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  • 特開-負荷試験システムおよび負荷試験方法 図1
  • 特開-負荷試験システムおよび負荷試験方法 図2
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  • 特開-負荷試験システムおよび負荷試験方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032175
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】負荷試験システムおよび負荷試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138138
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000159043
【氏名又は名称】菊水電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松林 成学
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036BA37
2G036CA10
(57)【要約】
【課題】負荷として高速な応答を維持しつつ消費される電力を回生することができる負荷試験システムを提供する。
【解決手段】被試験装置の負荷試験を行うための負荷試験システムであって、定電流モードで動作する電子負荷装置と、定電圧モードで動作し、回生機能を有する双方向電源装置とを備え、前記被試験装置の出力に前記負荷装置と前記双方向電源装置とが直列に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験装置の負荷試験を行うための負荷試験システムであって、
定電流モードで動作する電子負荷装置と、
定電圧モードで動作し、回生機能を有する双方向電源装置とを備え、
前記被試験装置の出力に前記電子負荷装置と前記双方向電源装置とが直列に接続されていることを特徴とする負荷試験システム。
【請求項2】
被試験装置の負荷試験を行うための負荷試験システムであって、
定電流モードで動作する電子負荷装置と、
定電圧モードで動作し、回生機能を有する回生電子負荷装置とを備え、
前記被試験装置の出力に前記電子負荷装置と前記回生電子負荷装置とが直列に接続されていることを特徴とする負荷試験システム。
【請求項3】
前記電子負荷装置は、リニア方式の電子負荷装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の負荷試験システム。
【請求項4】
被試験装置の出力に電子負荷装置と双方向電源装置とを直列に接続して、前記被試験装置の負荷試験を行う負荷試験方法であって、
前記電子負荷装置を定電流モードで動作させ、
前記双方向電源装置を定電圧モードで動作させ、回生動作させることを特徴とする負荷試験方法。
【請求項5】
被試験装置の出力に電子負荷装置と回生電子負荷装置とを直列に接続して、前記被試験装置の負荷試験を行う負荷試験方法であって、
前記電子負荷装置を定電流モードで動作させ、
前記回生電子負荷装置を定電圧モードで動作させ、回生動作させることを特徴とする負荷試験方法。
【請求項6】
前記電子負荷装置は、リニア方式の電子負荷装置であることを特徴とする請求項4または5に記載の負荷試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷試験システムおよび負荷試験方法に関し、より詳細には、電源装置、蓄電装置などの負荷に電力を供給する装置に対して負荷試験を行うための負荷試験システムおよび負荷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置、蓄電装置などの被試験装置に対する負荷試験には、様々な負荷条件を設定して、被試験装置が負荷に電力を供給する際の電気的特性を測定することができる電子負荷装置が広く利用されている。リニア(ドロッパー)方式の電子負荷装置は、抵抗またはトランジスタ等の可変インピーダンスの素子によって、負荷として消費する電力を全て熱に変換している。そのため、負荷が大きくなるほど冷却部品が大型化し、電子負荷装置自体のサイズが増大するという問題があった。
【0003】
そこで、比較的大きな電力を扱う電子負荷装置では、被試験装置から出力される電力の一部を回生することにより、熱に変換されて消費される電力の低減を図っている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-014802号公報
【特許文献2】特開2003-167015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような回生機能を有する電子負荷装置は、DC-DCコンバータまたはDC-ACインバータなどのスイッチング方式の電力変換装置を備えており、被試験装置から出力される電力を変換している。例えば、特許文献1に記載された負荷試験方法では、被試験装置の出力の一部を直流SW電源により変換して、被試験装置の電源として回生している。また、特許文献2に記載された電力回生方法では、スイッチング方式の電力回生回路により交流系統に電力を回生している。しかしながら、従来のスイッチング方式を用いた電子負荷装置では、電力変換器に含まれるインダクタ、キャパシタなどの要素により、負荷としての応答特性が制限されてしまうという問題があった。
【0006】
さらに、特許文献2に記載された電子負荷装置のように、バイポーラ型の電源装置を用いて系統に電力を回生する場合、被試験装置が接続されていない場合であっても自ら電圧を発生する場合がある。また、電源装置の誤設定により被試験装置の出力電圧以上の電圧を発生して、被試験装置側に電流が流れてしまい、安全な負荷試験ができない恐れがあるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、負荷として高速な応答を維持しつつ消費される電力を回生することができる負荷試験システムおよび負荷試験方法を提供することにある。
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、一実施態様は、被試験装置の負荷試験を行うための負荷試験システムであって、定電流モードで動作する電子負荷装置と、定電圧モードで動作し、回生機能を有する双方向電源装置とを備え、前記被試験装置の出力に前記負荷装置と前記双方向電源装置とが直列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被試験装置から出力される電力は、電子負荷装置と双方向電源装置とに分割され、双方向電源装置に加えられた電力が回生されるので、負荷試験システムで消費する電力を大幅に抑制することができる。加えて、負荷としての応答特性は、電子負荷装置のみに依存するので、負荷としての高速の応答が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる負荷試験システムを示す構成図である。
図2】第1の実施形態の負荷試験システムにおける試験方法を示す図である。
図3】第1の実施形態の負荷試験システムにおける負荷の応答特性を示す図である。
図4】第1の実施形態の負荷試験システムと従来のスイッチング方式を用いた回生電子負荷装置の応答特性の比較結果を示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態にかかる負荷試験システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態にかかる負荷試験システムを示す。負荷試験システムは、被試験装置(EUT)101の出力に、定電流モードで動作する電子負荷装置(PLZ)102と、定電圧モードで動作する双方向電源装置(PCR)103とが直列に接続されている。
【0013】
PLZ102は、EUT101の負荷として、様々な負荷条件を設定することができる。PLZ102の制御部121は、外部から入力されるモード切替信号に応じて、動作モードを切り替えて、装置内の各部を制御する。動作モードは、電流値を指定して、電圧が変化しても一定の電流を流す定電流(CC)モード、コンダクタンス値を指定し、電圧に対して比例した電流を流す定抵抗(CR)モード、および、モード電圧を指定し、負荷入力端の電圧が一定になるように電流を流す定電圧(CV)モードを含むことができる。
【0014】
PLZ102は、リニア方式の電子負荷装置として構成することができ、MOSトランジスタ122を負荷としている。PLZ102がCCモードにより動作する場合、MOSトランジスタ122の出力電流の変動を電圧値として検出し、誤差増幅器123において、設定された定電流値に応じた制御部121からの制御電圧と比較して、MOSトランジスタ122を制御し、出力電流を一定に保つ。
【0015】
PCR103は、ユニポーラ型の電源装置であって、力行動作を行う際には定電圧電源として動作し、回生動作を行う際には負荷として動作する。力行動作の場合、系統104からの電力を、双方向の電力変換器(AC/DC)134を介して、出力のMOSトランジスタ132a,132bから出力する。一方、回生動作の場合は、MOSトランジスタ132a,132bの両端にかかる電力を、AC/DC134を介して系統104に回生する。
【0016】
PCR103の制御部131は、外部から入力される定電圧値に応じて出力を制御する。MOSトランジスタ132aの出力電圧を検出し、誤差増幅器133において、設定された定電圧値に応じた制御部131からの制御電圧と比較して、MOSトランジスタ132a,132bを制御し、出力電圧を一定に保つ。
【0017】
図2を参照して、第1の実施形態の負荷試験システムにおける試験方法を説明する。EUT101の出力に、定電流モードで動作するPLZ102と、定電圧モードで動作するPCR103とを直列に接続する。ここでは、出力電圧100V、出力電流10Aを出力するEUT101の負荷試験であって、負荷電流を大きく変化させたときのEUT101の電気的特性を測定する場合を想定する。PLZ102には、定電流値10AのCCモードを設定し、PCR103には、定電圧値70VのCVモードを設定する。
【0018】
このような設定により、PLZ102の分担電圧は30Vとなり、EUT101から出力される1000Wの電力のうち、PLZ102は300Wの電力を消費する。PCR103の回生効率を80%とすると、分担電圧70V×10Aの20%、すなわち140Wの電力をPCR103が消費し、残りの80%の560Wの電力を系統104に回生する。従って、従来の電子負荷装置では、1000Wの電力を消費していたのに対して、第1の実施形態の負荷試験システムでは、300W+140W=440Wの電力を消費するだけである。従って、従来の電子負荷装置と比較して、第1の実施形態の負荷試験システムでは、大幅に電力消費を抑制することができる。
【0019】
この構成において、PLZ102を中心に回路構成を見ると、出力にEUT101とPCR103とが直列に接続されており、PLZ102には30Vの一定の電圧が印加され、10AのCCモードで動作していることになる。従って、負荷としての応答特性は、PLZ102の応答特性のみに依存する。PLZ102は、リニア方式の電子負荷装置であり、スイッチング方式の電力変換装置を備えていないので、負荷電流の瞬時の切り替え、すなわち負荷としての高速の応答が可能である。
【0020】
一方、PCR103を中心に回路構成を見ると、出力にEUT101とPLZ102とが直列に接続されており、PCR103は70VのCVモードで動作し、加えられた電力を、余剰電力として系統104に回生していることになる。このようにして、負荷として高速な応答を維持しつつ、負荷電流に比例した電力を回生することができる負荷試験システムを実現することができる。
【0021】
第1の実施形態の負荷試験システムにおいては、PCR103を定電圧(CV)モードで動作させている。従来の回生機能を有する電子負荷装置においては、以下に述べるように、可変電圧制御を行っている。例えば、特許文献1に記載された負荷試験方法では、被試験装置の出力の一部を直流SW(スイッチング)電源により変換し、被試験装置の電源の出力電圧に加算して、被試験装置への直流入力として回生する。このとき、直流SW電源の電流変換比を変えて、出力電圧を増加させるとともに、被試験装置の電源の出力電圧を減少させることにより、被試験装置の電源の出力の一部に代えて、直流SW電源の出力を加えて、回生している。しかしながら、被試験装置に対する負荷としては、直流SW電源の出力であることから、負荷電流を高速に変化させることができない。
【0022】
特許文献2に記載された電子負荷装置では、負荷となる電力素子においてリニアに動作するために必要となる最低限の電圧が確保されるように、バイポーラ型の電源装置の出力電圧を制御している。すなわち、負荷となる電力素子をCCモードで動作させ、被試験体の負荷試験を行う場合には、バイポーラ型の電源装置の出力に対して、可変電圧制御を行う必要がある。また、バイポーラ型の電源装置であることから、被試験体に対して0V印加時においても負荷電流を流すことができる反面、装置の規模が大型化し、高価になるという問題がある。
【0023】
第1の実施形態の負荷試験システムでは、定電流モードで動作するPLZ102に対して、PCR103を定電圧(CV)モードで動作させることができるので、負荷として高速な応答を維持しつつ、負荷電流に比例した電力を回生することができる。
【0024】
図3に、第1の実施形態の負荷試験システムにおける負荷の応答特性を示す。上述したように、出力電圧100V、出力電流10AのEUT101の負荷試験を行うため、PLZ102には、定電流値10AのCCモードを設定し、PCR103には、定電圧値70VのCVモードを設定する。図3(a)は、EUT101の出力電圧、CVモードで動作するPCR103の出力電圧、およびCCモードで動作するPLZ102に流れる電流を示している。この例では、PLZ102に設定された負荷条件は、負荷電流が1Aから10Aに変化し、再び1Aに戻る場合を示している。
【0025】
図3(b)は、負荷電流が1Aから10Aに変化したときの拡大波形である。負荷電流を切り替えたとき、PCR103の過渡応答の電圧上昇は20V程度である。負荷電流の切替制御を行ってから、設定された電流値10Aまでの立ち上がり時間Trは28μsである。なお、立ち上がり時間Trは、設定された電流値の変化が10%から90%に達するまでの時間である。
【0026】
図3(c)は、負荷電流が10Aから1Aに変化したときの拡大波形である。負荷電流を切り替えたとき、PCR103の過渡応答の電圧降下は20V程度である。負荷電流の切替制御を行ってから、設定された電流値1Aまでの立ち下がり時間Tfは25μsである。なお、立ち下がり時間Tfは、設定された電流値の変化が90%から10%に達するまでの時間である。
【0027】
負荷試験において、負荷電流の立ち上がり時間Tr(立ち下がり時間Tf)を遅くする場合、または負荷電流の変化量を小さくする場合、PCR103における過渡応答の電圧上昇(降下)も低くなる。このため、PCR103の電圧設定値を高くして、PLZ102の分担電圧を低くすることにより、より回生電力を増やし、電力消費を抑制することができる。また、EUT101への印加電圧、負荷電流、これらを変化させる時間に応じて、PCR103のCVモードにおける電圧設定値を変えることにより、最も電力を回生できるようして、負荷試験システムの電力消費を抑制することができる。
【0028】
図4に、第1の実施形態の負荷試験システムと従来のスイッチング方式を用いた回生電子負荷装置の応答特性の比較結果を示す。図4(a)は、従来のスイッチング方式を用いた回生電子負荷装置をEUT101に接続し、負荷電流が1Aから10Aに変化したときの拡大波形である。設定された電流値10Aまでの立ち上がり時間Trは2.2msである。図4(b)は、第1の実施形態の負荷試験システムにおける負荷の応答特性であり、図3(b)を再掲している。第1の実施形態によれば、従来のスイッチング方式を用いた回生電子負荷装置と比較して、応答速度を1桁以上改善することができる。
【0029】
なお、第1の実施形態の負荷試験システムのPCR103は、ユニポーラ型の双方向電源装置を用いた。上述したように、安全な負荷試験を行うためにはユニポーラ型の電源装置が適しており、装置の規模、価格の面からも有利である。一方、PCR103としてバイポーラ型の双方向電源装置を用いても、高速な応答を維持しつつ、負荷電流に比例した電力を回生することができる。また、単相電源であるPCR103を例に説明したが、三相電源を用いて、出力結線を単相三線に接続することにより、CVモードの定電圧設定値を倍に設定できる。これにより、回生電力を大きくすることができ、PLZ102の電圧分担比率が低くなり、PLZ102の消費電力を小さくすることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図5に、本発明の第2の実施形態にかかる負荷試験システムを示す。負荷試験システムは、被試験装置(EUT)101の出力に、定電流(CC)モードで動作する電子負荷装置(PLZ)102と、定電圧(CV)モードで動作する回生電子負荷装置203とが直列に接続されている。PLZ102は、第1の実施形態と同じく、リニア方式の電子負荷装置として構成され、CCモードにより動作する。
【0031】
回生電子負荷装置203は、MOSトランジスタ232の両端にかかる電力を、AC/DC234を介して系統104に回生して負荷として動作する。回生電子負荷装置203の制御部231は、外部から入力される定電圧値に応じて負荷を制御する。MOSトランジスタ232の出力電圧を検出し、誤差増幅器233において、設定された定電圧値に応じた制御部231からの制御電圧と比較して、MOSトランジスタ232を制御し、印加される電圧を一定に保つ。
【0032】
第2の実施形態の負荷試験システムにおける試験方法を説明する。第1の実施形態と同様に、出力電圧100V、出力電流10AのEUT101の出力に、定電流モードで動作するPLZ102と、定電圧モードで動作する回生電子負荷装置203とを直列に接続する。PLZ102には、定電流値10AのCCモードを設定し、回生電子負荷装置203には、定電圧値70VのCVモードを設定する。
【0033】
このような設定により、PLZ102の分担電圧は30Vとなり、EUT101から出力される1000Wの電力のうち、PLZ102は300Wの電力を消費する。回生電子負荷装置203の回生効率を80%とすると、分担電圧70V×10Aの20%、すなわち140Wの電力をPCR103が消費し、残りの80%の560Wの電力を系統104に回生する。
【0034】
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態の負荷試験システムは、300W+140W=440Wの電力を消費するだけであり、大幅に電力消費を抑制することができる。また、負荷としての応答特性は、PLZ102の応答特性のみに依存するので、負荷としての高速の応答が可能である。
【符号の説明】
【0035】
101 被試験装置(EUT)
102 電子負荷装置(PLZ)
103 双方向電源装置(PCR)
104 系統
121,131,231 制御部
122,132.232 MOSトランジスタ
123,133,233 誤差増幅器
134,234 電力変換器(AC/DC)
203 回生電子負荷装置
図1
図2
図3
図4
図5