(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031993
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137822
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA01
3B200BA02
3B200BB03
3B200BB05
3B200BB10
3B200BB17
3B200CA11
3B200DA14
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB18
(57)【要約】
【課題】端部からの漏れが少ない、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品を提供する。
【解決手段】液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートの間に配置された吸収体とを備える吸収性物品であって、吸収体は、吸収体本体と、吸収体本体の肌当接面側に配置された高吸収性シートを含み、高吸収性シートは、吸収体本体の中央部、吸収体本体の長手方向前後端、並びに吸収体本体の前側両端部及び後側両端部、にそれぞれ配置され、吸収体本体の長手方向前後端の高吸収性シート、並びに吸収体本体の前側両端部及び後側両端部の高吸収性シートは、それぞれ平面状態で互いに間隔を空けた状態で配置され、吸収性物品が着用時の立体状態となったときには、高吸収性シートのうちの近接する高吸収性シート同士が重ならずに接近して、略連続帯状の吸収性シートとなることを特徴とする、吸収性物品を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収体とを備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収体本体と、前記吸収体本体の肌当接面側に配置された高吸収性シートを含み、
前記高吸収性シートは、前記吸収体本体の中央部、前記吸収体本体の長手方向前後端、並びに前記吸収体本体の前側両端部及び後側両端部、にそれぞれ配置され、
前記吸収体本体の長手方向前後端の前記高吸収性シート、並びに前記吸収体本体の前側両端部及び後側両端部の前記高吸収性シートは、それぞれ平面状態で互いに間隔を空けた状態で配置され、
吸収性物品が着用時の立体状態となったときには、前記高吸収性シートのうちの近接する高吸収性シート同士が重ならずに接近して、略連続帯状の吸収性シートとなることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体本体の長手方向前後端に配置された前記高吸収性シートは略矩形状であり、前記吸収体本体の前側両端部及び後側両端部に配置された前記高吸収性シートは吸収性物品の幅方向中央に向く略台形状であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記高吸収性シートのうち、近接する高吸収性シート同士の平面状態での間隔が、最も近い箇所で5mm以上50mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高吸収性シートは、二層のシートと、前記シートの間に封入された高吸収性ポリマーとを含み、
前記シートは、ポリウレタン連続多孔質体シート及び/又はスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体本体の長手方向前後端、並びに前記吸収体本体の前側両端部及び後側両端部に配置された前記高吸収性シートは、前記吸収体本体の長手方向外縁部及び幅方向外縁部において、略連続帯状の吸収性シートとなったときの単軸方向の長さが、10mm以上100mm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高吸収性シートを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。
【0003】
吸収性物品は厚みがあったり重かったりすると、着用感が悪くなる。そのため、薄型の吸収性物品が求められているが、薄型の吸収性物品を設計する場合、通常、吸収性物品の大部分を占める吸収体の薄型化が検討される。
【0004】
薄型の吸収体を用いた吸収性物品の態様は様々提案されている。例えば、特許文献1には、第1表面と第2表面とを有する基材層、第1表面と第2表面とを有する吸収性ポリマー材料層、第1表面と第2表面とを有する接着剤層を有し、吸収性ポリマー材料層は接着剤層と基材層との間に含まれ、吸収性ポリマー材料層の第2表面は、基材層の第1表面に接触し、吸収性ポリマー材料層の第1表面は接着剤層の第2表面に接触しているものであり、基材層は発泡体材料層を備える吸収性コアが開示されており、基材層上に安定して取り付けられた層中に吸収性ゲル材料を有する発泡体層を組み込むことによって、フィット性が良く快適であり、コア吸収能力の利用率を維持できる、吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、着用感を改善するために吸収性物品を上記の態様で薄型化、軽量化する場合、ある程度の吸収性能(繰り返し吸収時の吸収量、吸収速度や漏れ等)を犠牲にしなければならない。特に、吸収体面積の狭い失禁用製品や尿取りパッドにおいては十分な吸収性能が保たれないため、前後又は左右端から体液が漏れやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、端部からの漏れが少ない、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は鋭意検討を行い、吸収体本体と高吸収性シートを含む吸収体を備える吸収性物品において、高吸収性シートを吸収体本体の中央部、吸収体本体の長手方向前後端、並びに吸収体本体の前側両端部及び後側両端部にそれぞれ、かつ、平面状態で互いに間隔を空けた状態で配置し、更に、吸収性物品が着用時の立体状態となったときには、高吸収性シートのうちの近接する高吸収性シート同士が重ならずに接近して、略連続帯状の吸収性シートとなるようにすることで、端部からの漏れが少ない、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートと、上記トップシートと上記バックシートの間に配置された吸収体とを備える吸収性物品であって、上記吸収体は、吸収体本体と、上記吸収体本体の肌当接面側に配置された高吸収性シートを含み、上記高吸収性シートは、上記吸収体本体の中央部、上記吸収体本体の長手方向前後端、並びに上記吸収体本体の前側両端部及び後側両端部、にそれぞれ配置され、上記吸収体本体の長手方向前後端の上記高吸収性シート、並びに上記吸収体本体の前側両端部及び後側両端部の上記高吸収性シートは、それぞれ平面状態で互いに間隔を空けた状態で配置され、吸収性物品が着用時の立体状態となったときには、上記高吸収性シートのうちの近接する高吸収性シート同士が重ならずに接近して、略連続帯状の吸収性シートとなることを特徴とする、吸収性物品である。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、上記吸収体本体の長手方向前後端に配置された上記高吸収性シートは略矩形状であり、上記吸収体本体の前側両端部及び後側両端部に配置された上記高吸収性シートは吸収性物品の幅方向中央に向く略台形状であることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、上記高吸収性シートのうち、近接する高吸収性シート同士の平面状態での間隔が、最も近い箇所で5mm以上50mm以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記高吸収性シートは、二層のシートと、上記シートの間に封入された高吸収性ポリマーとを含み、上記シートは、ポリウレタン連続多孔質体シート及び/又はスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布であることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記吸収体本体の長手方向前後端、並びに上記吸収体本体の前側両端部及び後側両端部に配置された上記高吸収性シートは、上記吸収体本体の長手方向外縁部及び幅方向外縁部において、略連続帯状の吸収性シートとなったときの単軸方向の長さが、10mm以上100mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、端部からの漏れが少ない、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品をトップシート側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0017】
また、本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Xで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Yで示す方向である。さらに、肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1としては、失禁用製品、尿取りパッドが例示され、特に大型の尿取りパッドであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。
【0018】
<吸収性物品>
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品1をトップシート10側から見た平面図である。また、
図2、
図3及び
図4は、それぞれ
図1のY
1-Y
1線、Y
2-Y
2線及びX
1-X
1線における断面図である。
図1から
図4に示すように、吸収性物品1は、液透過性のトップシート10と液不透過性のバックシート20と、トップシート10とバックシート20の間に配置された吸収体30とを備え、吸収体30は、吸収体本体31と、吸収体本体31の肌当接面側に配置された高吸収性シート32を含む。これにより、吸収体30は、トップシート10とバックシート20との間に挟まれた構造となっている。
【0019】
吸収性物品1の、長手方向の寸法は200mm以上800mm以下、幅方向の寸法は80mm以上500mm以下であることが好ましい。吸収性物品1の寸法を上記の範囲に調整することにより、失禁用製品、尿取りパッド等に適した吸収性物品1を得ることができる。
【0020】
<トップシート>
トップシート10は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布など公知の親水性不織布等を使用できる。また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート10の坪量は、15g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上80g/m2以下であることがより好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体30へと誘導するために必要とされる、吸収体30を覆う形状であればよい。
【0021】
<バックシート>
バックシート20は、吸収体30が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、通気性又は非通気性の不透液性のプラスチックフィルムを使用できる。
【0022】
強度及び加工性の点から、バックシート20の坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましく、18g/m2以上30g/m2以下であることがより好ましい。バックシート20に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート20にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0023】
<立体ギャザー>
吸収性物品1は更に、
図1に示すように、着用者の排泄した体液の左右への漏れ(横漏れ)を防止するため、トップシート10の肌当接面側において、長手方向に沿って一対の立体ギャザー40を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における一対の立体ギャザー40の外端はバックシート20に固定され、その内端はトップシート10に固定され、その中央はトップシート10に固定されない自由端となるように、一対の立体ギャザー40のシートが配される。一対の立体ギャザー40を長手方向に沿って設けることで、一対の立体ギャザー40が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。なお、強度及び加工性の点から、一対の立体ギャザー40の坪量は、10g/m
2以上100g/m
2以下であることが好ましい。
【0024】
<吸収体>
本発明の吸収性物品1において、吸収体30の長手方向の寸法は、150mm以上700mm以下であることが好ましく、200mm以上650mm以下であることがより好ましい。また、吸収体30の幅方向の寸法は、50mm以上450mm以下であることが好ましく、70mm以上400mm以下であることがより好ましい。
【0025】
(高吸収性シート)
上述したように、吸収体30は、吸収体本体31と、吸収体本体31の肌当接面側に配置された高吸収性シート32を含むが、
図1に示すように、高吸収性シート32は、吸収体本体31の中央部に配置された中央部高吸収性シート320、吸収体本体31の長手方向前後端にそれぞれ配置された前端高吸収性シート321及び後端高吸収性シート322、並びに吸収体本体31の前側両端部及び後側両端部にそれぞれ配置された前側側端高吸収性シート323及び後側側端高吸収性シート324、というように7枚の高吸収性シートが配置されている。
また、吸収体本体31の長手方向前後端の前端高吸収性シート321及び後端高吸収性シート322、並びに吸収体本体31の前側両端部及び後側両端部の前側側端高吸収性シート323及び後側側端高吸収性シート324は、それぞれ平面状態で互いに間隔を空けた状態で配置されている。このように高吸収性シート32が吸収体本体31の肌当接面側に配置されるとともに、吸収性物品1の中央部、前後端及び左右端(前側両端部及び後側両端部)に離間して配置されることで、吸収性物品1の全面にわたって吸収体30が備えられることになり、防漏性(漏れ防止性)が改善される。また、吸収性物品1の中央部、前後端及び左右端の高吸収性シート32が接しない程度に離間して配置されることで、吸収体30の厚みや重さを分散させることができ、着用感も改善される。
【0026】
また、吸収性物品1が着用時の立体状態となったときには、高吸収性シート32のうちの近接する高吸収性シート32同士が重ならずに接近して、略連続帯状の吸収性シートとなる。すなわち、高吸収性シート32が吸収性物品1の中央部に向かってそれぞれ持ち上がる(吸収性物品1が着用者の臀部に沿って湾曲する)ことで、高吸収性シート32のうちの中央部高吸収性シート320以外の6枚の分かれたシートが接近して略連続帯状となる。
このような構造の高吸収性シート32を備えることで、吸収体30の中央部では一度に多量の排尿や、既に複数回の排尿を吸収した後の排尿であっても吸収することができ、尿の繰り返し吸収性や拡散性を向上させ、一方で吸収体30の外縁部では、排尿の繰り返し吸収で拡散してきた尿の染み出し、漏れを効果的に防止しながら、尿吸収の前後ともに柔らかい触感で、着用感に優れた吸収性物品1とすることができる。また、本発明の吸収性物品1に備えられる吸収体30が薄型であっても、繰り返し吸収速度や拡散性といった吸収性、端部からの漏れ防止に優れ、排尿の前後ともに着用感に優れた吸収性物品1とすることができる。
【0027】
なお、吸収体本体31の長手方向前後端に配置された前端高吸収性シート321及び後端高吸収性シート322はいずれも略矩形状であることが好ましく、吸収体本体31の前側両端部及び後側両端部に配置された前側側端高吸収性シート323及び後側側端高吸収性シート324は、いずれも吸収性物品1の幅方向中央に向く略台形状であることが好ましい。それぞれの高吸収性シート32を上記のような形状とすることで、吸収性物品1の前後端と左右端からの漏れをより効果的に防止することができる。
【0028】
また、高吸収性シート32がそれぞれ平面状態で互いに間隔を空けた状態で配置され、かつ、吸収性物品1が着用時の立体状態となったときには、高吸収性シート32のうちの近接する高吸収性シート32同士が重ならずに接近して、略連続帯状の吸収性シートとなるためには、高吸収性シート32のうち、近接する高吸収性シート32同士の平面状態での間隔が、最も近い箇所で5mm以上50mm以下であることが好ましい。
また、吸収体本体31の長手方向前後端に配置された前端高吸収性シート321及び後端高吸収性シート322、並びに吸収体本体31の前側両端部及び後側両端部に配置された前側側端高吸収性シート323及び後側側端高吸収性シート324は、吸収体本体31の長手方向外縁部及び幅方向外縁部において、略連続帯状の吸収性シートとなったときの単軸方向の長さが、10mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0029】
高吸収性シート32のそれぞれの寸法は、上記のそれぞれの高吸収性シート32の形状や、高吸収性シート32同士の平面状態での間隔及び略連続帯状の吸収性シートとなったときの単軸方向の長さを満たすことができる寸法であれば、特に限定されない。
【0030】
また、高吸収性シート32は、
図5の断面図に示すように、二層のシート33と、シート33の間に封入された高吸収性ポリマー34とを含むことが好ましく、シート33は、ポリウレタン連続多孔質体シート及び/又はスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布であることが好ましい。
【0031】
シート33に用いられるポリウレタン連続多孔質体シートとしては、ウレタンフォームの単層シート等が使用できるが、骨格表面が親水性であることが好ましい。また、ポリウレタン連続多孔質シートは坪量が30g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、かつ、見かけ密度が100kg/m3以上200kg/m3以下であることが好ましい。
【0032】
一方で、シート33が複合型不織布である場合、スパンボンド不織布の材質は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンから成る群から1つ、又は2つ以上の組み合わせを選択することが好ましい。また、スパンボンド不織布の坪量が7g/m2以上20g/m2以下、パルプ繊維ウェブの坪量が30g/m2以上70g/m2以下であり、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとの重量構成比が40/60wt%以上10/90wt%以下であることが好ましい。
【0033】
このとき、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとを一体化するために水流交絡処理する水流交絡工程で、ウォータージェットを噴射するウォータージェットノズルの穴直径Φが0.06mm以上0.15mm以下であり、かつ、ウォータージェットノズルの間隔が0.4mm以上1.0mm以下であることが好ましい。また、高吸収性ポリマー34と接する複合型不織布の面が、ウォータージェットが当たって水流交絡された面であることが好ましい。ウォータージェットノズルの穴直径及び間隔を上記の数値範囲内とし、水流交絡された面が高吸収性ポリマー34と接することにより、水流交絡面によって形成されたウォータージェットによる凹凸が高吸収性ポリマー34のズレ、移動を生じにくくすることができる。
なお、複合型不織布の引張試験における強度が、テンシロンでの試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な力が1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0034】
また、高吸収性シート32が含む高吸収性ポリマー34としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。なお、高吸収性ポリマー34の坪量は30g/m2以上300g/m2以下であることが好ましい。
【0035】
高吸収性シート32が、ポリウレタン連続多孔質体シート及び/又はスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布、並びに高吸収性ポリマー34を含むことで、吸収体30の更なる薄型化とともに、特に吸収性物品1が高吸収量で大型の尿取りパッドである場合において、吸収速度、逆戻りを高いレベルで共立しつつ、良好な拡散性、吸収性、着用感を達成することができる。
なお、中央部高吸収性シート320に含まれるシート33は、少なくとも一方が複合型不織布であることが好ましく、着用者の非肌当接面側のシート33が複合型不織布であることがより好ましく、シート33の双方が複合型不織布であることが更に好ましい。また、前端高吸収性シート321、後端高吸収性シート322、前側側端高吸収性シート323及び後側側端高吸収性シート324にそれぞれ含まれるシート33は、少なくとも一方がポリウレタン連続多孔質体シートであることが好ましく、着用者の非肌当接面側のシート33がポリウレタン連続多孔質体シートであることがよい好ましく、シート33の双方がポリウレタン連続多孔質体シートであることが更に好ましい。このよう高吸収性シート32の素材をそれぞれ選択することにより、繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、逆戻り量が少なく、尿の拡散に優れる吸収性物品1とすることができる。
【0036】
(吸収体本体)
吸収体本体31は、
図5に示す高吸収性シート32と同様に、二層のシートと、該シートの間に封入された高吸収性ポリマーとを含み、該シートは、ポリウレタン連続多孔質体シート及び/又はスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布であることが好ましい(図示しない)。吸収体本体31に用いられるポリウレタン連続多孔質体シート、複合型不織布及び高吸収性ポリマーは、上述した高吸収性シート32に用いられるものと同じものを用いることができる。
【0037】
また、高吸収性シート32のズレ防止や吸収体30の形状の安定化の目的から、吸収体30の上下(高吸収性シート32の肌当接面側及び/又は吸収体本体31の非肌当接面側)に、キャリアシートを設けてもよい(図示しない)。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュー、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0038】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0039】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0040】
表1に示す各条件において、実施例1~3及び比較例1のそれぞれの吸収性物品を作製し、以下の評価を行った。なお、側端部とは吸収性物品における吸収体本体の前側両端部及び後側両端部を指し、内側向き台形とは
図1に示すような略台形状の形状を、外側向き台形とは
図1に示す形状であって、かつ幅方向に反転した略台形状の形状を指す。
【0041】
(漏れ防止性)
吸収性物品の装着から交換までの漏れについて20名のモニターテストを実施し、下記の基準で吸収性物品の漏れ防止性を評価した。
○:「漏れがない」という評価を行った者が16人以上20人以下であった。
△:「漏れがない」という評価を行った者が11人以上15人以下であった。
×:「漏れがない」という評価を行った者がいないか、1人以上10人以下であった。
【0042】
(着用感)
吸収性物品の装着から交換までの着用感について20名のモニターテストを実施し、下記の基準で吸収性物品の着用感を評価した。
○:「着用感が良い」という評価を行った者が16人以上20人以下であった。
△:「着用感が良い」という評価を行った者が11人以上15人以下であった。
×:「着用感が良い」という評価を行った者がいないか、1人以上10人以下であった。
【0043】
表1に、各実施例及び比較例の条件及び評価結果を示す。
【0044】
【0045】
以上より、本実施例によれば端部からの漏れが少ない、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品が得られることが少なくとも確認された。