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特開2023-32172発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032172
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
C08J9/16 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138128
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基理人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】木口 太郎
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA33
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA95
4F074CA32
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA46
4F074CA49
4F074DA08
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る、新規の発泡性樹脂粒子を提供すること。
【解決手段】基材樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、基材樹脂は、アクリロニトリルに由来する構成単位と、スチレンに由来する構成単位および/または、α-メチルスチレンに由来する構成単位を含み、発泡性樹脂粒子の表面に、特定の脂肪酸グリセリドを特定量含有する、発泡性樹脂粒子とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、
前記基材樹脂は、アクリロニトリルに由来する構成単位と、スチレンに由来する構成単位および/または、α-メチルスチレンに由来する構成単位を含み、
前記発泡性樹脂粒子100重量部の表面に、凝固点が25℃以下の脂肪酸グリセリドを0.02重量部~0.04重量部含有する、発泡性樹脂粒子。
【請求項2】
前記脂肪酸グリセリドは、リシノール酸、オレイン酸およびラウリン酸からなる群から選択される1種以上を主成分とする脂肪酸トリグリセリドである、請求項1に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項3】
前記脂肪酸グリセリドは、リシノール酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドである、請求項1または2に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項4】
前記脂肪酸グリセリドはひまし油である、請求項1~3の何れか一項に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項5】
前記基材樹脂は、当該基材樹脂100重量部中、前記アクリロニトリルに由来する構成単位を15重量部~30重量部含有する、請求項1~4の何れか一項に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項6】
前記発泡性樹脂粒子の100重量部の表面に、高級脂肪酸の金属塩を0.2重量部~0.4重量部含有する、請求項1~5の何れか一項に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の発泡性樹脂粒子を発泡してなる、発泡粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の発泡粒子を成形してなる、発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性樹脂粒子は発泡および成形により容易に発泡成形体を得ることができる。発泡性樹脂粒子および発泡成形体の製造コストは安価であることから、当該発泡成形体は一般的に広く利用されている。
【0003】
様々な課題を解決するために、様々な種類の発泡性樹脂粒子が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、三次発泡および寸法変化の低減を課題として、アルファメチルスチレンおよびアクリロニトリルを含み、表面が常温の食用油で被覆された発泡性熱可塑性共重合体の粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開1985-206844
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術は、発泡成形体の耐熱性、生産効率および強度の観点からは十分なものでなく、さらなる改善の余地があった。
【0007】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る、新規の発泡性樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、発泡性樹脂粒子の表面に特定の脂肪酸グリセリドが特定量塗布されてなる発泡性樹脂粒子であれば、前記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕基材樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、前記基材樹脂は、アクリロニトリルに由来する構成単位と、スチレンに由来する構成単位および/または、α-メチルスチレンに由来する構成単位を含み、前記発泡性樹脂粒子100重量部の表面に、凝固点が25℃以下の脂肪酸グリセリドを0.02重量部~0.04重量部含有する、発泡性樹脂粒子。
〔2〕前記脂肪酸グリセリドは、リシノール酸、オレイン酸およびラウリン酸からなる群から選択される1種以上を主成分とする脂肪酸トリグリセリドである、〔1〕に記載の発泡性樹脂粒子。
〔3〕前記脂肪酸グリセリドは、リシノール酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドである、〔1〕または〔2〕に記載の発泡性樹脂粒子。
〔4〕前記脂肪酸グリセリドはひまし油である、〔1〕~〔3〕の何れか一つに記載の発泡性樹脂粒子。
〔5〕前記基材樹脂は、当該基材樹脂100重量部中、前記アクリロニトリルに由来する構成単位を15重量部~30重量部含有する、〔1〕~〔4〕の何れか一つに記載の発泡性樹脂粒子。
〔6〕前記発泡性樹脂粒子の100重量部の表面に、高級脂肪酸の金属塩を0.2重量部~0.4重量部含有する、〔1〕~〔5〕の何れか一つに記載の発泡性樹脂粒子。
〔7〕〔1〕~〔6〕の何れか一つに記載の発泡性樹脂粒子を発泡してなる、発泡粒子。
〔8〕〔7〕に記載の発泡粒子を成形してなる、発泡成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る、新規の発泡性樹脂粒子を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0012】
本明細書においてX単量体に由来する構成単位を、「X単位」とも称する。また、本明細書において特記しない限り、構成単位として、X単位と、X単位と、・・・およびX単位(nは2以上の整数)とを含む共重合体を、「X/X/・・・/X共重合体」とも称する。X/X/・・・/X共重合体としては、明示されている場合を除き、重合様式は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0013】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
発泡成形体の物性として、耐熱性が求められる場合がある。発泡性樹脂粒子の中でも、アクリロニトリル単位を有する発泡性樹脂粒子は、耐熱性に優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。そのため、本発明者は、まず、耐熱性に優れる発泡成形体を提供するために、アクリロニトリル単位を有する発泡性樹脂粒子の提供について検討した。
【0014】
一方で、アクリロニトリル単位は、発泡性樹脂粒子にガスバリア性を付与する。それ故、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は高いガスバリア性を有する。
【0015】
本発明者は、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子を、金型を用いて成形したとき、得られた発泡成形体を金型から取り出すと、アクリロニトリル単位を含まない一般的なポリスチレン系発泡成形体と比較して、発泡成形体が膨れ易い、という新規知見を得た。発泡成形体が膨張した場合、(a)得られる発泡成形体の寸法および形状が変化することで製品として利用できない問題、並びに(b)膨張により成形金型から離型できなくなる問題、などが発生する。かかる発泡成形体の膨張について検討したところ、本発明者は、以下の推測に至った:発泡成形体の膨張の直接の原因は、成形に使用したガス(発泡剤)が、金型から取り出された発泡成形体の発泡粒子内に残っており、当該ガスにより発泡成形体が膨張することであると推測した。また、上述したように、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は高いガスバリア性を有するため、当該発泡粒子の金型を使用した成形において、発泡成形体からガスが抜け難い傾向があり、それ故、発泡成形体内の発泡圧が下がり難い傾向があると推測した。さらに、成形後の発泡成形体の発泡粒子内に残存したガスは、成形後、金型を冷却することにより、金型内の発泡成形体を冷却する冷却工程において、発泡成形体からガスが抜けると推測した。すなわち、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子から膨張の少ない発泡成形体を得たい場合には、冷却工程の時間を長く設定する必要があり、成形サイクル(1回の成形に要する時間、ともいえる)が長くなりやすい傾向があった。
【0016】
そこで、本発明者は、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を用いる場合であっても、発泡成形体を短い成形サイクルで提供できるよう、鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、驚くべきことに、発泡性樹脂粒子の表面に凝固点が25℃以下の脂肪酸グリセリドを含有させることにより、短い成形サイクルで発泡成形体が提供できるという知見を独自に見出した。
【0017】
本発明者は、鋭意検討の過程において、発泡性樹脂粒子の表面の脂肪酸グリセリドの含有量が多い場合には、得られる発泡成形体の強度が低下するという知見も独自に得た。かかる発泡成形体の強度低下の原因は定かではないが、以下のように推測される:発泡性樹脂粒子の表面に多量の脂肪酸グリセリドが存在する場合、当該発泡性樹脂粒子を発泡して成る発泡粒子の表面に多量のクラックが生じ得る。かかるクラックに起因して、発泡粒子を成形してなる発泡成形体の強度も低下すると推測される。なお、本発明の一実施形態は、かかる推測に限定されない。
【0018】
そこで、本発明者は、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子を用いる場合であっても、強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供できるよう、さらに鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、驚くべきことに、アクリロニトリル単位を含む発泡性樹脂粒子の表面に凝固点が25℃以下の脂肪酸グリセリドを0.02重量部~0.04重量部含有することにより、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る発泡性樹脂粒子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
〔2.発泡性樹脂粒子〕
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、基材樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、前記基材樹脂は、アクリロニトリルに由来する構成単位と、スチレンに由来する構成単位および/または、α-メチルスチレンに由来する構成単位を含み、前記発泡性樹脂粒子100重量部の表面に、凝固点が25℃以下の脂肪酸グリセリドを0.02重量部~0.04重量部含有する。
【0020】
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、上述した構成を有するため、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。
【0021】
本明細書の以下の記載においては、表面に脂肪酸グリセリドを含まない発泡性樹脂粒子(発泡性樹脂粒子そのもの、または発泡性樹脂粒子それ自体、ともいえる)を「発泡性樹脂粒子本体」と称する場合があり、その表面に脂肪酸グリセリドを含有する発泡性樹脂粒子を「発泡性樹脂粒子」と称する場合がある。また、本明細書において、発泡性樹脂粒子を発泡して得られる粒子を「発泡粒子」と称する場合があり、当該発泡粒子を成形して得られる成形体を「発泡成形体」と称する場合がある。また、本明細書において、「本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子本体」を「本発泡性樹脂粒子本体」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子」を「本発泡性樹脂粒子」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る発泡粒子」を「本発泡粒子」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る発泡成形体」を「本発泡成形体」と称する場合がある。
【0022】
〔発泡性樹脂粒子本体〕
本発泡性樹脂粒子本体は、基材樹脂と発泡剤とを含む。
【0023】
〔基材樹脂〕
本発明の一実施形態において、基材樹脂は、アクリロニトリル単位と、スチレン単位および/または、α-メチルスチレン単位を含む。
【0024】
基材樹脂は、当該基材樹脂100重量部中、アクリロニトリル単位を15重量部~30重量部含有することが好ましく、18重量部~27重量部含有することがより好ましく、20重量部~25重量部含有することがさらに好ましく、24重量部~25重量部含有することが特に好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、(a)発泡性に優れ、(b)耐熱性により優れ、かつ成形時の融着性に優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。基材樹脂が、当該基材樹脂100重量部中アクリロニトリル単位を、(a)15重量部以上含む場合、得られる発泡成形体の耐熱性が十分なものとなり易く、(b)30重量部以下含む場合、発泡粒子および発泡成形体の発泡倍率があがり易く、得られる発泡成形体の融着性が良好となる傾向がある。
【0025】
基材樹脂は、当該基材樹脂100重量部中、スチレン単位を40重量部~90重量部含有することが好ましく、50重量部~85重量部含有することがより好ましく、65重量部~80重量部含有することがさらに好ましく、70重量部~76重量部含有することが特に好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、(a)発泡性に優れ、(b)耐熱性と成形性とのバランスに優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。基材樹脂が、当該基材樹脂100重量部中スチレン単位を、(a)40重量部以上含む場合、得られる発泡性樹脂粒子の発泡性、および得られる発泡成形体の成形性の両方が優れるため、高い加熱温度が必要とならない傾向があり、(b)90重量部以下含む場合、耐熱性が良好である発泡成形体が得られ易い傾向がある。
【0026】
基材樹脂は、当該基材樹脂100重量部中、α-メチルスチレン単位を3重量部~75重量部含有することが好ましく、3重量部~40重量部含有することがより好ましく、3重量部~20重量部含有することがさらに好ましく、4重量部~10重量部含有することが特に好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、耐熱性が良好であり、残存する単量体成分が少ない発泡成形体を提供できるという利点を有する。基材樹脂が、当該基材樹脂100重量部中α-メチルスチレン単位を、(a)3重量部以上含む場合、耐熱性が良好である発泡成形体が得られ易く、(b)75重量部以下含む場合、重合反応が完結し難くなる虞がなく、単量体成分の残存量が少ない発泡成形体が得られやすい傾向がある。
【0027】
基材樹脂におけるスチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位の含有比率としては特に限定されず、所望する発泡成形体の特性に応じて適宜設定すればよい。例えば、発泡性樹脂粒子の発泡、および発泡粒子の成形が容易となり、耐熱性が良好であり、かつ単量体成分の残存量が少ない発泡成形体が得られることから、基材樹脂におけるスチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位の含有比率(スチレン単位の重量部/アクリロニトリル単位の重量部/α-メチルスチレン単位の重量部)は、65~82/15~30/3~20が好ましく、65~79/18~26/3~10がより好ましく、70~76/20~26/4~6がさらに好ましく、70~73/23~25/4~6が特に好ましい。なお、単量体成分の残存量が少ない発泡成形体は建築内装材として好適に使用でき、耐熱性に優れる発泡成形体は屋外断熱材として好適に使用できる。また、耐熱性に優れる発泡成形体が得られることから、基材樹脂におけるスチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位の含有比率(スチレン単位の重量部/アクリロニトリル単位の重量部/α-メチルスチレン単位の重量部)は、20~80/10~30/10~50が好ましく、30~75/14~25/11~45がより好ましく、40~70/14~20/15~40がさらに好ましく、44~66/14~21/19~36が特に好ましい。また、特に発泡性樹脂粒子の発泡性がやや劣るものの、耐熱性により優れる発泡成形体を得ることができることから、基材樹脂におけるスチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位の含有比率(スチレン単位の重量部/アクリロニトリル単位の重量部/α-メチルスチレン単位の重量部)は、0/15~50/50~85が好ましく、0/20~40/60~80がより好ましく、0/25~35/65~75がさらに好ましく、0/28~32/68~72が特に好ましい。
【0028】
基材樹脂は、スチレン、アクリロニトリルおよびα-メチルスチレン以外の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。スチレン、アクリロニトリルおよびα-メチルスチレン以外の単量体としては、(a)パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系誘導体(ただし、スチレンおよびα-メチルスチレン以外)、および(b)アクリル酸エステル単量体等が挙げられる。
【0029】
アクリル酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0030】
基材樹脂に含まれ得る、スチレン、アクリロニトリルおよびα-メチルスチレン以外の単量体に由来する構成単位は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
〔発泡剤〕
本発泡性樹脂粒子が含む発泡剤としては、特に限定されない。発泡剤の具体例としては、例えば、(a)プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の、炭素数3~5の脂肪族炭化水素類;および(b)ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等の、オゾン破壊係数がゼロであるフルオロカーボン類;等の揮発性発泡剤が挙げられる。これら発泡剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。発泡剤の含有量は、基材樹脂100重量部に対して、3重量部~10重量部が好ましく、4重量部~8重量部がより好ましい。発泡剤の含有量が基材樹脂100重量部に対して、(a)3重量部以上であると、所望する発泡倍率を得ることが容易となる傾向にあり、(b)10重量部以下であると、発泡剤を含浸させる工程で発泡性樹脂粒子本体の凝集が生じ難くなる傾向にある。また、含浸工程を安定に実施するとともに、十分な発泡力を有する発泡性樹脂粒子を得る観点から、(a)発泡剤の含有量は、基材樹脂100重量部に対して、4重量部以上6重量部以下であることが特に好ましく、(b)発泡剤として、n-ブタンおよびイソブタンを組み合わせて使用することが好ましい。
【0032】
発泡性樹脂粒子本体の製造方法としては、基材樹脂を調製(重合)した後、得られた基材樹脂に発泡剤を含浸させる方法が挙げられる。基材樹脂の調製方法(重合方法)および発泡剤の含浸方法については、いずれも、公知の製造方法を適用することができ、特に限定されない。但し、基材樹脂の調製方法としてシード懸濁重合法を採用する場合には、シードとなる樹脂粒子本体中の構成単位(すなわち、シードの含有する構成単位)も、発泡性樹脂粒子本体の構成単位として包含される。
【0033】
〔脂肪酸グリセリド〕
本発明の一実施形態に係る脂肪酸グリセリドは、凝固点が25℃以下である。発泡性樹脂粒子本体の表面に脂肪酸グリセリドを塗布することにより、発泡性樹脂粒子の表面に脂肪酸グリセリドを含有する発泡性樹脂粒子を得ることができる。脂肪酸グリセリドは、外添剤ともいえる。
【0034】
尚、発泡性樹脂粒子本体に塗布された脂肪酸グリセリドは、実質的にその全量が発泡性樹脂粒子本体に付着し、発泡性樹脂粒子に含有される(すなわち、外添剤として作用する)。発泡性樹脂粒子本体に対する脂肪酸グリセリドの塗布量は、発泡性樹脂粒子における脂肪酸グリセリドの含有量と言える。
【0035】
本発泡性樹脂粒子は、その表面に凝固点が25℃以下である脂肪酸グリセリドを含有することにより、発泡成形体を短い成形サイクルで提供することができる。凝固点が25℃以下である脂肪酸グリセリドにより、発泡成形体の成形サイクルが短くなる理由は定かではないが、以下のように推察される:表面に凝固点が25℃以下である脂肪酸グリセリドを含有する発泡性樹脂粒子を発泡(加熱)するとき、発泡性樹脂粒子表面の脂肪酸グリセリドが当該表面を可塑化させる。これにより、得られる発泡粒子の表面にクラックが生じ得る。表面に凝固点が25℃以下である脂肪酸グリセリドを含有する発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子の金型を用いる成形では、発泡粒子表面の可塑化および発泡粒子表面のクラック等により、発泡成形体からのガスの散逸が促進される。そのため、当該発泡粒子の成形では発泡成形体の冷却時間を短くでき、その結果、当該発泡粒子は、短い成形サイクルで発泡成形体を得ることができる。なお、本発明は、かかる推察に限定されるものではない。
【0036】
本明細書において、脂肪酸グリセリドとは、脂肪酸とグリセリンとのエステルを意図し、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリドおよび脂肪酸トリグリセリドを含む。また、脂肪酸グリセリドは、1種の脂肪酸グリセリドから構成されていてもよく、2種以上の脂肪酸グリセリドの混合物であってもよい。脂肪酸グリセリドが、2種以上の脂肪酸グリセリドの混合物である場合、「凝固点が25℃以下である脂肪酸グリセリド」とは、2種以上の脂肪酸グリセリドの混合物の凝固点が25℃以下であることを意図する。本明細書において、用語「脂肪酸グリセリド」は、脂肪酸グリセリドと脂肪酸グリセリドの混合物との両方を包含する。
【0037】
脂肪酸グリセリドは、炭素数12~18の脂肪酸を含む脂肪酸混合物を原料として構成されたものであることが好ましい。脂肪酸グリセリドは、原料の脂肪酸100重量%中、炭素数12~18の脂肪酸を40重量%以上含む脂肪酸混合物を原料として構成されたものであることが好ましい。脂肪酸グリセリドの原料の脂肪酸において、当該脂肪酸100重量%中、最も多く含まれる脂肪酸を当該脂肪酸グリセリドの「主成分」と称する場合がある。換言すると、脂肪酸グリセリドは、炭素数12~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸グリセリドであることが好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、発泡成形体をより短い成形サイクルで提供することができるという利点を有する。
【0038】
なお、脂肪酸グリセリドを加水分解すると、脂肪酸(脂肪酸混合物)とグリセリンとに分かれる。それ故、「脂肪酸グリセリドは、炭素数12~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸グリセリドである」とは、「脂肪酸グリセリドを加水分解して得られた脂肪酸(脂肪酸混合物)の主成分が炭素数12~18の脂肪酸である」ともいえる。
【0039】
脂肪酸グリセリドは、炭素数12~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸グリセリドであることが好ましく、炭素数16~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸グリセリドであることがより好ましく、炭素数16~18の不飽和脂肪酸を主成分とする脂肪酸グリセリドであることがさらに好ましく、炭素数18の不飽和脂肪酸を主成分とする脂肪酸グリセリドであることが特に好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、発泡成形体をより短い成形サイクルで提供することができるという利点を有する。
【0040】
脂肪酸グリセリドは、炭素数12~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドであることが好ましく、炭素数16~18の脂肪酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドであることがより好ましく、炭素数16~18の不飽和脂肪酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドであることがさらに好ましく、炭素数18の不飽和脂肪酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドであることが特に好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、発泡成形体をより短い成形サイクルで提供することができるという利点を有する。
【0041】
脂肪酸グリセリドを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。脂肪酸グリセリドを構成する脂肪酸が不飽和脂肪酸である場合、当該脂肪酸の炭化水素鎖に存在する炭素-炭素二重結合または三重結合の数は特に限定されず、1つであってもよく2つ以上であってもよい。
【0042】
脂肪酸グリセリドは、リシノール酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルチミン酸、リノール酸、ステアリン酸およびミリスチン酸からなる群から選択される1種以上を主成分とする脂肪酸グリセリドであることが好ましく、リシノール酸、オレイン酸およびラウリン酸からなる群から選択される1種以上を主成分とする脂肪酸グリセリドであることがより好ましく、リシノール酸を主成分とする脂肪酸グリセリドであることがさらに好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、発泡成形体をさらに短い成形サイクルで提供することができるという利点を有する。
【0043】
脂肪酸グリセリドは、リシノール酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルチミン酸、リノール酸、ステアリン酸およびミリスチン酸からなる群から選択される1種以上を主成分とする脂肪酸トリグリセリドであることが好ましく、リシノール酸、オレイン酸およびラウリン酸からなる群から選択される1種以上を主成分とする脂肪酸トリグリセリドであることがより好ましく、リシノール酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドであることがさらに好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、発泡成形体をよりさらに短い成形サイクルで提供することができるという利点を有する。
【0044】
脂肪酸グリセリドとしては、2種以上の脂肪酸グリセリドの混合物として、植物油を使用することもできる。
【0045】
例えば、ひまし油は、リシノール酸とその他の脂肪酸(例えばオレイン酸)とを含む脂肪酸混合物とグリセリンとからなる脂肪酸トリグリセリドであり、当該脂肪酸混合物は、脂肪酸混合物100重量%中、リシノール酸を80重量%~90重量%含み得る。すなわち、ひまし油は、リシノール酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドである。
【0046】
また、やし油は、ラウリン酸とその他の脂肪酸(例えばミリスチン酸およびパルミチン酸)とを含む脂肪酸混合物とグリセリンとからなる脂肪酸トリグリセリドであり、当該脂肪酸混合物は、脂肪酸混合物100重量%中、ラウリン酸を50重量%~60重量%含み得る。すなわち、やし油は、ラウリン酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドである。
また、オリーブ油は、オレイン酸とその他の脂肪酸(例えばパルミチン酸)とを含む脂肪酸混合物とグリセリンとからなる脂肪酸トリグリセリドであり、当該脂肪酸混合物は、脂肪酸混合物100重量%中、オレイン酸を60重量%~80重量%含み得る。すなわち、オレイン油は、オレイン酸を主成分とする脂肪酸トリグリセリドである。
【0047】
脂肪酸グリセリドは、ひまし油、やし油およびオリーブ油からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、ひまし油であることが特に好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、発泡成形体をさらに短い成形サイクルで提供することができるという利点を有する。
【0048】
本発泡樹脂粒子における脂肪酸グリセリドの含有量(換言すれば、発泡性樹脂粒子本体100重量部に対する脂肪酸グリセリドの塗布量)は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.02重量部~0.04重量部であり、0.03重量部であることが特に好ましい。脂肪酸グリセリドの前記含有量が、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.02重量部以上である場合、脂肪酸グリセリドによる成形サイクル短縮化の効果が十分に発揮されるという利点がある。脂肪酸グリセリドの前記含有量が、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.04重量部以下である場合、得られる発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子表面が可塑化が適切な範囲内となり、当該発泡粒子表面に存在するクラックも適切な範囲内となる。その結果、得られる発泡性樹脂粒子から最終的に得られる発泡成形体が十分な強度(例えば曲げ強度)を有するという利点を有する。
【0049】
脂肪酸グリセリドを発泡性樹脂粒子本体の表面に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、脂肪酸グリセリドを発泡性樹脂粒子本体に添加し、得られた混合物を混合することによって、発泡性樹脂粒子本体の表面に脂肪酸グリセリドを塗布することができる。より具体的には、ブレンダー等の混合機器を用いて、発泡性樹脂粒子本体と脂肪酸グリセリドとを十分に混合する方法が挙げられる。
【0050】
〔高級脂肪酸の金属塩〕
本発泡性樹脂粒子は、当該発泡性樹脂粒子の表面に高級脂肪酸の金属塩を含有することが好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、耐ブロッキング性に優れるという利点、および粒子に均一に塗布しやすいという利点を有する。なお、「耐ブロッキング性」とは、発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子としたときにおける発泡粒子のブロッキング(発泡粒子同士が結合し、凝集したもの)を抑制することができる特性を意図する。すなわち、発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子としたときにおける発泡粒子のブロッキングが少ない程、当該発泡性樹脂粒子は耐ブロッキング性に優れるといえる。
【0051】
発泡性樹脂粒子本体の表面に高級脂肪酸の金属塩を塗布することにより、発泡性樹脂粒子の表面に高級脂肪酸の金属塩を含有する発泡性樹脂粒子を得ることができる。高級脂肪酸の金属塩は、外添剤ともいえる。
【0052】
尚、発泡性樹脂粒子本体に塗布された高級脂肪酸の金属塩は、実質的にその全量が発泡性樹脂粒子本体に付着し、発泡性樹脂粒子に含有される(すなわち、外添剤として作用する)。発泡性樹脂粒子本体に対する高級脂肪酸の金属塩の塗布量は、発泡性樹脂粒子における高級脂肪酸の金属塩の含有量と言える。
【0053】
高級脂肪酸の金属塩は、アルキル基部分の炭素数が、12~20であることが好ましく、16~18であることがより好ましい。当該構成によると、得られる発泡性樹脂粒子は、耐ブロッキング性により優れるという利点、およびハンドリングが容易であるという利点を有する。
【0054】
高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、例えば、(a)ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等のステアリン酸金属塩;(b)オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;および(c)ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム等のラウリン酸金属塩が挙げられる。これら高級脂肪酸の金属塩は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、粒度分布がハンドリングに好適であり、塗布に好適な融点を示すことから、ステアリン酸金属塩がより好ましい。
【0055】
更に、成形時に発泡粒子間の融着を阻害しにくいことからで、高級脂肪酸の金属塩はステアリン酸亜鉛であることがさらに好ましい。
【0056】
本発泡樹脂粒子における高級脂肪酸の金属塩の含有量(換言すれば、発泡性樹脂粒子本体100重量部に対する高級脂肪酸の金属塩の塗布量)は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.2重量部~0.4重量部であることが好ましく、0.3重量部であることが特に好ましい。高級脂肪酸の金属塩の前記含有量が、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.2重量部以上である場合、高級脂肪酸の金属塩によるブロッキング低減効果が十分に発揮されるという利点がある。高級脂肪酸の金属塩の前記含有量が、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.4重量部以下である場合、発泡粒子を成形する際の融着性が阻害され難いという利点を有する。
【0057】
高級脂肪酸の金属塩を発泡性樹脂粒子本体の表面に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、高級脂肪酸の金属塩を発泡性樹脂粒子本体に添加し、得られた混合物を混合することによって、発泡性樹脂粒子本体の表面に高級脂肪酸の金属塩を塗布することができる。より具体的には、ブレンダー等の混合機器を用いて、発泡性樹脂粒子本体と高級脂肪酸の金属塩とを十分に混合する方法が挙げられる。
【0058】
高級脂肪酸の金属塩は、脂肪酸グリセリドの塗布が終了した後の発泡性樹脂粒子本体に対して、塗布するのが好ましい。本発明者は、脂肪酸グリセリドの塗布前の発泡性樹脂粒子本体に対して高級脂肪酸の金属塩を塗布する場合と比較して、脂肪酸グリセリドの塗布が終了した後の発泡性樹脂粒子本体に対して高級脂肪酸の金属塩を塗布する場合、驚くべきことに、高級脂肪酸の金属塩によるブロッキング低減効果がより発揮されるという知見を独自に得た。
【0059】
〔添加剤等〕
本発泡性樹脂粒子は、溶剤、可塑剤、発泡剤、気泡調整剤、造核剤、難燃剤、難燃助剤等の添加剤、または、単量体成分を、本発明の一実施形態の効果を阻害しない範囲でさらに含有していてもよい。
【0060】
前記添加剤は、例えば、発泡性樹脂粒子本体の製造時に発泡性樹脂粒子本体に対して添加すればよい。これら添加剤を発泡性樹脂粒子本体に対して添加する時期および/または添加方法は、特に限定されない。
【0061】
前記溶剤は、沸点が50℃以上であることが好ましい。溶剤の具体例としては、例えば、(a)トルエン、へキサン、ヘプタン等の炭素数6以上の脂肪族炭化水素;および(b)シクロヘキサン、シクロオクタン等の炭素数6以上の脂環族炭化水素、等が挙げられる。これら溶剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
前記可塑剤は、発泡性樹脂粒子本体の製造時(重合時)に添加(使用)され得る。可塑剤としては、沸点が200℃以上である、一般に可塑剤として用いられる化合物が好ましい。可塑剤としては、例えば前記化合物の中から、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
前記気泡調整剤の具体例としては、例えば、(a)メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド;および(b)ポリエチレンワックス、等が挙げられる。これら気泡調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
前記造核剤の具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル系共重合体、ポリエチレンワックス、タルク、脂肪酸ビスアマイド、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。脂肪酸ビスアマイドの具体例としては、例えば、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド等が挙げられる。これら造核剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
前記難燃剤の具体例としては、例えば、(a)ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系化合物;(b)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6-トリブロモフェノール等の臭素化フェノール類;(c)テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4’-(2”,3”-ジブロモアルコキシ)-3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパン等の臭素化フェノール誘導体;および(d)臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン-ブタジエン共重合体、臭素化スチレン-ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、Chemtura社製のEMERALD3000、若しくは、特表2009-516019号公報に記載されている共重合体);等が挙げられる。前記難燃剤として、上述した以外の公知の難燃剤を使用することもできる。これら難燃剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
前記難燃助剤の具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。前記難燃助剤として、上述した以外の公知の難燃助剤を使用することもできる。これら難燃助剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
〔他の外添剤〕
本発泡性樹脂粒子は、当該発泡性樹脂粒子の表面に、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、撥水剤、融着促進剤等の公知の外添剤を、本発明の一実施形態の効果を阻害しない範囲でさらに含有していてもよい。例えば、融着促進剤としては、常温で固体である、カスターワックス(ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド)、ステアリン酸ソルビタンエステルなど、高級脂肪酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル類、ショ糖エステル類が挙げられる。これら他の外添剤を添加(使用)する時期は特に限定されない。他の外添剤が室温で固体の外添剤である場合、良好な流動性が得られる点で脂肪酸グリセリドの塗布が終了した後の発泡性樹脂粒子本体に対して、当該外添剤を添加するのが好ましい。なお、本明細書において、「外添剤」とは、添加剤のうち、特に、発泡性樹脂粒子の表面に含まれるもの、換言すれば発泡性樹脂粒子本体の表面に塗布するものをいう。
【0068】
〔混合機器〕
本発明の一実施形態において、発泡性樹脂粒子本体に、脂肪酸グリセリド等の外添剤を添加し、得られた混合物を混合することによって、発泡性樹脂粒子本体の表面に脂肪酸グリセリド等の外添剤を塗布する場合について説明する。この場合、発泡性樹脂粒子本体の表面に脂肪酸グリセリド等の外添剤をできる限り均一に塗布するためには、発泡性樹脂粒子本体と脂肪酸グリセリド等の外添剤との混合物を、均一に混合することができる混合機器を用いることが好ましい。当該混合機器としては、例えば、(a)スーパーミキサー、ナウタミキサー、ユニバーサルミキサー、プロシェアミキサー、アペックスミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲーミキサー等のミキサー;および(b)リボンブレンター、タンブラ-型ブレンター等のブレンター;が挙げられる。混合機器における混合時間等の条件は、(a)混合能力;並びに(b)脂肪酸グリセリド等の外添剤の種類および塗布量;等を考慮して、調整すればよい。
【0069】
〔発泡性樹脂粒子の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる:混合機器に、発泡性樹脂粒子本体と、脂肪酸グリセリドと(並びに必要に応じて添加剤および外添剤と)を投入し、混合することによって当該樹脂粒子の表面に脂肪酸グリセリドを塗布し、発泡性樹脂粒子を得る方法。当該方法によると、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る発泡性樹脂粒子を容易に提供できる、という利点を有する。
【0070】
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法は、以下のような構成であってもよい:(i)混合機器に、発泡性樹脂粒子本体と、脂肪酸グリセリドと(並びに必要に応じて添加剤および外添剤と)を投入し、発泡性樹脂粒子本体と脂肪酸グリセリドと(並びに必要に応じて添加剤および外添剤と)を混合することによって、当該樹脂粒子の表面に脂肪酸グリセリドを塗布する工程(脂肪酸グリセリド塗布工程)を含む発泡性樹脂粒子の製造方法。上述した製造方法によると、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る発泡性樹脂粒子をより容易に提供できる、という利点を有する。
【0071】
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法は、脂肪酸グリセリド塗布工程の後に、高級脂肪酸の金属塩(並びに必要に応じて添加剤および外添剤)を前記混合機器に投入し、少なくとも脂肪酸グリセリドが塗布された発泡性樹脂粒子本体と高級脂肪酸の金属塩と(並びに必要に応じて添加剤および外添剤と)を混合することによって、少なくとも脂肪酸グリセリドが塗布された発泡性樹脂粒子本体の表面にさらに高級脂肪酸の金属塩を塗布する工程(金属塩塗布工程)、をさらに有していてもよい。上述した製造方法によると、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得、かつ耐ブロッキング性に優れる発泡性樹脂粒子を提供できる発泡性樹脂粒子をより容易に提供できる、という利点を有する。
【0072】
但し、本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法は、発泡性樹脂粒子本体の表面に、脂肪酸グリセリドを、上述した量(含有量)で塗布することができる方法であればよく、特に限定されない。
【0073】
〔3.発泡粒子〕
本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、前記〔2.発泡性樹脂粒子〕の項に記載の本発泡性樹脂粒子を発泡してなる。
【0074】
本発泡粒子は、上述した構成を有するため、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供できるという利点を有する。
【0075】
ここで、発泡性樹脂粒子から発泡成形体を得るとき、先ず、発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得、その後、当該発泡粒子を成形して発泡成形体を得る場合がある。それ故、発泡性樹脂粒子から発泡成形体を得る過程で、発泡性樹脂粒子を発泡させることを「予備発泡する」または「一次発泡する」と称する場合があり、得られる発泡粒子を「予備発泡粒子」または「一次発泡粒子」と称する場合がある。
【0076】
発泡性樹脂粒子を発泡させる方法としては、例えば、円筒形の予備発泡装置を使用し、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性樹脂粒子を加熱して発泡させる等の、通常の方法を採用することができる。発泡性樹脂粒子の発泡に使用する装置、および発泡の条件は、発泡性樹脂粒子本体の組成および/または所望する発泡倍率等に応じて適宜、設定すればよく、特に限定されない。
【0077】
〔4.発泡成形体〕
本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、前記〔3.発泡粒子〕の項に記載の本発泡粒子を成形してなる。本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、前記〔3.発泡粒子〕の項に記載の本発泡粒子を加熱し、発泡させることによって得られる、ともいえる。ここで、発泡粒子から発泡成形体を得る過程で、発泡粒子を加熱し、発泡させることを「二次発泡する」と称する場合がある。
【0078】
本発泡成形体は、上述した構成を有するため、耐熱性および強度に優れるという利点を有する。
【0079】
発泡粒子を成形(加熱発泡)させる方法としては、例えば、型内発泡成形法等の、通常の方法を採用することができる。型内発泡成形法とは、金型内に発泡粒子を充填し、水蒸気等の加熱媒体を金型内に吹き込んで当該発泡粒子を加熱することにより、当該発泡粒子を発泡させ、当該発泡粒子同士を融着させて、発泡成形体を得る方法である。型内発泡成形法による発泡粒子の成形を、型内成形と称する場合もある。本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、前記〔3.発泡粒子〕の項に記載の本発泡粒子を型内成形してなるものであってもよい。
【0080】
発泡粒子の成形(加熱発泡)に使用する装置、および成形(加熱発泡)の条件は、発泡性樹脂粒子本体の組成、発泡粒子の組成、および/または所望する発泡倍率等に応じて適宜、設定すればよく、特に限定されない。
【0081】
〔5.用途〕
本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子(本発泡粒子)を成形してなる発泡成形体(本発泡成形体)は、耐熱性および強度に優れる、という利点を有する。また、本発泡性樹脂粒子、本発泡粒子および本発泡成形体は、軽量であり、かつ緩衝性および断熱性に優れるという利点も有する。そのため、本発泡性樹脂粒子、本発泡粒子および本発泡成形体は、食品容器等の包装材料(トレー)、各種梱包材、建築土木部材、自動車部材、比較的温度の高い配管の保温材、屋根用断熱材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材等として、好適に利用できる。本発泡性樹脂粒子、本発泡粒子および本発泡成形体は、特に、自動車部材、比較的温度の高い配管の保温材、屋根用断熱材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材等として、好適に利用できる。
【実施例0082】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
実施例および比較例における、発泡粒子および発泡成形体の、製造方法、並びに、各種測定方法および評価方法は、以下の通りである。また、「部」および「%」は、特に断りのない限り、重量基準(重量部および重量%)である。
【0084】
<発泡粒子の製造>
発泡性樹脂粒子を、加圧式予備発泡機(大開工業(株)製、BHP)に投入した。そして、加熱媒体として水蒸気を用い、吹き込み蒸気圧を0.08MPa(ゲージ圧)~0.12MPa(ゲージ圧)として発泡性樹脂粒子を加熱することによって、発泡性樹脂粒子を発泡(予備発泡/一次発泡)させた。その後、得られた発泡粒子を室温で24時間放置して、発泡倍率50倍の発泡粒子を得た。
【0085】
<発泡粒子の発泡倍率の測定、および発泡性の評価>
発泡性樹脂粒子を、加圧式発泡機BHP-300(大開工業株式会社製)に投入した。次いで、前記発泡機に、0.1MPa(ゲージ圧)の吹き込み蒸気圧で水蒸気を導入した。次いで、発泡機を非加圧状態で30秒加熱の後、発泡機内の圧力を0.015MPa(ゲージ圧)~0.025MPa(ゲージ圧)の無い内となるように制御して、発泡性樹脂粒子を加圧発泡し、レベル計にて50倍の倍率に至るまで発泡性樹脂粒子を発泡させた。得られた発泡性樹脂粒子の発泡倍率を以下(1)~(3)の手順で測定した:(1)発泡粒子を10g秤取り、1000cmのメスシリンダーへ入れた;(2)メスシリンダーの目盛から、10gの発泡粒子の体積を測定した;(3)以下の式により、発泡粒子の発泡倍率を算出した;
発泡倍率(cm/g):発泡粒子の体積(cm)/10g。
【0086】
上記発泡工程にて、加圧発泡開始から、50倍の発泡粒子が得られるまでの加熱時間を測定し、以下の基準(3段階評価)で発泡性を評価した。数字が高いほど発泡性に優れることを示し、2以上を合格とした。なお、加圧発泡開始後、発泡倍率が50倍に到達することなく発泡倍率が上昇しなくなった場合(頭打ちになった場合)、「50倍に達しなかった」と判断した。
3:150秒以下である
2:150秒を超える
1:50倍に達しなかった。
【0087】
<発泡成形体の製造と成形サイクル>
発泡成形体は、縦450mm×横300mm×深さ25mmの大きさの金型、および成形機((株)ダイセン製、KR-57)を使用して製造した。具体的には以下の通りであった:(1)金型内に、上述した方法によって製造した発泡粒子を充填し、(2)加熱媒体として水蒸気を用い、固定された金型側(「固定側」と称する)の圧力0.04MPa(ゲージ圧)、移動可能な金型側(「移動側」と称する)の圧力0.07MPa(ゲージ圧)とし、金型余熱2秒、一方加熱(固定側)6秒、逆一方加熱(移動側)4秒、両面加熱10秒および補熱3秒とした成型条件にて型内発泡成形を行い、発泡倍率(嵩倍率)50倍に加熱発泡(二次発泡)させ、(3)水冷を3秒実施後、エアー吹き込みによる冷却を5秒実施し、その後真空冷却を行い、面圧0.3MPa(ゲージ圧)以下となったら真空冷却終了とし、(4)金型から発泡成形体を取り出して、発泡成形体を得た。
【0088】
発泡成形体の製造において、発泡粒子の金型内への充填から発泡成形体を金型から取り出すまでの工程(上述の(1)から(4)の工程)に要する時間を測定し、得られた値を「成形サイクル」とした。得られた成形サイクルに基づき、以下の基準(4段階評価)で成形サイクル短縮性を評価した。成形サイクルが短いほど、すなわち評価結果の数字が高いほど生産効率に優れることを示し、2以上を合格とした。
4:成形サイクルが300秒以下である
3:成形サイクルが300秒超、350秒以下である
2:成形サイクルが350秒超、400秒以下である
1:成形サイクルが400秒を超える。
【0089】
<耐熱性の測定>
耐熱性は、以下の方法で測定した。前記<発泡成形体の製造と成形サイクル>の項に記載の方法により得られた発泡成形体から、縦150mm×横150mm×厚さ25mmの試験片5個を切り出した。次いで、得られた試験片の縦方向および横方向の寸法の平均値を測定し、「加熱前の寸法[mm]」とした。続いて、試験片を95℃の乾燥機に入れ178時間加熱した。加熱後、試験片の縦方向および横方向の寸法の平均値を測定し、「加熱後の寸法[mm]」とした。なお、加熱前および後の両方において、試験片の寸法は、縦方向および横方向のそれぞれの中央の箇所(端から75mmの位置)にて測定した。以下の式から加熱寸法収縮率を算出し、以下の基準で評価した。加熱寸法収縮率が小さいほど、熱による発泡成形体の変形が少なく、耐熱性に優れていることを示し、2以上を合格とした。
加熱寸法収縮率[%]=(加熱前の寸法[mm]-加熱後の寸法[mm])/加熱前の寸法[mm]×100
3:加熱寸法収縮率が0.5%未満である
2:加熱寸法収縮率が0.5%以上1%未満である
1:加熱寸法収縮率が1%を超える
<発泡成形体の曲げ強度の測定>
上述した方法により得られた発泡成形体から、縦300mm×横75mm×厚さ25mmの試験片5個を切り出した。各々の試験片について、JIS K 7221に準拠し、10mm/minの速度で変形させた時の最大点応力を測定した。5つの試験片の最大点応力の平均を、発泡成形体の「最大点応力(平均)」とする。得られた最大点応力(平均)に基づき、以下の基準(2段階評価)で曲げ強度を評価した。最大点応力が大きいほど、すなわち評価結果の数字が高いほど曲げ強度に優れることを示し、2以上を合格とした。
2:最大点応力が0.40MPaを超える
1:最大点応力が0.40MPa以下
〔実施例1〕
製品名:カネパール(登録商標)FQ((株)カネカ製)を篩によって分級して得られた粒子径0.6mm~1.12mmの粒子を、発泡性樹脂粒子本体とした。カネパール(登録商標)FQは、(i)基材樹脂および発泡剤を含み、(ii)基材樹脂は、スチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位を、スチレン/アクリロニトリル/α-メチルスチレン=71/24/5の比率で有するものであり、(iii)発泡剤としてブタン(ノルマルブタン75%/イソブタン25%の混合物)を、発泡性樹脂粒子本体100重量部当たり4.5重量部含むものである。
【0090】
発泡性樹脂粒子本体100重量部をナウタミキサー(ホソカワミクロン(株)製)に投入した後、ひまし油(伊藤製油製 ヒマシ油特A)0.03重量部を120秒間かけてナウタミキサーに投入し、ナウタミキサー内の原料を15分間、攪拌した。その後、ステアリン酸亜鉛(日油製、ジンクステアレートGF200)0.3重量部をナウタミキサーに投入し、ナウタミキサー内の原料をさらに15分間、攪拌した。かかる操作により、発泡性樹脂粒子表面に、凝固点25℃以下の脂肪酸グリセリドと高級脂肪酸の金属塩とを含む発泡性樹脂粒子を得た。
【0091】
上記した<発泡粒子の製造>と<発泡成形体の製造と成形サイクル>に準じて、発泡粒子および発泡成形体を作製した。得られた発泡粒子および発泡成形体について、上述した各種測定および評価を行い、それらの結果を、発泡性樹脂粒子の組成および他の評価と共に、表1に示す。
【0092】
〔実施例2~12,比較例1~9〕
発泡性樹脂粒子本体の種類、脂肪酸グリセリドの種類および塗布量、高級脂肪酸の金属塩の種類および塗布量を表1または表2に記載の種類および塗布量にそれぞれ変更した以外は、実施例1の方法と同じ方法で、発泡性樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体を得た。得られた発泡粒子および発泡成形体について、上述した各種測定および評価を行い、それらの結果を、発泡性樹脂粒子の組成および他の評価と共に、表1または2に示す。
【0093】
実施例4および比較例5ではヤシ油(カネカ株式会社製、食用椰子油)を、実施例5および比較例6ではオリーブ油(OLEOMONTERREAL製、オリーブ油リファインド)を、比較例8ではひまし硬化油(日油製、可スターワックスA)を、比較例9では水添大豆油(大日化学工業製、VT-10Z)を、それぞれ、脂肪酸グリセリドとして使用した。
【0094】
実施例8では、発泡性樹脂粒子本体として、以下の製造方法で得られる粒子を使用した。
【0095】
撹拌機付き6Lオートクレーブに水110重量部、第3リン酸カルシウム(分散剤)0.105重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ(界面活性剤)0.0075重量部、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.15重量部およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート0.29重量部、難燃剤としてテトラブロモビスフェノール-A-(2,3-ジブロモシクロドデカン-2-メチルプロピル)エーテル2.0重量部、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド1.1重量部、並びに連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.4重量部を仕込んだ。その後、真空ポンプでオートクレーブ内の圧力(ゲージ圧)が0.06MPaとなるまでオートクレーブ内を脱気した。
【0096】
その後、撹拌機により、オートクレーブ内の仕込み原料の攪拌を開始した。仕込み原料を攪拌しながら、スチレン76重量部およびアクリロニトリル24重量部をオートクレーブ内にさらに仕込んだ。その後、オートクレーブ内の仕込み原料を攪拌機により30分間攪拌した。その後、オートクレーブ内の温度を90℃まで昇温し、オートクレーブ内の温度を6時間の間90℃に保持することにより、重合を実施した(重合工程)。重合工程の終了後、ブタン(ノルマルブタン75重量%およびイソブタン25重量%からなる混合物)を5重量部、オートクレーブ内に仕込んだ。その後、オートクレーブ内の温度を114℃に昇温後、オートクレーブ内の温度を5時間の間114℃に保持することにより、発泡剤含浸工程を実施した。その後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却し、オートクレーブ内の反応生成物を脱水および乾燥することによって、粒子(発泡性樹脂粒子本体)を得た。得られた粒子を篩によって分級し、粒子径0.6mm~1.12mmの粒子を得た。
【0097】
実施例9では、発泡性樹脂粒子本体として、以下の製造方法で得られる粒子を使用した。
【0098】
撹拌機付き6Lオートクレーブに水110重量部、第3リン酸カルシウム(分散剤)0.105重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ(界面活性剤)0.0075重量部、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.15重量部およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート0.29重量部、難燃剤としてテトラブロモビスフェノール-A-(2,3-ジブロモシクロドデカン-2-メチルプロピル)エーテル2.0重量部、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド1.1重量部、並びに連鎖移動剤としてα―メチルスチレンダイマー0.4重量部を仕込んだ。その後、真空ポンプでオートクレーブ内の圧力(ゲージ圧)が0.06MPaとなるまでオートクレーブ内を脱気した。
【0099】
その後、攪拌機により、オートクレーブ内の仕込み原料の攪拌を開始した。仕込み原料を攪拌しながら、スチレン82重量部およびアクリロニトリル15重量部をオートクレーブ内にさらに仕込んだ。その後、オートクレーブ内の仕込み原料を攪拌機により30分間攪拌した。その後、オートクレーブ内の温度を90℃まで昇温し、オートクレーブ内の温度を6時間の間90℃に保持することにより、重合を実施した(重合工程)。重合工程の途中、重合工程の開始(90℃での保持開始)から、5時間が経過した後、アクリロニトリル3重量部をオートクレーブ内に添加した。重合工程の終了後、ブタン(ノルマルブタン75重量%およびイソブタン25重量%からなる混合物)を5重量部、オートクレーブ内に仕込んだ。その後、オートクレーブ内の温度を114℃に昇温後、オートクレーブ内の温度を5時間の間114℃に保持することにより、発泡剤含浸工程を実施した。その後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却し、オートクレーブ内の反応生成物を脱水および乾燥することによって、粒子(発泡性樹脂粒子本体)を得た。得られた粒子を篩によって分級し、粒子径0.6mm~1.12mmの粒子を得た。
【0100】
実施例10では、製品名:カネパール(登録商標)HM―M((株)カネカ製)を篩によって分級して得られた粒子径0.8mm~1.4mmの粒子を、発泡性樹脂粒子本体とした。カネパール(登録商標)HM-Mは、(i)基材樹脂および発泡剤を含み、(ii)基材樹脂は、スチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位を、スチレン/アクリロニトリル/α-メチルスチレン=45/20/35の重量比率で有するものであり、(iii)発泡剤としてブタン(ノルマルブタン75重量%およびイソブタン25重量%からなる混合物)を、発泡性樹脂粒子本体100重量部当たり4.5重量部含むものである。
【0101】
実施例11では、製品名:カネパール(登録商標)HM5-B((株)カネカ製)を篩によって分級して得られた粒子径0.6mm~1.12mmの粒子を、発泡性樹脂粒子本体とした。カネパール(登録商標)HM5-Bは、(i)基材樹脂および発泡剤を含み、(ii)基材樹脂は、スチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位を、スチレン/アクリロニトリル/α-メチルスチレン=0/30/70の重量比率で有するものであり、(iii)発泡剤としてブタン(ノルマルブタン75重量%およびイソブタン25重量%からなる混合物)を、発泡性樹脂粒子本体100重量部当たり4.5重量部含むものである。
【0102】
実施例12では、製品名:カネパール(登録商標)LFR((株)カネカ製)を篩によって分級して得られた粒子径0.6mm~1.4mmの粒子を、発泡性樹脂粒子本体とした。カネパール(登録商標)LFRは、(i)基材樹脂および発泡剤を含み、(ii)基材樹脂は、スチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位を、スチレン/アクリロニトリル/α-メチルスチレン=65/15/20の重量比率で有するものであり、(iii)発泡剤としてブタン(ノルマルブタン75重量%およびイソブタン25重量%からなる混合物)を、発泡性樹脂粒子本体100重量部当たり4.5重量部含むものである。
【0103】
比較例7では、製品名:カネパール(登録商標)NSG-B((株)カネカ製)を篩によって分級して得られた粒子径0.6mm~1.12mmの粒子を、発泡性樹脂粒子本体とした。カネパール(登録商標)NSG-Bは、(i)基材樹脂および発泡剤を含み、(ii)基材樹脂は、スチレン単位、アクリロニトリル単位およびα-メチルスチレン単位を、スチレン/アクリロニトリル/α-メチルスチレン=100/0/0の重量比率で有するものであり(すなわちスチレン単独重合体であり)、(iii)発泡剤としてブタン(ノルマルブタン75重量%およびイソブタン25重量%からなる混合物)を発泡性樹脂粒子本体100重量部当たり5.5重量部、およびシクロヘキサンを発泡性樹脂粒子本体100重量部当たり2.1重量部を含むものである。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の一実施形態は、耐熱性および強度に優れる発泡成形体を短い成形サイクルで提供し得る、新規の発泡性樹脂粒子を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態は、比較的温度の高い配管の保温材、屋根用断熱材、自動車部材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材等の分野に、好適に利用できる。