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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032210
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】関節滑膜の抗炎症剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/32 20150101AFI20230302BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230302BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230302BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230302BHJP
【FI】
A61K35/32 ZNA
A61P19/02
A61P29/00
A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138199
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】595135774
【氏名又は名称】ダイドーグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 清佑
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 江里子
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】中井 章人
(72)【発明者】
【氏名】野村 義宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 麻里奈
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD61
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB46
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA96
4C087ZB11
(57)【要約】
【課題】新たな関節滑膜の抗炎症剤を提供する。
【解決手段】骨砕補抽出物を含む関節滑膜の抗炎症剤が提供される。骨砕補抽出物を含む関節痛抑制剤であって、関節滑膜の抗炎症作用によって関節の疼痛を抑制する剤が提供される。抗炎症剤は好ましくは経口剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨砕補抽出物を含む関節滑膜の抗炎症剤。
【請求項2】
骨砕補抽出物を含む関節痛抑制剤であって、関節滑膜の抗炎症作用によって関節の疼痛を抑制する剤。
【請求項3】
前記関節は膝関節である、請求項1または2に記載の抗炎症剤。
【請求項4】
IL-10発現促進作用、TNF-α発現抑制作用またはMMP-13発現抑制作用によって関節滑膜の炎症を抑制する、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
骨砕補抽出物を含む抗酸化剤。
【請求項6】
経口剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の剤。
【請求項7】
保健機能食品、健康補助食品またはサプリメントである、請求項6に記載の剤。
【請求項8】
関節痛を有する人に用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は関節滑膜の抗炎症剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、主に外界からの刺激によって誘起される生体防御反応である。炎症が起こると、発赤、腫脹、熱感、疼痛といった症状が生じる。炎症は生体組織に対してもダメージを与えることから、過剰な炎症反応や慢性的な炎症反応はかえって有害となる。
【0003】
骨砕補は、砕補、骨砕などの名称でも知られ、中国南部や台湾などに自生するウラボシ科(Polypodiacea)のハカマウラボシ(Drynaria fortunei)などの根茎を乾燥したものである。骨砕補は、中国において補腎、活血、止血、筋や骨の修復などを目的として古くから用いられている生薬である。骨砕補の臨床的効果としては、骨損傷回復の促進や骨粗鬆症の改善(骨密度の改善)、抗炎症作用、歯の成長促進などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-183123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たな関節滑膜の抗炎症剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に例示する項目に関する。
[1]骨砕補抽出物を含む関節滑膜の抗炎症剤。
[2]骨砕補抽出物を含む関節痛抑制剤であって、関節滑膜の抗炎症作用によって関節の疼痛を抑制する剤。
[3]前記関節は膝関節である、[1]または[2]に記載の抗炎症剤。
[4]IL-10発現促進作用、TNF-α発現抑制作用またはMMP-13発現抑制作用によって関節滑膜の炎症を抑制する、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5]骨砕補抽出物を含む抗酸化剤。
[6]経口剤である、[1]~[5]のいずれかに記載の剤。
[7]保健機能食品、健康補助食品またはサプリメントである、[6]に記載の剤。
[8]関節痛を有する人に用いられる、[1]~[7]のいずれかに記載の剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新たな関節滑膜の抗炎症剤および関節痛抑制剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実験1において、IL-10の遺伝子発現量を示すグラフである。
図2】実験1において、MMP-13の遺伝子発現量を示すグラフである。
図3】実験2において、TNF-αの遺伝子発現量を示すグラフである。
図4】実験2において、SOD1の遺伝子発現量を示すグラフである。
図5】実験2において、被験物質の抗酸化作用を示すグラフである。
図6】実験3において、IL-10の遺伝子発現量を示すグラフである。
図7】実験3において、MMP-13の遺伝子発現量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る剤の一態様は、骨砕補抽出物を含む関節滑膜の抗炎症剤である。滑膜は関節軟骨周辺に付着し、滑液を分泌し、関節の安定性に寄与する。関節滑膜の抗炎症剤は全身または局所的な関節滑膜の炎症を抑制することができる。炎症の抑制により関節の発赤、腫脹、熱感、疼痛等が予防、抑制または緩和され得る。本発明に係る剤の一態様は、骨砕補抽出物を含む関節痛抑制剤であって、関節滑膜の抗炎症作用によって関節の疼痛を抑制する剤である。
【0010】
本明細書において、関節には、膝関節、肩関節、首関節、股関節、脊椎関節、顎関節、指関節、肘関節、手関節、足関節等の各種関節を含む。関節の炎症には変形性関節症、関節リウマチ、関節軟骨損傷、膝関節骨壊死症、大腿骨壊死症、肩関節炎、細菌性関節炎、ウイルス性関節炎、神経病性関節症等を含む。
【0011】
関節滑膜の抗炎症剤または関節痛抑制剤は、インターロイキン10(IL-10)発現促進作用、腫瘍壊死因子α(TNF-α)発現抑制作用またはマトリックスメタプロテアーゼ13(MMP-13)発現抑制作用によって関節滑膜の炎症を抑制する。IL-10は抗炎症性サイトカイン、TNF-αは炎症性サイトカイン、MMP-13はコラーゲン分解酵素である。本発明の一態様は、骨砕補抽出物を含むIL-10発現促進剤、TNF-α発現抑制剤またはMMP-13発現抑制剤ということもできる。骨砕補抽出物は、抗酸化作用を有し、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の発現を抑制できる。本発明に係る剤の一態様は、骨砕補抽出物を含む抗酸化剤である。抗酸化作用は、例えば後述の実施例に記載のORAC値の測定によって判断できる。
【0012】
関節滑膜の抗炎症剤または関節痛抑制剤は、関節の炎症の予防、治療または悪化の抑制に用いることができる。関節滑膜の抗炎症剤または関節痛抑制剤は、関節痛を有しない人に用いてもよいし、関節痛を有する人に用いてもよい。
【0013】
原料となる骨砕補は、ウラボシ科(Polypodiaceae)及びシノブ科(Davalliaceae)に属する植物、具体的には、ハカマウラボシ(Drynaria fortunei)、シノブ(Davallia mariesii)、タカサゴシノブ(Davallia formosana)、アツバシノブ(Davallia solida)、シマシノブ(Davallia griffithiana)、ウスバシノブ(Araiostegia perdurans)などの植物の根茎である。骨砕補抽出物は、骨砕補から抽出した骨砕補抽出液を濃縮等することによって乾燥粉末ないし半固形物としたものである。骨砕補抽出物は例えば次の方法で得ることができる。骨砕補を抽出容器に入れ、蒸留水を加えて100℃で4時間熱水抽出する。この過程を3回繰り返した後、得られた溶液を室温で冷やし、濾過紙で濾過する。濾過した抽出液を、真空回転蒸発器を用いて40℃以下で減圧濃縮し、凍結乾燥することで骨砕補抽出物が得られる。骨砕補抽出物は、単一種または複数種の基原植物のいずれに由来するものであってもよい。
【0014】
骨砕補抽出物には、フラボノイド、リグノイドおよびトリテルペノイドが主要成分として含まれ得る。フラボノイドは好ましくはナリンジンを含む。
【0015】
骨砕補抽出物は市販品を用いてもよい。市販品としては、BGG Japan株式会社の商品名「骨砕補エキスパウダー20%」、AS Material社「骨砕補抽出物」が挙げられる。
【0016】
本発明に係る剤は、経口剤または非経口剤であってよい。非経口剤は、例えば外用または注射によって投与することができる。投与される対象は特に限定されないが、ヒトのほか、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット等の哺乳類、ニワトリ等の鳥類が挙げられる。投与される対象は家畜、家禽、愛玩動物、実験動物等であってもよい。
【0017】
経口剤は、食品、医薬品または医薬部外品であってよい。食品には飲料および飼料等が含まれる。食品は、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、健康補助食品、サプリメントが含まれる。医薬品としては、治療薬または動物薬、予防薬等が含まれる。
【0018】
経口剤中の骨砕補抽出物の配合量は、0.01質量%以上50質量%以下であってよく、0.1質量%以上、1質量%以上または3質量%以上であってよく、30質量%以下、20質量%または10質量%以下であってもよい。骨砕補抽出物の配合量は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
【0019】
本発明に係る剤が経口剤である場合、摂取対象者の性別、年齢、体重の他、症状の軽重等により広範に調整することができるが、一般に骨砕補抽出物の1日の1人あたりの摂取量は1mg以上2000mg以下であってよく、50mg以上、100mg以上または150mg以上であってよく、1000mg以下または500mg以下であってもよい。経口剤は、1日1回または数回に分けて摂取すればよい。
【0020】
食品としては、例えば、チーズ、調製粉乳、アイスクリーム、ヨーグルト等の乳製品、氷菓、チョコレート、タブレット(錠菓)、グミ、クッキー、ビスケット、キャンディー、和菓子、米菓、ケーキ、パイ、プリン等の菓子類、パン、麺類等の小麦粉製品、雑炊、米飯等の米製品、しょうゆ、味噌、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料等を挙げることができる。食品は、水産加工品、農産加工品、畜産加工品であってもよい。
【0021】
飲料としては、茶、コーヒー、牛乳、乳飲料、果汁飲料、ジュース、乳酸飲料、清涼飲料、栄養ドリンク、美容ドリンク等を挙げることができる。
【0022】
食品は、液状、ペースト状、粉末状、フレーク状、顆粒状等の食品添加剤であってもよい。食品添加剤には飲料用の添加剤も含まれる。食品添加剤は、一般的な食品添加剤の製造方法に準じて製造することができる。骨砕補抽出物を含む経口剤は、他の食品に添加されてもよい。
【0023】
食品は、その種類に応じて経口に適した添加成分を含むことができる。添加剤としては、甘味料が挙げられる。甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、マルチトール等が挙げられる。
【0024】
その他の添加剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、結晶セルロース、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等が挙げられる。
【0025】
経口剤の剤形は特に限定されず、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、チュアブル錠、丸剤、トローチ剤、舌下錠、軟膏、クリーム剤、乳剤、懸濁剤、ゼリー剤、シロップ、液剤等であってもよい。
【0026】
経口剤の調製は、無毒性の賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、防腐剤、等張化剤、安定化剤、分散剤、酸化防止剤、着色剤、矯味剤、緩衝剤、pH調整剤、粘稠化剤、光沢剤等の添加剤を使用して、公知の方法により実施することができる。これらの製剤に含まれる無毒性の添加剤としては、例えば、でんぷん、ゼラチン、ブドウ糖、デキストリン、ヒアルロン酸、乳糖、果糖、マルトース、炭酸マグネシウム、二酸化珪素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ペトロラタム、グリセリン、エタノール、シロップ、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸、ポリビニルピロリドン、水、シェラック、カルナウバロウ等が挙げられる。製剤中には、本発明に係る剤の有用性を増強するために、他の成分、例えばリンゴ由来ポリフェノール、ステロイド系もしくは非ステロイド系抗炎症化合物等を含有させてもよい。本発明の一態様は、上記剤の製造における骨砕補抽出物の使用である。
【0027】
非経口剤は、医薬品、医薬部外品または化粧品であってよい。外用剤は、例えば皮膚に直接塗布または貼付することができ、液剤、クリーム剤、乳液剤、ローション剤、軟膏、ゲル剤、エアゾール剤、パック、マイクロニードルパッチ、湿布剤等であってよい。注射剤は、例えば関節、静脈、皮下または筋肉へ投与することができる。
【0028】
非経口剤中の各成分の含有量は、経口剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。非経口剤剤における骨砕補抽出物の配合量は、例えば0.001質量%以上10質量%以下であってよく、0.01質量%以上または0.05質量%以上であってよく、5質量%以下または3質量%以下であってよい。非経口剤は、1日1回または数回に分けて投与されてよい。
【0029】
非経口剤は、骨砕補抽出物と、医薬品、医薬部外品または化粧品に通常使用される基剤または担体と、を常法に従い混合して製剤化することができる。基剤または担体としては、ヤシ油、オリーブ油、コメヌカ油、シアバター等の油脂;ワセリン、流動パラフィン等の炭化水素類;ホホバ油、ミウロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等のロウ類;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、フィトステロール、コレステロール等の高級アルコール;ジメチコン、環状シリコーン、変性シリコーン等のシリコーン類;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カラギーナン;ポリビニルブチラート;ポリエチレングリコール;ジオキサン;ブチレングリコールアジピン酸ポリエステル;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等のエステル類;デキストリン、マルトデキストリン等の多糖類;カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル;水が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができ、またそれらの使用量は当業者に公知の範囲から適宜選択される。製剤中には、本発明に係る剤の有用性を増強するために、他の成分、例えばリンゴ由来ポリフェノール、ステロイド系もしくは非ステロイド系抗炎症化合物等を含有させてもよい。
【0030】
非経口剤には、本発明の効果を損なわない範囲で公知の添加剤、例えば界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、分散剤、キレート剤、pH調整剤、保存剤、増粘剤、刺激低減剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血管拡張剤等を添加することができる。これらの添加剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
界面活性剤としては、例えばソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO-40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO-50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80等の硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、オレイルアミン等のアミン類が挙げられる。
【0032】
安定化剤としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、リン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩酸システイン、リン酸塩、アスコルビン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム;グリシン、各種アミノ酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、L-システイン塩酸塩が挙げられる。
【0034】
着色剤としては、例えば無機顔料、天然色素が挙げられる。
【0035】
分散剤としては、例えばピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸架橋コポリマー、有機酸が挙げられる。
【0036】
キレート剤としては、例えばEDTA・2ナトリウム塩、クエン酸が挙げられる。
【0037】
pH調整剤としては、例えば塩酸、硫酸等の無機酸;乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム等の有機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機塩基が挙げられる。
【0038】
保存剤としては、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラベン類、フェノキシエタノールが挙げられる。
【0039】
増粘剤としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース系増粘剤、白糖、グアーガム、ペクチン、プルラン、ゼラチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、マクロゴール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーが挙げられる。
【0040】
刺激低減剤としては、例えば甘草エキス、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、甘草エキス、アルギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0041】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミルおよびその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-ターシャリーブチル-4-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物が挙げられる。
【0042】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、トレハロース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン)、エラスチン、コラーゲン、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、シラン根(白及)抽出物が挙げられる。
【0043】
血管拡張剤としては、例えば塩化カルプロニウム、ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、ミノキシジル、オタネニンジンエキス、トウガラシチンキが挙げられる。
【実施例0044】
〔実験1:動物試験(ラット外傷性関節症モデルにおける滑膜の遺伝子発現解析)〕
実験には、10週齢の雄のWisterラット(Crij:WI)を用いた。Sham手術(偽手術、皮膚および筋層の切開のみ実施)によるOA非発症モデルと、内側側副靭帯および内側半月板切除手術(MTT手術)によるOA発症モデルとを作製した。手術は全個体で右膝のみに実施し、左膝は無処置膝とした。手術から2日後に動物飼育室に導入し、1週間の予備飼育の後、各試験群の平均体重に偏りがないように割付を行った。ラットの飼育条件は12時間明暗周期、室温24±2℃とした。飼料は、一般飼育用固形飼料(ラボMRストック、日本農産工業社製)を用いて、常時給餌・給水条件で飼育した。
【0045】
試験条件を表1に示す。骨砕補抽出物としては、「骨砕補抽出物」(BGG JAPAN社製)を投与した。N-アセチルシステイン(NAC)は陽性対照として投与した。Sham群およびControl群には滅菌水を投与した。被験物質は胃ゾンデにより試験期間中1日1回毎日経口投与した。
【0046】
【表1】
【0047】
8週間の投与終了後に解剖を行った。セボフレン(登録商標)吸入麻酔液(丸石製薬株式会社)による麻酔下で下大静脈採血を行ってラットを安楽死させ、右膝の膝蓋骨下の滑膜組織および右後肢膝関節を採取した。右後肢膝関節の関節軟骨周辺部の組織切片を作製し、変形性ひざ関節症が発症していることを確認した。
【0048】
滑膜の遺伝子発現解析のために、右膝関節より滑膜組織の採取を行った。単離した滑膜組織はPBSで洗浄後、RNAlater(Invitrogen社製)に4℃で一晩浸漬した後、TRIzol(登録商標)reagent(Invitrogen社製)で処理し、totalRNAを精製した。これを鋳型として、PrimeScript RT reagent Kit(Perfect Real Time、タカラバイオ株式会社製)を用いてcDNAを合成した。このcDNAを鋳型として、TB Green Premix Ex Taq II(タカラバイオ株式会社製)およびThermal Cycler Dice Real Time System TP800(タカラバイオ株式会社製)を用いて、定量的リアルタイムPCRを行った。用いたプライマーの塩基配列を表2および配列番号1~6に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
反応終了後、遺伝子発現量を専用のソフトウェア(Thermal Cycler Dice Real Time System TP800 Software Ver.1.02A)で解析した。それぞれのサンプルの遺伝子発現量は共に増幅させたβ-Actinで標準化し、結果はそれぞれ平均値±標準誤差(S.E.)で示した。
【0051】
滑膜におけるIL-10の遺伝子発現解析結果を図1に示す。Control群ではSham群に比べてIL-10の遺伝子発現量がわずかに低値となった。一方で、骨砕補抽出物投与群ではControl群に比べてIL-10の遺伝子発現量が顕著に高くなった。IL-10は抗炎症性サイトカインのひとつとして知られている。骨砕補抽出物はIL-10の遺伝子発現を強く促進し、滑膜の炎症を軽減する可能性が示唆された。
【0052】
滑膜におけるMMP-13の遺伝子発現解析結果を図2に示す。Control群ではSham群に比べてMMP-13の遺伝子発現量が有意に増加した。一方で、骨砕補抽出物投与群ではControl群に比べてMMP-13の遺伝子発現量が半減していた。MMP-13は軟骨の主成分のひとつであるコラーゲンを分解する働きがある。骨砕補抽出物はMMP-13の遺伝子発現を抑制し、軟骨分解の抑制に作用する可能性が示唆された。
【0053】
〔実験2:動物試験(ラット外傷性関節症モデルにおける滑膜の遺伝子発現解析)〕
実験2では、実験1と同じ方法でラットに被験物質を投与した。試験条件を表3に示す。実験1と同じ方法で膝関節の滑膜組織からcDNAを得て、定量的リアルタイムPCRを行った。用いたプライマーの塩基配列は表4および配列番号5~10に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
滑膜におけるTNF-αの遺伝子発現解析結果を図3に示す。Control群ではSham群に比べてTNF-αの遺伝子発現量が有意に高値となった。一方で、骨砕補抽出物投与群ではControl群に比べてTNF-αの遺伝子発現量が有意に低値となり、Sham群と同等であった。TNF-αは代表的な炎症性サイトカインのひとつである。骨砕補抽出物はTNF-αの遺伝子発現を抑制し、滑膜の炎症を軽減する可能性が示唆された。
【0057】
滑膜におけるSOD1の遺伝子発現解析結果を図4に示す。Control群ではSham群に比べてSOD1の遺伝子発現量が有意に高値となった。一方で、骨砕補抽出物投与群ではControl群に比べてSOD1の遺伝子発現量が有意に低値となり、Sham群と同等であった。骨砕補抽出物が有する抗酸化作用によって、炎症により亢進された滑膜の酸化ストレスが軽減されて、SOD1の遺伝子発現量が低下したと推測される。
【0058】
骨砕補抽出物の抗酸化作用(ORAC値)をCao G et al., Free Radical Biology and Medicine, vol 14, Issue 3, 303-311, March 1993に記載の方法に基づいて測定した結果を示す。骨砕補抽出物の抗酸化作用は標準物質として用いたビタミンC(L-アスコルビン酸)よりも高いことが認められた(図5)。
【0059】
〔実験3:動物試験(変形性膝関節症自然発症モデルにおける滑膜の遺伝子発現解析)〕
自然発症型ひざ関節症(OA)モデル動物であるSTR/Ortマウスは、STR/1N種から分離された種であり、加齢に伴ってひざOAを発症し、関節軟骨の摩耗変性、軟骨石灰化、関節間隙の狭小化など、ヒトにおけるひざOAと類似した病態を呈することが知られている。STR/Ortマウスは、20週齢ごろから雄の後肢の内側脛骨軟骨にOAを発症し始め、35週齢以降で好発するが、雌の膝関節では発症しないことが報告されている。また、STR/Ortマウスは、ヒトにおけるOA発症のリスク要因である肥満や脂質代謝異常を併発することも知られている。本実験では、STR/Ortマウスに骨砕補抽出物を経口投与し、ひざOAに対する効果を検討した。
【0060】
マウスの飼育条件は12時間明暗周期、室温24±2℃とした。飼料は、一般飼育用固形飼料(ラボMRストック、日本農産工業社製)を用いて、常時給餌・給水条件で飼育した。27週齢時に、雄性STR/Ortマウス10匹について、体重に偏りがないように群分けを行った。また、雌性STR/Ortマウスは、5匹を雌性非発症群とした。試験条件を表5に示す。被験物質は胃ゾンデにより試験期間中1日1回毎日経口投与した。雌性非発症群および雄性発症Control群には滅菌水のみを投与した。
【0061】
【表5】
【0062】
8週間の投与終了後に解剖を行った。セボフレン(登録商標)吸入麻酔液(丸石製薬株式会社)による麻酔下で下大静脈採血を行ってマウスを安楽死させ、両膝の膝蓋骨下の滑膜組織および両後肢膝関節を採取した。両後肢膝関節の関節軟骨周辺部の組織切片を作製し、変形性ひざ関節症が発症していることを確認した。実験1と同じ方法で膝関節の滑膜組織からcDNAを得て、定量的リアルタイムPCRを行った。
【0063】
滑膜におけるIL-10の遺伝子発現解析結果を図6に示す。雄性発症Control群では雌性非発症群群に比べてIL-10の遺伝子発現量がわずかに増加した。骨砕補抽出物投与群では雄性発症Control群に比べてIL-10の遺伝子発現量に著しい増加が見られた。IL-10は抗炎症性サイトカインのひとつとして知られている。骨砕補抽出物はIL-10の遺伝子発現を強く促進し、滑膜の炎症を軽減する可能性が示唆された。
【0064】
滑膜におけるMMP-13の遺伝子発現解析結果を図7に示す。雄性発症Control群では雌性非発症群群に比べてMMP-13の遺伝子発現量が著しく増加した。一方で、骨砕補抽出物投与群では雄性発症Control群に比べてMMP-13の遺伝子発現量が大きく低下していた。MMP-13は軟骨の主成分のひとつであるコラーゲンを分解する働きがある。骨砕補抽出物はMMP-13の遺伝子発現を抑制し、軟骨分解を抑制する可能性が示唆された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023032210000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨砕補抽出物を含む関節滑膜の抗炎症剤であって、
関節滑膜におけるIL-10発現促進作用、TNF-α発現抑制作用またはMMP-13発現抑制作用によって関節滑膜の炎症を抑制する剤
【請求項2】
骨砕補抽出物を含む関節痛抑制剤であって、
関節滑膜におけるIL-10発現促進、TNF-α発現抑制またはMMP-13発現抑制による関節滑膜の抗炎症作用によって関節の疼痛を抑制する剤。
【請求項3】
前記関節は膝関節である、請求項1または2に記載の
【請求項4】
骨砕補抽出物を含む、関節滑膜における抗酸化剤。
【請求項5】
経口剤である、請求項1~のいずれか1項に記載の剤。
【請求項6】
保健機能食品、健康補助食品またはサプリメントである、請求項に記載の剤。
【請求項7】
関節痛を有する人に用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の剤。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨砕補抽出物を含む関節滑膜の抗炎症剤であって、
関節滑膜におけるIL-10発現促進作用、TNF-α発現抑制作用またはMMP-13発現抑制作用によって関節滑膜の炎症を抑制し、
前記抗炎症剤は経口剤であって、
前記経口剤中の骨砕補抽出物の配合量は、3質量%以上10質量%以下である剤。
【請求項2】
骨砕補抽出物を含む関節痛抑制剤であって、
関節滑膜におけるIL-10発現促進、TNF-α発現抑制またはMMP-13発現抑制による関節滑膜の抗炎症作用によって関節の疼痛を抑制し、
前記関節痛抑制剤は経口剤であって、
前記経口剤中の骨砕補抽出物の配合量は、3質量%以上10質量%以下である剤。
【請求項3】
前記関節は膝関節である、請求項1または2に記載の剤。
【請求項4】
骨砕補抽出物を含む、関節滑膜における抗酸化剤であって、
前記抗酸化剤は経口剤であって、
前記経口剤中の骨砕補抽出物の配合量は、3質量%以上10質量%以下である剤
【請求項5】
経口剤であって
前記骨砕補抽出物の1日の1人あたりの摂取量は1mg以上2000mg以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の剤。
【請求項6】
保健機能食品、健康補助食品またはサプリメントである、請求項5に記載の剤。
【請求項7】
関節痛を有する人に用いられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の剤。