(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032029
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】絶縁劣化診断装置及び絶縁劣化診断方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20230302BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20230302BHJP
H02P 29/032 20160101ALI20230302BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/34 D
H02P29/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137882
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和弘
【テーマコード(参考)】
2G015
2G116
5H501
【Fターム(参考)】
2G015AA12
2G015AA19
2G015BA04
2G015BA10
2G015CA01
2G015CA20
2G116BA01
2G116BA03
2G116BD06
2G116BD07
2G116BD09
2G116BD11
2G116BD13
5H501AA22
5H501AA30
5H501LL53
5H501LL60
(57)【要約】
【課題】回転機における絶縁劣化の状態を、自動的かつより簡便に診断すること。
【解決手段】本発明の絶縁劣化診断装置は、オゾン濃度測定器と、オゾン濃度に基づき、回転機の絶縁劣化を診断する診断部と、を備える。オゾン濃度測定器は、回転機から吸引されたガスを、オゾンセンサへと導くとともに、オゾンセンサを経たガスを回転機へと戻す第1ガス流路と、回転機から吸引されたガスを、オゾンセンサを介さずに回転機へと戻す第2ガス流路と、ガスを、第1ガス流路と第2ガス流路のどちらの流路に導くかの切り替えを行う切替機構と、を有している。オゾンセンサは、間欠的にガスのオゾン濃度を測定し、オゾンセンサによる測定が行われない間は、切替機構により、ガスが第2ガス流路へと導かれ、オゾンセンサがオゾン濃度の測定を行うタイミングに合わせて、切替機構により、ガスが第1ガス流路へと導かれる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機の絶縁劣化をオゾン濃度に基づき診断する絶縁劣化診断装置であって、
前記オゾン濃度を測定するオゾン濃度測定器と、
前記オゾン濃度測定器により測定された前記オゾン濃度に基づき、前記回転機の絶縁劣化を診断する診断部と、
を備え、
前記オゾン濃度測定器は、
前記回転機から吸引されたガスを、前記オゾン濃度を測定するオゾンセンサへと導くとともに、前記オゾンセンサを経た前記ガスを、前記回転機へと戻す第1ガス流路と、
前記回転機から吸引されたガスを、前記オゾンセンサを介さずに前記回転機へと戻す第2ガス流路と、
前記ガスを、前記第1ガス流路と前記第2ガス流路のどちらの流路に導くかの切り替えを行う切替機構と、
を有しており、
前記オゾンセンサは、間欠的に前記ガスの前記オゾン濃度を測定し、
前記オゾンセンサによる測定が行われない間は、前記切替機構により、前記ガスが前記第2ガス流路へと導かれ、前記オゾンセンサが前記オゾン濃度の測定を行うタイミングに合わせて、前記切替機構により、前記ガスが前記第1ガス流路へと導かれる、絶縁劣化診断装置。
【請求項2】
前記第1ガス流路又は前記第2ガス流路に供給される前記ガスの流量は、0.1L/min以上である、請求項1に記載の絶縁劣化診断装置。
【請求項3】
前記オゾンセンサは、少なくとも1分以上の間隔をあけて、前記ガスの前記オゾン濃度を測定する、請求項1又は2に記載の絶縁劣化診断装置。
【請求項4】
前記回転機は、3.0kV以上の電圧が印加される回転機である、請求項1~3の何れか1項に記載の絶縁劣化診断装置。
【請求項5】
前記オゾンセンサは、定電位電解式のオゾンセンサである、請求項1~4の何れか1項に記載の絶縁劣化診断装置。
【請求項6】
前記診断部は、前記回転機の設置環境に応じて予め設定された濃度閾値に基づき、前記絶縁劣化の度合いを診断する、請求項1~5の何れか1項に記載の絶縁劣化診断装置。
【請求項7】
回転機の絶縁劣化をオゾン濃度に基づき診断する絶縁劣化診断方法であって、
前記回転機から吸引されたガスを、前記オゾン濃度を測定するオゾンセンサへと導くとともに、前記オゾンセンサを経た前記ガスを、前記回転機へと戻す第1ガス流路と、前記回転機から吸引されたガスを、前記オゾンセンサを介さずに前記回転機へと戻す第2ガス流路と、前記ガスを、前記第1ガス流路と、前記第2ガス流路のどちらの流路に導くかの切り替えを行う切替機構と、を有しており、前記オゾンセンサは、間欠的に前記ガスの前記オゾン濃度を測定し、前記オゾンセンサによる測定が行われない間は、前記切替機構により、前記ガスが前記第2ガス流路へと導かれ、前記オゾンセンサが前記オゾン濃度の測定を行うタイミングに合わせて、前記切替機構により、前記ガスが前記第1ガス流路へと導かれるオゾン濃度測定器を用いて、前記ガスの前記オゾン濃度を測定するオゾン濃度測定ステップと、
前記オゾン濃度測定器により測定された前記オゾン濃度に基づき、前記回転機の絶縁劣化を診断する診断ステップと、
を有する、絶縁劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁劣化診断装置及び絶縁劣化診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や工場等に設置されている発電機や電動機等の回転機は、複数のコイルが設けられた円筒状の固定子と、固定子に存在する中空部内を回転する柱状の回転子と、で構成されている。固定子に設けられているコイルは、絶縁被膜が施された導線を複数本束ねた素線コイルと、素線コイルの周囲をマイカテープ等の絶縁体等で固着することで設けた主絶縁層等を有しており、固定子鉄心のスロットに収容されて結線されている。かかるコイルは、回転機の運転中に電気的、熱的、機械的なストレスを受けるため、コイルの絶縁層は、経年劣化を引き起こしやすい。かかる絶縁層の経年劣化は、やがて回転機の故障(絶縁破壊)に至ることがあるため、かかる故障の発生を回避すべく、従来、絶縁層の経年劣化を診断するための技術が各種提案されている。
【0003】
ここで、コイルの絶縁層が経年劣化して部分放電(コロナ放電)が発生すると、オゾンが生成されることが知られている。そこで、部分放電(コロナ放電)により発生したオゾンの濃度を測定することで、回転機における絶縁層の劣化の度合いを診断する技術が各種提案されている。例えば、以下の特許文献1では、回転機で発生するオゾンの濃度及び窒素酸化物の濃度を測定することで、回転機における絶縁層の劣化度合いを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1で開示されている技術は、検査員が回転機まで出向き、オゾン検知管を用いて回転機中のガスを吸引する必要があり、絶縁層の劣化度合いを頻繁に判定することは困難であった。
【0006】
また、オゾンは、温度及び湿度による濃度変動が存在するため、上記特許文献1で開示されているような、検査員によるガスの採取を伴うバッチ処理では、採取を行う季節や時刻によるバラつきが大きく、回転機の異常を見逃してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、回転機における絶縁劣化の状態を、自動的かつより簡便に診断することが可能な、絶縁劣化診断装置及び絶縁劣化診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためには、第1に、回転機内のオゾン濃度を、検査員を介さずに所望のタイミングで測定可能な手段を実現することが必要となる。かかる着想に基づき、本発明者らが検討した結果、上記特許文献1で用いられているようなオゾン検知管ではなく、連続測定が可能なオゾンセンサを用いることに想到した。
【0009】
そこで、本発明者らは、連続測定が可能なオゾンセンサについて、まず検証を行ったところ、オゾンセンサに対しオゾンを常時曝露させて、オゾン濃度の連続測定を実施すると、本来、一定濃度のオゾンに曝露しているにも関わらず、オゾン濃度の測定値が徐々に小さくなる現象が発生してしまうことが明らかとなった。
【0010】
また、現時点で存在しているオゾンセンサは、測定媒体であるオゾンガスを回転機の系外へと取り出すことで測定を実施しなければならず、オゾン濃度の連続測定を実施することで、回転機内のオゾン濃度が低下して、オゾン濃度の測定精度が低下してしまうことが判明した。
【0011】
以上のように、連続測定が可能なオゾンセンサを用いるだけでは、回転機中のオゾン濃度を精度よく測定することができない旨が新たに明らかとなったことから、本発明者は、かかる問題点を解決するために、更なる検討を行った。その結果、回転機とオゾンセンサとの間のガスの流れ、及び、オゾンセンサの測定条件について新たな知見を得ることができ、本発明を完成するに至った。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
【0012】
(1)回転機の絶縁劣化をオゾン濃度に基づき診断する絶縁劣化診断装置であって、前記オゾン濃度を測定するオゾン濃度測定器と、前記オゾン濃度測定器により測定された前記オゾン濃度に基づき、前記回転機の絶縁劣化を診断する診断部と、を備え、前記オゾン濃度測定器は、前記回転機から吸引されたガスを、前記オゾン濃度を測定するオゾンセンサへと導くとともに、前記オゾンセンサを経た前記ガスを、前記回転機へと戻す第1ガス流路と、前記回転機から吸引されたガスを、前記オゾンセンサを介さずに前記回転機へと戻す第2ガス流路と、前記ガスを、前記第1ガス流路と前記第2ガス流路のどちらの流路に導くかの切り替えを行う切替機構と、を有しており、前記オゾンセンサは、間欠的に前記ガスの前記オゾン濃度を測定し、前記オゾンセンサによる測定が行われない間は、前記切替機構により、前記ガスが前記第2ガス流路へと導かれ、前記オゾンセンサが前記オゾン濃度の測定を行うタイミングに合わせて、前記切替機構により、前記ガスが前記第1ガス流路へと導かれる、絶縁劣化診断装置。
(2)前記第1ガス流路又は前記第2ガス流路に供給される前記ガスの流量は、0.1L/min以上である、(1)に記載の絶縁劣化診断装置。
(3)前記オゾンセンサは、少なくとも1分以上の間隔をあけて、前記ガスの前記オゾン濃度を測定する、(1)又は(2)に記載の絶縁劣化診断装置。
(4)前記回転機は、3.0kV以上の電圧が印加される回転機である、(1)~(3)の何れか1つに記載の絶縁劣化診断装置。
(5)前記オゾンセンサは、定電位電解式のオゾンセンサである、(1)~(4)の何れか1つに記載の絶縁劣化診断装置。
(6)前記診断部は、前記回転機の設置環境に応じて予め設定された濃度閾値に基づき、前記絶縁劣化の度合いを診断する、(1)~(5)の何れか1つに記載の絶縁劣化診断装置。
(7)回転機の絶縁劣化をオゾン濃度に基づき診断する絶縁劣化診断方法であって、前記回転機から吸引されたガスを、前記オゾン濃度を測定するオゾンセンサへと導くとともに、前記オゾンセンサを経た前記ガスを、前記回転機へと戻す第1ガス流路と、前記回転機から吸引されたガスを、前記オゾンセンサを介さずに前記回転機へと戻す第2ガス流路と、前記ガスを、前記第1ガス流路と、前記第2ガス流路のどちらの流路に導くかの切り替えを行う切替機構と、を有しており、前記オゾンセンサは、間欠的に前記ガスの前記オゾン濃度を測定し、前記オゾンセンサによる測定が行われない間は、前記切替機構により、前記ガスが前記第2ガス流路へと導かれ、前記オゾンセンサが前記オゾン濃度の測定を行うタイミングに合わせて、前記切替機構により、前記ガスが前記第1ガス流路へと導かれるオゾン濃度測定器を用いて、前記ガスの前記オゾン濃度を測定するオゾン濃度測定ステップと、前記オゾン濃度測定器により測定された前記オゾン濃度に基づき、前記回転機の絶縁劣化を診断する診断ステップと、を有する、絶縁劣化診断方法。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、回転機における絶縁劣化の状態を、自動的かつより簡便に診断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本発明で着目する回転機の構造の一例を模式的に示した説明図である。
【
図1B】本発明で着目する回転機の構造の一例を模式的に示した説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る絶縁劣化診断装置の構成の一例を模式的に示した説明図である。
【
図3】同実施形態に係る絶縁劣化診断装置が有するオゾン濃度測定器の構成の一例を模式的に示した説明図である。
【
図4】同実施形態に係るオゾン濃度測定器について説明するための説明図である。
【
図5】同実施形態に係る絶縁劣化診断装置が有する演算処理装置の構成の一例を示したブロック図である。
【
図6】同実施形態に係る演算処理装置が有する演算処理部の構成の一例を示したブロック図である。
【
図7】同実施形態に係る演算処理装置における診断処理について説明するための説明図である。
【
図8】同実施形態に係る演算処理装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【
図9】実施例におけるオゾン濃度の測定結果を示したグラフ図である。
【
図10】従来の定電位電解式測定装置を用いて、一定のオゾン濃度を連続測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
(回転機について)
図1Aは、発電所や工場に設置されている発電機や電動機等の回転機1の断面構造を模式的に示したものである。回転機1は、円柱状の中空部を有する固定子2と、固定子3の中空部3を回転可能なように配置されている回転子3と、を有している。固定子2の固定子鉄心4内には、回転子3を囲うように、複数の固定子スロット5が設けられている。
【0017】
図1Bは、1つの固定子スロット5の構成を拡大して示した模式図である。固定子スロット5は、
図1Bに示すように、ウェッジ6で閉塞された固定子鉄心4の空間に固定子巻線7が設けられており、固定子巻線7の周囲は、マイカ等の絶縁物を樹脂で固着させた主絶縁層8で覆われている。また、かかる主絶縁層8の周囲に、部分放電(コロナ放電)を防止するためのコロナ防止層9が設けられている。
【0018】
固定子スロット5では、部分放電(コロナ放電)の発生を防止するために、主絶縁層8内のエアギャップを極力少なくしているが、主絶縁層8及びコロナ防止層9の経年劣化等により空隙(ボイド)が形成され、有害な部分放電が生じることで、絶縁破壊に進展する可能性がある。
【0019】
ここで、上記のような部分放電が発生すると、オゾンが生成されることが知られている。そのため、回転機内のオゾン濃度に着目することで、部分放電の発生度合い、ひいては、主絶縁層8及びコロナ防止層9の劣化度合いを診断することが可能となる。
【0020】
(絶縁劣化診断装置の全体構成について)
図2は、本発明の実施形態に係る絶縁劣化診断装置の全体構成を模式的に示した説明図である。本実施形態に係る絶縁劣化診断装置10は、上記のような回転機1における絶縁層の劣化度合いを診断する装置である。この絶縁劣化診断装置10は、
図2に示したように、オゾン濃度測定器100と、演算処理装置200と、を有している。
【0021】
オゾン濃度測定器100は、演算処理装置200による制御のもとで、回転機1からガスを吸引して、吸引したガス中に含まれるオゾンの濃度を測定するとともに、回転機1から吸引したガスを、回転機1へと戻すようにする。これにより、オゾン濃度の測定に伴って回転機1内のオゾン濃度が低下することを防止でき、回転機1内のオゾン濃度を精度よく測定することが可能となる。
かかるオゾン濃度測定器100の詳細な構成については、以下で改めて説明する。
【0022】
演算処理装置200は、オゾン濃度測定器100によるオゾン濃度の測定動作を統括的に制御する。また、演算処理装置200は、オゾン濃度測定器100によるオゾン濃度の測定結果を用いて、着目している回転機1における絶縁層の劣化度合いを診断する。また、演算処理装置200は、回転機1が設置されている環境の温度や湿度を測定する温度計や湿度計からのデータ(すなわち、温度及び湿度の測定結果)を取得して、絶縁層の劣化度合いの診断に利用することも可能である。また、オゾン濃度測定器100や、温度計、湿度計からのデータの取得は、機器間の無線通信により実現されてもよいし、機器間の有線通信により実現されてもよい。
【0023】
かかる演算処理装置200は、各種のパーソナルコンピュータやサーバ等の情報処理装置であってもよいし、着目する回転機1の動作状態を制御しているプロセスコンピュータ等であってもよい。
【0024】
かかる演算処理装置200の詳細な構成についても、以下で改めて説明する。
【0025】
なお、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置10が着目する回転機1については、特に限定されるものではなく、各種の回転機1について絶縁層の劣化度合いを診断可能である。ただし、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置10は、例えば、3.0kV以上の電圧が印加される回転機等のような、いわゆる高圧回転機や特高回転機等の絶縁層の劣化度合いを診断する際に、特に効果を発揮する。このような回転機は、高い電圧が印加される一方で、機器の小型化が図られることが多く、絶縁層の劣化の際にオゾンが発生しやすいものである。
【0026】
(オゾン濃度測定器について)
続いて、
図3及び
図4を参照しながら、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置10が有するオゾン濃度測定器100の構成について、詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置が有するオゾン濃度測定器の構成の一例を模式的に示した説明図であり、
図4は、本実施形態に係るオゾン濃度測定器について説明するための説明図である。
【0027】
本実施形態に係るオゾン濃度測定器100は、
図3に模式的に示したように、回転機内からポンプ等(図示せず。)により吸引したガスの流路となるガス吸引流路101を介して、回転機から吸引されたガスを、オゾン濃度を測定するオゾンセンサ103へと導くとともに、オゾンセンサ103を経たガスを回転機へと戻す第1ガス流路105と、回転機から吸引されたガスを、オゾンセンサ103を介さずに回転機へと戻す第2ガス流路107と、回転機から吸引されたガスを、第1ガス流路105と第2ガス流路107のどちらの流路に導くかの切り替えを行う切替機構109と、を有している。
【0028】
ここで、ガス吸引流路101については、特に限定されるものではなく、回転機からオゾン濃度測定器100へのガスの供給が可能なものであれば、各種の流路を用いることが可能である。また、このガス吸引流路101には、回転機からガスを吸引するためのポンプ等(図示せず。)や、ガス中に存在するゴミ等を除去するための各種のフィルタ機構など、各種の機構が設けられていてもよい。
【0029】
オゾンセンサ103は、当該オゾンセンサへと供給されるガス中に含まれるオゾンの濃度を測定するセンサである。かかるオゾンセンサ103としては、供給されるガスのオゾン濃度を連続的に測定可能なものが用いられる。このようなオゾンセンサ103としては、連続的な測定が可能なものであれば、特に限定されるものではない。ただし、定電位電解式のオゾンセンサを用いることで、連続的な測定を実現しつつ、微量のオゾンであっても精度の高い測定が可能となる。そのため、オゾンセンサ103として、定電位電解式のオゾンセンサを用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係るオゾンセンサ103は、演算処理装置200による制御のもとで、オゾンセンサ103へと供給されたガス中に含まれるオゾンの濃度を測定する。ここで、
図4に模式的に示したように、本実施形態に係るオゾン濃度測定器100では、連続測定が可能なオゾンセンサを用いているにも関わらず、演算処理装置200から出力される制御信号に基づき、間欠的にオゾン濃度の測定を実施する。後段の切替機構109と連携しながら間欠的な測定を実施することで、オゾンセンサ103への連続的なオゾンの曝露を防止することができ、オゾン濃度の測定値が徐々に小さくなる現象の発生を防止することができる。その結果、本実施形態に係るオゾン濃度測定器100では、精度の高いオゾン濃度の測定が可能となる。
【0031】
ここで、オゾンセンサ103は、少なくとも1分以上の間隔をあけて、供給されるガスのオゾン濃度を測定することが好ましい。換言すれば、
図4に模式的に示した測定間隔Δtは、1分以上であることが好ましい。このような間隔で間欠的に測定を行うことで、より精度の高いオゾン濃度の測定を、より確実に実現することが可能となるとともに、オゾンセンサ103の機器としての寿命を保持することが可能となる。なお、測定間隔Δtの具体的な大きさについては、1分以上であれば特に制限されるものではなく、用いるオゾンセンサ103の特性や、着目する回転機の設置環境や使用年数等に応じて、適宜設定すればよい。また、測定間隔Δtが大きくなるほど、オゾンセンサ103にとっては、オゾンへの曝露が抑制されて寿命の保持のためには好ましい方向に作用するため、その上限は特に規定するものではない。
【0032】
また、オゾンセンサ103における1回の測定での測定時間(
図4における、Tで示した時間)については、特に規定されるものではなく、オゾンセンサ103に供給された流量のガスがオゾンセンサ103を通過するまでの時間を確保できればよい。
【0033】
オゾンセンサ103により測定されたオゾン濃度の測定結果は、演算処理装置200へと出力される。この際、オゾンセンサ103と演算処理装置200との間のデータ通信は、有線通信により実現されてもよいし、無線通信により実現されてもよい。
【0034】
オゾン濃度測定器100における第1ガス流路105は、ガス吸引流路101を介して回転機から吸引されたガスをオゾンセンサ103へと導くとともに、オゾンセンサ103を経たガスを回転機へと戻す流路である。また、オゾン濃度測定器100における第2ガス流路107は、ガス吸引流路101を介して回転機から吸引されたガスを、オゾンセンサ103を介さずに回転機へと戻す流路である。この2つの流路のどちらにガスが導かれるかは、切替機構109によって制御されている。
【0035】
ここで、
図3に模式的に示したように、第1ガス流路105及び第2ガス流路107の下流側の端部は、ガスが吸引された回転機へと接続されている。これにより、回転機から引き抜かれたガスは、最終的に再び回転機へと戻るようになるため、オゾン濃度の測定のたびに回転機内のオゾン濃度が低下することを防止でき、回転機内の正しいオゾン濃度を測定することが可能となる。
【0036】
また、第1ガス流路105及び第2ガス流路107に供給されるガスの流量は、0.1L/min以上であることが好ましい。このような流量とすることで、回転機内のオゾン濃度をより精度よく測定することが可能となる。また、第1ガス流路105及び第2ガス流路107を流れるガスの流量を同じ値とすることで、絶縁層の劣化に伴うオゾンの増加以外の理由でのオゾン濃度の変動を抑制することが可能となり、オゾン濃度の測定精度をより向上させることが可能となる。第1ガス流路105及び第2ガス流路107を流れるガスの流量は、より好ましくは0.5L/min以上である。一方、第1ガス流路105及び第2ガス流路107を流れるガスの流量の上限値は、特に規定されるものではなく、オゾンセンサ103の特性等に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
第1ガス流路105及び第2ガス流路107の具体的な素材や、より詳細な流路の配置状態については、特に限定されるものではなく、オゾン濃度測定器100の設置環境等に応じて適宜設定すればよい。また、かかる第1ガス流路105及び第2ガス流路107には、未図示の各種フィルタ、各種バルブ機構、流量計、圧力計、逆流防止機構等の各種の機構が設けられていてもよい。
【0038】
切替機構109は、演算処理装置200による制御のもとで、ガス吸引流路101を介して回転機から吸引されたガスを、第1ガス流路105と第2ガス流路107のどちらの流路に導くかの切り替えを行う。これにより、オゾンを含みうるガスを、オゾンセンサ103へと供給するか否かを切り替えることができ、オゾンセンサ103における間欠的な測定を実現することができる。
【0039】
より詳細には、オゾン濃度測定器100において、オゾンセンサ103による測定が行われない間は、切替機構109により、ガス吸引流路101から供給されるガスは、第2ガス流路107へと導かれる。これにより、回転機から吸引されたガスは、オゾンセンサ103を通過することなく、回転機へと戻される。また、オゾンセンサ103がオゾン濃度の測定を行うタイミングに合わせて、切替機構109により、ガス吸引流路101から供給されるガスは、第1ガス流路105へと導かれる。これにより、回転機から吸引されたガスは、オゾンセンサ103を通過した後、回転機へと戻される。かかる過程で、回転機から吸引されたガスのオゾン濃度が、オゾンセンサ103によって測定される。
【0040】
このような切替処理を実現する切替機構109の具体的な構成については、特に限定されるものではなく、公知の各種のバルブ等を適宜使用することが可能である。
【0041】
以上、
図3及び
図4を参照しながら、本実施形態に係るオゾン濃度測定器100について、詳細に説明した。
【0042】
(演算処理装置について)
次に、
図5~
図7を参照しながら、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置10が有する演算処理装置200の構成について、詳細に説明する。
図5は、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置が有する演算処理装置の構成の一例を示したブロック図である。
図6は、本実施形態に係る演算処理装置が有する演算処理部の構成の一例を示したブロック図である。
図7は、本実施形態に係る演算処理装置における診断処理について説明するための説明図である。
【0043】
本実施形態に係る演算処理装置200は、
図5に示したように、測定制御部201と、演算処理部203と、結果出力部205と、表示制御部207と、記憶部209と、を有する。
【0044】
測定制御部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力装置、通信装置等により実現される。測定制御部201は、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置10が有するオゾン濃度測定器100の動作状態を、統括的に制御する。
【0045】
これにより、測定制御部201は、オゾン濃度測定器100におけるオゾンセンサ103の測定開始タイミングや測定終了タイミングを制御したり、切替機構109における第1ガス流路105と第2ガス流路107との間の切替タイミングを制御したりすることが可能となる。これにより、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置10では、オゾン濃度測定器100によるオゾン濃度の測定を、自動的かつより簡便に実現することが可能となる。
【0046】
演算処理部203は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。演算処理部203は、オゾン濃度測定器100により測定された、着目する回転機内のオゾン濃度に基づき、かかる回転機の絶縁劣化を診断する診断機能を有する。
【0047】
また、演算処理部203は、着目する回転機が設けられている環境の温度や湿度の測定結果を用いて、オゾン濃度測定器100により測定されたオゾン濃度の補正を行う濃度補正機能を有していることが好ましい。演算処理部203が、かかる濃度補正機能を更に有していることで、診断機能を実施するに先立ってオゾン濃度の補正を行うことが可能となり、着目する回転機の絶縁層の劣化度合いを、より正確に診断することが可能となる。
【0048】
かかる演算処理部203の詳細な構成については、以下で改めて説明する。
【0049】
結果出力部205は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置、通信装置等により実現される。結果出力部205は、演算処理部203から出力された、着目する回転機の絶縁層の劣化度合いに関する診断結果を、ユーザに出力する。具体的には、結果出力部205は、演算処理部203から出力された絶縁層の劣化度合いの診断結果に関するデータを、当該データが生成された日時等に関する時刻データと関連付けて、各種サーバや制御装置等に出力したり、プリンタ等の出力装置を利用して紙媒体として出力したりする。また、結果出力部205は、診断結果に関するデータを、外部に設けられたコンピュータ等の各種の情報処理装置や各種の記録媒体に出力してもよい。
【0050】
また、結果出力部205は、演算処理部203による診断結果に関するデータを、後述する表示制御部207に出力することができる。
【0051】
更に、結果出力部205は、演算処理部203から出力された、オゾン濃度に関する測定結果そのものについても、上記と同様にしてユーザに出力してもよい。
【0052】
表示制御部207は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置、通信装置等により実現される。表示制御部207は、結果出力部205から出力された絶縁層の劣化度合いの診断結果や、オゾン濃度の測定結果を、演算処理装置200が備えるディスプレイ等の出力装置や演算処理装置200の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、ユーザは、着目する回転機における絶縁層の劣化度合いや、オゾン濃度に関する知見を、その場で把握することが可能となる。
【0053】
記憶部209は、演算処理装置200が備える記憶装置の一例であり、例えば、ROM、RAM、ストレージ装置等により実現される。この記憶部209には、本実施形態に係る絶縁劣化診断装置10が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過(例えば、事前に格納されている各種のデータやデータベース、及び、プログラム等)が、適宜記録される。この記憶部209は、測定制御部201、演算処理部203、結果出力部205、表示制御部207等が、自由にデータのリード/ライト処理を行うことが可能である。
【0054】
<演算処理部の構成について>
続いて、
図6を参照しながら、演算処理装置200が備える演算処理部203の詳細な構成について、説明する。なお、
図6では、本実施形態に係る演算処理部203が、先だって言及した診断機能だけでなく、濃度補正機能を有している場合の構成の一例について図示している。
【0055】
本実施形態に係る演算処理部203は、
図6に示したように、データ取得部211と、濃度補正部213と、診断部215と、を有している。
【0056】
データ取得部211は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力装置、通信装置等により実現される。データ取得部211は、オゾン濃度測定器100により測定された、着目している回転機内のオゾン濃度に関する測定データや、温度や湿度に関する測定データを取得する。データ取得部211は、取得したこれらの測定データを、後段の濃度補正部213へと出力する。また、データ取得部211は、これらの測定データを、当該測定データを取得した日時等に関する時刻データと関連付けた上で、履歴情報として記憶部209に格納してもよい。
【0057】
濃度補正部213は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。濃度補正部213は、データ取得部211から出力された温度及び湿度に関する測定データを用いて、オゾン濃度測定器100により測定されたオゾン濃度を補正する。
【0058】
発生したオゾンは徐々に分解していくことが知られており、オゾンの分解速度は、温度及び絶対湿度に依存する(負の相関を有している)ことが知られている。そのため、かかる相関関係に基づき、オゾン濃度測定器100により測定されたオゾン濃度を補正することで、回転機内のオゾン濃度をより正確に特定することが可能となる。その結果、より正確なオゾン濃度を用いることで、回転機の絶縁層の劣化度合いを、より正確に診断することが可能となる。
【0059】
上記のような濃度補正方法の詳細については、特に限定されるものではないが、例えば、特開2020-61797号公報で開示されているような濃度補正処理を用いることが可能である。
【0060】
濃度補正部213は、例えば上記のような方法で濃度補正処理を実施すると、補正後のオゾン濃度に関するデータを、後段の診断部215に出力する。また、濃度補正部213は、補正後のオゾン濃度に関するデータを、当該データを生成した日時等に関する時刻データと関連付けた上で、履歴情報として記憶部209に格納してもよい。
【0061】
診断部215は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。診断部215は、オゾン濃度測定器100により測定されたオゾン濃度(
図6の場合、オゾン濃度測定器100により測定され、濃度補正部213により補正が施されたオゾン濃度)に基づき、着目する回転機の絶縁層の劣化度合いを診断する。
【0062】
回転機の主絶縁層及びコロナ防止層の劣化度合いが進行するほど、回転機中のオゾン濃度は高くなる。そこで、診断部215は、着目する回転機の設置環境に応じて予め設定された濃度閾値(例えば、過去のオゾン濃度の測定結果や、絶縁層の劣化度合いの具体的な検証結果等)に基づき、絶縁層の劣化度合いを診断することが好ましい。
【0063】
例えば、診断部215は、予め設定された濃度閾値に基づき、得られたオゾン濃度が濃度閾値未満であれば、「劣化していない」と診断し、得られたオゾン濃度が濃度閾値以上であれば、「劣化している」と診断するような、2値的な閾値判断を実施してもよい。
【0064】
また、診断部215は、例えば
図7に模式的に示したように、濃度閾値TH1、濃度閾値TH2(>TH1)という2段階の濃度閾値を予め設定した上で、得られたオゾン濃度が濃度閾値TH1未満であれば「正常」と診断し、TH1以上TH2未満であれば「要 点検」と診断し、TH2以上であれば「要 更新」と診断するような、多段階の閾値判断を実施してもよい。
【0065】
診断部215は、例えば上記のようにして、得られたオゾン濃度に基づき診断を行うと、得られた診断結果に関するデータを、結果出力部205へと出力する。また、診断部215は、得られた診断結果に関するデータを、当該データが生成された日時等に関する時刻データと関連付けた上で、履歴情報として記憶部209に格納してもよい。
【0066】
以上、
図5~
図7を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200について、詳細に説明した。
【0067】
以上、本実施形態に係る演算処理装置200の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0068】
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0069】
(演算処理装置のハードウェア構成について)
次に、
図8を参照しながら、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成について、詳細に説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0070】
演算処理装置200は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理装置200は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
【0071】
CPU901は、中心的な処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、又はリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、演算処理装置200内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0072】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0073】
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理装置200の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。更に、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。ユーザは、この入力装置909を操作することにより、演算処理装置200に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0074】
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプなどの表示装置や、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0075】
ストレージ装置913は、演算処理装置200の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種のデータなどを格納する。
【0076】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理装置200に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
【0077】
接続ポート917は、機器を演算処理装置200に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS-232Cポート、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、演算処理装置200は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
【0078】
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線もしくは無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、社内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態に係る演算処理装置200の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【実施例0080】
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係る絶縁劣化診断装置及び絶縁劣化診断方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係る絶縁劣化診断装置及び絶縁劣化診断方法の一例にすぎず、本発明に係る絶縁劣化診断装置及び絶縁劣化診断方法が以下の例に限定されるものではない。
【0081】
まず、用いるオゾンセンサの確認のために、連続測定が可能な定電位電解式のオゾンセンサ(新コスモス電機株式会社製PS-2DPW)を用いて、オゾン濃度が一定(1ppm)である雰囲気のオゾン濃度を連続測定した。その結果、本来ほぼ一定となるべき測定値が徐々に減少していった。すなわち、
図10に測定結果の一部を示したように、本来、測定されるオゾン濃度は、オゾンセンサがオゾンに曝露されている測定時間23~26分の間に1ppmでほぼ一定となるはずであるが、実際には、測定値は徐々に減少していることがわかる。かかる結果から、用いた定電位電解式のオゾンセンサを単に連続稼働させるだけでは、回転機のオゾン濃度を正確に測定することができない旨が改めて確認できた。
【0082】
次に、上記と同様の定電位電解式オゾンセンサ(新コスモス電機株式会社製PS-2DPW)を用いて、
図3に示したような構成を有するオゾン濃度測定器を作製した。作製したオゾン濃度測定器を、3.0kV以上の電圧が印加される回転機に設置した。また、この回転機に対して、市販の湿度計及び温度計ついても併せて設置し、回転機内の絶対湿度及び温度が測定可能なようにした。
【0083】
かかるオゾン濃度測定器を用い、測定間隔Δt=1分に設定して、上記回転機から発生するオゾン濃度の測定を、約6時間測定した。なお、回転機からオゾン濃度測定器へと導入されるガスの流量は、0.1L/minに設定した。また、湿度計及び温度計から得られる測定値(絶対湿度及び温度)を用い、特開2020-61797号公報で開示されている濃度補正処理によって、オゾン濃度測定器により測定されたオゾン濃度の補正を行った。
【0084】
得られた測定結果を、
図9に示した。なお、
図9の横軸は、測定時刻であり、縦軸は、オゾン濃度、相対湿度及び温度である。
図9から明らかなように、着目する回転機で発生するオゾンの濃度を、1分間隔という短い測定周期で、継続して測定可能であることがわかる。また、温度及び湿度に応じてオゾン濃度が変化することを、視覚的に把握することが可能となることがわかる。これにより、
図5及び
図6に示したような構成を有する演算処理装置と併用して長時間連続測定を行うことで、オゾン濃度の最大値を見逃すこと無く、高精度な診断が可能となることが明らかとなった。
【0085】
また、上記とは別に、作製したオゾン濃度測定器を用いて、オゾン濃度1ppmとされている校正用ガスを測定したところ、得られたオゾン濃度は1.05ppmとなった。また、同じ校正用ガスのオゾン濃度を、別途オゾン検知管により測定したところ、1.0ppmという測定結果が得られた。かかる結果から、作製したオゾン濃度測定器は、オゾン検知管とほぼ同じ精度(有効数字の桁数を考慮すると、オゾン検知管よりも高い精度)で、オゾン濃度を測定可能であることが明らかとなった。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。