(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031937
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】生コンクリートの品質予測システム、及び生コンクリートの品質予測方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20230302BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20230302BHJP
G01N 11/00 20060101ALN20230302BHJP
【FI】
G06Q10/04
G01N33/38
G01N11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137726
(22)【出願日】2021-08-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・令和3年7月20日に、日本建築学会2021年度大会(東海)学術講演梗概集1079,pp.157-158にて公開 ・令和3年8月1日に、令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会の講演概要のウェブサイト(https://confit.atlas.jp/guide/event/jsce2021/participant_login?lang=ja)にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正智
(72)【発明者】
【氏名】早野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小池 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】出荷時に、荷卸し時における生コンクリートのスランプ値を高い精度で予測可能な生コンクリートの品質予測システム、及び生コンクリートの品質予測方法を提供する。
【解決手段】第一教師データに基づく機械学習により生成された第一学習済みモデルが記憶される記憶部と、予測用入力データの入力を受け付ける入力部と、第一学習済みモデルによって導出される第一出力結果を出力する出力部とを備え、第一教師データは、生コンクリートの配合関連情報と出荷時スランプ情報とを含む第一学習データ群に基づく学習用入力データと、荷卸しされた時の生コンクリートの荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、予測用入力データは、予測対象の生コンクリートの配合関連情報と出荷時スランプ情報とを含むものであり、第一出力結果は、予測対象の生コンクリートの荷卸し時スランプ情報である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一教師データに基づく機械学習により生成された第一学習済みモデルが記憶される記憶部と、
予測用入力データの入力を受け付ける入力部と、
前記第一学習済みモデルによって導出される第一出力結果を出力する出力部とを備え、
前記第一教師データは、生コンクリートの配合に関連する情報である配合関連情報と出荷前の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報とを含む第一学習データ群に基づく学習用入力データと、荷卸し時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データは、予測対象の生コンクリートの前記配合関連情報と前記出荷時スランプ情報とを含むものであり、
前記第一出力結果は、当該予測対象の生コンクリートの荷卸し時スランプ情報であることを特徴とする生コンクリートの品質予測システム。
【請求項2】
前記第一教師データは、生コンクリートの製造に関連する情報である製造関連情報、生コンクリートの運搬に関連する情報である運搬関連情報、及び生コンクリートの製造開始時から打設完了時までにおける環境に関連する情報である環境関連情報のうちの少なくとも一つの情報を含む第二学習データ群に基づく学習用入力データと、前記学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データは、前記予測対象の生コンクリートの前記第一学習データ群と前記第二学習データ群に対応する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項3】
前記第一学習データ群、前記第二学習データ群、及び前記予測用入力データに含まれる情報のうちの、少なくとも一つの情報を、生コンクリート工場における情報管理システムから取得することを特徴とする請求項2に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項4】
前記出力部は、予測対象の生コンクリートについて前記第一出力結果を出力した後、当該予測対象の生コンクリートに関する別の前記予測用入力データである第一予測用更新データが前記入力部に入力されると、前記第一学習済みモデルが前記第一予測用更新データに基づいて導出した更新出力結果を出力することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項5】
予測対象の生コンクリートの製造時、又は出荷時から荷卸し時までの間の時間において、前記第一学習済みモデルが前記更新出力結果を出力することを特徴とする請求項4に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項6】
前記予測用入力データと、前記予測対象の生コンクリートの荷卸し時のスランプ値、又はスランプフロー値の測定値とを教師データとして機械学習を繰り返すことにより、前記第一学習済みモデルを更新することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項7】
前記第一出力結果である荷卸し時スランプ情報に含まれる生コンクリートの荷卸し時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値が、所定の閾値を超えた場合に、報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項8】
前記記憶部は、第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルが記憶されており、
前記第二教師データは、前記配合関連情報、生コンクリートの製造に関連する情報である製造関連情報、生コンクリートの製造開始時から打設完了時までにおける環境に関連する情報である環境関連情報のうち少なくとも一つの情報に基づく学習用入力データと、出荷時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二学習済みモデルにおける予測用入力データは、前記配合関連情報、前記製造関連情報、前記環境関連情報のうち少なくとも一つの情報を含み、
前記第二学習済みモデルによって導出される第二出力結果は、前記第二学習済みモデルによって導出される予測対象の生コンクリートの出荷時スランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含み、
前記第二出力結果を、前記第一学習済みモデルによって第一出力結果を導出する際の前記予測用入力データにおける出荷時スランプ情報として用いることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項9】
ミキサ内で練り混ぜられている生コンクリートを撮影して画像データを取得するカメラを備え、
前記記憶部は、第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルが記憶されており、
前記第二教師データは、前記画像データに基づく学習用入力データと、出荷時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二学習済みモデルにおける予測用入力データは、予測対象の生コンクリートの前記画像データを含み、
前記第二学習済みモデルによって導出される、前記第二学習済みモデルによって導出される予測対象の生コンクリートの出荷時スランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含む第二出力結果を、前記第一学習済みモデルによって第一出力結果を導出する際の前記予測用入力データにおける出荷時スランプ情報として用いることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項10】
前記出力部は、予測対象の生コンクリートについて前記第二出力結果を出力した後、当該予測対象の生コンクリートに関する別の前記予測用入力データである第二予測用更新データが前記入力部に入力されると、前記第二学習済みモデルが前記第二予測用更新データに基づいて導出した更新出力結果を出力することを特徴とする請求項8又は9に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項11】
予測対象の生コンクリートの製造時、又は出荷時から荷卸し時までの間の時間において、前記第二学習済みモデルが前記更新出力結果を出力することを特徴とする請求項10に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項12】
前記第二出力結果である出荷時スランプ情報に含まれる生コンクリートの出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値が、所定の閾値を超えた場合に、報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項13】
前記予測用入力データと、予測対象の生コンクリートの出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の測定値とを第二教師データとして機械学習を繰り返すことにより、第二学習済みモデルを更新することを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項14】
前記第一出力結果を表示するための表示装置を備えることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項15】
前記第一出力結果を表示するための表示装置を備え、
前記表示装置は、前記第一出力結果に基づく荷卸し時のスランプ値、荷卸し時のスランプフロー値の予測値、前記第二出力結果に基づく出荷時のスランプ値、及び出荷時のスランプフロー値の予測値のうちの、少なくとも一つを表示することを特徴とする請求項8~13のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項16】
前記第一出力結果は、製造から任意の経過時間における生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含み、
前記表示装置は、前記第一出力結果に基づいて、製造から任意の経過時間における生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値を表示することを特徴とする請求項14又は15に記載の生コンクリートの品質予測システム。
【請求項17】
第一教師データに基づく機械学習により生成された第一学習済みモデルに対して、生コンクリートの予測用入力データの入力することと、
前記第一学習済みモデルによって導出される第一出力結果を取得することとを含み、
前記第一教師データは、生コンクリートの配合に関連する情報である配合関連情報と出荷前の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報とを含む第一学習データ群に基づく学習用入力データ、及び荷卸し時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データは、予測対象の生コンクリートの前記配合関連情報と前記出荷時スランプ情報とを含むものであり、
前記第一出力結果は、当該予測対象の生コンクリートの荷卸し時スランプ情報であることを特徴とする生コンクリートの品質予測方法。
【請求項18】
前記第一教師データは、生コンクリートの製造に関連する情報である製造関連情報、生コンクリートの運搬に関連する情報である運搬関連情報、及び生コンクリートの製造開始時から打設完了時までにおける環境に関連する情報である環境関連情報のうちの少なくとも一つの情報を含む第二学習データ群に基づく学習用入力データと、前記学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データは、前記予測対象の生コンクリートの前記第一学習データ群と前記第二学習データ群に対応する情報を含むことを特徴とする請求項17に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項19】
予測対象の生コンクリートについて前記第一出力結果を取得した後、当該予測対象の生コンクリートに関する別の前記予測用入力データである第一予測用更新データを入力し、前記第一学習済みモデルによって前記第一予測用更新データに基づいて導出される更新出力結果を取得することを特徴とする請求項17又は18に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項20】
予測対象の生コンクリートの製造時、又は出荷時から荷卸し時までの間の時間において、前記第一学習済みモデルによって前記更新出力結果を取得することを特徴とする請求項19に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項21】
前記予測用入力データと、前記予測対象の生コンクリートの荷卸し時のスランプ値、又はスランプフロー値の測定値とを教師データとして機械学習を繰り返すことにより、前記第一学習済みモデルを更新することを、さらに含むことを特徴とする請求項17~20のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項22】
第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルに対して、予測対象の生コンクリートの前記配合関連情報、生コンクリートの製造に関連する情報である製造関連情報、生コンクリートの製造開始時から打設完了時までにおける環境に関連する情報である環境関連情報のうち少なくとも一つの情報に基づく予測用入力データを入力することをさらに含み、
前記第二教師データは、前記配合関連情報、前記製造関連情報、前記環境関連情報のうち少なくとも一つの情報に基づく学習用入力データと、出荷時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二学習済みモデルによって導出される第二出力結果は、前記第二学習済みモデルによって導出される予測対象の生コンクリートの出荷時スランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含み、
前記第二出力結果を、前記第一学習済みモデルによって第一出力結果を導出する際の前記予測用入力データにおける出荷時スランプ情報として用いることを特徴とする請求項17~21のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項23】
第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルに対して、予測対象の生コンクリートの画像データに基づく予測用入力データを入力することをさらに含み、
前記第二教師データは、製造時の生コンクリートの画像データに基づく学習用入力データと、出荷時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二学習済みモデルによって導出される予測対象の生コンクリートの出荷時スランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含む第二出力結果を、前記第一学習済みモデルによって第一出力結果を導出する際の前記予測用入力データにおける出荷時スランプ情報として用いることを特徴とする請求項17~21のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項24】
予測対象の生コンクリートについて前記第二出力結果を出力した後、当該予測対象の生コンクリートに関する別の前記予測用入力データである第二予測用更新データを入力して、前記第二学習済みモデルが前記第二予測用更新データに基づいて導出した更新出力結果を取得することを特徴とする請求項22又は23に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項25】
予測対象の生コンクリートの製造時、又は出荷時から荷卸し時までの間の時間において、前記第二学習済みモデルによって前記更新出力結果を取得することを特徴とする請求項24に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項26】
前記予測用入力データと、予測対象の生コンクリートの出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の測定値とを第二教師データとして機械学習を繰り返すことにより、第二学習済みモデルを更新することをさらに含むことを特徴とする請求項22~25のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートの品質を予測するためのシステムに関する。また、本発明は、生コンクリートの品質予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリートは、使用用途や使用する現場の環境に応じて、要求される特性が異なる。そのため、従来、生コンクリートの製造工程においては、製造する生コンクリートが、要求される特性を満たすように、感覚や経験に基づいて、目視で練り混ぜ状態を確認して出荷していた。
【0003】
生コンクリートの重要な特性の一つとして、スランプ値がある。スランプ値は、硬化前のコンクリートのコンシステンシーを示す指標として用いられる値であり、一般的に生コンクリートの出荷時や荷卸し時には、当該生コンクリートのスランプ値が要求される数値範囲内であるかどうかの評価や検査が行われる。
【0004】
生コンクリートのスランプ値の評価結果や検査結果は、製造された生コンクリートを出荷できるかどうか、荷卸し現場にて使用できるかどうかの合否判定の基準となる。このため、生コンクリートのスランプ値は、製造工場から出荷される前に、できる限り作業者の感覚や経験に依らず、高い精度で予測できることが期待されている。
【0005】
そこで近年では、製造工場から出荷される時のスランプ値をより高い精度で予測するために、ミキサ内の練り混ぜられている生コンクリートの画像データと出荷時のスランプ値とを関連付けた教師データを適用した機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて、生コンクリートのスランプ値を予測する方法が提案されている(下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生コンクリートは、製造工場で製造された後、生コンクリートの運搬車両であるアジテータ車によって荷卸し現場まで、最大90分間かけて運搬される。このため、生コンクリートは、製造工場から荷卸し現場まで運搬される間に、時間の経過によって徐々に特性が変化する。したがって、生コンクリートのスランプ値は、出荷時において要求される数値範囲内であったとしても、運搬による時間経過等によって、荷卸し時には当該数値範囲から逸脱してしまう程に変動してしまう場合がある。
【0008】
上記のような事態が生じ得ることから、以前より生コンクリートのスランプ値の予測に関しては、荷卸し時のスランプ値を出荷前に高い精度で予測できる方法やシステムが求められていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、出荷時に、荷卸し時における生コンクリートのスランプ値を高い精度で予測可能な生コンクリートの品質予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の生コンクリートの品質予測システムは、
第一教師データに基づく機械学習により生成された第一学習済みモデルが記憶される記憶部と、
予測用入力データの入力を受け付ける入力部と、
前記第一学習済みモデルによって導出される第一出力結果を出力する出力部とを備え、
前記第一教師データは、生コンクリートの配合に関連する情報である配合関連情報と出荷前の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報とを含む第一学習データ群に基づく学習用入力データと、荷卸し時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データは、予測対象の生コンクリートの前記配合関連情報と前記出荷時スランプ情報とを含むものであり、
前記第一出力結果は、当該予測対象の生コンクリートの荷卸し時スランプ情報であることを特徴とする。
【0011】
本明細書においては、特に区別する必要が無い限り、スランプ値とスランプフロー値とがまとめて「スランプ値」と記載される。
【0012】
本発明の品質予測システムで用いられる配合関連情報は、運搬中の生コンクリートにおける流動性等がどのように変化し、時間経過によってどの程度のスランプロス(出荷時スランプ値-荷卸し時スランプ値)が発生するかを予測するための要素として用いられる。
【0013】
なお、配合関連情報は、出荷時スランプ値-荷卸し時スランプ値が負の値となる場合(スランプが伸びる場合)であっても、当該スランプの伸びが発生するかを予測するための要素として用いることができる。配合関連情報の具体的な内容については、「発明を実施するための形態」の項目において例示列挙して説明される。
【0014】
本発明の品質予測システムで用いられる学習済みモデルは、機械学習によって作成されるが、機械学習に用いられる学習方法についても、配合関連情報と同様に、「発明を実施するための形態」の項目において詳述される。
【0015】
本明細書における「出荷時スランプ情報」とは、出荷される直前の生コンクリートのスランプ値やスランプフロー値に関連する情報であって、出荷される直前に実際に測定された生コンクリートのスランプ値の測定値や、出荷時のスランプ値を予測するシステムによって導出された生コンクリートのスランプの予測値等である。
【0016】
また、本明細書における「荷卸し時」とは、生コンクリートを搭載した運搬車両が、打設現場に到着してから打設完了までの時間であり、荷卸し時のスランプ値とは、生コンクリートを搭載した運搬車両が打設現場に到着してから打設完了までの時間において、測定されるスランプ値又はスランプフロー値である。「製造時」とは、配合設計を開始してから生コンクリートの原料となる材料の投入を開始し運搬車両に積載されるまでの時間であり、「出荷時」とは、製造後から運搬を開始するまでの時間である。
【0017】
本発明者らは、上記特許文献1に記載の予測方法を応用し、生コンクリートの製造工程における練り混ぜ中のミキサ内を撮影して得られた画像データに基づいて、荷卸し時の生コンクリートのスランプ値を予測するシステムについて鋭意検討を行った。
【0018】
ところが、上記特許文献1に開示されているような練り混ぜ中のミキサ内を撮影して得られた画像データに基づく予測方法では、荷卸し時におけるスランプ値を期待される精度で予測することが難しかった。
【0019】
この理由は、画像データを用いてスランプ値を予測するような上記特許文献1に記載のシステムでは、画像データの情報量が多く、かつ、この画像データは、現在のスランプを予測する因子として主に機能するため、荷卸し時のスランプ予測が難しい。
【0020】
また、運搬時間をスランプ値の予測に用いたとしても、運搬時間単独で用いた場合には、荷卸し時スランプを予測できるものではない。そのため、画像データと運搬時間との両方を用いても、荷卸し時スランプ値を適切に評価することはできなかった。また、ピクセルごとや切り出された領域ごとに予測値がバラつくこともあり得る。
【0021】
出荷時のスランプ値を予測する場合、運搬に要する時間でのスランプ値の変化を予測する必要が無いため、ピクセルごとや切り出された領域ごとに導出された値のバラつきが比較的小さい。したがって、平均化処理等を用いることで、比較的安定したスランプの予測値が得られる。
【0022】
ところが、単純に同じ原理で荷卸し時のスランプ値を予測しようとすると、ピクセルごとや切り出された領域ごとに導出された値に対して、さらに運搬に要する時間をも含めた予測が行われる。このため、荷卸し時のスランプ値の予測は、出荷時のスランプ値の予測と比べると、ピクセルごとや切り出された領域ごとに導出された値のバラつきによる影響を大きく受けてしまう。したがって、画像データを用いてスランプ値を予測するシステムでは、生コンクリートの出荷時のスランプの予測値に比べて、荷卸し時のスランプの予測値が安定しにくく、期待される精度での予測が困難となる。
【0023】
本発明の品質予測システムは、一意に決まる出荷時のスランプ値に基づいて荷卸し時のスランプ値を予測する。また、配合関連情報と、出荷から荷卸しまでに要する時間の情報の組み合わせにより、荷卸し時までにどの程度のスランプロスが生じるかが予測できる。
【0024】
したがって、本発明の品質予測システムは、画像データのピクセルごとや領域ごとで予測値がバラつくおそれがなく、荷卸し時の生コンクリートのスランプ値を従来よりも高精度に予測することができる。
【0025】
さらに、本発明の品質予測システムによれば、生コンクリートの荷卸し時におけるスランプ値を、製造工程の途中でも高い精度で予測できることから、製造中の生コンクリートの荷卸し時のスランプ値が、要求される数値範囲に収まるかどうかを確認しながら、生コンクリートの品質に問題が生じた場合に、作業者や管理者、運搬担当者等ができる限り早い段階で、生コンクリートの作り直しや、運搬中止等の判断をすることができる。
【0026】
上記品質予測システムは、
前記第一教師データは、生コンクリートの製造に関連する情報である製造関連情報、生コンクリートの運搬に関連する情報である運搬関連情報、及び生コンクリートの製造開始時から打設完了時までにおける環境に関連する情報である環境関連情報のうちの少なくとも一つの情報を含む第二学習データ群に基づく学習用入力データと、前記学習用出力データとが関連付けられたデータ少なくとも一つの情報を含むものであり、
前記予測用入力データは、前記予測対象の生コンクリートの前記第一学習データ群と前記第二学習データ群に対応する情報を含むように構成されていても構わない。
【0027】
さらに、上記品質予測システムは、
前記第一学習データ群、前記第二学習データ群、及び前記予測用入力データにおける情報のうち、少なくとも一つの情報を、生コンクリート工場における情報管理システムから取得するように構成されていても構わない。
【0028】
製造関連情報は、運搬中の生コンクリートにおいて流動性等にどのような変化が生じ、時間経過によってどの程度のスランプロスが生じるかを予測するための要素として用いられる。
【0029】
運搬関連情報は、生コンクリートがどの運搬車両によって、どれぐらいの時間を要して荷卸し現場まで運搬されるか等を特定するための要素として用いられる。
【0030】
環境関連情報は、生コンクリートの製造から、製造された生コンクリートが現場に運搬され、打設完了までの環境を特定するための要素として用いられる。
【0031】
製造関連情報、運搬関連情報、及び環境関連情報の具体的な内容については、上述した配合関連情報と同様に「発明を実施するための形態」の項目において例示列挙して説明される。
【0032】
上述した製造関連情報、運搬関連情報、環境関連情報は、それぞれ運搬されている最中に生コンクリートの特性に影響を与える要素として荷卸し時のスランプ値の予測に用いられる。これらの要素が含められることで、単純に時間経過によるスランプロスだけでなく、運搬されている生コンクリートが受ける温度や湿度、運搬総量等による影響まで加味してのスランプロスの予測が可能となる。
【0033】
つまり、上記構成とすることで、品質予測システムは、生コンクリートの荷卸し時のスランプ値をより高い精度で予測することができる。
【0034】
なお、第一学習済みモデルに適用される製造関連情報、運搬関連情報、環境関連情報はそれぞれ、列挙した情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記品質予測システムは、
前記出力部は、予測対象の生コンクリートについて前記第一出力結果を出力した後、当該予測対象の生コンクリートに関する別の前記予測用入力データである第一予測用更新データが前記入力部に入力されると、前記第一学習済みモデルが前記第一予測用更新データに基づいて導出される更新出力結果を出力するように構成されていても構わない。
【0036】
さらに、上記品質予測システムは、
予測対象の生コンクリートの製造時、又は出荷時から荷卸し時までの間の時間において、前記第一学習済みモデルが前記更新出力結果を出力するように構成されていても構わない。
【0037】
上記構成とすることで、品質予測システムは、運搬中に天候の変化等が生じた場合等に、適宜運搬関連情報や環境関連情報を更新した予測用更新データを入力して、状況に応じて荷卸し時スランプの予測値をリアルタイムに確認することができる。
【0038】
また、上記構成とすることで、品質予測システムは、例えば、運搬中に生コンクリートを荷卸し現場まで予定通りに運搬できない事態が生じた場合に、荷卸し現場までに要すると予想される時間を予測用更新データとして入力することで、そのまま荷卸し現場に向かっても問題がないかどうかの判断に用いることができる。
【0039】
特に、予測対象の生コンクリートの製造時において、更新出力結果を出力するような構成とすることで、当該生コンクリートを運搬車両に搭載する前に、品質確認ができるため、安定した品質で出荷することが可能となる。
【0040】
また、従来、荷卸し時スランプ値は運搬車両での輸送中に各種要因により変動することがあったが、この変動の有無を判断するためには、打設現場にてスランプ値の測定値を確認する必要があった。これに対して、本件発明では、出荷時から荷卸し時までの間の時間において、更新出力結果を出力するような構成とすることで、打設現場において実際に試験を行う前に、変動の有無が早期予測できるため、適切に品質保持を行うことができる。
【0041】
上記品質予測システムは、
前記予測用入力データと、前記予測対象の生コンクリートの荷卸し時のスランプ値、又はスランプフロー値の測定値とを教師データとして機械学習を繰り返すことにより、前記第一学習済みモデルを更新するように構成されていても構わない。
【0042】
上記構成とすることで、第一学習済みモデルは、順次入力される予測用入力データと、荷卸し時スランプの測定値とに基づいてより高い精度で荷卸し時のスランプ値を予測できるモデルに更新される。
【0043】
また、上記品質予測システムは、
前記第一出力結果である荷卸し時スランプ情報に含まれる生コンクリートの荷卸し時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値が、予め定められた所定の閾値を超えた場合に、報知する報知手段を備えていても構わない。
【0044】
報知手段は、例えば、ブザーやベル等の音によって報知する方法や、表示灯や表示装置への表示等、人の視覚によって認知できる形で報知する機構や方法等を採用し得る。
【0045】
上記構成とすることで、製造中や運搬中の生コンクリートの品質に問題が生じる可能性があることが検知された場合、即座に、かつ、確実に作業者や管理者、運搬担当者等が問題の発生を認知することができる。したがって、生コンクリートの品質に問題が生じた場合に、作業者や管理者、運搬担当者等ができる限り早い段階で、生コンクリートの作り直しや、運搬中止等の判断をすることができる。
【0046】
上記品質予測システムにおいて、
前記記憶部は、複数の第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルが記憶されており、
前記第二教師データは、前記配合関連情報、前記製造関連情報、前記環境関連情報のうち少なくとも一つの情報に基づく学習用入力データと、出荷時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二学習済みモデルにおける予測用入力データは、前記配合関連情報、前記製造関連情報、前記環境関連情報のうち少なくとも一つの情報を含み、
前記第二学習済みモデルによって導出される第二出力結果は、前記第二学習済みモデルによって導出される予測対象の生コンクリートの出荷時スランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含み、
前記第二出力結果を、前記第一学習済みモデルによって第一出力結果を導出する際の前記予測用入力データにおける出荷時スランプ情報として用いるように構成されていても構わない。
【0047】
また、上記品質予測システムは、
ミキサ内で練り混ぜられている生コンクリートを撮影して画像データを取得するカメラを備え、
前記記憶部は、第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルが記憶されており、
前記第二教師データは、前記画像データに基づく学習用入力データと、出荷時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二学習済みモデルにおける予測用入力データは、予測対象の生コンクリートの前記画像データを含み、
前記第二学習済みモデルによって導出される、前記第二学習済みモデルによって導出される予測対象の生コンクリートの出荷時スランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含む第二出力結果を、前記第一学習済みモデルによって第一出力結果を導出する際の前記予測用入力データにおける出荷時スランプ情報として用いるように構成されていても構わない。
【0048】
上記構成によれば、品質予測システムは、生コンクリートの出荷時のスランプ値と、荷卸し時のスランプ値を一緒に予測することができる。つまり、荷卸し時のスランプ値が所望の値となるように、生コンクリートの製造工程における練り混ぜ時間等を調整したり、次回以降のバッチの配合を修正したりすることができる。
【0049】
出荷時のスランプ予測値を導出するために第二学習済みモデルに適用する学習用入力データ、及び予測用入力データは、例えば、製造設備の電力負荷値や、生コンクリートを練り混ぜている時のミキサ内の画像データ等、出荷時のスランプ予測値との関連付けができて、出荷時のスランプ予測値を導出するための要素として適用可能なデータであれば、適宜任意のデータを採用しても構わない。
【0050】
上記品質予測システムにおいて、
前記出力部は、予測対象の生コンクリートについて前記第二出力結果を出力した後、当該予測対象の生コンクリートに関する別の前記予測用入力データである第二予測用更新データが前記入力部に入力されると、前記第二学習済みモデルが前記第二予測用更新データに基づいて導出した更新出力結果を出力するように構成されていても構わない。
【0051】
さらに、上記品質予測システムは、
予測対象の生コンクリートの製造時、又は出荷時から荷卸し時までの間の時間において、前記第二学習済みモデルが前記更新出力結果を出力するように構成されていても構わない。
【0052】
さらに、上記品質予測システムは、
前記第二出力結果である出荷時スランプ情報に含まれる生コンクリートの出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値が、所定の閾値を超えた場合に、報知する報知手段を備えていても構わない。
【0053】
さらに、上記品質予測システムは、
前記予測用入力データと、予測対象の生コンクリートの出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の測定値とを第二教師データとして機械学習を繰り返すことにより、第二学習済みモデルを更新するように構成されていても構わない。
【0054】
上記構成とすることで、第二学習済みモデルは、順次入力される予測用入力データと、出荷時スランプの測定値とに基づいてより高い精度で出荷時のスランプ値を予測できるモデルに更新される。
【0055】
また、出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値が、所定の閾値を超えた場合に、報知する報知手段を備えることで、製造中の生コンクリートの品質に問題が生じる可能性があることが検知された場合、即座に、かつ、確実に作業者や管理者、運搬担当者等が問題の発生を認知することができる。したがって、生コンクリートの品質に問題が生じた場合に、作業者や管理者等ができる限り早い段階で、生コンクリートの作り直し等の判断をすることができる。なお、ここでの報知手段は、上記と同様に、例えば、ブザーやベル等の音によって報知する方法や、表示灯や表示装置への表示等、人の視覚によって認知できる形で報知する機構や方法等を採用し得る。
【0056】
上記品質予測システムは、
前記第一出力結果を表示するための表示装置を備えていても構わない。
【0057】
また、上記品質予測システムは、
前記第一出力結果を表示するための表示装置を備え、
前記表示装置は、前記第一出力結果に基づく荷卸し時のスランプ値、荷卸し時のスランプフロー値の予測値、前記第二出力結果に基づく出荷時のスランプ値、及び出荷時のスランプフロー値の予測値のうちの、少なくとも一つを表示するように構成されていても構わない。
【0058】
さらに、上記品質予測システムは、
前記第一出力結果は、製造から任意の経過時間における生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含み、
前記表示装置は、前記第一出力結果に基づいて、製造から任意の経過時間における生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値を表示するように構成されていても構わない。
【0059】
上記構成とすることで、製造工程を担当する担当者や、輸送管理を担当する担当者、運搬を担当する担当者等が、荷卸し時スランプ情報や、時間経過によるスランプロスを適時把握することができる。したがって、各担当者は、スランプ値に関する情報に応じて、例えば、練り混ぜ時間の調整や、運搬継続や中止等を、状況に応じてそれぞれ適切な判断ができ、高品質の生コンクリートを出荷できるようになる。
【0060】
本発明の生コンクリートの品質予測方法は、
第一教師データに基づく機械学習により生成された第一学習済みモデルに対して、生コンクリートの予測用入力データの入力することと、
前記第一学習済みモデルによって導出される第一出力結果を取得することとを含み、
前記第一教師データは、生コンクリートの配合に関連する情報である配合関連情報と出荷前の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報とを含む第一学習データ群に基づく学習用入力データ、及び荷卸し時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データは、予測対象の生コンクリートの前記配合関連情報と前記出荷時スランプ情報とを含むものであり、
前記第一出力結果は、当該予測対象の生コンクリートの荷卸し時スランプ情報であることを特徴とする。
【0061】
上記品質予測方法は、
前記第一教師データは、生コンクリートの製造に関連する情報である製造関連情報、生コンクリートの運搬に関連する情報である運搬関連情報、及び生コンクリートの製造開始時から打設完了時までにおける環境に関連する情報である環境関連情報のうちの少なくとも一つの情報を含む第二学習データ群に基づく学習用入力データと、前記学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記予測用入力データは、前記予測対象の生コンクリートの前記第一学習データ群と前記第二学習データ群に対応する情報を含んでいても構わない。
【0062】
上記品質予測方法は、
予測対象の生コンクリートについて前記第一出力結果を取得した後、当該予測対象の生コンクリートに関する別の前記予測用入力データである第一予測用更新データを入力し、前記第一学習済みモデルによって前記第一予測用更新データに基づいて導出される更新出力結果を取得する方法であっても構わない。
【0063】
上記品質予測方法は、
予測対象の生コンクリートの製造時、又は出荷時から荷卸し時までの間の時間において、前記第一学習済みモデルによって前記更新出力結果を取得する方法であっても構わない。
【0064】
上記品質予測方法は、
前記予測用入力データと、前記予測対象の生コンクリートの荷卸し時のスランプ値、又はスランプフロー値の測定値とを教師データとして機械学習を繰り返すことにより、前記第一学習済みモデルを更新することを、さらに含む方法であっても構わない。
【0065】
上記品質予測方法は、
第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルに対して、予測対象の生コンクリートの前記配合関連情報、前記製造関連情報、前記環境関連情報のうち少なくとも一つの情報に基づく予測用入力データを入力することをさらに含み、
前記第二教師データは、前記配合関連情報、前記製造関連情報、前記環境関連情報のうち少なくとも一つの情報に基づく学習用入力データと、出荷時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二学習済みモデルによって導出される第二出力結果は、前記第二学習済みモデルによって導出される予測対象の生コンクリートの出荷時スランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含み、
前記第二出力結果を、前記第一学習済みモデルによって第一出力結果を導出する際の前記予測用入力データにおける出荷時スランプ情報として用いる方法であっても構わない。
【0066】
上記品質予測方法は、
第二教師データに基づく機械学習により生成された第二学習済みモデルに対して、予測対象の生コンクリートの画像データに基づく予測用入力データを入力することをさらに含み、
前記第二教師データは、製造時の生コンクリートの画像データに基づく学習用入力データと、出荷時の生コンクリートのスランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報である出荷時スランプ情報を含む学習用出力データとが関連付けられたデータであり、
前記第二学習済みモデルによって導出される予測対象の生コンクリートの出荷時スランプ値、又はスランプフロー値に関連する情報を含む第二出力結果を、前記第一学習済みモデルによって第一出力結果を導出する際の前記予測用入力データにおける出荷時スランプ情報として用いる方法であっても構わない。
【0067】
上記品質予測方法は、
予測対象の生コンクリートについて前記第二出力結果を出力した後、当該予測対象の生コンクリートに関する別の前記予測用入力データである第二予測用更新データを入力して、前記第二学習済みモデルが前記第二予測用更新データに基づいて導出した更新出力結果を取得する方法であっても構わない。
【0068】
上記品質予測方法は、
予測対象の生コンクリートの製造時、又は出荷時から荷卸し時までの間の時間において、前記第二学習済みモデルによって前記更新出力結果を取得する方法であっても構わない。
【0069】
上記品質予測方法は、
前記予測用入力データと、予測対象の生コンクリートの出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の測定値とを第二教師データとして機械学習を繰り返すことにより、第二学習済みモデルを更新することをさらに含んでいても構わない。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、出荷時に、荷卸し時における生コンクリートのスランプ値を高い精度で予測可能な生コンクリートの品質予測システム、及び生コンクリートの品質予測方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】生コンクリートの品質予測システムの一実施態様の模式的な全体構成図である。
【
図2】メインサーバの一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3】メインサーバの一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図5】各端末に接続された表示装置が、カメラが撮影しているミキサ内の映像と、ミキサ内で練り混ぜられている生コンクリートの出荷時スランプ値と荷卸し時スランプ値の予測値を表示している状態を示す図面である。
【
図6】各端末に接続された表示装置が、出荷時からの時間経過に対するスランプ値の予測曲線を表示している状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明の生コンクリートの品質予測システムについて、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の個数は、実際の個数と必ずしも一致していない。また、本発明の生コンクリートの品質予測方法の実施例は、後述される品質予測システムが実施する動作が対応している。
【0073】
本発明の生コンクリートの品質予測システムは、後述される生コンクリートの配合関連情報、製造関連情報、運搬関連情報、及び出荷時スランプ情報を含む学習用入力データと、荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとを関連付けてなる複数の第一教師データに基づく機械学習により生成された第一学習済みモデルを用いて、製造される生コンクリートの荷卸し時におけるスランプ値を予測するシステムである。
【0074】
最初に、第一学習済みモデルを生成するための学習用入力データとして用いられる配合関連情報、製造関連情報、運搬関連情報、及び環境関連情報の詳細と、これらの情報と生コンクリートの荷卸し時におけるスランプ値予測との関係性について説明する。
【0075】
[配合関連情報]
配合関連情報は、具体的には、水セメント比(W/C)、セメント種類、混和剤種類、混和剤量、及び単位水量が挙げられる。本発明に用いられる第一学習済みモデルに適用される配合関連情報は、上記の各配合関連情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
配合関連情報は、製造される生コンクリートにおける水和反応が進行する速度等に寄与する情報であって、運搬中の生コンクリートの流動性等にどのような変化が生じ、時間経過によってどの程度のスランプロスが生じるかを予測するための要素となる。このため、生コンクリートの荷卸し時のスランプ値に関する荷卸し時スランプ情報は、配合関連情報と出荷時のスランプ値に関連する情報である出荷時スランプ情報とを関連付けることができる。
【0077】
したがって、配合関連情報と出荷時スランプ情報とを含む学習用入力データ、荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとして機械学習を行って生成された生コンクリートの荷卸し時スランプ値を予測するための第一学習済みモデルを適用することで、製造される生コンクリートの荷卸し時のスランプ値を予測することができる。
【0078】
なお、上記以外の配合関連情報としては、セメントクリンカーの原料に関するデータ、セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ、セメントの粉砕条件に関するデータ等を用いることができるが、これらに限られない。配合関連情報としては、セメント製造における配合関連の情報の他に、骨材や水等の生コンクリートに配合されるものにおける、配合関連の情報であってもよい。例えば、コンクリートの設計強度、単位水量、単位セメント量、セメント密度、セメント比表面積、粗骨材種類、単位粗骨材量、細骨材種類、単位細骨材量、骨材密度、粗粒率、細骨材率、粒度分布、細骨材&粗骨材の密度、吸水率、含水率、表面水率、最大寸法、セメントの化学組成、鉱物組成、粒度分布、ふるい試験残分量、色調や、セメントに含まれる各鉱物の鉱物学的性質及び結晶学的性質や、セメントに含まれる石膏の半水化率等の、セメント全体に関するデータも用いることができる。また、特に、設計スランプ値を好適に用いることができる。設計スランプ値の情報は、荷卸し時スランプ値との相関が高いため、特に、他の配合関連情報が少なかった場合に、設計スランプ値を配合関連情報として用いることにより、より精度よく荷卸し時スランプ値を予測することができる。
【0079】
また、生コンクリートの運搬は、スランプロスがある程度の予測範囲内に収まるように、製造工場から荷卸し現場までに要する時間として基準となる時間が定められている(JIS A 5308)。当該基準となる時間内で運搬される限り、時間差によって生じる生コンクリートのスランプロスは、配合関連情報に基づくスランプロスに比べると小さい。
【0080】
したがって、配合関連情報と出荷時スランプ情報を含む学習用入力モデルを用いて機械学習を行った第一学習済みモデルを適用した品質予測システム1は、人が経験や感覚で予測するよりも高い精度で、出荷前に生コンクリートの荷卸し時のスランプ値を予測することができる。
【0081】
[製造関連情報]
製造関連情報は、具体的には、ミキサ種類、ミキサ形式、練り混ぜ時間、練り混ぜ音、電力負荷値、練り混ぜ時の生コン温度、ミキサ内温湿度等が挙げられる。第一学習済みモデルに適用される製造関連情報は、上記の各製造関連情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
製造関連情報は、練り混ぜ中の生コンクリートの硬さや流動性を確認できる要素であり、出荷時スランプ値を予測するための要素となる。また、配合関連情報との組み合わせによって、出荷時に水和反応がどの程度進行しているか等を把握する要素として用いることができるため、荷卸し時のスランプ値を予測するための要素となり得る。
【0083】
したがって、配合関連情報と出荷時スランプ情報に加え、製造関連情報を含む学習用入力データ、荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとによって機械学習が行われて生成された第一学習済みモデルが適用された品質予測システムは、生コンクリートの荷卸し時のスランプ値をより高い精度で予測することができる。
【0084】
なお、上記以外の製造関連情報としては、空気量、各材料の温度、保管する場所(容器)の温湿度、バッチャーデータ(加温・冷却装置種類、貯蔵水温度、貯蔵骨材温度、貯蔵セメント温度、計量瓶形式、吐出量、最大吐出圧力等)、塩化物含有量、ひび割れ抵抗性、動弾性係数、動せん断弾性係数、動ポアソン比、硬化体空隙量、及び空隙径分布、耐久性、色調、生コンクリート中の各材料の分離状況、流動性、レオロジーに関する値(塑性粘度、降伏値等)、生コンクリート中の塩化物含有量等を用いることができる。
【0085】
[運搬関連情報]
運搬関連情報は、生コンクリートの製造開始時から打設完了時までにおける環境に関連する情報であって、具体的には、運搬車両であるアジテータ車、ダンプ、アジテータ車番号、運搬時速、攪拌性能、アジテータ車攪拌音、ミキサ回転数、積載量、アジテータ車のドラム内の電力負荷値、生コンクリートの容量等の運搬車両に関連する情報や、実際の運搬にかかった時間である運搬時間、目的地まで通常想定される運搬時間、渋滞情報や運搬距離等の運搬状況に関する情報や、打ち込み部材厚等の運搬先の現場環境の情報が挙げられる。第一学習済みモデルに適用される運搬関連情報は、上記の各運搬関連情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
運搬関連情報は、どの運搬車両が使用されて、どのぐらいの時間を要して生コンクリートが荷卸し現場まで運搬されるか等を特定するための要素となる。荷卸し時のスランプ値は、出荷時から所定の時間範囲内で運搬されて荷卸しされると、大きくバラつかないが、より正確な運搬時間を考慮することで、荷卸し時のスランプ値をより高精度に予測することができる。
【0087】
したがって、配合関連情報と出荷時スランプ情報に加え、運搬関連情報を含む学習用入力データと、荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとによって機械学習が行われて生成された第一学習済みモデルが適用された品質予測システムは、生コンクリートの荷卸し時のスランプ値をより高い精度で予測することができる。
【0088】
[環境関連情報]
環境関連情報は、具体的には、アジテータ車内の温度、アジテータ車に対する日射量、風速、風向き、又はアジテータ車が走行する経路の天候、湿度、標高、外気温等が挙げられる。また、生コンクリートの製造場所での天候、湿度、標高、外気温等も環境関連情報として用いることができ、特に、製造場所の外気温を好適に用いることができる。アジテータ車内の温度や、アジテータ車が走行する経路の天候等の運搬中の環境関連情報は、その取得に特別な手段が必要であるが、製造場所での外気温を用いることにより、比較的簡易な方法で、環境関連情報が取得できる。また、生コンクリートの打設現場での日射量、風速、風向き、天候、湿度、標高、又は外気温等も、環境関連情報として用いることができる。第一学習済みモデルに適用される環境関連情報は、上記の各環境関連情報のうちの一種だけを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、アジテータ車に対する日射量の影響により、アジテータ車のミキサ内の温度が高くなると、スランプロスが大きくなるため、日射量に関する情報を用いるとより高い精度で予測することができる。
【0089】
環境関連情報は、運搬中の生コンクリートがどのような環境下で運搬されるかを特定するための要素となる。つまり、生コンクリートの水和反応の進行が、外気温等の影響を受けて早くなるのか遅くなるのか等を把握するための要素となる。
【0090】
したがって、配合関連情報と出荷時スランプ情報に加え、環境関連情報を含む学習用入力データと、荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとによって機械学習が行われて生成された第一学習済みモデルが適用された品質予測システムは、生コンクリートの荷卸し時のスランプ値をより高い精度で予測することができる。
【0091】
以上より、配合関連情報と出荷時スランプ情報を含む学習用入力データを用いて機械学習を行った第一学習済みモデルが適用された品質予測システムは、人が経験や感覚で予測するよりも高い精度で、出荷前に生コンクリートの荷卸し時のスランプ値を予測することができる。
【0092】
さらに、配合関連情報と出荷時スランプ情報に加え、製造関連情報、運搬関連情報、及び環境関連情報を含む学習用入力データと、荷卸し時スランプ情報を含む学習用出力データとによって機械学習を行って生成された生コンクリートの荷卸し時スランプ値を予測するための第一学習済みモデルが適用された品質予測システムは、生コンクリートの荷卸し時のスランプ値をより高い精度で予測することができる。
【0093】
また、上記の配合関連情報、製造関連情報、及び運搬関連情報は、生コンクリート工場における既存の情報管理システムから取得する構成としても構わない。具体的には、既存の生コンクリート工場では、生コンを出荷時に通常使用する指定した材料の配合情報を管理するシステムと、材料を保管する計量値を設定し製造する装置を制御するシステムと生コンの運搬を開始し運搬中の情報を管理するシステムから上記情報を取得することができる。例えば、運搬関連情報は、GPSを活用した生コン配車システム スカイワンII(パシフィックシステム株式会社製)等の配車システムから得られる情報を用いてもよい。
【0094】
なお、上記の情報管理システムは例示であり、配合関連情報、製造関連情報、及び運搬関連情報の取得方法は特に限定されるものではない。
【0095】
なお、第一学習済みモデルの学習に用いる第一教師データのサンプルの数は、学習用入力データから荷卸し時スランプ情報を導出するために必要な特徴量を抽出し、さらに予測精度を高める観点から、好ましくは100以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは10,000以上、さらに好ましくは50,000以上、特に好ましくは100,000以上である。さらに、第一学習済みモデルにおける学習回数は、予測精度を高める観点から、好ましくは1,000回以上、より好ましくは8,000回以上、特に好ましくは10,000回以上であるが、特に限定されない。例えば、学習データとしては、質の高い一つのサンプルのみを教師データとして採用しても構わない。
【0096】
次に、本発明の第一学習済みモデルを作成するための機械学習の方法について説明する。本発明に用いられる第一学習済みモデルを作成するための機械学習の方法としては、例えば、ニューラルネットワーク、線形回帰、決定木、サポートベクター回帰、アンサンブル法、サポートベクターマシン、判別分析、単純ベイズ法、最近傍法等が挙げられる。これらの方法は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
これらの方法の中でも、より高い精度で品質を予測することができる観点から、ニューラルネットワークによる機械学習が選択されることが好ましい。ニューラルネットワークは、より高い精度で品質を予測することができる観点から、入力層と出力層の間に一つ以上の中間層を有する階層型のニューラルネットワークが好適である。
【0098】
ニューラルネットワークの例としては、三次元畳み込みニューラルネットワーク(3DCNN:3D Convolutional Neural Network)等の畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)や、深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)や、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)や、長期・短期記憶(LSTM:Long Short-Term memory)ニューラルネットワーク(LSTMを用いて再帰型ニューラルネットワークを改良したもの)等が挙げられる。
【0099】
これらの中でも、画像認識の分野において優れた性能を有する、畳み込みニューラルネットワーク(中間層として、畳み込み層やプーリング層等を有するニューラルネットワーク)がより好適である。畳み込みニューラルネットワークは、画像データから特徴量を検出し、該特徴量を用いて、分類又は回帰を行うことが可能な予測モデルを作成することができる。畳み込みニューラルネットワークにおける、畳み込み層とプーリング層の組み合わせからなる層の数は、より高い精度で予測をすることができる観点から、好ましくは二つ以上、より好ましくは三つ以上である。
【0100】
また、機械学習を行うためのツールとしては、例えば、Google社が開発したソフトウェアライブラリである「TensorFlow(登録商標)」や、IBM社が開発したシステムである「IBM Watson(登録商標)」等を用いることができる。
【0101】
次に、品質予測システム1の各実施形態の具体的な構成について説明する。
【0102】
[第一実施形態]
本発明の生コンクリートの品質予測システム1の第一実施形態の構成について説明する。
図1は、生コンクリートの品質予測システム1の一実施態様の模式的な全体構成図である。品質予測システム1は、
図1に示すように、メインサーバ10と、当該メインサーバ10とネットワーク接続された、データサーバ20と、操作用端末30と、複数の参照用端末40とで構成されている。
【0103】
なお、メインサーバ10にネットワーク接続されるデータサーバ20、操作用端末30、参照用端末40のそれぞれの数は任意であって、それぞれ有線又は無線でデータ通信を行うように接続されている。
【0104】
第一実施形態におけるメインサーバ10は、作業者が操作用端末30を操作して動作開始の操作を行うと、予測動作を開始する。そして、第一学習済みモデルに適用する予測対象の生コンクリートに関する情報を含む予測用入力データが、データサーバ20又は操作用端末30からメインサーバ10に入力されると、メインサーバ10内で所定の処理が行われて、荷卸し時のスランプの予測値に関連する荷卸し時スランプ情報がメインサーバ10から出力される。
【0105】
メインサーバ10から出力された荷卸し時スランプ情報を含む出力データは、各参照用端末40に送信される。そして、各参照用端末40は、メインサーバ10から出力された当該出力データから得られる荷卸し時スランプ値をそれぞれの表示装置50に表示する。
【0106】
なお、第一実施形態の各参照用端末40は、
図1に示すように、表示装置50と別体のデスクトップ型PCであるが、ノートPC、スマートフォン、タブレット等の表示装置50が一体的に構成されている端末であっても構わない。また、各参照用端末40は、操作用端末30としての機能を兼ねていても構わない。
【0107】
図2は、メインサーバ10の第一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
図2に示すように、第一実施形態におけるメインサーバ10は、データ入力部11と、データ出力部12、第一演算処理部13とを備える。第一演算処理部13は、第一学習済みモデルM1が記録された第一記憶部13aを備える。
【0108】
第一実施形態におけるデータ入力部11は、データサーバ20又は操作用端末30から送信される、第一学習済みモデルM1に適用するために予測用入力データd1(第一実施形態では、予測用の生コンクリートの配合関連情報、製造関連情報、運搬関連情報)の入力を受け付ける。
【0109】
データ入力部11は、全ての予測用入力データd1の受け付けが完了すると、演算用入力データd2を生成して、第一演算処理部13に対して当該演算用入力データd2を出力する。
【0110】
なお、演算用入力データd2は、少なくとも配合関連情報と出荷時スランプ情報(第一学習データ群)が含まれていればよい。また、演算用入力データd2は、配合関連情報と出荷時スランプ情報に加えて、製造関連情報、運搬関連情報、及び環境関連情報(第二学習データ群)のうちの、一部のみが含まれていても構わない。
【0111】
データ出力部12は、第一演算処理部13から出力された演算出力データd3が入力されると、参照用端末40が受信可能な送信用データd4を演算出力データd3に基づいて生成して、各参照用端末40に対して送信用データd4を送信する。
【0112】
第一演算処理部13は、データ入力部11から出力される演算用入力データd2が入力されると、第一記憶部13aに記録されている第一学習済みモデルM1を読み出し、第一学習済みモデルM1に対して演算用入力データd2を適用する。
【0113】
第一演算処理部13は、第一学習済みモデルM1による演算処理を実行し、演算用入力データd2に基づいて導出される第一出力結果である荷卸し時スランプ情報を含む演算出力データd3をデータ出力部12に対して出力する。
【0114】
第一実施形態で学習用入力データ、及び予測用入力データd1として採用した情報は、以下である。
【0115】
【0116】
ここで、上記の各情報を適用した第一学習済みモデルM1が記録された品質予測システム1が、どのぐらいの精度で荷卸し時スランプ値、及びスランプフロー値を予測ができるかを確認する検証実験の結果を説明する。
【0117】
出力データは、製造したコンクリートの荷卸し時スランプ値、及び荷卸し時スランプフロー値の二つとし、それぞれの出力データ数は、荷卸し時スランプ値を779、荷卸し時スランプフロー値を1、163とした。
【0118】
第一学習済みモデルM1の生成は、深層ニューラルネットワーク(DNN)を適用し、学習ライブラリはTensor Flow(登録商標)を使用し、学習回数は、200,000回行った。
【0119】
スランプ値は、許容差を±1.0cm、±1.5cm、±2.0cm、±2.5cmとして正解率を確認した。また、スランプフロー値は、許容差を±2.5cm、±5.0cm、±7.5cm、±10.0cmとして正解率を確認した。
【0120】
結果は、以下のようになった。
【0121】
【0122】
上記結果より、本発明の品質予測システム1が、荷卸し時のスランプ値を、許容差±2.0cm以内で90%以上の精度で、荷卸し時のスランプフロー値を、許容差±5.0cm以内で90%以上の精度で予測できることが確認される。
【0123】
以上より、上記構成とすることで、本発明の品質予測システム1は、一意に決まる出荷時スランプ値に基づいて荷卸し時スランプ値を予測するため、画像データのピクセルごとや領域ごとで予測値がバラつくおそれがない。つまり、荷卸し時の生コンクリートのスランプ値を、従来よりも高精度に予測することができる。
【0124】
さらに、上記構成の品質予測システム1によれば、生コンクリートの荷卸し時におけるスランプ値を、製造工程の途中でも高い精度で予測できることから、製造中の生コンクリートの荷卸し時のスランプ値が、要求される数値範囲に収まるかどうかを確認しながら、ミキサでの練り混ぜ時間等を微調整することができる。つまり、生コンクリートの製造ロスが抑制される。
【0125】
[第二実施形態]
本発明の品質予測システム1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態とは異なる箇所を中心に説明する。
【0126】
第二実施形態の品質予測システム1において、第一学習済みモデルM1に適用される出荷時スランプ情報は、生コンクリートを練り混ぜている時のミキサ内を撮影した画像データに基づいて得られた出荷前における生コンクリートのスランプ予測値である。
【0127】
図3は、メインサーバ10の第二実施形態の構成を模式的に示すブロック図であり、
図4は、ミキサ2内の一部を模式的に示す図面である。
図3に示すように、第二実施形態の品質予測システム1のメインサーバ10は、第二演算処理部14を備える。また、第二実施形態の品質予測システム1は、カメラ60を備える。
【0128】
なお、
図3に図示されているメインサーバ10は、説明の便宜のために演算処理部と記憶部が二つの組に分けられた構成で図示されているが、メインサーバ10は、各演算処理部(13,14)が一つのCPUやMPU等の演算処理ユニット、各記憶部(13a,14a)が一つのフラッシュメモリやハードディスク等のメモリで構成されて、全体で一つの演算処理部を構成していても構わない。
【0129】
カメラ60は、
図4に示すように、生コンクリートを練り混ぜている時のミキサ2内を撮影して、画像データd5を取得する。カメラ60が取得した画像データd5が、第二演算処理部14に入力されると、第二演算処理部14は、出荷時のスランプ予測値を導出し、当該スランプ予測値を予測用入力データd1としてデータ入力部11に出力する。なお、第二実施形態におけるカメラ60とメインサーバ10とは、無線通信で画像データd5を送受信するように構成されているが、有線で送受信するように構成されていても構わない。
【0130】
第二演算処理部14は、第二学習済みモデルM2が記録された第二記憶部14aを備え、適用可能な情報を含む予測用入力データが入力されると、出荷時スランプの予測値に関連する情報を含む第二出力結果を出力する。
【0131】
第二学習済みモデルM2は、生コンクリートの製造工程におけるミキサ2内を撮影して得られた学習用入力画像データと、生コンクリートの出荷時スランプの測定値との組み合わせからなる第二教師データを複数用いた機械学習によって作成された予測モデルである。なお、第二学習済みモデルの機械学習の方法や学習ライブラリは、上述した第一学習済みモデルを生成するために用いられる各種方法や各ライブラリを同様に採用できる。
【0132】
学習用入力画像データとして利用できる画像データは、例えば、生コンクリートの製造に関する画像データが挙げられるが、生コンクリートの材料を練り混ぜるためのミキサ内で各材料を練り混ぜる様子を撮影した画像データの他に、生コンクリートをミキサ2からホッパーに投入する様子を撮影した画像データや、生コンクリートの材料の練り混ぜ時におけるミキサ2の電力負荷値の履歴を表示しているモニタ(電力負荷値の経時変化等を、グラフ等を用いて視覚的にわかるように表示したもの)を撮影した画像データ等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
第二学習済みモデルM2の学習に用いる画像データの数は、より高い精度で品質を予測することができる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは10,000以上、さらに好ましくは50,000以上、特に好ましくは100,000以上である。さらに、第二学習済みモデルM2における学習回数は、予測精度を高める観点から、好ましくは1,000回以上、より好ましくは8,000回以上、特に好ましくは10,000回以上である。
【0134】
なお、画像データは、動画像のデータからキャプチャしたデータであってもよい。また、学習用入力画像データに用いる画像データは、グレースケール画像であってもよく、カラー画像であってもよい。
【0135】
さらに、第二学習済みモデルM2を生成するための機械学習には、より高い精度で品質を予測する観点から、学習用の入力データとして、カメラ60が撮影して取得した画像データに加えて、さらに他のデータ(例えば、配合関連情報や製造関連情報等)を用いてもよい。
【0136】
また、第二学習済みモデルM2に適用される予測用の画像データd5は、より高い精度で品質を予測することができる観点から、ミキサ2内において回転している撹拌羽根(ミキサ羽根)が、ミキサ2内の任意に定めた特定の場所に位置した際に撮影して取得されることが好ましい。任意に定めた特定の場所は、一か所であっても二か所以上であってもよい。
【0137】
また、第二実施形態における第二学習済みモデルM2は、画像データd5に基づいて出荷時のスランプ予測値を導出するが、出荷時のスランプ予測値を導出するためのデータは、画像データに限られない。第二学習済みモデルM2に適用するデータは、例えば、製造設備の電力負荷値であってもよく、出荷時のスランプ予測値との関連付けができて、出荷時のスランプ予測値を導出するための要素として適用可能なデータであれば、適宜任意のデータを採用しても構わない。また、このような画像データd5、又は他の適用可能なデータに基づいて導出された出荷時のスランプ予測値が、第一学習済みモデルM1に対して適用される演算用入力データd2として用いられることにより、出荷時のスランプを測定する必要がなく、荷卸し時のスランプ値を予測することできるため、効率かつ安定した品質評価をすることができる。
【0138】
図5は、各参照用端末40に接続された表示装置50が、カメラ60が撮影しているミキサ2内の映像と、ミキサ2内で練り混ぜられている生コンクリートの出荷時スランプ値と荷卸し時スランプ値の予測値を表示している状態を示す図面である。
図5に示すように、参照用端末40に接続された表示装置50は、カメラ60が撮影しているミキサ2内の動画を表示すると共に、出荷時スランプの予測値と荷卸し時スランプに予測値とを同時に表示するように構成されていても構わない。出荷時スランプの予測値と荷卸し時スランプに予測値とを同時に表示することによって、練り混ぜ状況と現状のスランプと荷卸し時スランプを評価し、スランプロスを見込むことができるため、生コンを高品質で管理しながら出荷できる。
【0139】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0140】
〈1〉 データ入力部11に演算用入力データd2が入力されて、データ出力部12から第一出力結果を出力した後、別の演算用入力データd2である第一予測用更新データがデータ入力部11に入力されると、第一学習済みモデルM1が当該第一予測用更新データに基づいて導出した更新出力結果をデータ出力部12に出力するように構成されていても構わない。
【0141】
上記構成とすることで、品質予測システム1は、運搬の途中に天候の変化や運搬時間の変更等が生じた場合に、リアルタイムで荷卸しが行われると想定される時間のスランプ値を予測することができる。
【0142】
なお、予測用更新データは、予測用入力データd1に含まれる情報(配合関連情報、製造関連情報、運搬関連情報、環境関連情報、及び出荷時スランプ情報)のうちの一部だけが含まれるデータであっても構わない。配合関連情報、製造関連情報、出荷時スランプ情報は、出荷後に変動する値ではない。このため、予測用更新データは、例えば、運搬関連情報、環境関連情報のみを含むように構成されていても構わない。
【0143】
また、第二学習済みモデルM2に関しても同様に、第二演算処理部14に画像データd5が入力されて、第二演算処理部14から画像データd5に基づいて導出した予測用入力データd1を出力した後、別の画像データd5である第二予測用更新データが第二演算処理部14に入力されると、第二学習済みモデルM2が当該第二予測用更新データに基づいて導出した予測用入力データd1をデータ入力部11に出力するように構成されていても構わない。
【0144】
〈2〉
図6は、各参照用端末40に接続された表示装置50が、出荷時からの時間経過に対するスランプ値の予測曲線を表示している状態を示す図面である。第一学習済みモデルM1は、荷卸し時スランプ情報として、出荷時から荷卸し時までの時間変化に対するスランプ値の変動に関する演算出力データd3を出力するように作成されていても構わない。
【0145】
そして、表示装置50が当該演算出力データd3に基づいて、
図6に示すように、出荷時からの時間経過に対するスランプ値の予測曲線を表示するように構成されていても構わない。
【0146】
上記構成とすることで、運搬担当者が、生コンクリートの出荷前に、運搬中に荷卸し現場まで当初の運搬予定時間通りに運搬できないと自体となった場合等でも、現状から荷卸しを行うまでの時間を推測して、そのまま荷卸し現場まで生コンクリートを運搬しても問題ないかどうかを判断することができる。
【0147】
また、生コンクリートの製造担当者は、運搬に要する時間経過によるスランプロスを想定して、原料の選択や配合割合を調整することができ、より細かい要求に対応できるようになる。
【0148】
また、第一学習済みモデルM1は、荷卸し時スランプ情報として、任意の時間における生コンクリートのスランプ予測値に関する演算出力データd3を出力するように作成されていても構わない。なお、任意の時間における生コンクリートのスランプ予測値は、上述した予測曲線から、指定の時間の値を取り出して得られるように構成されていても構わない。
【0149】
そして、表示装置50が当該演算出力データd3に基づいて、任意の時間における生コンクリートのスランプ値を表示するように構成されていても構わない。
【0150】
〈3〉 本発明の品質予測システム1は、予測用入力データd1と、予測対象の生コンクリートの荷卸し時のスランプ値の測定値とを第一教師データとして機械学習を繰り返すことにより、第一学習済みモデルを更新するように構成されていても構わない。
【0151】
上記構成とすることで、第一学習済みモデルは、順次入力される予測用入力データと、荷卸し時スランプの測定値に基づいてより高い精度で荷卸し時のスランプ値を予測できるモデルに更新される。
【0152】
また、本発明の品質予測システム1は、予測用入力データd1と、予測対象の生コンクリートの出荷時のスランプ値の測定値とを前記第二教師データとして機械学習を繰り返すことにより、第二学習済みモデルを更新するように構成されていても構わない。
【0153】
上記構成とすることで、第二学習済みモデルは、順次入力される予測用入力データと、出荷時スランプの測定値に基づいてより高い精度で荷卸し時のスランプ値を予測できるモデルに更新される。
【0154】
〈4〉 品質予測システム1は、第一出力結果である荷卸し時スランプ情報に含まれる生コンクリートの荷卸し時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値、又は第二出力結果である出荷時スランプ情報に含まれる生コンクリートの出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値が、所定の閾値を超えた場合に、報知する報知手段を備えていても構わない。報知手段は、例えば、ブザーやベル等の音によって報知する方法や、表示灯や表示装置への表示等、人の視覚によって認知できる形で報知する機構や方法等を採用し得る。なお、報知手段は、荷卸し時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値が所定の閾値を超えた場合に報知する手段と、出荷時のスランプ値、又はスランプフロー値の予測値が所定の閾値を超えた場合に報知する手段とが別々に設けられていてもよく、報知手段が一つだけ設けられて、当該報知手段でいずれの場合の報知にも対応できるように構成されていても構わない。
【0155】
上記構成とすることで、製造中や運搬中の生コンクリートの品質に問題が生じる可能性があることが検知された場合、即座に、かつ、確実に作業者や管理者、運搬担当者等が問題の発生を認知することができる。したがって、生コンクリートの品質に問題が生じた場合に、作業者や管理者、運搬担当者等ができる限り早い段階で、生コンクリートの作り直しや、運搬中止等の判断をすることができる。
【0156】
〈5〉 上述した品質予測システム1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0157】
1 : 品質予測システム
2 : ミキサ
10 : メインサーバ
11 : データ入力部
12 : データ出力部
13 : 第一演算処理部
13a : 第一記憶部
14 : 第一演算処理部
14a : 第一記憶部
20 : データサーバ
30 : 操作用端末
40 : 参照用端末
50 : 表示装置
60 : カメラ
M1 : 第一学習済みモデル
M2 : 第二学習済みモデル