(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031916
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】摩擦圧接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
B23K20/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137691
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】吉川 尚吾
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167BF02
4E167BF06
4E167BF08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】摩擦圧接完了後にその装置にて、別の機械に移動させることなく連続してバリ除去が行える摩擦圧接装置を提供する。
【解決手段】回転側ワークW
1を回転中心線L
1回りに回転可能な状態で保持する回転側保持手段10と、回転側保持手段10に対向して配され、非回転側ワークW
2を回転しない状態で保持する非回転側保持手段20と、回転側保持手段10と非回転側保持手段20とを相対的に接近又は離反させる接近離反手段(図示省略)とを備えた摩擦圧接装置1において、非回転側保持手段20を、非回転側ワークW
2を下側から支持する支持ベース21と、支持ベース21に支持された非回転側ワークW
2を支持ベース21に対して押し付ける押付手段22とを有するものとし、摩擦圧接の完了後に支持ベース21を下方に退避させるベース昇降手段を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転側ワークを回転中心線L1回りに回転可能な状態で保持する回転側保持手段と、
回転側保持手段に対向して配され、非回転側ワークを回転中心線L1の延長線上に回転しない状態で保持する非回転側保持手段と、
回転側保持手段と非回転側保持手段とを相対的に接近又は離反させる接近離反手段と
を備え、
摩擦熱によって回転側ワークと非回転側ワークとを接合する
摩擦圧接装置であって、
非回転側保持手段が、
非回転側ワークを下側から支持する支持ベースと、
支持ベースに支持された非回転側ワークを支持ベースに対して押し付ける押付手段と
を有するとともに、
摩擦圧接の完了後に支持ベースを下方に退避させるベース昇降手段を備える
摩擦圧接装置。
【請求項2】
押付手段が、揺動可能に支持されたスイングレバーである請求項1記載の摩擦圧接装置。
【請求項3】
ベース昇降手段が、
略水平方向に動作する水平動作機構と、
水平動作機構による略水平方向の動作を上下方向の動作に変換する動作方向変換機構と
を備えた請求項1又は2記載の摩擦圧接装置。
【請求項4】
動作方向変換機構が、カムを用いたものである請求項3記載の摩擦圧接装置。
【請求項5】
動作方向変換機構が、ラックアンドピニオンを用いたものである請求項3記載の摩擦圧接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦圧接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の金属製ワークを接合するための装置として、摩擦熱を利用した摩擦圧接装置が知られている。特許文献1の
図1には、回転側のワークW
1を保持するL側チャック11(回転側保持手段)と、非回転側のワークW
2を保持するR側チャック21(非回転側保持手段)とを備えた摩擦圧接装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、非回転側保持手段として、チャックではなく
図9に示すクランプ90を備えた摩擦圧接装置について考える。
図9は、非回転側保持手段として採用されたクランプ90を、回転側保持手段(図示省略)側から見た図である。クランプ90は、非回転側のワークW
9を下側から支持する支持ベース91と、ワークW
9を支持ベース91に対して押し付ける押付手段92とを備えている。これによって、ワークW
9を上側から挿入することができ、摩擦圧接装置の長手方向(ワークW
1の回転軸に略平行な方向)のサイズをコンパクトにすることができる。また、摩擦圧接の完了後においても、クランプ90を回転側保持手段に対して離反させることなく接合後のワーク(以下、接合ワークともいう)を簡単に取り外すことができる。また、チャックに比べてシンプルな構造でありながら、ワークW
9を強力に保持固定することができる。さらに、保持できるワークの形状も制限されにくい。
【0005】
ところが、
図9に示す摩擦圧接装置9では、摩擦圧接の完了後に、クランプ90をアンクランプしたとしても、接合ワークが支持ベース91に接触したままの状態となる。このため、そのままバリ除去を行おうとすると以下の問題がある。
1.接合ワークを動作(回転または移動)させると、接合ワークに傷が付くおそれがある。
2.バリを除去するバリ除去具の動作スペースを確保するために、クランプ90を回転側保持手段に対して離反させると、接合ワークに傷が付くおそれがある。
このため、バリ除去する場合は、摩擦圧接の完了後に接合ワークを摩擦圧接装置から取り外し、別途、バリ除去用の機械に移動させてバリ除去を行う必要があり、手間と時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、摩擦圧接完了後にその装置にて(別の機械に移動させることなく)連続してバリ除去が行える摩擦圧接装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
回転側ワークを回転中心線L1回りに回転可能な状態で保持する回転側保持手段と、
回転側保持手段に対向して配され、非回転側ワークを回転中心線L1の延長線上に回転しない状態で保持する非回転側保持手段と、
回転側保持手段と非回転側保持手段とを相対的に接近又は離反させる接近離反手段と
を備え、
摩擦熱によって回転側ワークと非回転側ワークとを接合する
摩擦圧接装置であって、
非回転側保持手段が、
非回転側ワークを下側から支持する支持ベースと、
支持ベースに支持された非回転側ワークを支持ベースに対して押し付ける押付手段と
を有するとともに、
摩擦圧接の完了後に支持ベースを下方に退避させるベース昇降手段を備える
摩擦圧接装置
を提供することによって解決される。
【0008】
本発明に係る摩擦圧接装置においては、押付手段が、揺動可能に支持されたスイングレバーであることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る摩擦圧接装置においては、ベース昇降手段が、略水平方向に動作する水平動作機構と、水平動作機構による略水平方向の動作を上下方向の動作に変換する動作方向変換機構とを備えることも好ましい。この場合における動作方向変換機構としては、例えば、カムを用いたものや、ラックアンドピニオンを用いたものを採用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持ベースを下方に退避できるため、接合ワークに傷が付くことなく、摩擦圧接の完了後に連続してバリ除去が行える摩擦圧接装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の摩擦圧接装置の平面図である。
【
図2】第1実施形態の摩擦圧接装置における非回転側保持手段を、回転側保持手段側から見た一部破断図である。
【
図3】
図2の非回転側保持手段における支持ベースの周辺部Pを拡大した一部破断図であって、支持ベースが上方位置にある状態を示す図である。
【
図4】
図2の非回転側保持手段における支持ベースの周辺部Pを拡大した一部破断図であって、支持ベースが下方位置にある状態を示す図である。
【
図5】第2実施形態の摩擦圧接装置における非回転側保持手段のうち、支持ベースの周辺部を拡大した一部破断図であって、支持ベースが上方位置にある状態を示す図である。
【
図6】第2実施形態の摩擦圧接装置における非回転側保持手段のうち、支持ベースの周辺部を拡大した一部破断図であって、支持ベースが下方位置にある状態を示す図である。
【
図7】
図5の非回転側保持手段を、同図における平面A-Aで切断して示した断面図である。
【
図8】第3実施形態の摩擦圧接装置の平面図である。
【
図9】非回転側保持手段として採用されたクランプを、回転側保持手段側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明に係る摩擦圧接装置には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更を施すことができる。
【0013】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態の摩擦圧接装置1の平面図である。
図2は、第1実施形態の摩擦圧接装置1における非回転側保持手段20を、回転側保持手段10側から見た一部破断図である。
図1及び
図2並びに後掲の
図3~8には、x軸、y軸及びz軸からなる直交座標を表示している。当該直交座標の向きは、
図1~8で共通している。以下においては、説明の都合上、z軸方向正側を「上」、z軸方向負側を「下」と表現することがあるが、z軸は必ずしも鉛直方向に平行でなくともよい。
【0014】
摩擦圧接装置1は、
図1に示すように、回転側保持手段10と、非回転側保持手段20と、バリ除去具30とを備えている。この摩擦圧接装置1は、回転側ワークW
1(以下、単に「ワークW
1」と記載することがある。)と、非回転側ワークW
2(以下、単に「ワークW
2」と記載することがある。)とを摩擦圧接するために用いられる。
【0015】
回転側保持手段10は、ワークW1を回転中心線L1回りに回転可能な状態で保持するチャックであるが、具体的な構成を特に限定されない。
【0016】
非回転側保持手段20は、回転側保持手段10に対向して配されている。この非回転側保持手段20は、ワークW
2を回転しない状態で保持するためのものである。非回転側保持手段20にワークW
2を保持させると、ワークW
1の回転中心線L
1の延長線上にワークW
2が配される。非回転側保持手段20は、
図2に示すように、ワークW
2を下側から支持する支持ベース21と、ワークW
2を支持ベース21に対して押し付ける押付手段22と、押付手段22を駆動する押付用駆動手段23とを備えている。これにより、非回転側保持手段20をシンプルな構造としつつ、ワークW
2をワークW
1と共回りしないように強力に保持することができる。
【0017】
押付手段22は、ワークW
2を支持ベース21に押し付けることができれば、その構造を特に限定されない。押付手段22は、1つの部材で構成することもできる。押付手段22には、
図2に示すように、回転中心線L
1に略平行な揺動中心線C
a,C
b回りに揺動可能に支持された一対のスイングレバー22a,22bを採用することができる。一対のスイングレバー22a,22bには、それぞれ、押付用突起22a
1,22b
1が設けられている。
【0018】
一対のスイングレバー22a,22bを、
図2の実線で示す位置に移動させる(互いに接近する方向に揺動させる)と、一対の押付用突起22a
1,22b
1でワークW
2を支持ベース21に押し付けて保持(クランプ)することができる。また、一対のスイングレバー22a,22bを、同図の破線で示す位置に移動させる(互いに離反する方向に揺動させる)と、一対の押付用突起22a
1,22b
1がワークW
2の上側から退避して、ワークW
2を解放(アンクランプ)することができる。当該構成を採用したことにより、テコの原理によってワークW
2をより強力に保持することができる。また、アンクランプ状態における一対のスイングレバー22a,22bの隙間を通じて、ワークW
2を支持ベース21に対して上方から設置することもできる。したがって、例えばワークW
2が長尺の棒材等であったとしても、ワークW
2を非回転側保持手段20に簡単に保持させることができる。
【0019】
図3及び
図4は、
図2の非回転側保持手段における支持ベース21の周辺部Pを拡大した一部破断図である。
図3は、支持ベース21が上方位置にある状態を示しており、
図4は、支持ベース21が下方位置にある状態を示している。非回転側保持手段20の支持ベース21は、後述するベース昇降手段100によって、上方位置(
図3)と下方位置(
図4)との間を移動(昇降)することができる。ワークW
2をクランプする際には、支持ベース21は上方位置に配される。
【0020】
バリ除去具30(
図1)は、摩擦圧接の過程でワークW
1とワークW
2との接合部分付近に発生したバリを、摩擦圧接の完了後に除去するためのものである。
【0021】
また、図には表示していないが、摩擦圧接装置1は、回転側保持手段10と非回転側保持手段20とを回転中心線L
1に略平行な方向に相対的に接近又は離反させる接近離反手段も備えている。
図1の摩擦圧接装置1における接近離反手段は、同図において両矢印D
1で示すように、非回転側保持手段20のみを移動させる。これに限らず、接近離反手段は、回転側保持手段10のみを移動させるものであっても、回転側保持手段10と非回転側保持手段20との両方を移動させるものであっても良い。
【0022】
以下、第1実施形態の摩擦圧接装置1を用いてワークW1とワークW2との摩擦圧接を行う際の手順について説明する。摩擦圧接装置1を用いた摩擦圧接方法は、ワーク取付工程と、ワーク接合工程と、ベース退避工程と、バリ除去工程とを含んでいる。
【0023】
ワーク取付工程は、回転側保持手段10(
図1)にワークW
1を取り付け、非回転側保持手段20にワークW
2を取り付ける工程である。アンクランプ状態における非回転側保持手段20では、
図2において破線で示すように、一対のスイングレバー22a,22bが互いに離反しているため、一対のスイングレバー22a,22bの間を通じて、ワークW
2を支持ベース21に対して上方から設置することができる。ワーク取付工程が完了すると、次のワーク接合工程を行う。
【0024】
ワーク接合工程は、ワークW1とワークW2とを摩擦圧接によって接合する工程である。まず、接近離反手段で非回転側保持手段20を回転側保持手段10に接近させて、ワークW1とワークW2とを接触させる。続いて、ワークW1を回転側保持手段10で回転させることによって、ワークW1とワークW2との接触面に摩擦熱を発生させる。この摩擦熱により、ワークW1及びワークW2における接触面付近を軟化させ、ワークW1とワークW2とを接合することができる。ワーク接合工程の具体的手順は、上記のものに限定されない。例えば、ワークW1とワークW2とが離反した状態で回転側保持手段10によるワークW1の回転を開始し、ワークW1を回転させながらワークW2に接触させてもよい。ワーク接合工程が完了すると、次のベース退避工程を行う。
【0025】
ベース退避工程は、非回転側保持手段20をアンクランプし、上方位置(
図3)に配されていた支持ベース21を、下方位置(
図4)に退避させる工程である。このとき、接合後のワークW
jは回転側保持手段10に保持されたままであるため、
図4に示すように、ワークW
jが支持ベース21から浮いた(接触していない)状態となる。このまま次のバリ除去工程を行うこともできるが、接近離反手段で非回転側保持手段20を回転側保持手段10から離反させる保持手段離反工程をさらに行ってからバリ除去工程を行うことが好ましい。これにより、バリ除去具30(
図1)の動作スペースを確保することができる。
【0026】
バリ除去工程は、回転側保持手段10(
図1)で接合後のワークを回転させながら、バリ除去具30をワークに近づけてバリを削り取る工程である。バリ除去工程が完了すると、摩擦圧接方法が完了する。
【0027】
このように、摩擦圧接完了後に支持ベース21を下方位置(
図4)に退避させることができるため、接合後のワークW
jが支持ベース21に接触しないようにすることができる。これにより、回転側保持手段に保持された接合後のワークW
jを、非回転側保持手段に対して相対的に動かしたとしても、ワークに傷が付かない。したがって、回転側保持手段10でワークW
jを保持したまま回転させてバリ除去を行うことができる。すなわち、ワークW
jを摩擦圧接装置1から取り外して(別の装置に移動させて)バリ除去を行う手間と時間を省くことができる。
【0028】
支持ベース21を昇降させるベース昇降手段100は、その具体的な構成を特に限定されない。例えば、略垂直方向に動作する垂直動作機構によって支持ベース21を直接昇降させることもできる。しかし、この場合には、押付手段22(スイングレバー22a,22b)による押圧力(ワークW2を支持ベース21に対して押圧する力)が垂直動作機構に直接伝わってしまい、垂直動作機構に負荷がかかりすぎるおそれがある。垂直動作機構が押付手段22の押圧力に耐え切れなかった場合には、支持ベース21が上下方向に動いてしまい、ワークW2の上下方向における位置精度を高めにくくなるおそれもある。
【0029】
このため、ベース昇降手段100では、略水平方向に動作するアクチュエータ(水平動作機構)110と、アクチュエータ110による略水平方向の動作を上下方向の動作に変換する動作方向変換機構120とを設けている。これにより、押付手段22の押圧力がアクチュエータ110に直接伝わらないようにして、アクチュエータ110にかかる負荷を軽減することができる。また、上下方向におけるワークW2の位置精度を高く維持しやすい。
【0030】
アクチュエータ(水平動作機構)110の動作方向は、略水平方向であれば特に限定されない。アクチュエータ110の動作方向は、ワークW1の回転中心線L1に非平行であることが好ましい。これにより、回転中心線L1に平行な方向における非回転側保持手段20のサイズをコンパクトにすることができる。アクチュエータ110の動作方向は、ワークW1の回転中心線L1に略垂直であることがより好ましい。
【0031】
動作方向変換機構120は、略水平方向の動作を上下方向の動作に変換することができれば、その具体的な構成を特に限定されない。第1実施形態においては、動作方向変換機構120として、
図3に示すように、アクチュエータ110によって略水平方向に移動させることができる方向変換用カム121を採用している。方向変換用カム121の上面に設けられた案内面121aには、支持ベース21の下端部に設けられた被案内面21aが当接している。
【0032】
支持ベース21が上方位置(
図3)にある状態から、アクチュエータ110を駆動して方向変換用カム121をy軸方向正側(
図3の紙面に向かって左側)に移動させると、案内面121aに案内されて被案内面21aが下降する。これにより、支持ベース21を下方位置(
図4)に退避させることができる。反対に、支持ベース21が下方位置(
図4)にある状態から、方向変換用カム121をy軸方向負側(
図4の紙面に向かって右側)に移動させると、案内面121aに案内されて被案内面21aが上昇する。これにより、支持ベース21を上方位置(
図3)に移動させることができる。
【0033】
このように、動作方向変換機構120としてカムを用いたものを採用すると、動作方向変換機構120の構造をシンプルにすることができる。したがって、摩擦圧接装置1の製造コストを抑えることや、摩擦圧接装置1を故障しにくくすることができる。また、押付手段22の押圧力を案内面121aで受けることができるため、アクチュエータ110にかかる負荷を軽減することができるとともに、支持ベース21の上下方向における位置精度を高めることもできる。
【0034】
案内面121aは、被案内面21aを案内することができれば、その形状を特に限定されない。案内面121aは、水平方向に対して傾斜した平面状に形成することができる。この場合において、案内面121aの水平面に対する傾斜角度θ(
図4)は限定されない。ただし、傾斜角度θが小さすぎると、支持ベース21の昇降距離を確保しにくくなる。このため、傾斜角度θは、3°以上とすると好ましく、5°以上とするとより好ましい。一方、傾斜角度θが大きすぎると、アクチュエータ110にかかる負担を軽減しにくくなる。このため、角度θは、10°以下とすると好ましく、20°以下とするとより好ましい。第1実施形態においては、角度θを10°程度としている。
【0035】
3.第2実施形態
図5及び
図6は、第2実施形態の摩擦圧接装置における非回転側保持手段のうち、支持ベース21の周辺部を拡大した一部破断図である。
図5は、支持ベース21が上方位置にある状態を示しており、
図6は、支持ベース21が下方位置にある状態を示している。
図7は、
図5の非回転側保持手段20を、同図における平面A-Aで切断して示した断面図である。
【0036】
第2実施形態の摩擦圧接装置1では、動作方向変換機構120の構成が、第1実施形態の摩擦圧接装置1とは異なっている。すなわち、動作方向変換機構120は、
図5に示すように、アクチュエータ110に取り付けられたラック122と、ラック122に組み合わされたピニオン123(
図7も参照。)とを備えている。ピニオン123は、ベアリング124によって略垂直な(z軸に略平行な)回転中心線L
2回りに回転可能に保持されている。ピニオン123及びベアリング124は、ピニオンケース125内に収められている。これにより、ピニオン123は、位置を拘束されている。ピニオン123の内部には雌ねじ部123aが形成されている。雌ねじ部123aの中心線は、回転中心線L
2に略一致している。雌ねじ部123aには、雄ねじ部126が螺合されており、雄ねじ部126の上端部は、支持ベース21の下端部に接続されている。
【0037】
支持ベース21が上方位置(
図5)にある状態から、アクチュエータ110を駆動してラック122をy軸方向負側(
図5の紙面に向かって右側)に移動させると、ピニオン123が回転し、ピニオン123の内部の雌ねじ部123aも回転する。これにより、雌ねじ部123aに螺合された雄ねじ部126が下降し、支持ベース21を下方位置(
図6)に退避させることができる。反対に、支持ベース21が下方位置(
図6)にある状態から、ラック122をy軸方向正側(
図6の紙面に向かって左側)に移動させると、ピニオン123及び雌ねじ部123aが上記とは逆方向に回転し、雄ねじ部126が上昇して、支持ベース21を上方位置(
図5)に移動させることができる。
【0038】
このように、動作方向変換機構120としてラックアンドピニオンを用いたものを採用すると、支持ベース21を高い精度で位置決めすることができる。また、支持ベース21の位置を調節することも容易であるため、異なる形状のワークW2に対応することもできる。以上で説明した構成以外の構成については、第1実施形態と同様のものを採用することができる。
【0039】
4.第3実施形態
図8は、第3実施形態の摩擦圧接装置1の平面図である。
図8に示す摩擦圧接装置1は、回転側保持手段10と、第1非回転側保持手段40と、第2非回転側保持手段50とを備えている。この摩擦圧接装置1は、回転側ワークW
1と、ワークW
1の一側に配される第1非回転側ワークW
4(以下、単に「ワークW
4」と記載することがある。)と、ワークW
1の他側に配される第2非回転側ワークW
5(以下、単に「ワークW
5」と記載することがある。)とを摩擦圧接するために用いられる。
【0040】
回転側保持手段10は、ワークW1を回転中心線L1回りに回転可能な状態で保持するチャックであるが、具体的な構成を特に限定されない。第1非回転側保持手段40は、ワークW4を回転しない状態で保持するためのものであり、回転側保持手段10の一側に対向して配されている。第2非回転側保持手段50は、ワークW5を回転しない状態で保持するためのものであり、回転側保持手段10の他側に対向して配されている。
【0041】
第1非回転側保持手段40及び第2非回転側保持手段50は、それぞれ、第1実施形態における非回転側保持手段20(
図2)と同様に、ワークW
4,W
5を下側から支持する支持ベース41,51(
図8)と、支持ベース41,51に支持されたワークW
4,W
5を支持ベース41,51に対して押し付ける押付手段42,52と、摩擦圧接の完了後に支持ベース41,51を下方に退避させるベース昇降手段(図示省略)とを備えている。
【0042】
図8に示す摩擦圧接装置1は、また、回転側保持手段10と第1非回転側保持手段40とを回転中心線L
1に略平行な方向に相対的に接近又は離反させることができ、回転側保持手段10と第2非回転側保持手段50とを回転中心線L
1に略平行な方向に相対的に接近又は離反させることができる接近離反手段(図示省略)も備えている。
図8の摩擦圧接装置1における接近離反手段は、同図において両矢印D
4で示すように、第1非回転側保持手段40のみを移動させる。加えて、回転側保持手段10は、同図において両矢印D
Fで示すように、外力を受けた際に回転中心線L
1に略平行な方向に移動できる状態で支持されている。第2非回転側保持手段50は、摩擦圧接装置1の基台(図示省略)に固定されており、移動しない。
【0043】
摩擦圧接を行う際には、まず、回転側保持手段10、第1非回転側保持手段40及び第2非回転側保持手段50に、それぞれ、ワークW1、ワークW4及びワークW5を保持させる。この段階では、ワークW1、ワークW4及びワークW5は互いに離れている。続いて、接近離反手段で第1非回転側保持手段40を回転側保持手段10に接近させて、ワークW1とワークW4とを接触させる。接近離反手段は、ワークW1とワークW4とが接触した後も、第1非回転側保持手段40を移動させ続ける。これにより、ワークW4でワークW1を押し、回転側保持手段10を第2非回転側保持手段50に接近させて、ワークW1とワークW5とを接触させる。この状態でワークW1を回転させると、ワークW1とワークW4との接触面、及び、ワークW1とワークW5との接触面に摩擦熱が発生し、ワークW4、ワークW1及びワークW5を同時に接合することができる。ただし、摩擦圧接を行う際の具体的手順はこれに限定されない。例えば、ワークW1を回転させた状態で、ワークW1とワークW4、及び、ワークW1とワークW5とを接触させてもよい。また、ワークW4、ワークW1及びワークW5を同時に接合するのではなく、まずワークW1とワークW4とを接合し、続いてワークW1とワークW4とが接合されたものにワークW5を接合してもよい。接近離反手段は、上記の構成に限定されない。接近離反手段は、例えば、第1非回転側保持手段40及び第2非回転側保持手段50をそれぞれ移動させるものであってもよい。あるいは、回転側保持手段10及び第1非回転側保持手段40をそれぞれ移動させるものであってもよい。
【0044】
摩擦圧接の完了後には、第1非回転側保持手段40及び第2非回転側保持手段50をアンクランプし、接合後のワークを回転側保持手段10から取り外す。このとき、第1非回転側保持手段40及び第2非回転側保持手段50が回転側保持手段10に接近したままの状態では、ワークを回転側保持手段10から取り外しづらい。この点、
図8に示す摩擦圧接装置1では、支持ベース41,51をベース昇降手段(図示省略)によって下方に退避させて、接合後のワークに接触しないようにすることができる。したがって、接合後のワークを回転側保持手段10で保持した状態で、第1非回転側保持手段40及び第2非回転側保持手段50を回転側保持手段10から離反させることができる。これによって、回転側保持手段10をアンクランプする際の作業エリアが確保されるため、回転側保持手段10をアンクランプする作業が容易となる。また、接合ワークを回転側保持手段10から取り外す際に長手方向に移動させたとしても、ワークを傷つけにくくなる。さらに、第1及び第2実施形態と同様、接合ワークを損傷させることなく回転させることができるため、接合ワークを別の機械に移動させることなくバリ除去が可能である。以上で述べた構成以外の構成については、第1実施形態又は第2実施形態と同様のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 摩擦圧接装置
10 回転側保持手段
20 非回転側保持手段
21 支持ベース
22 押付手段
22a スイングレバー(押付手段)
22b スイングレバー(押付手段)
100 ベース昇降手段
110 アクチュエータ(水平動作機構)
120 動作方向変換機構
121 方向変換用カム
122 ラック
123 ピニオン
123a 雌ねじ部
126 雄ねじ部
W1 回転側ワーク
W2 非回転側ワーク
L1 回転中心線