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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000032
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】劣化センサーシート
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/50 20060101AFI20221222BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20221222BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20221222BHJP
   B60S 1/38 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01J1/50
G09F3/02 U
G01J1/02 G
B60S1/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100603
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】500001208
【氏名又は名称】有限会社 サン技研
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】堀越 旭
【テーマコード(参考)】
2G065
3D225
【Fターム(参考)】
2G065AA15
2G065AB05
2G065BA26
2G065BA39
3D225AA01
3D225AC01
3D225AE10
(57)【要約】
【課題】 簡単な構成で確実に紫外線による劣化を視認することができ、かつ、低コストで製造が可能な劣化センサーシートを提供すること。
【解決手段】 紫外線の透過を抑制可能な透明基材シート2と、該透明基材シートの下面側に、表示パターンが形成された第1インキ層3と、前記透明基材シートの上面側に、前記第1インキ層の表示パターンの少なくとも一部を覆うように形成された、紫外線の照射により退色可能な第2インキ層4を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の透過を抑制可能な透明基材シートと、該透明基材シートの下面側に、表示パターンが形成された第1インキ層と、前記透明基材シートの上面側に、前記第1インキ層の表示パターンの少なくとも一部を覆うように形成された、紫外線の照射により退色可能な第2インキ層を備えたことを特徴とする劣化センサーシート。
【請求項2】
前記第1インキ層と前記第2インキ層が同系色であることを特徴とする請求項1に記載の劣化センサーシート。
【請求項3】
前記第1インキ層と前記第2インキ層が赤色系又は黄色系であることを特徴とする請求項1又は2に記載の劣化センサーシート。
【請求項4】
前記第1インキ層の下面側に、前記第1インキ層の色調とは異なる色調の第3インキ層が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の劣化センサーシート。
【請求項5】
前記第1インキ層の下面側に粘着層が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の劣化センサーシート。
【請求項6】
前記第2インキ層の上面側に保護層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の劣化センサーシート。
【請求項7】
前記第1インキ層の表示パターンが、ワイパーの劣化を意味する表示パターンであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の劣化センサーシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は劣化センサーシートに関し、詳しくは、紫外線照射に伴う劣化の進行を予告する劣化センサーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線照射に伴う劣化の進行を予告するセンサーが知られている。具体的には、台紙上に耐光インクと、該耐光インクに隣接して印刷した第一特定インクとから構成された第一インク層からなる期間表示部材が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
この提案によれば、上記構成とすることにより、第一特定インクが紫外線などを含む光によって、隣接して印刷された耐光インクより短期間で退色することにより、耐光インクのインク色が視認可能な期間表示部材とすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-154585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の提案においては、耐光インクと通常の第1特定インクを別途用いる必要があること、また、製造当初の印刷として、各々の異種のインクが重ならないように、かつ密接、隣接するように印刷する必要があるため、印刷自体に高度な精度が必要でありコストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の従来の状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で確実に紫外線による劣化の進行を視認することができ、かつ、低コストで製造が可能な劣化センサーシートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の劣化センサーシートは、以下のことを特徴としている。
第1に、本発明の劣化センサーシートは、紫外線の透過を抑制可能な透明基材シートと、該透明基材シートの下面側に、表示パターンが形成された第1インキ層と、前記透明基材シートの上面側に、前記第1インキ層の表示パターンの少なくとも一部を覆うように形成された、紫外線の照射により退色可能な第2インキ層を備えたことを特徴とする。
第2に、上記第1の発明の劣化センサーシートにおいて、前記第1インキ層と前記第2インキ層が同系色であることが好ましい。
第3に、上記第1又は第2の発明の劣化センサーシートにおいて、前記第1インキ層と前記第2インキ層が赤色系又は黄色系であることが好ましい。
第4に、上記第1から第3の発明の劣化センサーシートにおいて、前記第1インキ層の下面側に、前記第1インキ層の色調とは異なる色調の第3インキ層が形成されていることが好ましい。
第5に、上記第1から第4の発明の劣化センサーシートにおいて、前記第1インキ層の下面側に粘着層が形成されていることが好ましい。
第6に、上記第1から第5の発明の劣化センサーシートにおいて、前記第2インキ層の上面側に保護層が形成されていることが好ましい。
第7に、上記第1から第6の発明の劣化センサーシートにおいて、前記第1インキ層の表示パターンが、ワイパーの劣化を意味する表示パターンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の劣化センサーシートによれば、簡単な構成で確実に紫外線による劣化の進行を視認することができ、かつ、低コストで製造が可能な劣化センサーシートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の劣化センサーシートの基本的な構成を示す概略断面図である。
図2】透明シートを設けた実施形態の概略断面図であり、(A)は、透明基材シートの上面側に透明シートを設けた実施形態を示し、(B)は、透明基材シートの下面側に透明シートを設けた実施形態を示している。
図3】第1インキ層の下面側に着色層を設けた実施形態を示す概略断面図である。
図4】着色層、粘着層及び保護層を設けた実施形態を示す概略断面図である。
図5】実施例に用いた劣化センサーシートの構成を示す概略図である。
図6】実施例の結果を示した概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の劣化センサーシートの実施形態を図を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の劣化センサーシートの最も基本的な構成を示す概略断面図である。
【0011】
本発明の劣化センサーシート1は、透明基材シート2と、該透明基材シート2の下面側に、表示パターンが形成された第1インキ層3と、透明基材シート2の上面側に、第1インキ層3の表示パターンの少なくとも一部を覆うように形成された第2インキ層4を備えている。
【0012】
本実施形態の劣化センサーシート1の透明基材シート2は、紫外線の透過を抑制可能な透明シート状部材であれば特に制限なく用いることができ、例えば、樹脂製透明フイルムシート、樹脂製透明板、ガラス板等を挙げることができる。これらの中でも樹脂製透明フイルムシートを好適に用いることができ、PET等のポリエステル製や塩化ビニル製、ポリプロピレン製、ABS製、セルロース製等の樹脂製透明フイルムシートを例示することができる。具体的な樹脂製透明フイルムシートとしては、サンカット PLシン 7LK(リンテック社製 塩化ビニルフイルム)が市販品として入手可能である。
【0013】
本実施形態では、透明基材シート2の下面側に表示パターンとして第1インキ層3を形成している。ここで、本発明における表示パターンとは、紫外線の特定期間の照射に伴う警告等を表す文字、図形、ピクトグラム等の記号、色、また、これらの組合わせを意味する。
【0014】
第1インキ層3の表示パターンの形成は、通常、透明基材シート2の下面側に印刷により形成する。印刷方法としては、シルクスクリーン印刷、平版オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷等、通常公知の印刷方法により行うことができる。これらの中でも、容易性やコスト等の観点からシルクスクリーン印刷を好適に用いることができる。
【0015】
また、本実施形態では、透明基材シート2の上面側に、第1インキ層3の表示パターンの少なくとも一部を覆う第2インキ層4が形成されている。第2インキ層4は、通常、ベタで印刷され、第1インキ層3を視認できないように形成される。第2インキ層4の印刷方法についても、第1インキ層3の印刷方法と同様に、シルクスクリーン印刷、平版オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷等、通常公知の印刷方法により行うことができる。これらの中でもシルクスクリーン印刷を好適に用いることができる。
【0016】
図1に示す実施形態成では、第1インキ層3の表示パターンが透明基材シート2を挟んで第2インキ層4により遮蔽された構成となっている。そしてこの構成によれば、第2インキ層4の表面への紫外線の照射により第2インキ層4が退色することにより、透明基材シート2の下面側の第1インキ層3が浮き上がり、紫外線による劣化の進行を警告することが可能となる。このように、透明基材シート2の紫外線遮蔽効果により、第1インキ層3と第2インキ層4の退色に差が生じて第1インキ層3の表示パターンが表出する。
【0017】
本発明においては、第1インキ層3と第2インキ層4各々のインキの関係が重要である。通常のインキのブラック(黒色系)、シアン(青色系)は紫外線により退色しづらく、マゼンタ(赤色系)、イエロー(黄色系)は紫外線により退色しやすい傾向がある。従って、第2インキ層4は紫外線により退色し易いマゼンタ系(赤色系)、イエロー系(黄色系)のインキで形成されることが望ましい。一方、イエロー系は濃い色に対する遮蔽性が比較的低いため、第2インキ層4にイエロー系のインキを使用する場合には第1インキ層3の色調を考慮する必要がある。これに対して、マゼンタ系のインキは紫外線による退色性と他の色調に対する遮蔽性を有する。そのため、上記色調の違いによる特性を考慮した場合、第2インキ層4はマゼンタ系のインキを用いるのが好ましい。
【0018】
また、第1インキ層3の色調は、第2インキ層4による遮蔽を考慮した場合、第2インキ層4のインキの色調と同系色の色調であることが好ましい。即ち、第2インキ層4の紫外線による退色性、遮蔽性等を考慮した場合、第1インキ層3及び第2インキ層4は共にマゼンタ系インキで形成するのが好ましい。さらに、印刷の容易性やコスト等を考慮した場合、第1インキ層3と第2インキ層4とは同じインキで形成することが好ましい。
【0019】
また、本発明においては、上記の基本的な構成に対して他の層を設けることができる。例えば、通常市販されている紫外線の透過を抑制する機能を有する透明基材シート2には、片面に粘着面21が形成されている場合がある。このような透明基材シート2を用いる場合には、その粘着面21側に直接第1インキ層3或いは第2インキ層4を形成するのが困難となる。このような場合には、図2(A)に示すように、透明基材シート2の粘着面21を上側にして、上面の粘着面21に他の透明シート5を貼り付け、その上面に第2インキ層4を形成したり、図2(B)に示すように、透明基材シート2の粘着面21を下側にして、下面の粘着面21に他の透明シート5を貼り付け、その表面に第1インキ層3を形成することができる。なお、この場合には、粘着面21に貼着する他の透明シート5は、紫外線の透過を抑制できるシートであっても通常の透明シートであっても構わない。
【0020】
また、本発明では、第2インキ層4が退色し、第1インキ層3の表示パターンが表出したときに、表示パターンがより鮮明に視認できるように、図3に示すように、透明基材シート2及び第1インキ層3の下面側にベース色となる着色層6を設けることができる。着色層6の形成は、透明基材シート2及び第1インキ層3の裏面からベタで印刷して形成してもよいが、予め着色された着色シートやアルミニウム等の金属シートを貼着することにより形成することもできる。
【0021】
なお、着色層6の色相と第1インキ層3の色相が同系色であると、表示パターンの視認性が低下する可能性があるため、着色層6の色相は第1インキ層3の色相を考慮して決定する必要がある。具体的には、着色層6の色相を第1インキ層3の色相の補色としたり、銀色や白とするのが好ましい。即ち、第1インキ層3をマゼンタ系の色調とした場合には、着色層6の色相をグリーン系や銀色、白に、また、第1インキ層3をイエロー系の色調とした場合には、着色層6の色相をシアン系や銀色にするのが好ましい。なお、着色層6として金属シートを用いる場合には地の金属色をベース色とすることもできる。
【0022】
また、本発明の劣化センサーシート1においては、第1インキ層3や着色層6等の下側の最下面に粘着層7を設けることができる。粘着層7は粘着剤を塗布して形成してもよいし、両面テープを貼着して形成してもよい。最下面に粘着層7を形成することにより、本発明の劣化センサーシート1を警告対象物に対して容易に添付することが可能となる。
【0023】
さらに、劣化センサーシート1の最上面には、図4に示すように保護層8を設けることができる。保護層8は風雨や砂埃等から第2インキ層4を保護するために設けるものであり、透明シート5の貼着や、極薄の透明フィルムのラミネート、また、透明樹脂を塗布して乾燥や硬化させることにより形成することもできる。
【0024】
なお、本発明の劣化センサーシート1においては、第2インキ層4の紫外線による退色速度は対象物の劣化速度に符合させる必要がある。そのため、第2インキ層4を形成するインキは、紫外線による退色速度について適切な特性のものを選択的に用いることが好ましい。また、第2インキ層4の退色速度を調整するために、保護層8を紫外線の透過を抑制可能なインキで形成したり、保護層8として、紫外線の透過を抑制可能な機能を有するフイルムでラミネートすることができる。さらに、第2インキ層4の退色速度を調整するために、第2インキ層4を形成するインキに、メジウム等の色濃度を下げる透明溶剤を添加したり、他の紫外線による退色をコントロール可能な材料を適宜添加することもできる。
【0025】
上記構成を有する本発明の劣化センサーシート1は、紫外線の照射により劣化が進行し、交換が必要になるものに対して特に制限なく貼着して用いることができる。これらのものとしては、例えば、自動車等のワイパーブレードや、屋外で使用するプラスチック製品等を例示することができ、これらの中でも、特にワイパーブレードに対して好適に用いることができる。
【0026】
以上、本発明の劣化センサーシートを実施形態に基づいて説明したが、本発明の劣化センサーシートは上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。
【0027】
例えば、上記実施形態では、透明基材シート2を紫外線の透過を抑制する機能を有する透明のシートとしたが、第2インキ層4が退色した後第1インキ層3が表出したときに、第1インキ層3の表示パターンが視認されれば完全な無色透明でなくてもよく、多少の着色があっても構わない。また、透明基材シート2の粘着面21に貼着する透明シート5や、最外層の保護層8についても同様である。
【0028】
また、上記図1に示す基本的な実施形態では、第1インキ層3を透明基材シート2の下面側に直接印刷して形成したが、図3に示すように、第1インキ層3の下面側に着色層6のシート状物を貼着する構成とする場合には、上記着色層6の上面側に印刷により第1インキ層3を形成してもよい。
【実施例0029】
以下、本発明の劣化センサーシートについて実施例を挙げてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
図5に示す構成の本発明の劣化センサーシート1を以下の各材料により作成した。なお、第1インキ層3、第2インキ層4、着色層6はシルク印刷により形成した。また、第1インキ層3の表示パターンは「ワイパー交換時期です」の文字とした。
【0031】
透明基材層(2):サンカットラミ(上粘着面(21))(リンテック(株)社製)
第1インキ層(3):赤インキ
第2インキ層(4):赤インキ
透明シート(5):ルミラー(東レ社製 t60)
着色層(6):銀
粘着層(7):両面テープ(DIC株式会社製 8840ER)
【0032】
上記条件で作成した劣化センサーシート1を6か月間トラックの助手席側の日が当たるダッシュボードに貼着して2か月毎にその変化を観察した。
その結果を図6に示す。
【0033】
図6の観察結果によれば、貼着後2か月頃から徐々に第2インキ層が退色し、第1インキ層が見え始め、貼着後約6か月後には第2インキ層がほぼ退色して、第1インキ層がはっきりと表出した。これは、第2インキ層が退色するとともに、紫外線の透過を抑制する透明基材層により第1インキ層の退色が抑制され、表示パターンが表出したものである。
【0034】
上記の結果から、本発明の劣化センサーシートは、簡単な構成で確実に紫外線による劣化を視認することができ、かつ、低コストでの製造を可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0035】
1 劣化センサーシート
2 透明基材シート
21 粘着面
3 第1インキ層(表示パターン)
4 第2インキ層
5 透明シート
6 着色層
7 粘着層
8 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6