので、この特徴的な挙動のパターンを認識することで、フォークリフトが後退状態から停止に遷移する時の停止の判定を高精度で行うことが可能になる。
【0038】
次に、前進時に停止状態を判定するための処理手順について説明する。
【0039】
フォークリフトが前進状態から停止する場合に停止を自動判定するための処理手順の具体例を
図3に示す。
【0040】
すなわち、
図1(a)~
図1(c)中に示した停止前挙動BP1-A、BP1-B、BP1-Cなどの特徴的な挙動パターンを
図3に示した手順に従って検出し、停止の自動判定を行うことができる。
図3に示した手順を後述する停止判定車載器10が実行する場合の動作について以下に説明する。
【0041】
停止判定車載器10は、加速度センサから出力されるX軸方向のG値について、互いにずれたタイミングでサンプリングされた偶数個の値を用いて平均化処理する(S11)。
【0042】
停止判定車載器10は、平均化処理の結果得られる加速度信号Gxの値を監視して、加速度信号GxがGx基準値Gx0よりも小さいマイナス側の点、すなわち前述の「第1状態」の点を検出したか否かをS12で識別する。そして、「第1状態」の点を検出すると次のS13の処理に進む。
【0043】
停止判定車載器10は、平均化処理の結果得られる加速度信号Gxの値を監視して、加速度信号GxがGx基準値Gx0よりも大きいプラス側の点、すなわち前述の「第2状態」の点を検出したか否かをS13で識別する。そして、「第2状態」の点を検出すると次のS14の処理に進む。
【0044】
停止判定車載器10は、平均化処理の結果得られる加速度信号Gxの値を監視して、加速度信号GxがGx基準値Gx0とほぼ一致した点、すなわちG値の変化の収束を検出したか否かをS14で識別する。そして、G値の変化の収束を検出すると次のS15の処理に進む。
【0045】
停止判定車載器10は、G値の変化の収束を検出した後で、大きな挙動が生じることなく安定した状態が一定時間継続しているか否かを確認するために、一定時間のカウントダウンをS15で開始する。
【0046】
停止判定車載器10は、一定時間のカウントダウンが終了するまでの間に、所定のフィルタを通した加速度信号Gxの値をS16で監視して、所定の閾値を超える挙動が発生したか否かを識別する。ここで、フィルタは停止中のエンジンの振動や、路面の凹凸などの影響で発生するG値のぶれのような環境要因のノイズ成分を加速度信号Gxから除去する機能を有する。
【0047】
所定の閾値を超える挙動をS16で検出した場合は、停止判定車載器10はS12の処理に戻って上記の処理を繰り返す。
【0048】
前記一定時間の間、大きな挙動を検出することなくS17でカウントダウンが終了した場合には、停止判定車載器10は停止の判定を実行する。すなわち、停止判定車載器10はS17で
図1(a)~
図1(c)中に示した停止中判定区間Aspに入ったことを自動的に認識する。
【0049】
停止判定車載器10は、S18で加速度信号Gxの状態を監視して、前進/後退の方向の判定を実施する。
【0050】
つまり、停止判定車載器10は
図3に示したS12~S14で、
図1(a)~
図1(c)中の停止前挙動BP1-A、BP1-B、BP1-Cにおける特徴的な挙動パターンを検知してから停止の判定を行うことができる。
【0051】
次に、停止判定車載器の構成について説明する。
【0052】
停止判定車載器10の機能上の構成例を
図4に示す。
図4に示した停止判定車載器10は、車載器としてフォークリフトの車両上に設置される。この停止判定車載器10に備わっている加速度センサ11は、少なくともフォークリフトの前後方向に相当するX軸方向の加速度を検出する機能を有している。なお、X軸、Y軸、及びZ軸方向の3軸の加速度を検出可能なセンサを加速度センサ11として利用してもよい。
【0053】
この停止判定車載器10は、加速度センサ11が検出したX軸方向の加速度に基づいて、フォークリフトが停止状態か否かを判定すると共に、前進/後退の方向を判定することができる。また、
図4に示した停止判定車載器10は、
図3に示した処理手順に相当する機能も含んでいる。
【0054】
図4に示した例では、停止判定車載器10は平均化処理部12、停止開始検知部13、マイナス側加速度検知部14、プラス側加速度検知部15、Gx0点検知部16、Gx0挙動監視部17、車種別補正データベース(DB)18、フィルタ処理部19、G値傾き判定部20、停止時間判定部21、及び前進後退検出部22を備えている。これらの各機能は、停止判定車載器10に備わっているマイクロコンピュータ(図示せず)のハードウェア及びソフトウェアにより実現できる。もちろん、専用の論理回路などの電子回路を用いて
図4の各機能を実現してもよい。
【0055】
平均化処理部12は、加速度センサ11が出力するX軸方向の加速度の時系列データを処理して平均化処理を行い、その結果を加速度信号Gxとして出力する。
【0056】
停止開始検知部13は、加速度信号Gxに基づいて、
図1及び
図2中に示した停止開始点tssを検知することができる。停止開始検知部13は、停止開始点tssを検知すると停止開始信号SGsを出力する。
【0057】
マイナス側加速度検知部14は、停止開始検知部13が出力する停止開始信号SGsに従い、加速度信号GxのG値をGx基準値Gx0と比較し、前述の「第1状態」を検出することができる。すなわち、
図3に示したステップS12と同様に、停止前挙動BP1の中からG値がGx基準値Gx0に対してマイナス側にある点を「第1状態」として検出する。
【0058】
プラス側加速度検知部15は、マイナス側加速度検知部14が前記「第1状態」を検出した後で、加速度信号GxのG値をGx基準値Gx0と比較し、前記「第2状態」を検出することができる。すなわち、
図3に示したステップS13と同様に、停止前挙動BP1の中からG値がGx基準値Gx0に対してプラス側にある点を「第2状態」として検出する。
【0059】
Gx0点検知部16は、プラス側加速度検知部15が前記「第2状態」を検出した後で、加速度信号GxのG値をGx基準値Gx0と比較し、G値がGx基準値Gx0とほぼ一致する状態に収束した点を検出することができる。
【0060】
Gx0挙動監視部17は、G値がGx基準値Gx0とほぼ一致する状態に収束した後の停止状態において、加速度信号Gxの挙動を監視する機能を有している。また、フォークリフトの停止状態でも発生するエンジンの振動などのノイズ成分の影響を避けるために、Gx0挙動監視部17はフィルタ処理部19が出力するフィルタ出力加速度Gxfを監視する。
【0061】
Gx0挙動監視部17がフィルタ出力加速度Gxfの比較的大きな挙動を検知した場合には、Gx0挙動監視部17が出力するリセット信号RSTにより、マイナス側加速度検知部14、プラス側加速度検知部15、及びGx0点検知部16の検知状態がリセットされる。
【0062】
車種別補正データベース18は、Gx基準値Gx0、フィルタ係数K1、及びG値傾き閾値K2を含む車種別の各種パラメータを、不揮発性メモリ上に構成されたデータベースとして予め保持している。車種別補正データベース18は、この停止判定車載器10を搭載したフォークリフトのサイズや、エンジン車/バッテリー車の区分などに合わせて適切なパラメータを出力できる。また、Gx基準値Gx0についてはフォークリフトの前進/後退の方向に合わせてそれぞれ適切な値が選択される。
【0063】
フィルタ処理部19は、フォークリフトの車種毎のフィルタ係数K1に応じて、加速度信号Gxをフィルタリング処理してフィルタ出力加速度Gxfを生成する。例えば、フォークリフトがエンジン車の場合は、停止中はエンジンが安定したアイドリング状態になるので、アイドリング回転速度に合わせて選択した振動周波数成分を加速度信号Gxから除去するようにフィルタリング処理する。
【0064】
G値傾き判定部20は、
図2中に示した停止前挙動BP2-A、BP2-B、BP2-Cのように、フォークリフトが後退している状態から停止状態に移行する場合に発生する特徴的なG値の挙動パターンを検出する機能を有している。すなわち、この場合の挙動パターンでは、加速度信号GxのG値がGx基準値Gx0よりもプラス側にある状態から、緩やかに下降してGx基準値Gx0に収束する。したがって、G値傾き判定部20は加速度信号GxのG値がGx基準値Gx0よりもプラス側から下降する場合の変化速度を検出し、変化速度の傾きをG値傾き閾値K2と比較してその判定結果を出力する。
【0065】
停止時間判定部21は、停止前挙動BP1又はBP2における特徴的なG値の挙動パターンが検出され、G値がGx基準値Gx0に収束した後で、Gx0挙動監視部17が大きな挙動を検出しない状態が一定時間以上継続しているか否かを判定する機能を有している。したがって、停止時間判定部21が出力する停止判定出力C1は、
図1又は
図2中の停止中判定区間Aspであるか否かを表す。
【0066】
前進後退検出部22は、加速度信号Gxの挙動と、G値傾き判定部20が検出したG値減少の傾きに基づき、フォークリフトの移動方向の前進/後退を検出する。フォークリフトが前進から停止に移行する場合には、停止時間判定部21の判定が終了した後で前進後退検出部22が移動方向の判定を実施する。また、フォークリフトが後退している時には、プラス方向のG値減少の傾きを前進後退検出部22が監視し、Gx基準値Gx0まで下がりきらないような場合は「前進」を前進後退検出部22が検出する。
【0067】
図4に示した停止判定車載器10は、停止判定出力C1及び方向判定出力C2を外部のフォークリフト管理装置30に与えることができる。フォークリフト管理装置30は、例えばフォークリフトの稼働状態の実績データを自動的に記録するドライブレコーダやデータレコーダ、あるいはフォークリフトの安全管理や運転支援を行うための装置である。なお、停止判定車載器10とフォークリフト管理装置30とを一体化してもよい。
【0068】
次に、実績データ管理装置の構成について説明する。
【0069】
実績データ管理装置40の構成例を
図5に示す。
図5に示した実績データ管理装置40は、停止判定車載器10の内部に組み込むこともできるし、フォークリフト管理装置30の機能として停止判定車載器10に接続することもできる。
【0070】
実績データ管理装置40は、実績データ取得部41、車種別実績データベース42、及び補正値追加処理部43を備えている。実績データ取得部41は、停止判定車載器10の内部で発生した実績データ41aを自動的に取得して車種別実績データベース42に記録することができる。
【0071】
実績データ41aは、停止判定車載器10を搭載したフォークリフトの車種やサイズを表す情報と、停止判定車載器10内で各種トリガが発生した時の加速度信号Gx等の実績データとを含む。例えば、停止開始検知部13、マイナス側加速度検知部14、プラス側加速度検知部15、Gx0点検知部16、Gx0挙動監視部17、G値傾き判定部20、停止時間判定部21、及び前進後退検出部22のそれぞれにおいて所定の条件を満たすと、トリガが発生する。そして、該当するトリガの種類とその時の加速度信号Gx等の実績データが停止判定車載器10から実績データ取得部41に取り込まれ、車種別実績データベース42に蓄積される。
【0072】
補正値追加処理部43は、車種別実績データベース42に蓄積されている最新の実績データを自動的に解析し、停止判定車載器10の判定動作をより適正化するための補正データを車種別補正データベース18に追加する。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る停止判定車載器10は、加速度センサ11が出力するX軸方向の加速度を監視するだけで、フォークリフトが停止状態か否かを判定できる。すなわち、フォークリフト側から様々な車両情報を取り込む必要がない。そのため、停止判定車載器10をフォークリフトに後付けで設置する場合の取り付け作業が容易になる。
【0074】
また、フォークリフトが前進状態から停止に移行する場合に、
図1(a)~
図1(c)に示した停止前挙動BP1-A等の特徴的なG値挙動パターンを認識するので、X軸方向の加速度を監視するだけで、停止状態か否かを高精度で判定できる。
【0075】
また、フォークリフトが後退状態から停止に移行する場合に、
図2(a)~
図2(c)に示した停止前挙動BP2-A等の特徴的なG値挙動パターンを認識するので、X軸方向の加速度を監視するだけで、停止状態か否かを高精度で判定できる。
【0076】
また、停止判定車載器10は車種別補正データベース18を利用することでフォークリフトの車種やサイズの違いを考慮した適切なパラメータを判定に利用できるので、誤判定を防止することが容易である。
【0077】
また、停止判定車載器10はフィルタ処理部19を利用することで、停止中のエンジン振動や、路面の凹凸に起因するG値のぶれをフォークリフトの挙動として誤検出するのを避けることが容易になる。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0079】
例えば、上述の実施形態では停止判定車載器10がフォークリフトの停止を判定する場合のみについて説明したが、フォークリフト以外の搬送車両を監視対象とする場合にも停止判定車載器10を利用可能である。
【0080】
上述の搬送車両の停止判定装置に関する特徴的な事項について、以下の[1]~[5]に簡潔に纏めて列挙する。
[1] 搬送車両上に設置された所定の加速度センサが取得した測定値に基づいて前記搬送車両の停止判定を行う停止判定装置であって、
前記加速度センサ(11)が取得した車両進行方向の加速度値について、所定の基準値(Gx基準値Gx0)よりマイナス値でスタートする第1状態を検知する第1状態検知部(S12、マイナス側加速度検知部14)と、
前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値について、前記基準値よりプラス値でスタートする第2状態を検知する第2状態検知部(S13、プラス側加速度検知部15)と、
前記第1状態検知部の検知状態、及び前記第2状態検知部の検知状態に基づいて前記搬送車両の停止を判定する最終判定部(S14~S17、Gx0点検知部16、Gx0挙動監視部17、停止時間判定部21)と、
を備えた搬送車両の停止判定装置。
【0081】
上記[1]の構成の搬送車両の停止判定装置によれば、
図1(a)~
図1(c)に示した停止前挙動BP1-Aのような搬送車両に特有のG値挙動パターンを検出し、搬送車両の停止状態を正しく判定できる。
【0082】
[2] 前記搬送車両の前進と後退とを区別する進行方向検知部(前進後退検出部22)を備え、
前記最終判定部は、前記搬送車両の前進/後退の違いを、判定条件の違いに反映する、
上記[1]に記載の搬送車両の停止判定装置。
【0083】
上記[2]の構成の搬送車両の停止判定装置によれば、搬送車両が前進から停止に移行する場合に特有のG値挙動パターンと、後退から停止に移行する場合に特有のG値挙動パターンのいずれも正しく検出できる。
【0084】
[3] 前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値について、所定の基準値(Gx基準値Gx0)よりプラス方向から下降する変化の傾きを検知する下降傾き検知部(G値傾き判定部20)を備える、
上記[1]又は[2]に記載の搬送車両の停止判定装置。
【0085】
上記[3]の構成の搬送車両の停止判定装置によれば、
図2(a)~
図2(c)に示した停止前挙動BP2-Aのような搬送車両に特有のG値挙動パターンを検出し、搬送車両の停止状態を正しく判定できる。
【0086】
[4] 前記加速度センサが取得した車両進行方向の加速度値(加速度信号Gx)の中から、前記搬送車両上で発生する機械振動成分、及び路面状態に起因する振動成分をノイズとして排除するノイズフィルタ(フィルタ処理部19)を備える、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の搬送車両の停止判定装置。
【0087】
上記[4]の構成の搬送車両の停止判定装置によれば、停止中に発生するエンジンの振動や路面の凹凸の影響を排除して搬送車両の停止状態の判定精度を上げることが容易になる。
【0088】
[5] 前記搬送車両の車種の違いに依存する補正値を車種毎にそれぞれ保持する車種別補正データベース(18)を備え、
前記第1状態検知部、前記第2状態検知部、及び前記最終判定部の少なくとも1つは、前記車種別補正データベースから取得した補正値を処理の内容に反映する、
上記[1]から[4]のいずれかに記載の搬送車両の停止判定装置。
【0089】
上記[5]の構成の搬送車両の停止判定装置によれば、エンジン車、バッテリー車のような車種の違いや車体サイズの違いの影響を考慮して、より適切なパラメータを利用できるので判定精度が向上する。
【符号の説明】
【0090】
10 停止判定車載器
11 加速度センサ
12 平均化処理部
13 停止開始検知部
14 マイナス側加速度検知部
15 プラス側加速度検知部
16 Gx0点検知部
17 Gx0挙動監視部
18 車種別補正データベース
19 フィルタ処理部
20 G値傾き判定部
21 停止時間判定部
22 前進後退検出部
30 フォークリフト管理装置
40 実績データ管理装置
41 実績データ取得部
42 車種別実績データベース
43 補正値追加処理部
Asp 停止中判定区間
BP1,BP1-A,BP1-B,BP1-C 停止前挙動
BP2,BP2-A,BP2-B,BP2-C 停止前挙動
C1 停止判定出力
C2 方向判定出力
DXG-A,DXG-B,DXG-C X軸方向G値
DYG-A,DYG-B,DYG-C Y軸方向G値
DZG-A,DZG-B,DZG-C Z軸方向G値
Gx 加速度信号
Gx0 Gx基準値
Gxf フィルタ出力加速度
K1 フィルタ係数
K2 G値傾き閾値
RST リセット信号
SGs 停止開始信号
tss 停止開始点