(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032178
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】介護用具
(51)【国際特許分類】
A61G 12/00 20060101AFI20230302BHJP
A47K 17/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61G12/00 D
A47K17/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138146
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】514011941
【氏名又は名称】株式会社東海技研工業
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】安江 宏
【テーマコード(参考)】
2D037
4C341
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037EA05
4C341JJ01
4C341LL30
4C341MS01
4C341MS30
(57)【要約】
【課題】被介護者が介護者の補助を必要とすることなく、安定かつ安全に座った状態から立ち上がることを可能とする介護用具を提供する。
【解決手段】棒状の部材で形成された本体10と、本体10の一端側に、本体10を固定物5に取り付けるための第1取付部20と、第1取付部20と反対端側に同様に設けられた第2取付部40と、本体10の略中央部に、本体の一部が凸部となるように湾曲加工してなるり、かつ、固定物5から離隔するように形成された、利用者が身体を引っ張り上げるために把持する把持部30と、を備えた介護用具1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の部材で形成された本体と、
前記本体を固定物に取り付けるために、前記本体の少なくとも一端側に設けられた第1取付部と、
前記本体の略中央部に設けられた、利用者が身体を引っ張り上げるために把持する把持部と、
を備えたことを特徴とする介護用具。
【請求項2】
請求項1に記載の介護用具において、
前記把持部は、前記本体を上方に凸状に湾曲してなることを特徴とする介護用具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の介護用具において、
前記把持部は、
上部が前記第1取付部により前記固定物に取り付けられている位置よりも、前記固定物から離隔するように形成されていることを特徴とする介護用具。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の介護用具において、
前記本体において、前記第1取付部と反対端側に前記本体を前記固定物に取り付けるための第2取付部が備えられていることを特徴とする介護用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者などの利用者が安全に自立できるようにするための介護用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被介護者が介護者の補助を必要とすることなく座った状態から立ち上がることを可能とする介護用具がある。この介護用具では、介護用具を床面などに設置するための金属製の円盤状の基部と、基部に対して上方に延伸した柱部と、柱部の先端に被介護者が把持する把持部を設け、被介護者が把持部を把持する際に被介護者の前腕部の外側部分が接触するように把持部の下側に前腕支持部が備えられている。被介護者は、把持部を把持するとともに前腕部の肘に近い部分の外側を前腕支持部に当接させた状態で体を引っ張りあげることができるため補助者を必要とせず、座った様態から立ち上がることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/075694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の介護用具では、利用者が取っ手を引っ張ることにより、座った状態から自力で立ち上がることができるが、床面などに設置された基部に垂直に設けられた支部の先端に取っ手が設けられているため不安定であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、被介護者(利用者)が介護者の補助を必要とすることなく、安定かつ安全に座った状態から立ち上がることを可能とする介護用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
[適用例1]
適用例1に記載の発明は、
棒状の部材で形成された本体(10)と、
前記本体(10)を固定物(5)に取り付けるために、前記本体(10)の少なくとも一端側に設けられた第1取付部(20)と、
前記本体(10)の略中央部に設けられた、利用者(7)が身体を引っ張り上げるために把持する把持部(30)と、
を備えたことを要旨とする介護用具(1)である。
【0008】
このような介護用具(1)では、第1取付部(20)により、本体(10)を、例えば壁面や柱などの固定物(5)に取り付けることができ、本体(10)を固定物(5)に固定した状態で利用者(7)が把持部(30)を持って体を引っ張り上がることができる。したがって、非常に安定した状態で利用者(7)が身体を引っ張り上げることができるため、安全性が向上するとともに利用者(7)の安心感を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例2に記載の介護用具(1)は、適用例1に記載の介護用具(1)において、
前記把持部(30)は、前記本体(10)を上方に凸状に湾曲してなることを要旨とする。
【0010】
このような介護用具(1)は、把持部(30)の形状が上方に凸状となるように棒状の本体(10)が湾曲加工されている。すると、利用者(7)にとっては、この上方に湾曲した把持部(30)を把持しやすく、身体を引っ張り上げる際の安定性が増すため、安全性を向上させることができる。
【0011】
[適用例3]
適用例3に記載の介護用具(1)は、適用例1又は適用例2に記載の介護用具(1)において、
前記把持部(30)は、上部が前記第1取付部(20)により前記固定物(5)に取り付けられている位置よりも、前記固定物(5)から離隔するように形成されていることを要旨とする。
【0012】
このような介護用具(1)では、把持部(30)が、固定物(5)に取り付けられている位置よりも固定物(5)に対して離隔している。つまり、固定物(5)が壁面などのように平面である場合、把持部(30)が平面(第1取付部(20)の取付面)に対して離隔した状態となる。したがって、利用者(7)が把持部(30)を把持して身体を引っ張り上げる際に取付面が邪魔にならず、利用者(7)は十分な力を入れて身体を引っ張り上げることができ、より安全な介護用具(1)となる。
【0013】
[適用例4]
適用例4に記載の介護用具(1)は、適用例1~適用例3の何れか1項に記載の介護用具(1)において、前記本体(10)において、前記第1取付部(20)と反対端側に前記本体(10)を前記固定物(5)に取り付けるための第2取付部(40)が備えられていることを要旨とする。
【0014】
このような介護用具(1)では、第1取付部(20)によって本体(10)の一端が固定物(5)に取り付けられるとともに、反対端も第2取付部(40)によって固定物(5)に取り付けられる。つまり、本体(10)がより強固に固定物(5)に取り付けられるため、安定性と安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】介護用具の使用方法を説明するための図である。
【
図3】第2実施形態における介護用具の概略の構成を示す図である。
【
図4】第3実施形態における介護用具の概略の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0017】
[第1実施形態]
(介護用具の構成)
図1に基づき、介護用具1の構成について説明する。
図1は、介護用具1の概略の構成を示す外観図であり、
図1(a)は正面図、
図1(b)は平面図、
図1(c)は側面図である。
【0018】
図1に示すように、介護用具1は、本体10、第1取付部20、把持部30及び第2取付部40を備えている。
本体10は、ステンレスなどの金属製の管状のバー材で形成された部分である。
【0019】
第1取付部20は、本体10の一端側において、本体10を壁などの固定物5に取り付けるための部分であり、本体10の一端部分を本体10の中心軸に対して略直角に折り曲げ、先端に四角形のフランジ21を取り付けてある。
また、四角形状のフランジ21の4箇所の角部分にスクリューネジを挿入する孔が設けられている。
【0020】
第2取付部40は、本体10において第1取付部20を設けた端部の反対端を固定物5に取り付けるための部分であり、本体10の反対端部分を本体10の中心軸に対して第1取付部20と同じ向きに略直角に折り曲げ、先端に四角形のフランジ41を取り付けてある。
また、第1取付部20と同様に、四角形状のフランジ41の4箇所の角部分にスクリューネジを挿入する孔が設けられている。
【0021】
把持部30は、本体10の略通凹部に設けられた部分であり、介護装置の利用者7が身体を引っ張り上げるために把持するものである。
本実施形態では、本体10が金属製の管状のバー材であるため、本体10の略中央部分を曲げ加工して上方が凸状となるように湾曲させて把持部30を形成している。
【0022】
さらに、把持部30の曲げ加工の際、第1取付部20及び第2取付部40の曲げ方向に対して把持部30の上方への角度が90度より大きくなるようにしてある。このようにすることで、把持部30が固定物5に対して反対側に傾斜する。換言すれば、把持部30の先端部を固定物5から離隔させることができる。
【0023】
なお、本体10及び把持部30には、利用者7が把持した場合に滑らないようにするため、間隔を開けて滑り止め50が設けられている。この滑り止め50は、球状に形成した樹脂を二つ割の半球状とし、本体10及び把持部30を2つの半球で挟み込めるように、半球の平面をくり抜き、さらに、互いに対向する部分にネジを通すためのネジ孔を4箇所設けてある。この半球で本体10及び把持部30を挟み込み、ネジ孔にネジを通して固定する。
【0024】
(介護用具の使用方法)
次に、
図2に基づき、介護用具1の使用方法について説明する。
図2は、介護用具1の使用状態を示す図である。座位の姿勢をとっている利用者7の近傍に固定物5がある、比較的狭い空間、例えば、トイレなどに設置して使用される。
【0025】
図2に示すように、本体10が座面8と略平行になるように、介護用具1の第1取付部20と第2取付部40のフランジ21,41を、スクリューネジを用いて壁面5に固定する。このとき、取付け位置の高さは、利用者7が座面8に座ったとき、腕を軽く伸ばして把持できる位置とする。
【0026】
利用者7が介護用具1を利用する際には、座面8に座った状態から腕を伸ばして、把持部30を直接把持するか、まず本体10の直線部分を把持し、本体10に沿って手を滑らせながら把持部30を把持する。その状態で利用者7は、腕に力を入れて、身体を引っ張り上げ立ち上がる。
【0027】
(介護用具の特徴)
以上に説明した介護用具1では、本体10の両端が第1取付部20と第2取付部40によって固定物5に強固に取り付けられるため、安定性と安全性が向上する。
【0028】
また、本体10が固定物5に強固に取り付けられているため、非常に安定した状態で利用者が身体を引っ張り上げることができる。したがって、安全性が向上するとともに利用者7の安心感を向上させることができる。
【0029】
また、把持部30の形状が上方に凸状となるように棒状の本体10が曲げ加工されているため、利用者にとっては、この上方に湾曲した把持部30を把持する際に持ちやすく、身体を引っ張り上げる際の安定性が増すため、安全性を向上させることができる。
【0030】
さらに、固定物5が壁面などのように平面である場合、把持部30が平面に対して離隔している。したがって、利用者が把持部30を把持して身体を引っ張り上がる際に取付面が邪魔にならず、利用者7は十分な力を入れて身体を引っ張り上げることができ、より安全な介護用具1となる。
【0031】
[第2実施形態]
次に
図3に基づき第2実施形態における介護用具2について説明する。
図3は、第2実施形態における介護用具2の概略の構成を示す外観図である。なお、第2実施形態における介護用具2は、第1実施形態における介護用具1と類似しているため、同じ構成品には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、介護用具2は、把持部30を、本体10を曲げ加工して形成するのではなく、本体10を直線状の棒材のままとし、金属のバー材を楕円形状に形成して把持部30とする。そして、楕円形状に形成した把持部30の長軸側の一端側の頂点部分を本体10に固定したものである。
【0033】
固定は、本体10と把持部30の取付位置に取付穴を設け、ボルトとナットなどで締め付けたり、溶接をしたりして固定すればよい。このようにしても、第1実施形態の介護用具2と同様の効果を得ることができる。
【0034】
[第3実施形態]
次に、
図4に基づき第3実施形態における介護用具3について説明する。
図4は、第3実施形態における介護用具3の概略の構成を示す外観図である。なお、第3実施形態における介護用具3は、第1実施形態における介護用具1と類似しているため、同じ構成品には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0035】
第1実施形態及び第2実施形態における介護用具1,2では、第1取付部20と第2取付部40の固定物5への取り付け位置が座面8と平行な直線上となっていたが、第3実施形態における介護用具3では、
図4に示すように、第1取付部20と第2取付部40の固定物5への取り付け位置が座面8と平行な直線上とはなっていない。
【0036】
このように、第1取付部20と第2取付部40の座面8からの位置(高さ)が異なるようにしても、第1実施形態及び第2実施形態の介護用具1,2と同様の効果を得ることができる。
【0037】
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態では、本体10の両端側を第1取付部20と第2取付部40で固定物5に固定していたが、本体10の両端部のうち何れか一方のみに取付部を設けて固定物5に固定するようにしてもよい。
【0038】
(2)上記実施形態では、本体10の端部を折り曲げて第1取付部20と第2取付部40とにしていたが、本体10とは別の部品にしてもよい。例えば、リング状の部材にフランジを付け、リングに内部に本体10の端部を挿入した状態で固定し、フランジ部分を固定物5に取り付ける、いわゆる片持ち状にしてもよい。
【0039】
(3)上記実施形態では、固定物5が壁面などの平面であり、本体10の端部を折り曲げて第1取付部20と第2取付部40とにしていたが、固定物5が柱などの場合には、本体10の両端部又は片端部を直線状のまま柱の側面に埋め込んだり、本体10の両端部又は片端部にフランジを装着し、そのフランジで柱の側面に固定したりしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,2… 介護用具 5… 固定物(壁面) 7… 利用者 8… 座面 10… 本体 20… 第1取付部 21… フランジ 30… 把持部 40… 第2取付部 41… フランジ 50… 滑り止め。