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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003216
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】作業ロボットの制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20221228BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20221228BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20221228BHJP
   B05B 12/12 20060101ALI20221228BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B25J9/22 A
B05B12/00 A
B05B13/04
B05B12/12
G05B19/42 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104264
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅宏
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
4F035
【Fターム(参考)】
3C269AB13
3C269AB33
3C269JJ19
3C269MN16
3C707AS13
3C707BS10
3C707KS36
3C707KV11
3C707KX19
3C707LS14
3C707NS02
4F035AA03
4F035BB02
4F035BB07
4F035BC02
4F035CD06
4F035CD18
(57)【要約】
【課題】生産速度の低下を抑制可能な修正ティーチングを実現できる。
【解決手段】制御システム10は、平坦な第1面41を有する作業対象物40を所定の搬送方向に搬送する搬送装置20と、作業対象物に対して吹付材料を噴射して吹き付ける作業ロボット30と、作業ロボット30より搬送方向上流に設けられる複数の距離センサ51,52,53と、作業ロボット30を制御する制御部70と、を備え、制御部70は、第1距離センサ51及び第2距離センサ52の検出結果に基づいて第1面41の傾きθを算出し、算出した傾きθに基づいて作業ロボットの動作を規定するティーチングデータを修正し、修正されたティーチングデータに基づいて作業ロボット30を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な第1面を有する作業対象物を所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記作業対象物に対して吹付材料を噴射して吹き付ける作業ロボットと、
前記作業ロボットより前記搬送方向上流に設けられる複数の距離センサと、
前記作業ロボットを制御する制御部と、を備え、
前記複数の距離センサは、
前記第1面の第1測定点との距離を検出する第1距離センサと、
前記第1面の第2測定点との距離を検出する第2距離センサと、を含んでおり、
前記制御部は、
前記第1距離センサ及び前記第2距離センサの検出結果に基づいて前記第1面の傾きを算出し、
算出した前記傾きに基づいて前記作業ロボットの動作を規定するティーチングデータを修正し、
修正された前記ティーチングデータに基づいて前記作業ロボットを制御する作業ロボットの制御システム。
【請求項2】
前記作業対象物の形状及び大きさは、特定されており、
前記複数の距離センサは、前記作業対象物のうち前記第1面と交わる方向に延在する第2面との距離を検出する第3距離センサ、をさらに含み、
前記制御部は、
前記第1距離センサ、前記第2距離センサ、及び前記第3距離センサの検出結果に基づいて前記作業対象物の位置を算出し、
算出した前記位置に基づいて前記ティーチングデータを修正する請求項1に記載の作業ロボットの制御システム。
【請求項3】
前記第3距離センサは、前記作業対象物のうち前記搬送方向の最下流部または最上流部の通過を検出可能とされ、
前記制御部は、
前記第3距離センサの検出結果に基づいて前記吹付材料を噴射する開始タイミングを算出し、
算出した前記開始タイミングに基づいて前記ティーチングデータを修正する請求項2に記載の作業ロボットの制御システム。
【請求項4】
前記第1距離センサ及び前記第2距離センサは、搬送される前記作業対象物の前記第1面と対向可能な位置に設けられ、
前記第3距離センサは、搬送される前記作業対象物の前記第2面と対向可能な位置に設けられている請求項2または請求項3に記載の作業ロボットの制御システム。
【請求項5】
前記搬送装置は、
前記作業対象物の搬送経路であるレールと、
前記レールに接続されて、前記作業対象物を吊り下げるハンガーと、を備えるコンベアであり、
前記複数の距離センサは、前記ハンガーに吊り下げられた前記作業対象物が内部を通過可能な支持部材に設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業ロボットの制御システム。
【請求項6】
前記作業ロボットは、
床面に載置されるロボットベースと、
前記ロボットベースに接続されるロボットアームと、
前記ロボットアームの前記ロボットベースとは反対側の端部に取り付けられ、前記吹付材料を噴射する噴射ガンと、を備え、
前記制御部は、修正された前記ティーチングデータに基づいて、前記ロボットベース、前記ロボットアーム、及び前記噴射ガンを制御する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業ロボットの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、作業ロボットの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送される作業対象物に対して塗料を噴射する塗装ロボットが知られており、その塗装ロボットの制御方法の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の車両用塗装ロボットは、所定の搬送位置での車両ボデーの形状の設計データに対応して、塗装動作を行うベルの走査経路データがティーチングされている。そして、実際の搬送位置での車両ボデーの形状ずれに起因する誤差を修正するために、ベル近傍に取り付けられた距離センサの検出結果を用いて修正ティーチングを行う(走査経路データを補正する)ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-20846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の距離センサは、車両用塗装ロボットのロボットアーム先端部に取り付けられており、その位置合わせに時間を要する課題がある。より詳しくは、当該距離センサはまず、ティーチングボックスの操作によって修正用走査基準点に自動的に移動され、その後に修正用走査基準点から被塗装基準部位に近接するように目視によって微調整移動され、さらにその後に塗装ロボットの高さを位置制御することで、距離センサ対向位置に位置合わせされる。距離センサは、このような位置合わせ後に、車両ボデーの形状ずれを検出する仕組みとなっている。従って、特許文献1に記載の修正ティーチングを行うと、生産速度が大幅に低下してしまう懸念がある。
【0005】
本願明細書に記載の技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、生産速度の低下を抑制可能な修正ティーチングを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本技術に関わる作業ロボットの制御システムは、平坦な第1面を有する作業対象物を所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、前記作業対象物に対して吹付材料を噴射して吹き付ける作業ロボットと、前記作業ロボットより前記搬送方向上流に設けられる複数の距離センサと、前記作業ロボットを制御する制御部と、を備え、前記複数の距離センサは、前記第1面の第1測定点との距離を検出する第1距離センサと、前記第1面の第2測定点との距離を検出する第2距離センサと、を含んでおり、前記制御部は、前記第1距離センサ及び前記第2距離センサの検出結果に基づいて前記第1面の傾きを算出し、算出した前記傾きに基づいて前記作業ロボットの動作を規定するティーチングデータを修正し、修正された前記ティーチングデータに基づいて前記作業ロボットを制御する。
【0007】
上記の作業ロボットの制御システムによれば、制御部は、第1距離センサ及び第2距離センサの検出結果に基づき、搬送される作業対象物の第1面の傾きを算出できる。制御部は、この算出結果に基づいてティーチングデータを修正し、修正したティーチングデータに基づいて作業ロボットを制御することで、修正ティーチングを実現できる。ティーチングデータは、搬送される作業対象物の搬送状態(具体的には第1面の傾き)に合わせて修正される。ここで距離センサは、作業ロボットとは別に(作業ロボットより搬送方向上流に)設けられており、特許文献1に記載の従来技術と異なり、距離センサによる検出に際して位置合わせは不要である。また、距離センサが作業ロボットより搬送方向上流に設けられていることで、距離センサによる検出作業と、作業ロボットによる吹付材料の噴射作業を同時に並行して進行することができる。その結果、距離センサによる検出に伴う生産速度の低下を抑制できる。さらに、距離センサは、作業ロボットに取り付ける必要がないため専用品に限られない。距離センサとして汎用品を用いることでコスト高を抑制できると共に、制御システム全体が複雑化することがなく、故障発生の増大も抑制できる。
【0008】
(2)前記作業対象物の形状及び大きさは、特定されており、前記複数の距離センサは、前記作業対象物のうち前記第1面と交わる方向に延在する第2面との距離を検出する第3距離センサ、をさらに含み、前記制御部は、前記第1距離センサ、前記第2距離センサ、及び前記第3距離センサの検出結果に基づいて前記作業対象物の位置を算出し、算出した前記位置に基づいて前記ティーチングデータを修正してもよい。
【0009】
上記の作業ロボットの制御システムによれば、作業対象物の形状及び大きさが特定されているため、制御部は、これらの情報と、第1距離センサ、第2距離センサ、及び第3距離センサの検出結果に基づき、作業対象物の位置を算出できるようになる。
【0010】
(3)前記第3距離センサは、前記作業対象物のうち前記搬送方向の最下流部または最上流部の通過を検出可能とされ、前記制御部は、前記第3距離センサの検出結果に基づいて前記吹付材料を噴射する開始タイミングを算出し、算出した前記開始タイミングに基づいて前記ティーチングデータを修正してもよい。
【0011】
上記の作業ロボットの制御システムによれば、制御部は、搬送方向における作業対象物の進行方向先端部の位置を算出できる。これにより、ティーチングデータにおいて吹付材料を噴射する開始タイミングをより正確に修正できるようになる。
【0012】
(4)前記第1距離センサ及び前記第2距離センサは、搬送される前記作業対象物の前記第1面と対向可能な位置に設けられ、前記第3距離センサは、搬送される前記作業対象物の前記第2面と対向可能な位置に設けられていてもよい。
【0013】
上記の作業ロボットの制御システムによれば、各距離センサの検出精度を高めることができる。
【0014】
(5)前記搬送装置は、前記作業対象物の搬送経路であるレールと、前記レールに接続されて、前記作業対象物を吊り下げるハンガーと、を備えるコンベアであり、前記複数の距離センサは、前記ハンガーに吊り下げられた前記作業対象物が内部を通過可能な支持部材に設けられていてもよい。
【0015】
上記の作業ロボットの制御システムによれば、作業対象物をオーバーヘッド・コンベアによって容易に搬送でき、距離センサを支持部材によって容易に設けることができる。一方で、オーバーヘッド・コンベアを用いると作業対象物の搬送状態(第1面の傾き等)はバラつきやすくなるが、そのようなバラつきがある場合であっても、修正ティーチングによって吹付材料を好適に噴射できるようになる。
【0016】
(6)前記作業ロボットは、床面に載置されるロボットベースと、前記ロボットベースに接続されるロボットアームと、前記ロボットアームの前記ロボットベースとは反対側の端部に取り付けられ、前記吹付材料を噴射する噴射ガンと、を備え、前記制御部は、修正された前記ティーチングデータに基づいて、前記ロボットベース、前記ロボットアーム、及び前記噴射ガンを制御してもよい。
【0017】
上記の作業ロボットの制御システムによれば、修正したティーチングデータに基づき、作業ロボットの各部を制御することで、作業ロボットを精度よく制御できるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本技術によれば、生産速度の低下を抑制可能な修正ティーチングを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る塗装ロボットの制御システムを模式的に示す斜視図
図2】塗装ロボットの制御システムの電気的構成を示すブロック図
図3図1の平面図
図4図1の別の平面図
図5】被塗物の基本搬送状態からのズレ量を示す平面図
図6図5の要部を拡大した平面図
図7】被塗物の基本搬送状態からのズレ量を示す別の平面図
図8】実施形態2に係る塗装ロボットの制御システムを模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
実施形態1に係る塗装ロボット30(作業ロボットの一例)の制御システム10(以下、単に制御システム10と記す)を図1から図7を参照して説明する。図2以外の各図面の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向とする。
【0021】
制御システム10は、搬送される被塗物40(ワーク、作業対象物の一例)に対して、塗装ロボット30が塗料(吹付材料の一例)を噴射して吹き付けることで、被塗物40を自動的に塗装するシステムである。制御システム10は、図1に示すように、被塗物40を搬送するコンベア20(搬送装置の一例)と、搬送される被塗物40に対して塗料を噴射する塗装ロボット30と、塗装ロボット30より搬送方向上流の所定位置に設けられる複数(本実施形態では3つ)の距離センサ51,52,53と、を備える。
【0022】
塗装ロボット30は、図1に示すように、床面に載置されるロボットベース31と、ロボットベース31に接続される多関節型のロボットアーム33と、ロボットアーム33の先端部(ロボットベース31とは反対側の端部)に取り付けられ塗料を噴射する塗装ガン35(噴射ガンの一例)と、を備える。
【0023】
また、制御システム10は、図2に示すように、CPUやマイコン等である制御部70と、RAMやROM等のメモリである記憶部80と、を備えている。記憶部80には、塗装ロボット30の動作制御プログラムが記憶されており、制御部70は動作制御プログラムに基づいて塗装ロボット30の各部(ロボットベース31、ロボットアーム33、及び塗装ガン35)を制御する。動作制御プログラムには、塗装ロボット30の動作を規定するティーチングデータ(移動経路、塗料の噴射開始位置、噴射停止位置、噴射方向等の各種設定データ)が含まれている。なお、記憶部80は制御部70に内蔵されていても構わない。
【0024】
制御部70は、図2に示すように、コンベア20、塗装ロボット30、各距離センサ51,52,53、及び記憶部80と電気的に接続されている。制御部70は、詳しく後述するように、距離センサ51,52,53の検出結果に基づきティーチングデータを修正し、修正したティーチングデータに基づき塗装ロボット30を制御する。なお、コンベア20は、塗装ロボット30の制御系統(制御部70)とは別の制御装置によって制御されていても構わない。
【0025】
コンベア20は、図1図3及び図4に示すように、搬送経路であるレール21と、レール21に接続され、被塗物40を吊り下げるハンガー23と、を備える。コンベア20は、上方に配索されたレール21に沿って、ハンガー23に吊り下げられた状態で被塗物40を搬送する、いわゆるオーバーヘッド・コンベアである。レール21は、作業場所等に合わせて適宜配索されるが、本実施形態では、レール21はX軸方向(左右方向、搬送方向の一例)に延出し、被塗物40は+X軸方向に搬送されるものとして説明する。
【0026】
ハンガー23は、図1図3及び図4に示すように、全体として上下方向に延出し、上端部(接続部)23Aがレール21に接続され、下側部分が被塗物40と係合する二股フック状の係合部23Bとなっている。ハンガー23は、例えば金属製パイプを折り曲げ加工することで製造されるが、材質や形状等は限定されず、搬送される被塗物40に合わせて適宜変更可能である。ハンガー23は、レール21に対して間隔を空けて複数が接続され、各ハンガー23に対して被塗物40が1つずつ吊り下げられて次々に搬送されるものとする。
【0027】
被塗物40は、図1図3及び図4に示すように、少なくとも平坦な第1面(例えば天面41)と、第1面と交わる方向に延在する第2面(例えば背面43)と、を有するものとされ、本実施形態では、前面開口45を有する直方体状の箱体を一例に説明する。被塗物40は、前面開口45に対してハンガー23の係合部23Bが挿入されることで、ハンガー23によって吊り下げられる。なお、被塗物40の第2面の形状は平坦状に限らず、例えば凹凸形状や曲面状であっても構わない。第1面が平坦状で、第2面が凹凸形状の被塗物の具体例としては、トランス用箱体140(後述する実施形態2参照)、第1面が平坦状で、第2面が曲面状の被塗物の具体例としては、円筒状の水筒用容器が挙げられる。
【0028】
ハンガー23の接続部23Aは、レール21に対して過度に固定されておらず、一定程度の可動性を有する形でレール21に接続されている。接続部23Aは、作業者が力を加えることで、レール21の延出方向(X軸方向)に沿って移動可能に取り付けられている。これにより、作業者は被塗物40をハンガー23に対して容易に吊り下げられるようになり、被塗物40の吊り下げ作業の高速化、効率化を図ることができる。また、ハンガー23は大きさや形状の異なる被塗物40に対しても共用可能に設計されており、これにより被塗物40の吊り下げ作業の共通化を図ることができる。
【0029】
一方で、このようにハンガー23を設けると、被塗物40の吊り下げ状態には一定程度のバラつきが生じてしまう。より詳しくは、吊り下げられた被塗物40の基本搬送状態を、図3及び図4に示すように、天面41が水平面(X-Y面)に平行である(条件1)、天面41の中心41Aがハンガー23の接続部23Aの鉛直下方(Z軸方向の延長線L1上)に位置する(条件2、換言すると、中心41Aと接続部23AのX軸方向及びY軸方向の位置は一致する)、という条件を満たす状態とするとき、被塗物40を常に基本搬送状態となるように吊り下げることは難しい。
【0030】
例えば、図5から図6に示すように、被塗物40の前面開口45に対して、ハンガー23の係合部23Bを挿入する深さ(挿入長)が小さい状態を考える。この場合、天面41は、Y軸方向について後方に向かうにつれて下降傾斜するようになる。天面41は、Y-Z面方向から視た際、2点鎖線で示された基本搬送状態に対して、水平面から傾斜角度θ(傾きの一例)だけ傾いてしまい、条件1を満たない。また、天面41の中心41AはY軸方向についてハンガー23の接続部23AからΔYだけずれてしまい、条件2を満たさない。また例えば、図7に示すように、前面開口45に対してハンガー23を挿入する位置が搬送方向下流側にずれると、天面41の中心41Aはハンガー23の接続部23AからX軸方向についてΔXだけずれてしまい、条件2を満たさない。
【0031】
一般に、塗装ロボット30のティーチングデータは、吊り下げられた被塗物40が所定の状態にある場合を想定して設定される。本実施形態では、被塗物40が図3から図4に示すように、上記条件1から2を満たす基本搬送状態を想定してティーチングデータが設定されている。このため、被塗物40が図5から図7に示すように、基本搬送状態からのズレを含んで吊り下げられ、そのまま塗装ロボット30に搬送されると、ティーチングデータに含まれる塗装ロボット30の塗料の噴射開始位置、噴射停止位置、及び噴射方向等は、実際に搬送される被装物40には適さず、塗装不良(作業不良)が生じることがある。そこで本実施形態に係る制御システム10の制御部70は、距離センサ51,52,53の検出結果に基づき、吊り下げられた被塗物40の基本搬送状態からのズレ量(各ズレ量θ、ΔY、ΔX)を算出し、算出したズレに基づいてティーチングデータを修正している。
【0032】
なお、ティーチングデータは、被塗物40の吊り下げ状態だけでなく、被塗物40の形状及び大きさによっても異なる値となる。本実施形態では、搬送される被塗物40の形状及び大きさが予め特定されており、それに応じたティーチングデータが設定されているものとする。ただし、被塗物40の形状及び大きさは予め特定されておらず、例えば被塗物40に貼り付けられた識別情報タグを読み取ることで、特定されるような仕組みであっても構わない。
【0033】
距離センサ51,52,53は、図1及び図3に示すように、塗装ロボット30より搬送方向上流において床面に立設されたフレーム55(支持部材の一例)に固定されている。フレーム55は、被塗物40がハンガー23に吊り下げられた状態で内部を通過可能となるように枠状に形成されているが、距離センサ51,52,53を固定可能であれば、形状等は限定されない。本実施形態に係るフレーム55は、図3に示すように、レール21の直上においてレール21と直交するようにY軸方向に延出する棒状の第1フレーム55Aと、Z軸方向に延出する棒状の第2フレーム55Bと、を有する。第1距離センサ51及び第2距離センサ52は、第1フレーム55Aに所定の間隔Y1を空けて並んで固定されており、搬送される被塗物40の天面41と対向可能となっている。第3距離センサ53は、第2フレーム55Bに固定されており、搬送される被塗物40の背面43と対向可能となっている。
【0034】
各距離センサ51,52,53は、レーザー光を発光する発光部と、被塗物40の表面(天面41または背面43)によって反射されたレーザー光を受光する受光部と、を備える。各距離センサ51,52,53は、発光部から発光したレーザー光が直進し、反射によって受光部に戻って受信されるまでの時間に基づいて、各距離センサ51,52,53から被塗物40の表面までの距離を測定する。第1距離センサ51、及び第2距離センサ52は、図6に示すように、-Z軸方向にレーザー光を発信し、直進するレーザー光が当たる天面41の第1測定点41Bとの距離Z1、第2測定点41Cとの距離Z2をそれぞれ測定する。第3距離センサ53は、-Y軸方向にレーザー光を発信し、直進するレーザー光が当たる背面43の第3測定点43Bとの距離Y3を測定する。
【0035】
制御部70は、第1距離センサ51及び第2距離センサ52の検出結果(距離Z1,Z2)に基づいて水平面(X-Y面)に対する被塗物40の天面41の傾斜角度θを算出する。傾斜角度θは、図6に示すように、次式で表される。
tan(θ)=(Z2-Z1)/Y1
θ=tan-1{(Z2-Z1)/Y1}
【0036】
また、制御部70は、上記傾斜角度θ、第3距離センサ53の検出結果(距離Y3)、及び予め特定されている被塗物40の形状及び大きさに基づいて、Y軸方向のズレ量ΔYを算出する。さらに、第3距離センサ53の検出結果(距離Y3)を連続的に検出することで、その変化によって被塗物40の搬送方向の最下流部または最上流部(本実施形態では、図6に示すように背面43の最下流部43B1または最上流部43B2)の通過を検出できる。これにより、制御部70はY軸方向のズレ量ΔXを算出すると共に、搬送方向における作業対象物の進行方向先端部の位置を算出し、塗装ガン35が塗料を噴射する開始タイミングを算出できる。
【0037】
制御部70は、このように算出したズレ量(θ、ΔY、ΔX)に基づきティーチングデータを修正し、修正したティーチングデータに基づいて、塗装ロボット30を制御する。具体的には、塗装ロボット30のロボットベース31の基準点の床面(水平面)に対する角度を補正し、天面41の中心41Aとの位置関係をY軸方向やZ軸方向に補正する。また、塗装ガン35が塗料を噴射する開始タイミング(ひいては終了タイミング)を補正する。
【0038】
制御部70は、算出した各ズレ量θ、ΔY、ΔXが全てゼロである場合には、ティーチングデータを修正せずに、塗装ロボット30を制御する。また、制御部70は、算出した各ズレ量θ、ΔY、ΔXが、それぞれに対して予め設定された修正許容上限値θmax、ΔYmax、ΔXmaxを上回る場合には、修正可能範囲を超えていると判定し、エラー等を警告する仕組みとしてもよい。
【0039】
以上説明した制御システム10によれば、制御部70は、距離センサ51,52,53の検出結果に基づき、搬送される被塗物40の基本搬送状態からのズレ量(各ズレ量θ、ΔY、ΔX)を算出できる。そして、制御部70は、この算出結果に基づいてティーチングデータを修正し、修正したティーチングデータに基づいて作業ロボットを制御することで、修正ティーチングを実現できる。ティーチングデータに含まれる塗装ロボット30の塗料の噴射開始位置、噴射停止位置、及び噴射方向等は、実際に搬送される被装物40の搬送状態(吊り下げ状態)の検出結果に基づき修正されるため、塗装不良(作業不良)が抑制され、被装物40を好適に塗装できる。
【0040】
また、制御システム10において、距離センサ51,52,53は、塗装ロボット30ではなく、フレーム55に固定されている。距離センサ51,52,53が塗装ロボット30とは別に設けられることで、特許文献1に記載の従来技術のように、距離センサ51,52,53を位置合わせする必要がなく、位置合わせに伴う生産速度の低下を抑制できる。また、距離センサ51,52,53が塗装ロボット30より搬送方向上流に設けられていることで、距離センサ51,52,53による被塗物40の搬送状態の検出作業と、塗装ロボット30による塗料の噴射作業を同時に並行して進行することができる。その結果、生産速度の低下をより一層抑制できる。さらに、距離センサ51,52,53は、塗装ロボット30に取り付ける必要がないため専用品に限られない。距離センサ51,52,53に汎用品を用いることでコスト高を抑制できると共に、制御システム10全体が複雑化することがなく、故障発生の増大も抑制できる。
【0041】
<実施形態2>
実施形態2に係る制御システム110について図8を参照して説明する。制御システム110は、コンベア120のハンガー123の構成、並びに第1距離センサ51及び第2距離センサ52の取付位置が実施形態1と異なる。実施形態2において、実施形態1と同様の構成、作用及び効果については重複する説明は省略する。
【0042】
コンベア120は、図8に示すように、ハンガー123の係合部123Bが、被塗物140の4つの角部に係合することで、被塗物140を吊り下げて搬送する。被塗物140は、底面142(第1面の別の一例)が平坦状で、背面143を含む側面全体が凹凸形状を有し、上方に開口するトランス用箱体である。
【0043】
第1距離センサ51及び第2距離センサ52は、フレーム55において、Y軸方向に棒状に延出し、搬送される被塗物140の下方となる第3フレーム55Cに固定されている。これにより、各距離センサ51,52は、被塗物140の底面142と対向可能となっている。各距離センサ51,52は、+Z軸方向にレーザー光を発信し、直進するレーザー光が当たる底面142の第1測定点、第2測定点との距離をそれぞれ測定する。
【0044】
<他の実施形態>
本技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本技術の技術的範囲に含まれる。
【0045】
(1)吹付材料は、塗料以外の潤滑剤、シーリング材等でも良く、その種類は限定されない。また、吹付材料は、液状、粉状、またはこれらの混合状等、吹付可能であれば、その状態は限定されない。例えば吹付材料が塗料の場合、液体塗料や粉体塗料を用いることができる。
【0046】
(2)搬送装置はオーバーヘッド・コンベア20,120に限らず、例えば被塗物40を下方または側方から支持して搬送する構成であっても構わない。
【0047】
(3)制御部70及び記憶部80の実装場所は限定されず、例えば塗装ロボット30に内蔵されていても、それ以外のコンピュータや外部のサーバに内蔵されていても構わない。
【符号の説明】
【0048】
10,110…制御システム、20,120…コンベア(搬送装置の一例)、21…レール、23,123…ハンガー、30…塗装ロボット(作業ロボットの一例)、31…ロボットベース、33…ロボットアーム、35…塗装ガン(噴射ガンの一例)、40…被塗物(作業対象物の一例)、41…天面(第1面の一例)、43,143…背面(第2面の一例)、51…第1距離センサ、52…第2距離センサ、53…第3距離センサ、55…フレーム(支持部材の一例)、70…制御部、142…底面(第1面の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8