(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032061
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】嵩上げ台座及びそれを用いた施工方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20230302BHJP
E01D 2/02 20060101ALI20230302BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20230302BHJP
E01C 9/08 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01D2/02
E01D19/12
E01C9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137940
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】尾添 仁志
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正和
(72)【発明者】
【氏名】戸島 陽
【テーマコード(参考)】
2D051
2D059
【Fターム(参考)】
2D051DA12
2D059AA07
2D059AA14
2D059CC01
(57)【要約】
【課題】工事費及び工事期間を縮小する。
【解決手段】嵩上げ台座は、本設桁に設けられた突起部材を覆うようにして上記本設桁と仮受け桁との間に設置される嵩上げ本体と、上記嵩上げ本体を上記本設桁に固定する第1固定機構と、上記嵩上げ本体に上記仮受け桁を固定する第2固定機構と、を備えている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本設桁に設けられた突起部材を覆うようにして前記本設桁と仮受け桁との間に設置される嵩上げ本体と、
前記嵩上げ本体を前記本設桁に固定する第1固定機構と、
前記仮受け桁を前記嵩上げ本体に固定する第2固定機構と、
を備えている嵩上げ台座。
【請求項2】
前記嵩上げ本体は、
前記仮受け桁が設置される嵩上げ板と、
前記突起部材を避けて前記本設桁に設置され、かつ前記突起部材よりも高い高さで前記嵩上げ板に連結された複数の嵩上げ桁と、
を含む請求項1に記載の嵩上げ台座。
【請求項3】
前記第1固定機構は、前記嵩上げ本体と、前記嵩上げ本体に着脱自在に取り付けられ、かつ前記本設桁の一部を前記一部の板厚方向の両側から前記嵩上げ本体とで挟持する下側固定部材とを含み、
前記第2固定機構は、前記嵩上げ本体と、前記嵩上げ本体に着脱自在に取り付けられ、かつ前記仮受け桁の一部を前記一部の板厚方向の両側から前記嵩上げ本体とで挟持する上側固定部材とを含む、請求項1又は2に記載の嵩上げ台座。
【請求項4】
前記本設桁は、一方向に延伸し、
前記仮受け桁は、前記一方向と交差する他の方向に延伸し、
前記上側固定部材は、前記嵩上げ本体の前記一方向の両側にそれぞれ設けられ、
前記下側固定部材は、前記嵩上げ本体の前記他の方向の両側にそれぞれ設けられている、請求項1から3の何れか一項に記載の嵩上げ台座。
【請求項5】
前記複数の嵩上げ桁の各々の嵩上げ桁は、平面視で前記突起部材を避けて前記一方向に延伸し、かつ前記他の方向に所定の間隔を空けて繰り返し配置されている、請求項2から4の何れか一項に記載の嵩上げ台座。
【請求項6】
前記嵩上げ本体は、複数個に分割されており、前記下側固定部材を前記嵩上げ本体に前記第1固定機構で固定することによって一体に連結される、請求項3から5の何れか一項に記載の嵩上げ台座。
【請求項7】
前記下側固定部材の前記嵩上げ本体への取付けは、前記下側固定部材に設けられた貫通長孔と、前記嵩上げ本体に設けられた貫通孔とを対向させた状態で前記下側固定部材側から頭付きボルトを前記貫通長孔及び貫通孔に挿入し、そして、前記貫通孔から突出する前記頭付きボルトの雄ネジをナットの雌ネジにネジ込むことによって行われ、
前記貫通長孔は、長軸が前記本設桁の前記一部の板厚方向に延伸している、請求項3から6の何れか一項に記載の嵩上げ台座。
【請求項8】
前記上側固定部材の前記嵩上げ本体への取付けは、前記上側固定部材に設けられた貫通長孔と、前記嵩上げ本体に設けられた取付けネジ穴とを対向させた状態で前記上側固定部材側から頭付きボルトを前記貫通長孔に挿入し、そして、前記頭付きボルトの雄ネジを前記取付けネジ穴にネジ込むことによって行われ、
前記貫通長孔は、長軸が前記本設桁の前記一部の板厚方向に延伸している、請求項3から6の何れか一項に記載の嵩上げ台座。
【請求項9】
前記突起部材は、前記本設桁に溶接されたねじ付きスタッドである、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の嵩上げ台座。
【請求項10】
前記突起部材は、前記本設桁に溶接されたスタッドジベルである、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の嵩上げ台座。
【請求項11】
本設桁に設けられた突起部材を覆うようにして前記本設桁に嵩上げ本体を第1固定機構で固定し、
前記嵩上げ本体に仮受け桁を第2固定機構で固定し、
前記仮受け桁に覆工板を設置する、
ことを含む施工方法。
【請求項12】
前記突起部材は、前記本設桁に溶接されたねじ付きスタッドであり、
前記覆工板、前記仮受け桁、及び前記嵩上げ本体を撤去した後、前記ネジ付きスタッドに高ナットを介してボルトを連結することによりスタッドジベルを構築し、
前記スタッドジベルを内蔵するようにコンクリート床版を設置して前記本設桁と一体化した合成構造を構築する、請求項11に記載の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵩上げ台座及びそれを用いた施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁や建築物の構造技術として、コンクリート床版と鋼桁とをずれ止めにより結合して一体化させた合成構造が知られている。例えば、特許文献1には、ずれ止めとして、スタッドジベルを用いた合成構造が開示されている。
【0003】
一方、施工技術として、手延べ工法が知られている。例えば、特許文献2には、桟橋式橋梁の手延べ工法が開示されている。この手延べ工法は、主に、杭を設置する杭設置工程と、設置した杭間に本設桁を設置する本設桁設置工程と、設置された本設桁上に仮受け桁を設置する仮受け桁設置工程と、設置された仮受け桁上に覆工板を設置する覆工板設置工程とを含む1サイクル施工を重機により実施して1スパン分の構造体を構築する。そして、構築した構造体上に重機を前進させて1サイクル施工を繰り返し実施して全スパン分の骨組み構造本体の施工を完了する。その後、重機により覆工板及び仮受け桁を撤去し、床版の施工を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-6943号公報
【特許文献2】特開2002-256504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手延べ工法で合成構造を構築する場合、杭間に設置した本設桁の上フランジ上面にスタッドジベルが突出していると、その部分に設置する仮受け桁がスタッドジベルと干渉する。スタッドジベルは、通常、200~300mm程度の間隔で密に配置されているため、スタッドジベルの間隙に仮受け桁を設置することは困難である。
【0006】
そこで、全スパン分の橋梁本体の施工を完了した後に覆工板及び仮受け桁を撤去したうえで、本設桁の上フランジ上面にスタッドジベルを現場にて溶接し、その後、床版の施工を行う方法が取られていた。
【0007】
しかしながら、現場でのスタッドジベルの溶接は施工手間が多く、工事費の増大や工事期間が長くなることがあった。また、工場で塗装を施した本設桁にスタッドジベルの溶接を実施するため、塗装が焼けて損傷し、その手直しに再度の塗装が必要であり、工事費や工事期間が更に増加する。
【0008】
本発明の目的は、工事費及び工事期間を縮小することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様に係る嵩上げ台座は、
本設桁に設けられた突起部材を覆うようにして上記本設桁と仮受け桁との間に設置される嵩上げ本体と、
上記嵩上げ本体を上記本設桁に固定する第1固定機構と、
上記嵩上げ本体に上記仮受け桁を固定する第2固定機構と、
を備えている。
【0010】
(2)また、本発明の一態様に係る施工方法は、
本設桁に設けられた突起部材を覆うようにして上記本設桁に嵩上げ本体を第1固定機構で固定し、
前記嵩上げ本体に仮受け桁を第2固定機構で固定し、
前記仮受け桁に覆工板を設置することを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、工事費及び工事期間を縮小することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る嵩上げ台座を本設桁と仮受け桁との間に設置した状態を示す模式的平面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る嵩上げ台座を本設桁と仮受け桁との間に設置した状態を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図1のII-II線の矢印の方向から視た模式的側面図である。
【
図4】
図1のIII-III線の矢印の方向から視た模式的側面図である。
【
図5】
図4のIV-IV線の矢印の方向から視た模式的平面図である。
【
図6】
図4のV-V線の矢印の方向から視た模式的平面図である。
【
図7】本設桁の上フランジの上面にネジ付きスタッドが接合された状態を示す模式的斜視図である。
【
図8】
図7のネジ付きスタッドと共にスタッドジベルに含まれる頭付きボルトの模式的斜視図である。
【
図9】
図7のネジ付きスタッドに高ナットを介して頭付きボルトが連結されたスタッドジベルの外観構成を示す模式的斜視図である。
【
図10】桟橋式橋梁の手延べ工法を説明するための図であり、(A)は重機が発進基地にあるときの作業状態を示す模式的側面図、(B)は重機が骨組み本体の所定のスパン上にあるときの作業状態を示す模式的側面図、(C)は重機が骨組み本体の最終スパンの作業を行っている状態を示す模式的側面図である。
【
図11】手延べ工法を説明するための図であり、本設桁上に設置された仮受け桁の配置間隔を示す模式的側面図である。
【
図12A】本発明の一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法を説明するための模式的断面図である。
【
図12B】本発明の一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法を説明するための模式的断面図である。
【
図12C】本発明の一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法を説明するための模式的断面図である。
【
図12D】本発明の一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法を説明するための模式的断面図である。
【
図12E】本発明の一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法を説明するための模式的断面図である。
【
図12F】本発明の一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法を説明するための模式的断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る嵩上げ台座の変形例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
また、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものではない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
また、以下の実施形態では、空間内で互に直交する三方向において、同一平面内で互に直交する第1の方向及び第2の方向をそれぞれX方向、Y方向とし、第1の方向及び第2の方向のそれぞれと直交する第3の方向をZ方向とする。そして、以下の実施形態では、後述する本設桁と仮受け桁との積層方向をZ方向として説明する。
【0016】
〔一実施形態〕
この一実施形態では、本設桁とコンクリート床版とを接合して一体化させるずれ止めを採用し、かつ手延べ工法を採用する桟橋式橋梁の施工に嵩上げ台座を用いた一例について説明する。
【0017】
≪嵩上げ台座の概略構成≫
図1及び
図2Aに示すように、本発明の一実施形態に係る嵩上げ台座20は、桟橋式橋梁の施工において、X方向に延伸する本設桁3と、Y方向に延伸する仮受け桁5との間に設置される。本設桁3及び仮受け桁5の各々は、上フランジ3a,5a及び下フランジ3b,5bを有するH形の鋼材で構成されている。
【0018】
図2A、
図2B及び
図3に示すように、嵩上げ台座20は、本設桁3に設けられた突起部材としてのネジ付きスタッド11(
図3参照)を覆うようにして本設桁3と仮受け桁5との間に設置される嵩上げ本体21を備えている。また、嵩上げ台座20は、嵩上げ本体21を本設桁3に固定する第1固定機構31と、嵩上げ本体21に仮受け桁5を固定する第2固定機構41と、を備えている。
【0019】
<スタッドジベル>
図7に示すように、ネジ付きスタッド11は、本設桁3の上フランジ3aの上面に電気抵抗溶接によって接合されている。ネジ付きスタッド11は、
図9に示す組立式のスタッドジベル10を構成する部材(部品)の一部である。スタッドジベル10は、
図7から
図9に示すように、ネジ付きスタッド11と、頭部付きボルト12と、ネジ付きスタッド11に頭部付きボルト12を連結する高ナット13と、を含む。そして、このスタッドジベル10は、本設桁3の上フランジ3aの上面に溶接固定されたネジ付きスタッド11の雄ネジを高ナット13の雌ネジに高ナット13の一端側からねじ込むと共に、頭部付きボルト12の胴部の雄ネジを高ナット13の雌ネジに高ナット13の他端側からねじ込むことによって構築される。このスタッドジベル10は、後述するコンクリート床版15(
図12E参照)と本設桁3を結合し、一体化させて合成構造とするためのずれ止めである。ずれ止めとしては、様々なものが存在するが、この一実施形態では、一例として組立式のスタッドジベル10を用いている。
【0020】
<嵩上げ本体>
図2A、
図2B及び
図3に示すように、嵩上げ本体21は、上面に仮受け桁5が設置される嵩上げ板(胴部)22と、ネジ付きスタッド11を避けて本設桁3の上フランジ3aの上面に設置され、かつネジ付きスタッド11よりも高い高さで嵩上げ板22の上面側とは反対側に連結された複数の嵩上げ桁(脚部)23とを含む。嵩上げ板22は、平面視の形状が方形状の鋼板で構成され、この一実施形態では例えば長方形になっている。
【0021】
図2B、及び
図3から
図6に示すように、複数の嵩上げ桁23の各々の嵩上げ桁23は、平面視でネジ付きスタッド11を避けて一方向(X方向)に延伸し、かつ同一平面内において一方向と交差する他の方向(Y方向)に所定の間隔を空けて繰り返し配置されている(
図3、
図5及び
図6参照)。そして、各々の嵩上げ桁23は、各々の板厚方向と直交する方向から視た形状が長方形状の鋼板で構成され、各々の長手方向が嵩上げ板22の長手方向と一致する向きで嵩上げ板22に例えば溶接によって接合されている。この一実施形態において、嵩上げ桁23は、例えば4つ設けられている。4つのうちの2つの嵩上げ桁23は、嵩上げ板22の幅方向(Y方向)において互いに反対側に位置する2つの長辺側にそれぞれ個別に配置され、残りの2つの嵩上げ桁23は嵩上げ板22の長辺側に配置された2つの嵩上げ桁23の間に配置されている。
【0022】
上述の構成を含む嵩上げ本体21は、
図2A、及び
図3から
図6に示すように、本設桁3の上フランジ3aの上面に設けられたネジ付きスタッド11を覆った状態で本設桁3の上フランジ3aの上面に設置することができる。
【0023】
図2A及び
図2Bに示すように、嵩上げ本体21の嵩上げ板22には、この嵩上げ板22の板厚方向(Z方向)に貫通する貫通孔22aが設けられている。このような貫通孔22aを設けることにより、嵩上げ本体21の機械的強度を確保しつつ軽量化を図ることができる。なお、貫通孔22aに替えて凹部を設けてもよい。
【0024】
<第1固定機構>
図2Aから
図6に示すように、第1固定機構31は、嵩上げ本体21と、嵩上げ本体21に着脱自在に取り付けられ、かつ本設桁3の一部である上フランジ3aをこの上フランジ3aの板厚方向の両側から嵩上げ本体21とで挟持する下側固定部材32と、を含む。この一実施形態において、第1固定機構31は、本設桁3の延伸方向(X方向)と交差する方向として例えば直交する幅方向(Y方向)において、嵩上げ本体21のY方向の両側にそれぞれ下側固定部材32を着脱自在に取り付けるようになっている。下側固定部材32の取付けは、例えば頭付きボルト35及びナット36を含む締結機構の締結力によって行われる。また、下側固定部材32の取り外しは、締結機構の締結力を解除することによって行われる。
【0025】
(下側固定部材)
図2Aから
図6に示すように、下側固定部材32は、嵩上げ本体21の側面、具体的には嵩上げ本体21のY方向において外側に位置する嵩上げ桁23の側面に取り付けられる(固定される)第1固定板32aと、この第1固定板32aが嵩上げ本体21の側面(嵩上げ桁23の側面)に取付けられたとき、嵩上げ本体21の嵩上げ桁23側、具体的には嵩上げ板22の嵩上げ桁23側に配置される第2固定板32bと、を有する。第1固定板32a及び第2固定板32bの各々は、板厚方向と直交する平面形状が例えば長方形になっている。そして、下側固定部材32は、第1固定板32aと第2固定板32bとでなす内角が約90°となるように、第1固定板32a及び第2固定板32bの各々の一端側が連結され、外観形状がL字形状で構成されている。この下側固定部材32は、本設桁3の延伸方向(X方向)と直交する幅方向(Y方向)において、嵩上げ本体21の幅方向の両側に例えば1つずつ配置される。
【0026】
(下側固定部材の貫通長孔)
図2A、
図2B、
図4及び
図5に示すように、下側固定部材32の第1固定板32aには、第1固定板32aの板厚方向に貫通する貫通長孔34(図)が設けられている。この貫通長孔34は、長軸が嵩上げ本体21の高さ方向(嵩上げ桁23の高さ方向:Z方向)、具体的には本設桁3の上フランジ3aの板厚方向(Z方向)に延伸し、頭付きボルト35の胴部が挿通する。そして、この貫通長孔34は、第1固定板32aの長手方向(X方向)に所定の間隔を空けて繰り返し設けられている。この一実施形態では、これに限定されないが、例えば、3つの貫通長孔34が設けられている。貫通長孔34は、頭付きボルト35の頭部の外形寸法よりも小さい内径寸法で構成され、頭付きボルト35の頭部は挿通しない。
【0027】
(嵩上げ桁の貫通孔)
図2B及び
図3に示すように、4つの嵩上げ桁23のうち、嵩上げ本体21のY方向において外側に位置する2つ嵩上げ桁23の各々には、各々の板厚方向に貫通する貫通孔24が設けられている。この貫通孔24は、第1固定板32aの貫通長孔34に対応して例えば3つ設けられ、頭付きボルト35の胴部が挿通する。そして、この貫通孔24は、ナット36の外形寸法よりも小さい内径寸法で構成され、ナット36は挿通しない。この貫通孔24は、嵩上げ本体21と下側固定部材32との位置合わせの基準となる。
【0028】
(下側固定部材の締結固定)
図2A、
図2B、
図3、
図4及び
図6に示すように、2つの下側固定部材32うち、一方の下側固定部材32は、嵩上げ本体21の幅方向(Y方向)において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方の側面(嵩上げ桁23の側面)に、頭付きボルト35とナット36との締結よって取付けられる。この一方の下側固定部材32の取付けは、一方の下側固定部材32の第1固定板32aに設けられた貫通長孔34と、嵩上げ本体21の幅方向(Y方向)において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方の側面側に位置する嵩上げ桁23に設けられた貫通孔24とを互いに向かい合うように対向させた状態で頭付きボルト35を第1固定板32a側から貫通長孔34及び貫通孔24に挿入し、そして、貫通孔24から嵩上げ桁23の内側に突出する頭付きボルト35の胴部の雄ネジをナット36の雌ネジにネジ込むことによって行うことができる。また、この一方の下側固定部材32の取り外しは、頭部付きボルト35とナット36との締結を解除し、頭部付きボルト35を貫通孔24及び貫通長孔34から抜き取ることによって行うことができる。
なお、ナット36は、これに限定されないが、作業性を考慮して、予め嵩上げ桁23の内側に溶接にて固定しておくことが好ましい。
【0029】
図2B、
図3、
図4及び
図6に示すように、2つの下側固定部材32うち、他方の下側固定部材32は、嵩上げ本体21のY方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの他方の側面(嵩上げ桁23の側面)に、頭付きボルト35とナット36との締結によって取り付けられる。この他方の下側固定部材32の取付けも、他方の下側固定部材32の第1固定板32aに設けられた貫通長孔34と、嵩上げ本体21のY方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの他方の側面側に位置する嵩上げ桁23に設けられた貫通孔24とを互いに向かい合うように対向させた状態で頭付きボルト35を第1固定板32a側から貫通長孔34及び貫通孔24に挿入し、そして、貫通孔24から嵩上げ桁23の内側に突出する頭付きボルト35の胴部の雄ネジをナット36の雌ネジにねじ込むことによって行うことができる。また、この他方の下側固定部材32の取り外しも、頭部付きボルト35とナット36との締結を解除し、頭部付きボルト35を貫通孔24及び貫通長孔34から抜き取ることによって行うことができる。
【0030】
上述した構成を含む第1固定機構31は、本設桁3の上フランジ3aの上面側にネジ付きスタッド11を覆って設置された嵩上げ本体21の嵩上げ桁23と、下側固定部材32の第2固定板32bとで本設桁3の上フランジ3aをこの上フランジ3aの板厚方向の両側から挟持するように、下側固定部材32の第2固定板32bを嵩上げ本体21の側面(嵩上げ桁23の側面)に締結機構(頭付きボルト35及びナット36を含む締結機構)で取り付ける(締結固定する)ことにより、本設桁3の上面のネジ付きスタッド11を覆った状態で嵩上げ本体21を本設桁3の上面に固定することができる。
【0031】
また、第1固定機構31は、本設桁3の上フランジ3aに嵩上げ本体21を固定する際、下側固定部材32の第1固定板32aに設けられた貫通長孔34により、嵩上げ本体21の嵩上げ桁23と下側固定部材32の第2固定板32bとの間の間隔を本設桁3の上フランジ3aの板厚に応じて調整することができると共に、第1固定板32aの貫通長孔34と嵩上げ桁23の貫通孔24との位置合わせを容易に行うことができる。
【0032】
<第2固定機構>
図2Aから
図6に示すように、第2固定機構41は、嵩上げ本体21と、嵩上げ本体21に着脱自在に取り付けられ、かつ仮受け桁5の一部である下フランジ5bをこの下フランジ5bの板厚方向の両側から嵩上げ本体21とで挟持する上側固定部材42と、を含む。この一実施形態において、第2固定機構41は、仮受け桁5の延伸方向(Y方向)と交差する方向として例えば仮受け桁5の延伸方向と直交する幅方向(Y方向)において、嵩上げ本体21のX方向の両側にそれぞれ上側固定部材42を着脱自在に取り付けるようになっている。上側固定部材42の取付けは、下側固定部材32とは異なり、例えば頭付きボルト45及び取付けネジ穴46を含む締結機構によって行われる。
【0033】
(上側固定部材)
図2Aから
図6に示すように、上側固定部材42は、嵩上げ本体21の側面、具体的には嵩上げ板22の側面(板厚面)に取り付けられる(固定される)第1固定板42aと、この第1固定板42aが嵩上げ本体21の側面(嵩上げ板22の板厚側面)に取り付けられたとき、嵩上げ本体21の上面側、具体的には嵩上げ板22の上面側に配置される第2固定板42bとを有する。第1固定板42a及び第2固定板42bの各々は、板厚方向と直交する平面形状が例えば長方形になっている。そして、上側固定部材42は、第1固定板42aと第2固定板42bとでなす内角が約90°となるように、第1固定板42a及び第2固定板42bの各々の一端側が連結され、外観形状がL字形状で構成されている。この上側固定部材42は、仮受け桁5の延伸方向(Y方向)と直交する幅方向(X方向)において、嵩上げ本体21の長手方向の両側に例えば1つずつ配置される。
【0034】
(上側固定部材の貫通長孔)
図2Aから
図5に示すように、上側固定部材42の第1固定板42aには、第1固定板42aの板厚方向に貫通する貫通長孔44が設けられている。この貫通長孔44は、長軸が嵩上げ本体21の高さ方向(嵩上げ桁23の高さ方向:Z方向)、具体的には仮受け桁5の一部である下フランジ5bの板厚方向に延伸し、頭付きボルト45の胴部が挿通する。そして、この貫通長孔44は、第1固定板42aの長手方向(Y方向)に所定の間隔を空けて繰り返し設けられている。この一実施形態では、これに限定されないが、例えば、3つの貫通長孔44が設けられている。貫通長孔44は、頭付きボルト45の頭部の外形寸法よりも小さい内径寸法で構成され、頭付きボルト45の頭部は挿通しない。
【0035】
(嵩上げ板の取付けネジ穴)
図2B及び
図5に示すように、嵩上げ板22の長手方向(X方向)において互いに反対側に位置する2つの側面(板厚面)側には、各々の側面から内部に延伸する取付けネジ穴46が設けられている。この取付けネジ穴46は、第1固定板42aの貫通長孔44に対応して例えば3つ設けられ、頭付きボルト45の胴部の雄ネジがねじ込まれる。この取付けネジ穴46は、嵩上げ本体21と上側固定部材との位置合わせの基準となる。
【0036】
(上側固定部材の締結固定)
図2Aから
図5に示すように、2つの上側固定部材42うち、一方の上側固定部材42は、嵩上げ本体21の長手方向(X方向)において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方の側面(嵩上げ板22の板厚面)に、頭付きボルト45と取付けネジ穴46との締結よって取り付けられる。この一方の上側固定部材42の取付けは、一方の上側固定部材42の第1固定板42aに設けられた貫通長孔44と、嵩上げ本体21の長手方向(X方向)において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方の側面側に設けられた取付けネジ穴46とを互いに向かい合うように対向させた状態で頭付きボルト45を第1固定板42a側から貫通長孔44に挿入し、そして、第1固定板42aの内側に突出する頭付きボルト45の胴部の雄ネジを取付けネジ穴46の雌ネジにねじ込むことによって行うことができる。また、この一方の上側固定部材42の取り外しは、頭部付きボルト45と取付けネジ穴46との締結を解除し、頭部付きボルト45を取り付けネジ穴46及び貫通長孔44から抜き取ることによって行うことができる。
【0037】
図2Aから
図5に示すように、2つの上側固定部材42うち、他方の上側固定部材42は、嵩上げ本体21の長手方向(Y方向)において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの他方の側面(嵩上げ板22の板厚面)に、頭付きボルト45と取付けネジ穴46との締結によって取り付けられる。この他方の上側固定部材42の取付けも、他方の上側固定部材42の第1固定板42aに設けられた貫通長孔44と、嵩上げ本体21の長手方向(X方向)において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの他方の側面側に設けられた取付けネジ穴46とを互いに向かい合うように対向させた状態で頭付きボルト45を第1固定板42a側から貫通長孔44に挿入し、第1固定板42aから内側に突出する頭付きボルト45の胴部の雄ネジを取り付けネジ穴46にねじ込むことによって行うことができる。また、この一方の上側固定部材42の取り外しも、頭部付きボルト45と取付けネジ穴46との締結を解除し、頭部付きボルト45を取り付けネジ穴46及び貫通長孔44から抜き取ることによって行うことができる。
【0038】
上述した構成を含む第2固定機構41は、嵩上げ本体21の上面(嵩上げ板22の上面)に設置された仮受け桁5の下フランジ5bを、この下フランジ5bの板厚方向の両側から嵩上げ本体21の嵩上げ板22と上側固定部材42の第2固定板42bとで挟持するように、嵩上げ本体21の側面(嵩上げ板22の板厚側面)に上側固定部材42の第1固定板42aを締結機構(頭付きボルト45及び取付けネジ穴46を含む締結機構)で取り付ける(締結固定する)ことにより、仮受け桁5を嵩上げ本体21の上面(嵩上げ板22の上面)に固定することができる。即ち、この一実施形態の嵩上げ台座20は、本設桁3と仮受け桁5との間に介在され、本設桁3に仮受け桁5を固定することができる。
【0039】
また、第2固定機構41は、仮受け桁5を嵩上げ本体21の上面(嵩上げ板22の上面)に固定する際、上側固定部材42の第1固定板42aに設けられた貫通長孔44により、嵩上げ本体21の嵩上げ板22と上側固定部材42の第2固定板42bとの間の間隔を仮受け桁5の下フランジ5bの板厚に応じて調整することができると共に、第1固定板42aの貫通長孔44と嵩上げ板22の取付けネジ穴46との位置合わせを容易に行うことができる。
【0040】
≪手延べ工法≫
次に、この一実施形態に係る嵩上げ台座20を用いた桟橋式橋梁の施工方法を説明する前に、桟橋式橋梁の手延べ工法について、
図10及び
図11を用いて説明する。この一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法は、手延べ工法を用いる。
【0041】
図10は、桟橋式橋梁の手延べ工法を説明するための図であり、(A)は重機が発進基地にあるときの作業状態を示す模式的側面図、(B)は重機が骨組み本体の所定のスパン上にあるときの作業状態を示す模式的側面図、(C)は重機が骨組み本体の最終スパン分の作業を行っている状態を示す模式的側面図である。
図11は、桟橋式橋梁の手延べ工法を説明するための図であり、本設桁上に設置された仮受け桁の配置間隔を示す模式的側面図である。
【0042】
手延べ工法は、
図10(A)に示す発進基地A上に居る重機Cにより、杭1を設置する杭設置工程と、設置した杭1間に本設桁3を設置する本設桁設置工程と、設置された本設桁3上に仮受け桁5(
図11参照)を設置する仮受け桁設置工程と、設置された仮受け桁5上に覆工板7を設置する覆工板設置工程と、を含む1サイクル施工を実施して1スパン分の構造体を構築する。
【0043】
そして、構築した構造体上に重機Cを前進させて1スパン分の1サイクル施工を実施する。この重機Cの前進及び1サイクル施工を繰り返し実施して、
図10(B)及び
図11に示すように1スパン分の構造体が多数連結された骨組み構造体9を終着基地Bに向かって延長する。重機Cは覆工板7の上を移動する。
【0044】
そして、
図10(C)に示すように、最終スパンの1サイクル施工を実施して全スパンの骨組み構造体9を構築する。
そして、全スパンの骨組み構造体9を構築した後、図示していないが、重機Cにより、覆工板7及び仮受け桁5の撤去を終着基地B側から発進基地A側に向かって順次実施する。
そして、覆工板7及び仮受け桁5の撤去が完了した後、床版の施工を実施する。
【0045】
この手延べ工法を採用し、かつ本設桁とコンクリート床版とを接合して一体化させるずれ止めを採用する橋梁式の施工においては、この一実施形態に係る嵩上げ台座20を用いることが有用である。嵩上げ台座20は、杭1間に架設された本設桁3と仮受け桁5との間に設置される。
なお、この一実施形態では、重機Cとしてクレーンを用いているが、吊り上げ性能を満足し、かつクレーンよりも軽量な自走車、若しくは走行車に積載が可能な吊り上げ機を用いることが可能である。
【0046】
≪嵩上げ台座を用いた施工方法≫
次に、ずれ止め及び手延べ工法を採用し、かつこの一実施形態に係る嵩上げ台座20を用いた桟橋式橋梁の施工方法について、
図12Aから
図12E、並びに
図10及び
図11を用いて説明する。
【0047】
まず、
図12Aに示す本設桁3を準備する。この本設桁3は、上フランジ3aの上面に突起部材としてネジ付きスタッド11が工場にて電気抵抗溶接で接合されている。そして、本設桁3は、ネジ付きスタッド11の溶接箇所を含めて全体に錆び止めなどの塗装が施されている。ネジ付きスタッド11は、
図9に示す組立式のスタッドジベル10を構成する部品の一部であるが、このネジ付きスタッド11の替わりに非組立式のスタッドジベルを電気抵抗溶接で接合しても良い。この一実施形態ではネジ付きスタッド11を一例として用いている。
【0048】
次に、本設桁3を工場から施工現場に搬送し、
図10(A)に示すように杭1に本設桁3を設置した後、
図12Bに示すように、本設桁3の上フランジ3aの上面に設けられたネジ付きスタッド11を覆うようにして、本設桁3の上フランジ3aの上面に嵩上げ本体21を位置合わせして配置する。嵩上げ本体21は、嵩上げ桁23が本設桁3の上フランジ3a側に位置するように配置する。嵩上げ本体21の配置は、
図10及び
図11に示すように、基本的に重機Cによって行うことが好ましいが、嵩上げ本体21の重量が安全衛生管理で定める基準値の20kg以下であれば作業者が設置及び撤去を行っても良い。
【0049】
次に、
図12Cに示すように、ネジ付きスタッド11を覆った状態で本設桁3の上面(上フランジ3aの上面)に配置された嵩上げ本体21を本設桁3の上面(上フランジ3aの上面)に第1固定機構31で固定する。
第1固定機構31は、本設桁3の一部である上フランジ3aをこの上フランジ3aの板厚方向(Z方向)の両側から嵩上げ本体21の嵩上げ桁23と下側固定部材32の第2固定板32bとで挟持するように、下側固定部材32の第1固定板32aを嵩上げ本体21の側面(嵩上げ桁23の側面)に締結機構(頭付きボルト35及びナット36を含む締結機構)で取り付ける(締結固定)ことにより、嵩上げ本体21を本設桁3の上フランジ3aの上面に固定することができる。
【0050】
この工程において、嵩上げ本体21を本設桁3の上フランジ3aの上面に固定する際、下側固定部材32の第1固定板32aに設けられた貫通長孔34により、嵩上げ本体21の嵩上げ桁23と下側固定部材32の第2固定板32bとの間の間隔を本設桁3の上フランジ3aの板厚に応じて調整することができると共に、第1固定板32aの貫通長孔34と嵩上げ桁23の貫通孔24との位置合わせを容易に行うことができる。
【0051】
また、この工程において、嵩上げ本体21は本設桁3に第1固定機構31により固定されるので、嵩上げ本体21を本設桁3に設置した後の嵩上げ本体21と本設桁3との位置ずれを抑制することができる。
また、この工程において、下側固定部材32は、本設桁3の幅方向(Y方向)で嵩上げ本体213の幅方向の両側に例えば1つずつ配置されているので、嵩上げ本体21を本設桁3に強固に固定することができると共に、嵩上げ本体21と本設桁3との位置ずれをより一層抑制することができる。
【0052】
なお、嵩上げ本体21を本設桁3に第1固定機構31で固定する作業は、工場において行っても良いし、施工現場で行ってもよい。工場にて嵩上げ本体21を本設桁3に設置する場合は、施工現場での嵩上げ本体21の設置を省略できる。この一実施形態では、第1固定機構31による嵩上げ本体21の固定を施工現場にて行う場合を一例として説明している。
【0053】
次に、
図12Dに示すように、嵩上げ本体21の上面(嵩上げ板22の上面)に仮受け桁5を位置合わせして配置し、その後、
図12Eに示すように、仮受け桁5を嵩上げ本体21の上面(嵩上げ板22の上面)に第2固定機構41で固定する。
第2固定機構41は、仮受け桁5の下フランジ5bをこの下フランジ5bの板厚方向(Z方向)の両側から嵩上げ本体21の嵩上げ板22と上側固定部材42の第2固定板42bとで挟持するように、上側固定部材42の第1固定板42aを嵩上げ本体21の側面(嵩上げ板22の板厚側面)に締結機構(頭付きボルト45及び取付けネジ穴46)によって取り付ける(締結固定する)ことにより、仮受け桁5を嵩上げ本体21の上面(嵩上げ板22の上面)に固定することができる。
【0054】
この工程において、仮受け桁5を嵩上げ本体21の上面(嵩上げ板22の上面)に固定する際、上側固定部材42の第1固定板42aに設けられた貫通長孔44により、嵩上げ本体21の嵩上げ板22と上側固定部材42の第2固定板42bとの間の間隔を仮受け桁5の下フランジ5bの板厚に応じて調整することができると共に、第1固定板42aの貫通長孔44と嵩上げ板22の取付けネジ穴46との位置合わせを容易に行うことができる。
【0055】
また、この工程において、仮受け桁5は嵩上げ本体21に第2固定機構41により固定されるので、仮受け桁5を嵩上げ本体21に設置した後の仮受け桁5と嵩上げ本体21との位置ズレを抑制することができる。
また、この工程において、上側固定部材42は、仮受け桁5の幅方向(X方向)で嵩上げ本体21の長手方向の両側に例えば1つずつ配置されているので、仮受け桁5を嵩上げ本体21に強固に固定することができると共に、仮受け桁5と嵩上げ本体21との位置ズレをより一層抑制することができる。
【0056】
この工程により、第1及び第2固定機構31,41を含む嵩上げ台座20が構築される。そして、嵩上げ台座20は、本設桁3と仮受け桁5との間にネジ付きスタッド11を覆った状態で本設桁3及び仮受け桁5の双方に強固に固定される。
【0057】
次に、
図11に示すように、仮受け桁5の上面(上フランジ5aの上面)に覆工板7を設置する。
この工程により、杭1、本設桁3、仮受け桁5、及び覆工板7を含み、かつ新たに嵩上げ台座20を含む1スパン分の構造体が構築される。この1スパン分の構造体を構築する1サイクル施工は、従来の杭設置工程、本設桁設置工程、仮受け桁設置工程、覆工板設置工程を含むと共に、新たに嵩上げ台座設置工程を含む。
【0058】
次に、1スパン分の構造体を繰り返し施工して、
図10(B)及び
図11に示すように、1スパン分の構造体が多数連結された骨組み構造体9を終着基地Bに向かって延長する。そして、
図10(C)に示すように、最終スパン分の1サイクル施工を実施して全スパン分の骨組み構造体9を構築する。この時点での骨組み構造体9は、仮受け桁5、覆工板7及び嵩上げ台座20を含む。仮受け桁5の間隔は例えば2mである。
なお、最終スパンの1サイクル施工は、仮受け桁設置工程及び覆工板設置工程を含まなくてもよい。
【0059】
次に、全スパン分の骨組み構造体9を構築した後、図示していないが、重機Cにより、覆工板7及び仮受け桁5の撤去を終着基地B側から発進基地A側に向かって順次実施する。
仮受け桁5の撤去は、嵩上げ本体21から上側固定部材42を取り外し、上側固定部材42による仮受け桁5との固定を解除したうえで実施する。一方、嵩上げ本体21の撤去は、嵩上げ本体21から下側固定部材32を取り外し、下側固定部材32による本設桁3との固定を解除したうえで実施する。嵩上げ本体21の撤去は、嵩上げ本体21の配置と同様に、基本的に重機Cによって行うことが好ましいが、嵩上げ本体21の重量が安全衛生管理で定める基準値の20kg以下であれば作業者が行っても良い。
なお、嵩上げ本体21及び上側固定部材42の撤去は、落下防止処理を施したうえで、下側固定部材32による本設桁3との固定を解除することにより、仮受け桁5の撤去と同時に行うことが可能である。
【0060】
次に、覆工板7及び仮受け桁5の撤去が完了したら、
図9に示すように、ネジ付きスタッド11に高ナット13を介して頭付きボルト12を連結してスタッドジベル10を組み立てる。このスタッドジベル10は、本設桁3の上フランジ3aの上面に溶接固定されたネジ付きスタッド11の雄ネジを高ナット13の雌ネジに高ナット13の一端側からねじ込むと共に、頭部付きボルト12の胴部の雄ネジを高ナット13の雌ネジに高ナット13の他端側からねじ込むことによって組み立てることができる。
なお、高ナット13は、工場にてネジ付きスタッド11にネジ込んでおいてもよい。
【0061】
次に、スタッドジベル10の組み立てが完了したら、
図12Fに示すように、ずれ止めとしてのスタッドジベル10を内装(内設)したコンクリート床版15を、本設桁3の上面(上フランジ3aの上面)に形成し、コンクリート床版15と本設桁3とがスタッドジベル10により結合して一体化された合成構造を構築する。この工程により、桟橋式橋梁の本体がほぼ完成する。コンクリート床版15は打設により形成しても良く、また、予め成形され、かつスタッドジベル10の挿入孔を有するコンクリート床版を使用し、挿入孔にスタッドジベル10を挿入しながらコンクリート床版を本設桁3の上面に配置し、その後、コンクリート床版の挿入孔にモルタルを充填しても良い。
なお、覆工板7及び仮受け桁5の撤去、スタッドジベル10の組み立て、並びにコンクリート床版15の形成は、1スパン毎、若しくは複数のスパン毎に行ってもよい。
【0062】
≪一実施形態の主な効果≫
次に、この一実施形態の主な効果について説明する。
この一実施形態に係る嵩上げ台座20は、本設桁3に設けられた突起部材としてのネジ付きスタッド11を覆うようにして本設桁3と仮受け桁5との間に設置される嵩上げ本体21と、嵩上げ本体21を本設桁3に固定する第1固定機構31と、嵩上げ本体21に仮受け桁5を固定する第2固定機構41と、を備えている。この嵩上げ台座20を、ずれ止め及び手延べ工法を採用する桟橋式橋梁の施工で使用することにより、本設桁3に設けられたネジ付きスタッド11上に仮受け桁5を設置することが可能となる。このため、全スパン分の骨組み構造体9を構築し、覆工板7及び仮受け桁5を撤去した後に、ネジ付きスタッド11を本設桁3の上面(上フランジ3aの上面)に現場にて溶接する必要がない。また、ネジ付きスタッド11を現場にて溶接する必要がないので、ネジ付きスタッド11の溶接箇所を含めて本設桁3の全体に施された錆び止めなどの塗装を現場にて手直しする必要もない。したがって、この一実施形態に係る嵩上げ台座20によれば、ずれ止め及び手延べ工法を採用する桟橋式橋梁の工事費及び工事期間の短縮を図ることが可能となる。
【0063】
この一実施形態に係る嵩上げ台座20において、嵩上げ本体21は、本設桁3が設置される高上げ板22と、ネジ付きスタッド11を避けて本設桁3に設置され、かつネジ付きスタッド11よりも高い高さで嵩上げ板22に連結された複数の嵩上げ桁23と、含む。したがって、この一実施形態に係る嵩上げ台座20は、本設桁3の上面に設けられたネジ付きスタッド11と干渉することなく、本設桁3の上面(上フランジ3aの上面)に設置することが可能である。
【0064】
この一実施形態に係る嵩上げ台座20において、第1固定機構31は、嵩上げ本体21と、この嵩上げ本体21に着脱自在に取り付けられ、かつ本設桁3の一部である上フランジ3aを嵩上げ本体21とで挟持する下側固定部材32と、を含む。したがって、この一実施形態に係る嵩上げ台座20によれば、本設桁3の上面(上フランジ3aの上面)に嵩上げ本体21を固定することができ、嵩上げ本体を本設桁に設置した後の嵩上げ本体21と本設桁3との位置ずれを抑制することが可能となる。
また、下側固定部材32は、本設桁3の幅方向(Y方向)で嵩上げ本体21の幅方向の両側に例えば1つずつ配置されているので、嵩上げ本体21を本設桁3に強固に固定することができると共に、嵩上げ本体21と本設桁3との位置ずれをより一層抑制することができる。
【0065】
この一実施形態に係る嵩上げ台座20において、第2固定機構41は、嵩上げ本体21と、この嵩上げ本体21に着脱自在に取り付けられ、かつ仮受け桁5の一部である下フランジ5bをこの下フランジ5bの板厚方向の両側から嵩上げ本体21とで挟持する上側固定部材42と、を含む。したがって、この一実施形態に係る嵩上げ台座20によれば、仮受け桁5を嵩上げ本体21上面(嵩上げ板22の上面)に固定することができ、仮受け桁5を嵩上げ本体21に設置した後の仮受け桁5と嵩上げ本体21との位置ずれを抑制することができる。
また、上側固定部材42は、仮受け桁5の長手方向(X方向)で嵩上げ本体21の長手方向の両側に例えば1つずつ配置されているので、仮受け桁5を嵩上げ本体21に強固に固定することができると共に、仮受け桁5と嵩上げ本体21との位置ずれをより一層抑制することができる。
【0066】
この一実施形態に係る嵩上げ台座20において、下側固定部材32の貫通長孔34は、長軸が本設桁3の上フランジ3aの板厚方向(嵩上げ本体21の高さ方向)に延伸している。したがって、この一実施形態に係る嵩上げ台座20によれば、嵩上げ本体21を本設桁3の上フランジ3aの上面に固定する際、下側固定部材32の貫通長孔34により、嵩上げ本体21の嵩上げ桁23と下側固定部材32の第2固定板32bとの間の間隔を本設桁3の上フランジ3aの板厚に応じて調整することができると共に、第1固定板32aの貫通長孔34と嵩上げ桁23の貫通孔24との位置合わせを容易に行うことができる。
【0067】
この一実施形態に係る嵩上げ台座20において、上側固定部材42の貫通長孔44は、長軸が仮受け桁5の上フランジ3aの板厚方向(嵩上げ本体21の高さ方向)に延伸している。したがって、この一実施形態に係る嵩上げ台座20によれば、仮受け桁5を嵩上げ本体21の上面に固定する際、上側固定部材42の貫通長孔44により、嵩上げ本体21の嵩上げ板22と上側固定部材42の第2固定板42bとの間の間隔を仮受け桁5の下フランジ5bの板厚に応じて調整することができると共に、第1固定板42aの貫通長孔44と嵩上げ板22の取付けネジ穴46との位置合わせを容易に行うことができる。
【0068】
この一実施形態に係る嵩上げ台座20は、下側固定部材32を嵩上げ本体21に着脱自在に取り付けることが可能である。したがって、本設桁3の固定部(上フランジ3a)の厚さに対応して第1固定板32aの高さ(Z方向の幅)が異なる下側固定部材32を幾つか準備しておくことにより、貫通長孔34で対応が困難な場合でも、固定部(上フランジ3a)の厚さが異なる本設桁3に嵩上げ本体21を固定することが可能である。
また、この一実施形態に係る嵩上げ台座20は、上側固定部材42を嵩上げ本体21に着脱自在に取り付けることが可能である。したがって、仮受け桁5の固定部(下フランジ5b)の厚さに対応して第1固定板42aの高さ(Z方向の幅)が異なる上側固定部材42を幾つか準備しておくことにより、貫通長孔44で対応が困難な場合でも、固定部(下フランジ5b)の厚さが異なる仮受け桁5の固定が可能である。仮受け桁5は、大きな勾配を有する場合があり、嵩上げ本体21と仮受け桁5との間に調整部材(調整板)を入れることが必要となることがある。このように大きな勾配を有する仮受け桁5においても、嵩上げ本体21に仮受け桁5を固定することが可能である。
【0069】
この一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法は、本設桁3に設けられた突起部材としてのネジ付きスタッド11を覆うようにして本設桁3に嵩上げ本体21を第1固定機構31で固定し、嵩上げ本体21に仮受け桁5を第2固定機構41で固定し、仮受け桁5に覆工板7を設置する、ことを含む。これにより、本設桁3に設けられたネジ付きスタッド11上に仮受け桁5を設置することができるためネジ付きスタッド11を本設桁3の上面(上フランジ3aの上面)に現場にて溶接する必要がなく、また、工場でネジ付きスタッド11の溶接箇所を含めて本設桁3の全体に施された錆び止めなどの塗装を現場にて手直しする必要もない。したがって、この一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法によれば、ずれ止め及び手延べ工法で桟橋式橋梁を構築することができると共に、工事費及び工事期間の縮小を図ることが可能となる。
【0070】
この一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法は、組立方式のスタッドジベル10を採用している。そして、覆工板7、仮受け桁5、及び嵩上げ本体21を撤去した後、ネジ付きスタッド11に高ナット13を介して頭付きボルト12を連結してスタッドジベルを構築している。これにより、スタッドジベル10よりも低いネジ付きスタッド11の高さに合わせて嵩上げ本体21の高さを設定することができる。したがって、この一実施形態に係る桟橋式橋梁の施工方法によれば、嵩上げ本体21を軽量化することができる。
また、嵩上げ本体21を本設桁3から撤去した後、スタッドジベル10を構築する(組み立てる)ので、コンクリート床版15と本設桁3とをスタッドジベル10により接合して一体化させた合成構造の強度を確保することができると共に、嵩上げ本体21を軽量化することができる。
【0071】
〔一実施形態の変形例〕
図13に示すように、嵩上げ本体21は、第1嵩上げ部21Aと第2嵩上げ部21Bとに分割し、この第1及び第2嵩上げ部21A,21Bに下側固定部材32を取り付けることによって一体に連結される構造としてもよい。
図13では、一例として嵩上げ本体21を2つに分割した場合を示しているが、3つ以上に分割してもよい。このように、嵩上げ本体21を分割構造とすることにより、人力による嵩上げ本体21の設置及び撤去が可能となる。
【0072】
〔その他の実施形態〕
上述の一実施形態では、組立式のスタッドジベル10を用いた場合を説明したが、本発明は、組立式のスタッドジベル10に限定されるものではない。例えば、本発明は、非組立式のスタッドジベルを用いることができる。また、本発明は、棒状のスタッドジベルに限定されるものではなく、例えば馬締形ジベルや異形ジベルなどの様々な形態のずれ止めを用いることができる。
【0073】
また、上述の一実施形態では、桟橋式橋梁の施工方法、及び桟橋式橋梁の施工方法に用いられる嵩上げ台座に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、本設桁と床版とをずれ止めにより結合して一体化させた結合構造を有する橋梁や建築物の施工方法、及びその施工方法に用いられる嵩上げ台座に適用することができる。
【0074】
以上、本発明を上記一実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1…杭
3…本設桁
5…仮受け桁
7…覆工板
9…骨組み構造体
10…スタッドジベル
11…ねじ付きスタッド
12…頭付きボルト
13…高ナット
15…コンクリート床版
20…嵩上げ台座
21…嵩上げ本体
21A…第1嵩上げ部
21B…第2嵩上げ部
22…嵩上げ板(胴部)
23…嵩上げ桁(脚部)
24…貫通孔
26…取付けネジ穴
31…第1固定機構
32…下側固定部材
32a…第1固定板
32b…第2固定板
34…貫通長孔
35…頭付きボルト
36…ナット
41…第2固定機構
42…上側固定部材
42a…第1固定板
42b…第2固定板
44…貫通長孔
45…頭付きボルト
A…発進基地
B…終着基地
C…重機