(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031990
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20230302BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20230302BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/0258
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137815
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中尾 公人
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA10
5H126BB10
5H126DD04
5H126EE24
5H126FF04
5H126GG06
5H126GG18
5H126JJ00
5H126RR01
(57)【要約】
【課題】高効率かつ高出力なレドックスフロー電池を提供する。
【解決手段】レドックスフロー電池1は、第1の方向Zに積層された複数の電池セル10を有し、複数の電池セル10のそれぞれが、シート状の正極電極14を含み、正極活物質を含む正極流体が第1の方向Zに垂直な第2の方向Xに流通するように構成された正極セル11と、シート状の負極電極15を含み、負極活物質を含む負極流体が第2の方向Xに流通するように構成された負極セル12と、正極セル11と負極セル12とを分離する隔膜13とを有し、隔膜13は、正極セル11と負極セル12との間を第1の方向Zに蛇行しながら第2の方向Xに延び、正極電極14および負極電極15は、第2の方向Xにおいて隔膜13を挟んで少なくとも一部が対向するように、それぞれ正極セル11および負極セル12内に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に積層された複数の電池セルを有するレドックスフロー電池であって、
前記複数の電池セルのそれぞれが、
シート状の正極電極を含み、正極活物質を含む正極流体が前記第1の方向と直交する第2の方向に流通するように構成された正極セルと、
シート状の負極電極を含み、負極活物質を含む負極流体が前記第2の方向に流通するように構成された負極セルと、
前記正極セルと前記負極セルとを分離する隔膜とを有し、
前記隔膜は、前記正極セルと前記負極セルとの間を前記第1の方向に蛇行しながら前記第2の方向に延び、
前記正極電極および前記負極電極は、前記第2の方向において前記隔膜を挟んで少なくとも一部が対向するように、それぞれ前記正極セルおよび前記負極セル内に配置されている、レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記正極電極および前記負極電極は、それぞれ前記第2の方向に垂直に配置されている、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記隔膜と共に前記第1の方向に積層されて前記複数の電池セルを構成し、かつ隣接する前記電池セルを区画する隔壁ユニットを有する、請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記隔壁ユニットは、隣接する前記隔壁ユニットと前記第2の方向にずれて噛み合うように構成されている、請求項3に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記隔壁ユニットが、隣接する前記電池セルの前記正極電極および前記負極電極を支持して電気的に接続するシート状の集電双極部と、前記集電双極部を介して前記第2の方向に積層された複数の隔壁部材とを有する、請求項4に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記集電双極部が膨張黒鉛シートを含む、請求項5に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記集電双極部が、前記正極電極および前記負極電極にそれぞれ対向する位置に、前記正極流体または前記負極流体を通過させる開口を有する、請求項6に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記複数の隔壁部材のそれぞれが、本体部と、前記第1の方向における前記本体部の両側にそれぞれ設けられ、前記第2の方向で前記集電双極部を支持するとともに前記第1の方向で前記隔膜を支持する支持部と有する、請求項5から7のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記支持部は、それぞれが前記第2の方向に沿って前記第1の方向に延びる複数の支持板からなる、請求項8に記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記複数の支持板のそれぞれが、前記第1の方向の端部に、前記隔膜を支持する台形状の切り欠きを有する、請求項9に記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
前記複数の隔壁部材がプラスチックからなる、請求項5から10のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
前記隔壁ユニットは、隣接する前記電池セルの前記正極電極および前記負極電極と共にユニット化されている、請求項5から11のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項13】
前記正極電極および前記負極電極が、1.0×10-9m2以下の透過率を有する、請求項1から12のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力貯蔵用の二次電池として、電解液に含まれる活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行うレドックスフロー電池が知られている。レドックスフロー電池は、大容量化が容易、長寿命、電池の充電状態が正確に監視可能であるなどの特徴を有している。このような特徴から、近年では、特に発電量の変動が大きい再生可能エネルギーの出力安定化や電力負荷平準化の用途としてレドックスフロー電池は大きな注目を集めている。
【0003】
一般に、レドックスフロー電池は、所定の電圧を得るために、複数の電池セルが積層されたセルスタックから構成されている。このようなレドックスフロー電池には、システム全体の高効率化を実現するために、電池セルの内部抵抗の低減と電解液が電池セルを通過する際の圧力損失の低減とが求められる。こうした要求を満たすものとして、特許文献1には、電池セルを構成する双極板に櫛歯流路を備えたレドックスフロー電池が記載されている。櫛歯流路は、双極板のうち電極に対向する面にそれぞれ櫛歯状に形成され、互いに噛み合うように配置された供給側と排出側の2種類の流路溝から構成されている。このような構成により、電解液は、供給側の流路溝から隣接する排出側の流路溝へと電極内を流れるため、電極の厚みを薄くして上記内部抵抗を低減し、かつ電極内の電解液の流れ抵抗を低減して上記圧力損失を低減することが期待される。また、特許文献1には、櫛歯流路を備えた構造に固有の問題に対処するために、電極を2層構造とし、隔膜側の層の透過率を双極板側の層の透過率よりも大きくする技術も記載されている。これにより、電極内での電解液の不均一な流れを軽減することができ、電極内での電解液の流れが不均一となり、電極全体が反応に有効に利用されないという問題を解決することが期待される。
【0004】
一方で、上述の要求を満たす別の構造として、特許文献2には、電解液が電極内を厚み方向に流れるように電解液を流通させる流路構造を備えたものが記載されている。このような流路構造により、電極の薄型化による上記内部抵抗の低減と上記圧力損失の低減が期待されることに加え、電極内での電解液の不均一な流れの低減も期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-122230号公報
【特許文献2】特表2015-530709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載のレドックスフロー電池では、電解液が電極内をできるだけ均一に流れるようにするために電池セル内の流路構造を工夫する必要がある。したがって、電池セル内の流路構造は必然的に複雑になる。そのため、レドックスフロー電池の高出力化の要求に対して電池セルを大型化しようとすると、電池セル全体の電解液の流れ抵抗が大きくなり、結果的に、圧力損失が増大することになる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、高効率かつ高出力なレドックスフロー電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明のレドックスフロー電池は、第1の方向に積層された複数の電池セルを有し、複数の電池セルのそれぞれが、シート状の正極電極を含み、正極活物質を含む正極流体が第1の方向に垂直な第2の方向に流通するように構成された正極セルと、シート状の負極電極を含み、負極活物質を含む負極流体が第2の方向に流通するように構成された負極セルと、正極セルと負極セルとを分離する隔膜とを有し、隔膜は、正極セルと負極セルとの間を第1の方向に蛇行しながら第2の方向に延び、正極電極および負極電極は、第2の方向において隔膜を挟んで少なくとも一部が対向するように、それぞれ正極セルおよび負極セル内に配置されている。
【0009】
このようなレドックスフロー電池によれば、電池セル内の流路構造を複雑にすることなく、電解液(活物質を含む流体)をシート状の電極の厚み方向に通過させることができる。そのため、電池セルのサイズを大きくしても、電解液の流れ抵抗が著しく大きくなることがなく、電解液が電池セルを通過する際の圧力損失が大幅に増大することもない。また、電極間の距離が大きく離れることがないため、電解液の偏流を抑制することと合わせて、充放電性能を最大限に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、高効率かつ高出力なレドックスフロー電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
【
図2】本実施形態の電池セルの内部構造を示す概略図である。
【
図3】本実施形態の隔壁部材の概略平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るレドックスフロー電池の概略構成図である。
図1(b)は、本実施形態のレドックスフロー電池を構成するセルスタックの概略構成図である。
【0014】
レドックスフロー電池1は、電池セル10内での正極活物質および負極活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行うものであり、積層された複数の電池セル10を有するセルスタック2を備えている。
図1(b)には、4つの電池セル10が示されているが、セルスタック2を構成する電池セル10の個数はこれに限定されるものではない。
【0015】
セルスタック2は、正極側往路配管L1および正極側復路配管L2を介して、正極電解液を貯留する正極側タンク3に接続されている。正極側往路配管L1には、正極側タンク3とセルスタック2との間で正極電解液を循環させる正極側ポンプ4が設けられている。また、セルスタック2は、負極側往路配管L3および負極側復路配管L4を介して、負極電解液を貯留する負極側タンク5に接続されている。負極側往路配管L3には、負極側タンク5とセルスタック2との間で負極電解液を循環させる負極側ポンプ6が設けられている。なお、電解液としては、液相中に粒状の活物質を懸濁・分散させて形成されたスラリーや、液状になった活物質そのものなど、活物質を含むあらゆる流体を用いることができる。したがって、ここでいう電解液は、活物質の溶液に限定されるものではない。
【0016】
各電池セル10は、正極セル11と、負極セル12と、正極セル11と負極セル12とを分離する隔膜13とを有している。正極セル11は、正極電極14を含み、正極電解液(正極流体)が正極セル11内をセルスタック2の積層方向と直交する方向に流通するように構成されている。負極セル12は、負極電極15を含み、負極電解液(負極流体)が負極セル12内をセルスタック2の積層方向と直交する方向に流通するように構成されている。以下、セルスタック2の積層方向(第1の方向)をZ方向とし、電池セル10内での電解液の流通方向(第2の方向)をX方向とする。
【0017】
正極セル11は、個別供給流路P1および共通供給流路C1を介して、正極側往路配管L1に接続され、個別回収流路P2および共通回収流路C2を介して、正極側復路配管L2に接続されている。これにより、正極セル11には、正極側タンク3から正極活物質を含む正極電解液が供給される。こうして、正極セル11では、充電動作時に還元状態の正極活物質が酸化状態に変化する酸化反応が起こり、放電動作時に酸化状態の正極活物質が還元状態に変化する還元反応が起こる。一方、負極セル12は、個別供給流路P3および共通供給流路C3を介して、負極側往路配管L3に接続され、個別回収流路P4および共通回収流路C4を介して、負極側復路配管L4に接続されている。これにより、負極セル12には、負極側タンク5から負極活物質を含む負極電解液が供給される。こうして、負極セル12では、充電動作時に酸化状態の負極活物質が還元状態に変化する還元反応が起こり、放電動作時に還元状態の負極活物質が酸化状態に変化する酸化反応が起こる。
【0018】
図2は、本実施形態の電池セルの内部構造を示す概略図であり、セルスタックの積層方向と電池セル内での電解液の流通方向とに直交する方向から見た構造を示している。なお、以下の説明における「上」および「下」という用語は、相対的なものであり、電池セルの使用時における姿勢を限定するものではない。
【0019】
複数の電池セル10は、隔壁ユニット20と隔膜13とがZ方向に交互に積層されることで構成され、したがって、隣接する電池セル10は、図中に一点鎖線で示すように、隔壁ユニット20によって区画されている。換言すると、正極セル11は、隔壁ユニット20とこれに一方の側で対向する隔膜13との間に形成され、負極セル12は、隔壁ユニット20とこれに他方の側で対向する隔膜13との間に形成されている。また、隔壁ユニット20は、隣接する隔壁ユニット20とX方向にずれて噛み合うように構成されている。これにより、隔膜13は、互いに噛み合う隔壁ユニット20に挟まれることで、正極セル11と負極セル12との間をZ方向に蛇行しながらX方向に延びている。
【0020】
正極電極14は、シート状に形成され、X方向(正極電解液の流通方向)に対して交差するように、好ましくは垂直に正極セル11内に配置されている。同様に、負極電極15も、シート状に形成され、X方向(負極電解液の流通方向)に対して交差するように、好ましくは垂直に負極セル12内に配置されている。図示した例では、正極セル11内に5つの正極電極14が配置され、負極セル12内に5つの負極電極15が配置されているが、各セル11,12内の電極11,13の数は、これに限定されるものではない。加えて、正極電極14と負極電極15は、X方向において、蛇行する隔膜13を挟んで少なくとも一部が対向するように、好ましくは全体が対向するように、それぞれ正極セル11および負極セル12内に配置されている。電極14,15の材料としては、炭素材料を用いることが好ましく、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、またはカーボンフェルトからなる電極14,15を用いることができる。
【0021】
隔壁ユニット20は、シート状の集電双極部21と、集電双極部21を介してX方向に積層された複数の隔壁部材22とを有している。集電双極部21は、導電性材料からなり、隣接する電池セル10の正極電極14および負極電極15を支持して電気的に接続する機能を有している。一方、複数の隔壁部材22は、絶縁性材料からなり、集電双極部21を支持するとともに、蛇行する隔膜13を支持する機能を有している。隔壁部材22の具体的な構成例については後述する。
【0022】
集電双極部21は、複数の隔壁部材22により、X方向に対して交差するように、好ましくは垂直に支持され、正極電極14および負極電極15は、集電双極部21の表面に配置されている。これにより、正極電極14および負極電極15をそれぞれX方向に対して交差するように、好ましくは垂直に配置することができる。集電双極部21の表面には、正極電極14と負極電極15との間に生じるZ方向の隙間を埋めるように、導電性または非導電性材料からなる凸部が形成または配置されていてもよい。なお、正極電極14および負極電極15は、集電双極部21の上下どちらの面に配置されていてもよく、すなわち、集電双極部21は、上下どちらの面で正極電極14および負極電極15を支持していてもよい。あるいは、集電双極部21は、正極電極14および負極電極15を上下両側から挟んで支持する一対のシート部材からなっていてもよい。この場合、Z方向における電極14,15の隙間を埋めるために、一対のシート部材の間に導電性または非導電性材料からなるスペーサが設けられていてもよい。また、集電双極部21は、正極電極14に対向する位置に正極電解液を通過させる開口を備え、負極電極15に対向する位置に負極電解液を通過させる開口を備えている。
【0023】
集電双極部21の材料としては、高い導電性と電解液に対する耐性(耐薬品性、耐酸性など)を有する炭素材料を用いることが好ましい。本実施形態では、集電双極部21は隣接する隔壁部材22に挟まれて支持されるため、集電双極部21にはそれほどの機械的強度が要求されない。したがって、集電双極部21の材料は、上述した観点に加え、量産化の観点から選択されることが好ましい。そのような材料としては、例えば、ロール状に製造可能で、穿孔などの加工が容易な膨張黒鉛が挙げられる。なお、集電双極部21の材料によっては、電解液を通過させるための機構として、集電双極部21に多数の細孔が形成されていてもよい。ただし、集電双極部21が膨張黒鉛シートからなる場合には、製作の容易性やコスト面から、上述したように開口(打ち抜き孔)が形成されていることが好ましい。一方、隔壁部材22の材料としては、適度な剛性を有するとともに、電解液と反応せず、電解液に対する耐性を有するものを用いることができる。そのような材料として、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックが挙げられる。
【0024】
また、隔壁ユニット20は、隔壁ユニット20のX方向の両端部に配置され、セルスタック2の上面および下面を構成する一対の端壁(図示せず)を有している。各端壁は、複数の貫通孔および連通孔を備え、これらは、隔壁ユニット20と隔膜13とが交互に積層されてセルスタック2を構成したときに共通流路C1~C4および個別流路P1~P4を構成する。ただし、共通流路C1~C4および個別流路P1~P4の構成はこれに限定されず、例えば、共通流路C1~C4は、それぞれがセルスタック2とは独立した別個の配管部材として構成されていてもよい。また、個別流路P1~P4も、それぞれが独立した配管部材としてセルスタック2に接続され、電池セル10の内部に連通していてもよい。
【0025】
上述した隔壁ユニット20は、隣接する電池セル10の正極電極14および負極電極15と共にユニット化されている。これにより、セルスタック2の組立時に、電極14,15を含む隔壁ユニット20を単一部品として扱うことができ、部品点数の削減と製造工程の簡略化とを実現し、低コストでの量産化を実現することができる。
【0026】
ここで、
図3を参照して、本実施形態の隔壁部材の具体的な構成例について説明する。
図3(a)は、本実施形態の隔壁部材の概略平面図であり、電池セル内での電解液の流通方向から見た平面を示している。
図3(b)は、
図3(a)のA-A線に沿った断面図であり、
図3(c)は、
図3(a)のB-B線に沿った断面図である。なお、図示した隔壁部材の構成例は、あくまで一例であり、本発明を限定するものではない。
【0027】
隔壁部材22は、本体部23と、一対の支持部24と、一対の側壁部25とから構成されている。本体部23は、セルスタック2の積層方向(Z方向)と電池セル10内での電解液の流通方向(X方向)とに直交するY方向に延びている。支持部24は、Z方向における本体部23の両側に設けられ、それぞれがX方向に沿ってZ方向に延びる複数の支持板26からなる。側壁部25は、Y方向における本体部23の両側に設けられ、セルスタック2の側面を構成する。隔壁部材22は、X方向の両側に、側壁部25の一部で構成された接合面22aを有している。隔壁部材22は、例えば、接着剤またはレーザ溶着により、X方向に隣接する隔壁部材22と接合面22aで接合されている。
【0028】
また、隔壁部材22は、X方向の両側に、集電双極部21を支持する支持面22bを有している。支持面22bは、本体部23、支持部24、および側壁部25の残りの部分で構成されている。したがって、支持部24は、本体部23と側壁部25の残りの部分と共に、X方向で集電双極部21を支持することができる。なお、電極14,15間の隙間を埋めるための上記凸部は、集電双極部21の表面ではなく、隔壁部材22の支持面22bに形成されていてもよい。また、支持部24の各支持板26は、Z方向の端部に台形状の切り欠き26aを有し、これに応じて、側壁部25も、Z方向に開口してY方向に延び、断面が同様に台形状の凹溝25aを有している。したがって、支持部24は、側壁部25と共に、Z方向で隔膜13を支持することもできる。側壁部25の凹溝25a内には、X方向に沿ってシール部材(図示せず)を配置するためのシール溝25bが形成されている。シール部材は、電池セル10の内部から電解液が漏れるのを抑制するとともに、隣接する隔壁ユニット20間で隔膜13を保持して固定する機能を有している。
【0029】
なお、ここでは詳細に説明しないが、上述のような構成例では、隔壁ユニット20と隔膜13とが交互に積層されてセルスタック2を構成したときに、セルスタック2をY方向に挟持して固定するために一対の金属プレートが用いられていてもよい。
【0030】
以上、本実施形態によれば、シート状の電極14,15が、セル11,12内での電解液の流通方向(X方向)に対して交差するように、好ましくは垂直に配置されている。このとき、電解液が電極14,15を通過する際の圧力損失は、セル11,12内のその他の領域を通過する際の圧力損失に比べて非常に大きい。そのため、セル11,12内の流路構造を複雑にすることなく、電極14,15内での偏流の発生も抑制しつつ、電極14,15の厚み方向に電解液を通過させることができる。その結果、電池セル10のサイズを大きくしても、電解液の流れ抵抗が著しく大きくなることがなく、電解液が電池セル10を通過する際の圧力損失が大幅に増加することもない。さらに、正極電極14と負極電極15は蛇行する隔膜13を挟んで少なくとも一部が対向しているため、電池セル10内での電極14,15間の距離が大きく離れることがなく、電池セル10の内部抵抗が大きく増大することもない。その結果、電解液の偏流を抑制することと合わせて、充放電性能を最大限に発揮させることができる。こうして、高効率かつ高出力なレドックスフロー電池1を実現することができる。
【0031】
正極電極14は、表裏いずれかの側だけでなく両側で、隔膜13を挟んで負極電極15に対向し、負極電極15も、表裏いずれかの側だけでなく両側で、隔膜13を挟んで正極電極14に対向している。そのため、本実施形態は、例えば、特許文献1,2に記載のレドックスフロー電池に比べて、電池セル10内での電極14,15間の距離が大きくなる点では好ましくないが、充放電動作に伴う水素イオンの移動が各電極14,15の表裏両側で可能になる点で有利である。電池セル10内での電極14,15間の距離を近づけるために、集電双極部21の片面だけでなく両面に正極電極14および負極電極15が配置されていてもよい。すなわち、1つの集電双極部21に対して2つの正極電極14が設けられ、それらが集電双極部21の両面に配置されていてもよい。同様に、1つの集電双極部21に対して2つの負極電極15が設けられ、それらが集電双極部21の両面に配置されていてもよい。
【0032】
図3に示す構成例では、上述したように、それぞれがX方向に沿って配置された複数の支持板26が隔壁部材22に設けられている。そのため、X方向に流れる電解液がY方向に偏って流れることを抑制することができ、上述した偏流の抑制効果をさらに高めることができる。電解液の偏流をより効果的に抑制するという観点から、正極電極14と負極電極15は、電解液を通過させにくくなっていることが好ましく、具体的には、1.0×10
-9m
2以下の透過率を有していることが好ましい。正極電極14と負極電極15の透過率は同じであってもよいが、正極電解液と負極電解液の粘度や正極電極14と負極電極15に求められる特性の違いによっては、異なっていてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、正極セル11内の複数の正極電極14は、互いに電気的に接続されておらず、負極セル12内の複数の負極電極15も、互いに電気的に接続されていない。ただし、各セル11,12において内部の電位の不均一性が著しく、充放電効率の低下が問題になることがある。その場合には、内部電位の均一化を図るために、複数の正極電極14は、互いに電気的に接続されていてもよく、複数の負極電極15も、互いに電気的に接続されていてもよい。そのために、隔壁部材22の内部に、その隔壁部材22に支持された2つの集電双極部21を電気的に接続する導電部材が設置されていてもよい。
【0034】
また、上述した実施形態では、複数の電池セル10は、各電解液が複数の電池セル10を並列に流れるように互いに接続されているが、複数の電池セル10の接続形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の電池セル10は、各電解液が複数の電池セル10を直列に流れるように互いに接続されていてもよく、すなわち、直列流路を構成していてもよい。あるいは、複数の電池セル10は、並列流路と直列流路が組み合わされた階層的な流路構成、具体的には、複数の直列流路が並列に接続された流路構成を有していてもよい。すなわち、セルスタック2が複数のセルグループに分割され、各セルグループを構成する複数の電池セル10が直列流路を構成し、各セルグループが並列流路を構成していてもよい。
【0035】
なお、複数の直列流路が並列に接続された流路構成を有する場合、正極側タンク3を配管L1に接続されたタンクと配管L2に接続されたタンクの2つに分け、これら2つのタンクに、還元状態の活物質濃度と酸化状態の活物質濃度の割合が異なる2種類の正極電解液を別々に貯留してもよい。すなわち、充放電動作時に酸化還元反応の前後で正極電解液が別々のタンクに貯留されてもよい。同様に、負極側タンク5を配管L3に接続されたタンクと配管L4に接続されたタンクの2つに分け、これら2つのタンクに、還元状態の活物質濃度と酸化状態の活物質濃度の割合が異なる2種類の負極電解液を別々に貯留してもよい。すなわち、充放電動作時に酸化還元反応の前後で負極電解液が別々のタンクに貯留されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 レドックスフロー電池
10 電池セル
11 正極セル
12 負極セル
13 隔膜
14 正極電極
15 負極電極
20 隔壁ユニット
21 集電双極部
22 隔壁部材
22a 接合面
22b 支持面
23 本体部
24 支持部
25 側壁部
25a 凹溝
25b シール溝
26 支持板
26a 切り欠き