(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031933
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】暗騒音発生装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20230302BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
F24F13/02 H
F24F13/02 D
F24F13/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137722
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】大脇 雅直
(72)【発明者】
【氏名】黒木 拓
(72)【発明者】
【氏名】中牟田 篤
(72)【発明者】
【氏名】西野 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】小坂 直也
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AC01
3L080AE02
3L080BB01
3L080BE02
(57)【要約】
【課題】構成が簡単で製造コストを安価にできるとともに、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした暗騒音発生装置を提供する。
【解決手段】本発明は、建物外部と室内とを連通させるために建物に設けられた空気流通路(ダクト16C)と、空気流通路の部屋に近い側の内側に設けられて当該空気流通路の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備え、当該抵抗装置1Xを構成する風上側抵抗装置2及び風下側抵抗装置3は、それぞれ、空気流通路の内径寸法に対応した外径寸法の板に空気を流通させる貫通孔(風上孔21,風下孔31)が形成された抵抗板を有して、これら抵抗板が空気流通路の内側に設置された暗騒音発生装置において、風上側抵抗装置の貫通孔の数と風下側抵抗装置の貫通孔の数とが同数であって、かつ、風上側抵抗装置の貫通孔と風下側抵抗装置の貫通孔とが一対一で向かい合うように構成された暗騒音発生装置とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外部と室内とを連通させるために建物に設けられた空気流通路と、
空気流通路の部屋に近い側の内側に設けられて当該空気流通路の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備え、
抵抗装置は、
空気流通路内において部屋に近い位置に設置された風下側抵抗装置と、
空気流通路内において風下側抵抗装置よりも部屋から遠い位置に設置された風上側抵抗装置とを備え、
風上側抵抗装置及び風下側抵抗装置は、それぞれ、空気流通路の内径寸法に対応した外径寸法の板に空気を流通させる貫通孔が形成された抵抗板を有して、これら抵抗板が空気流通路の内側に設置された暗騒音発生装置において、
風上側抵抗装置の貫通孔の数と風下側抵抗装置の貫通孔の数とが同数であって、かつ、風上側抵抗装置の貫通孔と風下側抵抗装置の貫通孔とが一対一で向かい合うように構成されたことを特徴とする暗騒音発生装置。
【請求項2】
一対一で向かい合う風上側抵抗装置の貫通孔の径の大きさと風下側抵抗装置の貫通孔の径の大きさとが異なることを特徴とする請求項1に記載の暗騒音発生装置。
【請求項3】
風上側抵抗装置の貫通孔の径の大きさが、風下側抵抗装置の貫通孔の径の大きさよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の暗騒音発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外からの生活音に対する暗騒音を室内に発生させる暗騒音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のマンション等の共同住宅においては、高断熱高気密化に伴い、建物外部から建物内部に入射する音のレベルが小さくなっており、住宅地では室内が夜間にA特性音圧レベルが20dB台前半になることもある。
このように、建物外部から建物内部に入射する音のレベルが小さい環境の場合、室内において、室外からの生活音が聞こえてきて気になるという問題が生じている。尚、「室外からの生活音」とは、マンションにおける上層階や隣りの他住居からの生活音、一戸建ての建物における隣接する住宅からの生活音等のことを言う。
そこで、建物の外壁に形成された給気孔の内側に抵抗装置を設け、給気孔を介して室内に流入する音の大きさを大きくするようにした暗騒音(対象とする騒音の周辺環境に発生している対象騒音以外の総体的騒音)を発生させることにより、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした方法が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法に用いられている抵抗装置においては、当該抵抗装置を構成する2つの抵抗板の形状が全く異なる形状であるので、抵抗装置の構成が複雑になり、製造コスト等の面での課題があった。
本発明は、構成が簡単で製造コストを安価にできるとともに、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした暗騒音発生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る暗騒音発生装置は、建物外部と室内とを連通させるために建物に設けられた空気流通路と、空気流通路の部屋に近い側の内側に設けられて当該空気流通路の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備え、抵抗装置は、空気流通路内において部屋に近い位置に設置された風下側抵抗装置と、空気流通路内において風下側抵抗装置よりも部屋から遠い位置に設置された風上側抵抗装置とを備え、風上側抵抗装置及び風下側抵抗装置は、それぞれ、空気流通路の内径寸法に対応した外径寸法の板に空気を流通させる貫通孔が形成された抵抗板を有して、これら抵抗板が空気流通路の内側に設置された暗騒音発生装置において、風上側抵抗装置の貫通孔の数と風下側抵抗装置の貫通孔の数とが同数であって、かつ、風上側抵抗装置の貫通孔と風下側抵抗装置の貫通孔とが一対一で向かい合うように構成されたことを特徴とする。
また、一対一で向かい合う風上側抵抗装置の貫通孔の径の大きさと風下側抵抗装置の貫通孔の径の大きさとが異なることを特徴とする。
また、風上側抵抗装置の貫通孔の径の大きさが、風下側抵抗装置の貫通孔の径の大きさよりも大きいことを特徴とする。
本発明に係る暗騒音発生装置によれば、構成が簡単で製造コストを安価にできるとともに、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】暗騒音発生装置を採用した建物の例を示す断面図。
【
図2】暗騒音発生装置を採用した建物の例を示す平面図。
【
図4】風上側抵抗装置及び風下側抵抗装置を示す図であり、(a)は正面図、(b),(c)は斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1の暗騒音発生装置は、
図1に示すように、建物10の外部から建物10内に取り込んだ空気を天井裏空間11Sを介して建物10内の部屋12に給気するように構成された建物、例えば、24時間換気システムとして、建物10の外部から外気を建物10の内部に強制給気するとともに建物10の内部から建物10の外部に強制排気を行う第1種換気方式を採用している建物10に設けられる。
当該暗騒音発生装置は、建物10の外部と室内とを連通させるために建物10に設けられて建物10の外部から空気を建物10内の部屋12に導く空気流通路としてのダクト16Cと、当該ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側に設けられてダクト16Cの内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置1Xとを備えて構成される。
即ち、当該暗騒音発生装置は、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置1Xを設けることにより、ダクト16C、ダクト16C内の抵抗装置1X、部屋12の天井板11に設けられた給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくして、建物10の外壁9に面して給気孔1がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした暗騒音発生装置である。
尚、ダクト16Cの内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置1Xを設けない場合に当該ダクト16C、給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際に発生する音も暗騒音であり、本願発明では、厳密には、当該暗騒音に、抵抗装置1Xを通過する際に発生する音(無意味音)を付加していることになるが、本明細書においては、当該ダクト16Cの内側に設置された抵抗装置1Xを空気が通過する際に発生して部屋12内で聞こえる音を暗騒音と定義して説明するものとする。
【0008】
図1,
図2に示すように、24時間換気システムの第1種換気方式を採用する共同住宅(マンション)などの建物10においては、建物10の外部から建物10の内部に強制的に取り込んだ空気を建物10の内部の各部屋12,12…に分配し、かつ、特定の場所から建物10の外部に空気を強制排気するように構成されている。
そこで、実施形態1の暗騒音発生装置では、建物10の外部から建物10の内部に取り込んだ空気を建物10内の複数の各部屋12,12…に分配するために複数の各部屋12,12…の天井板11,11…に給気孔1,1…を設け、各給気孔1,1…に接続されるダクト16C,16C…の内側において給気孔1,1…から近い位置にそれぞれ抵抗装置1X,1X…を設けるようにした。
【0009】
例えば、建物10は、
図1,
図2に示すように、建物10の外部から外気を建物10の内部に取り込む給気手段13と、熱交換システム14と、特定の部屋(例えば寝室)の天井板11に設けられた内気取込孔17と、各部屋12,12…の各天井板11,11…に設けられた各給気孔1,1…と、建物10の内部の空気を建物10の外部に排気する排気手段15とを備える。
そして、給気手段13の外気送出口(後述する円筒体の他端開口)13aと熱交換システム14の外気取込口14aとがダクト16Aにより繋がれている。
また、
図2に示すように、熱交換システム14の内気取込口14bと特定の部屋12(例えば寝室)の天井板11に設けられた内気取込孔17の天井裏側開口とがダクト16Bにより繋がれている。尚、特定の部屋は1つ以上であればよく、内気取込孔17も1つ以上であればよい。
さらに、熱交換システム14の処理済み空気送出口14cと各部屋12,12…の各天井板11,11…に設けられた各給気孔1,1…の各天井裏側開口(後述する円筒状部品1Aにおける一端開口側円筒部1Bの他端開口(上端開口)1b)とがダクト16C,16C…により繋がれている。
これらダクト16A,16B,16Cとしては、例えば断面円形の流路を備えた円管ダクトが使用される。
尚、
図2の建物10の平面図(間取図)において、Eは玄関、Cdは廊下、BRは寝室、UBはトイレ付浴室、Wは洗面室、Kは台所、WRは洋室、Cはクローゼット、JRは和室、LDはリビングダイニングルームである。
【0010】
給気手段13は、例えば図示しないが、建物10の外壁9に形成された貫通孔と、当該貫通孔内に装着されて外気取込孔(給気孔)を形成する円筒体と、当該円筒体における熱交換システム14に近い他端開口側に設けられた給気ファン等の強制給気手段とを備えて、外気を天井裏空間11Sに取込む手段である。
【0011】
図2に示すように、熱交換システム14は、給気手段13により建物10の外部から取込まれた外気と特定の部屋(例えば寝室)から取込まれた内気とで熱交換処理を行った後、この熱交換処理後の空気(処理済み空気)を各部屋(各室内)12,12…に分配供給する装置である。
熱交換システム14としては、熱交換機能の他、空気洗浄機能を備えたものを用いてもよい。
【0012】
図3に示すように、給気孔1は、一端開口1aが、天井を形成する天井板11に形成された貫通孔11aを介して部屋12に連通するとともに、他端開口1bが、建物10の外部から空気を取込むためのダクト16Cに連通するように設けられた筒部品としての円筒状部品1Aにより形成される。
そして、当該円筒状部品1Aにより形成された給気孔1に接続されるダクト16Cの内側において当該給気孔1から近い位置に抵抗装置1Xが設けられる。
【0013】
図3に示すように、給気孔1を形成する円筒状部品1Aは、円筒部により形成された一端開口側円筒部1Bと、当該一端開口側円筒部1Bの径よりも小さい径の円筒部により形成された他端開口側円筒部1Cと、一端開口側円筒部1Bの他端開口縁と他端開口側円筒部1Cの一端開口縁との間を塞ぐ円環板状の塞板1Dとを備えて構成される。
即ち、円筒状部品1Aは、一端開口側円筒部1Bと当該一端開口側円筒部1Bよりも小径の他端開口側円筒部1Cとを備えた、2つの異なる径の円筒部が組み合わされた段差付きの円筒部品である。言い換えれば、中心軸に沿った断面形状が凸状の段差付きの円筒部品である。
【0014】
具体的には、給気孔1は、貫通孔11aを貫通するように取付けられた円筒状部品1Aの内側貫通孔1Hにより形成される。
そして、当該内側貫通孔1Hは、一端開口側円筒部1Bの内面である内側貫通孔1HBと、他端開口側筒部1Cの内面である内側貫通孔1HCと、塞板1Dの内面とで区画されて構成された段差付き内側貫通孔により形成される。
【0015】
尚、円筒状部品1Aにおける一端開口側円筒部1Bの一端開口(下端開口)1aの開口縁側には取付フランジ1Fが設けられている。当該円筒状部品1Aを他端開口側筒部1Cの他端開口(上端開口)1b側から貫通孔11aに貫通させて取付フランジ1Fの上面と天井板11の下面とを近接させた状態で、例えばビスやねじ等を取付フランジ1F及び天井板11に貫通させて図外の天井下地に締結することにより、当該円筒状部品1Aが天井板11に取付けられ、天井板11に部屋12と天井裏空間11Sとを連通させる給気孔1が形成されることになる。
また、円筒状部品1Aの一端開口1a側には、当該円筒状部品1Aの一端開口(給気孔1の部屋側開口)1aを開閉する例えばルーバー開閉部等の開閉体1Rを備えた蓋1Eが着脱自在に取付けられることが好ましい。
【0016】
排気手段15は、例えば図示しないが、特定の部屋12(例えば浴室や洗面室)の天井等に形成された貫通孔と、当該貫通孔内に装着されて内気排出孔を形成する円筒体と、当該筒体の天井裏空間等に位置される開口側に設けられた排気ファン等の強制排気手段とを備えて、建物内の空気を外部に排出するように構成された手段である。
【0017】
尚、熱交換システム14の外気取込口14a及び内気取込口14bの近傍には給気ファンが設けられ、かつ、熱交換システム14の処理済み空気送出口14cの近傍には排気ファンが設けられている。
【0018】
従って、給気手段13により建物10の外部から建物10の内部に取込まれた外気が天井裏空間11Sに配置されたダクト16A、外気取込口14aを経由して熱交換システム14に取り込まれる。また、特定の部屋12(例えば寝室)の内気が天井板11に設けられた各内気取込孔17、天井裏空間11Sに配置されたダクト16B、内気取込口14bを経由して熱交換システム14に取り込まれる。そして、熱交換システム14により、外気と内気との熱交換処理が行われ、この熱交換処理後の空気が、処理済み空気送出口14c、ダクト16C,16C…、各ダクト16C,16C…内に設けられた抵抗装置1X,1X…、各部屋12,12…の各天井板11,11…に設けられた各給気孔1,1…を経由して各部屋12,12…に分配されて供給されることになる。
【0019】
また、24時間換気システムの第1種換気方式では、給気手段13により建物10の外部から建物10の内部に取込む空気量と、排気手段15により建物10の内部から建物10の外部に排気される空気量が等しくなるように調整される。
【0020】
実施形態1に係る暗騒音発生装置は、
図3に示すように、部屋12の天井に設けられて天井裏空間11S側から部屋12に空気を供給するための給気孔1を形成する円筒状部品1Aに接続されるダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側、言い換えれば、ダクト16Cと円筒状部品1Aとの接続部近傍におけるダクト16Cの内側に、空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置1Xを備えた構成である。
例えば、円筒状部品1Aに接続されるダクト16Cの部屋12に近い側の端部開口から抵抗装置1Xを挿入して当該抵抗装置1Xをダクト16Cの内側に設置する作業を行う場合に、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部開口から作業者の手の届く範囲に当該抵抗装置1Xが設けられる。
【0021】
図3に示すように、抵抗装置1Xは、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側に設けられた風上側抵抗装置2と、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側において風上側抵抗装置2よりも部屋12に近い位置に設置された風下側抵抗装置3とを備えて構成される。
換言すれば、抵抗装置1Xは、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側において、部屋12に近い位置に設置された風下側抵抗装置3と、風下側抵抗装置3よりも部屋12から遠い位置に設置された風上側抵抗装置2とを備えて構成される。
【0022】
図4に示すように、風上側抵抗装置2は、ダクト16Cの内径(流路径)寸法に対応した外径寸法の円形板の中央側に風上孔21が形成された抵抗板として機能する孔付き円形板22と、当該孔付き円形板22の外周縁より延長するように形成された円筒体23とを備えて構成される。
そして、当該円筒体23の外周面がダクト16Cの内周面16Uと接触又は近接するようにダクト16Cの内側に固定状態に設置されたことによって、ダクト16Cの内側に、ダクト16Cの中心軸を中心とした中央円形貫通孔により構成された風上孔21が形成される。
円筒体23は、例えば断面円形の流路(空気流通路)を有した円管ダクトにより構成されたダクト16Cの内径寸法に対応した外径寸法に形成された両端開口の円筒体である。
孔付き円形板22は、円筒体23の一端開口側の径寸法に対応した外径寸法に形成された円形板の中央側に風上孔21が形成された抵抗板である。
即ち、風上側抵抗装置2は、孔付き円形板22と円筒体23とを備え、円筒体23の一端開口側と孔付き円形板22の外周側とが接合されて構成される。
つまり、風上側抵抗装置2は、ダクト16C内(空気流通路)を空気(風)が流通する際の抵抗板となる孔付き円形板22と、ダクト16C内を空気が流通する際の流通孔となる風上孔21と、風上側抵抗装置2をダクト16C内の内周面に設置する際の設置面となる外周面を有した円筒体23とを備えている。
【0023】
風上孔21は、孔付き円形板22の元となる円形板の中心2Cを孔の中心とした中央円形貫通孔により形成される。
当該風上孔21は、孔付き円形板22の元となる円形板の直径寸法よりも小さい直径寸法の円形貫通孔であればよい。
また、円筒体23は、孔付き円形板22の元となる円形板の中心2Cを通って当該孔付き円形板22の板面(平板面)と直交する軸を中心軸23Cとする円筒体である。
【0024】
尚、風上側抵抗装置2は、例えば、孔付き円形板22の外周面と円筒体23の一端側の内周面とが繋がって一体となるように形成されて円筒体23の一端面と孔付き円形板22の板面とが同一平面上に位置されるように構成されるか、あるいは、円筒体23の一端面と孔付き円形板22の外周縁側板面(円筒体23側の外周縁側板面)とが繋がって一体となるように形成されて構成される。
当該風上側抵抗装置2は、孔付き円形板22と円筒体23とが一体形成されたものであってもよいし、別々に形成された孔付き円形板22と円筒体23とを接合して一体となるように形成されたものであってもよい。
【0025】
そして、風上側抵抗装置2は、円筒体23の外周面がダクト16Cの内周面16Uに直接密着して接触するように設置される。
あるいは、風上側抵抗装置2は、円筒体23の外周面にダクト16Cの内周面16Uとの間の隙間を埋めて当該円筒体23の外周面とダクト16Cの内周面16Uとの密着性を高めるための密着性促進シート材を設けて、円筒体23の外周面が当該密着性促進シート材を介してダクト16Cの内周面16Uに近接するよう設置された状態で、接着剤や接着テープあるいは溶接等の固定手段を用いて、ダクト16Cの内周面16Uに固定される。
尚、密着性促進シート材としては、ウレタン系、ゴム系の材料で形成されたシート材を用いればよい。
このように、風上側抵抗装置2がダクト16Cの内側に固定状態に設置されることによって、孔付き円形板22の板部分が抵抗板として機能するとともに、風上孔21がダクト16Cの流路径を縮小する流路径縮小手段として機能するように構成される。
即ち、円筒体23の外周面とダクト16Cの内周面16Uとが接触又は近接するように、風上側抵抗装置2が、ダクト16Cの内側に固定状態に設置されたことにより、ダクト16C内に、抵抗板として機能する孔付き円形板22と、流路径縮小手段として機能する風上孔21とが設けられることになる。
【0026】
尚、風上側抵抗装置2と風下側抵抗装置3とは、風上孔21の径寸法と風下孔31の径寸法とが異なる以外は同じ構成であるか、あるいは、全てが同じ構成である。
つまり、風上側抵抗装置2と風下側抵抗装置3とが異なる場合、その違いは、風上孔21の径寸法が風下孔31の径寸法よりも大きい寸法に形成されるか(
図4参照)、あるいは逆に、風上孔21の径寸法が風下孔31の径寸法よりも小さい寸法に形成されるかという違いだけである。
【0027】
即ち、風下側抵抗装置3は、孔付き円形板22に相当する孔付き円形板32と、円筒体23と同じ円筒体33とを備え、孔付き円形板32は、風上孔21に相当する風下孔31を備えた抵抗板として機能するように構成された抵抗装置である。
つまり、風下側抵抗装置3の内容は、上述した風上側抵抗装置2の説明において、風上孔21を風下孔31と、孔付き円形板22を孔付き円形板32と、円筒体23を円筒体33と、円形板の中心2Cを中心3Cと、円筒体23の中心軸23Cを円筒体33の中心軸33Cと読み替えた内容となる。
【0028】
即ち、風上側抵抗装置2及び風下側抵抗装置3は、それぞれ、空気流通路を形成するダクト16Cの内径寸法に対応した外径寸法の円形板に空気を流通させる風上孔21,風下孔31(貫通孔)が形成された抵抗板としての孔付き円形板22,32を有して、これら孔付き円形板22,32がダクト16Cの内側に設置されることにより抵抗装置1Xを構成するものである。
そして、当該抵抗装置1Xは、風上側抵抗装置2の風上孔21(貫通孔)の数と風下側抵抗装置3の風下孔31(貫通孔)の数とが同数であって、かつ、当該風上側抵抗装置2の風上孔21と風下側抵抗装置3の風下孔31とが一対一で向かい合うように構成されたものである。
【0029】
実施形態1では、一対一で向かい合う風上孔21の径と風下孔31の径とが異なる場合には、風上孔21と風下孔31とが相似の円形貫通孔により形成される。
また、風上孔21の中心2Cが円筒体23の中心軸23C上に位置されるとともに、風下孔31の中心3Cが円筒体33の中心軸33C上に位置され、ダクト16C内で一対一で向かい合う風上孔21と中心2Cと風下孔31の中心3Cとが、ダクト16Cの中心軸上に位置される構成とした。
【0030】
また、
図3,4に示すように、風上側抵抗装置2の円筒体23の他端端面と風上側抵抗装置3の円筒体33の他端端面とを突き合わせた構成の抵抗装置1Xとすれば、円筒体23の筒長と円筒体33の筒長とを調整することによって、風上孔21と風下孔31との間の間隔Hを設定した構成の抵抗装置1Xを形成できる。
尚、ダクト16Cの内側に、風上側抵抗装置2の円筒体23の他端端面と風上側抵抗装置3の円筒体33の他端端面とを離した状態で設置することにより、風上孔21と風下孔31との間の間隔Hを自由に設定できる。
【0031】
以上により、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側に、風上側抵抗装置2と風下側抵抗装置3とで形成された抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置が構成される。
即ち、部屋12の天井側に暗騒音発生装置が設置されることになる。
尚、例えば
図3に示すように、風上側抵抗装置2は、円筒体23が部屋12に近い側に位置して孔付き円形板22が風上側(部屋12から遠い側)に位置するようにダクト16C内に設置され、かつ、風下側抵抗装置3は、円筒体33が部屋12に近い側に位置してスリット付き円形板32が風上側(部屋12から遠い側)に位置するようにダクト16C内に設置される。
【0032】
実施形態1に係る暗騒音発生装置によれば、ダクト16Cの内側に設置される抵抗装置1Xは、同様な構成の風上側抵抗装置2と風下側抵抗装置3とで構成されたので、構成が簡単で製造コストを安価にできるとともに、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できる暗騒音発生装置を提供できる。
また、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側において抵抗装置1Xを備えた構成としたので、ダクト16C内に設けられた抵抗装置1X、及び、給気孔1を形成する円筒状部品1Aを介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさが大きくなり、外壁9に面して給気孔1がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようになった。
【0033】
また、実施形態1の暗騒音発生装置によれば、熱交換システム14から、空気が、ダクト16C,16C…、各部屋12,12…の各天井板11,11…に設けられた各給気孔1,1…を介して各部屋12,12…に分配されて供給される場合において、空気が、各ダクト16C,16C…内に設けられた抵抗装置1Xを通過する際に抵抗等によって音が発生する。
従って、建物10の外壁9に面して給気孔1が無い複数の部屋12,12…毎に、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できる。
また、建物の換気方式を、第1種換気方式としたことにより、換気をスムーズにできるとともに、部屋12において、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できる。
【0034】
尚、実施形態1に係る暗騒音発生装置の効果を確認するため、以下のような実験装置及び実験方法に基づいて以下の実験1~実験5を行った。
・実験装置及び実験方法
無響室内に天井を模擬した天井模型を設置し、天井模型に貫通孔を形成するとともに、ダクトの一端側の内側に抵抗装置1Xの試験体を設置した後に、当該ダクトの一端側を天井模型の天井裏側から貫通孔に接続し、さらに、ダクトの他端開口側に送風ファンを設置し、送風ファンを駆動して、ダクト内に送風する実験装置を作製した。
そして、無響室内において貫通孔の下方にマイクロフォンを設置した後に、送風ファンを駆動して、風が抵抗装置1Xの試験体を通過する際に発生する音の1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルを測定することにより、抵抗装置1Xの試験体の違いによる効果の違いを検証した。
尚、実験では、約20mの円管ダクトを用い、ダクトの途中に消音ボックスを設置した構成として、送風ファンから発生する音が測定されないように、送風ファンからダクト内の抵抗装置1Xの試験体に送風するようにした。
1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルの測定では、マイクロフォンのヘッドケースの中心位置が、天井模型に形成された貫通孔の中心位置から真下に1m離れた位置と一致するように、マイクロフォンを無響室に設置した。
尚、稼働音は定常的な音であるため、20秒間の等価音圧レベルを求めた。
また、ファン風量は、風量計を用いて測定した。
【0035】
尚、実験1乃至実験5において使用したダクト、風上側抵抗装置2、風下側抵抗装置3に共通する諸元は以下のとおりである。
(1)ダクト
・ダクト内径寸法 154mm。
・ダクト外径寸法 165mm。
(2)風上側抵抗装置2及び風下側抵抗装置3
・円筒体23,33の外径寸法 156mm。
・円筒体23,33の内径寸法 154.4mm。
・孔付き円形板22,23の板厚寸法 0.8mm。
【0036】
・実験1
実施形態1で説明した抵抗装置1Xを構成する風上側抵抗装置2の風上孔21の径寸法を42.5mm、風下側抵抗装置3の風下孔31の径寸法を37.5mmに設定して、風上孔21と風下孔31との間の間隔(即ち、孔付き円形板22と孔付き円形板32との間の間隔)H(
図3参照)を異ならせた各試験体1~5を用い、送風ファンから送風される風量(以下、ファン風量という)を50.0m
3/hとした場合において、各試験体1~5の違いにより、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証する実験を行った。
即ち、風上孔の径寸法を42.5mm、風下孔の径寸法を37.5mmとした条件(風上孔の径寸法が風下孔の径寸法よりも大きいという条件)において、間隔Hを違わせることで、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証した実験である。
当該実験1による実験結果を
図5に示す。尚、実施形態1で説明した抵抗装置1Xが無い場合の実験結果を
図5の試験体6に示す。
【0037】
・実験2
実施形態1で説明した抵抗装置1Xを構成する風上側抵抗装置2の風上孔21の径寸法を42.5mm、風下側抵抗装置3の風下孔31の径寸法を37.5mm、間隔Hを5mmに固定し、かつ、ファン風量を異ならせた各試験体1~7を用い、各試験体1~7の違いにより、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証する実験を行った。
即ち、実験1よりも間隔Hを短くし、かつ、風量を異ならせた場合に、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証した実験である。
当該実験2による実験結果を
図6に示す。
【0038】
・実験3
実施形態1で説明した抵抗装置1Xを構成する風上側抵抗装置2の風上孔21の径寸法を42.5mm、風下側抵抗装置3の風下孔31の径寸法を47.5mm、ファン風量を50.0m
3/hに固定し、かつ、間隔Hを異ならせた各試験体1~5を用い、各試験体1~5の違いにより、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証する実験を行った。
即ち、風上孔の径寸法を42.5mm、風下孔の径寸法を47.5mmとした条件(風上孔の径寸法が風下孔の径寸法よりも小さいという条件)において、間隔Hを違わせることで、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証した実験である。
当該実験3による実験結果を
図7に示す。尚、径寸法42.5mmの風上孔21だけ設けた試験体6での実験も行った。
【0039】
・実験4
実施形態1で説明した抵抗装置1Xを構成する風上側抵抗装置2の風上孔21の径寸法を42.5mm、ファン風量を40.0m
3/h、間隔Hを30mmに固定し、かつ、風下側抵抗装置3の風下孔31の径寸法を異ならせた各試験体1~7を用い、各試験体1~5の違いにより、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証する実験を行った。
即ち、風上孔21の径寸法と風下孔31の径寸法との差を違わせることで、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証した実験である。
当該実験1による実験結果を
図8に示す。
【0040】
・実験5
実施形態1で説明した抵抗装置1Xを構成する風上側抵抗装置2の風上孔21の径寸法を42.5mm、ファン風量を50.0m
3/h、間隔Hを30mmに固定し、かつ、風下側抵抗装置3の風下孔31の径寸法を異ならせた各試験体1~7を用い、各試験体1~5の違いにより、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証する実験を行った。
即ち、実験4でのファン風量を40.0m
3/hをファン風量を50.0m
3/hに変更した場合に、1/3オクターブバンド音圧レベル及びA特性音圧レベルがどのようになるかを検証した実験である。
当該実験1による実験結果を
図9に示す。
【0041】
尚、実験結果を示す
図5乃至
図9において、「風上」とは風上孔21のことであり、「風下」とは風下孔31のことであり、「間隔」とは間隔Hのことである。
【0042】
・風上孔21の径寸法を42.5mm、風下孔31の径寸法を37.5mmとした条件、即ち、風上孔径を風下孔径よりも5mm大きくした条件(以下、条件1という)で検証した実験結果について。
(1)当該条件1において、
図5から明らかなように、間隔Hを10mm~50mmに設定した場合(試験体1~5)は、抵抗装置を備えない場合(試験体6)と比べて、A特性音圧レベルが大きくなることがわかった。
特に、間隔Hを10mm,20mm,30mmに設定した場合(
図5の試験体1~3)は、A特性音圧レベルが50dB以上であるのに対して、間隔Hを40mm,50mmに設定した場合(
図5の試験体4,5)や5mmに設定した場合(
図6の試験体4)は、A特性音圧レベルが40dB以上である。
即ち、当該条件1においては、間隔Hを10mm~30mm程度に設定した場合に、A特性音圧レベルが大きくなる傾向があることがわかった。
(2)また、
図6からわかるように、条件1において、間隔Hを5mmとした場合でも、試験体4~7のように、ファン風量を50m
3/h,60m
3/h,70m
3/h,75m
3/hと大きくすればするほど、A特性音圧レベルが大きくなる傾向があることがわかった。
また、条件1において、間隔Hを5mmとし、かつ、ファン風量を40m
3/h以下に設定した場合(試験体1~3参照)には、抵抗装置を備えない場合(
図5の試験体6参照)と同じように、A特性音圧レベルは大きくならないことがわかった。
(3)また、
図5と
図6とを比較してわかるように、条件1においては、ファン風量が50m
3/hで、間隔Hを30mm~50mmとした場合には、概ね、低い周波数帯域(80Hz~1kHz)の音が大きくなり、高い低周波数帯域(1kHz以上)の音は大きくならない傾向があるのに対して、間隔Hを20mm、10mmというように小さくするほど、逆に、低い周波数帯域(80Hz~160Hz)の音が小さくなり、高い周波数帯域(1kHz以上)の音は大きくなる傾向があることがわかる。
さらに、
図6からわかるように、条件1において、間隔Hを5mmとした場合でも、ファン風量を50m
3/h以上とした場合(試験体5~7)は、1kHz帯域以上の特定の帯域で音が大きくなる傾向があることがわかった。
(4)即ち、条件1において、ファン風量を50m
3/hとした場合には、間隔Hを大きくすれば、低い周波数帯域の音を大きくでき、逆に、間隔Hを小さくすれば、高い周波数帯域の特定の帯域での音を大きくできる傾向があるということがわかった。
さらに、条件1において、間隔Hを小さくして、かつ、ファン風量を50m
3/h以上とした場合は、ファン風量を大きくする程、高い周波数帯域の特定の帯域での音をより大きくできる傾向があるということがわかった。
【0043】
・風上孔21の径寸法を42.5mm、風下孔31の径寸法を47.5mmとした条件、即ち、風上孔径を風下孔径よりも5mm小さくした条件(以下、条件2という)で検証した実験結果。
(1)当該条件2において、
図7からわかるように、ファン風量を50m
3/hとし、かつ、間隔Hを10mmとした場合は、抵抗装置1Xを備えない場合(
図5の試験体6)や風上孔21だけ設けた場合(試験体6)と比べて、A特性音圧レベルは大きくならないことがわかった。
また、条件2において、ファン風量を50m
3/hとし、かつ、間隔Hを20mm,30mm,40mm,50mmとした場合は、A特性音圧レベルは、30dB~40dBとなり、抵抗装置を備えない場合(
図5の試験体6)や風上孔だけ設けた場合(試験体6)と比べて、A特性音圧レベルが大きくなることがわかった。
(2)また、条件2において、ファン風量を50m
3/hとし、かつ、間隔Hを20mm~50mmとした場合は、250Hz~315Hz帯域の音が大きくなる傾向があり、特に、間隔Hを40mm,50mmとした場合は、250Hz帯域の音がより大きくなり、かつ、100Hz~125Hz帯域の音も大きくなる傾向があることがわかった。
(3)即ち、条件2においては、条件1と比べた場合、A特性音圧レベルは大きくならないが、間隔Hを大きくすることにより、100Hz~125Hz帯域、250Hz帯域の音を大きくできる傾向があることがわかった。
【0044】
・風上孔21と風下孔31との径寸法の差を異ならせるという条件(以下、条件3という)での影響を検証した実験結果。
(1)条件3においては、
図8からわかるように、風上孔径が風下孔径よりも大きくて、風上孔径と風下孔径との差Aが2.5mm~7.5mmの場合(試験体3,2,1)は、差Aが大きくなるほど、A特性音圧レベルが大きくなる傾向があることがわかった。
また、逆に、風上孔径が風下孔径よりも小さくて、風上孔径と風下孔径との差Bが2.5mm~7.5mmの場合(試験体5,6,7)は、差Bが大きくなるほど、A特性音圧レベルが小さくなる傾向があることがわかった。
(2)また、条件3においては、
図9からわかるように、風上孔径が風下孔径よりも大きくて、風上孔径と風下孔径との差Aが2.5mm~7.5mmの場合(試験体3,2,1)は、差Aが大きくなるほど、A特性音圧レベルが大きくなる傾向があることがわかった。
また、逆に、風上孔径が風下孔径よりも小さくて、風上孔径と風下孔径との差Bが2.5mm~7.5mmの場合(試験体5,6,7)は、差Bが大きくなるほど、A特性音圧レベルが小さくなる傾向があることがわかった。
即ち、間隔Hを30mmに設定し、かつ、ファン風量を40m
3/h又は50m
3/hに設定した場合には、風上孔21と風下孔31との径寸法の差を異ならせた場合の実験結果は、同様な傾向を示すことがわかった。
(3)また、間隔Hが30mm、ファン風量が40m
3/h又は50m
3/hという条件においては、
図8の試験体4、及び、
図9の試験体4に示すように、風上孔径と風下孔径とが同じ場合であっても、A特性音圧レベルが大きくなる傾向があることがわかった。
(4)また、条件3においては、ファン風量を多くした方が、A特性音圧レベルが大きくなる傾向があることがわかった。
また、ファン風量を多くした場合、400Hz~1.6kHzの音を大きくできる傾向があることがわかった。
(5)以上から、風上孔径が風下孔径よりも大きい方が、A特性音圧レベルが大きくなり、また、風上孔径が風下孔径よりも大きくて、かつ、風上孔径と風下孔径との差Aが大きくなるほど、A特性音圧レベルが大きくなる傾向があることがわかった。
これは、風上孔径が風下孔径よりも大きい場合には、風上孔21を通過した風が風下孔31の周囲の抵抗板に衝突して音が発生しやすくなったと考えられる。
【0045】
実験1乃至実験5から以下のようなことがわかる。
まず、実験4,5での試験体4での結果からもわかるように、一対一で向かい合う風上側抵抗装置2の風上孔21の径の大きさと風下側抵抗装置3の風下孔31の径の大きさとが同じであってもよい。
また、実験1乃至実験5での実験結果からわかるように、一対一で向かい合う風上側抵抗装置2の風上孔21の径の大きさと風下側抵抗装置3の風下孔31の径の大きさとを異ならせる場合には、風上側抵抗装置2の風上孔(貫通孔)21の径の大きさが、風下側抵抗装置3の風下孔(貫通孔)31の径の大きさよりも大きい構成とすれば、A特性音圧レベルが大きくなる傾向があることがわかった。この場合、A特性音圧レベルを大きくしたい場合には、風上孔21の径の大きさと風下孔31の径の大きさとの差Aが2.5mm以上であることが好ましいことがわかった。
さらに、風上側抵抗装置2の風上孔(貫通孔)21と風下側抵抗装置3の風下孔(貫通孔)31との間の間隔が5mm以上であることが好ましいことがわかった。
【0046】
上述した実験結果から、実施形態1のように、風上側抵抗装置2の風上孔21の数と風下側抵抗装置3の風下孔31の数とが同数であって、かつ、風上側抵抗装置2の風上孔21と風下側抵抗装置3の風下孔31とが一対一で向かい合うように構成された抵抗装置1Xによれば、風上孔21と風下孔31との間の間隔H、即ち、風上側抵抗装置2と風下側抵抗装置3との間の間隔を調整することで、発生させる暗騒音の大きさや音の高低を調整可能な暗騒音発生装置を提供できることが実証された。
また、一対一で向かい合う風上側抵抗装置2の風上孔21の径の大きさと風下側抵抗装置3の風下孔31の径の大きさとを異ならせた場合、発生させる暗騒音の大きさや音の高低を調整可能な暗騒音発生装置を提供できることが実証された。
即ち、部屋の用途によって必要とされるマスキング処理(抵抗装置1Xにより発生させる暗騒音で生活音を覆い隠す処理)のレベルが異なるが、実施形態1によれば、部屋の用途に適したマスキング処理を実現可能な暗騒音発生装置を提供できるようになった。
例えば、寝室のような場所では、生活音(歩行音など)は30dB程度であるので、A特性音圧レベルが30dB~35dB程度となる抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置を設ければよい。
また、話し声が気になるような場所(共用廊下に面した部屋、住戸内の廊下など)ではもう少し大きめの40dB程度の音でマスキングする。つまり、この場合、A特性音圧レベルが40dB程度となる抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置を設ければよい。
即ち、部屋の用途に応じたマスキング効果が得られる抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置を設ければよい。
【0047】
尚、一般的な部屋においては、A特性音圧レベルが30dB~50dB程度となる抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置を設ければよいと考えられる。
しかしながら、例えば、天井が高く非常に広い部屋のような場合には、給気孔1の近傍(例えば上述した実験のように、天井模型に形成された貫通孔の中心位置から真下に1m離れた位置)において、ある程度大きい音を鳴らして、部屋の隅々に行き渡らせる必要がある。従って、このような場合は、上述した実験において、A特性音圧レベルが50dB以上となった試験体のような抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置を設ければよいと考えられる。一方、反対に、寝室のような小さい部屋の場合には、部屋での反射などを考慮して部屋内のA特性音圧レベルが30dB程度となるような抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置を設ければよいと考えられる。
即ち、給気孔1の位置や部屋の大きさ、部屋の用途に対応したマスキング処理を実現できる抵抗装置1Xを選択して、暗騒音発生装置を構成すればよい。
【0048】
また、実験からわかるように、抵抗装置1Xによれば、周波数帯域ごとの音圧レベルの大きさ、音圧レベルを大きくできる周波数の範囲についても、選択可能となる。
即ち、対象となる音源によって、適した抵抗装置1Xを選択することも可能となる。
例えば、歩行音のような生活音は比較的低い音なので、低い音(例えば125Hz~250Hz帯域)に対してマスキング処理できる抵抗装置1Xを選択して、暗騒音発生装置を構成すればよい。
また、話し声が対象となる場合は、特に女性は高い音なので、高い音(例えば500Hz~1000Hz帯域)に対してマスキング処理できる抵抗装置1Xを選択して、暗騒音発生装置を構成すればよい。
即ち、実施形態1によれば、対象となる音源の周波数特性に対応してマスキング処理を実現できる暗騒音発生装置を構成できるようになる。
【0049】
実施形態2
実施形態1では、円筒体23を備えた風上側抵抗装置2、円筒体33を備えた風下側抵抗装置3を例示したが、円筒体23を備えない風上側抵抗装置2、円筒体33を備えない風下側抵抗装置3であってもよい。
この場合、孔付き円形板22や孔付き円形板32の外周面とダクト16Cの内周面16Uとが接触又は近接するようにダクト16Cの内側に固定状態に設置された風上側抵抗装置2や風下側抵抗装置3とすればよい。
即ち、風下側抵抗装置3や風上側抵抗装置2は、ダクト16Cの内径寸法に対応した外径寸法の円形板に風上孔21や風下孔31が形成された孔付き板を備えた構成であればよく、当該孔付き板の外周面とダクト16Cの内周面16Uとが接触又は近接するようにダクト16Cの内側に固定状態に設置されたものとすればよい。この場合、例えば、当該孔付き板の外周側に16Cの内周面16Uに対する図外の取付部(爪等)を設けて、当該取付部を介して当該抵抗板をダクトの内面に直接取り付けるような構成としてもよい。
【0050】
実施形態3
上述した実験結果を考慮して、風上側抵抗装置2と風下側抵抗装置3とが連結されて、風上側抵抗装置2と風下側抵抗装置3との間の間隔が変更可能に構成された抵抗装置1Xを用いれば、風上側抵抗装置2と風下側抵抗装置3との間の間隔を調整することで、発生させる暗騒音の大きさや音の高低を調整可能な暗騒音発生装置を提供できるようになる。
【0051】
尚、実施形態では、暗騒音発生装置や内気取込孔を天井に設けた例を示したが、暗騒音発生装置や内気取込孔17を床に設けるようにしてもよい。この場合、給気手段、熱交換システム、ダクト等は、床下空間に設け、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側に抵抗装置1Xを設置すればよい。
即ち、本発明の暗騒音発生装置は、床下空間に設けることも可能であり、当該暗騒音発生装置を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくできる。
【0052】
また、暗騒音発生装置や内気取込孔17を、壁内空間を有した間仕切り壁に設けるようにしてもよい。この場合、ダクト等は、壁内空間に設け、ダクト16Cの部屋12に近い側の端部側の内側に抵抗装置1Xを設置すればよい。
即ち、本発明の暗騒音発生装置は、壁内空間に設けることも可能であり、当該暗騒音発生装置を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくできる。
【0053】
また、内気取込孔17に接続されるダクト16B内に抵抗装置1Xを設けて暗騒音発生装置を構成してもよい。
【0054】
熱交換システムを備えない構成としてもよい。
この場合、強制給気手段、及び、強制排気手段のいずれか一方、又は、両方を備えない構成としてもよい。
このような場合、建物外部から、天井裏空間、床下空間、壁内空間を経由する空気を部屋内に給気するために、給気孔1に給気ファンを設ければよい。
【0055】
また、各実施形態では、建物の外部から建物の内部に取り込んだ空気を建物内の複数の各部屋に分配するために複数の各部屋の天井に暗騒音発生装置を設けた例を示したが、必ずしも、建物内の複数の各部屋に分配する構成とする必要はない。即ち、建物内の特定の1つの部屋の天井、又は、床、あるいは、間仕切り壁に暗騒音発生装置を設けることにより、当該暗騒音発生装置を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを大きくするようにすればよい。
【0056】
ダクトは、断面円形以外の断面形状に形成されたダクトを用いてもよい。例えば、断面四角形状、あるいは、断面三角形状等の断面形状のダクトを用いても構わない。
【0057】
また、ダクトの材質、抵抗装置の材質は、特に限定されない。例えば、金属、合成樹脂等によりダクトや抵抗装置を形成すればよい。
【0058】
また、各実施形態では、抵抗装置1Xをダクト16C等のダクト内に設けた例を示したが、給気手段13の給気孔の内側に、抵抗装置1Xを設けるようにしてもよい。例えば、建物10の外壁9に形成された貫通孔、又は、当該貫通孔内に装着されて外気取込孔を形成する円筒体(特許文献1のパイプ6に相当)等により構成される給気孔の内側に、抵抗装置1Xを設けるようにしてもよい。
即ち、本発明の暗騒音発生装置は、建物外部と室内とを連通させるために建物に設けられた空気流通路として機能する給気孔の内側に、空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置であってもよい。
つまり、本発明の暗騒音発生装置は、建物の外部から空気を建物内の部屋に導くダクト、又は、外壁9に形成されて建物の外部から空気を建物内の部屋に導く給気孔等の空気流通路内に、上述した抵抗装置1Xを備えた暗騒音発生装置であればよい。
【0059】
上述した給気手段13の円筒体、給気孔1を形成する筒部品としての円筒状部品1A、排気手段15の円筒体は、必ずしも円筒体でなくともよく、例えば角筒体などの筒体であってもよい。
また、実施形態では、給気孔1を形成する筒部品として、一端開口側円筒部と一端開口側円筒部の径よりも小さい他端開口側円筒部とを備えた段差付きの円筒状部品1Aを例示したが、給気孔1を形成する筒部品は段差のない筒部品であってもよい。
【0060】
また、空気流通路として機能するダクトや筒体が、断面円形以外の断面形状に形成されたダクトや円筒体以外の筒体で構成されている場合には、風上側抵抗装置2の筒体や風下側抵抗装置3の筒体は、これらダクトや筒体の断面形状に対応した形状の筒体を用いればよい。
【0061】
実施形態では、風上孔21及び風下孔31が円形貫通孔により構成された例を示したが、風上孔21及び風下孔31は、ダクト16Cの内径寸法に対応した外径寸法の板に形成された、楕円、長円、オーバル等の円状貫通孔、あるいは、四角形状、三角形状、多角形状、異形形状等の貫通孔であってもかまわない。
【0062】
空気流通路内に設置された状態において一対一で向かい合う風上孔21の中心2C及び風下孔31の中心3Cのうちの少なくともの1つの中心が、空気流通路の中心線上に位置されない構成としてもよい。即ち、空気流通路内に設置された状態において一対一で向かい合う風上孔21の中心2Cと風下孔31の中心3Cとがずれている構成であってもよい。
【0063】
また、空気流通路内に設置された状態において一対一で向かい合う風上孔21と風下孔31との一対の孔群は、1組に限らず、複数組設けられていてもかまわない。
即ち、抵抗装置1Xは、空気流通路内に設置された状態において一対一で向かい合う風上孔21と風下孔31との一対の孔群を、複数組備えた構成であっても構わない。
【0064】
また、抵抗装置は、3D(立体)プリンター等を用いて一体成形されたものを用いても構わない。
【0065】
また、実施形態では、建物としてマンション等の共同住宅を例示したが、本発明は、一戸建て、ホテル、事務所、その他の建物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 給気孔、1X 抵抗装置、2 風上側抵抗装置、3 風下側抵抗装置、
10 建物、12 部屋、16C ダクト(空気流通路)、21 風上孔(貫通孔)、
22 孔付き円形板(抵抗板)、31 風下孔(貫通孔)、
32 孔付き円形板(抵抗板)。