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特開2023-31981水処理システム及び水処理システムの殺菌方法
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  • 特開-水処理システム及び水処理システムの殺菌方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031981
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理システムの殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20230302BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20230302BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20230302BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20230302BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20230302BHJP
   C02F 1/469 20230101ALI20230302BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F1/44 D
B01D65/02 500
B01D61/12
B01D61/44
B01D61/58
C02F1/469
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137799
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】神野 謙吾
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA17
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA72
4D006KB11
4D006KC24
4D006KE03P
4D006KE04P
4D006KE16Q
4D006KE22Q
4D006KE28Q
4D006PA01
4D006PB02
4D061DA01
4D061DB13
4D061EA09
4D061FA08
4D061FA09
(57)【要約】
【課題】逆浸透膜装置を通して二次処理装置に十分な量の熱水を供給することで熱水殺菌を短時間で終了できる水処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る水処理システムは、対象水を透過水と膜濃縮水とに膜分離する逆浸透膜装置と、逆浸透膜装置に対象水を供給する供給ラインと、逆浸透膜装置から透過水を導出し、透過水の流量を検出する透過水流量計を有する透過水ラインと、逆浸透膜装置から膜濃縮水を導出し、膜濃縮水の流量を検出する膜濃縮水流量計、及び膜濃縮水の流量を調整する流量調節弁を有する膜濃縮水ラインと、殺菌処理水の温度を調節する温度調節装置と、供給ラインに殺菌処理水が供給されるときに、殺菌処理水の温度が所定の変化をするよう温度調節装置の出力を制御するとともに、透過水流量計の検出値と膜濃縮水流量計の検出値との比を設定値に保持するよう流量調節弁の開度を制御する、制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜によって対象水を透過水と膜濃縮水とに膜分離する逆浸透膜装置と、
前記逆浸透膜装置に前記対象水を供給する供給ラインと、
前記逆浸透膜装置から前記透過水を導出し、前記透過水の流量を検出する透過水流量計を有する透過水ラインと、
前記逆浸透膜装置から前記膜濃縮水を導出し、前記膜濃縮水の流量を検出する膜濃縮水流量計、及び前記膜濃縮水の流量を調整する流量調節弁を有する膜濃縮水ラインと、
前記逆浸透膜装置を殺菌するために前記供給ラインに供給される殺菌処理水の温度を調節する温度調節装置と、
前記供給ラインに前記殺菌処理水が供給されるときに、前記殺菌処理水の温度が所定の変化をするよう前記温度調節装置の出力を制御するとともに、前記透過水流量計の検出値と前記膜濃縮水流量計の検出値との比を設定値に保持するよう前記流量調節弁の開度を制御する、制御装置と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記殺菌処理水の温度を所定の殺菌温度まで昇温してから、前記殺菌処理水の温度を前記殺菌温度に所定の保持時間保持し、その後前記殺菌処理水の温度を降温するよう、前記温度調節装置の出力を制御し、
少なくとも前記殺菌処理水の温度を昇温する間及び前記殺菌処理水の温度を降温する間に、前記透過水流量計の検出値と前記膜濃縮水流量計の検出値との比を設定値に保持するよう前記流量調節弁の開度を制御する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記透過水ラインから導出される前記透過水を処理する二次処理装置をさらに備える、請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記二次処理装置は、再生式脱塩により前記透過水からイオンを除去した精製水と前記イオンの含有量を増大した電気濃縮水とを得るEDI装置である、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記殺菌処理水を前記供給ラインに供給し、前記逆浸透膜装置以降から前記殺菌処理水を前記温度調節装置に還流させる熱殺菌ラインをさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項6】
前記熱殺菌ラインは、前記殺菌処理水を循環させる殺菌ポンプを有し、
前記制御装置は、前記対象水を前記逆浸透膜装置に供給するポンプを停止した状態で、前記供給ラインに前記殺菌処理水を供給する、請求項5に記載の水処理システム。
【請求項7】
逆浸透膜によって対象水を透過水と膜濃縮水とに膜分離する逆浸透膜装置と、
前記逆浸透膜装置に前記対象水を供給する供給ラインと、
前記逆浸透膜装置から前記透過水を導出し、前記透過水の流量を検出する透過水流量計を有する透過水ラインと、
前記逆浸透膜装置から前記膜濃縮水を導出し、前記膜濃縮水の流量を検出する膜濃縮水流量計、及び前記膜濃縮水の流量を調整する流量調節弁を有する膜濃縮水ラインと、
を備える水処理システムを、前記供給ラインに温度調節した殺菌処理水を供給することにより殺菌する殺菌方法であって、
前記殺菌処理水の温度を所定の殺菌温度まで昇温する工程と、
前記殺菌処理水の温度を前記殺菌温度に所定の保持時間保持する工程と、
前記殺菌処理水の温度を降温する工程と、
を備え、
少なくとも前記昇温する工程及び前記降温する工程において、前記透過水流量計の検出値と前記膜濃縮水流量計の検出値との比を設定値に保持するよう前記流量調節弁の開度を制御する、水処理システムの殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム及び水処理システムの殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象水を逆浸透膜を用いて透過水と濃縮水とに膜分離する逆浸透膜装置と、逆浸透膜装置から流出する透過水をさらに処理するEDI装置等の二次処理装置と、を備える水処理システムが利用されている。このような水処理システムを用いて医薬品、食品等の製造用水を製造する場合、水処理システムにおいて微生物が繁殖することを防止するために、水処理システムに熱水を通水して装置内の殺菌を行うことが知られている。例えば特許文献1には、直列に接続された不活化装置、逆浸透膜装置及びEDI装置と、熱交換器との間で熱水を循環させる循環系を形成することで、タンクを使用せずに熱水殺菌を行い得る装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5459704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逆浸透膜装置を備える水処理システムは、逆浸透膜装置から流出する濃縮水を逆浸透膜装置の上流側に還流させることで、逆浸透膜への供給水量を増大し、流体のせん断力により膜面への詰まりの防止や、膜面濃度分極による高濃縮でのスケール発生を防止するよう構成されるものも多い。このような構成を有する水処理システムの熱水殺菌では、透過水の流路に流出する熱水だけが二次処理装置に供給されるが、温度変化に伴い、透過水の流量が変動するため、システム全体の加熱に時間がかかる。
【0005】
従って、本発明は、逆浸透膜装置を通して二次処理装置に十分な量の熱水を供給することで熱水殺菌を短時間で終了できる水処理システム及び水処理システムの殺菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る水処理システムは、逆浸透膜によって対象水を透過水と膜濃縮水とに膜分離する逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置に前記対象水を供給する供給ラインと、前記逆浸透膜装置から前記透過水を導出し、前記透過水の流量を検出する透過水流量計を有する透過水ラインと、前記逆浸透膜装置から前記膜濃縮水を導出し、前記膜濃縮水の流量を検出する膜濃縮水流量計、及び前記膜濃縮水の流量を調整する流量調節弁を有する膜濃縮水ラインと、前記逆浸透膜装置を殺菌するために前記供給ラインに供給される殺菌処理水の温度を調節する温度調節装置と、前記供給ラインに前記殺菌処理水が供給されるときに、前記殺菌処理水の温度が所定の変化をするよう前記温度調節装置の出力を制御するとともに、前記透過水流量計の検出値と前記膜濃縮水流量計の検出値との比を設定値に保持するよう前記流量調節弁の開度を制御する、制御装置と、を備える。
【0007】
上述の水処理システムにおいて、前記制御装置は、前記殺菌処理水の温度を所定の殺菌温度まで昇温してから、前記殺菌処理水の温度を前記殺菌温度に所定の保持時間保持し、その後前記殺菌処理水の温度を降温するよう、前記温度調節装置の出力を制御し、少なくとも前記殺菌処理水の温度を昇温する間及び前記殺菌処理水の温度を降温する間に、前記透過水流量計の検出値と前記膜濃縮水流量計の検出値との比を設定値に保持するよう前記流量調節弁の開度を制御してもよい。
【0008】
上述の水処理システムは、前記透過水ラインから導出される前記透過水を処理する二次処理装置をさらに備えてもよい。
【0009】
上述の水処理システムにおいて、前記二次処理装置は、再生式脱塩により前記透過水からイオンを除去した精製水と前記イオンの含有量を増大した電気濃縮水とを得るEDI装置であってもよい。
【0010】
上述の水処理システムは、前記殺菌処理水を前記供給ラインに供給し、前記逆浸透膜装置以降から前記殺菌処理水を前記温度調節装置に還流させる熱殺菌ラインをさらに備えてもよい。
【0011】
上述の水処理システムにおいて、前記熱殺菌ラインは、前記殺菌処理水を循環させる殺菌ポンプを有し、前記制御装置は、前記対象水を前記逆浸透膜装置に供給するポンプを停止した状態で、前記供給ラインに前記殺菌処理水を供給してもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る水処理システムの殺菌方法は、逆浸透膜によって対象水を透過水と膜濃縮水とに膜分離する逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置に前記対象水を供給する供給ラインと、前記逆浸透膜装置から前記透過水を導出し、前記透過水の流量を検出する透過水流量計を有する透過水ラインと、前記逆浸透膜装置から前記膜濃縮水を導出し、前記膜濃縮水の流量を検出する膜濃縮水流量計、及び前記膜濃縮水の流量を調整する流量調節弁を有する膜濃縮水ラインと、を備える水処理システムを、前記供給ラインに温度調節した殺菌処理水を供給することにより殺菌する殺菌方法であって、前記殺菌処理水の温度を所定の殺菌温度まで昇温する工程と、前記殺菌処理水の温度を前記殺菌温度に所定の保持時間保持する工程と、前記殺菌処理水の温度を降温する工程と、を備え、少なくとも前記昇温する工程及び前記降温する工程において、前記透過水流量計の検出値と前記膜濃縮水流量計の検出値との比を設定値に保持するよう前記流量調節弁の開度を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、逆浸透膜装置を通して二次処理装置に十分な量の熱水を供給することで熱水殺菌を短時間で終了できる水処理システム及び水処理システムの殺菌方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る水処理システム100の構成を示す模式図である。
【0016】
水処理システム100は、対象水タンク1と、逆浸透膜装置2と、EDI装置3と、精製水タンク4と、温度調節装置5と、を備える。水処理システム100は、さらに、供給ライン10と、透過水ライン20と、膜濃縮水ライン30と、還流ライン40と、精製水ライン50と、電気濃縮水ライン60と、熱殺菌ライン70と、制御装置80と、を備える。
【0017】
水処理システム100は、後で詳しく説明するように、逆浸透膜装置2及びEDI装置3により対象水を処理して精製水を製造する製造運転と、温度調節装置5により温度調節された殺菌処理水により各構成要素を熱水殺菌する殺菌運転と、EDI装置3を再生する再生運転と、を繰り返し行う。
【0018】
対象水タンク1は、対象水(原水)を貯留する。対象水としては、比較的清浄な水が想定され、例えば水道水等、予め浄水処理された水を用いることができる。
【0019】
逆浸透膜装置2は、逆浸透膜によって対象水を膜分離、つまり逆浸透膜を透過した透過水と逆浸透膜を透過しなかった膜濃縮水とに分離する。
【0020】
EDI装置3は、電気再生式脱塩により透過水からイオンを除去した精製水(純水)と、透過水のイオンの含有量を増大した電気濃縮水とを得る。EDI装置3は、逆浸透膜装置2から導出される透過水をさらに処理する二次処理装置の一例である。
【0021】
精製水タンク4は、EDI装置3が生成した精製水を貯留する。
【0022】
温度調節装置5は、通過又は一時的に保留する水の温度を調節する。具体例として、温度調節装置5としては、外部から供給される水蒸気等の温熱源流体と熱交換することにより系内の水の温度を調節する熱交換器、例えば電気ヒータ、バーナ等の熱源を有するボイラなど用いることができる。温度調節装置5は、水を加熱する機能のみを有してもよいが、水を冷却する機能をさらに有してもよい。例えば温度調節装置5は、系内の水と冷却水等の冷熱源流体との間で熱交換可能な熱交換器とすることができる。
【0023】
供給ライン10は、対象水タンク1から逆浸透膜装置2に対象水を供給する。供給ライン10は、対象水を遮断する対象水遮断弁11と、対象水を加圧する供給ポンプ12と、をこの順番に有する構成とされ得る。供給ライン10には、対象水遮断弁11と供給ポンプ12との間において、熱殺菌ライン70と還流ライン40とがこの順番に接続される。
【0024】
透過水ライン20は、逆浸透膜装置2から透過水を導出し、透過水をEDI装置3に案内する。透過水ライン20は、透過水の流量を検出する透過水流量計21と、透過水を系外に排出する透過水排出弁22と、透過水を加圧する透過水ポンプ23と、をこの順番に有する構成とされ得る。
【0025】
膜濃縮水ライン30は、逆浸透膜装置2から膜濃縮水を導出し、系外に排出する。膜濃縮水ライン30は、系外に排出する膜濃縮水の流量を検出する膜濃縮水流量計31と、系外に排出される膜濃縮水の流量を調節する膜濃縮水流量調節弁32と、殺菌運転時に膜濃縮水ライン30に流出する殺菌処理水を熱殺菌ライン70に還流させるよう流路を切り替える膜濃縮水切換弁33と、をこの順番に有する構成とされ得る。膜濃縮水ライン30は、逆浸透膜装置2から延出し、透過水ポンプ23の近傍に回り込むよう配管される。これにより、還流ライン40を直線的に配管するとともにその長さを短くすることを可能にする。
【0026】
還流ライン40は、膜濃縮水ライン30の膜濃縮水流量計31の上流側と、供給ライン10の供給ポンプ12の上流側とを接続する。還流ライン40は、供給ライン10側から膜濃縮水ライン30側への流れを防止する逆止弁41を有する。還流ライン40は、直線的に配管される。また、還流ライン40は、逆止弁41の呼び径に合致する一定の口径の配管により構成されることが好ましい。また、逆止弁41は、還流ライン40の中央に配設されることが好ましい。
【0027】
逆止弁41の弁体から還流ライン40の両端までのそれぞれの距離の上限としては、還流ライン40の内径の6倍が好ましく、3倍がより好ましい。逆止弁41の弁体から還流ライン40の端部までの距離を前記上限以下とすることによって、逆浸透膜装置2を熱水殺菌する場合に、還流ライン40に熱水を流さなくても供給ライン10を通過する熱水及び膜濃縮水ライン30を通過する熱水が還流ライン40の内部に進入して、逆止弁41を含む還流ライン40の全体を十分に加熱殺菌することができる。なお、還流ライン40の端部は、還流ライン40の中心線と供給ライン10又は膜濃縮水ライン30の中心線との交点とする。
【0028】
精製水ライン50は、EDI装置3から精製水を導出し、精製水を精製水タンク4に案内する。精製水ライン50は、精製水を系外に排出する精製水排出弁51と、殺菌運転時に精製水ライン50に流出する殺菌処理水を熱殺菌ライン70に還流させるよう流路を切り替える精製水切換弁52と、をこの順番に有する構成とされてもよい。
【0029】
電気濃縮水ライン60は、EDI装置3から電気濃縮水を導出し、電気濃縮水を系外に排出する。電気濃縮水ライン60は、殺菌運転時に電気濃縮水ライン60に流出する殺菌処理水を熱殺菌ライン70に還流させるよう流路を切り替える電気濃縮水切換弁61を有する構成とされ得る。
【0030】
熱殺菌ライン70は、逆浸透膜装置の殺菌に用いる殺菌処理水、つまり温度調節装置5により温度調節され、殺菌時には熱水となり得る水を供給ライン10に供給し、逆浸透膜装置2以降、つまり膜濃縮水ライン30、精製水ライン50及び電気濃縮水ライン60から殺菌処理水を回収する。つまり、熱殺菌ライン70は、供給ライン10、逆浸透膜装置2及びEDI装置3、透過水ライン20及び膜濃縮水ライン30、EDI装置3、並びに精製水ライン50及び電気濃縮水ライン60を通して殺菌処理水を循環させる。このため、熱殺菌ライン70には、温度調節装置5と、温度調節装置5を通して殺菌処理水を送出する殺菌ポンプ71と、が設けられる。また、熱殺菌ライン70は、供給ライン10との接続を遮断する殺菌処理水遮断弁72と、殺菌処理水を系外に排出する殺菌処理水排出弁73とを有する構成とされ得る。
【0031】
制御装置80は、水処理システム100の他の構成要素の動作を制御することにより、水処理システム100の運転を制御する。つまり、制御装置80は、水処理システム100により精製水を製造する製造運転と、水処理システム100の殺菌を行う殺菌運転と、を繰り返し行うよう、他の構成要素を制御する。また、制御装置80は、製造運転及び殺菌運転に加えて、EDI装置3を再生する再生運転を行うよう、他の構成要素を制御してもよい。なお、殺菌運転は、本発明に係る殺菌方法の一実施形態を実施する運転である。
【0032】
製造運転は、初期ブロー工程と、通水工程と、フラッシング工程と、を有し得る。初期ブロー工程では、運転状態が安定して十分に清浄な精製水が得られるまでの間、EDI装置3から精製水ライン50に流出する水を精製水タンク4に導入することなく、精製水排出弁51から系外に排出する。初期ブロー工程は、精製水排出弁51を省略し、精製水切換弁52により精製水ライン50から熱殺菌ライン70に水を流入させ、熱殺菌ライン70に流入した水を殺菌処理水排出弁73から系外に排出することによって行ってもよい。通水工程では、逆浸透膜装置2及びEDI装置3を通して精製水ライン50に流出する精製水を精製水タンク4に導入する。フラッシング工程では、膜濃縮水流量調節弁32の開度を大きくして、逆浸透膜装置2の内部の膜濃縮水側の空間及び膜濃縮水ライン30の内部の水の不純物濃度を低下させるとともに、透過水排出弁22から透過水を系外に排出する。
【0033】
殺菌運転は、透過水ライン20、膜濃縮水ライン30、精製水ライン50及び電気濃縮水ライン60に滞留する水を系外に排出し、系内の不純物量を低減する準備工程と、逆浸透膜装置2、EDI装置3及び温度調節装置5の間で殺菌処理水を循環させ、逆浸透膜装置2及びEDI装置3の温度を目標温度に近付けるよう、温度調節装置5の出力を調整する殺菌工程と、を備える。
【0034】
殺菌工程は、供給ポンプ12及び透過水ポンプ23を停止した状態で殺菌ポンプ71により殺菌処理水を循環させるとともに、殺菌処理水の温度が所定の温度変化をするよう温度調節装置5を制御する。このように、殺菌処理水を循環させることによって、比較的少量の殺菌処理水を循環させて熱水殺菌を行うことができるので、殺菌のための水及びエネルギーの消費を抑制できる。また、供給ポンプ12を停止することで、逆浸透膜装置2から膜濃縮水ライン30に流出した殺菌処理水が還流ライン40を通して逆浸透膜装置2に再供給されることがない。これにより、逆浸透膜装置2の温度を正確に制御することができるので、迅速かつ適切に熱水殺菌を行うことができる。さらに、殺菌工程で供給ポンプ12及び透過水ポンプ23を使用しないことにより、供給ポンプ12及び透過水ポンプ23の仕様を製造運転に最適化することができる。
【0035】
殺菌工程は、逆浸透膜装置2及びEDI装置3の温度を予め設定される殺菌温度まで昇温する昇温工程と、逆浸透膜装置2及びEDI装置3の温度を所定の殺菌温度に所定の保持時間の間保持する温度保持工程と、逆浸透膜装置2及びEDI装置3の温度を降温する降温工程と、を有し得る。つまり、制御装置80は、供給ライン10に殺菌処理水が供給されるときに、殺菌処理水の温度が、所定の温度まで昇温してから殺菌温度に保持時間保持し、その後降温する所定の変化をするよう、温度調節装置5の出力を制御する。殺菌温度は、例えば80℃以上85℃以下の温度とされ得る。保持時間は、殺菌温度にもよるが、例えば30分以上1時間以下の時間とされ得る。昇温工程及び降温工程における逆浸透膜装置2及びEDI装置3の温度勾配は、逆浸透膜を保護するために、例えば2℃/min程度に設定され得る。
【0036】
制御装置80は、少なくとも昇温工程及び降温工程において、好ましくは殺菌工程全体を通して、透過水流量計21の検出値と膜濃縮水流量計31の検出値との比を設定値に保持するよう膜濃縮水流量調節弁32の開度を制御する。これにより、逆浸透膜装置2の下流側にも十分な殺菌処理水を供給して、EDI装置3等の下流側の構成要素も逆浸透膜装置2に対して遅れが小さい温度変化をさせられるので、システム全体を比較的短時間で熱水殺菌することができる。
【0037】
再生運転は、EDI装置3に通電し、EDI装置3から精製水ライン50に流出する水を精製水排出弁51又は熱殺菌ライン70を介して殺菌処理水排出弁73から系外に排出する。これにより、EDI装置3が透過水から不純物イオンを除去できる状態に再生され得る。
【0038】
以上の説明から明らかなように、制御装置80が行う本発明に係る殺菌方法の一実施形態は、供給ライン10に温度調節した殺菌処理水を供給することにより水処理システム100を殺菌する殺菌方法であって、殺菌処理水の温度を所定の殺菌温度まで昇温する工程と、殺菌処理水の温度を殺菌温度に所定の保持時間保持する工程と、殺菌処理水の温度を降温する工程と、を備え、少なくとも昇温する工程及び降温する工程において、透過水流量計21の検出値と膜濃縮水流量計31の検出値との比を設定値に保持するよう膜濃縮水流量調節弁32の開度を制御する。
【0039】
以上のように、水処理システム100は、熱水殺菌の際に制御装置80が透過水ライン20に流出する殺菌処理水の流量と膜濃縮水ライン30に流出する殺菌処理水の流量との比を設定値に保持するため、逆浸透膜装置2の下流側にも十分な殺菌処理水を供給できる。これにより、逆浸透膜装置2の下流側のEDI装置3等の他の構成要素にも適切な熱履歴を与えることができるため、システム全体を比較的短時間で適切に熱水殺菌することができる。
【0040】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例として、上述の実施形態における温度調節装置、ポンプ、流量計、調節弁等は、機能を損なわない範囲で異なる位置関係で配設されてもよい。また、流路を切り替えるための構成は、単一の三方弁を用いてもよく、2つの遮断弁を用いてもよい。また、本発明に係る水処理システムにおいて、EDI装置は省略されてもよく、EDI装置に換えて又はEDI装置に加えて、例えばUF膜ろ過装置、イオン交換装置等の他の二次処理装置が設けられてもよい。また、本発明に係る水処理システムにおいて、還流ラインは省略されてもよい。また、本発明に係る水処理システムは、殺菌処理水を循環させずに系外に排出するよう構成されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 対象水タンク
2 逆浸透膜装置
3 EDI装置
4 精製水タンク
5 温度調節装置
10 供給ライン
11 対象水遮断弁
12 供給ポンプ
20 透過水ライン
21 透過水流量計
22 透過水排出弁
23 透過水ポンプ
30 膜濃縮水ライン
31 膜濃縮水流量計
32 膜濃縮水流量調節弁
33 膜濃縮水切換弁
40 還流ライン
41 逆止弁
50 精製水ライン
51 精製水排出弁
52 精製水切換弁
60 電気濃縮水ライン
61 電気濃縮水切換弁
70 熱殺菌ライン
71 殺菌ポンプ
72 殺菌処理水遮断弁
73 殺菌処理水排出弁
80 制御装置
100 水処理システム
図1