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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031906
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ロータリーエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 53/00 20060101AFI20230302BHJP
   F01C 1/344 20060101ALI20230302BHJP
   F02B 53/12 20060101ALI20230302BHJP
   F02B 53/10 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
F02B53/00 P
F01C1/344 E
F02B53/00 J
F02B53/12 H
F02B53/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137677
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】521378026
【氏名又は名称】中川 拓海
(71)【出願人】
【識別番号】593068801
【氏名又は名称】中川 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】中川 拓海
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀樹
(57)【要約】
【課題】回転出力の損失を有効に低減させることができ高出力をえることができる新規なロータリーエンジンを提供する。
【解決手段】ロータハウジング2内に配置されたロータ3内に、回動可能とされそれぞれ凸部を備えた第1乃至第4の回動部材7・・・10の先端に、第1乃至第4の摺動板101・・・104の基端側を回動可能に連結する一方、該ロータにはこれら第1乃至第4の摺動板が摺動する第1乃至第4の摺動用開口31a・・・31dを形成する一方、ロータハウジング内を閉塞する上蓋24又は下蓋25には上記凸部がガイドされる無端状ガイド溝24c,24dを形成することにより、該無端状ガイド溝の形状に対応して動作する第1乃至第4の回動部材の回動動作により、上記第1乃至第4の摺動板がそれぞれ上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動動作されるよう構成されてなる。
【選択図】 図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に所定空間が形成されたロータハウジングと、上記所定空間内に回転可能に配置されたロータと、を備え、上記ロータハウジング内における燃料の燃焼により上記ロータに回転出力を得るロータリーエンジンであって、
上記ロータハウジングには、上記所定空間を上側から閉塞する上蓋と、該所定空間を下側から閉塞するとともに上記上蓋に対向する下蓋とを有し、
上記ロータは、筒状部と、この筒状部内の空間を上側から閉塞する上側円盤部と、該筒状部の空間を下側から閉塞する下側円盤部と、上記上側円盤部の中心及び/又は下側円盤部の中心に中途部が固定された出力軸と、を有し、
上記筒状部には、上記出力軸の長さ方向と同じ方向に長さ又は幅を有し互いに対向する開口面の間に形成された第1乃至第4の摺動用開口を有し、上記ロータの内部には、基端側に形成された回動軸を中心にそれぞれ回動する第1乃至第4の回動部材がそれぞれ配置されてなるとともに、
上記第1の回動部材の先端側には、上記第1の摺動用開口内において上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動可能となされた第1の摺動板の基端側が回動可能に連結され、上記第2の回動部材の先端側には、上記第2の摺動用開口内において上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動可能となされた第2の摺動板の基端側が回動可能に連結され、上記第3の回動部材の先端側には、上記第3の摺動用開口内において上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動可能となされた第3の摺動板の基端側が回動可能に連結され、上記第4の回動部材の先端側には、上記第4の摺動用開口内において上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動可能となされた第4の摺動板の基端側が回動可能に連結され、
上記ロータハウジングの上蓋及び/又は下蓋の下面又は上面には、第1乃至第4の回動部材の内の第1及び第3の回動部材の回動動作をガイドする一方の無端状ガイド溝と、第1乃至第4の回動部材の内の第2及び第4の回動部材の回動動作をガイドする他方の無端状ガイド溝が形成され、該第1乃至第4の回動部材には、これらの無端状ガイド溝にガイドされる凸部が形成され、上記ロータを構成する上側円盤部及び/又は下側円盤部には、上記各凸部が挿通される挿通用開口が形成され、上記一方の無端状ガイド溝又は他方の無端状ガイド溝により上記各凸部がガイドされることにより、
上記第1乃至第4の回動部材は上記回動軸を支点とし上記凸部を力点とし該第1乃至第4の回動部材の先端を作用点としてそれぞれ回動するとともに、こうした該第1乃至第4の回動部材の回動動作により、上記第1乃至第4の摺動板がそれぞれ上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動動作されることを特徴とするロータリーエンジン。
【請求項2】
前記一方の無端状ガイド溝は、前記ロータを構成する上側円盤部の下面に形成された第1の上側無端状ガイド溝と、該ロータを構成する前記下側円盤部の上面に形成された第1の下側無端状ガイド部と、上記上側円盤部の下面に形成され上記第1の上側無端状ガイド溝の内側に形成された第2の上側無端状ガイド溝と、上記下側円盤部の上面に形成され上記第1の下側無端状ガイド溝の内側に形成された第2の下側無端状ガイド溝であり、
前記凸部は、前記第1の回動部材に形成され、上記第1の上側無端状ガイド溝にガイドされる第1の上側凸部と、該第1の回動部材に形成され、上記第1の下側無端状ガイド溝にガイドされる第1の下側凸部と、前記第3の回動部材に形成され、上記第1の上側無端状ガイド溝にガイドされる第3の上側凸部と、該第3の回動部材に形成され、上記第1の下側無端状ガイド溝にガイドされる第3の下側凸部と、前記第2の回動部材に形成され、上記第2の上側無端状ガイド溝にガイドされる第2の上側凸部と、該第2の回動部材に形成され、上記第2の下側無端状ガイド溝にガイドされる第2の下側凸部と、前記第4の回動部材に形成され、上記第2の上側無端状ガイド溝にガイドされる第4の上側凸部と、該第4の回動部材に形成され、上記第2の下側無端状ガイド溝にガイドされる第4の下側凸部であることを特徴とする請求項1記載のロータリーエンジン。
【請求項3】
前記ロータを構成する上側円盤部又は下側円盤部の何れかの外周側には、一方の燃料注入口と他方の燃料注入口とがそれぞれ形成され、該他方の燃料注入口の形成位置は、該一方の燃料注入口の形成位置から周回り方向に180度回転した位置の近傍に形成され、前記ロータハウジングを構成する上蓋と下蓋との何れかには、このロータハウジング内における上記ロータの回転途中において上記一方又は他方の燃料注入口と連通する蓋側燃料注入口が形成されてなり、上記蓋側燃料注入口には燃料タンクに接続された燃料供給ノズルの先端が配置されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかのロータリーエンジン。
【請求項4】
前記第1及び第3の摺動板の先端側であって前記ロータの回転方向とは反対方向に面してなる裏面には、前記出力軸の長さ方向と同じ方向に長さを有してなるとともに前記燃料が注入される燃料格納溝が形成され、
該ロータを構成する筒状部に形成された第1及び第3の摺動用開口を形成する前記開口面の一部は、該ロータの回転途中において上記燃料格納溝が該ロータの上側円盤部又は下側円盤部に形成された一方の燃料注入口又は他方の燃料注入口の下側又は上側に到達した際に、該第1又は第3の摺動板の裏面に対向して上記燃料格納溝を閉塞する閉塞面とされてなり、
前記燃料供給ノズルの先端からは、上記閉塞面により閉塞された燃料格納溝の上方側又は下方側から該燃料格納溝の内部に燃料が注入され、上記ロータがさらに回転した場合には、該燃料格納溝の上端又は下端は、前記ロータハウジングを構成する上蓋の下面又は下蓋の上面により閉塞されるように構成されてなるとともに、
上記ロータハウジングには点火プラグが配置され、この点火プラグは上記第1又は第3の摺動板が前記蓋側燃料注入口の形成位置から180度回転した位置の近傍に配置されてなり、該第1又は第3の摺動板が前記蓋側燃料注入口の形成位置から180度回転した位置の近傍まで到達した際においては、該第1又は第3の摺動板の先端は該ロータハウジングの内周面に摺接してなると同時に該第1又は第3の摺動板に形成された前記燃料格納溝は前記閉塞面による閉塞状態から解放され、
前記第2又は第4の摺動板は、該第1又は第3の摺動板の露出面積よりも少ない露出面積が上記ロータハウジング内に露出し且つ該第2又は第4の摺動板の先端は該ロータハウジングの内周面に摺接してなり、
上記第1又は第3の摺動板と上記第2又は第4の摺動板と上記ロータハウジングの内周面と上記ロータの外周面とにより閉塞された空間内には、上記燃料格納溝から燃料が放出され、この燃料の放出の際に上記点火プラグにより該燃料に点火されるように構成されてなることを特徴とする請求項3記載のロータリーエンジン。
【請求項5】
前記第1及び第3の摺動板に形成された裏面であって前記燃料格納溝が形成された位置よりも該第1及び第3の摺動板の基端側には第2の燃料格納溝が該燃料格納溝と平行に形成されてなる一方、
前記一方の燃料注入口と他方の燃料注入口とは、それぞれ前記蓋側燃料注入口から注入された燃料が上記燃料格納溝と第2の燃料格納溝との双方に燃料を注入できる構造又は大きさとされ、
前記ロータハウジングには、前記点火プラグの配置位置よりも前記ロータの回転方向に第2の点火プラグが配置され、前記ロータの回転途中において、上記燃料格納溝が前記閉塞面による閉塞状態から解放され上記点火プラグによる燃料への点火が終了した後に、上記第2の燃料格納溝が前記閉塞面による閉塞状態から解放され上記第2の点火プラグによる燃料への点火が行われるように構成されてなることを特徴とする請求項4記載のロータリーエンジン。
【請求項6】
前記ロータハウジングには、外気を内部に吸引する吸気口と、該ロータハウジング内の燃焼ガスを外部に排気する排気口と、燃料に点火する点火プラグとを備え、前記ロータは、該ロータの回転途中において、前記無端状ガイド溝にガイドされて回動する前記第1乃至第4の回動部材の回動動作により、前記第1乃至第4の摺動板の内の一又は複数が前記第1乃至第4の摺動用開口の開口面を摺動しながら且つ該第1乃至第4の摺動板の先端が上記ロータハウジングの内周面に摺接しながら該ロータ全体として回動動作するように構成されてなるとともに、該第1乃至第4の摺動板の内の一又は複数の摺動動作に伴って、該第1乃至第4の摺動板の内の一に燃料を格納する燃料格納工程と、前記吸気口から気体を吸気する吸気工程と、この吸気工程で吸気された気体を圧縮する圧縮工程と、この圧縮工程で圧縮された気体内に上記格納された燃料を開放する燃料開放工程と、この燃料開放工程で気体内に開放された燃料に上記点火プラグにより点火し該気体を燃焼させる燃焼工程と、この燃焼行程で燃焼された後の排気ガスを上記排気口から外部に排気する排気工程と、この排気工程の終了後に再び上記燃料格納工程が実行されるという順番で、各工程が繰り返して実行されるように構成されてなることを特徴とする請求項1記載のロータリーエンジン。
【請求項7】
前記燃料は水素ガスであることを特徴とする請求項1乃至6記載の何れかのロータリーエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の一つであるロータリーエンジンに関するものであり、特に、ガソリン等の揮発性燃料以外にも水素ガスを燃料として使用することにより、効率的な回転力を得ることができるロータリーエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、本願出願人は、上記揮発性燃料を燃料として使用するロータリーエンジンを提案した(特許文献1)。このロータリーエンジンは、ロータハウジングと、このロータハウジング内に回転可能に配置されてなるロータと、このロータの中心に固定された出力軸と、を備え、上記ロータには、その外周面から中心方向に第1乃至第4の溝部が形成され、これらの溝部には、第1乃至第4の褶動板が該溝部内から突出可能に配設されている。また、上記ロータハウジング内の上面及び下面には、上記第1及び第3の褶動板が、上記ロータの外周面がロータハウジングの内周面と摺接する位置から略180度回転する間それぞれ上記第1又は第3の溝部から突出する一方第2及び第4の褶動板は第2又は第4の溝部内にそれぞれ没入され、上記ロータがさらに略180度回転する間上記第2及び第4の褶動板はそれぞれ第2又は第4の溝部から突出する一方第1及び第3の褶動板はそれぞれ第1又は第3の溝部内に没入するよう各褶動板をガイドするガイド部が形成されている。より具体的に記載すれば、上記ロータハウジング内の上面には、上記ガイド部としての上側ガイド溝が形成され、該ロータハウジング内の下面には、上記ガイド部としての下側ガイド溝が形成されている一方、上記第1及び第3の褶動板には、それぞれ上記上側ガイド溝内に挿入される第1又は第3の凸部が形成され、上記第2及び第4の褶動板には、それぞれ上記下側凹部内に挿入される第2又は第4の凸部が形成されており、これらガイド部としての上側ガイド溝又は下側ガイド溝と上記第1及び第3の凸部又は上記第2及び第4の凸部との摺接により、上記第1及び第3の摺動板や上記第2及び第4の摺動板がそれぞれ上述した動作を繰り返すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2509514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ロータリーエンジンを構成する第1乃至第4の摺動板の動作は、上述したガイド部である各ガイド溝にガイドされることによりなされるものであることから、上記ロータハウジング内において行われる吸気工程・圧縮工程・点火工程・排気工程等の一連の動作によるロータや出力軸の回転力を効率良く行うためには、上記ガイド部である各凹部の全体形状は、円に近いことが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に係るロータリーエンジンでは、上記ガイド部(ガイド溝)の形状は、円とは大きく異なる歪な形状とならざるを得ず、この結果、ガイド溝内を凸部が移動(摺動)する際には高い摺動抵抗が発生し、ロータや出力軸の回転力を効率良く行うことができない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来のロータリーエンジンが有する課題を解決するために提案されたものであって、回転出力の損失を有効に低減させることができ高出力を得ることができる新規なロータリーエンジンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、内部に所定空間が形成されたロータハウジングと、上記所定空間内に回転可能に配置されたロータと、を備え、上記ロータハウジング内における燃料の燃焼により上記ロータに回転出力を得るロータリーエンジンであって、上記ロータハウジングには、上記所定空間を上側から閉塞する上蓋と、該所定空間を下側から閉塞するとともに上記上蓋に対向する下蓋とを有し、上記ロータは、筒状部と、この筒状部内の空間を上側から閉塞する上側円盤部と、該筒状部の空間を下側から閉塞する下側円盤部と、上記上側円盤部の中心及び/又は下側円盤部の中心に中途部が固定された出力軸と、を有し、上記筒状部には、上記出力軸の長さ方向と同じ方向に長さ又は幅を有し互いに対向する開口面の間に形成された第1乃至第4の摺動用開口を有し、上記ロータの内部には、基端側に形成された回動軸を中心にそれぞれ回動する第1乃至第4の回動部材がそれぞれ配置されてなるとともに、上記第1の回動部材の先端側には、上記第1の摺動用開口内において上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動可能となされた第1の摺動板の基端側が回動可能に連結され、上記第2の回動部材の先端側には、上記第2の摺動用開口内において上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動可能となされた第2の摺動板の基端側が回動可能に連結され、上記第3の回動部材の先端側には、上記第3の摺動用開口内において上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動可能となされた第3の摺動板の基端側が回動可能に連結され、上記第4の回動部材の先端側には、上記第4の摺動用開口内において上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動可能となされた第4の摺動板の基端側が回動可能に連結され、上記ロータハウジングの上蓋及び/又は下蓋の下面又は上面には、上記第1乃至第4の回動部材の内の第1及び第3の回動部材の回動動作をガイドする一方の無端状ガイド溝と、第1乃至第4の回動部材の内の第2及び第4の回動部材の回動動作をガイドする他方の無端状ガイド溝が形成され、該第1乃至第4の回動部材には、これらの無端状ガイド溝にガイドされる凸部が形成され、上記ロータを構成する上側円盤部及び/又は下側円盤部には、上記各凸部が挿通される挿通用開口が形成され、上記一方の無端状ガイド溝又は他方の無端状ガイド溝により上記各凸部がガイドされることにより、第1乃至第4の回動部材は上記回動軸を支点とし上記凸部を力点とし該第1乃至第4の回動部材の先端を作用点としてそれぞれ回動するとともに、こうした該第1乃至第4の回動部材の回動動作により、上記第1乃至第4の摺動板がそれぞれ上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動動作されることを特徴とするものである。
【0008】
この第1の発明に係るロータリーエンジンでは、上記ロータハウジング内において上記ロータに配置された第1乃至第4の回動部材のそれぞれが、上記一方の無端状ガイド溝又は他方の無端状ガイド溝にガイドされる凸部の移動によって上記回動軸を中心に回動すると、上記第1乃至第4の摺動板がそれぞれ上記ロータハウジングの内周面方向及び上記出力軸方向に褶動される。そして、この第1の発明では、上記第1乃至第4の摺動板のそれぞれは、上記第1乃至第4の回動部材の回動動作により、上記第1乃至第4の摺動用開口を形成する開口面にそれぞれ摺動する動作を繰り返すものである。したがって、この第1の発明では、従来のロータリーエンジンのように、それぞれの摺動板そのものに形成された凸部がガイド部(上側ガイド溝凹部や下側ガイド溝)によりガイドされる構造ではなく、それぞれの回動部材と摺動板とがリンク機構を構成し、このリンク機構を介して該摺動板が移動する構造であるため、この第1の発明を構成する一方及び他方の無端状ガイド溝の形状を、上記出力軸を中心とする円に極めて近い形状とすることができ、この結果、上記一方及び他方の無端状ガイド溝内を上記凸部が移動する際の摺動抵抗を格段に低減させることができ、ひいては出力軸を含めたロータ全体の回転力を極めて効率の良いものとすることが可能となる。また、上記第1の発明に係るロータリーエンジンによれば、従来のロータリーエンジンと比較して、上記リンク機構を構成する第1乃至第4の摺動板がロータの外周面からより長く外側に摺動させることができ、この結果、ロータハウジング内の容量を高めることができ、後述する吸気工程ではより多くの気体を内部に吸気した上で圧縮することができるので、より高い回転出力を得ることが可能となる。
【0009】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記一方の無端状ガイド溝は、前記ロータを構成する上側円盤部の下面に形成された第1の上側無端状ガイド溝と、該ロータを構成する前記下側円盤部の上面に形成された第1の下側無端状ガイド部と、上記上側円盤部の下面に形成され上記第1の上側無端状ガイド溝の内側に形成された第2の上側無端状ガイド溝と、上記下側円盤部の上面に形成され上記第1の下側無端状ガイド溝の内側に形成された第2の下側無端状ガイド溝であり、前記凸部は、前記第1の回動部材に形成され、上記第1の上側無端状ガイド溝にガイドされる第1の上側凸部と、該第1の回動部材に形成され、上記第1の下側無端状ガイド溝にガイドされる第1の下側凸部と、前記第3の回動部材に形成され、上記第1の上側無端状ガイド溝にガイドされる第3の上側凸部と、該第3の回動部材に形成され、上記第1の下側無端状ガイド溝にガイドされる第3の下側凸部と、前記第2の回動部材に形成され、上記第2の上側無端状ガイド溝にガイドされる第2の上側凸部と、該第2の回動部材に形成され、上記第2の下側無端状ガイド溝にガイドされる第2の下側凸部と、前記第4の回動部材に形成され、上記第2の上側無端状ガイド溝にガイドされる第4の上側凸部と、該第4の回動部材に形成され、上記第2の下側無端状ガイド溝にガイドされる第4の下側凸部であることを特徴とするものである。
【0010】
この第2の発明に係るロータリーエンジンでは、上記第1乃至第4の回動部材には、それぞれ上記第1又は第2の上側無端状ガイド溝若しくは上記第1又は第2の下側無端状ガイド溝にガイドされる上側凸部又は下側凸部が形成され、該第1乃至第4の回動部材のそれぞれは何れも上下2点でガイドされる構造とされていることから、ロータの回転駆動時において、より各凸部と無端状ガイド溝との間で発生する摺動抵抗を低減し、より一層上記出力軸を含めたロータ全体の回転力の損失を抑制し、極めて効率の良いものとすることが可能となる。
【0011】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は2記載の何れかの発明において、前記ロータを構成する上側円盤部又は下側円盤部の何れかの外周側には、一方の燃料注入口と他方の燃料注入口とがそれぞれ形成され、該他方の燃料注入口の形成位置は、該一方の燃料注入口の形成位置から周回り方向に180度回転した位置の近傍に形成され、前記ロータハウジングを構成する上蓋と下蓋との何れかには、このロータハウジング内における上記ロータの回転途中において上記一方又は他方の燃料注入口と連通する蓋側燃料注入口が形成されてなり、上記蓋側燃料注入口には燃料タンクに接続された燃料供給ノズルの先端が配置されてなることを特徴とするものである。
【0012】
この第3の発明に係るロータリーエンジンでは、上記ロータが回転する途中において、ロータハウジングに形成された蓋側燃料注入口と、該ロータの上側円盤部又は下側円盤部の何れかに形成された一方の燃料注入口又は他方の燃料注入口とが互いに連通すると、燃料供給ノズルから上記ロータハウジング内であって上記ロータの外側(作動室)に燃料が供給される。換言すれば、上記蓋側燃料注入口と一方又は他方の燃料注入口とが連通されていない場合には、該蓋側燃料注入口は、上記上側円盤部又は下側円盤部により閉塞されることから、上記燃料は供給されない。したがって、この第3の発明によれば、上記ロータハウジング内であって上記ロータの外側に対する燃料供給は、電子制御装置又は燃料噴射装置その他の特別な装置を使用することなく、所定のタイミングで機械的に燃料を供給することが可能となる。
【0013】
なお、上記燃料は、ガソリンや軽油等の揮発性燃料以外に、水素ガスを使用することができ、上記揮発性燃料を使用する場合には、例えば上記燃料タンクである揮発性燃料タンクに接続された気化器(キャブレター)に上記燃料供給ノズルを接続すれば良く、また、水素ガスを燃料として使用する場合には、上記燃料タンクである水素ガスタンクを上記燃料供給ノズルに接続すれば良い。
【0014】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第3の発明において、前記第1及び第3の摺動板の先端側であって前記ロータの回転方向とは反対方向に面してなる裏面には、前記出力軸の長さ方向と同じ方向に長さを有してなるとともに前記燃料が注入される燃料格納溝が形成され、該ロータを構成する筒状部に形成された第1及び第3の摺動用開口を形成する前記開口面の一部は、該ロータの回転途中において上記燃料格納溝が該ロータの上側円盤部又は下側円盤部に形成された一方の燃料注入口又は他方の燃料注入口の下側又は上側に到達した際に、該第1又は第3の摺動板の裏面に対向して上記燃料格納溝を閉塞する閉塞面とされてなり、前記燃料供給ノズルの先端からは、上記閉塞面により閉塞された燃料格納溝の上方側又は下方側から該燃料格納溝の内部に燃料が注入され、上記ロータがさらに回転した場合には、該燃料格納溝の上端又は下端は、前記ロータハウジングを構成する上蓋の下面又は下蓋の上面により閉塞されるように構成されてなるとともに、上記ロータハウジングには点火プラグが配置され、この点火プラグは上記第1又は第3の摺動板が前記蓋側燃料注入口の形成位置から180度回転した位置の近傍に配置されてなり、該第1又は第3の摺動板が前記蓋側燃料注入口の形成位置から180度回転した位置の近傍まで到達した際においては、該第1又は第3の摺動板の先端は該ロータハウジングの内周面に摺接してなると同時に該第1又は第3の摺動板に形成された前記燃料格納溝は前記閉塞面による閉塞状態から解放され、前記第2又は第4の摺動板は、該第1又は第3の摺動板の露出面積よりも少ない露出面積が上記ロータハウジング内に露出し且つ該第2又は第4の摺動板の先端は該ロータハウジングの内周面に摺接してなり、上記第1又は第3の摺動板と上記第2又は第4の摺動板と上記ロータハウジングの内周面と上記ロータの外周面とにより閉塞された空間内には、上記燃料格納溝から燃料が放出され、この燃料の放出の際に上記点火プラグにより該燃料に点火されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0015】
この第4の発明に係るロータリーエンジンでは、上記ロータの回転途中において、上記燃料格納溝が上記一方の燃料注入口又は他方の燃料注入口の下側又は上側に到達した際、該燃料格納溝は、上記第1及び第3の摺動用開口の開口面の一部である閉塞面により閉塞されている。そして、この状態において、前記燃料供給ノズルの先端から、上記閉塞面により閉塞された燃料格納溝の上方側又は下方側から該燃料格納溝の内部に燃料が供給され、その後、上記ロータがさらに回転した場合には、該燃料格納溝の上端又は下端は、前記ロータハウジングを構成する上蓋の下面又は下蓋の上面により閉塞される。したがって、この第4の発明に係るロータリーエンジンによれば、上記燃料格納溝内に注入された燃料が、該注入された位置から圧縮工程が実行される位置を通過し、最終的には燃焼行程が実行される位置に到達するまでの間に亘って外部に漏出することがない。そして、上記燃料格納溝内に注入された燃料が、ロータが回転する過程で燃焼位置まで到達すると、第1又は第3の摺動板の先端は該ロータハウジングの内周面に摺接してなると同時に前記燃料格納溝が形成された部位も開放され、また、上記第2又は第4の摺動板の先端は該ロータハウジングの内周面に摺接する。この結果、上記第1又は第3の摺動板と上記第2又は第4の摺動板と上記ロータハウジングの内周面と上記ロータの外周面とにより閉塞された空間が形成され、この空間内には上記燃料格納溝から燃料が放出され、この燃料の放出の際に上記点火プラグにより該燃料に点火される。またこのとき、上記第2又は第4の摺動板は、該第1又は第3の摺動板の露出面積よりも少ない露出面積が上記ロータハウジング内において露出し且つ該第2又は第4の摺動板の先端は該ロータハウジングの内周面に摺接している。すなわち、上記第1又は第3の摺動板と第2又は第4の摺動板は、それぞれロータハウジングの内周面に摺接しているが、該第1又は第3の摺動板が該ロータハウジングの内周面とロータの外周面との間の空間内に露出している露出面積(該第1又は第3の摺動板の裏面の露出面積)は、上記第2又は第4の摺動板が該ロータハウジングの内周面とロータの外周面との間の空間内に露出している露出面積(該第2又は第4の摺動板の正面の露出面積)よりも広いものとされている。したがって、こうした状態において、上記空間内に供給された燃料が上記点火プラグにより点火され、該燃料が燃焼・爆発すると、前記第1又は第3の摺動用開口から露出した第1又は第3の摺動板の裏面は、該燃焼・爆発による圧力(上記第2又は第4の摺動板に作用する圧力よりも高い圧力)が作用する受圧面となり、ロータ全体に高い回転力が付与される。
【0016】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第4の発明において、前記第1及び第3の摺動板の裏面であって前記燃料格納溝が形成された位置よりも該第1及び第3の摺動板の基端側には第2の燃料格納溝が該燃料格納溝と平行に形成されてなる一方、前記一方の燃料注入口と他方の燃料注入口とは、それぞれ前記蓋側燃料注入口から注入された燃料が上記燃料格納溝と第2の燃料格納溝との双方に燃料を注入できる構造又は大きさとされ、前記ロータハウジングには、前記点火プラグの配置位置よりも前記ロータの回転方向に第2の点火プラグが配置され、前記ロータの回転途中において、上記燃料格納溝が前記閉塞面による閉塞状態から解放され上記点火プラグによる燃料への点火が終了した後に、上記第2の燃料格納溝が前記閉塞面による閉塞状態から解放され上記第2の点火プラグによる燃料への点火が行われるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0017】
上記第5のロータリーエンジンでは、上述したように、上記ロータの回転途中において、上記燃料格納溝が前記閉塞面による閉塞状態から解放され上記点火プラグによる燃料への点火が終了した後に、上記第2の燃料格納溝が前記閉塞面による閉塞状態から解放され上記第2の点火プラグによる燃料への点火が行われることから、上記燃料格納溝に注入された燃料の燃焼・爆発により第1回目の回転出力が得られると同時に、こうした第1回面における回転出力を得た直後に、上記第2の燃料格納溝に注入された燃料の燃焼・爆発により第2回目の回転出力が得られる。したがって、この第5の発明に係るロータリーエンジンによれば、上記2回に亘ってなされる燃料の燃焼・爆発により極めて高い回転出力を得ることができる。
【0018】
なお、上記燃料格納溝は、上記第2の燃料格納溝に加えて更に第3の燃料格納溝や第4の燃料格納溝とし、こうした燃料格納溝の数に応じて、上記点火プラグを回転方向の所定位置に増加させたものであっても良い。
【0019】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第1の発明において、前記ロータハウジングには、外気を内部に吸引する吸気口と、該ロータハウジング内の燃焼ガスを外部に排気する排気口と、燃料に点火する点火プラグとを備え、前記ロータは、該ロータの回転途中において、前記無端状ガイド溝にガイドされて回動する前記第1乃至第4の回動部材の回動動作により、前記第1乃至第4の摺動板の内の一又は複数が前記第1乃至第4の摺動用開口の開口面を摺動しながら且つ該第1乃至第4の摺動板の先端が上記ロータハウジングの内周面に摺接しながら該ロータ全体として回動動作するように構成されてなるとともに、該第1乃至第4の摺動板の内の一又は複数の摺動動作に伴って、該第1乃至第4の摺動板の内の一に燃料を格納する燃料格納工程と、前記吸気口から気体を吸気する吸気工程と、この吸気工程で吸気された気体を圧縮する圧縮工程と、この圧縮工程で圧縮された気体内に上記格納された燃料を開放する燃料開放工程と、この燃料開放工程で気体内に開放された燃料に上記点火プラグにより点火し該気体を燃焼させる燃焼工程と、この燃焼行程で燃焼された後の排気ガスを上記排気口から外部に排気する排気工程と、この排気工程の終了後に再び上記燃料格納工程が実行されるという順番で、各工程が繰り返して実行されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0020】
上記第6の発明では、上記第1乃至第4の摺動板の内の一又は複数の摺動動作に伴って、上記燃料格納工程、吸気工程、圧縮工程、燃料開放工程、燃焼工程と、排気工程とが順番に実行されるように構成されていることから、上記吸気工程が実行されるロータハウジングの部位とロータの部位はそれぞれ毎回同一の部位であり、上記燃焼行程が実行されるロータハウジングの部位とロータの部位はそれぞれ毎回同一の部位であることから、該吸気工程が毎回実行されるロータハウジングの部位とロータの部位と燃焼行程が毎回実行されるロータハウジングの部位とロータの部位との温度を互いに比較すると、必ず燃焼行程が毎回実行されるロータハウジングの部位とロータの部位の温度は、吸気工程が毎回実行されるロータハウジングの部位とロータの部位はよりも高い温度となる。したがって、この第6の発明に係るロータリーエンジンでは、温度が低い環境下で圧縮工程がされた後に上記圧縮工程を経て実行される燃焼行程においては、点火プラグにより燃料に点火される直前の時点で気体が加熱されることからより内部圧力は高まり、この高まった時点で上記点火がされる結果、出力軸を含めたロータ全体に対して極めて高い回転出力を得ることができる。
【0021】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、上記第1乃至第6の発明の何れかにおいて、前記燃料は水素ガスであることを特徴とするものである。
【0022】
この第7の発明に係るロータリーエンジンによれば、ガソリンなどの揮発性燃料を使用した場合と比較して、上記第1乃至第6の発明に係る機械的構造の技術的効果又は価値をより一層発揮することができる。とりわけ、第4乃至第6の発明として記載した構成は、水素ガスを燃料とすることにより、格段に高い回転出力を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係るロータリーエンジンでは、従来のロータリーエンジンのように、それぞれの摺動板そのものに形成された凸部がガイド部(上側ガイド溝凹部や下側ガイド溝)によりガイドされる構造ではなく、それぞれの回動部材と摺動板とがリンク機構を構成し、このリンク機構を介して該摺動板が移動する構造であるため、この第1の発明を構成する一方及び他方の無端状ガイド溝の形状を、上記出力軸を中心とする円に極めて近い形状とすることができ、この結果、上記一方及び他方の無端状ガイド溝内を上記凸部が移動する際の摺動抵抗を格段に低減させることができ、ひいては出力軸を含めたロータ全体の回転力を極めて効率の良いものとすることが可能となる。また、上記第1の発明に係るロータリーエンジンによれば、従来のロータリーエンジンと比較して、上記リンク機構を構成する第1乃至第4の摺動板がロータの外周面からより長く外側に摺動させることができ、この結果、ロータハウジング内の容量を高めることができ、後述する吸気工程ではより多くの気体を内部に吸気した上で圧縮することができるので、より高い回転出力を得ることが可能となる。
【0024】
上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係るロータリーエンジンによれば、上記ロータの回転駆動時において、より各凸部と無端状ガイド溝との間で発生する摺動抵抗を低減し、より一層上記出力軸を含めたロータ全体の回転力の損失を抑制し、極めて効率の良い回転出力を得ることができる。
【0025】
上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係るロータリーエンジンによれば、上記ロータハウジング内であって上記ロータの外側に対する燃料供給は、電子制御装置又は燃料噴射装置その他の特別な装置を使用することなく、所定のタイミングで機械的に燃料を供給することが可能となる。
【0026】
上記第4の発明(請求項4記載の発明)に係るロータリーエンジンによれば、上記燃料格納溝内に注入された燃料が、該注入された位置から圧縮工程が実行される位置を通過し、最終的には燃焼行程が実行される位置に到達するまでの間に亘って外部に漏出することがない。また、この第4の発明に係るロータリーエンジンでは、上記第1又は第3の摺動板の露出面積が上記第2又は第4の摺動板の露出面積よりも広い状態において、上記空間内に供給された燃料が上記点火プラグにより点火され、該燃料が燃焼・爆発することから、上記出力軸を含めたロータ全体に高い回転力を付与することができる。
【0027】
上記第5の発明(請求項5記載の発明)に係るロータリーエンジンでは、上記点火プラグによる燃料への点火が終了した後に上記第2の点火プラグによる燃料への点火が行われることから、該第6の発明に係るロータリーエンジンによれば、上記2回に亘ってなされる燃料の燃焼・爆発により極めて高い回転出力を得ることができる。
【0028】
上記第6の発明(請求項6記載の発明)に係るロータリーエンジンによれば、温度が低い環境下で圧縮工程がされた後に上記圧縮工程を経て実行される燃焼行程においては、点火プラグにより燃料に点火される直前の時点で気体が加熱されることからより内部圧力は更に高まり、この更に高まった時点で上記点火がされる結果、出力軸を含めたロータ全体に対して極めて高い回転出力を得ることができる。
【0029】
上記第7の発明(請求項7記載の発明)に係るロータリーエンジンによれば、ガソリンなどの揮発性燃料を使用した場合と比較して、上記第1乃至第6の発明に係る機械的構造による技術的効果又は価値をより一層発揮することができる。とりわけ、第4乃至第6の発明として記載した構成は、水素ガスを燃料とすることにより、格段に高い回転出力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係るロータリーエンジンを一部模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すロータハウジングの平面図である。
図3図1に示すロータハウジングとその内部のロータの一部を示す側断面図である。
図4】ロータハウジングの上蓋を示す平面図である。
図5】ロータの内部構造の一部を平面である。
図6】ロータの平面図である。
図7】ロータの側面図である。
図8】第1の回動部材を示す側面図である。
図9】第1の回動部材を示す斜視図である。
図10】ロータの円筒部の内周面に形成された第1の上側台座と第1の上側固定支軸及び第1の下側台座と第1の下側固定支軸とを示す斜視図である。
図11】第2の回動部材を示す側面図である。
図12】第2の回動部材を示す斜視図である。
図13】ロータの円筒部の内周面に形成された第2の上側台座部と第2の下側台座部と第2の回動軸とを示す斜視図である。
図14】第1の摺動板の背面図である。
図15】第1の摺動板を示す平面図である。
図16】第2の摺動板を示す背面図である。
図17】第2の摺動板を示す平面図である。
図18】本発明に係るロータリーエンジンの内部構造を模式的に示す平面図である。
図19A】吸気工程が実行されている状態を模式的に示す平面図である。
図19B図19Aに示す状態の後に圧縮工程が実行されている状態を模式的に示す平面図である。
図19C図19Bに示す状態から更に圧縮工程が進んだ状態を模式的に示す平面図である。
図19D図19Cに示す状態から第1の点火工程が実行された直後の状態を模式的に示す平面図である。
図19E図19Dに示す状態から第2の点火工程が実行された後の状態を模式的に示す平面図である。
図19F図19Eに示す状態から更に排気工程が実行される前の状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
このロータリーエンジン1は、燃料として水素ガスを使用したロータリーエンジンであり、図1に示すように、ロータハウジング2と、このロータハウジング2内に回転可能に配置されたロータ3(図2参照)と、を備えている。
【0033】
上記ロータハウジング2は、鉄その他の金属材料を素材とするものであって、図2又は図3に示すように、内部には空洞が形成された筒状部材21と、この筒状部材21の上面に溶接され上記空洞を閉塞する上側閉塞板22と、上記筒状部材21の下面に溶接され上記空洞を閉塞する下側閉塞板23とを備え、図1に示すように、上記筒状部材21には、外気をこの該筒状部材21の内部とを連通する吸気口21aと、該筒状部材21内の気体(後述する燃焼ガス)を外部に排気する排気口21bとが形成されている。また、このロータハウジング2を構成する上記筒状部材21であって、上記吸気口21aが形成された位置とは反対側には、第1の点火プラグ4と第2の点火プラグ5がそれぞれ並んで配置されている。上記吸気口21a、排気口21b、第1及び第2の点火プラグ4,5の配置位置の詳細は改めて後述する。なお、このロータハウジング2を構成する上記筒状部材21の内部に形成された空洞の平面形状は、図2において破線で示すように、大小二つの円形が一部交差した形状に近似してなるものであり、径が短い一方の円弧状部(符号は省略する。)と、この一方の円弧状部の径よりもやや大径とされた他方の円弧状部とから構成され、該一方の円弧状部の端部から他方の円弧状部の端部に至る二つの部位は、他の円弧状の部位と比較して後述する出力軸100に最も近接した部位とされてなるとともに、それぞれ後述するロータ3の筒状部31の外周面と摺接する一方の摺接面2aと他方の摺接面2bとされている。
【0034】
また、上記上側閉塞板22と下側閉塞板23とは、互いに同一形状に成形されてなるものであり、図3に示すように、上記上側閉塞板22には上側開口22aが形成され、上記下側閉塞板23にも上記上側開口22aと同じ形状とされた下側開口23aが形成されている。そして、図1又は図3に示すように、上記上側閉塞板22の上面には、上記上側開口22aを閉塞する(本発明を構成する)上蓋24が固定され、上記下側閉塞板23の下面には、図3に示すように、上記下側開口23aを閉塞する(本発明を構成する)下蓋25が固定されている。そして、上記上蓋24と下蓋25との中心には、それぞれ円形状の開口24a(図4参照)が形成され(下蓋25に形成された開口は図示しない。)、これらの開口には、後述する出力軸100が挿通されている。また、上記上蓋24の外周側中途部には、図1に示す燃料供給ノズル6の先端が挿入される(本発明を構成する)蓋側燃料注入口24bが形成されている。なお、上記燃料供給ノズル6は、中途部に開閉弁6aが配置された管路6bを介して水素ガスが充填された燃料タンク6cに接続されている。また、この上蓋24の裏面には、図4に示すように、上記開口24aを取り囲むとともにやや円形に近い第1の上側無端状ガイド溝24cと第2の上側無端状ガイド溝24dがそれぞれ形成されている。これら第1の上側無端状ガイド溝24cと第2の上側無端状ガイド溝24dとはそれぞれ本発明を構成する一方の無端状ガイド溝と他方の無端状ガイド溝でもあり、該第2の上側無端状ガイド溝24dの外側に上記第1の上側無端状ガイド溝24cが形成されている。また、上記下蓋25の上面には、上記図示しない開口を取り囲むとともに、やや円形に近い図示しない第1の下側無端状ガイド溝と第2の下側無端状ガイド溝がそれぞれ形成されている。これら第1の下側無端状ガイド溝と第2の下側無端状ガイド溝とはそれぞれ本発明を構成する一方の無端状ガイド溝と他方の無端状ガイド溝でもあり、該第2の下側無端状ガイド溝の外側に上記第1の下側無端状ガイド溝が形成されている。
【0035】
また、上記ロータ3は、鉄その他の金属材料を素材とするものであり、図3に示すように、円筒形状に成形された筒状部31と、この筒状部31の上面に溶接され該筒状部31内の空間を閉塞する上側円盤部32と、該筒状部31の下面に溶接され該筒状部31内の空間を閉塞する下側円盤部33とを備えている。そして、上記筒状部31には、図5に示すように、第1乃至第4の摺動用開口31a,31b,31c,31dが形成されている。そして、これら第1乃至第4の摺動用開口31a・・・31dは、それぞれ上記筒状部31に形成され互いに対向する開口面同士の間に位置するものであって、上記第3の摺動用開口31cは、上記第1の摺動用開口31aを0度とした場合にこのロータ3全体が180度時計回り方向に回転した位置に形成されてなるものであり、上記第4の摺動用開口31dは、上記第2の摺動用開口31bの形成位置を0度とした場合にこのロータ3全体が180度時計回り方向に回転した位置に形成されている。そして、この筒状部31には、上記第1の摺動用開口31aと、該第1の摺動用開口31aの位置から反時計回り方向に位置する第4の摺動用開口31dとの間に挟まれた部位は、他の円弧状とされた部位よりも該ロータ3の中心方向に傾斜した一方の傾斜板部3aが形成され、また、上記第3の摺動用開口31cと、該第3の摺動用開口31cの位置から反時計回り方向に位置する第2の摺動用開口31bとの間に挟まれた部位は、他の円弧状とされた部位よりも該ロータ3の中心方向に傾斜した他方の傾斜板部3bが形成されている。そして、上記一方の傾斜部位3aの時計回り方向の面は、上記第1の摺動用開口31aを形成し、後述する第1の摺動板101の裏面が摺動する摺動面である。また、上記他方の傾斜部位3bの時計回り方向の面は、上記第3の摺動用開口31cを形成し、後述する第3の摺動板103の裏面が摺動する摺動面である。そして、上記第1の摺動用開口31aを形成する上記一方の傾斜板部3aには、この摺動面をロータハウジング2の内周面側に延長してなる第1の延出板部31eが形成され、この第1の延出板部31eの時計回り方向に面した部位は、上記摺動面であると同時に、後述する第1及び第2の燃料格納溝101aと第2の燃料格納溝101bとを閉塞する閉塞面でもある。また、上記第3の摺動用開口31cを形成する上記他方の傾斜板部3bには、この摺動面をロータハウジング2の内周面側に延長してなる第2の延出板部31fが形成され、この第2の延出板部31fの時計回り方向に面した部位は、上記摺動面であると同時に、後述する第1及び第2の燃料格納溝103aと第2の燃料格納溝103bとを閉塞する閉塞面でもある。
【0036】
また、上記上側円盤部32は、図6又は図7に示すように、全体形状は円盤状に成形されており、中心には円形状の開口(符号は省略する。)が形成され、この開口には出力軸100の上端側中途部が挿通されているとともに該出力軸100はこの上側円盤部32に溶接されている。なお、図7に示すように、上記下側円盤部33もこの上側円盤部32と同一の径で成形され、その中心には円形状の開口(符号は省略する。)が形成され、この開口には上記出力軸100の下端側中途部が挿通されているとともに該出力軸100はこの下側円盤部33に溶接されている。また、上記上側円盤部32の上面の外周側には、図6に示すように、一方の燃料注入口32aと他方の燃料注入口32bとがそれぞれ形成され、該他方の燃料注入口32bの形成位置は、該一方の燃料注入口32aの形成位置から周回り方向に180度回転した位置の近傍に形成されている。なお、上記一方の燃料注入口32aは、上記第1の摺動用開口31aの上方に形成されてなるものであり、上記他方の燃料注入口32bは、上記第3の摺動用開口31cの上方に形成されている。なお、これら一方及び他方の燃料注入口32a,32bの開口面積は、後述する第1の摺動板101や第3の摺動板103に形成された第1の燃料格納溝101a,103aと第2の燃料格納溝101b,103bとの両方に連通する面積とされている。なお、この実施の形態に係るロータリーエンジン1では、上記上側円盤部32の外周側の上面には、更に約2mm程度の肉厚となされた上側中空状リング盤34が溶接され、上記下側円盤部33の外周側の下面には下側中空状リング盤35が溶接されている。上記上側中空状リング盤34や下側中空状リング盤35の幅は、それぞれ上記筒状部31の肉厚よりも長いものとされ、該上側中空状リング盤34には、図6に示すように、一方の燃料注入口32aに連通する一方のリング側開口34aと、上記他方の燃料注入溝32bに連通する他方のリング側開口34bが開設されている。また、図6又は図7に示すように、上記上側円盤部32の中央には内部に上記出力軸100が挿通され約2mm程度の厚さを有する上側ロータワッシャー36が固定され、上記下側円盤部33の中央には内部に上記出力軸100が挿通され約2mm程度の厚さを有する下側ロータワッシャー37が固定されている。また、上記上側円盤部32であって、上記上側ロータワッシャー36と上側中空状リング盤34との間には、それぞれ円弧状に形成された第1乃至第4の上側円弧状貫通穴32c,32d,32e,32fが形成されている。また、上記下側円盤部33にも、上記第1乃至第4の上側円弧状貫通穴32c,32d,32e,32fが形成された位置と同じ位置に図示しない第1乃至第4の下側円弧状貫通穴が形成されている。
【0037】
また、上記ロータ3の筒状部31内には、図18に示すように、第1乃至第4の回動部材7,8,9,10が回動可能に配置されている。そして、上記第1の回動部材7には、第1の摺動板101の基端側が回動可能に連結され、上記第2の回動部材8には、第2の摺動板102の基端側が回動可能に連結され、上記第3の回動部材9には、第3の摺動板103の基端側が回動可能に連結され、上記第4の回動部材10には、第4の摺動板104の基端側が回動可能に連結されている。
【0038】
上記第1の回動部材7と第3の回動部材9とは、それぞれ同一の形状に成形されており、上記第2の回動部材8と第4の回動部材10とは、それぞれ同一の形状に成形されている。そこで、以下では上記第1の回動部材7と第2の回動部材8について説明する。この第1の回動部材7は、図8又は図9に示すように、所定の肉厚を有し上記筒状部31の内周面側から該筒状部31の内部方向に長さを有する第1の上側回動部材71と、この第1の上側回動部材71と同一形状に成形され該第1の上側回動部材71と平行に配置された第1の下側回動部材72と、これら第1の上側回動部材71の基端側中途部と第1の下側回動部材の基端側中途部とを接続する第1の接続部材73とを備えている。そして、上記第1の上側回動部材71と第1の下側回動部材72の先端側には、それぞれ該第1の上側回動部材71や第1の下側回動部材72の幅方向に長さを有する連結穴71a,72bが形成され、上記第1の接続部材73の位置よりも基端側には、第1の上側回動軸挿通穴71bや第1の下側回動軸挿通穴72bが形成されている。また、上記第1の接続部材73の上端は、上記第1の上側回動部材71の上面に溶接され、該第1の接続部材72の下端は、上記第1の下側回動部材72の下面に溶接されている。また、上記第1の上側回動部材71の基端側中途部の上面には、本発明を構成する第1の上側凸部71cが起立してなり、この第1の上側凸部71cの中途部には、上面が上記上側円盤部32の下面と摺接する摺接片71dが固定されている。また、上記第1の下側回動部材72の基端側中途部の下面には、本発明を構成する第1の下側凸部72cが垂下してなり、この第1の下側凸部72cの中途部には、下面が上記下側円盤部33の上面と摺接する摺接片72dが固定されている。なお、上記第1の上側凸部71cは、上記上側円盤部32に形成された第1の上側円弧状貫通穴32cを通過して上記上蓋24の裏面に形成された第1の上側無端状ガイド溝24c内に挿入される部位であり、上記第1の下側凸部72cは、上記下側円盤部33に形成された図示しない第1の下側円弧状貫通穴を通過して上記下蓋25の上面に形成された図示しない第1の下側無端状ガイド溝内に挿入される部位である。
【0039】
他方、上記ロータ3を構成する上記筒状部31の内周面には、図10に示すように、第1の上側台座部74が溶接され、この第1の上側台座部74の下方には第1の下側台座部75が固定され、上記第1の上側台座部74の上面には第1の上側回動軸76が起立し、上記第1の下側台座部75の下面には第1の下側回動軸77が垂下している。なお、これら第1の上側回動軸76と第1の下側回動軸77は、本発明を構成する回動軸である。そして、上記第1の上側回動軸76は、上記第1の上側回動軸挿通穴71b内に回動可能に挿通され、上記第1の下側回動軸77は、上記第1の下側回動軸挿通穴72b内に回動可能に挿通されている。したがって、上記第1の回動部材7全体は、上記ロータ3の筒状部31内において、上記第1の上側回動軸76と上記第1の下側回動軸77とを中心に回動可能とされている。なお、上述したように、上記第3の回動部材9の構成及び回動構造は、上記第1の回動部材7やその回動構造と同一であることから、その詳細な説明は省略するが、その配置位置は、図18に示すように、上記第1の回動部材7の配置位置を0度とした場合、該第1の回動部材7の配置位置から出力軸100を中心として180度回転した位置に配置されている。
【0040】
次に、上記第2の回動部材8を説明する。この第2の回動部材8は、図11又は図12に示すように、横方向に長さを有し略長方形状に成形された板体からなる第2の回動部材本体81と、この第2の回動部材本体81の先端(図11及び図12中右端)において該第2の回動部材本体81の幅方向に形成された第2の連結穴81aと、該第2の回動部材本体81の基端において該第2の回動部材本体81の幅方向に形成された第2の回動軸挿通穴81bとを備えている。また、この第2の回動部材本体81の上面には、やや長尺な第2の上側凸部81cが起立し、該第2の回動部材本体81の下面には、やや長尺な第2の下側凸部81dが垂下されている。そして、上記第2の上側凸部81cの上端側中途部には、上面が上記上側円盤部32の下面と摺接する摺接片81eが固定され、上記第2の下側凸部81dの下端側中途部には、下面が上記下側円盤部33の上面と摺接する摺接片81fが固定されている。なお、上記第2の上側凸部81cは、上記上側円盤部32に形成された第2の上側円弧状貫通穴32dを通過して上記上蓋24の裏面に形成された第2の上側無端状ガイド溝25d内に挿入される部位であり、上記第2の下側凸部81dは、上記下側円盤33に形成された図示しない第2の下側円弧状貫通穴を通過して上記下蓋25の上面に形成された図示しない第2の下側無端状ガイド溝内に挿入される部位である。
【0041】
他方、上記ロータ3を構成する上記筒状部31の内周面には、図13に示すように、第2の上側台座部82が溶接され、この第2の上側台座部82の下方には第2の下側台座部83が固定され、上記第2の上側台座部82の下面から第2の下側台座部83の上面には第2の回動軸84が固定され、この第2の回動軸84は、図11に示すように、第2の回動軸挿通穴81bに挿通されている。なお、上記第2の回動軸84は、本発明を構成する回動軸である。したがって、上記第2の回動部材8全体は、上記ロータ3の筒状部31内において、上記第2の回動軸84を中心に回動可能とされている。なお、上述したように、上記第4の回動部材10の構成及び回動構造は、上記第2の回動部材8やその回動構造と同一であることから、その詳細な説明は省略するが、その配置位置は、図18に示すように、上記第2の回動部材8の配置位置を0度とした場合、該第2の回動部材8の配置位置から出力軸100を中心として180度回転した位置に配置されている。
【0042】
そして、上述のように構成された第1の回動部材7の先端に連結された第1の摺動板101は、上記ロータ3の筒状部31の高さ方向に長さを有する板体であり、図14又は図15に示すように、上記ロータ3の筒状部31の内周面と摺接する部位である先端面が円弧状に成形された板体であり、背面の先端側中途部には該第1の摺動板101の長さ方向(前記出力軸100の長さ方向)には、第1の燃料格納溝101aが形成され、この燃料格納溝101aの形成位置から該第1の摺動板101のやや基端側には、該第1の燃料格納溝101aと平行とされた第2の燃料格納溝101bが形成されている。なお、この実施の形態に係るロータリーエンジン1では、上記第2の燃料格納溝101bの奥行及び溝幅は上記第1の燃料格納溝101aのそれらより短く又は狭いものとされている。また、この第1の摺動板101の基端側上部には、互いに対向する上下一対の上側脚部101c,101dが形成され、また該第1の摺動板101の基端側下部には、互いに対向する上下一対の下側脚部101e,101fが形成されている。そして、上記上側脚部101c,101d間には、上記第1の回動部材7を構成する第1の上側回動部材71の先端側に形成された連結穴71aに挿通される第1の上側連結軸101gが固定され、また、上記下側脚部101e,101f間には、該第1の回動部材7を構成する第1の下側回動部材72の先端側に形成された連結穴72aに挿通される第1の下側側連結軸101hが固定されている。したがって、この第1の摺動板101は、上記第1の上側連結軸101gと第1の下側側連結軸101hを介して、上記第1の回動部材7に対して回動可能に連結されている。なお、上記第3の摺動板103も上記第1の摺動板101と同様の構成とされてなるとともに、上記第3の回動部材9と同様な構造により回動可能に連結されている。
【0043】
また、上記第2の摺動板102は、図16又は図17に示すように、上記ロータ3の筒状部31の内周面と摺接する部位である先端面が円弧状に成形された板体であり、この第2の摺動板102の基端側には、互いに対向する上下一対の脚部102a,102bが形成され、該脚部102a,102b間には、上記第2の回動部材8の先端に形成された第2の連結穴81a内に挿通される第2の連結軸102cが固定されている。したがって、この第2の摺動板102は、上記第2の連結軸102cを介して、上記第2の回動部材8に対して回動可能に連結されている。なお、上記第4の摺動板104も上記第2の摺動板102と同様の構成とされてなるとともに、上記第4の回動部材10との間で同様な構造により回動可能に連結されている。
【0044】
そして、上述した構成に係るロータリーエンジン1は、図18に模式的に示すように、大小二つの円が一部交差した内部形状を有する上記ロータハウジング2の内部空間には、上記ロータ3が配置され、この図18に示す状態では、上記第1の摺動板101の先端は、ロータ3の外周面と略面一の状態とされており、該ロータ3の外周面側からロータハウジング2の内周面側に移動していない。なお、この図18(及び図19A図19F)では、ロータハウジング2の肉厚等は図示されていない。また、この状態において、上記第2の摺動板102もその先端はロータ3の外周面と略面一の状態とされている。また、上記第3の摺動板103の先端は、ロータ3の外周面から外側に移動しており、ロータハウジング2の内周面に摺接している。また、上記第4の摺動板104の先端はロータハウジング2の内周面に摺接した状態とされている。そして、こうした図18に示す状態において、上記ロータ3が図18中時計回り方向に回転すると、先に説明した上蓋24の下面に形成された上記第1の上側無端状ガイド溝24cと下蓋25の上面に形成された図示しない第1の下側無端状ガイド溝とにより、上記第1の回動部材7と第3の回動部材9とがそれぞれ回動され、これら第1の回動部材7と第3の回動部材9との回動動作によって上記第1及び第3の摺動板101,103が(上記第1の上側無端状ガイド溝24cと第1の下側無端状ガイド溝との形状に応じた)所定のタイミングで、ロータハウジング2の内周側又はその反対方向に移動(摺動)する。また、こうした図18に示す状態において、上記ロータ3が図18中時計回り方向に回転すると、先に説明した上蓋24の下面に形成された上記第2の上側無端状ガイド溝24dと下蓋25の上面に形成された図示しない第2の下側無端状ガイド溝とにより、上記第2の回動部材8と第4の回動部材10とがそれぞれ回動され、これら第2の回動部材8と第4の回動部材10との回動動作によって上記第2及び第4の摺動板102,104が(上記第2の上側無端状ガイド溝24dと第2の下側無端状ガイド溝との形状に応じた)所定のタイミングで、ロータハウジング2の内周側又はその反対方向に移動(摺動)する。
【0045】
以下、上述した構成に係るロータリーエンジン1の動作、とりわけ上記第1の摺動板101の動作を中心として順次説明しつつ、上記第2、第3、第4の摺動板102,103,104の動作についても付随的に説明する。
【0046】
先ず、図19Aは、図1に示す上記吸気口21aから外気の吸気が実行されている状態(吸気工程)を模式的に示すものであり、この状態において、上記第1の摺動板101の先端側の裏面に形成された第1の燃料格納溝101aは、上記ロータハウジング2の上蓋24に形成された蓋側燃料注入口24bの直下に位置している。そして、この状態において、蓋側燃料注入口24b内に上記燃料供給ノズル6の先端から管路6bを介して上記燃料タンク6cから水素ガスを供給(吐出)させると、この水素ガスは上記蓋側燃料注入口24b内から上記上側中空状リング盤34に形成された一方のリング側開口34a内を通過し、上記上側円盤部32に形成された一方の燃料注入口32aを通過して、上記第1の燃料格納溝101aと第2の燃料格納溝101b内に注入される(燃料格納工程)。また、こうした状態において、上記第1の摺動板101の裏面の先端側は、上記第1の摺動用開口31a内において、上記第1の延出板部31eに接しており、該第1の延出板部31eにより上記第1の燃料格納溝101aと第2の燃料格納溝101bは閉塞されている。そして、こうした状態からロータ3が図19A中時計回り方向に回転して、上記蓋側燃料注入口24bの形成位置から離れると、該蓋側燃料注入口24b及び上記上側中空状リング盤34に形成された一方のリング側開口34aは上記上蓋24の下面により閉塞される。また、この図19Aに示す状態において、上記第1の摺動板101の位置よりも図19A中時計回り方向に位置するロータハウジング2内の空間には、上記吸気口21aから吸気された外気が存在する。
【0047】
そして、図19Aに示す状態からロータ3が同図中時計回り方向に回転すると、上記第1の摺動板101はこれまでの状態を維持し、第1の延出板部31eにより上記第1の燃料格納溝101aと第2の燃料格納溝101bは閉塞されたままの状態で回転する一方、上記ロータハウジング2内の空間内に存在した空気は、ロータ2の外周面と上記他方の摺接面2aとの摺接により閉塞されていることから、上記第4の摺動板104の回転移動により徐々に圧縮されている。そして、図19Bに示す状態からさらにロータ3が回転すると、図19Cに示すように、上記圧縮された空気は、上記第4の摺動板104の移動により更に圧縮される。なお、上記第1の摺動板101は、この状態においてもこれまでの状態を維持し、上記水素ガスは第1の燃料格納溝101aと第2の燃料格納溝101b内に注入され密閉されたままの状態とされている。そしてさらに、上記ロータ3が回転すると、図19Dに示すように、上記圧縮された空気は更に圧縮され(圧縮工程)、上記第1の摺動板101が上記第1の点火プラグ4の位置まで到達する直前から、該第1の摺動板101がロータハウジング2の内周面に摺接しながら該ロータハウジング2の内周面側に移動し、こうした第1の摺動板101の動作に伴って、それまで上記第1の延出板部31eの閉塞面により閉塞されていた上記第1の燃料格納溝101aは開放されて、該第1の燃料格納溝101a内の水素ガスは上記圧縮された空気内に放出され、この放出された際に上記第1の点火プラグ4により水素ガスは燃焼・爆発する(第1の燃焼工程)。なお、図19Dに示す位置に到達した際における上記圧縮された空気は、図19Cに示す位置から図19Dに示す位置に到達する過程で、上記ロータハウジング2やロータ2により加熱されて、上記第1の点火プラグ4により水素ガスが燃焼・爆発する直前では最大限に圧縮される。
【0048】
そして、上記第1の燃焼工程を経た直後には、上記第1の摺動板101は更にロータハウジング2の内周側に移動し、こうした動作により上記第2の燃料格納溝101bが開放されるとともに上記第2の点火プラグ5により、該第2の燃料角納溝101b内に充填されていた水素ガスが燃焼・爆発する(第2の燃焼工程)。したがって、この実施の形態に係るロータリーエンジン1では、上記第1の燃焼工程と第2の燃焼工程が連続してなされることから、上記出力軸100を含めたロータ3全体に極めて大きな回転力が付与される。
【0049】
そして、上記第2の燃焼工程が終了し、上記ロータ3全体が回転し、上記第1の摺動板101は、図19Eに示す位置を通過して図19Fに示す位置まで到達する。なお、上記第1の摺動板101の配置位置を含めた構成は、上記第3の摺動板103と同様であり、上記第2の摺動板102の配置位置を含めた構成は、上記第4の摺動板104と同様である。したがって、図19Fに示す状態から図19Aに示す状態に第3の摺動板103が至った際には、該第3の摺動板103の正面にはそれ以前に第1の摺動板101の背面側において燃焼後の燃焼ガスが存在しており、図19Aに示す状態から第3の摺動板103が同図中時計回り方向に移動すると、上記燃焼ガスは圧縮されながら図1に示す排気口21bからロータハウジング2内から外部に排気される(排気工程)。また、上記第2の摺動板102及び第4の摺動板104は、図19Aから図19Fに示すように、上記ロータ3の筒状部31の外周面と摺接する一方の摺接面2aから時計回り方向に他方の摺接面2bに至るまでの間は、それぞれの先端がロータハウジング2の内周面に摺接し、該他方の摺接面2bから一方の摺接面2aに至るまでの間では、該第2の摺動板102及び第4の摺動板104の先端は、上記ロータ2の筒状部31の外周から外側に移動しない状態を保持する。
【0050】
このように、この実施の形態に係るロータリーエンジン1では、上記第1乃至第4の摺動板101・・・104が上記動作することにより、上記吸気工程、燃料格納工程、圧縮工程、燃焼工程及び排気工程が順次繰り返して実行され、こうした動作により上記出力軸100を含めたロータ3全体が継続的に回転する。そして、上記第1乃至第4の摺動板101・・・104の動作は、それぞれ上記上蓋24の裏面(下面)に形成された上記第1の上側無端状ガイド溝24cと第2の上側無端状ガイド溝24dと下蓋25の上面に形成された第1の下側無端状ガイド溝と第2の下側無端状ガイド溝とにより回動する第1乃至第4の回動部材7・・・10の動作を介してなされる。そして、互いに連結された上記第1の回動部材7及び第1の摺動板101、第2の回動部材8及び第2の摺動板102、第3の回動部材9と第3の摺動板103、第4の回動部材10及び第4の摺動板104は、それぞれ全体としてリンク機構を形成しており、こうしたリンク機構が採用されることにより、該第1乃至第4の摺動板101・・・104の先端を、上記ロータ2の外周面から大きくロータハウジング2の内周面側に移動させることが可能となる結果、より多くの空気の圧縮することができ、ひいては大きな回転出力を得ることができる。
【0051】
なお、上記実施の形態に係るロータリーエンジン1では、第1及び第2の点火プラグ4,5を構成要素としたが、水素ガスが所定程度圧縮された場合には燃焼されることから、当該水素ガスの圧縮の程度によりこれら第1及び第2の点火プラグ4,5を必ず構成要素とする必要はない。
【符号の説明】
【0052】
1 ロータリーエンジン
2 ロータハウジング
3 ロータ
4 第1の点火プラグ
5 第2の点火プラグ
6 燃料供給ノズル
7 第1の回動部材
8 第2の回動部材
9 第3の回動部材
10 第4の回動部材
21a 吸気口
21b 排気口
24 上蓋
24b 蓋側燃料注入口
24c 第1の上側無端状ガイド溝
24d 第2の上側無端状ガイド溝
25 下蓋
31 円筒部
31a 第1の摺動用開口
31b 第2の摺動用開口
31c 第3の摺動用開口
31d 第4の摺動用開口
32 上側円盤部
32 一方の燃料注入口
32bと他方の燃料注入口
33 下側円盤部
71c 第1の上側凸部
72c 第1の下側凸部
76 第1の上側回動軸
77 第1の下側回動軸
81c 第2の上側凸部
81d 第2の下側凸部
84 第2の回動軸
100 出力軸
101 第1の摺動板
101a 第1の燃料格納溝
101b 第2の燃料格納溝
102 第2の摺動板
103 第3の摺動板
104 第4の摺動板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F