(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031961
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】太陽集熱器
(51)【国際特許分類】
F24S 70/60 20180101AFI20230302BHJP
F24S 10/70 20180101ALI20230302BHJP
F24S 70/10 20180101ALI20230302BHJP
【FI】
F24S70/60
F24S10/70
F24S70/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137766
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】520246294
【氏名又は名称】株式会社SAI
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷川 巧
(57)【要約】
【課題】可撓性フィルムで構成された太陽集熱器において、耐久性を持たせて溶着部の破れを防止できるようにする。
【解決手段】可撓性のフッ素系樹脂フィルムで構成された可撓性のパネル2と、当該可撓性のパネル2の内側を上下方向に沿って直線状に溶着させた溶着部23と、当該溶着部23の間によって形成され、前記液体3を通すための分割流路24とを備えて太陽集熱器を構成する。そして、パネル2の内側であって、この溶着部23の端部とオーバーラップするように、補強フィルム29を溶着させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を用いて集熱できるようにした太陽集熱器において、
表裏をなす可撓性フィルムの内部に液体を収容する可撓性パネルと、
前記表裏をなす可撓性フィルムを部分的に溶着させた溶着部と、
当該溶着部の間によって形成させた前記液体を通すための分割流路と、を備え、
少なくとも前記溶着部の端部に、前記表側パネル要素と裏側パネル要素の間に挟まる補強フィルムを溶着して設けるようにしたことを特徴とする太陽集熱器。
【請求項2】
前記補強フィルムが、直線状に設けられた溶着部の端部に、上下重なるように設けられるものであり、
当該二枚の補強フィルムの間を通って前記液体を前記分割流路に通すようにした請求項1に記載の太陽集熱器。
【請求項3】
前記補強フィルムを上下に重なるように二枚設けるようにするとともに、
前記分割流路に位置する部分に、窪みを有するような凹部を設けるようにした請求項1に記載の太陽集熱器。
【請求項4】
前記表裏をなす可撓性フィルムの外側面であって、前記溶着部とオーバーラップする位置に、補強フィルムを溶着させるようにした請求項1に記載の太陽集熱器。
【請求項5】
前記可撓性フィルムが、フッ素系樹脂フィルムで構成されるものである請求項1に記載の太陽集熱器。
【請求項6】
表裏をなす可撓性フィルムの内側における底辺および上辺から離れた位置に、当該底辺および上辺に沿って上下二枚の補強フィルムを挟み込むステップと、
当該補強フィルムの上下の隙間に、前記可撓性フィルムよりも溶着温度の高い非溶着部材を挟み込むステップと、
前記表裏をなす可撓性フィルムと補強フィルムと非溶着部材とを積層させた状態で、前記可撓性フィルムの表裏方向から、可撓性フィルムの上下方向に沿った直線状の複数の溶着部を形成するステップと、
当該溶着部を形成した後に、前記非溶着部材を取り除き、前記表裏をなす可撓性フィルムの周囲を溶着するステップと、を備え、
前記溶着部と隣接する溶着部との間に形成された分割流路に液体を通して、太陽光で集熱させるようにしたことを特徴とする太陽集熱器の製造方法。
【請求項7】
前記非溶着部材を、前記補強フィルムの端辺から離れた位置までオーバーラップさせるように挟み込ませるようにした請求項6に記載の太陽集熱器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単に設置できるようにした太陽集熱器において、耐久性を持たせるようにした太陽集熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光を用いて集熱する場合、屋根などに設置された硬質パネルの太陽集熱器が用いられる。この太陽集熱器は、透明なガラスなどで構成された硬質パネルと、その硬質パネル内に設けられたパイプと、そのパイプ内に通る水を加熱させるための黒色系の加熱フィルムなどを設けて構成されるものであって、加熱フィルムに照射された太陽光で発熱させ、その熱をパイプ内の水に伝達させるようにしたものである(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような太陽集熱器の硬質パネルは、ガラスなどの硬質な透明材の周囲をフレームで枠組みして構成されている。このため、硬質パネル自体が非常に重くなり、設置に労力や時間がかかるばかりでなく、湾曲した部分などには設置することができないといった問題を生ずる。
【0004】
これに対して、下記の特許文献2には、可撓性フィルムで構成した太陽集熱器が提案されている。この太陽集熱器は、袋状の可撓性フィルムの内側を直線状に溶着させて液体の分割流路を形成し、その分割流路を通る液体を加熱させるようにしたものである。このような可撓性フィルムで太陽集熱器を構成すれば、軽量化を図って設置を簡単に行うことができるようになるとともに、アーチ形状を有する屋根などにも簡単に設置することができるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-138898号公報
【特許文献2】特開2002-349971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような可撓性フィルムで構成された太陽集熱器においては、次のような問題が生ずる。
【0007】
すなわち、このような可撓性フィルムで太陽集熱器を構成した場合、可撓性フィルムが紫外線や熱によって劣化しやすくなる。また、袋状の可撓性フィルムに液体を通すと、表裏の可撓性フィルムが膨張してしまうため、分割流路を形成するために溶着した溶着部に破れを生じてしまい、そこから水漏れを生じてしまうといった問題を生ずる。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、可撓性フィルムで構成された太陽集熱器において、耐久性を持たせて溶着部の破れを防止できるようにした太陽集熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、太陽光を用いて集熱できるようにした太陽集熱器において、表裏をなす可撓性フィルムの内部に液体を収容する可撓性パネルと、前記表裏をなす可撓性フィルムを部分的に溶着させた溶着部と、当該溶着部の間に形成させた前記液体を通すための分割流路とを備え、少なくとも前記溶着部の端部に、前記表側パネル要素と裏側パネル要素の間に挟まる補強フィルムを溶着して設けるようにしたものである。
【0010】
このように構成すれば、溶着部の端部などを厚くすることで、可撓性フィルムが膨張した場合であっても、その溶着部が端部から破れてしまうことがなくなる。しかも、溶着部の端部のみを補強するようにした場合は、可撓性フルムが高額なものであっても、最小限のコストで溶着部を補強することができるようになる。
【0011】
また、このような発明において、前記補強フィルムを設ける場合、直線状に設けられた溶着部の端部に、上下に重なるように二枚の補強フィルムを設けるようにする。そして、この二枚の補強フィルムの間を通って前記液体を前記分割流路に通すようにする。
【0012】
このように構成すれば、表裏のパネル要素のそれぞれに内接する補強フィルムによって、表裏のパネル要素の破れを防止することができるようになる。
【0013】
さらに、前記補強フィルムを上下に重なるように二枚設けるようにするとともに、前記分割流路に位置する部分に、窪みを有するような凹部を設けるようにする。
【0014】
このように構成すれば、補強フィルムを設けて厚みを厚くした場合であっても、分割流路の入口の厚みだけを薄くすることによって、そこから液体を分割流路に通しやすくすることができるようになる。
【0015】
また、前記表裏をなす可撓性フィルムの外側面にも、前記溶着部とオーバーラップする位置に補強フィルムを溶着させるようにする。
【0016】
このように構成すれば、表裏をなす可撓性フィルムの急激な曲げや撓みを防止することができ、溶着部の端部における可撓性フィルムの破れを防止することができるようになる。
【0017】
また、このような可撓性フィルムを、フッ素系樹脂フィルムで構成する。
【0018】
このようなフッ素系樹脂フィルムで構成すれば、可撓性を持たせつつ、耐候性を持たせることができるようになる。
【0019】
また、このような太陽集熱器を製造する場合、表裏をなす可撓性フィルムの内側における底辺および上辺から離れた位置に、当該底辺および上辺に沿って上下二枚の補強フィルムを挟み込むステップと、当該補強フィルムの上下の隙間に、前記可撓性フィルムよりも溶着温度の高い非溶着部材を挟み込むステップと、前記表裏をなす可撓性フィルムと補強フィルムと非溶着部材とを積層させた状態で、前記可撓性フィルムの表裏方向から、可撓性フィルムの上下方向に沿った直線状の複数の溶着部を形成するステップと、当該溶着部を形成した後に、前記非溶着部材を取り除き、前記表裏をなす可撓性フィルムの周囲を溶着するステップとを備え、前記溶着部と隣接する溶着部との間に形成された分割流路に液体を通して、太陽光で集熱させるようにする。
【0020】
このように構成すれば、分割流路を形成するための溶着と、補強フィルムを溶着する工程を同時に行うことができ、しかも、補強フィルムどうしを溶着させないようにすることができる。
【0021】
また、前記非溶着部材を、前記補強フィルムの端辺から離れた位置までオーバーラップさせるように挟み込ませるようにする。
【0022】
このように構成すれば、表裏の補強フィルムの間に非溶着部材を挟み込ませることで、溶着しない部分を液体流入路や液体排出路にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、太陽光を用いて集熱できるようにした太陽集熱器において、表裏をなす可撓性フィルムの内部に液体を収容する可撓性パネルと、前記表裏をなす可撓性フィルムを部分的に溶着させた溶着部と、当該溶着部の間によって形成させた前記液体を通すための分割流路とを備え、少なくとも前記溶着部の端部に、前記表側パネル要素と裏側パネル要素の間に挟まる補強フィルムを溶着して設けるようにしたので、可撓性フィルムが膨張した場合であっても、溶着部の破れを防止することができるようになる。しかも、溶着部の端部のみを補強することで、可撓性フルムが高額なものであっても、最小限のコストで溶着部を補強することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す太陽集熱器を示す図
【
図2】同形態における各フィルムの積層状態を示す概略図
【
図4】
図1におけるB-B端面に外側の補強フィルムを設けた状態を示す図
【
図5】同形態における溶着時における積層状態を示す図
【
図6】同形態における補強フィルムと溶着部の端部近傍を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
この実施の形態における太陽集熱器1は、
図1や
図2などに示すように、太陽光をパネル2に照射させて、そのパネル2内に封入された液体3を加熱させるようにしたものであって、表裏をなす可撓性フィルム(表側パネル要素21、裏側パネル要素22)で構成されたパネル2と、そのパネル2の内側を上下に沿って平行に溶着させた複数本の溶着部23と、その溶着部23の間に形成された分割流路24とを設けて構成されたものである。そして、特徴的に、少なくとも溶着部23の上端側や下端側を補強するように、表裏の可撓性フィルムの間に補強フィルム29を挟み込ませて、溶着部23と一緒に溶着させるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
まず、この太陽集熱器1のパネル2は、太陽光によって内部の液体3を加熱させるようにしたものであって、内部に液体3を封入させるように構成されている。このパネル2は、可撓性フィルムで構成されており、例えば、光透過性、耐熱性、耐摩耗性、撥水性などの優れたフッ素樹脂フィルム(好ましくは、厚み0.1mm以下のフッ素樹脂フィルム)で構成される。そして、このフッ素樹脂フィルムで構成された表側パネル要素21と裏側パネル要素22を表裏に設けて袋状に構成し、その内部に、液体3を分割流路24に通すための溶着部23を設けている。このとき、表側パネル要素21については、透明な素材で構成しておき、裏側パネル要素22については、太陽光による熱を吸収しやすくするために、黒色系のフィルムで構成しておく。
【0028】
一方、このパネル2に形成される溶着部23は、
図1に示すように、パネル2の上下方向に沿って平行に設けられており、これによって、底辺部分に沿って設けられた液体流入路25から直交方向に液体3を分割流路24に通し、上辺部分に沿って設けられた液体排出路26に沿って排出させるようにしている。
【0029】
このパネル2の内部に封入される液体3は、簡単に入手することが可能な水道水などが用いられ、また、この液体3に、熱吸収粉体4を混入させるようにしている。
【0030】
この熱吸収粉体4は、太陽光によって発熱する粉状体で構成されるものであって、例えば、平均径が0.01mm~0.10mm程度の多孔性の炭粉を用いる。この炭粉としては、バカス炭、竹炭、木炭、籾殻炭などを粉砕したものを用いることができ、また、このような炭粉以外に、黒色系の多孔性セラミクスやアパタイト、ジルコニアなどの粉体を用いてもよい。なお、このような熱吸収粉体4を水に混入させて循環させる場合、その比重が重いと熱吸収粉体4がパネル2の下方に溜まってしまい、一方、比重が軽いと浮いてパネル2の上方に溜まって分散化させることができない。このため、液体3に対する平均質量比として、0.5から2.0の範囲内の熱吸収粉体4を用いるようにする。このとき、パネル2内での液体3の流速が早い場合は、液体3よりも比重の重い熱吸収粉体4を用い、また、流速が遅い場合は、液体3よりも比重の軽い熱吸収粉体4を用いて、パネル2の全体に熱吸収粉体4を分散させるようにする。そして、液体3内に分散する熱吸収粉体4に太陽光を吸収させ、液体3を高温に加熱させるようにする。
【0031】
このように構成された太陽集熱器1において、この実施の形態では、溶着部23における液体流入路25や液体排出路26側の端部とオーバーラップさせるように補強フィルム29(
図2や
図5参照)を設け、溶着部23と一緒に溶着させるようにしている。
【0032】
この補強フィルム29は、可撓性フィルムで構成されるものであって、表側パネル要素21や裏側パネル要素22と同じ素材(フッ素系樹脂フィルム)で構成されるが、これ以外の素材を用いてもよい。そして、このような補強フィルム29を表側パネル要素21と裏側パネル要素22の隙間や、必要に応じて表側パネル要素21や裏側パネル要素22の外側(
図2や
図5参照)に設けることによって、表側パネル要素21や裏側パネル要素22の急激な膨らみを防止して、溶着部23の端部からの破れを防止できるようにしている。
【0033】
なお、このような補強フィルム29を内側に設ける場合、溶着部23ごとに独立した補強フィルム29を設けるようにしてもよいが、このようにした場合は、溶着作業に手間がかかってしまう。そこで、ここでは、二枚の横長形状の補強フィルム29を設けて溶着部23の補強を行えるようにしている。
【0034】
ところで、このように横長形状の補強フィルム29を設ける場合、分割流路24の入口にも補強フィルム29が位置することになり、分割流路24の入口を塞いで、液体3が流入しにくくなる。そこで、こでは、補強フィルム29の分割流路24に臨む辺側に、補強フィルム29を短手方向に切り欠いた凹部29a(
図1、
図2、
図6参照)を設けるようにしている。これにより、液体流入路25から液体3が分割流路24に入り込もうとした場合に、分割流路24の入口近傍の厚みを薄くすることができ、表側パネル要素21や裏側パネル要素22の膨らみを許容して、凹部29aから分割流路24に液体3を流入させやすくしている。
【0035】
液体流入路25や液体排出路26には、液体3を流入・排出させるための可撓性パイプ5が設けられる。この可撓性パイプ5は、塩化ビニルやシリコンゴム、ポリウレタンなどによって構成されるもので、パネル2に沿って湾曲しうるような素材で構成される。そして、その可撓性パイプ5から液体3を注入し、液体流入路25に液体3を通すとともに、分割流路24を通って液体排出路26に通された液体3を排出させるようにしている。
【0036】
次に、このように構成される太陽集熱器1の製造方法について説明する。
【0037】
まず、可撓性フィルムを溶着する前に、
図5の上図に示すように、表側パネル要素21と裏側パネル要素22を重ねておくとともに、2枚の補強フィルム29を溶着部23を形成する部分の端部にオーバーラップさせるように積層する。そして、内側の2枚の補強フィルム29の間に、溶着時における熱によって溶着しないような非溶着フィルム290を挟み込ませるようにしておく。このとき、非溶着フィルム290としては、ポリイミドのフィルムや、アルミフィルムなどを用い、これを、補強フィルム29の凹部29aの中央部分までオーバーラップさせるようにしておく。なお、
図4に示すように、表側パネル要素21や裏側パネル要素22の外側にも補強フィルム29bを設ける場合は、これらの外側の補強フィルム29bも同時に重ねておくようにする。
【0038】
そして、このように補強フィルム29(29b)や非溶着フィルム290を設けた状態で、表側パネル要素21と裏側パネル要素22を上辺から底辺に向かって直線状に溶着して溶着部23を形成する(
図2の溶着方向参照)。このとき、非溶着フィルム290が挟み込まれている部分については、
図5の下図に示すように、熱によって溶着されることなく、上辺側や底辺側には液体排出路26や液体流入路25を形成することができるようになる。そして、非溶着フィルム290を外側に向かって取り除くようにする。
【0039】
このとき、補強フィルム29(29b)など密着している部分や、表側パネル要素21や裏側パネル要素22が表裏に密着している部分については、熱で溶着され、これによって、分割流路24を形成するための溶着部23が形成される。
【0040】
そして、このように溶着部23を形成した後、パネル2の外周部分を溶着する。このとき、液体流入路25に液体3を流入させるための流入口27や、液体3を排出させるための排出口28については、溶着させないようにしておき、この流入口27や排出口28に可撓性パイプ5を入れて、その周囲を封止する。
【0041】
そして、このように可撓性パイプ5などを挿入させた後、液体3をパネルの内部に注入する。
【0042】
次に、このように構成された太陽集熱器1を用いて、パネル2内の液体3を加熱させる際の作用について説明する。
【0043】
まず、可撓性パイプ5に液体3を通してパネル2内に液体3を注入すると、液体3が液体流入路25に入り込み、そこから、分割流路24に向かって流れ込む。
【0044】
このとき、液体3の流れ込みによって、分割流路24が急激に膨れ上がり、溶着部23の端部に大きな負荷が掛かることになるが、補強フィルム29(29a)を溶着させているため、その部分における急激な膨張を抑えることができ、溶着部23の端部が破れてしまうことを防止できるようになる。
【0045】
また、この内側に設けられた補強フィルム29の間から分割流路24に液体3が流れ込む際、補強フィルム29の隙間を通って液体3が流れ込もうとするが、補強フィルム29に設けられた凹部29aの隙間から、液体3が分割流路24に流れ込むようになる。
【0046】
この分割流路24に通された液体3は、太陽熱を吸収して加熱される。このとき、液体3に熱吸収粉体4を混入させておくと、その熱吸収粉体4によって液体3を直接加熱させることができるとともに、太陽光の照射角度に依存することなく、液体3を効率よく加熱させることができるようになる。
【0047】
そして、このように加熱させた液体3を、分割流路24から液体排出路26に排出させる。このとき、液体排出路26側における溶着部23の端部にも補強フィルム29(29a)を設けるようにしているため、溶着部23の端部の破れを防止することができるようになる。
【0048】
そして、この液体排出路26から排出口28に向かって加熱させた液体3を排出させるようにする。
【0049】
このように上記実施の形態によれば、太陽光を用いて集熱できるようにした太陽集熱器1において、表側パネル要素21と裏側パネル要素22で封止された内部に液体3を収容する可撓性のパネル2と、表側パネル要素21と裏側パネル要素22を部分的に溶着させた溶着部23と、当該溶着部23の間によって形成され、前記液体3を通すための分割流路24とを備え、前記表側パネル要素21と裏側パネル要素22の間における前記溶着部23の端部に補強フィルム29を溶着させるようにしたので、可撓性フィルムが膨張した場合であっても、溶着部23の破れを防止することができるようになる。しかも、溶着部23の端部のみを補強することで、可撓性フルムが高額なものであっても、最小限のコストで溶着部を補強することができるようになる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0051】
例えば、上記実施の形態では、表側パネル要素21と裏側パネル要素22を密着させて溶着させるようにしたが、
図7に示すように、これらの表側パネル要素21と裏側パネル要素の間に、波板状の中間フィルム20を設けて表側と裏側のフィルムに交互に溶着させ、その溶着によって形成された溶着部23の間の分割流路24に液体3を流すようにしてもよい。そして、この波板状の中間フィルム20の溶着部23の端部に、同様の補強フィルム29を設けて、一緒に溶着させるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、上下二枚の補強フィルム29を設けるようにしたが、液体流入路25や液体排出路26を包み込むように折り返して設けるようにし、その端部と溶着部23とをオーバーラップさせて溶着させるようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、溶着部23を直線状に構成するようにしたが、蛇行するように設けてもよく、あるいは、点在するように設けるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、液体3に熱吸収粉体4を混入させるようにしたが、液体3に熱吸収粉体4を混入させないようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、パネル2の外側にも補強フィルム29bを設けるにしたが、この補強フィルム29bについては設けないようにしてコストの低減を図るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1・・・太陽集熱器
2・・・パネル
21・・・表側パネル要素
22・・・裏側パネル要素
23・・・溶着部
24・・・分割通路
25・・・液体流入路
26・・・液体排出路
27・・・流入口
28・・・排出口
29(29b)・・・補強フィルム
29a・・・凹部
3・・・液体
4・・・熱吸収粉体
5・・・可撓性パイプ