(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032047
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】工具ホルダおよびタレット
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20230302BHJP
B23B 29/24 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B23Q11/10 D
B23B29/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137917
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】591033755
【氏名又は名称】エヌティーツール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 均
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛之
【テーマコード(参考)】
3C011
3C046
【Fターム(参考)】
3C011EE05
3C011EE06
3C046NN05
3C046NN27
(57)【要約】
【課題】工具を回転不能に保持する工具ホルダにおいて、長い連続的な切り屑が工具やワークに巻き付くのを防止することができる技術を提供する。
【解決手段】工具ホルダ100は、工具170を回転不能に保持する。工具ホルダ100の本体部(110)の被取り付け面112aが、工作機械の工具ホルダ取り付け面に取り付けられると、工作機械から供給される冷却媒体が第1の本体部通路(114、124)に通される。また、工作機械に設けられている駆動機構により回転部材130が回転駆動される。ポンプ200は、回転部材130の回転に連動して回転部が回転することにより、吸入部201から吸入された冷却媒体の圧力を、回転部の回転数に対応する圧力に高め、圧力が高められた冷却媒体を吐出部202から吐出する。吐出部202から吐出された冷却媒体は、第2の本体部通路(125、115)を介してノズル160の噴射孔161から、加工部に噴射される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する工具を回転不能に保持する工具ホルダであって、
本体部と、回転部材と、ポンプと、ノズルと、を備え、
前記本体部は、工作機械の工具ホルダ取り付け部に着脱自在に取り付けられる被取り付け部と、本体部内周面と、前記本体部内周面により形成される本体部内側空間と、第1の本体部通路と、第2の本体部通路と、を有し、
前記回転部材は、前記本体部の前記本体部内側空間内に回転可能に配置され、
前記ポンプは、回転部と、吸入部と、吐出部と、を有し、前記回転部は、前記本体部の前記本体部内側空間内に、前記回転部材の回転に連動して回転可能に配置され、前記吸入部は、前記本体部の前記第1の本体部通路に連通し、前記吐出部は、前記本体部の前記第2の本体部通路に連通し、また、前記吸入部から吸入された冷却媒体の圧力を、前記回転部の回転数に対応する圧力に高め、圧力が高められた冷却媒体を前記吐出部から吐出するように構成され、
前記ノズルは、冷却媒体を噴射する噴射孔を有し、また、前記噴射孔が前記本体部の前記第2の本体部通路に連通するように前記本体部に取り付けられ、
前記被取り付け部が前記工具ホルダ取り付け部に取り付けられた状態において、工作機械から供給される冷却媒体が前記第1の本体部通路に通され、また、工作機械に設けられている駆動機構により前記回転部材が回転駆動されるように構成されていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の工具ホルダであって、
前記本体部は、本体部材と、スリーブと、キャップと、を有し、
前記本体部材は、筒状に形成され、前記被取り付け部と、本体部材内周面と、前記本体部材内周面により形成される本体部材内側空間と、前記本体部材内周面に開口している第1の本体部材通路と、前記本体部材内周面に開口している第2の本体部材通路と、を有し、
前記スリーブは、筒状に形成され、スリーブ内周面と、スリーブ外周面と、前記スリーブ内周面により形成されるスリーブ内側空間と、前記スリーブ外周面と前記スリーブ内周面に開口している第1のスリーブ通路と、前記スリーブ内周面と前記スリーブ外周面に開口している第2のスリーブ通路と、を有し、
前記スリーブは、前記本体部材内側空間内に、前記第1のスリーブ通路が前記第1の本体部材通路に連通し、前記第2のスリーブ通路が前記第2の本体部材通路に連通するように配置され、
前記キャップは、前記スリーブ内側空間の先端側を塞ぐように前記スリーブに設けられ、
前記回転部材は、前記本体部材内側空間内に回転可能に配置され、
前記ポンプは、前記回転部が、前記回転部材と前記キャップの間に配置され、前記吸入部が、前記第1のスリーブ通路に連通し、前記吐出部が前記第2のスリーブ通路に連通するように構成され、
前記ノズルは、前記噴射孔が前記第2の本体部材通路に連通するように、前記本体部材に取り付けられ、
前記被取り付け部が前記工具ホルダ取付け部に取り付けられた状態において、工作機械から供給される冷却媒体が前記第1の本体部材通路に通されように構成されていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項3】
タレット中心線回りに回転可能であり、外周側に、工具ホルダの被取り付け部が着脱自在に取り付け可能な複数の工具ホルダ取り付け部が周方向に沿って設けられているタレットであって、
前記複数の工具ホルダ取り付け部のうちの一つが、予め定められている加工位置に配置されるように前記タレットを回転させるタレット駆動機構と、
前記加工位置に配置された工具ホルダ取付け部に取り付けられている工具ホルダに冷却媒体を供給する冷却媒体供給機構と、
前記加工位置に配置された工具ホルダ取付け部に取り付けられている工具ホルダの回転部を回転駆動する駆動機構と、を備え、
前記複数の工具ホルダ取り付け部のうちの少なくとも1つに、請求項1または2に記載の工具ホルダが取り付けられていることを特徴とするタレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を保持する工具ホルダおよび複数の工具ホルダを着脱自在に取り付け可能なタレットに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製のワークの切削加工等を行う工作機械では、ワークを加工する工具を保持する工具ホルダが用いられている。
工具ホルダとしては、回転工具ホルダ(「転削工具ホルダ」と呼ばれることもある)あるいは非回転工具ホルダ(「旋削工具ホルダ」と呼ばれることもある)が用いられる。回転工具ホルダは、固定されているワークを加工する工具(「転削工具」あるいは「回転工具」と呼ばれることもある)を回転可能に保持する。非回転工具ホルダは、回転しているワークを加工する工具(「旋削工具」あるいは「非回転工具」と呼ばれることもある)を回転不能に保持する。
ここで、複数の加工作業を連続的に行うことができるようにするために、タレットを備える工作機械が用いられている。タレットは、タレット中心線回りに回転可能に構成されている。また、タレットの外周側には、工具を保持している工具ホルダの被取り付け面が取り付け可能な工具ホルダ取り付け面が、周方向に沿って複数設けられている。そして、タレット駆動機構により、加工に使用する工具を保持している工具ホルダ(工具ホルダの被取り付け面が取り付けられている工具ホルダ取り付け面)が加工位置に配置されるように、タレットを回転させる。工具ホルダ取り付け面には、回転工具ホルダや非回転工具ホルダが取り付けられる。このようなタレットは、例えば、特許文献1(特開2006-167862号公報)に開示されている。
【0003】
工具を用いてワークを加工する際には、ワークと工具との潤滑、ワークや工具の冷却、加工により発生した切り屑(「切粉」と呼ばれることもある)の除去等のために、油等の冷却媒体を工具の刃先等に供給する必要がある。
このため、工作機械から供給される冷却媒体を通し、工具の刃先等に噴射する冷却媒体供給機構が設けられた工具ホルダが用いられている。
さらに、冷却媒体の圧力を高めるために、ポンプを有する冷却媒体供給機構が設けられた工具ホルダが提案されている。このような工具ホルダは、例えば、特許文献2(特開昭62-4550号公報)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-167862号公報
【特許文献2】特開昭62-4550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な工作機械から供給される冷却媒体の圧力では、工具ホルダに設けられている冷却媒体供給機構から噴射される冷却媒体によって、十分な冷却効果や潤滑効果が得られず、また、加工時に発生する切り屑を十分に除去することができない場合がある。このような場合には、作業員は、ワークを加工した後、ワークに残っている切り屑を除去する作業(除去作業)を行う必要がある。
ここで、工具ホルダに設けられている冷却媒体供給機構から噴射される冷却媒体の圧力を高めることによって、切り屑の除去効果を高めることが考えられる。
工具ホルダに設けられている冷却媒体供給機構から噴射される冷却媒体の圧力を高めるには、工作機械から供給される冷却媒体の圧力を高める必要がある。
しかしながら、工作機械から供給される冷却媒体の圧力を高めるためには、工作機械を高圧仕様に設計する必要があり、非常に高価となる。
また、特許文献2に開示されているような、工作機械に設けられている駆動機構により回転駆動される回転部を有するポンプにより構成される冷却媒体供給機構が設けられた工具ホルダを用い、ポンプの回転部の回転数を高めることによって、冷却媒体供給機構から噴射される冷却媒体の圧力を高めることが考えられる。
しかしながら、特許文献2に開示されている工具ホルダは、保持している工具を回転させてワークを加工しながら、工具の刃先等に冷却媒体を噴射するものである。このため、工具ホルダの回転数を高めるには限界がある。
また、工具を回転不能に保持する非回転工具ホルダでは、回転部を有していないため、特許文献2に開示されているポンプを用いて冷却媒体の圧力を高めることができない。
特に、工具を回転不能に保持する非回転工具ホルダを用いる場合には、加工時に、長い連続的な切り屑が発生し易い。このような、長い連続的な切り屑が工具やワークに巻き付くと、工具やワークが損傷するおそれがある。
このため、工具を回転不能に保持する非回転工具ホルダにおいて、長い連続的な切り屑が工具やワークに巻き付くのを防止することができる技術の開発が要望されている。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、工具を回転不能に保持する工具ホルダ(非回転工具ホルダ)において、高圧の冷却媒体を、所定個所に集中的に噴射することができるように構成することにより、加工時に発生する切り屑を分断して、長い連続的な切り屑が工具やワークに巻き付くのを防止することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、回転するワークを加工する工具を回転不能に保持する工具ホルダ(非回転工具ホルダ)に関する。
本発明は、本体部、回転部材、ポンプおよびノズルを備えている。
本体部は、工作機械の工具ホルダ取り付け部に着脱自在に取り付けられる被取り付け部を有している。工具ホルダ取り付け部としては、例えば、工作機械のタレットの外周に設けられている工具ホルダ取り付け面が用いられる。
また、本体部は、本体部内周面、本体部内周面により形成される本体部内側空間、第1の本体部通路および第2の本体部通路を有している。
回転部材は、本体部内側空間内に回転可能に配置されている。回転部材を本体部内側空間内に回転可能に配置する方法としては、種々の方法を用いることができる。
ポンプは、回転部、吸入部および吐出部を有している。ポンプの回転部は、本体部内側空間内に、回転部材の回転に連動して回転可能に配置されている。吸入部は、本体部の第1の本体部通路に連通し、吐出部は、本体部の第2の本体部通路に連通している。そして、ポンプは、吸入部から吸入された冷却媒体の圧力を、回転部の回転数に対応する圧力に高め、圧力を高めた冷却媒体を吐出部から吐出するように構成されている。
ポンプとしては、回転部を有する公知の種々の構成のポンプを用いることができる。ポンプの回転部を回転部材の回転に連動して回転させる方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、ポンプの回転部を回転部材に連結する方法を用いることができる。
ノズルは、冷却媒体を噴射する噴射孔を有している。そして、ノズルは、噴射孔が本体部の第2の本体部通路に連通するように本体部に取り付けられている。
本発明の工具ホルダは、被取り付け部が工具ホルダ取り付け部に取り付けられた状態において、工作機械から供給される冷却媒体が第1の本体部通路に通されるように構成されている。また、工作機械に設けられている駆動機構により回転部材が回転駆動されるように構成されている。
ポンプの回転部(回転部材)の回転数は、噴射孔から噴射される冷却媒体の圧力が、ワークの加工により発生する切り屑を分断することができる所定圧力となるように設定される。
第1発明の工具ホルダでは、工具を回転不能に保持している工具ホルダ(非回転工具ホルダ)において、高圧の冷却媒体を、所定個所に集中的に噴射することができる。これにより、ワークの加工時に発生する切り屑を分断することができ、長い連続的な切り屑が工具やワークに巻き付くのを防止することができる。
第1発明の異なる形態では、本体部は、本体部材、スリーブおよびキャップにより構成されている。
本体部材は、筒状に形成され、被取り付け部、本体部材内周面、本体部材内周面により形成される本体部材内側空間、本体部材内周面に開口している第1の本体部材通路と第2の本体部材通路を有している。
スリーブは、筒状に形成され、スリーブ内周面、スリーブ外周面、スリーブ内周面により形成されるスリーブ内側空間、スリーブ外周面とスリーブ内周面に開口している第1のスリーブ通路と第2のスリーブ通路を有している。
スリーブは、本体部材内側空間内に、第1のスリーブ通路が第1の本体部材通路に連通し、第2のスリーブ通路が第2の本体部材通路に連通するように配置される。
キャップは、スリーブ内側空間の先端側を塞ぐようにスリーブに設けられる。
回転部材は、本体部材内側空間内に回転可能に配置されている。
ポンプは、回転部が、回転部材とキャップの間に配置され、吸入部が、第1のスリーブ通路に連通し、吐出部が第2のスリーブ通路に連通するように構成されている。
ノズルは、噴射孔が第2の本体部材通路に連通するように、本体部材に取り付けられている。
そして、被取り付け部が工具ホルダ取り付け部に取り付けられた状態において、工作機械から供給される冷却媒体が第1の本体部材通路に通されように構成されている。
本形態では、工具ホルダを容易に構成することができる。
第2発明は、タレットに関する。
タレットは、工作機械に設けられ、タレット中心線回りに回転可能である。タレットは、外周側に、工具ホルダの被取り付け部が着脱自在に取り付け可能な複数の工具ホルダ取り付け部が周方向に沿って設けられている。
また、タレット駆動機構を備えている。タレット駆動機構は、複数の工具ホルダ取り付け部のうちの一つ(工具ホルダ取り付け部に取り付けられている工具ホルダ)が、予め定められている加工位置に配置されるように、タレットをタレット中心線回りに回転させる。
また、工作機械に設けられている冷却媒体供給機構を備えている。冷却媒体供給機構は、加工位置に配置された工具ホルダ取り付け部に取り付けられている工具ホルダに冷却媒体を供給可能に構成されている。
また、工作機械に設けられている駆動機構を備えている。駆動機構は、加工位置に配置された工具ホルダ取り付け部に取り付けられている工具ホルダの回転部を回転駆動可能に構成されている。
そして、複数の工具ホルダ取り付け部のうちの少なくとも1つに、前述した、ポンプを有しており、工具を回転不能に保持する工具ホルダ(非回転工具ホルダ)が取り付けられている。
駆動機構は、例えば、工具ホルダ取り付け部に、ポンプを有しており、工具を回転不能に保持する工具ホルダ(非回転工具ホルダ)が取り付けられている場合には、回転部材を回転駆動する。また、駆動機構は、工具ホルダ取り付け部に、工具を回転可能に保持する工具ホルダ(回転工具ホルダ)が取り付けられている場合には、工具を回転させる回転軸を回転駆動する。
第2発明のタレットでは、工具ホルダ取り付け部に取り付けられている、工具を回転不能に保持する工具ホルダ(非回転ホルダ)を使用する場合に、第1発明と同様の効果を有する。
【発明の効果】
【0007】
第1発明の工具ホルダおよび第2発明のタレットを用いることにより、工具ホルダに回転不能に保持されている工具を用いてワークを加工する際に、高圧の冷却媒体を、所定個所に集中的に噴射することができる。これにより、加工時に発生する切り屑を分断して、長い連続的な切り屑が工具やワークに巻き付くのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のタレットの一実施形態を示す図である。
【
図2】本発明の工具ホルダの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の工具ホルダの実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下では、工具ホルダ100の中心線P(回転部材130およびポンプ200の回転部の回転中心線)に沿った方向を「軸方向」といい、軸方向に沿って、回転部材130が配置されている側と反対側(
図2、
図3において、矢印A側(左側))を「先端側」あるいは「軸方向一方側」といい、回転部材130が配置されている側(
図2、
図3において、矢印B側(右側))を「後端側」あるいは「軸方向他方側」という。
【0010】
先ず、本発明のタレット10の一実施形態を、
図1を参照して説明する。
タレット10は、工作機械に設けられ、タレット中心線Oを中心に回転可能である。
タレットの外周側には、複数の工具ホルダ取り付け面11a~11cが、周方向に沿って設けられている。本実施形態では、工具ホルダ取り付け面11a~11cは、等間隔に設けられている。
工具ホルダ取り付け面11a~11cには、工具ホルダの被取り付け面が着脱自在に取り付けられる。本実施形態では、工具ホルダ取り付け面11a~11cは、タレット中心線O回りに等間隔に延在する取り付け面中心線Q1~Q3の延在方向と交差する(好適には、直交する)方向に延在している。
図1では、工具ホルダ取り付け面11aには、工具ホルダ100の被取り付け面112aが着脱自在に取り付けられている。工具ホルダ100は、刃先171を有する工具170を回転不能に保持する。以下では、工具ホルダ100を、「非回転工具ホルダ100」といい、工具170を、「非回転工具170」という。なお、回転不能に保持される工具は、「旋削工具」と呼ばれることもある。
工具ホルダ取り付け面11bには、工具ホルダ300の被取り付け面312aが取り付けられている。工具ホルダ300は、工具370を、取り付け面中心線Q2の延在方向と交差する(好適には、直交する)工具回転中心線q2回りに回転可能に保持する。以下では、工具ホルダ300を、「回転工具ホルダ300」といい、工具370を、「回転工具370」という。なお、回転可能に保持される工具は、「転削工具」と呼ばれることもある。
工具ホルダ取り付け面11cには、工具ホルダ400の被取り付け面412aが取り付けられている。工具ホルダ400は、工具470を、取り付け面中心線Q3回りに回転可能に保持する。以下では、工具ホルダ400を、「回転工具ホルダ400」といい、工具470を、「回転工具470」という。
タレット10は、タレット駆動機構(図示省略)により、工具ホルダ取り付け面11a~11c(工具ホルダ取り付け面11a~11cに取り付けられている工具ホルダ100、300、400)のいずれかが、予め定められている加工位置に配置されるように、タレット中心線O回りに回転駆動される。
【0011】
本実施形態では、工具ホルダ100が、本発明の「工具を回転不能に保持する工具ホルダ」に対応する。
また、工具ホルダ取り付け面11a~11cが、本発明の「工具ホルダ取り付け部」に対応し、被取り付け面112a、312a、412aが、本発明の「被取り付け部」に対応する。
【0012】
また、加工位置に配置された工具ホルダ取り付け面に取り付けられている工具ホルダの回転部を回転駆動する駆動機構20が設けられている。駆動機構20としては、例えば、モータ等の駆動手段により構成される駆動機構が用いられる。
図1に示されている例では、加工位置に配置されている工具ホルダ取り付け面11aに取り付けられている、本発明の、ポンプを有する非回転工具ホルダ100の回転部は、回転部材130(後述する)である。なお、従来の非回転工具ホルダは、非回転工具を回転不能に保持し、また、冷却媒体を加圧するポンプを有していないため、回転部を有していない。
また、工具ホルダ取り付け面11bに取り付けられている回転工具ホルダ300の回転部は、回転軸330である。回転軸330が回転することによって、回転工具370が回転するように構成されている。
また、工具ホルダ取り付け面11cに取り付けられている回転工具ホルダ400の回転部は、回転軸430である。回転軸430が回転することによって、回転工具470が回転するように構成されている。
【0013】
また、加工位置に配置された工具ホルダ取り付け面に取り付けられている工具ホルダに冷却媒体を供給する冷却媒体供給機構(図示省略)が設けられている。
図1に示されている非回転工具ホルダ100では、冷却媒体供給機構から供給される冷却媒体は、ポンプ200(後述する)で増圧された後、回転しないノズル160の噴射孔161から噴射される。
回転工具ホルダ300、400では、冷却媒体供給機構から供給される冷却媒体は、そのまま、工具と共に回転する噴射孔から噴射される。
なお、回転工具ホルダ300、400では、特許文献2に開示されているように、冷却媒体供給機構から供給される冷却媒体を、ポンプで増圧した後、工具と共に回転する噴射孔から噴射孔から噴射するように構成することもできる。
【0014】
次に、非回転工具ホルダ100の一実施形態を、
図1、
図2を参照して説明する。
図1は、一実施形態の非回転工具ホルダ100の断面図であり、
図2は、
図1の要部を拡大した拡大図である。
【0015】
本実施形態の非回転工具ホルダ100は、本体部、回転部材130、ポンプ200、ノズル160を有している。
非回転工具ホルダ100は、非回転工具170を回転不能に保持する工具保持機構(図示省略)を備えている。非回転工具170を保持する工具保持機構としては、公知の種々の構成の工具保持機構を用いることができる。
【0016】
本体部は、本体部材110、スリーブ120、キャップ150により構成されている。
【0017】
本体部材110は、筒状に形成され、本体部材内周面111と本体部材外周面112を有している。本体部材内周面111によって本体部材内側空間113が形成される。
本実施形態では、本体部材内周面111は、本体部材内周面部分111a~111cを有している。本体部材内周面部分111aと111cは、円形の断面を有し、軸方向に沿って延在している。本体部材内周面部分111cは、本体部材内周面部分111aより後端側に配置され、本体部材内周面部分111aの内径より小さい内径を有している。本体部材内周面部分111bは、径方向に沿って延在し、本体部材内周面部分111aと111cを接続する段差面を形成している。本体部材内周面部分111aには、雌ネジが形成されている。
本体部材外周面112は、本体部材外周面部分112aを有している。本体部材外周面部分112aは、径方向に延在している。本体部材外周面部分112aは、タレット10の工具ホルダ取り付け面11a~11cに着薩自在に取り付け可能に構成されている。
本体部材外周面部分112aが、本発明の「本体部外周面部分」あるい「被取り付け部」に対応する。
【0018】
また、本体部材110には、第1の本体部材通路114と第2の本体部材通路115が形成されている。
第1の本体部材通路114は、本体部材外周面部分112aと本体部材内周面(本体部材内周面部分111c)に開口している。また、第2の本体部材通路115は、本体部材内周面(本体部材内周面部分111c)に開口している。
そして、本体部材外周面部分112aが工具ホルダ取り付け面11a~11cに取り付けられた状態において、工作機械から供給される冷却媒体が第1の本体部材通路114に通されるように構成されている。
なお、ノズル160は、ノズル160の噴射孔161が第2の本体部材通路115に連通するように、本体部材110に取り付けられる。
【0019】
スリーブ120は、筒状に形成され、スリーブ内周面121、スリーブ外周面122、スリーブ先端面120Aおよびスリーブ後端面120Bを有している。スリーブ内周面121によってスリーブ内側空間123が形成される。
本実施形態では、スリーブ内周面121は、スリーブ内周面部分121a~121cを有している。スリーブ内周面部分121aと121cは、円形の断面を有し、軸方向に沿って延在している。スリーブ内周面部分121cは、スリーブ内周面部分121aより後端側に配置され、スリーブ内周面部分121aの内径より小さい内径を有している。スリーブ内周面部分121bは、径方向に沿って延在し、スリーブ内周面部分121aと121cを接続する段差面を形成している。スリーブ内周面部分121aには、雌ネジが形成されている。
スリーブ外周面122は、スリーブ外周面部分122a~122cを有している。スリーブ外周面部分122aと122cは、円形の断面を有し、軸方向に沿って延在している。スリーブ外周面部分122cは、スリーブ外周面部分122aより後端側に配置され、スリーブ外周面部分122aの外径より小さい外径を有している。スリーブ外周面部分122bは、径方向に沿って延在し、スリーブ外周面部分122aと122cを接続する段差面を形成している。スリーブ外周面部分122aには、本体部材内周面部分111aに形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている。
【0020】
スリーブ120は、本体部材内側空間113内に挿入された状態で、本体部材110に固定される。本実施形態では、スリーブ120を、スリーブ外周面部分122aに形成されている雄ネジを、本体部材内周面部分111aに形成されている雌ネジにネジ結合させた状態で、スリーブ外周面部分122bが本体部材内周面部分111bに当接する位置まで挿入することによって、スリーブ120を本体部材110に固定している。
スリーブ120を本体部材110に固定する方法は、これに限定されず、公知の種々の方法を用いることができる。
本実施形態では、本体部材内側空間113内の、スリーブ後端面120Bより後端側に、回転部材130(後述する)が配置される空間が形成される。
なお、本体部材110とスリーブ120の間には、Oリング等のシール部材116a~116cが配置される。
【0021】
また、スリーブ120は、第1のスリーブ通路124と第2のスリーブ通路125を有している。
第1のスリーブ通路124は、スリーブ120が本体部材110に固定されている状態において、第1の本体部材通路114およびポンプ200の吸入部201に連通するように構成される。
第2のスリーブ通路125は、スリーブ120が本体部材110に固定されている状態において、第2の本体部材通路115およびポンプ200の吐出部202に連通するように構成されている。
なお、本実施形態では、ポンプ200の吸入部201と吐出部202(吸入部210に連通している第1のスリーブ通路124と吐出部202に連通している第2のスリーブ通路125)は、軸方向に沿って離間する位置に配置されている。
【0022】
キャップ150は、キャップ外周面152、キャップ先端面150Aおよびキャップ後端面150Bを有している。
キャップ外周面152は、キャップ外周面部分152a~152cを有している。キャップ外周面部分152a~152cは、円形の断面を有し、軸方向に沿って延在している。キャップ外周面部分152cは、キャップ外周面部分152aより後端側に配置されている。キャップ外周面部分152bは、キャップ外周面部分152aと152cの間に配置されているとともに、キャップ外周面部分152aおよび152cの外径より大きい外径を有している。キャップ外周面部分152bには、スリーブ内周面部分121aに形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている。
キャップ150は、スリーブ120の先端側に固定される。本実施形態では、キャップ外周面部分152bに形成されている雄ネジを、スリーブ内周面部分121aに形成されている雌ネジにネジ結合させることによって、キャップ150をスリーブ120に固定している。
なお、スリーブ120とキャップ150の間には、Oリング等のシール部材126aが配置される。
キャップ150をスリーブ120に固定する方法は、これに限定されず、公知の種々の方法を用いることができる。
【0023】
回転部材130は、本体部材内側空間113内に回転可能に配置されている。本実施形態では、回転部材130は、本体部材内側空間113の後端部(スリーブ後端面120Bより後端側)に、ベアリング(軸受け)211を介して回転可能に配置されている。これにより、回転部材130は、本体部材110に対して回転可能である。
なお、工具ホルダ100の本体部材外周面部分112aが工具ホルダ取り付け面11aに取り付けられた状態において、工作機械に設けられている駆動機構20により回転部材130が回転駆動されるように構成されている。詳しくは、工具ホルダ取り付け面11aが加工位置に配置された状態において、工具ホルダ取り付け面11aに取り付けられている工具ホルダ100の回転部材130が、駆動機構20により回転駆動される。
【0024】
ポンプ200は、キャップ150と回転部材130の間に配置されている。
ポンプ200は、スリーブ内側空間123内に回転可能に配置されている回転部を有している。ポンプ200としては、回転部を有する、公知の種々のポンプを用いることができる。本実施形態では、内接型ギヤポンプを用いている。
ポンプ200の回転部は、一端側が回転部材130に連結されている。本実施形態では、ポンプ200の回転部の後端部が、ノックピン140を介して回転部材130に連結されている。また、ポンプ200の回転部の他端側が、キャップ150に、回転可能に支持されている。本実施形態では、ポンプ200の回転部の先端部が、キャップ150のキャップ後端面150Bに形成されている凹部内に回転可能に支持されている。
これにより、ポンプ200の回転部は、回転部材130の回転に連動して回転可能である。
また、ポンプ200は、吸入部201と吐出部202を有している。吸入部201は、第1のスリーブ通路124を介して第1の本体部材通路114に連通されている。また、吐出部202は、第2のスリーブ通路125を介して第2の本体部材通路115に連通している。
ポンプ200は、吸入部201から吸入した冷却媒体の圧力を、回転部の回転数に対応する圧力に高め、圧力を高めた冷却媒体を吐出部202から吐出する。
【0025】
本実施形態では、本体部材110、スリーブ120、キャップ150により、本発明の「本体部」が構成される。
また、本体部材外周面112により、本発明の「本体部外周面」が構成され、本体部材内周面111とスリーブ内周面121により、本発明の「本体部内周面」が構成され、本体部材内側空間113とスリーブ内側空間123により、本発明の「本体部内側空間」が構成される。
また、第1の本体部材通路114と第1のスリーブ通路124により、本発明の「第1の本体部通路」が構成され、第2の本体部材通路115と第2のスリーブ通路125により、本発明の「第2の本体部通路」が構成される。
また、スリーブ120、回転部、吸入部201および吐出部202によって、本発明の「ポンプ」が構成される。
【0026】
ノズル160は、両端が開口している噴射孔161を有している。ノズル160は、噴射孔161の一方側の開口が第2の本体部材通路115に連通するように、本体部材110に取り付けられる。本実施形態では、ノズル160は、ノズル160の後端側の外周に形成されている雄ネジと、第2の本体部材通路115の内周面に形成されている雌ネジとのネジ結合によって、ノズル160を本体部材110に取付けている。
これにより、ノズル160の噴射孔161の開口161aから噴射される冷却媒体は、噴射孔161の開口161aの回転による影響を受けることがない。すなわち、冷却媒体を、所定個所に集中的に噴射することができる。
ノズル160の形状は、噴射孔161の他方側の開口(第2の本体部材通路115に連通している開口と反対側の開口)161aから噴射される冷却媒体が、ワークWの加工部に噴射されるように設定される。
なお、ポンプ200の回転部(回転部材130)の回転数は、ノズル160の噴射孔161の開口161aから噴射される冷却媒体の圧力が、加工時に発生する切り屑を分断することができる圧力となる所定回転数に設定される。
加工時に発生する切り屑が分断されることにより、長い連続的な切り屑が工具やワークWに巻き付くのを防止することができる。
【0027】
非回転工具170を用いてワークWを加工する際の動作の一例を以下に説明する。
工作機械に、ワークWを取り付ける。
工具ホルダの中から、加工に必要な非回転工具170を保持している非回転工具ホルダ100を、タレット10の工具ホルダ取り付け面11aに取り付ける。
工具ホルダ取り付け面11aが加工位置に配置されるように、タレット10を回転させる。
ワークWの回転数および位置を制御することによって、非回転工具ホルダ100に保持されている非回転工具170を用いてワークWを加工する。
この時、ポンプ200の回転部に連結されている回転部材130は、所定回転数に設定される。これにより、ノズル160の噴射孔161の開口161aから、加工により発生する切り屑を分断することができる圧力を有する冷却媒体が、ワークWの加工部(非回転工具170の刃先171により加工される部分)に噴射される。
【0028】
以上のように、本実施形態の非回転工具ホルダ100を用いることにより、非回転工具170によりワークWを加工する際に、ノズル160の噴射孔161の開口161aから、高圧の冷却媒体を、加工部に集中的に噴射させることができる。これにより、長い連続的な切り屑が非回転工具170やワークWに巻き付くのを防止することができ、非回転工具170やワークWの損傷を防止することができる。
また、ポンプの回転部を回転させる駆動源として、回転工具ホルダの回転軸を回転駆動させる駆動機構を用いているため、駆動源を別途設ける必要がない。
【0029】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
非回転工具ホルダに非回転工具を保持する工具保持機構としては、種々の構成の工具保持機構を用いることができる。
非回転工具ホルダの本体部を工作機械に着脱自在に取り付ける方法としては、種々の方法をいることができる。
工作機械から供給される冷却媒体を第1の本体部通路に通す方法としては、種々の方法を用いることができる。
ポンプとしては、回転部、吸入部および吐出部を有する、公知の種々の構成のポンプを用いることができる。
回転部材を本体部内側空間内に回転可能に配置する方法としては、種々の方法を用いることができる。
回転部材とポンプの回転部を連結する方法としては、種々の方法を用いることができる。
本体部材、スリーブ、キャップ、回転部材の形状や構成は、実施形態で説明した形状や構成に限定されず、種々変更可能である。
ノズルとしては、種々の構成のノズルを用いることができる。
実施形態では、本体部を、本体部材、スリーブおよびキャップにより構成したが、これに限定されない。例えば、本体部材、スリーブおよびキャップを一体化した1つの部材により本体部を構成することもできる。また、本体部材とスリーブを一体化した部材とキャップにより本体部を構成し、あるいは、スリーブとキャップを一体化した部材と本体部材により本体部を構成することもできる。
実施形態で説明した構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0030】
10 タレット
11a~11c 工具ホルダ取り付け面(工具ホルダ取り付け部)
20 駆動機構
100 工具ホルダ(非回転工具ホルダ)
110 本体部材
111 本体部材内周面
111a~111c 本体部材内周面部分
112 本体部材外周面
112a 本体部材外周面部分(被取り付け部)
113 本体部材内側空間
114 第1の本体部材通路
115 第2の本体部材通路
116a~116c Oリング(シール部材)
120 スリーブ
120A スリーブ先端面
120B スリーブ後端面
121 スリーブ内周面
121a~121c スリーブ内周面部分
122 スリーブ外周面
122a~122c スリーブ外周面部分
123 スリーブ内側空間
124 第1のスリーブ通路
125 第2のスリーブ通路
126a Oリング(シール部材)
130 回転部材
133 ベアリング(軸受)
140 回り止めピン
150 キャップ
150A キャップ先端面
150B キャップ後端面
152 キャップ外周面
152a~152c キャップ外周面部分
160 ノズル
161 噴射孔
161a 開口
170 工具(非回転工具)
171 刃先
200 ポンプ
201 吸入部
202 吐出部
300、400 工具ホルダ(回転工具ホルダ)
312a、412a 被取り付け面
330、430 回転軸
370、470 工具(回転工具)
W ワーク