(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031953
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】液体揮散体、液体揮散体の製造方法、及び、液体揮散器
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20230302BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61L9/12
B65D83/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137755
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000109440
【氏名又は名称】テイボー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 倫弘
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA18
4C180CA06
4C180GG12
4C180GG17
4C180GG19
4C180HH10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】液体の揮散量の調整がしやすく、また、スティック状の液体揮散体の本数を減らしても多くの揮散量を確保することが可能な液体揮散体、及び、該液体揮散体の製造方法を提供する。
【解決手段】液体揮散体1は、多孔質材料のスティック2と、前記スティックの先端部分の一部又は全部の表面に接着剤が塗布された接着剤部3と、前記接着剤部の表面に、複数の繊維材が植毛された植毛部4と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料のスティックと、
前記スティックの先端部分の一部又は全部の表面に接着剤が塗布された接着剤部と、
前記接着剤部の表面に、複数の繊維材が植毛された植毛部と、
を備える、液体揮散体。
【請求項2】
前記接着剤部は、硬化前に導電性を有する材料からなる、請求項1に記載の液体揮散体。
【請求項3】
前記植毛部の前記繊維材は、合成樹脂繊維、無機繊維、及び、天然繊維のうち1以上から選択される請求項1又は2に記載の液体揮散体。
【請求項4】
前記植毛部の前記繊維材の径は0.5デニール以上20デニール以下であり、前記繊維材の長さは前記繊維材の前記径の30倍以上60倍以下である、請求項1~3いずれか一項に記載の液体揮散体。
【請求項5】
前記スティックの少なくとも前記先端部分は、液体流路が前記スティックの外側と連通する形状を有する、請求項1~4いずれか一項に記載の液体揮散体。
【請求項6】
多孔質材料のスティックの先端部分の一部又は全部の表面に、接着剤を塗布するステップと、
前記接着剤に繊維材を植毛するステップと、
前記植毛された前記接着剤が塗布された前記スティックを乾燥させるステップと、
を含む、液体揮散体の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤は、硬化前に導電性を有する材料である、請求項6に記載の液体揮散体の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤を塗布するステップにおいて、塗布する接着剤の膜厚は、30μm以上300μm以下である、請求項6又は7に記載の液体揮散体の製造方法。
【請求項9】
前記植毛するステップは、前記接着剤と電極との間に静電界を形成し、前記静電界に前記繊維材を通過させることによって行う、請求項6~8いずれか一項に記載の液体揮散体の製造方法。
【請求項10】
前記接着剤を塗布するステップの前に、接着剤を塗布しない部分にマスキングを行うステップを含む、請求項6~9いずれか一項に記載の液体揮散体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~5いずれか一項に記載の液体揮散体を用いた、液体揮散器。
【請求項12】
請求項6~10いずれか一項に記載の液体揮散体の製造方法で製造された液体揮散体を用いた、液体揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液等の液体を揮散させるのに用いる液体揮散体、液体揮散体の製造方法、及び、液体揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主に芳香、消臭、防臭、殺菌、殺虫等の目的で、薬液等の液体を揮散させる手法や容器が開発され、応用されてきた。
【0003】
特許文献1には、容器に液状芳香剤を収容し、吸い上げ芯体で該芳香剤を吸い上げ、上部の畜香揮散体に芳香剤を畜香し、容器を開閉することにより必要な芳香の発生をさせることが開示されている。
また、特許文献2には、容器に芳香防臭液を収容し、該容器に太い芯を差し込み、芯の上部から芳香防臭液を揮散させ、かつ、芯の先端部の外周部が開く量、すなわち、芯の表面積を調整することが開示されている。
【0004】
特許文献3には、薬液が収容された容器に、棒状の揮散体を挿入するタイプの薬液揮散器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭56-146947
【特許文献2】実開昭56-160546
【特許文献3】特開2018-108827
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2記載の揮散方法は、太い畜香揮散体や芯体の表面から薬液を揮散させることから、揮散量を調整することが難しいという課題があった。
【0007】
また、特許文献3のような棒状の揮散体の場合、1本あたりの薬液の吸い上げ量が少ないため、複数本の棒状の揮散体を使用する必要がある。揮散体の本数が多くなると薬液揮散器のバランスが取りづらくなり、安定せず、容器ごと転倒しやすいという課題があった。また、揮散量を確保するために多くの棒状の揮散体を挿入すると、意匠的に美しくないという課題もあった。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、液体の揮散量の調整がしやすく、また、スティック状の液体揮散体の本数を減らしても多くの揮散量を確保することが可能な液体揮散体、及び、該液体揮散体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の液体揮散体は、多孔質材料のスティックと、前記スティックの先端部分の一部又は全部の表面に接着剤が塗布された接着剤部と、前記接着剤部の表面に、複数の繊維材が植毛された植毛部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記接着剤部は、硬化前に導電性を有する材料からなることが好ましい。
【0011】
前記植毛部の前記繊維材は、合成樹脂繊維、無機繊維、及び、天然繊維のうち1以上から選択されることが望ましい。
【0012】
前記植毛部の前記繊維材の径は0.5デニール以上20デニール以下であり、前記繊維材の長さは前記繊維材の前記径の30倍以上60倍以下であることが好ましい。
【0013】
前記スティックの少なくとも前記先端部分は、液体流路が前記スティックの外側に連通する形状を有することが好ましい。
【0014】
本発明の液体揮散体の製造方法は、多孔質材料のスティックの先端部分の一部又は全部の表面に、接着剤を塗布するステップと、前記接着剤に繊維材を植毛するステップと、前記植毛された前記接着剤が塗布された前記スティックを乾燥させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
前記接着剤は、硬化前に導電性を有する材料であることが好ましい。
【0016】
前記接着剤を塗布するステップにおいて、塗布する接着剤の膜厚は、30μm以上300μm以下であることが望ましい。
【0017】
前記植毛するステップは、前記接着剤と電極との間に静電界を形成し、前記静電界に前記繊維材を通過させることによって行うことが好ましい。
【0018】
前記接着剤を塗布するステップの前に、接着剤を塗布しない部分にマスキングを行うステップを含んでもよい。
【0019】
本発明の液体揮散器は、上記液体揮散体を用いたものである。
【0020】
本発明の液体揮散器は、上記液体揮散体の製造方法で製造された液体揮散体を用いたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液体揮散体によれば、液体の揮散量の調整がしやすく、特に揮散量の多い範囲での調整がしやすくなる。また、棒状(スティック状)の液体揮散体の本数を減らしても多くの揮散量を確保することが可能となり、揮散容器の転倒等を防止することができる。同時に、揮散体や揮散容器の形状の意匠を、最近の消費者の多くに好まれやすいものにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】液体揮散体の先端部分の断面写真の例を示す。
【
図3】植毛前のスティック及び接着剤部の例を示す。
【
図5】植毛部の有無による累積揮散量を比較したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の液体揮散体1は、スティック2と、接着剤部3と、植毛部4を備えるものであり、
図1~
図4、
図6、
図7に例を示す。以降、符号を付して説明するが、発明内容を限定するものではない。
【0024】
液体揮散体1は、一方の端部及びその周辺に液体が浸漬され、他方の端部及びその周辺から該液体を揮散するものである。本発明においては、液体を揮散する部分を先端部分、その端部を先端部、先端部及び先端部分がある側を先端側とし、液体を浸漬する部分を後端部分、その端部を後端部、後端部及び後端部分のある側を後端側とする。
【0025】
(スティック)
スティック2は多孔質材料からなり、後端部分に浸漬した液体を、毛細管力で先端側に吸い上げることができる。
よって、多孔質材料としては、毛細管力で液体を吸い上げることができるものであれば特に限定されず、合成樹脂、合成繊維、焼結体、ポリオレフィン系フォーム、葦等の乾燥した植物等が例示される。
合成樹脂の場合、熱可塑性樹脂を溶融押出成形により所要の断面形状及び寸法に成形したものである。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(商標登録)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が例示される。また、目的に応じ、充填剤、各種添加剤等が配合されてもよい。
合成繊維の場合、長手方向に繊維を束ねた繊維束を熱硬化性樹脂等で接着したものでもよいし、ある合成繊維に対し、その合成繊維の融点より低い融点を有する合成繊維を混合して溶融することによって、融点の高い合成繊維同士を接着してもよい。合成繊維としては、ナイロン(登録商標)等のポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等が例示され、熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が例示される。
焼結体の場合、金属粉末の焼結体や熱可塑性樹脂粉末の焼結体が例示される。熱可塑性樹脂粉末の焼結体は、熱可塑性樹脂製の各粒状粒子が互いに部分的に融着し、かつ、各粒状粒子間に相互に連通状の連続気孔を形成する焼結法で成形されたものであり、熱可塑性樹脂としては、UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレンビニルアセテート)、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)の樹脂等が例示される。
ポリオレフィン系フォームは、相互に連通状の連続気孔を有する立体網目構造で、かつ、保形性と適度な可撓性を備えた、熱可塑性生成物である。
【0026】
スティック2の横断面は、先端部分から液体が揮散しやすいように、毛細管である液体流路2bがスティック2の外側に連通する形状を有することが望ましい。すなわち、外周部に溝や隙間を有する形状により、液体流路2bから吸い上げた液体がスティック2の外側と連通可能となっていることが望ましい。液体流路2bがスティック2の外側と連通可能になっている断面形状は、液体が揮散する先端部分だけに存在してもよいし、スティック2の中央部分にも存在してもよいし、スティック2の後端部分にも存在してもよいし、スティック2の全体に存在してもよい。
【0027】
なお、毛細管が吸い上げた液体がスティック2の外側とは連通しないような形状、すなわち、スティック2の内側の毛細管である液体流路2bが、外郭2aによりスティック2の外側と連通しないような断面形状であってもよい。揮発効率は低下するもの、内側の毛細管から吸い上げられた液体は先端部のみから揮発可能である。
また、スティック2の内側の毛細管である液体流路2bが外郭2aによりスティック2の外側と連通しない断面形状であっても、先端部分の外周を切削する、又は、外周に溝を設けることで、先端部分の内側にあった毛細管である液体流路2bをスティック2の外側と連通させることも可能な場合もある。
【0028】
スティック2の断面形状は特に限定されないが、毛細管部分を含めて、略円形、略楕円形、略正方形、略長方形の他、多角形、星型、ハート型等の任意の形状が例示される。
また、スティック2の外形は、後端部から先端部まで外径及び断面形状が略同じスティック状(棒状)であってもよいし、毛細管力が損なわれない範囲であれば弧状、波形状、小枝形状等でもよい。
【0029】
スティック2が略棒状の場合、スティック2の長さ(スティック長さ)Lsは、液体揮散の目的により適宜設定されるが、60mm~250mm程度が好ましく、100mm~150mm程度がより好ましい。250mmより長くなると、毛細管力で吸い上げにくくなり、また、液体揮散体1を差し込んだ容器が転倒しやすくなる。
スティック2の断面形状が略円形の場合、スティック2の外径(スティック外径)dは0.8mm~3.0mm程度が好ましく、1.5mm~2.5mm程度がより好ましい。スティック外径dを大きくすると、揮散量を増加させることが可能であるが、見た目が損なわれやすくなる。一方、0.8mmより小さくすると、揮散量を充分に確保しにくくなる。
【0030】
スティック2の気孔率は、5%~75%程度が好ましく、10%~65%程度がより好ましい。気孔率を高くすると、ある程度までは揮散量を多くすることが可能であるが、気孔率が高すぎると毛細管力が弱くなってくる。
【0031】
スティック2の断面形状の例を、
図6及び
図7に示した。
図6(1)~
図6(21)は合成樹脂を押出成形したスティック2の断面形状を示したものである。
図6(1)~
図6(16)は液体流路2bと外郭2aを有する。
図6(17)~
図6(21)は液体流路2bのみ有し、外郭を有さない。
図7(a)は焼結体、
図7(b)は合成繊維を多孔質材料として用いた、スティック2の断面形状を示したものである。焼結体の断面形状も合成繊維の断面形状も、液体流路がスティック2の外側に連通した部分を有する。
【0032】
(接着剤部)
接着剤部3は、スティック2の先端部分の一部又は全部の周方向外側に接着剤が塗布されたものである。なお、デザイン上等の理由で、接着剤部3はスティック2の先端部分以外である中央部分や後端部分にも設けられていてもよい。
【0033】
接着剤は、硬化前に導電性を有する材料が好ましい。たとえば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂等の水系の接着剤が挙げられる。
【0034】
接着剤部3は、後述する植毛部4の繊維材4fを接着するために形成される。
接着剤は水を含む溶媒により希釈され、ロールコート、ディッピング、エアレススプレー、エアスプレー、静電スプレー等で、スティック2の先端部分に塗布される。
塗布する接着剤の膜厚は、繊維材4fの接着性との関係で、30μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上200μm以下であることがより好ましい。接着剤の濃度は特に限定されないが、30質量%~70質量%程度が好ましく、40質量%~60質量%程度がより好ましい。
【0035】
接着剤部3は、液体揮散効率のためには、スティック2の先端部分の全体に接着剤が塗布されることが望ましい。なお、デザイン上の観点から、スティック2の先端部分の一部に接着剤が塗布されてもよい。
また、接着剤を塗布して接着剤部3を形成するとき、接着剤を塗布しない部分にマスキングを行ってもよい。
接着剤部3の長さ(接着剤部長さ)Lrは、5mm~30mm程度が好ましく、10mm~20mm程度がより好ましい。接着剤部3の面積が大きくなると、液体の揮散量を多くすることができる。
【0036】
(植毛部)
植毛部4は、接着剤部3の表面に、複数の繊維材4fが植毛されたものである。
【0037】
植毛部4の繊維材4fの材料は、ナイロン(登録商標)等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル等の合成樹脂、カーボン樹脂、ガラス繊維等の無機繊維、アセテート、レーヨン等の再生繊維、綿、絹、羊毛等の天然繊維等が例示される。
植毛部4の繊維材4fとして、上記繊維材料を単体で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
植毛部4の繊維材4fの径と長さの関係は、液体の蓄えやすさや揮散量等により適宜調整されることが望ましい。
繊維材4fの径は、0.5デニール以上20デニール以下であることが好ましい。繊維材4fの径が大きくなると繊維材4f同士の間隙が大きくなり、蓄えられる液体の量は増えるものの液体の保持力は弱いため、揮散量が多くなりやすい。
繊維材4fの長さは繊維材4fの径の30倍以上60倍以下であることがより好ましい。繊維材4fが短すぎると蓄えられる液体の量が少なくなる。一方、繊維材4fが長すぎると繊維材4fが立毛せずに寝てしまうため、やはり蓄えられる液体の量が少なくなり、かつ、揮散量も低下する。また、後述する静電植毛で繊維材4fを接着剤部3に接着する場合、繊維材4fの投錨性が低下しやすくなる。
【0039】
植毛部4は、繊維材4fを接着剤部3の表面上に植毛することにより形成される。植毛方法に限定はないが、静電植毛により植毛することが望ましい。
【0040】
図4に静電植毛の概要を示す。
接着剤が塗布され接着剤部3(硬化前)を有するスティック2は、電極5に対して5cm~15cm程度の間隔をおいて配置される。硬化前の接着剤部3には分散媒として水が含まれ、該接着剤部3はアース6に接地される。
高電圧発生器7を用いて、電極5に対して20kva~30kva程度の電圧をかけることにより、電極5とアース6(接着剤部3)との間に静電界が形成される。
静電界を通過させるように、接着剤部3に向けて繊維材4fを撒布することにより、静電界を通過する繊維材4fは、電界と平行に向きが揃い、接着剤部3の表面に対して垂直方向に植毛される。植毛時間は、たとえば1分以内、たとえば10秒~20秒程度である。
【0041】
植毛後、スティック2を乾燥させ、接着剤部3に含まれる水等の分散媒を除去し硬化させることにより、繊維材4fは接着剤部3の表面に固着される。乾燥条件は、接着剤の種類、濃度、厚み、繊維材4fの種類、植毛の量等により適宜設定される。たとえば50℃~80℃、20分以上程度である。
【0042】
乾燥後、余分な繊維材4fを除去し、仕上げることが望ましい。
【0043】
(液体揮散体)
液体揮散体1は、後端部分を揮散させる液体に浸漬し、該液体をスティック2の毛細管力で先端側に吸い上げて、接着剤部3の表面に植毛された植毛部4に一旦該液体を蓄え、該蓄えられた液体を植毛部4から揮散させるように用いられる。
揮散量は、植毛部4の繊維材4fの種類、長さ、径や、植毛面積(接着剤部3の表面積)、また、液体揮散体1の本数により調整される。このとき、液体揮散体1の揮散用途により、揮散量のみならず、全体的な見た目である意匠性も考慮されることが望ましい。
【0044】
(液体揮散器)
液体揮散器は、液体揮散体1を用いた、液体を揮散する器具である。液体を収容した容器に、液体揮散体1を1本以上挿入して後端部分を液体に浸漬し、液体揮散体1の先端部分の植毛部4から液体を揮散させる。
容器の形状は、丸底フラスコ状、三角フラスコ状、試験管状、アルコールランプ状、一輪挿し状、花瓶状等が例示されるが、これに限定されない。
液体は、用途により、芳香成分、消臭成分、防臭成分、殺菌成分、殺虫成分等が含まれる溶液(水溶液、アルコール溶液等)が用いられるが、これに限定されない。
さらに、液体揮散器は、液体揮散体、容器、液体の他、接地のために必要な部材、装飾のための部材、吊るす等設置のために必要な部材等が含まれていてもよい。
【実施例0045】
スティック2(材料:多孔質PET(PET繊維を集束し加熱圧縮しウレタン樹脂で接着した繊維多孔質芯)、スティック外径d:2.5mm、スティック長さ:80mm)、接着剤部3(接着剤材料:水系ウレタン、接着剤部長さLr:15mm)、植毛部4(繊維材4f:PET、繊維材長さ:0.8mm、繊維材直径:3デニール)の液体揮散体1を作成した。
接着剤部3は、塗布しない部分をマスキング後、接着剤をエアスプレーすることにより形成した。
接着剤が塗布され接着剤部3(硬化前)を有するスティック2を、電極5に対して10cm程度の間隔をおいて配置し、該接着剤部3はアース6に接地した。
高電圧発生器7を用いて、電極5に対して30kva程度の電圧をかけることにより、電極5とアース6(接着剤部3)との間に静電界を形成した。
静電界を通過させるように、接着剤部3に向けて繊維材4fを撒布した。植毛時間は、10秒~20秒程度とした。
植毛後、スティック2を乾燥させた。乾燥条件は、80℃、20分とした。
得られた液体揮散体1の実施例を、
図1、
図2に示す。
【0046】
上記実施例のうち、接着剤部3及び植毛部4を形成しない液体揮散体を比較例として評価に用いた。
【0047】
実施例の液体揮散体1を3本、芳香剤(Sawaday 香るStick PARFUME BLANC)に浸漬し、経過日数ごとの累積揮散量を計測した。
比較例の液体揮散体を3本、芳香剤(Sawaday 香るStick PARFUME BLANC)に浸漬し、経過日数ごとの累積揮散量を計測した。
累積揮散量の結果を表1及び
図5に示す。
【0048】
【0049】
表1及び
図5より、植毛部4を有する液体揮散体1は、植毛部を有さない比較例に比べ、揮散量を多くすることが可能であることが確認された。また、植毛部の面積等を調整することで、揮散量を調整することが可能であることも分かった。