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特開2023-31928二酸化炭素吸収還元溶液、二酸化炭素吸収還元装置、及び二酸化炭素吸収還元方法
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  • 特開-二酸化炭素吸収還元溶液、二酸化炭素吸収還元装置、及び二酸化炭素吸収還元方法 図1
  • 特開-二酸化炭素吸収還元溶液、二酸化炭素吸収還元装置、及び二酸化炭素吸収還元方法 図2
  • 特開-二酸化炭素吸収還元溶液、二酸化炭素吸収還元装置、及び二酸化炭素吸収還元方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031928
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収還元溶液、二酸化炭素吸収還元装置、及び二酸化炭素吸収還元方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/20 20060101AFI20230302BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230302BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20230302BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20230302BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20230302BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20230302BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230302BHJP
   C25B 3/07 20210101ALI20230302BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20230302BHJP
【FI】
B01J31/20 M
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 220
C25B3/26
C25B1/23
C25B9/00 G
C25B9/00 Z
C25B3/07
C01B32/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137715
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻内 達也
(72)【発明者】
【氏名】田島 英彦
(72)【発明者】
【氏名】田上 直人
(72)【発明者】
【氏名】石谷 治
(72)【発明者】
【氏名】宮路 雅彦
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
4G169
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA08
4D002DA21
4D002DA22
4D002DA24
4D002DA25
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA02
4D002EA07
4D002EA08
4D002FA10
4D002GA01
4D002GB08
4D020AA03
4D020BA03
4D020BA04
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020BC03
4D020CC12
4D020DA03
4D020DB07
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC01
4G146JC40
4G169AA06
4G169AA11
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC62A
4G169BC64A
4G169BC64B
4G169BC66A
4G169BE01B
4G169BE06A
4G169BE06B
4G169BE08A
4G169BE15A
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE41B
4G169BE42A
4G169BE42B
4G169CB02
4G169CB74
4G169CB81
4G169CC21
4G169CC29
4G169DA02
4K021AB25
4K021AC09
4K021BA02
4K021BA07
4K021BA10
4K021BA17
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA15
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素吸収還元用の触媒としての金属錯体の析出を抑制できる二酸化炭素吸収還元溶液、二酸化炭素吸収還元装置、及び二酸化炭素吸収還元方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素吸収還元溶液は、水及び水溶性溶媒の混合溶媒中に0.01~100mMの金属錯体を含み、金属錯体は、レニウム、マンガン、又は鉄のいずれかである中心金属と、中心金属に配位する配位子とを含み、配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含み、2つ以上の窒素原子含有複素環の少なくとも1つは、カルボキシ基又はヒドロキシ基を含む少なくとも1つの置換基を有する。金属錯体の中心金属がルテニウムの場合には、窒素原子含有複素環はカルボキシ基又はヒドロキシ基を含まなくてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び水溶性溶媒の混合溶媒中に0.01~100mMの金属錯体を含む二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記金属錯体は、
レニウム、マンガン、又は鉄のいずれかである中心金属と、
前記中心金属に配位する配位子と
を含み、
前記配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含み、前記2つ以上の窒素原子含有複素環の少なくとも1つは、カルボキシ基又はヒドロキシ基を含む少なくとも1つの置換基を有する二酸化炭素吸収還元溶液。
【請求項2】
前記配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含み、前記2つ以上の窒素原子含有複素環の少なくとも1つは、少なくとも1つのヒドロキシメチル基又はヒドロキシエチル基又はカルボキシ基である、請求項1に記載の二酸化炭素吸収還元溶液。
【請求項3】
水及び水溶性溶媒の混合溶媒中に0.01~100mMの金属錯体を含む二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記金属錯体は、
ルテニウムと、
ルテニウムに配位する配位子と
を含み、
前記配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含む二酸化炭素吸収還元溶液。
【請求項4】
前記水溶性溶媒は、水酸基を有する有機化合物を含む液体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収還元溶液。
【請求項5】
前記有機化合物は、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、又は2-プロピルアルコールである、請求項4に記載の二酸化炭素吸収還元溶液。
【請求項6】
前記有機化合物はアルカノールアミンである、請求項4に記載の二酸化炭素吸収還元溶液。
【請求項7】
前記混合溶媒は、無機炭酸塩、無機水酸化物又は無機塩を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収還元溶液。
【請求項8】
前記水溶性溶媒はアミノ酸を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収還元溶液。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収還元溶液を収容する電気分解装置を備える二酸化炭素吸収還元装置。
【請求項10】
二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収還元溶液を電気分解装置内に供給するための供給ラインと、
前記電気分解装置内から前記二酸化炭素吸収還元溶液が流出する流出ラインと
を備える、請求項9に記載の二酸化炭素吸収還元装置。
【請求項11】
二酸化炭素を含むガスと前記二酸化炭素吸収還元溶液とを接触させて該二酸化炭素吸収還元溶液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔をさらに備え、
前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収還元溶液は前記供給ラインを介して前記電気分解装置内に供給され、前記流出ラインを介して前記電気分解装置内から流出した前記二酸化炭素吸収還元溶液は、前記吸収塔に供給されて前記ガスと接触する、請求項10に記載の二酸化炭素吸収還元装置。
【請求項12】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素回収装置において回収された二酸化炭素を前記電気分解装置に収容された前記二酸化炭素吸収還元溶液に供給するガス供給ラインと
を備える、請求項9に記載の二酸化炭素吸収還元装置。
【請求項13】
前記二酸化炭素回収装置は、
二酸化炭素を含む前記ガスと吸収液とを接触させて該吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、
二酸化炭素を吸収した前記吸収液から二酸化炭素を放出する再生塔と
を備え、
前記再生塔で放出された二酸化炭素は前記ガス供給ラインを介して前記電気分解装置に収容された前記二酸化炭素吸収還元溶液に供給される、請求項12に記載の二酸化炭素吸収還元装置。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収還元溶液に二酸化炭素を供給するステップと、
二酸化炭素を供給された前記二酸化炭素吸収還元溶液を電気分解するステップと
を含む二酸化炭素還元方法。
【請求項15】
前記二酸化炭素吸収還元溶液を電気分解することにより一酸化炭素又はギ酸の少なくとも一方が生成される、請求項14に記載の二酸化炭素還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素吸収還元溶液、二酸化炭素吸収還元装置、及び二酸化炭素吸収還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントや化学プラント等において化石燃料を燃焼することで大量の二酸化炭素が排出され、地球温暖化の一因となっている。このため、二酸化炭素を回収して有効利用したり、二酸化炭素を有価物に変換して利用したりする炭素循環プロセスに注目が集まっている。二酸化炭素を有価物に変換する方法として、電気化学的な還元や光エネルギーを活用した光電気化学的な還元等が挙げられる。このような電気化学的及び光電気化学的な還元には、触媒として金属錯体を使用することができる。このような触媒を使用した二酸化炭素の還元方法が、例えば非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】A.Nakada et al.“Selective Electrocatalysis of a Water-Soluble Rhenium(I) Complex for CO2 Reduction Using Water As an Electron Donor” ACS.Catal.2018,8,p354-363
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二酸化炭素を含むガスには水分が存在していることが多く、触媒である金属錯体の電解質溶液に水分を含むガスが供給されると、金属錯体が非水溶性である場合には金属錯体が水に溶解しないので析出してしまうことが問題となる。非特許文献1に記載の方法では、このような金属錯体の析出を防ぐ目的で、電解質溶液中の金属錯体の濃度を0.5mMといった低濃度に抑えており、金属錯体がこのような低濃度であるために二酸化炭素の還元効率が低い問題がある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、二酸化炭素吸収還元用の触媒としての金属錯体の析出を抑制できる二酸化炭素吸収還元溶液、二酸化炭素吸収還元装置、及び二酸化炭素吸収還元方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、水及び水溶性溶媒の混合溶媒中に0.01~100mMの金属錯体を含む二酸化炭素吸収還元溶液であって、前記金属錯体は、レニウム、マンガン、又は鉄のいずれかである中心金属と、前記中心金属に配位する配位子とを含み、前記配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含み、前記2つ以上の窒素原子含有複素環の少なくとも1つは、カルボキシ基又はヒドロキシ基を含む少なくとも1つの置換基を有する。
【0007】
また、本開示に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、水及び水溶性溶媒の混合溶媒中に0.01~100mMの金属錯体を含む二酸化炭素吸収還元溶液であって、前記金属錯体は、ルテニウムと、ルテニウムに配位する配位子とを含み、前記配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の二酸化炭素吸収還元溶液によれば、水及び水溶性溶媒の混合溶媒に二酸化炭素吸収還元用の触媒としての水溶性の金属錯体を溶解させることにより、金属錯体の析出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る二酸化炭素吸収還元装置の構成模式図である。
図2】本開示の変形例に係る二酸化炭素吸収還元装置の構成模式図である。
図3】本開示の別の変形例に係る二酸化炭素吸収還元装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態による二酸化炭素吸収還元溶液について、図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
<本開示の一実施形態に係る二酸化炭素吸収還元溶液>
本開示の一実施形態に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、電気分解の電解液として使用されるものであり、電解液に供給された二酸化炭素が電気分解により一酸化炭素やギ酸のような有価物に還元される。この二酸化炭素吸収還元溶液は、水及び水溶性溶媒の混合溶媒中に金属錯体を含んでいる。混合溶媒中の金属錯体の濃度は、本願発明者らのうちの1人の先行研究に基づく文献(特許第6615175号公報)に開示された0.01~100mMとする。
【0012】
混合溶媒における水溶性溶媒の濃度は、1質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上40質量%以下が最も好ましい。
【0013】
金属錯体は、下記分子構造(1)又は(2)で表されるものを使用可能である。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
分子構造(1)において、金属錯体の中心金属であるMは、レニウム、マンガン、又は鉄のいずれかである。分子構造(1)及び(2)において、金属錯体は中心金属(M及びルテニウム)の配位子として、少なくとも2つのカルボニル基と、少なくとも2つの窒素原子含有複素環A及びBと、配位子X及びYとを含んでいる。配位子X及びYのそれぞれについて限定はしないが、鎖状又は環状のアルキル基や、酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲンのいずれかを含む官能基等の任意の官能基であってもよく、カルボニル基又は窒素原子含有複素環であってもよく、水やヒドロキシ基であってもよい。
【0017】
少なくとも2つの窒素原子含有複素環はそれぞれ同じ構造を有してもよいし、異なる構造を有してもよい。また、分子構造(1)で表される金属錯体の2つの窒素原子含有複素環A及びBのうちの少なくとも1つは官能基として、ヒドロキシ基を含む置換基(-R-OH/-R’-OH)を有している。分子構造(1)では窒素原子含有複素環A及びBのいずれもヒドロキシ基を含む置換基を有しているが、いずれか1つの窒素原子含有複素環がヒドロキシ基を含む置換基を有する構造であってもよい。窒素原子を含む3つ以上の複素環を有する場合には、少なくとも1つの窒素原子含有複素環がヒドロキシ基を含む置換基を有する構造であってもよい。ヒドロキシ基を含む置換基を有することにより、分子構造(1)で表される金属錯体は水溶性の性質を有するようになる。ただし、ヒドロキシ基を含む置換基を有する構造で炭素原子の数が多くなると金属錯体に水溶性の性質を与えにくくなるため、ヒドロキシ基を含む置換基としてヒドロキシメチル基又はヒドロキシエチル基又はカルボキシ基が好ましい。尚、中心金属をルテニウムとする分子構造(2)で表される金属錯体は、窒素原子含有複素環A及びBがヒドロキシ基を含む置換基を含まなくても水溶性の性質を有するが、分子構造(2)で表される金属錯体においても、窒素原子含有複素環A及びBの少なくとも1つがヒドロキシ基を含む置換基を有してもよい。
【0018】
水溶性溶媒は、水酸基やカルボキシル基を有する有機化合物を含む液体である。このような有機化合物として、アルコール類、グリコール類、フェノール類、フェノール誘導体、アルカノールアミン類、アミノ酸類等を挙げることができる。水酸基やカルボキシル基を有する有機化合物であっても炭素数が多くなると水溶性が低下するので、炭素数の少ない物質が好ましい。例えばアルコール類では、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、又は2-プロピルアルコールが好ましい。
【0019】
アルカノールアミン類は、二酸化炭素を吸収する特性を有するため、水溶性溶媒としてアルカノールアミン類を使用することにより、二酸化炭素を効率的に還元することができる。尚、アルカノールアミン類は、1級アミン、2級アミン、3級アミンの構造で分類でき、それぞれの構造のアミンで二酸化炭素を吸収する能力に差はあるものの、他の有機化合物に比べて二酸化炭素を吸収する性質が高いので、どの構造のアルカノールアミンを使用してもよい。
【0020】
アミノ酸類の例として、限定はしないがグリシンやアラニン等を使用することができる。これらは常温で固体であるので、水又は他の液体の有機化合物に溶解させる形で使用することになる。
【0021】
混合溶媒は、無機炭酸塩、無機水酸化物又は無機塩を含むことが好ましい。無機炭酸塩としては例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等が使用可能である。無機水酸化物としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が使用可能である。無機塩としては例えば、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等が使用可能である。混合溶媒にこのような塩類が存在しないと、0.01~100mM金属錯体だけでは、二酸化炭素吸収還元溶液のイオン伝導度が低く、電解反応が生じにくいおそれがある。これに対し、混合溶媒にこのような塩類が存在すると、二酸化炭素吸収還元溶液中の二酸化炭素の電気分解による還元反応を進行させるのに必要なイオン伝導度を維持することができる。
【0022】
<本開示の一実施形態に係る二酸化炭素吸収還元装置>
図1に示されるように、本開示の一実施形態に係る二酸化炭素吸収還元装置1は、上述した二酸化炭素吸収還元溶液2を収容する電気分解装置3を備えている。電気分解装置3内は、隔膜4により第1室3aと第2室3bとに区画されている。第1室3a内の二酸化炭素吸収還元溶液2に浸漬するように陰極5が設けられるとともに、第2室3b内の二酸化炭素吸収還元溶液2に浸漬するように陽極6が設けられている。陰極5及び陽極6はそれぞれ、直流電源7に電気的に接続されている。
【0023】
電気分解装置3は、図1に示されるような構成、すなわち、電解槽内の二酸化炭素吸収還元溶液2に陰極5及び陽極6がそれぞれ浸漬された構成に限定するものではない。その他の構成の例としては、電解槽と、電解槽に電気的に接続された電源と、電解槽に液体又は気体の反応物を供給する配管と、生成物を排出するための配管とを備えるものでもよい。別の例としては、電解槽が、陽極部と、陰極部と、電解質部と、陽極端子及び陰極端子を備えた電解槽容器とで構成され、電解槽内に、電解質部を介して、陽極端子に電気的に接続された陽極部と、陰極端子に電気的に接続された陰極部とが対向するように配置されているものでもよい。さらに別の例としては、陽極部及び陰極部が単一部材で構成され、給電基体上に、電気分解反応を促進する触媒電極層を設けたものでもよい。さらに別の例としては、陽極部と陰極部との間の電解質部に、陽極部の生成物と陰極部の生成物とを分離するための隔膜を配置したものであってもよい。この隔膜には、電解液が浸透した多孔質膜やイオン透過性の非多孔質膜等を用いることができる。さらに別の例としては、陽極部及び陰極部と隔膜とが離間して配置されるか、又は、接触するように配置され、一体となるように両者を接合した構成であってもよい。さらに別の例としては、電極(陰極5及び陽極6)とイオン交換膜とが接合した電極接合体膜を有するものであってもよい。
【0024】
二酸化炭素吸収還元装置1の動作については後述するが、二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解する二酸化炭素が電気分解により還元されて、第1室3aでは一酸化炭素又はギ酸の少なくとも一方が生成され、第2室3bでは酸素が生成される。二酸化炭素吸収還元装置1には、一酸化炭素及びギ酸のそれぞれが第1室3aから流出する第1流出ライン8a及び8bと、酸素が第2室3bから流出する第2流出ライン9とが接続されている。第1室3aで生成された一酸化炭素が第1室3aから流出できるように、第1流出ライン8aは第1室3aの気相部分に連通するように設けられる。第1室3aで生成されたギ酸を含む二酸化炭素吸収還元溶液2が第1室3aから流出できるように、第1流出ライン8bは第1室3aの液相部分に連通するように設けられ、第1流出ライン8bには、第1室3aから流出した二酸化炭素吸収還元溶液2からギ酸を分離する分離装置10、例えば蒸留装置や膜分離装置等が設けられ、分離装置10においてギ酸が分離された二酸化炭素吸収還元溶液2を第1室3aに戻す戻りライン11を設けてもよい。尚、第1室3aで一酸化炭素のみが生成され、ギ酸が生成されない場合には、分離装置10を設ける必要はない。
【0025】
二酸化炭素を溶解させた二酸化炭素吸収還元溶液2を電気分解装置3内に供給して電気分解する場合や、電気分解装置3内に供給した二酸化炭素吸収還元溶液2に二酸化炭素ガスを含むガスを供給して二酸化炭素を溶解させ、その後に分解する場合のように、二酸化炭素をバッチ式に還元する時は、二酸化炭素吸収還元装置1は上記構成で十分である。しかし、二酸化炭素を電気分解装置3に連続的に供給して連続的な二酸化炭素の還元を行うためには、第1室3aに二酸化炭素が溶解した二酸化炭素吸収還元溶液2を供給するための供給ライン12と、第1室3aから二酸化炭素吸収還元溶液2が流出するための流出ライン13とがそれぞれ第1室3aに連通するように設ける必要がある。
【0026】
二酸化炭素を二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解させる装置として、限定はしないが例えば、二酸化炭素を含むガスと吸収液としての二酸化炭素吸収還元溶液2とが気液接触するように構成された吸収塔14を設けることができる。吸収塔14には、二酸化炭素を含むガス、例えば燃焼ガス等を吸収塔14に供給するためのガス供給ライン15と、二酸化炭素が除去されたガスが吸収塔14から流出するためのガス流出ライン16とが接続されている。供給ライン12は吸収塔14の塔底に接続され、ガス供給ライン15が吸収塔14に接続される位置よりも上方において流出ライン13は吸収塔14に接続されている。供給ライン12及び流出ライン13にはそれぞれ、ポンプ17及び18が設けられている。
【0027】
上述したような二酸化炭素をバッチ式に還元する構成の二酸化炭素吸収還元装置1について、いくつかの形態を図2及び3に示す。図2に示される二酸化炭素吸収還元装置1は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置20として、二酸化炭素を含むガスと吸収液とが気液接触するように構成された吸収塔14と、吸収塔14において二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を放出する再生塔21とを備えている。図1に示される二酸化炭素吸収還元装置1とは異なり、吸収塔14で使用される吸収液は、二酸化炭素吸収還元溶液2とは別の吸収液である。吸収塔14と再生塔21とは供給ライン12によって接続されている。
【0028】
再生塔21には、熱媒体(例えば水蒸気)が流通する熱媒体流通路22及び再生塔21内の吸収液が再生塔21から流出して再生塔21に戻るように循環する吸収液循環通路24を含む熱交換器(リボイラー)23が設けられ、熱媒体流通路22を流通する熱媒体と吸収液循環通路24を流通する吸収液とが熱交換するように構成されている。再生塔21の塔底には、吸収液を抜き出す抜き出しライン25が接続されている。再生塔21の塔頂には、一端が電気分解装置3の第1室3aの底部に接続されるガス供給ライン26の他端が接続され、ガス供給ライン26には圧縮機27が設けられている。
【0029】
二酸化炭素回収装置20は、吸収塔14及び再生塔21を含む上述した構成に限定するものではない。二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を電気分解装置3の第1室3a内の二酸化炭素吸収還元溶液2に供給できるものであれば、どのような構成であってもよい。例えば、図3に示される二酸化炭素吸収還元装置1は、二酸化炭素回収装置20として、二酸化炭素を分離可能な膜分離装置30を備えている。膜分離装置30には、二酸化炭素が分離されたガスが膜分離装置30から流出するためのガス流出ライン16が接続されている。分離された二酸化炭素を第1室3a内に供給できるように、膜分離装置30と第1室3aの底部とがガス供給ライン26によって接続されている。ガス供給ライン26には圧縮機27が設けられている。
【0030】
<本開示の一実施形態に係る二酸化炭素吸収還元装置の動作>
次に、二酸化炭素吸収還元溶液2の動作(二酸化炭素吸収還元方法)を図1に基づいて説明する。吸収塔14にはガス供給ライン15を介して、二酸化炭素を含むガス、例えば図示しない燃焼設備から排出された燃焼ガスが供給される。吸収塔14に供給された燃焼ガスは吸収塔14内を上昇する。また、吸収塔14には流出ライン13を介して、吸収液としての二酸化炭素吸収還元溶液2が供給される。吸収塔14に供給された吸収液は吸収塔14内を落下する。吸収塔14内において、上昇する燃焼ガスと落下する吸収液とが気液接触することにより、燃焼ガスに含まれる二酸化炭素が吸収液に吸収され、二酸化炭素が除去された燃焼ガスは、ガス流出ライン16を介して吸収塔14から流出する。二酸化炭素を吸収した吸収液は吸収塔14内の下部に滞留するが、ポンプ17によって吸収塔14から吸収液が抜き出されて、供給ライン12を介して電気分解装置3の第1室3aに供給される。
【0031】
電気分解装置3において直流電源7が陰極5及び陽極6間に電圧を印加すると、第1室3aでは、二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解する金属錯体の触媒作用により、下記半反応式(A)及び(B)のように一酸化炭素又はギ酸の少なくとも一方が生成する。一方、第2室3bでは下記半反応式(C)のように酸素が生成する。
CO+HO+2e→CO+2OH (A)
CO+2HO+2e→HCOOH+2OH (B)
2OH→(1/2)O+HO+2e (C)
【0032】
尚、半反応式(A)又は(B)のどちらか一方のみが生じることは稀であり、通常は両反応が同時に生じ、両反応の生じる割合が金属錯体の種類によって変化する。すなわち、使用される金属錯体の種類に応じて、一酸化炭素及びギ酸の生成割合が異なることになる。
【0033】
第1室3aで生成した一酸化炭素は、第1流出ライン8aを介して第1室3aから流出し、一酸化炭素を使用する設備又は一酸化炭素の貯蔵設備等に送られる。第1室3aで生成したギ酸は、二酸化炭素吸収還元溶液2と共に第1流出ライン8bを介して第1室3aから流出し、分離装置10において二酸化炭素吸収還元溶液2からギ酸が分離されて、ギ酸を使用する設備又はギ酸の貯蔵設備等に送られる。分離装置10においてギ酸が分離された二酸化炭素吸収還元溶液2は、戻りライン11を介して第1室3aに戻すことができる。第2室3bで生成した酸素は、第2流出ライン9を介して第2室3bから流出し、酸素を使用する設備又は酸素の貯蔵設備等に送られる。
【0034】
ポンプ18によって、第1室3a内の二酸化炭素吸収還元溶液2の一部が流出ライン13を介して第1室3aから流出する。流出ライン13を流通する二酸化炭素吸収還元溶液2は、吸収塔14に供給されて吸収塔14内を落下し、吸収液として吸収塔14内を上昇する燃焼ガスと気液接触する。
【0035】
このように、水及び水溶性溶媒の混合溶媒に二酸化炭素吸収還元用の触媒としての水溶性の金属錯体を溶解させることにより、金属錯体の析出を抑制することができる。これにより、二酸化炭素の還元効率を向上することができる。尚、このような金属錯体の析出を抑制できる作用効果については、次の実施例に基づいて説明する。
【0036】
図2に示される二酸化炭素吸収還元装置1では、吸収塔14において二酸化炭素を含むガスと吸収液とが気液接触することにより、吸収液が二酸化炭素を吸収する。二酸化炭素を吸収した吸収液は供給ライン12を介して再生塔21に供給される。再生塔21において、吸収液は熱交換器23で加熱されることで、二酸化炭素を放出する。放出された二酸化炭素は、圧縮機27によってガス供給ライン26を介して第1室3a内に供給される。第1室3内に供給された二酸化炭素の少なくとも一部は、二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解する。ある程度の量の二酸化炭素を二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解させた後、直流電源7が陰極5及び陽極6間に電圧を印加することにより、上述の原理によって、二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解した二酸化炭素が還元される。
【0037】
図3に示される二酸化炭素吸収還元装置1では、膜分離装置30において、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素が分離される。分離された二酸化炭素は、圧縮機27によってガス供給ライン26を介して第1室3a内に供給される。第1室3内に供給された二酸化炭素の少なくとも一部は、二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解する。ある程度の量の二酸化炭素を二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解させた後、直流電源7が陰極5及び陽極6間に電圧を印加することにより、上述の原理によって、二酸化炭素吸収還元溶液2に溶解した二酸化炭素が還元される。
【実施例0038】
下記金属錯体(3)及び(4)に対して、析出の有無を確かめる実験を行った。尚、金属錯体(3)は分子構造(1)に相当するが、金属錯体(4)は窒素原子含有複素環にヒドロキシアルキル基が含まれていないので、分子構造(1)に相当しない。
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
下記表1に示されるように、液体の各種有機化合物に金属錯体(3)を溶解させた実施例1~5と、金属錯体(4)を溶解させた比較例1及び2並びに金属錯体(3)を溶解させた比較例3とを、所定濃度の混合液、すなわち、水と水溶性溶媒との混合溶媒を準備して、各金属錯体を各実施例又は各比較例の目標濃度となるように添加し、スターラーで攪拌しながら、金属錯体の溶解可否を確認した。尚、実施例1~5及び比較例1には、水がtrace量含まれている。各溶液において金属錯体が全て溶解したことを確認した後、各溶液に二酸化炭素含有ガス(二酸化炭素濃度は10vol%)を吹き込み、錯体の析出の有無を確認した。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1~5では全て、金属錯体の析出は見られなった。これに対し、水溶性の性質を有さない金属錯体(4)を使用した比較例1では、有機化合物に水が混入しないことから、金属錯体の析出は見られなかったものの、有機化合物に水が混入し得る条件の比較例2では金属錯体の析出が見られた。しかも、比較例2は、金属錯体が析出しにくいように金属錯体の濃度を低くしたにもかかわらず金属錯体の析出が見られた。金属錯体(3)を使用した実施例3では金属錯体の析出が見られた。これらの結果から、本開示の二酸化炭素吸収還元溶液を使用すれば、金属錯体の析出を抑制することができることがわかった。
【0044】
実施例1のように水及びエタノールが共存する条件下において、形成される各錯体の平衡反応により、Reを中心金属とする錯体は下記のように、合計6種類の錯体へと変化する。これにより、金属錯体の析出が抑制・防止できている。このメカニズムに基づくと、水及び水溶性溶媒が共存する条件下において、水溶性の性質を有する金属錯体を用いることで、金属錯体は析出することなく二酸化炭素を付加することができる。
【0045】
【化5】
【0046】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0047】
[1]一の態様に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、
水及び水溶性溶媒の混合溶媒中に0.01~100mMの金属錯体を含む二酸化炭素吸収還元溶液(2)であって、
前記金属錯体は、
レニウム、マンガン、又は鉄のいずれかである中心金属と、
前記中心金属に配位する配位子と
を含み、
前記配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含み、前記2つ以上の窒素原子含有複素環の少なくとも1つは、カルボキシ基又はヒドロキシ基を含む少なくとも1つの置換基を有する。
【0048】
本開示の二酸化炭素吸収還元溶液によれば、水及び水溶性溶媒の混合溶媒に二酸化炭素吸収還元用の触媒としての水溶性の金属錯体を溶解させることにより、金属錯体の析出を抑制することができる。
【0049】
[2]別の態様に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、[1]の二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含み、前記2つ以上の窒素原子含有複素環の少なくとも1つは、少なくとも1つのヒドロキシメチル基又はヒドロキシエチル基又はカルボキシ基である。
【0050】
中心金属に配位する配位子の窒素原子含有複素環の側鎖の端末にヒドロキシ基が存在することにより金属錯体が水溶性の性質を示すが、炭素鎖の炭素数が多くなると、金属錯体が水溶性の性質を示さなくなる。これに対し、上記[2]の構成のように、ヒドロキシアルキル基がヒドロキシメチル基又はヒドロキシエチル基又はカルボキシ基であれば、金属錯体が水溶性の性質を示すようになり、金属錯体の析出を抑制することができる。
【0051】
[3]一の態様に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、
水及び水溶性溶媒の混合溶媒中に0.01~100mMの金属錯体を含む二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記金属錯体は、
ルテニウムと、
ルテニウムに配位する配位子と
を含み、
前記配位子は、2つ以上のカルボニル基及び2つ以上の窒素原子含有複素環を含む。
【0052】
本開示の二酸化炭素吸収還元溶液によれば、水及び水溶性溶媒の混合溶媒に二酸化炭素吸収還元用の触媒としての水溶性の金属錯体を溶解させることにより、金属錯体の析出を抑制することができる。
【0053】
[4]別の態様に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、[1]~[3]のいずれかの二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記水溶性溶媒は、水酸基を有する有機化合物を含む液体である。
【0054】
このような構成によれば、水溶性の金属錯体が混合溶媒中に溶解するので、金属錯体の析出を抑制することができる。
【0055】
[5]さらに別の態様に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、[4]の二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記有機化合物は、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、又は2-プロピルアルコールである。
【0056】
このような構成によれば、水溶性の金属錯体が混合溶媒中に溶解するので、金属錯体の析出を抑制することができる。
【0057】
[6]さらに別の態様に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、[4]の二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記有機化合物はアルカノールアミンである。
【0058】
このような構成によれば、二酸化炭素を吸収可能なアルカノールアミンを水溶性溶媒に使用することにより、二酸化炭素を効率的に還元することができる。
【0059】
[7]さらに別の態様に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、[1]~[6]のいずれかの二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記混合溶媒は、無機炭酸塩、無機水酸化物又は無機塩を含む。
【0060】
このような構成によれば、混合溶媒に無機炭酸塩、無機水酸化物又は無機塩を添加することにより、電気分解による二酸化炭素吸収還元溶液中の二酸化炭素の還元反応を進行させるのに必要なイオン伝導度を維持することができる。
【0061】
[8]さらに別の態様に係る二酸化炭素吸収還元溶液は、[1]~[7]のいずれかの二酸化炭素吸収還元溶液であって、
前記水溶性溶媒はアミノ酸を含む。
【0062】
このような構成によれば、水溶性の金属錯体が混合溶媒中に溶解するので、金属錯体の析出を抑制することができる。
【0063】
[9]一の態様に係る二酸化炭素吸収還元装置は、
[1]~[8]のいずれかの二酸化炭素吸収還元溶液(2)を収容する電気分解装置(3)を備える。
【0064】
本開示の二酸化炭素吸収還元装置によれば、水及び水溶性溶媒の混合溶媒に二酸化炭素吸収還元用の触媒としての水溶性の金属錯体を溶解させることにより、金属錯体の析出を抑制することができる。これにより、二酸化炭素の還元効率を向上することができる。
【0065】
[10]別の態様に係る二酸化炭素吸収還元装置は、[9]の二酸化炭素吸収還元装置であって、
二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収還元溶液を電気分解装置(3)内に供給するための供給ライン(12)と、
前記電気分解装置(3)内から前記二酸化炭素吸収還元溶液(2)が流出する流出ライン(13)と
を備える。
【0066】
このような構成によれば、二酸化炭素吸収還元を継続的に行うことができる。
【0067】
[11]さらに別の態様に係る二酸化炭素吸収還元装置は、[10]の二酸化炭素吸収還元装置であって、
二酸化炭素を含むガスと前記二酸化炭素吸収還元溶液とを接触させて該二酸化炭素吸収還元溶液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔(14)をさらに備え、
前記吸収塔(14)で二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収還元溶液は前記供給ライン(12)を介して前記電気分解装置(3)内に供給され、前記流出ライン(13)を介して前記電気分解装置(3)内から流出した前記二酸化炭素吸収還元溶液(2)は、前記吸収塔(14)に供給されて前記ガスと接触する。
【0068】
このような構成によれば、二酸化炭素を含むガスから回収した二酸化炭素を継続的に還元することができる。
【0069】
[12]さらに別の態様に係る二酸化炭素吸収還元装置は、[9]の二酸化炭素吸収還元装置であって、
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置(20)と、
前記二酸化炭素回収装置(20)において回収された二酸化炭素を前記電気分解装置(3)に収容された前記二酸化炭素吸収還元溶液(2)に供給するガス供給ライン(26)と
を備える。
【0070】
このような構成によれば、二酸化炭素を含むガスから回収した二酸化炭素をバッチ式に還元することができる。
【0071】
[13]さらに別の態様に係る二酸化炭素吸収還元装置は、[12]の二酸化炭素吸収還元装置であって、
前記二酸化炭素回収装置(20)は、
二酸化炭素を含む前記ガスと吸収液とを接触させて該吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔(14)と、
二酸化炭素を吸収した前記吸収液から二酸化炭素を放出する再生塔(21)と
を備え、
前記再生塔(21)で放出された二酸化炭素は前記ガス供給ライン(26)を介して前記電気分解装置(3)に収容された前記二酸化炭素吸収還元溶液(2)に供給される。
【0072】
このような構成によれば、二酸化炭素を含むガスから回収した二酸化炭素をバッチ式に還元することができる。
【0073】
[14]一の態様に係る二酸化炭素吸収還元方法は、
[1]~[8]のいずれかの二酸化炭素吸収還元溶液(2)に二酸化炭素を供給するステップと、
二酸化炭素を供給された前記二酸化炭素吸収還元溶液(2)を電気分解するステップと
を含む。
【0074】
本開示の二酸化炭素吸収還元方法によれば、水及び水溶性溶媒の混合溶媒に二酸化炭素吸収還元用の触媒としての水溶性の金属錯体を溶解させることにより、金属錯体の析出を抑制することができる。これにより、二酸化炭素の還元効率を向上することができる。
【0075】
[15]別の態様に係る二酸化炭素吸収還元方法は、[14]の二酸化炭素吸収還元方法であって、
前記二酸化炭素吸収還元溶液(2)を電気分解することにより一酸化炭素又はギ酸の少なくとも一方が生成される。
【0076】
このような方法によれば、二酸化炭素を還元して一酸化炭素又はギ酸の少なくとも一方を生成させることにより、二酸化炭素を有価物に変換して利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 二酸化炭素吸収還元装置
2 二酸化炭素吸収還元溶液
3 電気分解装置
12 供給ライン
13 流出ライン
14 吸収塔
20 二酸化炭素回収装置
21 再生塔
26 ガス供給ライン
図1
図2
図3