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特開2023-32127有機UVフィルター及び球状疎水性シリカを含むW/O型組成物
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  • 特開-有機UVフィルター及び球状疎水性シリカを含むW/O型組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032127
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】有機UVフィルター及び球状疎水性シリカを含むW/O型組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20230302BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230302BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230302BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230302BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230302BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230302BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230302BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/06
A61Q19/00
A61Q1/00
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/49
A61K8/898
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021138057
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅 友美
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB242
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC262
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC372
4C083AC422
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC642
4C083AC852
4C083AC902
4C083AC912
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD262
4C083AD662
4C083BB23
4C083BB26
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE06
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】有機UVフィルターを含むが、容易に塗り広げることができ、同時に組成物のUV吸光度を強化する、W/Oエマルションの形態の組成物を提供すること。
【解決手段】(a)少なくとも1種の有機UVフィルター、(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカ、及び(c)水を含む、W/Oエマルションの形態の組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の有機UVフィルター、
(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカ、及び
(c)水
を含む、W/Oエマルションの形態の組成物。
【請求項2】
(a)有機UVフィルターが、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサラート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン4-メチルベンジリデンカンファー、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4-ビス-(n-ブチル4'-アミノベンザルマロネート)-6-[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチル-シリル)-オキシ]-ジシロキサニル}プロピル)アミノ]-s-トリアジン、2,4,6-トリス-(ジフェニル)-トリアジン、2,4,6-トリス-(テルフェニル)-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の(a)有機UVフィルターの量が、組成物の総質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~35質量%、より好ましくは10質量%~30質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(b)球状疎水性シリカが、画像解析法によって決定された、0.8以上、好ましくは0.82以上の、平均真円度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(b)球状疎水性シリカが、湿潤点で測定された、2ml/g以上、好ましくは3ml/g以上、より好ましくは4ml/g以上、最も好ましくは5ml/g以上の吸油能を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(b)球状疎水性シリカが、BET法によって決定された、200m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上の比表面積を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(b)球状疎水性シリカが、BJH法によって決定された、1ml/g以上、好ましくは2ml/g以上、より好ましくは3ml/g以上の細孔容積を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(b)球状疎水性シリカが、BJH法によって決定された、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上のピーク細孔半径を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(b)球状疎水性シリカが、0.5μm~30μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは2μm~15μmの平均粒径を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の(b)球状疎水性シリカの量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~15質量%、好ましくは0.5質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中の(a)UVフィルターの量の(b)球状疎水性シリカの量に対する質量比が、3~35、好ましくは5~30、より好ましくは10~25である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
好ましくは極性油、非極性油、及びこれらの混合物から選択される、より好ましくは炭化水素油、シリコーン油、エステル油及びこれらの混合物から選択される、更により好ましくはイソドデカン、イソヘキサデカン、ジメチコン、セバシン酸ジイソプロピル、及びこれらの混合物から選択される、(d)少なくとも1種の油を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
化粧用組成物、好ましくは皮膚化粧用組成物、より好ましくはスキンケア又はメイクアップ化粧用組成物である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、
美容方法。
【請求項15】
(a)少なくとも1種の有機UVフィルター及び(c)水を含むW/Oエマルションの形態の組成物中における(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカの使用であって、組成物のUV吸光度を強化し、組成物の伸展性を改善するための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機UVフィルター及び球状疎水性シリカを含む、W/Oエマルションの形態の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、UVフィルターは、UV(紫外)線からの防御を提供するために利用される。皮膚をUV-A及び/又はUV-Bにから防御するための多数の抗日光組成物が、これまでに提案されている。
【0003】
これらの抗日光組成物は、有害なUV照射を選択的に吸収できる、1種又は複数の不溶性及び/又は脂溶性及び/又は水溶性、有機及び/又は無機のUVフィルターを様々な濃度で含有する、水中油型エマルション若しくは油中水型エマルション、ゲル又は非水性製品の形態をとる場合が多い。これらのUVフィルター及びその量は、所望の紫外線防御指数(SPF)の関数として選択される。
【0004】
SPFは、UV遮蔽剤ありで紅斑誘発閾値に達するのに必要なUV照射線量のUV遮蔽剤なしで紅斑誘発閾値に達するのに必要なUV照射線量に対する比を数学的に表している。
【0005】
高いUV吸光度の組成物によって表すことができる高いSPFを有する組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】USP 5240975
【特許文献2】EP-669,323
【特許文献3】米国特許第2,463,264号
【特許文献4】米国特許第5,237,071号
【特許文献5】米国特許第5,166,355号
【特許文献6】GB-2,303,549
【特許文献7】DE-197,26,184
【特許文献8】EP-893,119
【特許文献9】WO 93/04665
【特許文献10】DE-19855649
【特許文献11】JP-A-2014-088307
【特許文献12】JP-A-2014-218433
【特許文献13】JP-A-2018-177620
【特許文献14】仏国特許第1,492,597号
【特許文献15】米国特許第4,131,576号
【特許文献16】EP-A-0 750 899
【特許文献17】EP-A-1 069 172
【特許文献18】EP-A-0 173 109
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Barrett, E. P.; Joyner, L. G.; Halenda, P. P.、J. Am. Chem. Soc. 73、373 (1951)
【非特許文献2】Walter NollのChemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Press
【非特許文献3】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【非特許文献4】Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、抗日光組成物等の組成物中の有機UVフィルターの使用は、組成物を塗り広げるのを難しくし、組成物を使用したときの感触を重くする。
【0009】
したがって、本発明の目的は、有機UVフィルターを含むが、容易に塗り広げることができ、同時に組成物のUV吸光度を強化する、W/Oエマルションの形態の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種の有機UVフィルター、
(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカ、及び
(c)水
を含む、W/Oエマルションの形態の組成物によって達成することができる。
【0011】
(a)有機UVフィルターは、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサラート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン4-メチルベンジリデンカンファー、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4-ビス-(n-ブチル4'-アミノベンザルマロネート)-6-[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチル-シリル)-オキシ]-ジシロキサニル}プロピル)アミノ]-s-トリアジン、2,4,6-トリス-(ジフェニル)-トリアジン、2,4,6-トリス-(テルフェニル)-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0012】
本発明による組成物中の(a)有機UVフィルターの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~35質量%、より好ましくは10質量%~30質量%であってもよい。
【0013】
(b)球状疎水性シリカは、画像解析法によって決定された、0.8以上、好ましくは0.82以上の、平均真円度を有し得る。
【0014】
(b)球状疎水性シリカは、湿潤点で測定された、2ml/g以上、好ましくは3ml/g以上、より好ましくは4ml/g以上、最も好ましくは5ml/g以上の吸油能を有し得る。
【0015】
(b)球状疎水性シリカは、BET法によって決定された、200m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上の比表面積を有し得る。
【0016】
(b)球状疎水性シリカは、BJH法によって決定された、1ml/g以上、好ましくは2ml/g以上、より好ましくは3ml/g以上の細孔容積を有し得る。
【0017】
(b)球状疎水性シリカは、BJH法によって決定された、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上のピーク細孔半径を有し得る。
【0018】
(b)球状疎水性シリカは、0.5μm~30μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは2μm~15μmの平均粒径を有し得る。
【0019】
本発明による組成物中の(b)球状疎水性シリカの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~15質量%、好ましくは0.5質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%であってもよい。
【0020】
本発明による組成物中の(a)UVフィルターの量の(b)球状疎水性シリカの量に対する質量比は、3~35、好ましくは5~30、より好ましくは10~25であってもよい。
【0021】
本発明による組成物は、好ましくは極性油、非極性油、及びこれらの混合物から選択され得る、より好ましくは炭化水素油、シリコーン油、エステル油及びこれらの混合物から選択され得る、更により好ましくはイソドデカン、イソヘキサデカン、ジメチコン、セバシン酸ジイソプロピル、及びこれらの混合物から選択され得る(d)少なくとも1種の油を更に含んでもよい。
【0022】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくは皮膚化粧用組成物、より好ましくはスキンケア又はメイクアップ化粧用組成物であってもよい。
【0023】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、美容方法に関する。
【0024】
本発明はまた、(a)少なくとも1種の有機UVフィルター及び(c)水を含むW/Oエマルションの形態の組成物中における(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカの使用であって、組成物のUV吸光度を強化し、組成物の伸展性を改善するための使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1及び2並びに比較例1~3による各組成物のUV吸光度のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
鋭意検討の結果、本発明者らは、有機UVフィルターを含むが、容易に塗り広げることができ、同時に組成物のUV吸光度を強化する、W/Oエマルションの形態の組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0027】
そのため、本発明による組成物は、W/Oエマルションの形態にあり、
(a)少なくとも1種の有機UVフィルター、
(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカ、及び
(c)水
を含む。
【0028】
本発明による組成物は、改善又は強化されたUV吸光度をもたらすことができ、これは、改善又は強化されたUV線防御を反映する。
【0029】
一方、本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質上に容易に塗り広げることができ、組成物の使用時の改善又は強化された伸展性を反映する。
【0030】
そのため、本発明による組成物は、強力なUV防御を提供しながら、皮膚等のケラチン物質上に容易に塗り広げることができる。
【0031】
更に、本発明による組成物は、皮脂を捕捉することができる。したがって、本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質上のテカリを低減でき、例えば、毛穴及びしわ等の皮膚上の粗さを目立たなくすることができる。これに応じて、本発明による組成物は、光学的マット感付与効果ももたらすことができる。
【0032】
以下、本発明による組成物及び方法等をより詳細に説明する。
【0033】
[有機UVフィルター]
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の有機UVフィルターを含む。2種以上の(a)有機UVフィルターを使用する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
(a)有機UVフィルターは、疎水性であっても水不溶性であってもよい。(a)有機UVフィルターは、油性成分として機能し得る。そのため、(a)有機UVフィルターは、連続相又は外相のW/O型組成物を構成し得る。
【0035】
(a)有機UVフィルターは、UV-A及び/又はUV-B域内で活性であり得る。(a)有機UVフィルターは、親油性又は油溶性であり得る。
【0036】
(a)有機UVフィルターは、固体であっても液体であってもよい。「固体」及び「液体」という用語は、それぞれ、1気圧下の25℃で固体及び液体を意味する。
【0037】
(a)有機UVフィルターは、アントラニル酸化合物;ジベンゾイルメタン化合物;ケイ皮酸化合物;サリチル酸化合物;カンファー化合物;ベンゾフェノン化合物;β,β-ジフェニルアクリレート化合物;トリアジン化合物;ベンゾトリアゾール化合物;ベンザルマロネート化合物;ベンゾイミダゾール化合物;イミダゾリン化合物;ビス-ベンゾアゾリル化合物;p-アミノ安息香酸(PABA)化合物;メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物;ベンゾオキサゾール化合物;遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン;α-アルキルスチレンに由来する二量体;4,4-ジアリールブタジエン化合物;グアイアズレン及びその誘導体;ルチン及びその誘導体;並びにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0038】
(a)有機UVフィルターの例としては、下記にそのINCI名で示すもの、及びそれらの混合物を挙げることができる。
- アントラニル酸化合物:商標「Neo Heliopan MA」でHaarmann and Reimer社より市販されているアントラニル酸メンチル。
- ジベンゾイルメタン化合物:具体的には商標「Parsol 1789」でHoffmann-La Roche社より市販されているブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びイソプロピルジベンゾイルメタン。
- ケイ皮酸化合物:具体的には商標「Parsol MCX」でHoffmann-La Roche社により市販されているメトキシケイ皮酸エチルヘキシル;メトキシケイ皮酸イソプロピル;メトキシケイ皮酸イソプロポキシ;商標「Neo Heliopan E 1000」でHaarmann and Reimer社により市販されているメトキシケイ皮酸イソアミル;シノキセート(2-エトキシエチル-4-メトキシシンナメート);メトキシケイ皮酸DEA;メチルケイ皮酸ジイソプロピル;及びジメトキシケイ皮酸エチルヘキサン酸グリセリル。
- サリチル酸化合物:商標「Eusolex HMS」でRona/EM Industries社により市販されているホモサラート(サリチル酸ホモメンチル);商標「Neo Heliopan OS」でHaarmann and Reimer社により市販されているサリチル酸エチルヘキシル;サリチル酸グリコール;サリチル酸ブチルオクチル;サリチル酸フェニル;商標「Dipsal」でScher社により市販されているサリチル酸ジプロピレングリコール;及び商標「Neo Heliopan TS」でHaarmann and Reimer社により市販されているサリチル酸TEA。
- カンファー化合物、特にベンジリデンカンファー誘導体:商標「Mexoryl SD」でChimex社により製造されている3-ベンジリデンカンファー;商標「Eusolex 6300」でMerck社により市販されている4-メチルベンジリデンカンファー;商標「Mexoryl SL」でChimex社により製造されているベンジリデンカンファースルホン酸;商標「Mexoryl SO」でChimex社により製造されているカンファーベンザルコニウムメトサルフェート;及び商標「Mexoryl SW」でChimex社により製造されているポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー。
- ベンゾフェノン化合物:商標「Uvinul 400」でBASF社により市販されているベンゾフェノン-1(2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン);商標「Uvinul D50」でBASF社により市販されているベンゾフェノン-2(テトラヒドロキシベンゾフェノン);商標「Uvinul M40」でBASF社により市販されているベンゾフェノン-3(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)又はオキシベンゾン;商標「Uvinul MS40」でBASF社により市販されているベンゾフェノン-4(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸);ベンゾフェノン-5(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム);商標「Helisorb 11」でNorquay社により市販されているベンゾフェノン-6(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン);商標「Spectra-Sorb UV-24」でAmerican Cyanamid社により市販されているベンゾフェノン-8;商標「Uvinul DS-49」でBASF社により市販されているベンゾフェノン-9(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸二ナトリウム);ベンゾフェノン-12、及びn-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート(BASF社によるUVINUL A+)。
- β,β-ジフェニルアクリレート化合物:特に商標「Uvinul N539」でBASF社により市販されているオクトクリレン;及び特に商標「Uvinul N35」でBASF社により市販されているエトクリレン。
- トリアジン化合物:商標「Uvasorb HEB」でSigma 3V社により市販されているジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、商標「TINOSORB S」でCIBA GEIGY社により市販されているビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及び商標「UVINUL T150」でBASF社により市販されているエチルヘキシルトリアゾン。
- ベンゾトリアゾール化合物、特に、フェニルベンゾトリアゾール誘導体:分枝状及び直鎖状の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノ;並びにUSP 5240975に記載されているもの。
- ベンザルマロネート化合物: 4'-メトキシベンザルマロン酸ジネオペンチル、及びベンザルマロネート官能基を含むポリオルガノシロキサン、例えば、商標「Parsol SLX」でHoffmann-LaRoche社により市販されているポリシリコーン-15。
- ベンゾイミダゾール化合物、特に、フェニルベンゾイミダゾール誘導体。
- イミダゾリン化合物:エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオネート。
- ビス-ベンゾアゾリル化合物: EP-669,323及び米国特許第2,463,264号に記載の誘導体。
- パラ-アミノ安息香酸化合物: PABA(p-アミノ安息香酸)、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、ジメチルPABAペンチル、特に商標「Escalol 507」でISP社により市販されているジメチルPABAエチルヘキシル、グリセリルPABA、及び商標「Uvinul P25」でBASF社により市販されているPEG-25 PABA。
- メチレンビス-(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物、例えば商標「Mixxim BB/200」でFairmount Chemical社により固体形態にて市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-フェノール]、商標「Tinosorb M」でBASF社により、又は商標「Mixxim BB/100」でFairmount Chemical社により水性分散体中の微粉化形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、並びに米国特許第5,237,071号及び第5,166,355号、GB-2,303,549、DE-197,26,184及びEP-893,119に記載されている誘導体、並びに
下記に示すような、商標「Silatrizole」でRhodia Chimie社により、又は商標「Mexoryl XL」でL'Oreal社により市販されているドロメトリゾールトリシロキサン。
【0039】
【化1】
【0040】
- ベンゾオキサゾール化合物:商標Uvasorb K2AでSigma 3V社により市販されている2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン。
- 遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン: WO 93/04665に記載のシリコーン。
- α-アルキルスチレンに由来する二量体: DE-19855649に記載の二量体。
- 4,4-ジアリールブタジエン化合物: 1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン。
【0041】
(a)有機UVフィルターは、
ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサラート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン4-メチルベンジリデンカンファー、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4-ビス-(n-ブチル4'-アミノベンザルマロネート)-6-[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]-ジシロキサニル}プロピル)アミノ]-s-トリアジン、2,4,6-トリス-(ジフェニル)-トリアジン、2,4,6-トリス-(テルフェニル)-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい:。
【0042】
本発明による組成物中の(a)有機UVフィルターの量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上でよい。
【0043】
本発明による組成物中の(a)有機UVフィルターの量は、組成物の総質量に対して、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下でよい。
【0044】
本発明による組成物中の(a)有機UVフィルターの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~40質量%、好ましくは5質量%~35質量%、より好ましくは10質量%~30質量%であってもよい。
【0045】
[球状疎水性シリカ]
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカを含む。2種以上の(b)球状疎水性シリカが使用される場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
(b)球状疎水性シリカは多孔質であることが好ましい。換言すると、(b)球状疎水性シリカはエアロゲルであることが好ましい。
【0047】
エアロゲルは、多孔率が高い材料である。本明細書において、シリカエアロゲルは、一般的にシリカの固体網状構造を維持しながら湿潤シリカゲルを乾燥することによって該湿潤シリカゲルに含まれる媒体を空気と置き換えることにより得られる多孔質構造を有する固体シリカを指す。多孔率は、材料の見掛け体積に含まれる空気の量を体積百分率で表したものである。エアロゲルの形態である(b)球状疎水性シリカは、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の多孔率を有し得る。
【0048】
(b)球状疎水性シリカは、粒子の形態である。(b)球状疎水性シリカは、各粒子の形状が球状であることを特徴とする。この球状の形状により、(b)球状疎水性シリカは、良好な滑らかさをもたらすことができる。(b)球状疎水性シリカの球面度は、平均真円度によって決定することができる。
【0049】
(b)球状疎水性シリカは、0.8以上、好ましくは0.82以上の平均真円度を有し得る。(b)球状疎水性シリカは、1未満、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、更により好ましくは0.97以下、更により好ましくは0.96以下、最も好ましくは0.95以下の平均真円度を有し得る。
【0050】
「平均真円度」は、画像解析法によって決定することができる。特に、「平均真円度」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した二次電子検出によって1000倍率で観察された2000以上の粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の画像解析によって得られる真円度の算術平均であり得る。
【0051】
各粒子の「真円度」は、以下の式
C=4πS/L2
[式中、Cは真円度を表し、Sは画像中の粒子の面積(投影面積)を表し、Lは画像中の粒子の周囲(外周)の長さを表す]
によって決定される値である。平均真円度が1に近づくと、各粒子の形状はより球状になる。
【0052】
(b)球状疎水性シリカの場合、「疎水性」という用語は、シリカ粒子が水中に分散しにくいことを意味する。より具体的には、この用語は、シリカ粒子1g及びイオン交換水100gを瓶に添加し、瓶を10秒以上かき混ぜ又は攪拌し、瓶を静置した後で、シリカ粒子相及び水性相が完全に分離することを意味する。したがって、本発明の1つの特定の実施形態において、(b)球状疎水性シリカは吸水性を示さない。
【0053】
本発明に従って使用することができる(b)球状疎水性シリカは、好ましくはシリル化シリカ型(INCI名:シリカシリレート)である。最も好ましくは、(b)球状疎水性シリカは、JP-A-2014-088307、JP-A-2014-218433、又はJP-A-2018-177620に記載されているものであってもよい。
【0054】
疎水性は、疎水化剤を、シリカの表面上に存在する、以下の式:
≡Si-OH
(式中、記号「≡」は、Si原子の残りの3の原子価を表す)
で表されるシラノール基と反応させ、それによってシラノール基を以下の式:
(≡Si-O-)(4-n)SiRn
(式中、nは1~3の整数であり、各Rは独立してヒドロカルビル基であり、nが2以上である場合、2つ以上のRは互いに同一であっても異なっていてもよい)
で表される基に変換することによって得ることができる。
【0055】
疎水化剤は、シリル化剤であってもよい。したがって、1つの好ましい実施形態によれば、(b)球状疎水性シリカにおいて、シリカ粒子は、シリル化によって表面で修飾され得る。シリル化剤の例としては、以下の式(1)~(3)の1つを有する処理剤を挙げることができる。
【0056】
式(1):
RnSiX(4-n)
[式中、nは1~3の整数を表し、Rはヒドロカルビル基を表し、Xは、ヒドロキシル基を有する化合物との反応中にSi原子との結合を切断することによって分子から脱離することができる基(すなわち、脱離基)を表し、nが2以上である場合、各Rは異なっていてもよく、nが2以下である場合、各Xは異なっていてもよい]。
【0057】
式(2):
【0058】
【化2】
【0059】
(式中、R1はアルキレン基を表し、R2及びR3は独立してヒドロカルビル基を表し、R4及びR5は独立して水素原子又はヒドロカルビル基を表す)。
【0060】
式(3):
【0061】
【化3】
【0062】
(式中、R6及びR7は独立してヒドロカルビル基を表し、mは3~6の整数を表し、R6が2つ以上存在する場合、各R6は異なっていてもよく、R7が2つ以上存在する場合、各R7は異なっていてもよい)。
【0063】
上式(1)中、Rは、ヒドロカルビル基、好ましくは1~10の炭素数を有するヒドロカルビル基、より好ましくは1~4の炭素数を有するヒドロカルビル基、特に好ましくはメチル基である。
【0064】
Xで表される脱離基の例としては、塩素及び臭素等のハロゲン原子、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基、-NH-SiR3(式中、Rの定義は、式(1)中のRの定義と同じである)によって表される基を挙げることができる。
【0065】
上式(1)で表される疎水化剤の具体例としては、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、及びヘキサメチルジシラザンが挙げられる。
【0066】
最も好ましくは、好都合な反応性の観点から、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、及び/又はヘキサメチルジシラザンを使用してもよい。
【0067】
Si原子とシリカ骨格上のシラノール基との結合の数は、脱離基Xの数(4-n)に応じて変動する。例えば、nが2の場合、以下の結合が生じる:
(≡Si-O-)2SiR2
【0068】
nが3の場合、以下の結合が生じる:
≡Si-O-SiR3
【0069】
このように、シラノール基はシリル化され得、それによって疎水化が行われ得る。
【0070】
上式(2)中、R1は、アルキレン基、好ましくは2~8の炭素数を有するアルキレン基、特に好ましくは2~3の炭素数を有するアルキレン基であってもよい。
【0071】
上式(2)中、R2及びR3は独立してヒドロカルビル基であり、式(1)中のRと同じ好ましい基を挙げることができる。R4は、水素原子又はヒドロカルビル基を表し、ヒドロカルビル基である場合、上式(1)中のRと同じ好ましい基を挙げることができる。シリカのゲルを式(2)で表される化合物(環状シラザン)で処理すると、シラノール基との反応によってSi-N結合の切断が生じ、したがってゲル中のシリカ骨格の表面上で以下の結合が生じる:
(≡Si-O-)2SiR2R3
【0072】
このように、上式(2)の環状シラザンによってシラノール基をシリル化することもでき、それによって疎水化が行われ得る。
【0073】
上式(3)によって表される環状シラザンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシラザン及びオクタメチルシクロテトラシラザンが挙げられる。
【0074】
上式(3)中、R6及びR7は独立してヒドロカルビル基であり、上式(2)中のRと同じ好ましい基を挙げることができる。mは、3~6の整数を表す。シリカのゲルを式(3)で表される化合物(環状シロキサン)で処理すると、ゲル中のシリカ骨格の表面上で以下の結合が生じる:
(≡Si-O-)2SiR6R7
【0075】
このように、上式(3)の環状シロキサンによってシラノール基をシリル化することもでき、それによって疎水化が行われ得る。
【0076】
上式(3)によって表される環状シロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びデカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。
【0077】
(b)球状疎水性シリカは、シリカのゾルを生成し、ゾルをゲルに変え、ゲルをエージングし、エージングしたゲルを洗浄し、洗浄ゲル中の水を溶媒に置き換え、ゲルを疎水化剤で処理し、疎水化シリカを乾燥することによって調製することができる。
【0078】
(b)球状疎水性シリカは、BET法によって決定された、200m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上の比表面積を有し得、かつ/又はBET法によって決定された、1,200m2/g以下、好ましくは1,000m2/g以下、より好ましくは800m2/g以下の比表面積を有し得る。
【0079】
本発明において、「BET法によって決定された比表面積」は、1kPa以下の減圧下、200℃で3時間以上、測定用試料を乾燥した後、液体窒素温度で窒素吸着側のみの吸着等温線を測定し、BET法によって吸着等温線を分析することによって決定される値を意味する。分析に使用する圧力の範囲は、0.1~0.25の相対応力である。
【0080】
(b)球状疎水性シリカは、BJH法によって決定された、1ml/g以上、好ましくは2ml/g以上、より好ましくは3ml/g以上の細孔容積を有し得、かつ/又はBJH法によって決定された、10ml/g以下、好ましくは8ml/g以下、より好ましくは7ml/g以下の細孔容積を有し得る。
【0081】
(b)球状疎水性シリカは、BJH法によって決定された、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上のピーク細孔半径を有し得、かつ/又はBJH法によって決定された、50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下のピーク細孔半径を有し得る。
【0082】
「BJH法によって決定された細孔容積」は、BJH法(Barrett, E. P.; Joyner, L. G.; Halenda, P. P.、J. Am. Chem. Soc. 73、373 (1951))によって、上記の「BET法によって決定された比表面積」で説明したものと同じやり方で得られる窒素吸着側の吸着等温線を分析することによって得られる1nm~100nmの細孔半径を有する細孔に由来する細孔容積を指す。「BJH法によって決定されたピーク細孔半径」は、BJH法により、上記と同じやり方で得られる窒素吸着側の吸着等温線を分析することによって得られる細孔半径の対数による累積細孔容積の微分を縦軸とし、細孔半径を横軸としてプロットした細孔分布曲線(容積分布曲線)中のピークを生む細孔半径の値を指す。
【0083】
(b)球状疎水性シリカは、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上の平均粒径を有していてもよく、かつ/又は30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下の画像解析法による平均粒径を有していてもよい。したがって、(b)球状疎水性シリカは、0.5μm~30μm、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは2μm~15μmの平均粒径を有し得る。好ましい実施形態において、(b)球状疎水性シリカは、6μm~16μm、好ましくは7μm~14μm、より好ましくは8μm~12μmの平均粒径を有し得る。
【0084】
ここでの「平均粒径」は、画像解析法によって測定することができる。特に、「平均粒径」の値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した二次電子検出によって1000倍率で観察された2000個以上の粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の画像解析によって得ることができる相当円径の算術平均である。各粒子の「相当円径」は、画像中の粒子の面積(投影面積)に等しい面積を有する円の直径である。
【0085】
好ましくは、(b)球状疎水性シリカは、2ml/g以上、好ましくは3ml/g以上、より好ましくは4ml/g以上、最も好ましくは5ml/g以上の、湿潤点で測定することができる吸油能を有していてもよく、かつ/又は、湿潤点で測定された、12ml/g以下、好ましくは11ml/g以下、より好ましくは10ml/g以下、最も好ましくは8ml/g以下の吸油能を有し得る。
【0086】
Wpと記される湿潤点で測定される吸油能は、均質なペーストを得るために粒子100gに加える必要のある油の量に相当する。これは、湿潤点法、又は規格NF T 30-022に記載されている粉末の油取込み量を決定するための方法に従って測定することができる。油取込み量は、下に記載される湿潤点の測定による、粉末の利用可能な表面上に吸着された及び/又は粉末によって吸収された油の量に相当したものでよい。
【0087】
m=2gの量の粉末をガラス板上に乗せ、次いで、油(エステル油、オレイン酸、又はシリコーン油等)を滴下添加する。4~5滴の油を粉末に添加した後、スパチュラを使用して混合し、油と粉末との集合体が形成されるまで、油の添加を継続する。この時点で、油を1滴ずつ添加し、次いで、混合物をスパチュラで磨りつぶす。堅く滑らかなペーストが得られたら、油の添加を中止する。このペーストは、ひび割れること又は塊を形成することなく、ガラス板上に塗り広げることができなければならない。次いで、使用した油の体積Vs(mlで表される)が記される。油取込み量は、比Vs/mに相当する。
【0088】
別法では、吸油能は、JIS-K6217-4に従って測定することができる。
【0089】
本発明の1つの好ましい実施形態において、(b)球状疎水性シリカは、JP-A-2014-088307、JP-A-2014-218433、又はJP-A-2018-177620に記載されているものから選択することができる。
【0090】
本発明による組成物中の(b)球状疎水性シリカの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってもよい。
【0091】
本発明による組成物中の(b)球状疎水性シリカの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0092】
本発明による組成物中の(b)球状疎水性シリカの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~15質量%、好ましくは0.5質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%であってもよい。
【0093】
本発明による組成物中の(a)UVフィルターの量の(b)球状疎水性シリカの量に対する質量比は、3~35、好ましくは5~30、より好ましくは10~25であってもよい。
【0094】
[水]
本発明による組成物は、(c)水を含む。
【0095】
(c)水は、W/O型組成物の不連続相又は分散(内)相を形成することができる。したがって、(c)水は、W/Oエマルションの形態の本発明による組成物の不連続相又は分散(内)相を形成することができる。
【0096】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であってよい。
【0097】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下であり得る。
【0098】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~40質量%、より好ましくは20質量%~30質量%であってもよい。
【0099】
[油]
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の油を含んでもよい。2種以上の油が使用される場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0100】
(d)油は、(a)有機UVフィルターとは異なる。
【0101】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)で液体又はペースト(非固体)の形態の脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品において一般に使用されるものを、単独で、又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0102】
(d)油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油;植物油若しくは動物油及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油;又はそれらの混合物であってもよい。
【0103】
(d)油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油、及び脂肪アルコールからなる群から選択することができる。
【0104】
植物油の例として、例えば、アマニ油、カメリア油、マカデミアナッツ油、コーン油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0105】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0106】
合成油の例として、アルカン油、例えば、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、並びに人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0107】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、これらのエステルの合計炭素原子数は10以上である。
【0108】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合には、本発明のエステルが由来するアルコール及び酸の中から少なくとも1つは分枝状である。
【0109】
一酸及び一価アルコールのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0110】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、並びにモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルも使用され得る。
【0111】
特に挙げることができるのは以下:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0112】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。「糖」という用語は、いくつかのアルコール官能基を含有し、アルデヒド又はケトン官能基を有し又は有せず、かつ少なくとも4個の炭素原子を含む、酸素を保持する炭化水素系化合物を意味することを想起されたい。これらの糖は、単糖、オリゴ糖、又は多糖であってもよい。
【0113】
挙げることができる好適な糖の例としては、スクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特にアルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0114】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状で飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選択することができる。これらの化合物は、不飽和である場合、1~3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0115】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択してもよい。
【0116】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル、及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えばとりわけ、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってもよい。
【0117】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、とりわけスクロース、グルコース、又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0118】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースである、Amerchol社により名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品である。
【0119】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0120】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0121】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等、環状オルガノポリシロキサン、例えばシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0122】
好ましくは、シリコーン油は、液状ポリジアルキルシロキサン、とりわけ、液状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液状ポリオルガノシロキサンから選択される。
【0123】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されていてよい。本発明に従って使用することができる有機変性シリコーンは、上に定義したシリコーン油であり、構造中に、炭化水素系基を介して結合されている1つ又は複数の有機官能基を含む。
【0124】
オルガノポリシロキサンは、Walter NollのChemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Pressにおいて、更に詳細に定義されている。オルガノポリシロキサンは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0125】
揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、60℃から260℃の間の沸点を有するものから選択され、更により詳細には、以下から選択される:
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標) 7207で販売されている、又はRhodia社により名称Silbione(登録商標) 70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標) 7158で販売されている、Rhodia社によりSilbione(登録商標) 70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社により名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。次式
【0126】
【化4】
【0127】
のジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサンのようなタイプのシクロコポリマー、例えば、Union Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109を挙げることもできる。
【0128】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物、並びに
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃において5×10-6m2/s以下の粘度を有する、直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサンを挙げることもできる。例は、特にToray Silicone社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この部類に属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公表されている論文にも記載されている。該シリコーンの粘度は、ASTM規格445付録Cに従って25℃で測定されている。
【0129】
また、不揮発性ポリジアルキルシロキサンを使用してもよい。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細にはポリジアルキルシロキサンから選択され、その中では、主としてトリメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
【0130】
これらのポリジアルキルシロキサンの中で、以下の市販製品を非限定的な手法で挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ、又はMirasil(登録商標)油、例としては70 047 V 500 000油、
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油、
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば粘度60000mm2/sのDC200、並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油及びGeneral Electric社製のSFシリーズの特定の油(SF 96、SF 18)。
【0131】
名称ジメチコノール(CTFA)で知られる、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油も挙げることができる。
【0132】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、とりわけポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0133】
フェニルシリコーン油は、以下の式のフェニルシリコーンから選択することができる:
【0134】
【化5】
【0135】
(式中、
R1~R10は、互いに独立して、飽和又は不飽和で、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、特にメチル、エチル、プロピル、又はブチル基であり、
m、n、p、及びqは、互いに独立して、両端を含めて0~900、好ましくは両端を含めて0~500、より好ましくは両端を含めて0~100の整数であり、
但しn+m+qの和は0以外である)。
【0136】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品がある:
- Rhodia社製のSilbione(登録商標)油の70 641シリーズ、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標) 70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製の油であるDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えばPK20製品、
- General Electric社製のSFシリーズの特定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0137】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上の式中、R1~R10はメチルであり、p、q、及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0138】
有機変性液状シリコーンは、とりわけ、ポリエチレンオキシ及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有してもよい。そのため、信越化学工業株式会社により提案されているシリコーンKF-6017、並びにUnion Carbide社製の油Silwet(登録商標)L722及びL77を挙げることができる。
【0139】
炭化水素油は、以下から選択され得る:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。(挙げることができる例としては、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンがある)、並びに
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、流動ワセリン、ポリデセン及び水素化ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、及びスクアラン。
【0140】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば、流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等、水素化ポリイソブテン、イソエイコサン及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0141】
脂肪アルコールにおける「脂肪」という用語は、比較的大きい数の炭素原子を包含することを意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪アルコールの範囲内に包含される。脂肪アルコールは、飽和であっても、不飽和であってもよい。脂肪アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0142】
脂肪アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状の基から選択される)を有し得る。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択され得る。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていても、されていなくてもよい。
【0143】
脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、へキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0144】
脂肪アルコールが飽和脂肪アルコールであることが好ましい。
【0145】
したがって、脂肪アルコールは、直鎖状又は分枝状で、飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0146】
「飽和脂肪アルコール」という用語は、本明細書において、長い脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪アルコールが、好ましくは使用され得る。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪アルコールが、より好ましくは使用され得る。分枝状C16~C20脂肪アルコールが、更により好ましくは使用され得る。
【0147】
飽和脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、へキシルデカノール、及びそれらの混合物を挙げることができる。1つの実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪アルコールとして使用することができる。
【0148】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中に使用される脂肪アルコールは、好ましくは、セチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物から選択される。
【0149】
(d)油は、非極性油又は極性油、好ましくは炭化水素油、シリコーン油、エステル油、及びこれらの混合物、更により好ましくはイソドデカン、イソヘキサデカン、ジメチコン、セバシン酸ジイソプロピル及びこれらの混合物から選択することができる。
【0150】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上でよい。
【0151】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であってもよい。
【0152】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、5質量%~30質量%、好ましくは10質量%~25質量%、より好ましくは15質量%~20質量%であってもよい。
【0153】
[DICゲル]
本発明による組成物は、動的イオン架橋された、少なくとも1種のゲル、好ましくはヒドロゲルを含んでもよい。動的イオン架橋されたゲルは、以下、DICゲルと略する。
【0154】
DICゲル中の動的イオン架橋は、破壊可能であるが、再形成可能であることから、永久的な共有結合とは異なる。動的イオン架橋は、例えば、切断すること等によって容易に破壊され得るが、例えば、互いに接触させることによって容易に再形成され得、それにより自己回復又は自己修復の特性を示す。例えば、ゲルが2つの断片に切断された場合、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン相互作用が破壊される。しかしながら、2つの断片が互いに接触した場合、それらは、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン結合を再形成することができ、互いに接着することができる。したがって、例えば、亀裂がゲル上に形成された場合でも、それらは消失することができる。
【0155】
本発明による組成物を基材、好ましくは皮膚等のケラチン基材上に適用し、該組成物を乾燥することによって、該組成物を使用して自己回復又は自己修復の特性を有するゲルの膜を調製することができる。
【0156】
DICゲルは、少なくとも1種のカチオン性多糖と、少なくとも1種の、少なくとも3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩と、を用いて形成することができる。
【0157】
(カチオン性多糖)
本発明による組成物は、少なくとも1種のカチオン性多糖を含んでもよい。2種以上の異なるタイプのカチオン性多糖を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプのカチオン性多糖、又は異なるタイプのカチオン性多糖の組合せを使用することができる。
【0158】
カチオン性多糖は、正の電荷密度を有する。カチオン性多糖の電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gであり得る。
【0159】
カチオン性多糖の分子量は、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更により好ましくは5,000以上であることが好ましい。
【0160】
本明細書おいて別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味する。
【0161】
カチオン性多糖は、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。本明細書における(第一級)「アミノ基」という用語は、-NH2基を意味する。カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有することが好ましい。
【0162】
カチオン性多糖は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得たコポリマーと、2種類超のモノマーから得たコポリマー、例えば3種類のモノマーから得たターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0163】
カチオン性多糖は、天然及び合成のカチオン性多糖から選択することができる。
【0164】
カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択することが好ましい。カチオン性セルロースポリマーの非限定例は、以下のとおりである。
(1)1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体等のカチオン性セルロースポリマー、例えば、Dow Chemical社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー等、仏国特許第1,492,597号に記載のもの。また、これらのポリマーは、トリメチルアンモニウム基で置換されたエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとしてCTFA辞典に定義されている。
(2)セルロースコポリマー及び第四級アンモニウムの少なくとも1種の水溶性モノマーでグラフトされたセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、例としては、例えばメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルジアリルアンモニウムから選択される少なくとも1つでグラフトされたヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルセルロース等の米国特許第4,131,576号に記載のもの等のカチオン性セルロースポリマー。これらのポリマーに対応する市販製品としては、例えば、Akzo Novel社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
(3)少なくとも1つの脂肪鎖、例えば少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル又はアルキルアリールの各基を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有するカチオン性セルロースポリマー。カチオン性セルロースポリマーが、少なくとも1つの脂肪鎖、例えば少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル若しくはアルキルアリール基、又はこれらの混合物を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基で修飾されている四級化ヒドロキシエチルセルロースであることが好ましい。第四級アンモニウム基によって保持されているアルキル基は、好ましくは8~30個の炭素原子、特に10~30個の炭素原子を含有し得る。アリール基は、好ましくは、フェニル、ベンジル、ナフチル又はアントリルの各基を示す。より好ましくは、カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つのC8~C30炭化水素基を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含んでよい。挙げることができるC8~C30脂肪鎖を含有する四級化アルキルヒドロキシエチルセルロースの例には、Dow Chemical社により販売されている製品Quatrisoft LM 200、Quatrisoft LM-X 529-18-A、Quatrisoft LM-X 529-18B(C12アルキル)及びQuatrisoft LM-X 529-8(C18アルキル)又はSoftcat Polymer SL100、Softcat SX-1300X、Softcat SX-1300H、Softcat SL-5、Softcat SL-30、Softcat SL-60、Softcat SK-MH、Softcat SX-400X、Softcat SX-400H、SoftCat SK-L、Softcat SK-M、及びSoftcat SK-H、並びにCroda社により販売されている製品Crodacel QM、Crodacel、QL(C12アルキル)及びCrodacel QS(C18アルキル)が含まれる。
【0165】
カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0166】
本発明による組成物中のカチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上でよい。
【0167】
本発明による組成物中のカチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であってもよい。
【0168】
本発明による組成物中のカチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~1質量%、好ましくは0.03質量%~0.5質量%、より好ましくは0.05質量%~0.1質量%であってもよい。
【0169】
(架橋剤)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の、3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩を含んでもよい。2種以上の異なるタイプの架橋剤又はその塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの架橋剤若しくはその塩、又は異なるタイプの架橋剤若しくはその塩の組合せが使用されてもよい。
【0170】
3つ以上の酸基を有する架橋剤の酸基の少なくとも1つは、塩の形態であってもよい。架橋剤のすべての酸基が、塩の形態であってもよい。
【0171】
本明細書における「塩」という用語は、3つ以上の酸基を有する架橋剤に好適な塩基を添加することによって形成された塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って3つ以上の酸基を有する架橋剤と塩基とを反応させることにより得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0172】
架橋剤は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸から、より好ましくは3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸から選択されることが好ましい。
【0173】
本明細書における「非ポリマー」という用語は、架橋剤が、2つ以上のモノマーを重合することによって得られないことを意味する。したがって、非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸は、ポリカルボン酸等の2つ以上のモノマーを重合することによって得られる酸に相当しない。
【0174】
3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸の分子量は、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは600以下であることが好ましい。
【0175】
3つ以上の酸基を有する架橋剤、又はその塩は、親水性又は水溶性であってもよい。
【0176】
3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びそれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0177】
3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸、ヘキサカルボン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0178】
3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、アコニット酸、フィチン酸、EDTA、グリチルリチン、イノシトール三リン酸、イノシトールペンタキスリン酸、トリポリリン酸、アデノシン三リン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0179】
3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、フィチン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0180】
本発明による組成物中の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり得る。
【0181】
本発明による組成物中の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり得る。
【0182】
本発明による組成物中の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~1質量%、好ましくは0.005質量%~0.5質量%、より好ましくは0.01質量%~0.1質量%であってもよい。
【0183】
(アニオン性ポリマー)
DICゲルは、上記のカチオン性多糖及び上記の架橋剤によって調製することができる。
【0184】
しかしながら、加えて、本発明による組成物は、少なくとも1種のアニオン性ポリマーを更に含んでもよい。2種以上の異なるタイプのアニオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプのアニオン性ポリマー、又は異なるタイプのアニオン性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0185】
アニオン性ポリマーは、負の電荷密度を有する。アニオン性ポリマーが合成アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの電荷密度は、0.1meq/gから20meq/g、好ましくは1から15meq/g、より好ましくは4から10meq/gであってもよく、アニオン性ポリマーが天然アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの平均置換度は、0.1~3.0、好ましくは0.2~2.7、より好ましくは0.3~2.5であってもよい。
【0186】
アニオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは100,000以上、更により好ましくは1,000,000以上であることが好ましい。
【0187】
アニオン性ポリマーは、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、カルボン酸基、及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有してもよい。
【0188】
アニオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得たコポリマーと、2種類超のモノマーから得たコポリマー、例えば3種類のモノマーから得たターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0189】
アニオン性ポリマーは、天然の及び合成のアニオン性ポリマーから選択することができる。
【0190】
アニオン性ポリマーは、少なくとも1つの疎水性鎖を含んでよい。
【0191】
少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよいアニオン性ポリマーは、α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸(モノマーa')及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(モノマーa")から選択されるモノマー(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー(b)、並びに/或いはα,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の(monohydric)非イオン性両親媒性成分又は第一級若しくは第二級脂肪アミンと反応させることにより得られるエチレン性不飽和を含むモノマー(c)との共重合によって得ることができる。
【0192】
そのため、少なくとも1つの疎水性鎖を有するアニオン性ポリマーは、2つの合成経路:
- モノマー(a')と(c)、若しくは(a')と(b)と(c)、若しくは(a'')と(c)、若しくは(a'')と(b)と(c)の共重合による合成経路、
- 又はモノマー(a')、若しくはモノマー(a')と(b)、若しくは(a'')と(b)から形成されたコポリマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンで修飾(具体的にはエステル化若しくはアミド化)することによる合成経路のいずれかによって得ることができる。
【0193】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸コポリマーとしては、特に、論文「Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁」並びに出願EP-A-0 750 899及びEP-A-1 069 172に開示されているものを挙げることができる。
【0194】
モノマー(a')を構成する、α,β-モノエチレン性不飽和を含むカルボン酸は、多数の酸から、詳細には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸から選択することができる。これは、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0195】
コポリマーは、界面活性剤特性を有さないモノエチレン性不飽和を含むモノマー(b)を含むことができる。好ましいモノマーは、単独重合する場合に水不溶性ポリマーを与えるものである。これらは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸C1~C4アルキル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル又は対応するメタクリレートから選択することができる。より特に好ましいモノマーは、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルである。使用され得る他のモノマーは、例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル及び塩化ビニリデンである。非反応性モノマーが好ましく、これらのモノマーは、単一のエチレン性基が、重合条件下で反応性を持つ唯一の基であるものである。しかしながら、熱の作用下で反応する基を含むモノマー、例えばアクリル酸ヒドロキシエチルを、任意選択で使用することができる。
【0196】
モノマー(c)は、α,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー、例えば(a)、又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンと反応させることによって得られる。
【0197】
非イオン性モノマー(c)を生成するのに使用される一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンは、周知である。一価の非イオン性両親媒性化合物は、一般に、分子の親水性部分を形成するアルキレンオキシドを含むアルコキシル化疎水性化合物である。疎水性化合物は、一般に、脂肪族アルコール又はアルキルフェノールから構成され、その化合物中、少なくとも6個の炭素原子を含む炭素性鎖が、両親媒性化合物の疎水性部分を構成する。
【0198】
好ましい一価の非イオン性両親媒性化合物は、以下の式(V):
R-(OCH2CHR')m-(OCH2CH2)n-OH (V)
(式中、Rは、6~30個の炭素原子を含むアルキル又はアルキレン基及び8~30個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルアリール基から選択され、R'は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、nは、およそ1~150の範囲の平均数であり、mは、およそ0~50の範囲の平均数であり、但し、nは、少なくともmと同じ大きさである)
を有する化合物である。
【0199】
好ましくは、式(V)の化合物中、R基は、12~26個の炭素原子を含むアルキル基及びアルキル基がC8~C13であるアルキルフェニル基から選択され、R'基は、メチル基であり、m=0であり、n=1~25である。
【0200】
好ましい第一級及び第二級脂肪アミンは、6~30個の炭素原子を含む1つ又は2つのアルキル鎖から構成される。
【0201】
非イオン性ウレタンモノマー(c)を形成するのに使用されるモノマーは、非常に多様な化合物から選択することができる。共重合性不飽和、例えばアクリル性、メタクリル性又はアリル性不飽和を含む、任意の化合物を使用することができる。モノマー(c)は、特に、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネート、例えば特にα,α-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから得ることができる。
【0202】
モノマー(c)は、特に、オキシエチレン化(1~50EO)C6~C30脂肪アルコールのアクリレート、メタクリレート又はイタコネート、例えばメタクリル酸ステアレス-20、オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレート、オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネート、オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネート又はポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートから、及びオキシエチレン化(1~50EO)C6~C30脂肪アルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネート、例えば特にオキシエチレン化ベヘニルアルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから選択することができる。
【0203】
本発明の特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、(a)α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸、(b)(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー、及び(c)一価の非イオン性両親媒性化合物とモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートとの反応生成物である非イオン性ウレタンモノマーから得られるアクリルターポリマーから選択される。
【0204】
少なくとも1つの疎水性鎖を含むアニオン性ポリマーとしては、特に、アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸アルキルターポリマー、例えばRohm & Haas社により名称Acusol 823で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、例えばRohm & Haas社により名称Aculyn 22で販売されている製品;(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレートターポリマー、例えばRohm & Haas社により名称Aculyn 28で販売されている水性エマルションとしての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社により名称Structure 3001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社により名称Structure 2001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/ポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートのコポリマー、例えば3V SA社により名称Synthalen W2000で販売されている30~32%コポリマーラテックス;又はメタクリル酸/アクリル酸メチル/エトキシル化ベヘニルアルコールのジメチル-メタ-イソプロペニルベンジルイソシアネートのターポリマー、例えば24%水性分散体としての、文献EP-A-0 173 109に開示された40個のエチレンオキシド基を含む製品を挙げることができる。
【0205】
アニオン性ポリマーは、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸、及びセルロースポリマー(例えば、セルロースガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース)、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミド酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、(コ)ポリフマル酸、無水マレイン酸(コ)ポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0206】
無水マレイン酸コポリマーは、1つ又は複数の無水マレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2~20個の炭素原子を含むオレフィン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとを含んでもよい。
【0207】
したがって、「無水マレイン酸コポリマー」は、1つ又は複数の無水マレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2~20個の炭素原子を含むオレフィン、例えばオクタデセン、エチレン、イソブチレン、ジイソブチレン又はイソオクチレン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとの共重合によって得られる任意のポリマーを意味すると理解され、無水マレイン酸コモノマーは、任意選択で部分的に又は完全に加水分解されている。好ましくは、親水性ポリマー、すなわち水溶解度が2g/l以上であるポリマーが使用される。
【0208】
1つ又は複数の無水マレイン酸単位の共重合によって得られるコポリマーを使用することが好ましく、その無水マレイン酸単位は、加水分解形態、より好ましくはアルカリ塩の形態、例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム又はリチウム塩の形態である。
【0209】
本発明の有利な態様では、無水マレイン酸コポリマーは、無水マレイン酸単位のモル分率が、0.1から1の間、より好ましくは0.4から0.9の間であってよい。
【0210】
無水マレイン酸コポリマーの質量平均モル質量は、1,000から500,000の間、好ましくは1,000から50,000の間であってよい。
【0211】
無水マレイン酸コポリマーは、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、より好ましくはスチレン/無水マレイン酸コポリマーナトリウムであることが好ましい。
【0212】
好ましくは、50/50比のスチレンと無水マレイン酸とのコポリマーが使用される。
【0213】
例えば、Cray Valley社により参照名SMA1000H(登録商標)で販売されている、水中30%のアンモニウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマー又はCray Valley社により参照名SMA1000HNa(登録商標)で販売されている、水中40%のナトリウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマーを使用することができる。
【0214】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり得る。
【0215】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり得る。
【0216】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~1質量%、好ましくは0.03質量%~0.5質量%、より好ましくは0.05質量%~0.1質量%であり得る。
【0217】
[フィラー]
本発明による組成物は、(b)球状疎水性シリカとは異なる少なくとも1種の追加のフィラーを含んでもよい。2種以上の追加のフィラーを組み合わせて使用してよい。そのため、単一のタイプの追加のフィラー、又は異なるタイプの追加のフィラーの組合せを使用することができる。
【0218】
「フィラー」という用語は、組成物が製造される温度にかかわらず、本発明による組成物中に存在し得る液状成分中に不溶性である無色又は白色の無機又は合成粒子を意味するものと理解されるべきである。
【0219】
フィラーは、無機でも有機でもよく、球状又は長円形状であっても、いかなる結晶形態(例えば、板状、立方晶系、六方晶系、斜方晶系等)であってもよい。非限定的に挙げることができるのは、タルク、マイカ、(親水性)シリカ、カオリン、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム及びヒドロキシアパタイト、ポリアミド(Nylon(登録商標))で、ポリ-β-アラニンで、及び、ポリエチレンで形成される粉末、ポリウレタンで形成される粉末、テトラフルオロエチレンポリマーで形成される粉末(Teflon(登録商標))、ラウリルリジン、デンプン、ポリ(塩化ビニリデン)/アクリロニトリルの、例えばExpancel(登録商標) (Nobel Industrie社)、若しくは、アクリル酸コポリマーのもの等のポリマー性中空微小球、シリコーン樹脂ミクロビーズ(例えば、株式会社東芝製のTospearls(登録商標))、ポリオルガノシロキサンエラストマーで形成される粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、中空シリカ微小球、ガラス若しくはセラミックマイクロカプセル、又は、12個~18個の炭素原子等8個~22個の炭素原子を有する有機カルボン酸、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛若しくはミリスチン酸マグネシウムから誘導される金属石鹸である。
【0220】
本発明では、フィラーの例としては、金属酸化物、好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛及びこれらの混合物が挙げられる。
【0221】
本発明に適するフィラーは、例えば、平均粒径が100μm未満、特に1から50μmの間、例えば4から20μmの間のフィラーでもよい。
【0222】
[他の任意選択の添加剤]
本発明による組成物は、前述の成分に加えて化粧品に典型的に用いられる成分、具体的には、界面活性剤(特に非イオン性界面活性剤)又は乳化剤、親水性又は親油性増粘剤、有機揮発性又は不揮発性溶媒、無機UVフィルター、(d)油以外のシリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0223】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.05質量%~30質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでよい。
【0224】
[組成物]
本発明による組成物の使用目的は、化粧用組成物であってもよい。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含む物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明による化粧用組成物が、ケラチン物質、詳細には皮膚のための美容方法のために使用されることが好ましい。
【0225】
そのため、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってもよい。
【0226】
本発明による組成物は、当業者に周知の方法のいずれかに従って、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合することによって調製することができる。
【0227】
必要に応じて、上記の必須成分又は任意選択の成分を加熱してもよい。そのため、加熱は、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合するときに実施することができる。
【0228】
本発明による組成物が、油性の(a)有機UVフィルター、及び(c)水を含むため、該組成物はエマルションの形態であってもよい。本発明による組成物は、W/Oエマルションの形態にある。
【0229】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、任意選択で組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に膜、好ましくは化粧膜を形成する工程とを含む方法、及び皮膚等のケラチン物質上に膜、好ましくは化粧膜を調製するための本発明による組成物の使用にも関する。
【0230】
本明細書における美容方法とは、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0231】
本発明による組成物が上述のDICゲルを含む場合、本発明による組成物によって調製された膜は自己回復又は自己修復することができる。換言すると、本発明による組成物によって生成される膜は、膜が例えば引っ掻き等によって破壊されたとしても、自動的に修復することができ、したがって、膜によってもたらされる美容効果の持ちが改善され得る。
【0232】
また、上記の膜は、pHが7以下の水に耐性があり得、pHが7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上の水で除去され得る。換言すると、上記の膜は、pHが7以下、好ましくは6以上で7以下の範囲、より好ましくは5以上で7以下の範囲等の中性又は酸性条件下で耐水性であり得るが、上記の膜は、pHが7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上等のアルカリ性条件下で除去することができる。pHの上限は、好ましくは13、より好ましくは12、更により好ましくは11である。
【0233】
これに応じて、上記の膜は、耐水性とすることができ、したがって、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨により濡れている場合であっても、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。一方、上記の膜は、アルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、上記の膜は、水で除去することは困難であるが、アルカリ性条件をもたらすことができる石鹸で容易に除去することができる。
【0234】
上記の膜が、本発明による組成物中に本来存在する有機UVフィルターを含み得るため、上記の膜は、UV線から皮膚等のケラチン物質を防御し、それにより、皮膚の黒ずみを抑え、肌の色及び均一性を改善し、かつ/又は皮膚の老化を処置することができる。
【0235】
更に、上記の膜は、該膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、膜の中のDICゲルの性質に起因して、悪臭を吸収する若しくは吸着すること、及び/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を防御すること等の美容効果を有し得る。
【0236】
加えて、上記の膜は、膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、皮膚上の光反射等を変化させることによって皮膚の外観を即座に変化させる又は修正することができる。したがって、上記の膜は、毛穴又はしわ等の皮膚の欠陥を隠すことが可能であり得る。更に、上記の膜は、皮膚上の表面粗さ等を変化させることによって皮膚の触感を即座に変化させる又は修正することができる。更に、上記の膜は、環境ストレス、例えば汚染物質、夾雑物等から、バリアーとして、皮膚の表面を覆い、皮膚をシールドすることによって皮膚を即座に防御することができる。
【0237】
上記の美容効果は、上記の膜の化学組成、厚さ及び/又は表面粗さを変化させることによって調整又は制御することができる。
【0238】
上記の膜が、少なくとも1種の追加の美容有効成分を含む場合、膜は、その追加の美容有効成分によってもたらされる美容効果を有することができる。例えば、膜が、抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、美白剤及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、かつ/又は皮膚を美白することができる。
【0239】
また、膜を皮膚に適用した後に、上記の膜上にメイクアップ化粧用組成物を塗布することも可能である。
【0240】
更に、本発明はまた、(a)少なくとも1種の有機UVフィルター及び(c)水を含むW/Oエマルションの形態の組成物中における(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカの使用であって、組成物のUV吸光度を強化し、組成物の伸展性を改善するための使用に関する。換言すると、(a)少なくとも1種のUVフィルター及び(c)水を含む、W/Oエマルションの形態の組成物への(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカの添加は、組成物のUV吸光度を強化し、皮膚等のケラチン物質上での組成物の伸展性を改善することができる。
【0241】
結果として、(a)少なくとも1種のUVフィルターと、(b)少なくとも1種の球状疎水性シリカの両方、及び(c)水を含む、W/Oエマルションの形態の本発明による組成物は、強力なUV防御を提供しながら、皮膚等のケラチン物質上に容易に塗り広げることができる。
【実施例0242】
本発明を、実施例によってより詳細に説明する。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0243】
(実施例1及び2並びに比較例1~3)
[調製]
実施例1及び2並びに比較例1~3による、W/Oエマルションの形態の各組成物を、表1に示した成分を混合することによって調製した。表1中の成分の量についての数値はすべて、活性材料としての「質量%」に基づく。
【0244】
【表1A】
【0245】
【表1B】
【0246】
[評価]
(伸展性)
専門家の試験員5名が、実施例1及び2並びに比較例1~3による組成物の各々を同じ量で使用して「伸展性」を評価した。
【0247】
各試験員は、各組成物を手に取り、次いでそれを自身の顔に塗布して、各組成物を塗布したときの「伸展性」を評価し、1(非常に不良)~5(非常に良好)で格付けし、次いでそれを平均した。
【0248】
結果を表1に示す。
【0249】
(UV吸光度)
実施例1及び2並びに比較例1~3による各組成物を、蓋をした容器中で10回振って均一化した。均一な各組成物を、調整可能なピペットを用いて、20mg/cm2の量でプレート(HelioプレートHD 6、PMMA、粗さ:6μm)上に移し、次いで指で一様に塗り広げた。被覆したプレートを、室温にて15分間、空気乾燥させた。得られた試料プレートを、Labsphere Ultraviolet Transmittance Analyzer(Solar Light Company社(Philadelphia、Pennsylvania)製のModel UV-2000)中に置いた。UV線の照射を、試料プレート上の12地点で行った。波長域290~420nmの試料プレートによるUV吸光度を記録した。
【0250】
結果を図1に示す。
【0251】
加えて、実施例1及び2並びに比較例1~3による組成物の310nmでのUV吸光度を表1に示す。
【0252】
実施例1及び2による組成物が、特に290nm~380nmで、比較例1~3による組成物より強化されたUV吸光度を有することは、図1から明らかである。強化されたUV吸光度は、球状疎水性シリカの使用によってもたらされるという知見を得ることができる。
【0253】
表1及び図1に示す評価結果を考慮すると、実施例1及び2による組成物は、高い伸展性と強化されたUV吸光度の良好なバランスを有することが明らかである。そのため、実施例1及び2による組成物は、優れた質感と改善されたUV防御との両方をもたらすことができる。
図1
【外国語明細書】