IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イリソ電子工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コネクタ 図1
  • 特開-コネクタ 図2
  • 特開-コネクタ 図3
  • 特開-コネクタ 図4
  • 特開-コネクタ 図5
  • 特開-コネクタ 図6
  • 特開-コネクタ 図7
  • 特開-コネクタ 図8
  • 特開-コネクタ 図9
  • 特開-コネクタ 図10
  • 特開-コネクタ 図11
  • 特開-コネクタ 図12
  • 特開-コネクタ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031878
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137632
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 知充
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB20
5E021FC07
5E021HA05
(57)【要約】
【課題】可動ハウジングを備えるコネクタにおいて、接触部と接続対象物との繰り返しの摺動等を抑制する。
【解決手段】コネクタ10は、取付対象物90に対し、接続方向に垂直な方向であるX方向に変位可能な可動ハウジング40と、取付対象物90と接続対象物80とを電気的に接続する端子20と、を備える。端子20は、取付対象物90に対しX方向に変位可能な変位部24を有する。変位部24には、接続対象物80に接触する接触部24c1,24f1が形成されている。ここで、変位部24は、可動ハウジング40に対し、変位可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象物に取付可能なコネクタであって、
前記取付対象物に対し、前記コネクタに対する接続対象物の接続方向に垂直な方向であるX方向に変位可能な可動ハウジングと、
前記取付対象物と前記接続対象物とを電気的に接続する端子と、を備え、
前記端子は、前記接続対象物に接触する接触部が形成されると共に前記取付対象物に対しX方向に変位可能な変位部を有し、
前記変位部は、前記可動ハウジングに対し、変位可能である、
コネクタ。
【請求項2】
前記可動ハウジングは、可動側制限部を有し、
前記可動側制限部は、前記可動ハウジングがX方向に変位したときに当該可動側制限部が前記変位部に当接することで、前記変位部の前記可動ハウジングに対するX方向の位置が所定の範囲に制限されるように構成される、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記可動ハウジングは、前記取付対象物に対し前記接続方向及びX方向の両方に垂直な方向であるY方向には変位不能である、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コネクタは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングを備え、
前記固定ハウジングは、固定側制限部を有し、
前記固定側制限部は、前記変位部がY方向に変位したときに当該固定側制限部が前記変位部に当接することで、前記変位部の当該固定ハウジングに対するY方向の位置を所定の範囲に制限するように構成される、
請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記接触部は、前記接続対象物をX方向で挟み込むように前記接続対象物に接触する、
請求項1~請求項4の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記変位部は、
前記接続対象物が接続されることにより弾性変形する弾性変形部と、
前記弾性変形部に当接することで、前記弾性変形部の変形量を制限する変形制限部と、を有する、
請求項1~請求項5の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記変位部は、
共に板厚方向をY方向に向け、互いにY方向に対向する第一側板及び第二側板と、
板厚方向をX方向に向け、前記第一側板と前記第二側板とをY方向で連結する連結板であって、前記接続対象物にX方向一方側から接触する連結板と、
前記第一側板から、前記第二側板の方向に向けて延びる接触片基部と、
前記接触片基部から延び、前記接続対象物にX方向他方側から弾性的に接触する接触片と、を有し、
前記第二側板に制限孔が形成され、前記接触片基部の先端が前記制限孔に配置されることで、前記接触片基部の変形量が制限される、
請求項1~請求項6の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記可動ハウジングは、可動側制限部を有し、
前記可動側制限部は、前記可動ハウジングがX方向に変位したときに当該可動側制限部が前記変位部に当接することで、前記変位部の前記可動ハウジングに対するX方向の位置が所定の範囲に制限されるように構成され、
前記変位部は、
共に板厚方向をY方向に向け、互いにY方向に対向する第一側板及び第二側板と、
板厚方向をX方向に向け、前記第一側板と前記第二側板とをY方向で連結する連結板であって、前記接続対象物にX方向一方側から接触する連結板と、
前記第一側板から、前記第二側板の方向に向けて延びる接触片基部と、
前記接触片基部から延び、前記接続対象物にX方向他方側から弾性的に接触する接触片と、を有し、
前記第一側板のX方向他方側の端と、前記第二側板のX方向他方側の端との両方が前記可動側制限部に当接可能に構成され、
前記第一側板のX方向他方側の端は、前記第二側板のX方向他方側の端よりも、X方向一方側に位置する、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記端子は、前記変位部から延出された回避部であって、前記接続対象物の接続軸から遠ざかる方向に延びる前記回避部を有する、
請求項1~請求項8の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記可動ハウジングは、前記取付対象物又は前記取付対象物に対して変位しない支持部材に接触することで支持される、
請求項1~請求項9の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記可動ハウジングは、前記取付対象物に対して変位しない支持部材に接触することで支持され、
前記可動ハウジング及び前記支持部材は、何れか一方がもう一方を挟持した状態となっている、
請求項1~請求項9の何れか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたようなコネクタが知られている。このコネクタは、取付対象物に対して変位可能な可動ハウジングと、取付対象物と接続対象物とを電気的に接続する端子と、を備えている。端子は、接続対象物に接触する接触部が形成された変位部を有している。変位部は、可動ハウジングに固定されることで、可動ハウジングと一体的に変位するように構成されている。
このようなコネクタでは、接続対象物と接続する際、可動ハウジング及び変位部を接続対象物の位置ズレに合わせて変位させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-98160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなコネクタを例えば自動車等の振動環境下で用いた場合、慣性力により可動ハウジング及び変位部が変位することで、変位部に形成された接触部が接続対象物と繰り返し摺動したり、また、接触部が摺動しないとしても変位部に接続している弾性変形可能な中間変形部が繰り返し弾性変形したりすることがあった。そして、このような繰り返しの摺動や弾性変形は、接触部の摩耗や中間変形部の破断を招くおそれがあった。
特に、自動車のエンジンの振動や路面からの振動等の周波数が、接続対象物と接続した状態のコネクタの変位部の共振周波数と一致すると、変位部が接続対象物とともに激しく振動してしまい、上述の摩耗や破断のおそれが大きくなる。そのため、近年では、接続対象物と接続した状態でのコネクタの変位部の共振周波数を高めることで、コネクタの変位部の周波数(固有周波数)と自動車のエンジンの振動や路面からの振動等の周波数が一致しないようにすることが求められている。
【0005】
しかし、上記のようなコネクタでは、端子の変位部が可動ハウジングに固定されているため、変位部が変位すると、可動ハウジングも変位部と一体的に変位する。したがって、変位部が変位することで一体的に変位する部分の質量が大きい。そのため、当該一体的に変位する部分に働く慣性力が大きくなりやすく、また、共振周波数が低くなりやすい。その結果、上記の要望に十分に応えることができなかった。
【0006】
本開示の目的は、可動ハウジングを備えるコネクタにおいて、接触部と接続対象物との繰り返しの摺動等を抑制することができるコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、物の構造、形状を説明する場合、当該物を基準とした方向概念であって互いに垂直な方向概念であるX方向、Y方向及びZ方向を用いる。
【0008】
第1の態様に係るコネクタは、取付対象物に取付可能なコネクタであって、前記取付対象物に対し、前記コネクタに対する接続対象物の接続方向に垂直な方向であるX方向に変位可能な可動ハウジングと、前記取付対象物と前記接続対象物とを電気的に接続する端子と、を備え、前記端子は、前記接続対象物に接触する接触部が形成されると共に前記取付対象物に対しX方向に変位可能な変位部を有し、前記変位部は、前記可動ハウジングに対し、変位可能である。
【0009】
上記態様では、コネクタは、取付対象物に対し、接続方向に垂直な方向であるX方向に変位可能な可動ハウジングと、取付対象物と接続対象物とを電気的に接続する端子と、を備える。端子は、取付対象物に対しX方向に変位可能な変位部を有する。変位部には、接続対象物に接触する接触部が形成されている。
このように、可動ハウジング及び変位部が、共に取付対象物に対しX方向に変位可能であるので、コネクタと接続対象物とを接続する際、可動ハウジング及び変位部を接続対象物のX方向の位置ズレに合わせて変位させることができる。
【0010】
更に、上記態様では、変位部は、可動ハウジングに対し、変位可能である。
このため、上述した先行技術(変位部が変位すると、可動ハウジングも変位部と一体的に変位する技術)と異なり、変位部が変位したときに一体的に変位する部分の質量が小さい。その結果、接触部と接続対象物との繰り返しの摺動等(端子が中間変形部を有する場合には、中間変形部の繰り返しの弾性変形を含む)を抑制することができる。
【0011】
第2の態様に係るコネクタは、第1の態様において、前記可動ハウジングは、可動側制限部を有し、前記可動側制限部は、前記可動ハウジングがX方向に変位したときに当該可動側制限部が前記変位部に当接することで、前記変位部の前記可動ハウジングに対するX方向の位置が所定の範囲に制限されるように構成される。
【0012】
変位部が可動ハウジングに対し変位可能であるため、可動ハウジングが取付対象物に対し変位すると、変位部は、可動ハウジングに対し変位する。
ここで、上記態様では、可動ハウジングは、可動側制限部を有する。可動側制限部は、可動ハウジングがX方向に変位したときに当該可動側制限部が変位部に当接することで、変位部の可動ハウジングに対するX方向の位置が所定の範囲に制限されるように構成される。
このため、例えば接続対象物と端子との接触に先立って可動ハウジングを接続対象物のX方向の位置ズレに合わせて変位させることで、接続対象物と端子とを接触させる前にあらかじめ、変位部を接続対象物のX方向の位置ズレに合わせて変位させることができる。その結果、端子の構造のみで接続対象物の位置ズレに対応する態様と比較して、対応できる位置ズレの距離を長くすることができる。
【0013】
第3の態様に係るコネクタは、第1又は第2の態様において、前記可動ハウジングは、前記取付対象物に対し前記接続方向及びX方向の両方に垂直な方向であるY方向には変位不能である。
【0014】
上記態様では、可動ハウジングは、取付対象物に対し、Y方向に変位不能である。このため、可動ハウジングをY方向に変位させるための構造を設ける必要がなく、その結果、例えばコネクタをY方向で小型化させることができる。
【0015】
第4の態様に係るコネクタは、第3の態様において、前記コネクタは、前記取付対象物に固定される固定ハウジングを備え、前記固定ハウジングは、固定側制限部を有し、前記固定側制限部は、前記変位部がY方向に変位したときに当該固定側制限部が前記変位部に当接することで、前記変位部の当該固定ハウジングに対するY方向の位置を所定の範囲に制限するように構成される。
【0016】
上記態様では、コネクタは、取付対象物に固定される固定ハウジングを備え、固定ハウジングは固定側制限部を有する。すなわち、固定ハウジングが有する固定側制限部によって、変位部の当該固定ハウジングに対するY方向の位置が所定の範囲に制限される。
このため、コネクタの製造工程において、固定ハウジングに可動ハウジングを組み付ける前の段階で、固定ハウジングに対する変位部の位置がある程度定まるから、可動ハウジングの組付が容易になる。
【0017】
第5の態様に係るコネクタは、第1~第4の何れかの態様において、前記接触部は、前記接続対象物をX方向で挟み込むように前記接続対象物に接触する。
【0018】
上記態様では、接触部は、接続対象物をX方向で挟み込むように接続対象物に接触する。このため、接続対象物のX方向の位置ズレに変位部を追従させやすい。
【0019】
第6の態様に係るコネクタは、第1~第5の何れかの態様において、前記変位部は、前記接続対象物が接続されることにより弾性変形する弾性変形部と、前記弾性変形部に当接することで、前記弾性変形部の変形量を制限する変形制限部と、を有する。
【0020】
上記態様では、変位部は、接続対象物が接続されることにより弾性変形する弾性変形部を有する。このため、接続対象物に接触部を弾性的に接触させることができる。
しかし、変位部が可動ハウジングに対し変位可能であるので、弾性変形部の変形を可動ハウジングで制限することは困難である。
そこで、変位部は、更に、弾性変形部に当接することで、弾性変形部の変形量を制限する変形制限部を有する。このため、変形制限部によって変位部の過剰な変形が制限され、弾性変形部が塑性変形してしまうことが防止される。
【0021】
第7の態様に係るコネクタは、第1~第6の何れかの態様において、前記変位部は、共に板厚方向をY方向に向け、互いにY方向に対向する第一側板及び第二側板と、板厚方向をX方向に向け、前記第一側板と前記第二側板とをY方向で連結する連結板であって、前記接続対象物にX方向一方側から接触する連結板と、前記第一側板から、前記第二側板の方向に向けて延びる接触片基部と、前記接触片基部から延び、前記接続対象物にX方向他方側から弾性的に接触する接触片と、を有し、前記第二側板に制限孔が形成され、前記接触片基部の先端が前記制限孔に配置されることで、前記接触片基部の変形量が制限される。
【0022】
上記態様では、第二側板に制限孔が形成され、接触片基部の先端が制限孔に配置されることで、接触片基部の変形量が制限される。これにより、簡易な構成で、接触片基部と接触片とを含む弾性変形部の変形量を制限する変形制限部が実現される。
【0023】
第8の態様に係るコネクタは、第1の態様において、前記可動ハウジングは、可動側制限部を有し、前記可動側制限部は、前記可動ハウジングがX方向に変位したときに当該可動側制限部が前記変位部に当接することで、前記変位部の前記可動ハウジングに対するX方向の位置が所定の範囲に制限されるように構成され、前記変位部は、共に板厚方向をY方向に向け、互いにY方向に対向する第一側板及び第二側板と、板厚方向をX方向に向け、前記第一側板と前記第二側板とをY方向で連結する連結板であって、前記接続対象物にX方向一方側から接触する連結板と、前記第一側板から、前記第二側板の方向に向けて延びる接触片基部と、前記接触片基部から延び、前記接続対象物にX方向他方側から弾性的に接触する接触片と、を有し、前記第一側板のX方向他方側の端と、前記第二側板のX方向他方側の端との両方が前記可動側制限部に当接可能に構成され、前記第一側板のX方向他方側の端は、前記第二側板のX方向他方側の端よりも、X方向一方側に位置する。
【0024】
上記態様では、第一側板から接触片基部が延び、接触片基部から接触片が延びるところ、第一側板のX方向他方側の端は、第二側板のX方向他方側の端よりも、X方向一方側に位置する。このため、変位部を板材に対する切断加工及び曲げ加工により作製する場合、接触片の幅寸法を大きくすることができる。
また、第一側板のX方向他方側の端と、第二側板のX方向他方側の端との両方が可動側制限部に当接可能に構成される。このため、可動側被制限部が変位部に当接することにより、変位部の姿勢が崩れることが抑制される。
【0025】
第9の態様に係るコネクタは、第1~第8の何れかの態様において、前記端子は、前記変位部から延出された回避部であって、前記接続対象物の接続軸から遠ざかる方向に延びる前記回避部を有する。
【0026】
端子のうち変位部から延出された部分が、例えば、接続対象物の接続軸と平行に延びる態様では、当該部分が接続対象物の先端と衝突してしまうおそれがある。
そこで、上記態様では、端子は、変位部から延出された回避部であって、接続対象物の接続軸から遠ざかる方向に延びる回避部を有する。このため、上述のような衝突が防止される。
【0027】
第10の態様に係るコネクタは、第1~第9の何れかの態様において、前記可動ハウジングは、前記取付対象物又は前記取付対象物に対して変位しない支持部材に接触することで支持される。
【0028】
第1の態様では、変位部が可動ハウジングに対し変位可能であるので、可動ハウジングを変位部に適切に支持させることはできない。
そこで、上記態様では、可動ハウジングは、取付対象物又は取付対象物に対して変位しない支持部材に接触することで支持される。このため、可動ハウジングを適切に支持することができる。
【0029】
なお、後述の実施形態では、支持部材は固定ハウジングであるが、支持部材はこれに限定されない。支持部材は、例えば、端子のうち取付対象物に対して変位しない部分であってもよい。
【0030】
第11の態様に係るコネクタは、第1~第9の何れかの態様において、前記可動ハウジングは、前記取付対象物に対して変位しない支持部材に接触することで支持され、前記可動ハウジング及び前記支持部材は、何れか一方がもう一方を挟持した状態となっている。
【0031】
上記態様では、可動ハウジング及び支持部材は、何れか一方がもう一方を挟持した状態となっている。このため、支持部材に対して可動ハウジングがガタつくことが防止される。可動ハウジングのガタつきが防止されると、例えば、可動ハウジングがガタついて接続状態の接続対象物や端子に衝突し、その結果、端子と接続対象物との接点が摺動して削れてしまうという事態が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】コネクタの斜視図である。
図2】コネクタの他の方向から見た斜視図である。
図3】コネクタの上面図である。
図4図3の4-4線断面図である。
図5】端子の断面図である。
図6】端子の斜視図である。
図7】可動ハウジング及び複数の端子のうち一つの端子を省略したコネクタの斜視図である。
図8】固定ハウジングを下方側から見た斜視図である。
図9】可動ハウジングを前方側から見た斜視図である。
図10】可動ハウジングを後方側から見た斜視図である。
図11】位置ずれした接続対象物が可動ハウジングに接触した瞬間の状態を示す断面図である。
図12】位置ずれした接続対象物が端子に接触した瞬間の状態を示す断面図である。
図13】接続が完了した後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施形態に係るコネクタ10について説明する。
【0034】
なお、説明の便宜上、各図に示すX方向を前後方向、Y方向を幅方向(左右方向)、Z方向を上下方向として説明することがある。これら方向を示す語は、コネクタ10を基準とする方向概念であるため、コネクタ10の使用時における設置方向や姿勢等を限定するものではない。
【0035】
図1図4は、コネクタ10を示している。コネクタ10は、複数(5つ)の端子20と、固定ハウジング30と、可動ハウジング40と、複数の取付金具50と、を備える。
【0036】
図4に示すように、コネクタ10は、「取付対象物」としての基板90に取付可能に構成される。本実施形態では、複数の端子20及び複数の取付金具50が基板90に半田付けされることで、コネクタ10が基板90に取り付けられる。
【0037】
コネクタ10は、「接続対象物」としての相手端子80(図11図13参照)が接続可能に構成される。本実施形態では、複数(5つ)の相手端子80が接続可能に構成される。相手端子80は、上方から接続可能である。つまり、コネクタ10に対する相手端子80の接続方向は、下方向(-Z方向)である。
【0038】
(端子20)
図5図6は、端子20を示している。端子20は、導電性の材料で形成され、基板90と相手端子80とを電気的に接続する。
【0039】
端子20は、基板接続部21と、被保持部22と、中間変形部23と、変位部24と、をこの順に有する。
【0040】
基板接続部21は、基板90に接続される部分である。基板接続部21は、基板90に対して半田付けで表面実装される。
【0041】
被保持部22は、固定ハウジング30に保持される部分である。被保持部22は、固定ハウジング30に圧入されることで固定ハウジング30の端子保持部31に保持される。被保持部22は、固定ハウジング30に対し上方向から圧入される。被保持部22は、板厚方向を前後方向に向ける。
【0042】
中間変形部23は、被保持部22と変位部24との間に位置し、弾性変形容易に形成される部分である。
【0043】
変位部24は、基板接続部21及び被保持部22に対し変位可能な部分である。変位部24の変位は、中間変形部23が変形することで実現される。変位部24には、相手端子80に接触する接触部24c1,24f1が形成される。
【0044】
中間変形部23は、上方向部23aと、第一前方向部23bと、下方向部23cと、第二前方向部23dと、傾斜方向部23e(回避部)と、をこの順に有する。
上方向部23aは、被保持部22から上方向に直線状に延びる。上方向部23aは、前後方向で、被保持部22と同じ位置に位置する。
第一前方向部23bは、上方向部23aの上側に形成された曲部から、前方向に直線状に延びる。第一前方向部23bは、後述する下側のビード24c1よりも上側に位置する。
下方向部23cは、第一前方向部23bの前側に形成された曲部から、下方向に直線状に延びる。
第二前方向部23dは、下方向部23cの下側に形成された曲部から、前方向に直線状に延びる。
傾斜方向部23eは、第二前方向部23dの前側に形成された曲部から、前方向かつ上方向の斜め方向に直線状に延びる。傾斜方向部23eが延びる方向と上下方向とが成す角度は、45度未満である。傾斜方向部23eの下端は、変位部24の下端よりも下側に位置し、傾斜方向部23eの上端は、変位部24の下端よりも上側に位置する。
【0045】
中間変形部23は、板材が板厚方向に曲げられることで形成される。中間変形部23の板厚方向は、その全範囲において、Y方向に垂直な方向(ZX平面内の方向)に向いている。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の中間変形部23では、上方向部23aと下方向部23cとを接続する部分が、第一前方向部23bと、第一前方向部23bの前後の一対の曲部と、で構成される。このような構成によれば、上方向部23aと下方向部23cとを接続する部分が、側面視で半円形状を描くように湾曲されて構成される態様と比較して、中間変形部23に生じる応力を分散させることができる。
【0047】
変位部24は、第一側板24aと、第二側板24bと、連結板24cと、を有する。
第一側板24a及び第二側板24bは、共に板厚方向を幅方向に向け、幅方向で対向する。
連結板24cは、板厚方向を前後方向に向け、第一側板24a及び第二側板24bの後端同士を幅方向に連結する。連結板24cの下端が、中間変形部23と接続している。連結板24cには、幅方向に延び前方向に突出するビード24c1が二か所に形成される。ビード24c1は、相手端子80にX方向一方側(本実施形態では-X方向側)から接触する第一接触部24c1として機能する。
【0048】
第一側板24aと連結板24cとの間に形成された曲部には、その上下方向中間に貫通孔24dが形成され、第二側板24bと連結板24cとの間に形成された曲部にも、その上下方向中間に貫通孔24dが形成される。これらの貫通孔24dが形成されることで剛性が低下するため、曲部の形成を小さな力で達成できる。
【0049】
また、変位部24は、接触片基部24eと、接触片24fと、を有する。
接触片基部24eは、第一側板24aから延出され、第二側板24b側へ向けて幅方向に延びる。接触片基部24eの先端は、第二側板24bに形成された制限孔24gに配置される。接触片基部24eは、自由状態において、先端側に向けてY方向に略平行に延びるが、詳細には、Y方向に対して若干連結板24cに近づく側(-X方向側)に傾斜した方向に延びる。
接触片24fは、接触片基部24eから上方向へ延出される。接触片24fは、先端側の山形接触部24f1と、山形接触部24f1を支持する弾性支持部24f2と、を有する。山形接触部24f1は、相手端子80に向かって凸となるように山形に折り曲げられて形成される。山形接触部24f1の頂点は、上下方向で、連結板24cの2つのビード24c1の間に位置する。弾性支持部24f2の幅寸法は、山形接触部24f1の幅寸法よりも小さい。端子20は、第一接触部24c1としての連結板24cの2つのビード24c1と、第二接触部としての山形接触部24f1との3箇所で相手端子80に接触するように構成される。
また、第一接触部24c1としての連結板24cの2つのビード24c1と、第二接触部としての山形接触部24f1とは、その幅寸法が相手端子80の幅寸法よりも大きく形成される。これにより、変位部24は、相手端子80がY方向で位置ズレしていても、相手端子80と接触部24c1,24f1とが適切に接触するように構成される。
【0050】
第一側板24aは、上下方向に延びる前端縁24a1を有する。第一側板24aの前端縁24a1は、変位部24が可動ハウジング40に対して前方向に変位した場合に、可動ハウジング40に当接する。
第一側板24aは、その下部において上部よりも前後寸法が小さくなっている。第一側板24aの下部の前端縁から、曲部を介して接触片基部24eが延出される。上述の前端縁24a1は、第一側板24aの上部の前端縁である。前端縁24a1の長さ(上下方向の長さ)は、第一側板24aの上下寸法の50%を超える。
【0051】
第二側板24bは、上下方向に延びる前端縁24b1を有する。第二側板24bの前端縁24b1は、変位部24が可動ハウジング40に対して前方向に変位した場合に、可動ハウジング40に当接する。
第二側板24bは、第一側板24aと異なり、上下方向に亘って前後寸法が一定である。第二側板24bの前端縁24b1は、第二側板24bの下端から上端に亘って形成される。
第二側板24bの前端縁24b1は、第一側板24aの前端縁24a1よりも前側に位置する。
【0052】
第一側板24aは、前後方向に延びる下端縁24a2を有する。第一側板24aの下端縁24a2は、変位部24が固定ハウジング30に対して下方向に変位した場合に、固定ハウジング30に当接する。
第二側板24bは、前後方向に延びる下端縁24b2を有する。第二側板24bの下端縁24b2は、変位部24が固定ハウジング30に対して下方向に変位した場合に、固定ハウジング30に当接する。
第一側板24aの下端縁24a2と第二側板24bの下端縁24b2とは、上下方向で同じ位置に形成される。第一側板24aの下端縁24a2及び第二側板24bの下端縁24b2は、中間変形部23の傾斜方向部23eの上端よりも下側であって、傾斜方向部23eの下端よりも上側に位置する。
【0053】
第一側板24aは、前後方向に延びる上端縁24a3を有する。第一側板24aの上端縁24a3は、変位部24が可動ハウジング40に対して上方向に変位した場合に、可動ハウジング40の天壁41の下面41b(図11参照)に当接する。
第二側板24bは、前後方向に延びる上端縁24b3を有する。第二側板24bの上端縁24b3は、変位部24が可動ハウジング40に対して下方向に変位した場合に、可動ハウジング40の天壁41の下面41bに当接する。
第一側板24aの上端縁24a3と第二側板24bの上端縁24b3とは、上下方向で同じ位置に形成される。
【0054】
連結板24cの上端からは、上方向に向けてキャリア切断部24hが突出する。キャリア切断部24hは、順送り加工で端子20を形成する場合における、端子20とキャリアとの繋ぎ部分である。キャリア切断部24hの上端は、第一側板24aの上端縁24a3及び第二側板24bの上端縁24b3よりも上側に位置する。可動ハウジング40におけるキャリア切断部24hが配置される位置の上側には、上方向に窪む凹部41d(図11参照)が形成される。これにより、変位部24が上方向に変位したときでも、キャリア切断部24hが可動ハウジング40に当接しないようになっている。
【0055】
(固定ハウジング30)
固定ハウジング30は、合成樹脂等の絶縁体で一体に形成される。
【0056】
固定ハウジング30は、基板90に固定され、基板90に対して変位しない。具体的には、固定ハウジング30は、複数の端子20及び複数の取付金具50を介して、基板90に取り付けられる。
【0057】
固定ハウジング30は、端子20の被保持部22を保持する端子保持部31を有する。
図8に示すように、端子保持部31は、複数(6つ)の被圧入壁31aを有する。複数の被圧入壁31aは、端子配列方向(Y方向)に並んで配置される。隣り合う被圧入壁31aの間に、端子20の被保持部22が圧入される。
また、端子保持部31は、連結壁31bを有する。連結壁31bは、複数の被圧入壁31aを端子配列方向に連結する。連結壁31bは、複数の被圧入壁31aに対して前後方向外側(本実施形態では、後方側、-X方向側)に形成される。
【0058】
固定ハウジング30に対し端子20が組付けられる方向は、下方向である。そのため、端子20の被保持部22を固定ハウジング30の被圧入壁31aの間に圧入する際には、端子20の基板接続部21が連結壁31bに干渉してしまう。そこで、本実施形態では、固定ハウジング30に対し端子20が組付けられる段階では、端子20の基板接続部21が形成されておらず、基板接続部21となる部分は被保持部22から下方向にまっすぐに延びた状態である。端子20の被保持部22を固定ハウジング30の被圧入壁31aの間に圧入した後に、基板接続部21となる部分が折り曲げられて、端子20が完成する。
【0059】
固定ハウジング30は、取付金具50を保持する取付金具保持部32を有する。
取付金具保持部32は、固定ハウジング30の幅方向外側位置に形成される。取付金具保持部32は合計4つ形成される。4つの取付金具保持部32のうち2つは、固定ハウジング30の前後方向中央位置に対して前側に形成され、もう2つは、固定ハウジング30の前後方向中央位置に対して後側に形成される。
【0060】
固定ハウジング30は、前側の取付金具保持部32と後側の取付金具保持部32との間に形成された補強部33を有する。補強部33の下面側には、位置決め用のボス33aが形成される。図3に示すように、補強部33の側面33bは、取付金具50のテール部の先端(幅方向外側端)よりも幅方向外側に位置する。補強部33の上面には、下方向に凹んだ凹部33cが形成される。
【0061】
固定ハウジング30は、テール保護部34を有する。テール保護部34は一対形成される。図3に示すように、一対のテール保護部34の間に、複数の端子20がそれぞれ有する複数の基板接続部21が配置される。
【0062】
図7に示すように、固定ハウジング30は、端子20の変位部24及び後述する可動側制限部42,43が配置される配置空間35を有する。配置空間35は、端子20の数に合わせて複数(5つ)形成される。
【0063】
配置空間35は、配置底面35aと、一対の配置側面35bと、配置後面35cと、で形成される。
【0064】
配置底面35aは、下方向に変位した変位部24が当接するように構成される。具体的には、配置底面35aは、下方向に変位した変位部24の一対の側板(第一側板24a及び第二側板24b)の両方の下端24a2,24b2が同時に当接するように構成される。相手端子80をコネクタ10に接続する際には、変位部24は、相手端子80から下方向の力を受け、下方向に変位して配置底面35aに当接する(図示省略)。すると、変位部24がそれ以上は下方向に変位せず、変位部24に対する相手端子80の接続がされる。配置底面35aは、法線方向を上方向に向けた平面である。
【0065】
なお、コネクタ10と相手端子80とが接続した状態では、基本的に、配置底面35aに変位部24が接触していない状態となる。
何らかの原因(相手端子80の上下の振動等)によりコネクタ10に対し相手端子80が一時的に下方向に変位することがある。コネクタ10に対し相手端子80が一時的に下方向に変位すると、端子20の変位部24に対する相手端子80の挿入が深くなる。そして、相手端子80の一時的な下方向への変位が解除され、通常の位置に戻ると、変位部24が相手端子80と共に上方向に変位する。コネクタ10に対し相手端子80を接続した直後の状態では配置底面35aに変位部24が接触している可能性があるが、上記のような現象により、接続状態では、基本的に、配置底面35aに変位部24が接触していない状態となる。
【0066】
配置側面35bは、幅方向に変位した変位部24が当接するように構成される。具体的には、配置側面35bは、幅方向に変位した変位部24の一対の側板(第一側板24a及び第二側板24b)の幅方向外側面が当接するように構成される。配置側面35bは、法線方向を幅方向に向けた平面である。配置側面35bには、通常の接続状態で、変位部24が接触していない状態となる。
【0067】
複数の配置空間35を形成する複数の配置側面35b及び複数の配置後面35cは、固定ハウジング30の一対の側壁36及び複数(4つ)の隔壁37によって構成される。
側壁36の上面36aは、可動ハウジング40の天壁41が接触した状態となる。
複数の隔壁37の各々は、複数の変位部24のうち隣り合う変位部24同士の間に配置される。複数の隔壁37の各々は、互いに同一の構造である。
隔壁37の上面37aは、側壁36の上面36aと同じ高さである。隔壁37の上面37aからは、上方向に突出する案内突出部37bが形成される。
隔壁37の上面37aのうち、案内突出部37bの前側に位置する部分は、可動ハウジング40の天壁41に接触した状態となる。
【0068】
配置底面35aには、確認孔35a1が形成される。確認孔35a1は、コネクタ10の下方側から端子20の変位部24を視認可能にするための孔である。確認孔35a1を通じて変位部24を確認することで、変位部24と接続対象物80との接続状態を確認することができる。なお、確認孔35a1は、変位部24が変位可能な限界位置まで変位した状態でも、変位部24と接続対象物80との接続状態を確認することを可能とする程度の大きさに形成されている。
【0069】
固定ハウジング30は、可動ハウジング40が前方向に変位したときに当接するハウジング前当接部を有する。これにより、固定ハウジング30に対する可動ハウジング40の前方向の移動範囲が制限される。本実施形態では、一対の側壁36が、ハウジング前当接部として機能する。
【0070】
固定ハウジング30は、可動ハウジング40が後方向に変位したときに当接するハウジング後当接部を有する。これにより、固定ハウジング30に対する可動ハウジングの後方向の移動範囲が制限される。本実施形態では、一対の側壁36及び複数の隔壁37がハウジング後当接部として機能する。具体的には、一対の側壁36及び複数の隔壁37に形成された配置後面35cがハウジング後当接部として機能する。配置後面35cが可動ハウジング40の第二当接壁43に当接する。
【0071】
固定ハウジング30は、一対の挟持部38を有する。一対の挟持部38は、可動ハウジング40を挟持する部分である。
一対の挟持部38は、当該一対の挟持部38の間の間隔を若干広げることが可能に構成される。具体的には、一対の挟持部38の各々は、上方向に延びる片持ち梁状に形成される。挟持部38は、その先端側(自由端側)で可動ハウジング40を挟持する。
挟持部38には、挟持部38を幅方向に貫通する貫通孔38a形成される。これにより、挟持部38が変形しやすくなると共に、後述する可動ハウジング40の被係止部46cが係止可能となる。
挟持部38には、傾斜案内面38bが形成される。これにより、一対の挟持部38の間に可動ハウジング40が入り込みやすくなっている。
【0072】
(可動ハウジング40)
可動ハウジング40は、合成樹脂等の絶縁体で一体に形成される。
【0073】
可動ハウジング40は、可動ハウジング40の上部を構成する天壁41を有する。
可動ハウジング40は、相手端子80が挿入される複数の挿入口44を有する。相手端子80と端子20とが接触するのは挿入口44の内側であるので、防塵性が確保される。挿入口44は、天壁41を上下方向で貫通する。
【0074】
図3に示すように、挿入口44は、接続方向であるZ方向から見て、X方向を短辺方向、Y方向を長辺方向とする長方形状である。挿入口44のX方向寸法は、相手端子80のX方向寸法よりも僅かに大きく、例えば1.05~1.15倍である(図13参照)。挿入口44のY方向寸法は、相手端子80のY方向寸法の2倍以上である。なお、相手端子80の断面形状は、正方形である。
これにより、挿入口44は、可動ハウジング40が変位可能な方向(X方向)については、相手端子80に対して余裕が小さい寸法になっており、可動ハウジング40が変位不能な方向(Y方向)については、相手端子80に対して余裕が大きい寸法になっている。
【0075】
可動ハウジング40は、傾斜面45a,45bを有する。傾斜面45a,45bは、複数の挿入口44に対応してそれぞれ形成される。
傾斜面45a,45bは、X方向傾斜面45aと、Y方向傾斜面45bと、を有する。
X方向傾斜面45aは、挿入口44に対し+X方向側と-X方向側の両側に形成される。X方向傾斜面45aは、法線方向を+Z方向に向かってX方向に傾斜する方向に向ける平面である。例えば、図11に示すように、挿入口44に対し-X方向に位置ズレした状態で相手端子80が挿入されようとすると、相手端子80の先端が、挿入口44の-X方向側のX方向傾斜面45aに当接する。そのまま挿入を続けると、可動ハウジング40は、相手端子80からX方向傾斜面45aを介して-X方向の力を受ける。この力により、可動ハウジング40は、-X方向に変位する。すなわち、X方向傾斜面45aは、可動ハウジング40と相手端子80とのX方向の位置ズレを解消するように機能する。
Y方向傾斜面45bは、可動ハウジング40の樹脂成形時に挿入口44を形成するための金型の抜去を容易にするための傾斜面である。Y方向傾斜面45bのY方向の寸法は、X方向傾斜面45aのX方向の寸法よりも小さく、具体的には0.4倍以下である。
傾斜面45a,45bは、天壁41の上面41aと、挿入口44の上端とを接続するように形成される。
【0076】
可動ハウジング40は、固定ハウジング30に上方向から接触する上方向接触面41b,41c(図9参照)を有する。
上方向接触面41b,41cは、法線方向を下方向に向けた平面である。上方向接触面41b,41cは、天壁41の下面である。上方向接触面41b,41cは、複数の第一当接壁42及び複数の第二当接壁43に対して幅方向外側に位置する一対の第一上方向接触面41bと、隣り合う第一当接壁42の間に位置する複数(4つ)の第二上方向接触面41cと、を有する。第一上方向接触面41bは、固定ハウジング30の一対の側壁36の上面36aに接触する。第二上方向接触面41cは、固定ハウジング30の隔壁37の上面37aに接触する。一対の側壁36の上面36a及び複数の隔壁37の上面37aが、可動ハウジング40に接触した状態となることで、固定ハウジング30に対する可動ハウジング40の姿勢が安定する。
【0077】
可動ハウジング40は、可動側制限部42,43を有する。可動側制限部42,43は、可動ハウジング40がX方向に変位したときに当該可動側制限部42,43が変位部24に当接することで、変位部24の可動ハウジング40に対するX方向の位置が所定の範囲に制限されるように構成される。これにより、可動ハウジング40が前後方向に変位したときに、変位部24が当該可動ハウジング40にある程度追従する。
【0078】
可動側制限部42,43は、複数の第一当接壁42と複数の第二当接壁43とから構成される。
複数の第一当接壁42の各々の後方には、複数の第二当接壁43の各々が位置する。第一当接壁42の後方であって第二当接壁43の前方には、変位部24が配置される。第一当接壁42と第二当接壁43との間で変位部24が前後方向に一定程度変位可能となる。
【0079】
図10に示すように、第一当接壁42は、一般後面42aを有する。第一当接壁42の一般後面42aは、法線方向を後方向に向けた平面である。第一当接壁42の一般後面42aは、変位部24の第二側板24bに当接可能に構成される。図11に示すように、一般後面42aは、接触片24fと前後方向で対向する。
【0080】
第一当接壁42は、突出後面42b1を有する。突出後面42b1は、変位部24の第一側板24aに当接可能に構成される。突出後面42b1は、法線方向を後方向に向けた平面である。突出後面42b1は、一般後面42aに対し後側に位置する。突出後面42b1と変位部24の第一側板24aとの前後方向の隙間は、一般後面42aと変位部24の第二側板24bとの前後方向の隙間と同じである。
第一当接壁42には、一般後面42aよりも後方向に突出した突出部42bが形成される。突出部42bは、第一当接壁42の右側の端に形成される。突出部42bは、第一当接壁42の上端から下端までに亘って形成される。突出後面42b1は、突出部42bに形成される。
【0081】
図9に示すように、第二当接壁43は、前面43aを有する。第二当接壁43の前面43aは、変位部24の連結板24cに当接可能に構成される。
第二当接壁43の前面43a側には、前面43aの幅方向中央を上下方向に延びる溝43cが形成される。溝43cは、キャリア切断部24hにバリが残ってしまった場合において、バリのための退避空間として機能する。すなわち、可動ハウジング40の組み付け時において、バリと可動ハウジング40(の第二当接壁43の前面43a)とが接触すると、可動ハウジング40から削りカスが発生するおそれがあるが、この溝43cによってその発生が防止される。溝43cの上側は、凹部41dと接続する。
【0082】
図10に示すように、第二当接壁43は、後面43bを有する。第二当接壁43の後面43bは、可動ハウジング40が後方向に変位したときに、固定ハウジング30の配置後面35cに当接する。これにより、固定ハウジング30に対する可動ハウジング40の後方向の移動範囲が制限される。
【0083】
可動ハウジング40は、一対の側壁46を有する。一対の側壁46は、天壁41の下面41bよりも下側に突出した壁であり、可動ハウジング40の後部における幅方向両外側に形成される。側壁46の前面46a(図9参照)は、可動ハウジング40が前方向に変位したときに、固定ハウジング30の側壁36に当接する。これにより、固定ハウジング30に対する可動ハウジング40の前方向の移動範囲が制限される。
【0084】
可動ハウジング40は、後壁47を有する。後壁47は、一対の側壁46の後端同士を幅方向に連結する。
【0085】
可動ハウジング40は、一対の被挟持部46bを有する。一対の被挟持部46bは、固定ハウジング30の挟持部38によって幅方向外側から挟持される部分である。
被挟持部46bは、側壁46に対して幅方向外側に突出する。被挟持部46bは、側壁46における前後方向中間部に位置し、側壁46の上下方向全体に亘って形成される。
【0086】
可動ハウジング40は、一対の被係止部46cを有する。一対の被係止部46cは、固定ハウジング30の挟持部38に係止される部分である。これにより、可動ハウジング40が固定ハウジング30から上方向に外れることが防止される。
被係止部46cは、被挟持部46bの下側に形成され、被挟持部46bに対して幅方向外側に突出する。被係止部46cには、固定ハウジング30の一対の挟持部38の内側に一対の被係止部46cを押し込みやすくするための傾斜面が形成される。
【0087】
(接続の際の動作)
次に、相手端子80が接続される際のコネクタ10の動作について説明する。
【0088】
図11に示すように、相手端子80が-X方向に位置ずれした状態で接続を行うと、相手端子80の先端が可動ハウジング40のX方向傾斜面45aに当接する。これにより、可動ハウジング40は、位置ズレを解消する方向(-X方向)に変位する。
可動ハウジング40の変位量がある程度大きい場合、-X方向に変位する可動ハウジングの可動側制限部42,43(具体的には第一当接壁42)が端子20の変位部24に接触し、変位部24は同じ方向(-X方向)に変位する。これにより、変位部24は、挿入口44から挿入される相手端子80と接続可能な位置範囲(可動ハウジング40に対する位置範囲)に留まるようになっている。
【0089】
図12は、可動ハウジング40の変位が完了し、相手端子80が端子20の変位部24に接触した瞬間の状態を示す。この状態では、変位部24は、可動ハウジング40の第一当接壁42に接触している。
【0090】
更に接続を進めると、変位部24は、相手端子80が接続されることで、可動ハウジング40の第一当接壁42から離れる。そして、変位部24は、可動ハウジング40の第一当接壁42と第二当接壁43とのいずれにも接触しない状態となり、接続作業が完了する(図13参照)。
このように、接続作業が完了した時点で、変位部24が可動ハウジング40の可動側制限部42,43に当接していない状態となるように、挿入口44や可動側制限部42,43等のコネクタ10の構造が決められている。
【0091】
なお、以上では、-X方向の位置ズレの場合について説明したが、+X方向の位置ズレの場合にも同様の動作が起こる。
【0092】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0093】
本実施形態では、図4に示すように、コネクタ10は、取付対象物90に対し、接続方向に垂直な方向であるX方向に変位可能な可動ハウジング40と、取付対象物90と接続対象物80とを電気的に接続する端子20と、を備える。端子20は、取付対象物90に対しX方向に変位可能な変位部24を有する。変位部24には、接続対象物80に接触する接触部24c1,24f1が形成されている。
このように、可動ハウジング40及び変位部24が、共に取付対象物90に対しX方向に変位可能であるので、コネクタ10と接続対象物80とを接続する際、可動ハウジング40及び変位部24を接続対象物80のX方向の位置ズレに合わせて変位させることができる。
【0094】
更に、本実施形態では、変位部24は、可動ハウジング40に対し、変位可能である。
このため、先行技術(変位部が変位すると、可動ハウジングも変位部と一体的に変位する技術)と異なり、変位部24が変位したときに一体的に変位する部分の質量が小さい。これにより、当該一体的に変位する部分に働く慣性力を小さくできる。また、接続対象物80と接続した状態でのコネクタ10の変位部24の共振周波数を高めることができ、コネクタ10の変位部24の周波数(固有周波数)と自動車のエンジンの振動や路面からの振動等の周波数が一致しないようにすることが容易になる。その結果、接触部24c1,24f1の摩耗や中間変形部23の破断を防止することができる。
【0095】
ところで、変位部24が可動ハウジング40に対し変位可能であるため、可動ハウジング40が取付対象物90に対し変位すると、変位部24は、可動ハウジング40に対し変位する。
ここで、本実施形態では、可動ハウジング40は、可動側制限部42,43を有する。可動側制限部42,43は、可動ハウジング40がX方向に変位したときに当該可動側制限部42,43が変位部24に当接することで、変位部24の可動ハウジング40に対するX方向の位置が所定の範囲に制限されるように構成される。
このため、例えば接続対象物80と端子20との接触(図12参照)に先立って可動ハウジング40を接続対象物80のX方向の位置ズレに合わせて変位させることで、接続対象物80と端子20とを接触させる前にあらかじめ、変位部24を接続対象物80のX方向の位置ズレに合わせて変位させることができる。その結果、端子20の構造のみで接続対象物80の位置ズレに対応する態様と比較して、対応できる位置ズレの距離を長くすることができる。
【0096】
また、本実施形態では、可動ハウジング40は、複数の変位部24の配列方向であるY方向に変位不能である。このため、可動ハウジング40をY方向に変位させるための構造を設ける必要がなく、その結果、例えばコネクタ10をY方向で小型化させることができる。
また、本実施形態では、挿入口44は、Y方向寸法が相手端子80のY方向寸法の2倍以上である。このため、相手端子80がY方向で位置ズレしていても、相手端子80が挿入口44に進入可能である。更に、本実施形態では、変位部24は、相手端子80がY方向で位置ズレしていても、相手端子80と接触部24c1,24f1とが適切に接触するように構成される。このため、変位部24がY方向に変位することなく、相手端子80のY方向の位置ズレに対応することができる。
以上より、相手端子80のY方向の位置ズレへの対応は、Y方向寸法が大きな挿入口44と、Y方向寸法が大きな変位部24によって達成される。
Y方向の位置ズレに対して、変位部24をY方向に変位させることなく対応できるため、変位部24をY方向に変位させるような中間変形部23の変形が生じにくい。
中間変形部23が、Y方向の位置ズレを吸収するための変形をしなくて済むと、そのような変形(変位部24のY方向の変位に必要な変形)により生じる応力が小さくなるので、接続作業時の中間変形部23のX方向の弾性変形量(変位部の変位量)や、接続後の中間変形部23のZ方向の弾性変形量(変位部の変位量)を大きく設定することができる。
更に、本実施形態では、中間変形部23の板厚方向が、その全範囲において、可動ハウジング40が変位不能な方向(Y方向)に垂直な方向(ZX平面内の方向)に向いている。このため、中間変形部23の変形は、その板厚方向の変形が主となり、中間変形部23の破損が防止される。
【0097】
また、本実施形態では、コネクタ10は、取付対象物90に固定される固定ハウジング30を備え、固定ハウジング30は固定側制限部36,37(固定ハウジング30の側壁36、隔壁37)を有する。すなわち、固定ハウジング30が有する固定側制限部36,37によって、変位部24の当該固定ハウジング30に対するY方向の位置が所定の範囲に制限される。
このため、コネクタ10の製造工程において、固定ハウジング30に可動ハウジング40を組み付ける前の段階で、固定ハウジング30に対する変位部24の位置がある程度定まるから、可動ハウジング40の組付が容易になる。
【0098】
また、本実施形態では、接触部24c1,24f1は、接続対象物80をX方向で挟み込むように接続対象物80に接触する。このため、接続対象物80のX方向の位置ズレに変位部24を追従させやすい。
【0099】
また、本実施形態では、変位部24は、接続対象物80が接続されることにより弾性変形する弾性変形部24e,24f(接触片基部24e、接触片24f)を有する。このため、接続対象物80に接触部24f1を弾性的に接触させることができる。
しかし、変位部24が可動ハウジング40に対し変位可能であるので、弾性変形部24e,24fの変形を可動ハウジング40で制限することは困難である。
そこで、変位部24は、更に、弾性変形部24e,24fが変形したときに当接することで、弾性変形部24e,24fの変形量を制限する変形制限部24gを有する。このため、変形制限部24gによって弾性変形部24e,24fの過剰な変形が制限され、弾性変形部24e,24fが塑性変形してしまうことが防止される。また、変形制限部24gによって弾性変形部24e,24f(特に接触片基部24e)の過剰な変形が制限されることで、接続対象物80に対する接触圧の低下が防止され、接触圧が安定する。
【0100】
また、本実施形態では、第二側板24bに制限孔24gが形成され、接触片基部24eの先端が制限孔24gに配置されることで、接触片基部24eの変形量が制限される。これにより、簡易な構成で、弾性変形部24e,24fの変形量を制限する変形制限部24gが実現される。
【0101】
また、本実施形態では、図6に示すように、第一側板24aから接触片基部24eが延び、接触片基部24eから接触片24fが延びるところ、第一側板24aのX方向他方側の端24a1は、第二側板24bのX方向他方側の端24b1よりも、X方向一方側に位置する。このため、変位部24を板材に対する切断加工及び曲げ加工により作製する場合、接触片24fの幅寸法を大きくすることができる。
また、第一側板24aのX方向他方側の端24a1と、第二側板24bのX方向他方側の端24b1との両方が可動側制限部42,43(具体的には第一当接壁42)に当接可能に構成される。このため、可動側制限部42,43が変位部24に当接することにより、変位部24の姿勢が崩れることが抑制される。
【0102】
ところで、端子20のうち変位部24から延出された部分が、例えば、接続対象物80の接続軸AX(図13参照)と平行に延びる態様では、変位部24が変位すると当該部分が接続対象物80の先端と衝突してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、端子20は、変位部24から延出された回避部23e(傾斜方向部23e)であって、接続対象物80の接続軸AXから遠ざかる方向に延びる回避部23eを有する。このため、上述のような衝突が防止される。
なお、接続対象物80の接続軸AXから遠ざかる方向に延びる回避部の構造は、本実施形態の回避部23eの構造(変位部24から下方向かつ後方向の斜め方向に延びる構造)に限定されない。例えば、回避部は、変位部24から一旦後方向へ延び、その後曲部を介して下方向に延びる構造(第二前方向部23dと共に所謂クランク形状を形成する構造)であってもよい。
【0103】
また、本実施形態では、変位部24が可動ハウジング40に対し変位可能であるので、可動ハウジング40を変位部24に適切に支持させることはできない。
そこで、本実施形態では、可動ハウジング40は、取付対象物90に対して変位しない支持部材30(固定ハウジング30)に接触することで支持される。このため、可動ハウジング40を適切に支持することができる。
【0104】
また、本実施形態では、支持部材30(固定ハウジング30)は、一対の挟持部38によって可動ハウジング40を挟持した状態となっている。このため、支持部材30に対して可動ハウジング40がガタつくことが防止される。
なお、一対の挟持部38は、その一方が弾性的に可動ハウジング40に押圧接触し、他方が押圧された可動ハウジング40を受け止めるような構造でもよい。また、一対の挟持部が可動ハウジングに形成され、可動ハウジングが支持部材(例えば固定ハウジング)を挟持するようにしてもよい。
【0105】
〔補足説明〕
なお、本開示が上記実施形態に限定されないことは当然であるが、以下念のため補足する。
【0106】
また、上記実施形態では、可動ハウジング40が、当該可動ハウジングを接続対象物80の位置ズレに合わせて変位させる構造(X方向傾斜面45a)を備える例を説明した。しかし、本開示の可動ハウジングは、これに限定されず、上記のような構造を備えなくてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、コネクタ10が固定ハウジング30を備える例を説明したが、本開示のコネクタはこれに限定されない。
【0108】
また、上記実施形態では、可動ハウジング40が、接続方向に垂直な方向のうち一つの方向であるX方向に変位可能であり、接続方向に垂直な方向のうちY方向には変位不能である例を説明したが、本開示の可動ハウジングはこれに限定されない。本開示の可動ハウジングは、X方向及びY方向の何れにも変位可能であってよい。この場合、可動ハウジングは、Y方向に関する可動側制限部を有してもよい。Y方向に関する可動側制限部とは、可動ハウジングがY方向に変位したときに当該可動側制限部が変位部に当接することで、変位部の可動ハウジングに対するY方向の位置が所定の範囲に制限されるように構成される部分を意味する。
また、上記実施形態では、接続方向に垂直な方向のうち可動ハウジング40が変位可能な方向(X方向)が端子配列方向に垂直な方向であり、接続方向に垂直な方向のうち可動ハウジング40が変位不能な方向(Y方向)が端子配列方向である例を説明したが、本開示はこれに限定されない。接続方向に垂直な方向のうち可動ハウジング40が変位可能な方向(X方向)が端子配列方向であり、接続方向に垂直な方向のうち可動ハウジング40が変位不能な方向(Y方向)が端子配列方向に垂直な方向であってもよい。換言すると、上記実施形態では、「X方向」が端子配列方向に垂直な方向である例を説明したが、本開示の「X方向」は、端子配列方向であってもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、コネクタ10が、複数の取付金具50を備える例を説明した。しかし、本開示のコネクタは、これに限定されず、取付金具を備えなくてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、取付対象物としての基板90の実装面に対して上側(+Z方向)から接続対象物80が接続されるコネクタ10を説明した。しかし、本開示のコネクタは、これに限定されず、基板の実装面に平行な方向から接続対象物が接続されるものであってもよいし、基板の実装面に対して下側から接続対象物が接続されるものであってもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、可動ハウジング40が、可動側制限部42,43を有する例を説明した。しかし、本開示の可動ハウジングは、これに限定されず、可動側制限部を有しなくてもよい。
なお、可動ハウジングが可動側制限部を有しない場合でも、可動ハウジングが変位可能であることには、例えば、次の実益がある。すなわち、挿入口が形成された可動ハウジングが変位可能なので、挿入口を大きくして防塵性を損なわくても、接続対象物の位置ズレに対応できる。
【0112】
また、上記実施形態では、取付対象物と接続対象物とを電気的に接続する一つの端子20が、導電性の材料で一体に形成された一つの部材で構成される例を説明した。しかし、本開示の端子は、これに限定されず、2つ以上の部材が組み合わされて構成されてもよい。この場合、端子は、中間変形部を有していなくてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、変位部24の変位が、中間変形部23が変形することにより実現される端子20を説明した。しかし、本開示の端子は、これに限定されない。例えば、端子が2つ以上の部材が組み合わされて構成される場合には、端子が中間変形部を有しなくても、変位部の変位は実現可能である。
【0114】
また、上記実施形態では、連結板24cが、第一側板24a及び第二側板24bの後端同士を連結する例(つまり、第7の態様の「X方向一方側」が-X方向である例)を説明した。しかし、本開示の連結板は、これに限定されず、第一側板及び第二側板の前端同士を連結するものであってもよい。つまり、「X方向一方側」は+X方向であってもよい。
上記の場合でも、上記実施形態と同様に、変位部の連結板から回避部が延出していてもよい。この場合の回避部の構造は、例えば、下方向(-Z方向)かつ前方向(+X方向であるX方向一方側)の斜め方向に延びる構造である。
【0115】
また、上記実施形態では、コネクタ10と相手端子80とが接続した状態では、基本的に、配置底面35aに変位部24が接触していない状態となると説明した。しかし、コネクタ10と相手端子80とが接続した状態において、配置底面35aに変位部24が接触していてもよい。このような状態でも、接触部と接続対象物との繰り返しの摺動等を抑制する効果が一定程度得られるからである。
【符号の説明】
【0116】
10 コネクタ
20 端子
21 基板接続部
22 被保持部
23 中間変形部
23e 傾斜方向部(回避部)
24 変位部
24a 第一側板
24a1 前端縁(第一側板のX方向他方側の端)
24b 第二側板
24b1 前端縁(第二側板のX方向他方側の端)
24c 連結板
24c1 ビード(接触部)
24e 接触片基部(弾性変形部)
24f 接触片(弾性変形部)
24f1 山形接触部(接触部)
24g 制限孔(変形制限部)
30 固定ハウジング(支持部材)
36 側壁(固定側制限部)
37 隔壁(固定側制限部)
38 挟持部
40 可動ハウジング
42 第一当接壁(可動側制限部)
43 第二当接壁(可動側制限部)
44 挿入口
45a X方向傾斜面
46b 被挟持部
80 相手端子(接続対象物)
90 基板(取付対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13