(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031932
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
A63B37/00 114
A63B37/00 116
A63B37/00 134
A63B37/00 138
A63B37/00 136
A63B37/00 140
A63B37/00 142
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137719
(22)【出願日】2021-08-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】393000847
【氏名又は名称】キャスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】谷本 佳亮
(57)【要約】
【課題】ポール打ちした場合に、他の打ち方をした場合よりも飛距離を向上させることが可能なゴルフボールを提供する。
【解決手段】ゴルフボール10では、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも第2H総容積が大きく、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々よりも第2V総容積が小さい関係と、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも第2H総容積が小さく、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々よりも第2V総容積が大きい関係と、の何れか一方が成り立つ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球状のキャビティをそれぞれ有する一組の金型により形成され、且つ前記一組の金型の合わせ面に相当する部分にパーティングラインが設けられたゴルフボールにおいて、
前記ゴルフボールの表面は、複数のディンプルから形成されるディンプルパターンを有し、
前記ゴルフボールの周方向のうち、前記パーティングラインと平行な方向を第1周方向とし、前記パーティングラインに直行する方向を第2周方向とすると、
前記ディンプルパターンは、前記第1周方向に並ぶ複数の前記ディンプルによって構成されるディンプル列を前記第2周方向に複数列有し、
前記ディンプルパターンは、該ディンプルパターンを前記第1周方向に等分割した複数個のディンプル群を有し、
前記ディンプル群の各々は、前記第2周方向に3分割されることで、第1H領域と、第2H領域と、第3H領域とに区画され、
前記第2H領域は、前記第1H領域と前記第3H領域との間に配置され、
前記第2H領域には、前記パーティングラインが配置され、
前記第2H領域に含まれる前記ディンプル列の個数の割合を1としたとき、前記第1H領域及び前記第3H領域の各々に含まれる前記ディンプル列の個数の割合は0.6~4.0であり、
前記ディンプル群の各々は、前記第1周方向に3分割されることで、第1V領域と、第2V領域と、第3V領域とに区画され、
前記第2V領域は、前記第1V領域と前記第3V領域との間に配置され、
前記第2V領域に含まれる前記ディンプルの総開口面積の割合を1としたとき、前記第1V領域及び前記第3V領域の各々に含まれる前記ディンプルの総開口面積の割合は0.85~1.15であり、
前記第1H領域に属する前記ディンプルの総容積を第1H総容積とし、前記第2H領域に属する前記ディンプルの総容積を第2H総容積とし、前記第3H領域に属する前記ディンプルの総容積を第3H総容積とし、前記第1V領域に属する前記ディンプルの総容積を第1V総容積とし、前記第2V領域に属する前記ディンプルの総容積を第2V総容積とし、前記第3V領域に属する前記ディンプルの総容積を第3V総容積とした場合、
前記第1H総容積及び前記第3H総容積の各々よりも前記第2H総容積が大きく、且つ前記第1V総容積及び前記第3V総容積の各々よりも前記第2V総容積が小さい関係と、
前記第1H総容積及び前記第3H総容積の各々よりも前記第2H総容積が小さく、且つ前記第1V総容積及び前記第3V総容積の各々よりも前記第2V総容積が大きい関係と、の何れか一方が成り立つ、ゴルフボール。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフボールにおいて、
前記パーティングラインは、前記ゴルフボールの第1半球と第2半球との間に配置され、
前記ディンプルパターンは、前記第1半球の頂点及び前記第2半球の頂点に配置される前記ディンプルである極地ディンプルを有し、前記極地ディンプルは、前記ディンプル群に含まれない、ゴルフボール。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴルフボールにおいて、
前記ディンプル群は、前記ディンプルパターンを前記第1周方向に5等分割して形成され、
前記第1H総容積及び前記第3H総容積の各々よりも前記第2H総容積が大きく、且つ第1V総容積及び前記第3V総容積の各々よりも前記第2V総容積が小さい関係が成り立つ、ゴルフボール。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のゴルフボールにおいて、
前記第2H領域では、前記ディンプルの全個数に対する、径が4.0mm以上である前記ディンプルの個数の比率が75%以上であり、
前記第1H領域及び前記第3H領域の各々では、前記ディンプルの全個数に対する、径が4.0mm未満である前記ディンプルの個数の比率が60%以上である、ゴルフボール。
【請求項5】
請求項4記載のゴルフボールにおいて、
前記ディンプルの径は3.0~5.0mmであり、
前記ゴルフボールの仮想球面から前記ディンプルの最深部までの深さは0.15~0.30mmであり、
前記ゴルフボールの全体に設けられた前記ディンプルの総容積は350~450mm3であり、
前記第2H総容積は、前記第1H総容積及び前記第3H総容積の各々よりも10%以上大きく、
前記第1V総容積及び前記第3V総容積の各々は、前記第2V総容積よりも9.5%以上大きい、ゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティングラインが設けられたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
半球状のキャビティをそれぞれ有する一組の金型を用いて形成されるゴルフボールが知られている。この種のゴルフボールでは、一組の金型の合わせ面に相当する部分にパーティングライン(シームともいう)が設けられる。このため、パーティングラインには、ディンプルが配置されないことが一般的である。
【0003】
上記のように、パーティングラインにディンプルが配置されていないゴルフボールでは、ポール打ちした場合と、シーム打ちした場合とで飛距離の差が生じ易い。ポール打ちとは、パーティングラインを通るゴルフボールの軸心がバックスピンの回転中心軸となる打撃方法である。シーム打ちとは、パーティングラインに直交するゴルフボールの軸心がバックスピンの回転中心軸となる打撃方法である。具体的には、ゴルフボールをシーム打ちした場合は、ポール打ちした場合よりも、ディンプルの効果が得られ難くなることから、飛距離が短くなる傾向にある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、ゴルフボールの表面に設けられるディンプルパターンを調整することにより、シーム打ちした場合の飛距離を、ポール打ちした場合の飛距離に近づけることが提案されている。すなわち、このゴルフボールでは、打撃位置に関わらず、飛距離が一定となるように、ディンプルパターンが調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多くのアマチュアプレーヤーは、ポール打ちした場合に限定して得られる飛距離であっても、一層長い飛距離が得られるゴルフボールを要望する傾向がある。つまり、シーム打ちした場合の飛距離を、ポール打ちした場合の飛距離に近づけることよりも、ポール打ちした場合に特化して優れた飛距離が得られるゴルフボールが望まれることがある。
【0007】
本発明は、ポール打ちした場合に、他の打ち方をした場合よりも飛距離を向上させることが可能なゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、半球状のキャビティをそれぞれ有する一組の金型により形成され、且つ前記一組の金型の合わせ面に相当する部分にパーティングラインが設けられたゴルフボールにおいて、前記ゴルフボールの表面は、複数のディンプルから形成されるディンプルパターンを有し、前記ゴルフボールの周方向のうち、前記パーティングラインと平行な方向を第1周方向とし、前記パーティングラインに直行する方向を第2周方向とすると、前記ディンプルパターンは、前記第1周方向に並ぶ複数の前記ディンプルによって構成されるディンプル列を前記第2周方向に複数列有し、前記ディンプルパターンは、該ディンプルパターンを前記第1周方向に等分割したディンプル群を有し、前記ディンプル群の各々は、前記第2周方向に3分割されることで、第1H領域と、第2H領域と、第3H領域とに区画され、前記第2H領域は、前記第1H領域と前記第3H領域との間に配置され、前記第2H領域には、前記パーティングラインが配置され、前記第2H領域に含まれる前記ディンプル列の個数の割合を1としたとき、前記第1H領域及び前記第3H領域の各々に含まれる前記ディンプル列の個数の割合は0.6~4.0であり、前記ディンプル群の各々は、前記第1周方向に3分割されることで、第1V領域と、第2V領域と、第3V領域とに区画され、前記第2V領域は、前記第1V領域と前記第3V領域との間に配置され、前記第2V領域に含まれる前記ディンプルの総開口面積の割合を1としたとき、前記第1V領域及び前記第3V領域の各々に含まれる前記ディンプルの総開口面積の割合は0.85~1.15であり、前記第1H領域に属する前記ディンプルの総容積を第1H総容積とし、前記第2H領域に属する前記ディンプルの総容積を第2H総容積とし、前記第3H領域に属する前記ディンプルの総容積を第3H総容積とし、前記第1V領域に属する前記ディンプルの総容積を第1V総容積とし、前記第2V領域に属する前記ディンプルの総容積を第2V総容積とし、前記第3V領域に属する前記ディンプルの総容積を第3V総容積とした場合、前記第1H総容積及び前記第3H総容積の各々よりも前記第2H総容積が大きく、且つ前記第1V総容積及び前記第3V総容積の各々よりも前記第2V総容積が小さい関係と、前記第1H総容積及び前記第3H総容積の各々よりも前記第2H総容積が小さく、且つ前記第1V総容積及び前記第3V総容積の各々よりも前記第2V総容積が大きい関係と、の何れか一方が成り立つ。
【発明の効果】
【0009】
このゴルフボールでは、上記のようにディンプルパターンが調整されることにより、ポール打ちした場合に、他の打ち方をした場合よりもディンプルの効果を良好に得ることができる。従って、このゴルフボールでは、ポール打ちした場合に、特に効果的に空気抵抗を低減させ且つ揚力を増加させて、飛距離を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るゴルフボールの外観図である。
【
図2】
図2は、実施例1及び実施例2のゴルフボールについて、ディンプル群に所属する各ディンプルの径と、第1極地ディンプルの径と、第2極地ディンプルの径と、をそれぞれのディンプルの配置に対応して示した説明図である。
【
図3】
図3は、実施例1のゴルフボールについて、ディンプル群に所属する各ディンプルの容積と、第1極地ディンプルの容積と、第2極地ディンプルの容積と、をそれぞれのディンプルの配置に対応して示した説明図である。
【
図4】
図4は、実施例2のゴルフボールについて、ディンプル群に所属する各ディンプルの容積と、第1極地ディンプルの容積と、第2極地ディンプルの容積と、をそれぞれのディンプルの配置に対応して示した説明図である。
【
図5】
図5は、実施例1の第1H領域、第2H領域、第3H領域の各々について、ディンプル径、ディンプル深さ、ディンプル容積、ディンプルの個数、個数の比率を示す図表である。
【
図6】
図6は、実施例2の第1H領域、第2H領域、第3H領域の各々について、ディンプル径、ディンプル深さ、ディンプル容積、ディンプルの個数、個数の比率を示す図表である。
【
図7】
図7は、比較例のゴルフボールについて、ディンプル群に所属する各ディンプルの径と、第1極地ディンプルの径と、第2極地ディンプルの径と、をそれぞれのディンプルの配置に対応して示した説明図である。
【
図8】
図8は、比較例のゴルフボールについて、ディンプル群に所属する各ディンプルの容積と、第1極地ディンプルの容積と、第2極地ディンプルの容積と、をそれぞれのディンプルの配置に対応して示した説明図である。
【
図9】
図9Aは、実施例1及び比較例のゴルフボールについて、第1打球テストを行った結果を示す図表である。
図9Bは、実施例1及び実施例2のゴルフボールについて、第2打球テストを行った結果を示す図表である。
【
図10】
図10Aは、実施例1のゴルフボールについて、ポール打ちした場合及びシーム打ちした場合の複数の飛行速度において、回転数を変化させた場合の抗力係数CDを示すグラフである。
図10Bは、実施例1のゴルフボールについて、ポール打ちした場合及びシーム打ちした場合の複数の飛行速度において、回転数を変化させた場合の揚力係数CLを示すグラフである。
【
図11】
図11Aは、実施例2のゴルフボールについて、ポール打ちした場合及びシーム打ちした場合の複数の飛行速度において、回転数を変化させた場合の抗力係数CDを示すグラフである。
図11Bは、実施例2のゴルフボールについて、ポール打ちした場合及びシーム打ちした場合の複数の飛行速度において、回転数を変化させた場合の揚力係数CLを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す本実施形態に係るゴルフボール10は、不図示ではあるが、一組の金型により形成される。一組の金型の各々は、半球状のキャビティを有する。このため、一組の金型が型閉じされたとき、球状のキャビティが形成される。この球状のキャビティにより球状のゴルフボール10が形成される。
【0012】
上記のように形成されるゴルフボール10には、一組の金型の合わせ面に相当する部分にパーティングラインPLが設けられる。なお、パーティングラインPLはシームとも称される。ゴルフボール10は、パーティングラインPLを挟む2個の半球を有する。以下では、これらの2個の半球のうちの一方を第1半球12ともいい、他方を第2半球14ともいう。また、第1半球12の頂点を第1極地点16ともいい、第2半球14の頂点を第2極地点18ともいう。
【0013】
ゴルフボール10の周方向のうち、パーティングラインPLと平行な方向を第1周方向とし、パーティングラインPLと直交する方向を第2周方向とする。ゴルフボール10の表面は、複数のディンプル20から形成されるディンプルパターン22を有している。ディンプルパターン22は、第2周方向に並ぶ複数のディンプル列24を有する。
【0014】
以下では、本実施形態に係るゴルフボール10について、実施例1、2のディンプルパターン22が設けられた例を説明する。実施例1、2では、合計372個のディンプル20からディンプルパターン22が形成される。なお、ゴルフボール10に設けられるディンプルパターン22は、実施例1、2には限定されない。実施例1、2の各々のディンプルパターン22の詳細については後述するが、
図2に示すように、実施例1と実施例2とでは互いのディンプル20の配置及び径は同じである。一方、
図3及び
図4に示すように、実施例1と実施例2とでは、互いのディンプル20の容積(深さ)が異なっている。
【0015】
図1に示すように、各ディンプル列24は、第1周方向に並ぶ複数のディンプル20から形成される。第2周方向において、パーティングラインPLの近くに配置されるディンプル列24は、第1極地点16の近くに配置されるディンプル列24及び第2極地点18の近くに配置されるディンプル列24の各々よりも、多くの個数のディンプル20から形成される。
【0016】
図2に示すように、実施例1、2では、
図1の第1極地点16及び第2極地点18の各々にもディンプル20が配置されている。第1極地点16に配置されたディンプル20を第1極地ディンプル26aともいう。また、第2極地点18に配置されたディンプル20を第2極地ディンプル26bともいう。さらに、第1極地ディンプル26aと第2極地ディンプル26bとを互いに区別しないような場合には、これらを総称して、極地ディンプル26ともいう。本実施形態では、ディンプルパターン22は、極地ディンプル26を有する。
【0017】
実施例1、2では、パーティングラインPLと第1極地ディンプル26aとの間に9個のディンプル列24が配置されている。また、パーティングラインPLと第2極地ディンプル26bとの間に9個のディンプル列24が配置されている。これらのディンプル列24の各々は、5の倍数からなる個数のディンプル20を有している。このため、極地ディンプル26を除くディンプルパターン22は、第1周方向に5等分割することができる。
【0018】
すなわち、ディンプルパターン22は、極地ディンプル26を除くディンプルパターン22を第1周方向に5等分割した5個のディンプル群を有する。
図1に示すように、ディンプル群同士を区分けする分割線Dは、ディンプル20の外周に沿って、ディンプル20を横切ることなく延在する。
図2に示すように、実施例1、2では、分割線Dは、第1極地ディンプル26a及び第2極地ディンプル26bを除くディンプル20の外側を、ディンプル20の外周に沿って延在する。
【0019】
ディンプル群の各々は、第2周方向に3分割されることで、第1H領域と、第2H領域と、第3H領域とに区画される。
図2~
図4では、第1H領域、第2H領域、第3H領域の各々を一点鎖線で示している。
【0020】
第2H領域は、第1H領域と第3H領域との間に配置される。また、第2H領域には、パーティングラインPLが配置される。第2H領域に含まれるディンプル列24の個数の割合を1としたとき、第1H領域及び第3H領域の各々に含まれるディンプル列24の個数の割合は0.6~4.0である。当該割合は1.7~2.0とすることがさらに好ましい。
【0021】
実施例1、2では、第2H領域は、合計4個のディンプル列24から構成される。具体的には、第2H領域は、パーティングラインPLを挟む2個のディンプル列24と、これらのディンプル列24の各々に、パーティングラインPLの反対側で隣接する2個のディンプル列24とを有する。このため、第2H領域は、第1半球12と第2半球14とに跨がって配置されている。
【0022】
第1H領域は、第1半球12に設けられる。第1H領域は、第2H領域に隣接するディンプル列24から第1極地ディンプル26aに隣接するディンプル列24までの合計7個のディンプル列24から構成される。第3H領域は、第2半球14に設けられる。第3H領域は、第2H領域に隣接するディンプル列24から第2極地ディンプル26bに隣接するディンプル列24までの合計7個のディンプル列24から構成される。
【0023】
従って、実施例1、2では、第2H領域のディンプル列24の個数の割合を1としたとき、第1H領域及び第3H領域の各々のディンプル列24の個数の割合は、1.75である。
【0024】
ディンプル群の各々は、第1周方向に3分割されることで、第1V領域と、第2V領域と、第3V領域とに区画される。
図2~
図4では、第1V領域と、第2V領域と、第3V領域との各々を太線で示している。
【0025】
第2V領域は、第1V領域と第3V領域との間に配置される。第2V領域に含まれるディンプル20の総開口面積の割合を1としたとき、第1V領域及び第3V領域の各々に含まれるディンプル20の総開口面積の割合は0.85~1.15である。当該割合は0.9~1.0とすることがさらに好ましい。また、第2V領域に含まれるディンプル20の個数の割合を1としたとき、第1V領域及び第3V領域の各々に含まれるディンプル20の個数の割合は0.85~1.15である。
【0026】
実施例1、2では、第2V領域の総開口面積(第2V領域の全ディンプル20の開口面積の合計値)は略100.9πmm2である。第1V領域の総開口面積(第1V領域の全ディンプル20の開口面積の合計値)は略98.3πmm2である。第3V領域の総開口面積(第3V領域の全ディンプル20の開口面積の合計値)は略97.0πmm2である。
【0027】
従って、実施例1、2では、第2V領域に含まれるディンプル20の総開口面積の割合を1としたとき、第1V領域に含まれるディンプル20の総開口面積の割合は0.97であり、第3V領域に含まれるディンプル20の総開口面積の割合は0.96である。
【0028】
実施例1、2では、第2V領域に設けられた全ディンプル20の個数は25個である。第1V領域に設けられた全ディンプル20の個数は25個である。第3V領域に設けられた全ディンプル20の個数は24個である。
【0029】
従って、実施例1、2では、第2V領域に含まれるディンプル20の個数の割合を1としたとき、第1V領域に含まれるディンプル20の個数の割合は1.0であり、第3V領域に含まれるディンプル20の個数の割合は0.96である。
【0030】
以下では、第1H領域に属するディンプル20の容積の合計値である総容積を第1H総容積という。ここでのディンプル20の容積は、ディンプル20のエッジに囲まれた平面とディンプル20の表面との間の容積である。同様に、第2H領域に属するディンプル20の総容積を第2H総容積という。第3H領域に属するディンプル20の総容積を第3H総容積という。第1V領域に属するディンプル20の総容積を第1V総容積という。第2V領域に属するディンプル20の総容積を第2V総容積という。第3V領域に属するディンプル20の総容積を第3V総容積という。
【0031】
実施例1、2では、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも第2H総容積が大きく、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々よりも第2V総容積が小さい関係が成り立つ。この場合、第2H領域では、ディンプル20の全個数に対する、径が4.0mm以上であるディンプル20の個数の比率が75%以上であることが好ましい。第1H領域及び第3H領域の各々では、ディンプル20の全個数に対する、径が4.0mm未満であるディンプル20の個数の比率が60%以上であることが好ましい。
【0032】
図5に示すように、実施例1、2の第2H領域では、ディンプル20の全個数に対する、径が4.0mm以上であるディンプル20の個数の比率は83.3%である。また、第1H領域及び第3H領域の各々では、ディンプル20の全個数に対する、径が4.0mm未満であるディンプル20の個数の比率が60.0%である。
【0033】
ディンプル20の径は3.0~5.0mmであることが好ましい。一層好ましいディンプル20の径は3.2~4.6mmである。ディンプル20の深さは0.15~0.30mmであることが好ましい。ここでのディンプル20の深さは、仮想球面(ディンプル20が無かったなら、ゴルフボール10の表面が存在したであろう球面)からディンプル20の最深部までの深さである。ゴルフボール10の全体に設けられたディンプル20の総容積は350~450mm3であることが好ましい。
【0034】
さらに、第2H総容積は、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも10%以上大きいことが好ましい。第1V総容積及び第3V総容積の各々は、第2V総容積よりも9.5%以上大きいことが好ましい。
【0035】
実施例1では、第1H総容積が25.1628mm3であり、第2H総容積が27.5318mm3であり、第3H総容積が25.2982mm3である。また、第1V総容積が27.1199mm3であり、第2V総容積が23.9657mm3であり、第3V総容積が26.9072mm3である。
【0036】
従って、実施例1では、第2H総容積は、第1H総容積よりも9.4%大きい。第2H総容積は、第3H総容積よりも8.8%大きい。第1V総容積は、第2V総容積よりも13.2%大きい。第3V総容積は、第2V総容積よりも12.3%大きい。
【0037】
実施例2では、第1H総容積が23.2520mm3であり、第2H総容積が27.5318mm3であり、第3H総容積が23.5668mm3である。また、第1V総容積が25.9941mm3であり、第2V総容積が22.5150mm3であり、第3V総容積が25.8415mm3である。
【0038】
従って、実施例2では、第2H総容積は、第1H総容積よりも18.4%大きい。第2H総容積は、第3H総容積よりも16.8%大きい。第1V総容積は、第2V総容積よりも15.5%大きい。第3V総容積は、第2V総容積よりも14.8%大きい。
【0039】
以下、実施例1と、実施例2と、比較例とを示し、本発明の効果を説明する。
図7及び
図8に示すように、比較例のゴルフボールに設けられたディンプルパターンは、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも第2H総容積が大きく、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々よりも第2V総容積が大きい。
【0040】
具体的には、比較例では、第1H総容積が24.0422mm3であり、第2H総容積が25.0038mm3であり、第3H総容積が23.8844mm3である。また、第1V総容積が22.9721mm3であり、第2V総容積が27.1847mm3であり、第3V総容積が22.7736mm3である。
【0041】
従って、比較例では、第2H総容積は、第1H総容積よりも4.0%大きい。第2H総容積は、第3H総容積よりも4.7%大きい。第2V総容積は、第1V総容積よりも18.3%大きい。第2V総容積は、第3V総容積よりも19.4%大きい。
【0042】
実施例1のディンプルパターン22を有するゴルフボール10と、比較例のディンプルパターンを有するゴルフボールとの各々に対して第1打球テストを行った。第1打球テストは、テスター(男性のアマチュアゴルファー)がドライバークラブ(1番ウッド)を使用して行った。具体的には、テスターは、シーム打ち及びポール打ちの両方の打撃方法により、実施例1のゴルフボール10及び比較例のゴルフボールの各々を打球した。なお、ポール打ちは、パーティングラインPLを通るゴルフボールの軸心がバックスピンの回転中心軸となる打撃方法である。シーム打ちは、パーティングラインPLに直交するゴルフボールの軸心がバックスピンの回転中心軸となる打撃方法である。
【0043】
第1打球テストでは、ゴルフボールの初速、打出角度、スピン数、最高到達点、キャリー(打出地点から落下地点までの距離)、トータル飛距離(打出地点から静止地点までの距離)をそれぞれ測定した。テスターのヘッドスピード(HS)は39m/sであった。第1打球テストは、実施例1のゴルフボール10及び比較例のゴルフボールの各々に対して、同様の条件で5回行った。5回の第1打球テストにより得られた結果の平均値を
図9Aに示す。
【0044】
図9Aから、第1打球テストでは、実施例1のゴルフボール10は、シーム打ちした場合のキャリーに対する、ポール打ちした場合のキャリーの比率が101.6%であった。また、実施例1のゴルフボール10は、シーム打ちした場合のトータル飛距離に対するポール打ちした場合のトータル飛距離の比率が102.0%であった。
【0045】
一方、比較例のゴルフボールは、シーム打ちした場合のキャリーに対するポール打ちした場合のキャリーの比率が100.5%であった。また、比較例のゴルフボールは、シーム打ちした場合のトータル飛距離に対するポール打ちした場合のトータル飛距離が101.3%であった。
【0046】
これらから、実施例1のゴルフボール10では、比較例のゴルフボールに比べて、シーム打ちした場合よりもポール打ちした場合の飛距離を効果的に伸ばすことができるといえる。つまり、本実施形態に係るゴルフボール10では、上記のようにディンプルパターン22が調整されることにより、ポール打ちした場合に、他の打ち方をした場合よりもディンプル20の効果を良好に得ることができる。
【0047】
次に、実施例1のディンプルパターン22を有するゴルフボール10と、実施例2のディンプルパターン22を有するゴルフボール10との各々に対して第2打球テストを行った。第2打球テストは、テスターのヘッドスピードが40m/sであることを除いて、第1打球テストと同様にして行った。その結果を
図9Bに示す。
【0048】
図9Bから、第2打球テストでは、実施例1のゴルフボール10は、シーム打ちした場合のキャリーに対するポール打ちした場合のキャリーの比率が101.8%であった。また、実施例1のゴルフボール10は、シーム打ちした場合のトータル飛距離に対するポール打ちした場合のトータル飛距離の比率が101.2%であった。
【0049】
一方、実施例2のゴルフボール10は、シーム打ちした場合のキャリーに対するポール打ちした場合のキャリーの比率が104.8%であった。また、実施例2のゴルフボール10は、シーム打ちした場合のトータル飛距離に対するポール打ちした場合のトータル飛距離の比率が105.5%であった。
【0050】
これらから、実施例2のゴルフボール10では、実施例1のゴルフボール10に比べて、シーム打ちした場合よりもポール打ちした場合の飛距離を効果的に伸ばすことができるといえる。従って、第2H総容積を、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも10%以上大きくし、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々を、第2V総容積よりも9.5%以上大きくすることで、ポール打ちした場合の飛距離を良好に伸ばすことができる。
【0051】
次に、実施例1のゴルフボール10をポール打ちした場合とシーム打ちした場合との各々において、米国ゴルフ協会(USGA)のルールに規定されたITR(Indoor Test Range)により、抗力係数CD及び揚力係数CLを測定した。
図10Aには、実施例1のゴルフボール10をポール打ちした場合の抗力係数CDの測定結果を実線で示し、シーム打ちした場合の抗力係数CDの測定結果を破線で示す。また、
図10Bには、実施例1のゴルフボール10をポール打ちした場合の揚力係数CLの測定結果を実線で示し、シーム打ちした場合の揚力係数CLの測定結果を破線で示す。
【0052】
同様に、実施例2のゴルフボール10についても抗力係数CD及び揚力係数CLを測定した。
図11Aには、実施例2のゴルフボール10をポール打ちした場合の抗力係数CDの測定結果を実線で示し、シーム打ちした場合の抗力係数CDの測定結果を破線で示す。また、
図11Bには、実施例2のゴルフボール10をポール打ちした場合の揚力係数CLの測定結果を実線で示し、シーム打ちした場合の揚力係数CLの測定結果を破線で示す。なお、これらの抗力係数CD及び揚力係数CLの測定結果は、
図10A~
図11Bに示す複数の飛行速度の各々において、1740~2880rpmの範囲で回転数を変化させて得た。なお、
図10Aにのみ回転数の数値を記載し、
図10B~
図11Bでは回転数の数値の記載を省略しているが、
図10B~
図11Bも、
図10Aと同様に回転数を変化させて得られた測定結果を示す。
【0053】
図10A~
図11Bから、実施例1及び実施例2の何れも、ゴルフボール10の速度が約40m/s以上のときに、シーム打ちした場合よりもポール打ちした場合の抗力係数CDが低く且つ揚力係数CLが高くなっている。つまり、実施例1、2では、ポール打ちによる、ヘッドスピード30m/s前後の女性アマチュアゴルファーの打ち出し時や、ヘッドスピード40m/sの男性アマチュアゴルファーが打ち出したボールの飛行中において、低抗力及び高揚力の特性を得ることができる。このことから、シーム打ちよりもポール打ちした場合の飛距離を長くできると考察される。つまり、本実施形態に係るゴルフボール10では、ポール打ちした場合に、特に効果的に空気抵抗を低減させ且つ揚力を増加させて、飛距離を向上させることが可能である。
【0054】
さらに、ゴルフボール10をシーム打ちした場合の揚力係数CLと、ポール打ちした場合の揚力係数CLとの差は、実施例1よりも実施例2で大きくなる。このことから、実施例2のゴルフボール10では、シーム打ちに比べポール打ちによる飛距離を効果的に長くできることが分かる。このことからも、第2H総容積を、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも10%以上大きくし、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々を、第2V総容積よりも9.5%以上大きくすることで、ポール打ちした場合の飛距離を一層良好に伸ばすことができるといえる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0056】
例えば、上記の実施形態では、
図2に示すように、第1極地点16及び第2極地点18の各々にもディンプル20が配置され、ディンプルパターン22は、極地ディンプル26を有する。しかしながら、第1極地点16及び第2極地点18には、ディンプル20が配置されていなくてもよい。すなわち、ディンプルパターン22は、極地ディンプル26を有していなくてもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、ディンプルパターン22は、極地ディンプル26を除くディンプルパターン22を第1周方向に5等分割した5個のディンプル群を有する。つまり、極地ディンプル26は、ディンプル群に含まれない。しかしながら、極地ディンプル26は、ディンプル群に含まれてもよい。この場合、極地ディンプル26は、5個のディンプル群に共有される。このため、ディンプル群同士を区分けする分割線Dは、極地ディンプル26を横切ることなく、極地ディンプル26の周辺で交差する。
【0058】
さらに、上記の実施形態では、ディンプル群は、ディンプルパターン22を第1周方向に5等分割して形成されるが、特にこれには限定されない。ディンプル群は、ディンプルパターン22を第1周方向に等分割して形成されればよい。すなわち、ディンプルパターン22は、5個以外の複数個のディンプル群を有してもよい。
【0059】
ディンプル群が第1極地ディンプル26a及び第2極地ディンプル26bを有することを除いて実施例1と同様のディンプルパターン22を実施例3とする。実施例3では、第1H領域は、第2H領域に隣接するディンプル列24から第1極地ディンプル26aまでの合計8個のディンプル列24から構成される。また、第3H領域は、第2H領域に隣接するディンプル列24から第2極地ディンプル26bまでの合計8個のディンプル列24から構成される。
【0060】
従って、実施例3では、第2H領域のディンプル列24の個数の割合を1としたとき、第1H領域及び第3H領域の各々のディンプル列24の個数の割合は、2.0である。
【0061】
実施例3では、第2V領域に第1極地ディンプル26a及び第2極地ディンプル26bが含まれる。このため、第2V領域の総開口面積は略106.1πmm2である。従って、実施例3では、第2V領域に含まれるディンプル20の総開口面積の割合を1としたとき、第1V領域に含まれるディンプル20の総開口面積の割合は0.93であり、第3V領域に含まれるディンプル20の総開口面積の割合は0.91である。
【0062】
実施例3では、第2V領域に設けられた全ディンプル20の個数は27個である。従って、第2V領域に含まれるディンプル20の個数の割合を1としたとき、第1V領域に含まれるディンプル20の個数の割合は0.93であり、第3V領域に含まれるディンプル20の個数の割合は0.89である。
【0063】
実施例3では、第1H総容積が25.6861mm3である。第3H総容積が25.8215mm3である。第2V総容積が25.0123mm3である。従って、実施例3においても、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも第2H総容積が大きく、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々よりも第2V総容積が小さい関係が成り立つ。このため、実施例3のディンプルパターン22が設けられたゴルフボールにおいても、実施例1、2のディンプルパターン22を有するゴルフボール10と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
上記の実施例1~3では、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも第2H総容積が大きく、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々よりも第2V総容積が小さい関係が成り立つ。しかしながら、ディンプルパターン22では、この関係に代えて、第1H総容積及び第3H総容積の各々よりも第2H総容積が小さく、且つ第1V総容積及び第3V総容積の各々よりも第2V総容積が大きい関係が成り立っていてもよい。この場合であっても、実施例1~3のディンプルパターン22を有するゴルフボール10と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
10…ゴルフボール 12…第1半球
14…第2半球 20…ディンプル
22…ディンプルパターン 24…ディンプル列
26…極地ディンプル D…分割線
PL…パーティングライン