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  • 特開-丁張り設置治具及び丁張り設置方法 図1
  • 特開-丁張り設置治具及び丁張り設置方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031966
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】丁張り設置治具及び丁張り設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/00 20060101AFI20230302BHJP
   E04G 25/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
E02B7/00 Z
E04G25/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137777
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】505317654
【氏名又は名称】三興建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】越智 剛
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150AA28
2E150JA05
2E150JC01
2E150JD24
2E150JE03
2E150LA01
2E150LB02
2E150LB03
(57)【要約】
【課題】既設コンクリートの基礎面への固定作業や固定解除作業を不要とし、移動や位置調整を容易にして、型枠設置作業を効率的に行うことの可能な丁張り設置治具及び丁張り設置方法を提供する。
【解決手段】堰堤工事における型枠20を位置決めする丁張り器材40を設置するための丁張り設置治具10であって、型枠設置面に載置されるベース部11と、ベース部11から直立する直立部12,13と、ベース部11の傾きを調整する調整部14とを有する。調整部14によりベース部11の傾きを調整し、ベース部11に重り2を積載して型枠設置面に安定させ、直立部12,13に丁張り器材40を取り付ける。丁張り器材40に堰堤壁の墨出しを行ってガイド部材7を取り付け、ガイド部材7に型枠20を押し当てて位置決めする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堰堤工事における型枠を位置決めする丁張り器材を設置するための丁張り設置治具であって、
型枠設置面に載置されるベース部と、該ベース部から直立する直立部と、前記ベース部の傾きを調整する調整部とを有することを特徴とする丁張り設置治具。
【請求項2】
請求項1に記載の丁張り設置治具を用いた丁張り設置方法であって、前記調整部により前記ベース部の傾きを調整し、前記ベース部に重りを積載して型枠設置面に安定させ、前記直立部に丁張り器材を取り付けることを特徴とする丁張り設置方法。
【請求項3】
前記丁張り器材に堰堤壁の墨出しを行ってガイド部材を取り付け、該ガイド部材に型枠を押し当てて位置決めすることを特徴とする請求項2に記載の丁張り設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堰堤工事における型枠を位置決めする丁張り器材を設置するための丁張り設置治具及び丁張り設置方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
従来、河川を流れる水や土砂を堰き止めるための堰堤工事が行われている。堰堤工事は、図4に示すように、山70,70の間を流れる河川60を横切って堰堤1を建造するものである。
【0003】
堰堤1は、図5の断面図に示すように、上方に向かって幅が狭くなる台形の断面形状を有しており、河川50(上流)及び河川60(下流)のそれぞれに対して傾斜した堰堤壁を有している。また、堰堤1の工事は、図6に示すように、下から上に1a→1b→1c→1dの順に各段にコンクリートを打設していくことから、各段の傾斜角度を揃える必要がある。そのため、コンクリートを打設するための型枠を、正確な位置、勾配で設置するために、丁張り器材が用いられている。
【0004】
従来の丁張り器材は、既設コンクリートの基礎面にアンカー等により木柱を固定して組み立てたものであり、固定した後に丁張り器材に沿って型枠を設置し、型枠を設置した後には木柱の基礎面への固定を解除し撤去するようになっていた。
【0005】
また、ダム面状工法において用いる型枠に関して、特許文献1には、コンクリート打設域Xの周縁に沿設される堰部材11と、堰部材11をコンクリート打設域Xに対して傾斜させた状態に支持する支持部材12を備えた型枠が記載されており、型枠の早期撤去及び再利用を可能にするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3045698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の丁張り器材は、既設コンクリートの基礎面へのアンカー等による固定作業や固定解除作業が必要であるとともに、固定後の移動や位置調整が難しく、型枠設置作業の効率が悪かった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、既設コンクリートの基礎面への固定作業や固定解除作業を不要とし、移動や位置調整を容易にして、型枠設置作業を効率的に行うことの可能な丁張り設置治具及び丁張り設置方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の丁張り設置治具は、堰堤工事における型枠を位置決めする丁張り器材を設置するための丁張り設置治具であって、型枠設置面に載置されるベース部と、該ベース部から直立する直立部と、前記ベース部の傾きを調整する調整部とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の丁張り設置方法は、上記丁張り設置治具を用いた丁張り設置方法であって、前記調整部により前記ベース部の傾きを調整し、前記ベース部に重りを積載して型枠設置面に安定させ、前記直立部に丁張り器材を取り付けることを特徴とする。
【0011】
また好ましくは、前記丁張り器材に堰堤壁の墨出しを行ってガイド部材を取り付け、該ガイド部材に型枠を押し当てて位置決めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の丁張り設置治具は、堰堤工事における型枠を位置決めする丁張り器材を設置するための丁張り設置治具であり、型枠設置面に載置されるベース部と、ベース部から直立する直立部と、ベース部の傾きを調整する調整部とを有している。ベース部は型枠設置面に固定されず載置されるだけなので、直立部に丁張り器材を取り付けて、調整部によりベース部の傾きを調整すれば型枠の位置決めが可能であり、丁張り器材の既設コンクリートの基礎面への固定作業や固定解除作業が不要である。また、基礎面に固定されないので、移動や位置調整が容易である。また、型枠設置後には基礎面への固定解除作業なしで撤去し、再利用することができる。
【0013】
また、本発明の丁張り設置方法は、上記丁張り設置治具を用いた丁張り設置方法であり、調整部によりベース部の傾きを調整し、ベース部に重りを積載して型枠設置面に安定させることができる。そして、直立部に丁張り器材を取り付けて型枠の位置決めを行うことができる。
【0014】
また、丁張り器材に堰堤壁の墨出しを行ってガイド部材を取り付け、ガイド部材に型枠を押し当てて位置決めすることにより、型枠を正確な位置に正確な勾配で、容易に設置することができる。
【0015】
このように、本発明の丁張り設置治具及び丁張り設置方法によれば、既設コンクリートの基礎面への固定作業や固定解除作業を不要とし、移動や位置調整を容易にして、型枠設置作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る丁張り設置治具の使用状態を示す斜視図である。
図2】丁張り設置治具を示す(A)斜視図、(B)X部の拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る丁張り設置方法の説明図である。
図4】堰堤が建造された河川を示す図である。
図5図4のa-a矢視断面図である。
図6】堰堤工事の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係る丁張り設置治具及び丁張り設置方法について説明する。本実施形態に係る丁張り設置治具及び丁張り設置方法は、堰堤工事における型枠を位置決めする丁張り器材を設置するためのものである。
【0018】
図1に示すように、丁張り設置治具10は丁張り器材40を取り付けるための台座となるものである。そして、取り付けられた丁張り器材40に合わせて型枠20の位置決めがなされるようになっている。丁張り設置治具10は、鋼材等により構成することにより耐久性を付与して再利用することができる。これに対して、丁張り器材40は、安価な桟木や垂木で構成することができる。
【0019】
丁張り器材40は、柱部材3,4、横架部材5,6及びガイド部材7から構成されている。柱部材3,4は、それぞれ丁張り設置治具10に取り付けられており、横架部材5,6は、柱部材3,4に対して水平方向に取り付けられている。そして、横架部材5,6の先端にガイド部材7が取り付けられている。
【0020】
型枠20は、間隔を空けて取り付けられた支持部材21を有する板部材である。型枠20は、板面が丁張り器材40のガイド部材7に沿うようにして位置決めされている。位置決めされた型枠20は、複数箇所において、型枠20に取り付けられたセパレータ31と基礎に埋め込まれたアンカー32とを鋼製のセパレータ30で溶接連結することにより、基礎上に固定されている。
【0021】
図2を参照して、丁張り設置治具10について詳細に説明する。丁張り設置治具10は、ベース部11、直立部12,13、調整部14,14,14から構成されている。ベース部11は、断面L字状の鋼材11a,11b,11cを三辺とする平面視三角形状に形成されており、折曲部内面が内側を向くようにして、型枠設置面に載置されるようになっている。ベース部11の2つの頂点からは、直立部12,13が上方に直立している。直立部12,13は、断面L字状の鋼材であり折曲部内面が外側を向くようにして溶接等により固定されている。
【0022】
ベース部11の3つの頂点には、それぞれ調整部14が設けられている。調整部14は、ベース部11の傾きを調整するためのものであり、図2(A)に示すように、ベース部11のネジ孔に挿通されたボルト14a及びナット14bからなるジャッキボルトにより構成されて、ボルト14aの突出量を調整するようになっている。これにより、ベース部11の3つの頂点の高さを調整してベース部11の傾きを調整することができる。なお、調整部14は、ジャッキボルトに限定されるものではなく、他の構成であってもよい。
【0023】
図3を参照して、丁張り設置治具10を用いた丁張り設置方法について詳細に説明する。まず、ベース部11を型枠設置面に載置する。このとき、ベース部11を既設コンクリートの基礎面に固定する必要はない。次に、調整部14によりベース部11の傾きを調整する。次に、ベース部11に重り2として土嚢を積載して型枠設置面に安定させる。次に、丁張り設置治具10の直立部12,13に丁張り器材40の柱部材3,4を取り付ける。このとき、直立部12,13の折曲部内面に柱部材3,4を嵌め込んで鋼線8で複数個所を締結して固定する。次に、柱部材3,4に対して水平方向に横架部材5,6を釘9により取り付ける。
【0024】
次に、丁張り器材40の横架部材5,6に堰堤壁の寸法ポイントAの墨出しを行う。そして、寸法ポイントAに沿って横架部材5,6にガイド部材7を釘9により取り付け、不要となるB部を切断する。最後にガイド部材7に型枠20を押し当てて位置決めし、複数箇所において、型枠20に取り付けられたセパレータ31と基礎に埋め込まれたアンカー32とを鋼製のセパレータ30で溶接連結することにより、基礎上に固定する。
【0025】
型枠20が固定されたら、丁張り設置治具10及び丁張り器材40を撤去して型枠設置作業を完了する。撤去した丁張り設置治具10は、鋼材等により構成することにより耐久性を付与して再利用することができる。また、丁張り設置治具10は、丁張り器材40を取り付けるための台座であるため、取り付ける丁張り器材40を変更することで、他の場所の型枠設置作業にも使用することのできる共用性がある。セパレータ30,31及びアンカー32は、コンクリート打設時にそのまま埋設される。
【0026】
なお、調整部14によるベース部11の傾きの調整や土壌の積載作業は、丁張り器材40の取り付け後においても適宜行うことができる。
【0027】
本実施形態に係る丁張り設置治具10は、堰堤工事における型枠20を位置決めする丁張り器材40を設置するための丁張り設置治具であり、型枠設置面に載置されるベース部11と、ベース部11から直立する直立部12,13と、ベース部11の傾きを調整する調整部14とを有している。ベース部11は型枠設置面に固定されず載置されるだけなので、直立部12,13に丁張り器材40を取り付けて、調整部14によりベース部11の傾きを調整すれば型枠20の位置決めが可能であり、既設コンクリートの基礎面への固定作業や固定解除作業が不要である。また、基礎面に固定されないので、移動や位置調整が容易である。また、型枠設置後には基礎面への固定解除作業なしで撤去し、再利用することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る丁張り設置方法は、丁張り設置治具10を用いた丁張り設置方法であり、調整部14によりベース部11の傾きを調整し、ベース部11に重り2を積載して型枠設置面に安定させることができる。そして、直立部12,13に丁張り器材40を取り付けて型枠20の位置決めを行うことができる。
【0029】
また、丁張り器材40に堰堤壁の墨出しを行ってガイド部材7を取り付け、ガイド部材7に型枠20を押し当てて位置決めすることにより、型枠20を正確な位置に正確な勾配で、容易に設置することができる。
【0030】
このように、本実施形態に係る丁張り設置治具10及び丁張り設置方法によれば、既設コンクリートの基礎面への固定作業や固定解除作業を不要とし、移動や位置調整を容易にして、型枠設置作業を効率的に行うことができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態に係る丁張り設置治具及び丁張り設置方法について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0032】
例えば、本実施形態に係る丁張り設置治具10のベース部11は、平面視三角形状であるが、四角形状やその他の多角形状、円形状等でもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 堰堤
2 重り(土嚢)
3 柱部材
4 柱部材
5 横架部材
6 横架部材
7 ガイド部材
8 鋼線
9 釘
10 丁張り設置治具
11 ベース部
12 直立部
13 直立部
14 調整部(ジャッキボルト)
20 型枠
21 支持部材
30 セパレータ
31 セパレータ
32 アンカー
40 丁張り器材
50 河川(上流)
60 河川(下流)
70 山
図1
図2
図3
図4
図5
図6