(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032192
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】配電制御システム
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20230302BHJP
E04H 6/10 20060101ALI20230302BHJP
E04H 6/18 20060101ALI20230302BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230302BHJP
H02H 5/08 20060101ALI20230302BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230302BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20230302BHJP
B60L 53/67 20190101ALI20230302BHJP
B60L 53/68 20190101ALI20230302BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230302BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20230302BHJP
【FI】
E04H6/42 Z
E04H6/10 A
E04H6/18 606
H02J7/00 P
H02H5/08
H02J13/00 301A
B60L53/30
B60L53/67
B60L53/68
G16Y10/40
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138173
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】520126712
【氏名又は名称】ユアスタンド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】浦 伸行
【テーマコード(参考)】
5G064
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB11
5G064DA05
5G064DA11
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA04
5G503FA06
5G503FA14
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BE02
5H125CC07
5H125DD02
5H125FF14
(57)【要約】
【課題】複数の車室に充電スタンドが設けられた立体駐車場において、浸水時の漏電発生を抑制することができる配電制御システムを提供すること。
【解決手段】地下階を含む立体駐車場2の複数の駐車区画にそれぞれ設置される車両用給電部20と、車両用給電部20のそれぞれに電力を供給可能な電源部Gと、立体駐車場2の地下階に設置され浸水深を検知する水位検知部3と、水位検知部3が検知した浸水深に基づいて電源部Gから車両用給電部20への配電を制御する配電制御部12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下階を含む立体駐車場の複数の駐車区画にそれぞれ設置される車両用給電部と、
前記車両用給電部のそれぞれにおいて必要な電力を供給可能な電源部と、
前記電源部の電力を前記車両用給電部のそれぞれに配電し、前記車両用給電部への配電を制御する配電部と、
前記立体駐車場の地下階に設置され浸水深を検知する水位検知部と、
を備え、
前記配電部は、前記水位検知部が検知した前記浸水深に基づいて前記車両用給電部への配電を制御する、
配電制御システム。
【請求項2】
前記配電部は、前記水位検知部により所定の閾値以上の浸水深が検知された場合に、前記車両用給電部への配電を遮断する
請求項1に記載の配電制御システム。
【請求項3】
ネットワークを介してユーザ端末及び前記配電部と通信可能に接続された管理サーバを更に備え、
前記管理サーバは、前記ユーザ端末から取得した給電開始要求に基づいて前記配電部に給電開始要求の対象である前記車両用給電部への配電を許可する、
請求項1又は2に記載の配電制御システム。
【請求項4】
前記給電開始要求は、前記車両用給電部に一意に付与された固有IDを含む、
請求項3に記載の配電制御システム。
【請求項5】
前記管理サーバは、前記配電部から取得した前記浸水深に基づいて、ユーザ端末に通知を送信する、
請求項3に記載の配電制御システム。
【請求項6】
前記配電部は、配電が許可されていない前記車両用給電部への配電を遮断する、
請求項3から5のいずれか一項に記載の配電制御システム。
【請求項7】
前記配電部は、配電が許可された前記車両用給電部について、所定の給電終了条件を満たした場合には配電を遮断する、
請求項3から6のいずれか一項に記載の配電制御システム。
【請求項8】
前記立体駐車場は前記駐車区画を形成するパレットが移動する機械式駐車場であり、
前記車両用給電部は前記パレットのそれぞれに設置される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の配電制御システム。
【請求項9】
前記浸水深は、積雪深を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の配電制御システム。
【請求項10】
前記配電部は、前記水位検知部が検知した前記浸水深に基づいて、すべての前記車両用給電部への配電を遮断する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の配電制御システム。
【請求項11】
前記配電部は、前記水位検知部が検知した前記浸水深に基づいて、前記地下階に位置している前記車両用給電部への配電を遮断する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の配電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気自動車用給電装置への配電を制御する配電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)等の電動車両の普及に伴い、商業施設や集合住宅等、駐車台数の多い駐車場への充電スタンド設置のニーズが高まっている。また、今後のガソリン車の販売縮小に伴い、電動車両の大幅増加が予想されることから、あらゆるタイプの駐車場において充電スタンドが設置されることが好ましい。そこで、近年では、機械式立体駐車場にも充電スタンドを設置する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、機械式立体駐車場に充電スタンドを設置した場合に、給電コネクタや給電ケーブルがはみ出したまま昇降運転が行われることを防止する技術も開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-222793号公報
【特許文献2】特開2012-154111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一部の機械式駐車場は、地下部分を掘り下げて設置されるものがあり、この場合は駐車車両を載せるパレットが地下部分まで移動され収容されることがある。このような立体駐車場は、特に広い敷地を確保できない都市部の市街地の商業施設や集合住宅で採用されている。一方、近年、都市部ではゲリラ豪雨による地下施設の浸水が増加しており問題となっている。
【0006】
そのため、特に浸水による漏電事故発生を懸念して、このような地下部分を有する機械式立体駐車場への充電スタンドの設置が進まない状況がある。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、複数の駐車区域に充電スタンドが設けられた地下階を含む立体駐車場において、浸水時の漏電発生を抑制することができる配電制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る配電制御システムは、地下階を含む立体駐車場の複数の駐車区画にそれぞれ設置される車両用給電部と、前記車両用給電部のそれぞれにおいて必要な電力を供給可能な電源部と、前記電源部の電力を前記車両用給電部のそれぞれに配電し、前記車両用給電部への配電を制御する配電部と、前記立体駐車場の地下階に設置され浸水深を検知する水位検知部と、を備え、前記配電部は、前記水位検知部が検知した前記浸水深に基づいて前記車両用給電部への配電を制御する。
【0009】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記水位検知部により所定の閾値以上の浸水深が検知された場合に、前記車両用給電部への配電を遮断してもよい。
【0010】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記配電制御システムは、ネットワークを介してユーザ端末及び前記配電部と通信可能に接続された管理サーバを更に備え、前記管理サーバは、前記ユーザ端末から取得した給電開始要求に基づいて前記配電部に給電開始要求の対象である前記車両用給電部への配電を許可してもよい。
【0011】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記給電開始要求は、前記車両用給電部に一意に付与された固有IDを含んでもよい。
【0012】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記管理サーバは、前記配電部から取得した前記浸水深に基づいて、ユーザ端末に通知を送信してもよい。
【0013】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記配電部は、配電が許可されていない前記車両用給電部への配電を遮断状態としてもよい。
【0014】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記配電部は、配電が許可された前記車両用給電部について、所定の給電終了条件を満たした場合には配電を遮断状態にしてもよい。
【0015】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記立体駐車場は前記駐車区画を形成するパレットが移動する機械式駐車場であり、前記車両用給電部は前記パレットのそれぞれに設置されてもよい。
【0016】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記浸水深は、積雪深を含んでもよい。
【0017】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記配電部は、前記水位検知部が検知した前記浸水深に基づいて、すべての前記車両用給電部への配電を遮断してもよい。
【0018】
また、本発明に係る配電制御システムにおいて、前記配電部は、前記水位検知部が検知した前記浸水深に基づいて、前記地下階に位置している前記車両用給電部への配電を遮断してもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記手段を用いる本発明によれば、複数の車室に充電スタンドが設けられた地下階を含む立体駐車場において、浸水時の漏電発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態における複数の車室に給電機を備える機械式の立体駐車場の概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る配電制御システムの配電構成及び制御構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態における配電制御システムの制御ルーチンに関するフローチャートである。
【
図4】自走式の立体駐車場に配電制御システムを適用した変形例の概略構成を示す模式図である。
【
図5】本発明の配電制御システムの変形例の配電構成及び制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態における複数の車室に給電機を備える機械式の立体駐車場の概略構成を示す模式図である。なお、
図1の接続線のうち、太線は電力を送信するための電力線を示し、通常の太さの線は情報を送受信するための通信線を示している。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る配電制御システム1は、地下階を含む機械式の立体駐車場2に設置される複数の給電機(車両用給電部)20a、20b、20cと、分電制御盤(配電部)10と、電源部Gと、水位センサ(水位検知部)3とを備える。また、配電制御システム1は、管理サーバ41を備える。管理サーバ41は、インターネットやVPN(Virtual Private Network)等のネットワークNを介して管理者端末31、複数のユーザ端末32a、32b、及び、分電制御盤10と有線又は無線により通信可能に接続されている。なお、本実施形態では例示として管理サーバを1台、給電機を3機、管理者端末を1台、及びユーザ端末を2台で構成しているが、管理サーバ、給電機、管理者端末、及びユーザ端末の台数はこれに限られない。
【0024】
立体駐車場2は、いわゆる機械式立体駐車場であり、本実施形態では、不特定多数のユーザによって利用される商用の立体駐車場である。立体駐車場2は、
図1に示すように、例えば地下2階から地上3階までの上方及び側方を囲われた建物の内部において、上下方向に昇降可能なケージ4を有し、ケージ4には車両1台を駐車するための駐車区画ごとに、車両を載せる台であるパレット5a、5b、5cが設けられている。また、本実施形態の立体駐車場2は、地上1階において車両が入出庫可能な出入口を備えている。立体駐車場2は、ケージ4の昇降に必要な電力の供給の制御とケージ4の昇降の制御を行う図示しない制御装置が備えられている。なお、
図1では簡単のため、立体駐車場2を駐車区画が3段のケージ昇降型としているが、駐車区画数や駐車区画の移動の形態はこれに限られない。
【0025】
給電機20a、20b、20c(以下個別に区別する必要がない場合はまとめて給電機20と表す)は、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車といった電動車両の蓄電池に給電をおこなうためのいわゆる充電スタンドで、本実施形態ではケージ4に後付けできる例えばMode3タイプの壁掛け型の小型のものである。本実施形態の給電機20は1機につき1度に1台の電動車両への給電が可能なものであり、電動車両への充電インターフェースとして駐車区画それぞれに設置される。また、各給電機20には、固有のID(以下、給電機IDという)が付与されており、分電制御盤10又は管理サーバ41が各給電機20を識別して管理又は制御することが可能である。
【0026】
分電制御盤10は、内部に、電源部Gから受電した電力を各給電機20への配電するための後述する配電構成を有し、各給電機20への配電を制御するために設置されるキャビネット型の制御盤である。本実施形態では、分電制御盤10は、立体駐車場2の建物の内部において、地上階の浸水等の影響を受けにくい位置(例えば地上1階)に設置されている。分電制御盤10は、配電構成の他に、通信部11、配電制御部12を相互に通信可能に備える。通信部11は、各給電機20及び水位センサ3と有線又は無線で通信可能に接続されている。また、通信部11は、ネットワークNを介して、遠隔、すなわち立体駐車場2の外部に設置される管理サーバ41と有線又は無線で通信可能に接続されている。
【0027】
電源部Gは、例えば、給電機20及び、立体駐車場2のケージ昇降設備や照明等の各種電気機器・設備に電力を分配するために備えられる配電盤であり、そのうちの給電機20への電力分配線が分電制御盤10の上流側と電気的に接続されることにより、分電制御盤10を介して給電機20それぞれに電力を供給可能である。電源部Gの上流側は更に電力供給会社からの配電線等に接続されて、立体駐車場2全体の運用に必要な電力の供給を受けることができる。
【0028】
水位センサ3は、立体駐車場2の建物内部に侵入した水の水位を時系列で連続に検出し、水位情報(浸水深)を生成するレベル計であり、例えば、導電率式レベル計、静電式レベル計等で構成される。水位センサ3は、本実施形態では、立体駐車場2の地階の最下階において、床面からの水面の高さ(水位)が連続的に検出できる位置であって、建物の壁面等に設置される。水位センサ3により検出された水位情報は分電制御盤10の配電制御部12により随時取得される。
【0029】
管理サーバ41は、配電制御システム1を統括的に管理、制御、監視するために、立体駐車場2の外部に設けられる。管理サーバ41は、プログラムに基づき処理を実行する1又は複数のサーバ(コンピュータ)からなり、各種演算部及び記憶部を有している。管理サーバ41は、例えば、立体駐車場2の給電機20を管理及び運用する給電管理事業者が管理している。なお、管理サーバ41は、必ずしもサーバである必要はなく、ネットワークNに接続可能なPC(パーソナルコンピュータ)や、スマートフォン等の情報端末であってもよい。
【0030】
管理者端末31は、給電管理事業者が用いるPCやスマートフォン等の情報処理端末である。管理者端末31は、ネットワークNを介して管理サーバ41と通信可能に有線又は無線で接続し、管理サーバ41の機能の一部を遠隔で閲覧・制御・管理する機能を有している。具体的には、管理者端末31は、インストールされた専用のアプリケーションソフトウェア(アプリ)や管理サーバ41が提供する動作環境(API(アプリケーションプログラミングインターフェース)、プラットフォーム等)を利用して管理サーバ41にアクセスし、分電制御盤10において給電機20への配電制御を行ったり、給電機20の利用状況やエラーログを表示したりすることができる。また、管理者端末31は、管理サーバ41が生成する警告やメッセージを受信し表示することができる。
【0031】
ユーザ端末32a、32b(以下個別に区別する必要がない場合はまとめてユーザ端末32と表す)は、給電機20を利用するユーザが用いる、PCやスマートフォン等の情報処理端末である。なお、ユーザは必ずしも給電機20において車両の充電を行う者に限られず、立体駐車場2において給電機20を管理する管理者等であってもよい。なお、給電機20を利用するユーザとは、本実施形態では、実際に電動車両に給電機20を接続し給電を開始したユーザだけはなく、給電機20をこれから利用する予定の利用予約を管理サーバ41において生成したユーザを含んでも良い。ユーザ端末32は、専用アプリやAPIを介して管理サーバ41と通信し、給電機20の使用開始時における給電機IDを含んだ給電開始要求の送信、ユーザ認証、給電機20の予約、給電機20における充電料金支払い等の情報についての送受信、管理サーバ41や管理者端末31からのメッセージや警告を受信可能である。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係る配電制御システムの配電構成及び制御構成を示すブロック図である。次に、
図2を参照しながら、配電制御システム1の配電構成と配電制御の詳細について以下詳しく説明する。なお、
図2の接続線のうち、太線は電力を送信するための電力線を示し、通常の太さの線は機器間で情報を送受信するための通信線を示し、破線は機器内部での制御のための情報を送受信するための通信線を示している。
【0033】
まず、配電制御システム1の配電構成の詳細について以下説明する。なお、分電制御盤10における電力供給及びその制御については「配電」と、給電機20における電力供給及びその制御については「給電」と呼ぶこととする。
【0034】
分電制御盤10は、前述した通信部11及び配電制御部12の他に、配電構成として、主遮断器13、配電制御開閉器14a、14b、14c(以下個別に区別する必要がない場合はまとめて配電制御開閉器14と表す)、下流遮断器15a、15b、15c(以下個別に区別する必要がない場合はまとめて下流遮断器15と表す)を備える。
【0035】
主遮断器13は、上流側において電源部Gと、下流側において母線16にケーブル等で電気的に接続されている。母線16には、給電機20の台数分(
図2では3本)の支流線17a、17b、17c(以下個別に区別する必要がない場合はまとめて支流線17と表す)が接続されており、各支流線17は各配電制御開閉器14の上流側にそれぞれ電気的に接続されている。各配電制御開閉器14の下流側には、更に各下流遮断器15の上流側がそれぞれ電気的に接続されている。なお、各配電制御開閉器14と各下流遮断器15の間の電力線も支流線17に含むこととする。各下流遮断器15の下流側は、各給電機20に向かう配線18a、18b、18c(以下個別に区別する必要がない場合はまとめて配線18と表す)が接続され、各給電機20の後述する各給電機開閉器21の上流側に電気的に接続される。
【0036】
上記構成により、電源部Gの電力は、分電制御盤10の主遮断器13、配電制御開閉器14、下流遮断器15を介して配電され、給電機20に供給される。また、分電制御盤10は、各支流線17における電流を検知するための電流センサ19a,19b、19c(以下個別に区別する必要がない場合はまとめて電流センサ19と表す)が、配電制御開閉器14と下流遮断器15との間に設置されている。電流センサ19は、例えばクランプ型電流計である。なお、主遮断器13の下流には、給電機20以外の機器に電力を供給するための図示しない支流線が設けられても良い。また、電流センサ19は、給電機20が電動車両に給電する電力の電流値を取得することができればよく、各配電制御開閉器14の下流であれば支流線17以外の電力線に設置されても良い。
【0037】
主遮断器13及び下流遮断器15は、いわゆる漏電遮断器であり、下流の回路全体を保護する目的で設けられる。これら主遮断器13、下流遮断器15はノーマルクローズ(N.C.)タイプであり、漏電異常が発生した場合に開状態となるよう自動制御される。
【0038】
配電制御開閉器14は、本実施形態ではノーマルオープン(N.O.)タイプの電磁リレー型開閉器であり、配電制御部12が配電制御開閉器14の電磁リレーに通電している間は閉状態が維持される機構となっている。
【0039】
給電機20aは、給電機開閉器21a、給電機制御部22a(
図2では単に制御部と表記)、交流直流変換器23a、給電ケーブル24a、及び、給電ケーブル24aの先端に設けられて電動車両と接続可能な給電プラグ25a、を有している。給電機開閉器21aは、上流側において分電制御盤10からの配線18aが電気的に接続され、下流側は交流直流変換器23aの上流側に電気的に接続されている。交流直流変換器23aの下流側は、給電ケーブル24aと電気的に接続されている。給電機開閉器21aは、漏電保護機能を備えるノーマルクローズタイプの開閉器である。他の給電機20b、20cについては、同様の構成のため説明を省略する(以下個別に区別する必要がない場合には、それぞれ給電機開閉器21、給電機制御部22、交流直流変換器23、給電ケーブル24、給電プラグ25、と表す)。給電機開閉器21は、給電機20内部または下流における漏電事故を防止するための漏電遮断機能を有し、漏電を検知した場合に漏電検知情報を生成する開閉器である。また、交流直流変換器23は、給電機20に入力された交流電力を、直流電力に変換して出力する機能を有する。
【0040】
次に、配電制御システム1の配電制御機能の詳細について説明する。
【0041】
管理サーバ41は、主に、配電制御部12を制御して、給電機20への配電をオン(導通)、オフ(遮断)する機能を有する。また、管理サーバ41は、ネットワークNを介して管理者端末31やユーザ端末32との間で、給電機20の利用に関する情報を送受信する機能を有する。具体的には、例えば
図1に示したパレット5aの給電機20aにおいてユーザが電動車両に給電を行う場合、管理サーバ41は、給電機20aにおいて給電を開始したい旨の給電開始要求をユーザ端末32aから受信する。給電開始要求には給電機20aの給電機IDが含まれている。そして、管理サーバ41は、管理サーバ41に予め記憶されたユーザ情報に基づいてユーザ認証を行い、給電開始要求の給電機IDに基づいて、給電機20aへの配電を許可する配電許可情報を生成し配電制御部12に送信する。また、管理サーバ41は、給電機20aの給電機IDとユーザとを紐づけた課金情報を生成する。管理サーバ41は、配電制御部12を介して給電機20aの電動車両への給電状態の情報を随時取得し、課金情報を更新、管理することもできる。
【0042】
また、管理サーバ41は、ネットワークNを介して分電制御盤10から後述する第1浸水情報を受信する。そして、管理サーバ41は、第1浸水情報に基づいて、給電機20への配電が今後遮断される可能性があることの予告通知としての第1浸水警報を生成し、第1浸水警報をネットワークNを介して管理者端末31及びユーザ端末32に送信する。同様に、管理サーバ41は、ネットワークNを介して分電制御盤10から後述する第2浸水情報を受信する。そして、管理サーバ41は、第2浸水情報に基づいて、給電機20への配電が遮断されたことの通知としての第2浸水警報を生成し、第2浸水警報をネットワークNを介して管理者端末31及びユーザ端末32に送信する。なお、第1浸水警報及び第2浸水警報は例えば、プッシュ型のテキストメッセージや、管理者用画面上のエラー表示等である。
【0043】
さらに、管理サーバ41は、分電制御盤10を介して取得した各支流線17の電流情報に基づいて、それらの電流値の異常を監視して、その給電機20を利用するユーザ端末32や管理者端末31に給電停止の通知を送信する機能を有する。具体的には、満充電状態により電流が流れなくなった場合や、異常停止した場合に、通知を送信する。また、管理サーバ41は、各支流線17の電流情報に基づいて、配電制御部12へのオン・オフの指示と実際の作動状態の整合性を監視して配電制御部12や通信線等のシステムエラーを検出し、その旨の通知を管理者端末31に送信する機能を有する。さらに、管理サーバ41は、各支流線17の電流情報に基づいて、電動車両に給電した電力量等を算出して課金情報を生成する機能を有する。
【0044】
配電制御部12は、管理サーバ41及び給電機20から受信する情報に基づいて各給電機20への配電を制御する機能を有する。また、配電制御部12は、分電制御盤10内部の通信部11,主遮断器13、配電制御開閉器14、下流遮断器15、電流センサ19等と通信可能に接続されている。配電制御部12は、例えばCPU、メモリ、通信ポート等を含むコンピュータ回路基板と、リレーやスイッチ等の制御用電子部品とから構成される。
【0045】
配電制御部12は、配電制御開閉器14の開閉状態を配電制御開閉器14の電磁リレーへの通電、非通電を切り替える制御を行うことにより、分電制御盤10から各給電機20への配電のオン(導通)、オフ(遮断)を制御する。具体的には、配電制御部12が管理サーバ41から配電許可情報を受信した場合に、配電制御部12は、配電制御開閉器14の電磁リレーの通電を開始し、電磁リレーの閉状態が維持されるように通電を制御する。すなわち、配電が許可されていない給電機20への配電はオフ(遮断)状態となる。その後、所定の給電終了条件を満たした場合、すなわち正常に給電機20から電動車両への給電が行われ、かつ、配電制御部12が給電機20から電動車両の蓄電池が満充電であることを示す満充電情報を受信した場合は、電磁リレーへの通電が停止し、配電制御開閉器14が開状態となる。所定の給電終了条件はこれに限られず、例えば給電開始から所定時間経過した場合又は所定の電力量の給電が完了した場合に、条件を満たしたとして、配電を停止させてもよい。または、電流センサ19から取得した電流情報に基づいて、電流がゼロ付近まで減少し所定の時間が経過した場合に、条件を満たしたとして配電を停止させても良い。また、例えば、
図1のすべてのパレット5a、5b、5cにそれぞれ電動車両が駐車しており、給電プラグ25a、25b、25cがそれぞれ電動車両に接続されている場合において、給電機20aでのみ電動車両に給電中で、他の給電機20b、20cでは電動車両への給電が完了している場合、給電機20aの上流の配電制御開閉器14aのみ閉状態で配線18a及び給電ケーブル24aが通電されている一方、給電機20b、20cの上流の配電制御開閉器14b、14cは開状態のため、配線18b、18c及び給電ケーブル24b、24cは非通電となっている。
【0046】
また、配電制御部12は、分電制御盤10における配電や給電機20における給電が正常でない場合にも電磁リレーの通電を停止する制御を行うことができる。また、配電制御部12は主遮断器13、下流遮断器15及び配電制御開閉器14の各動作や作動状態を取得する機能を有し、図示しない記憶部等に記憶する。また、これら作動状態等の情報は通信部11を介して管理サーバ41により取得される。
【0047】
また、配電制御部12は、水位センサ3により取得される水位情報WLと、浸水の予告通知用の閾値である第1の所定浸水深WL1と、配電遮断用の閾値である第2の所定浸水深WL2を用いて、浸水時の漏電を抑制するための制御を行う。第1の所定浸水深WL1は、例えば、立体駐車場2の地下の最下階の床より上側、かつ、ケージ4が最も深い位置にある状態において最下段のパレットより下側の間で設定される。第2の所定浸水深WL2は、第1の所定浸水深WL1より高く、かつ、例えばケージ4が最も深い位置にある状態において最下段のパレット5cの上面(駐車している車両のタイヤと接する面)までの間で設定される。なお、
図1に示すように第1の所定浸水深WL1は第2の所定浸水深WL2よりも低い位置に設定されている。
【0048】
具体的には、配電制御部12は、水位センサ3から水位情報を取得し、水位情報を第1の所定浸水深(閾値)WL1以上か否かの第1浸水判定を行い、判定結果が真の場合は第1浸水情報を生成し管理サーバ41に送信する機能を有する。更に、配電制御部12は、水位情報WLを第2の所定浸水深(閾値)WL2以上か否かの第2浸水判定を行い、判定結果が真の場合は、給電機20の給電状態に関わらず、すべての配電制御開閉器14を開として配電を遮断するオーバーライド制御を行い、第2浸水情報を生成して管理サーバ41に送信する機能を有する。
【0049】
給電機制御部22は、給電機20の各部の動作状態や給電プラグ25が接続された電動車両の情報を取得したり、交流直流変換器23の動作を制御したりする機能を有する。具体的には、給電プラグ25aの電動車両への接続状態、電動車両の蓄電池の充電状態(満充電情報を含む)、漏電検知情報を含む給電機開閉器21の開閉状態、及び交流直流変換器23の作動状態、等を取得する。給電機制御部22は、例えばCPU、メモリ、通信ポート等を含むコンピュータ回路基板と、リレーやスイッチ等の制御用電子部品から構成される。
【0050】
図3は、本実施形態における配電制御システム1の制御ルーチンに関するフローチャートである。以下同フローチャートに沿って説明する。
【0051】
まず、ステップS1として、配電制御部12は、通信部11を介して水位センサ3から取得した水位情報WLが第1の所定浸水深WL1以上か否かを判定する(第1浸水判定)。当該判定結果が真(Yes)である場合、即ち水位情報WLが第1の所定浸水深WL1以上である場合、ステップS2に進む。一方、当該判定結果が偽(No)である場合、即ち水位情報WLが第1の所定浸水深WL1未満の浸水がない状態又は浅い浸水である場合は、当該ルーチンをリターンする。
【0052】
ステップS2として、配電制御部12は第1浸水情報を生成して、第1浸水情報をネットワークNを介して管理サーバ41に送信する。管理サーバ41は、配電制御部12から受信した第1浸水情報に基づいて、給電機20への配電が今後遮断される可能性があることの予告通知としての第1浸水警報を生成し、第1浸水警報をネットワークNを介して管理者端末31に送信する。また、管理サーバ41は、同様に、第1浸水警報を立体駐車場2の給電機20を利用中のユーザのユーザ端末32a、32bに送信する。
【0053】
続くステップS3では、配電制御部12は、水位センサ3から通信部11を介して取得した水位情報WLが第2の所定浸水深WL2以上か否かを判定する(第2浸水判定)。当該判定結果が真(Yes)である場合、即ち水位情報WLが第2の所定浸水深WL2以上まで浸水している場合は、ステップS4に進む。一方、当該判定結果が偽(No)である場合、即ち水位情報WLが第2の所定浸水深WL2未満である場合は、ステップS4に進む。
【0054】
ステップS4では、すなわち、ステップS3の第2浸水判定において、水位情報WLが第2の所定浸水深WL2未満であると判定された場合は、配電制御部12は、通信部11を介して水位センサ3から取得した水位情報WLが第1の所定浸水深WL1未満か否かを判定する(解除判定)。当該判定結果が真(Yes)である場合、即ち水位情報WLが第1の所定浸水深WL1未満である場合は、浸水状態が解消されたとして、当該ルーチンをリターンする。一方、当該判定結果が偽(No)である場合、即ち水位情報WLが第1の所定浸水深WL1以上である場合は、ステップS3へ戻り、再び第2浸水判定を行う。
【0055】
ステップS5では、配電制御部12は、すべての配電制御開閉器14を開とする制御を行う。
【0056】
続くステップS6では、配電制御部12は、第2浸水情報を生成して、第2浸水情報をネットワークNを介して管理サーバ41に送信する。管理サーバ41は、配電制御部12から受信した第2浸水情報に基づいて、給電機20への配電が遮断されたことの通知としての第2浸水警報を生成し、第2浸水警報をネットワークNを介して管理者端末31に送信する。また、管理サーバ41は、同様に、第2浸水警報を立体駐車場2の給電機20を利用中のユーザのユーザ端末32a、32bに送信する。そして、当該制御ルーチンをリターンする。
【0057】
以上のように本実施形態の配電制御システム1では、配電制御部12において第1浸水判定が真であると判定された場合に、管理サーバ41は、給電機20を使用中のユーザのユーザ端末32及び管理者端末31に、給電機20の給電が遮断される可能性がある旨の第1浸水警報を送信する。これにより、給電機20のユーザ又は配電制御システム1の管理者は、機械式の立体駐車場2において浸水が発生しており、このまま浸水深が増加することにより給電機20からの給電が遮断される可能性を事前に知ることができる。また、配電制御部12において第2浸水判定が真と判定された場合には、配電制御部12はすべての給電機20への配電を遮断する。これにより、分電制御盤10の下流のすべての配線18が非通電となり、特に地階に位置するパレットに設置された給電機20において、浸水又は流入水による漏電発生を防止でき、またその他の階においても地階で発生した漏電による2次的災害(漏電火災等による2次被害)を防止できる。更に、管理サーバ41からユーザ端末32及び管理者端末31に給電機20での給電が遮断された旨の第2浸水警報が送信される。これにより、給電機20のユーザ又は管理者は、給電機20の給電が遮断されたことを遠隔にいても知ることができる。
【0058】
また、本実施形態では、給電機20への配電は原則遮断状態であり、ユーザがネットワークを介して給電機IDと紐づいた給電開始要求を管理サーバ41に送信し、管理サーバ41が配電許可情報を生成して初めて給電機20への配電が開始される。すなわち、配電が許可されていない給電機20への配電系統については、浸水の被害を受けにくい場所に設置された分電制御盤10より下流において、非通電となる。また、電動車両への給電が終了すると配電制御開閉器14は再度閉となる。これにより、浸水により被水するおそれのある分電制御盤10より下流の電気的接続部において、電動車両に給電を行っていない給電機20では漏電が発生することがない。
【0059】
以上のことから、本実施形態に係る配電制御システム1は、複数の車室に給電機20が設けられた立体駐車場2において、浸水時の漏電発生を抑制することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0061】
例えば上記実施形態では、機械式の立体駐車場2は側方及び上方が囲われた建物を有していたが、立体駐車場2は、屋根や側壁がないフレームタイプの立体駐車場であっても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、水位センサ3は水の積量(基準面からの高さ)を検出対象としていたが、水位センサ3は、雪の積量(基準面からの高さ)を検出できるもの、又は水と雪の両方の積量を検出できるものであっても良い。これにより簡易な構成とし、コストを抑えることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、水位センサ3として水位を連続して検出できるレベルセンサを用いているが、例えばフロート式レベル計等の、所定の水位を検出するレベルスイッチとしてもよい。これにより簡易な構成とし、コストを抑えることができる。
【0064】
例えば上記実施形態では、機械式の立体駐車場2に配電制御システム1を適用していたが、
図4に示す変形例のように、地下階を有する自走式の立体駐車場2’に適用してもよい。なお、
図4において、立体駐車場2’の各階には複数の駐車区画に対しn台の給電機20a、20b、20cが設置されており、各階のn番目の給電機は20an、20bn、20cnと表されている。
【0065】
また、上記
図4に示す変形例において、管理サーバ41は、各パレットの設置階を給電機IDと紐づけて記憶し、階ごとに給電機20の配電を遮断する制御を行っても良い。これにより、浸水のおそれのある地階から上位階に向かって順に給電機20への配電を遮断することができ、できるたけ多くの電動車両への給電の機会を確保することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、駐車区画それぞれに設置される電動車両への充電インターフェースは、制御機能を備えた、例えばMode3タイプの充電設備のような高機能型の給電機20であったが、代わりに、
図5に示す本発明の配電制御システムの変形例のように、給電コンセント20a’20b’、20c’(車両用給電部)であってもよい。この場合、ユーザは、電動車両側の車両側充電ケーブルユニット26a、26b、26cを用いて給電コンセント20a’20b’、20c’に接続する。車両側充電ケーブルユニット26a、26b、26cは、電動車両の満充電を検知する図示しない制御部を備え、自動で遮断する機能を有する。そこで、管理サーバ41は、電流センサ19の電流値がゼロ付近まで減少し所定の時間が経過したことを以って給電が完了したとして、配電を停止する制御を行う。当該変形例においても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 :配電制御システム
2、2’ :立体駐車場
3 :水位センサ
4 :ケージ
5a、5b、5c :パレット
10 :分電制御盤
11 :通信部
12 :配電制御部
13 :主遮断器
14a、14b、14c :配電制御開閉器
15a、15b、15c :下流遮断器
16 :母線
17a、17b、17c :支流線
18a、18b、18c :配線
19a、19b、19c :電流センサ
20a、20b、20c :給電機
20a’、20b’、20c’:給電コンセント
21a、21b、21c :給電機開閉器
22a、22b、22c :給電機制御部
23a、23b、23c :交流直流変換器
24a、24b、24c :給電ケーブル
25a、25b、25c :給電プラグ給電ケーブル
26a、26b、26c :車両側給電ケーブルユニット
31 :管理者端末
32a、32b、32c :ユーザ端末
41 :管理サーバ
G :電源部
N :ネットワーク