IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オプテックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ドローンを用いた自動搬送システム 図1
  • 特開-ドローンを用いた自動搬送システム 図2
  • 特開-ドローンを用いた自動搬送システム 図3
  • 特開-ドローンを用いた自動搬送システム 図4
  • 特開-ドローンを用いた自動搬送システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032228
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ドローンを用いた自動搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/10 20060101AFI20230302BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230302BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230302BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230302BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20230302BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230302BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
B65G1/00 501C
B65G1/00 511B
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138233
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000103736
【氏名又は名称】オプテックスグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(72)【発明者】
【氏名】青井 昭博
【テーマコード(参考)】
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022CC03
3F022EE05
3F022EE09
3F022LL00
3F022MM52
3F022NN01
3F022NN31
5H301AA02
5H301BB05
5H301FF15
5H301FF27
5H301GG03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドローンの落下による事故を確実に防止するとともに、ドローンの正確な飛行を簡便な構成で安価に実現できる、ドローンを用いた自動搬送システムを提供する。
【解決手段】建物B内で物品を搬送するドローン1と、該建物B内の天井と床面との間であって、前記ドローン1の飛行経路下に設けられたネット2等の落下防止体と、前記落下防止体の複数箇所に付された、ドローン1による認識が可能な位置標識3とを備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内で物品を搬送するドローンと、該建物内の天井と床面との間であって、前記ドローンの飛行経路下に設けられたネット等の落下防止体と、前記落下防止体の複数箇所に付された、ドローンによる認識が可能な位置標識とを備えていることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記落下防止体が、前記天井と床面との間に張り設けられたネット又はシートである請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記位置標識が縦横マトリクス状に設けられている請求項1又は2記載の搬送システム。
【請求項4】
前記位置標識が、シート状をなし、その表面に自身の位置座標を直接的又は間接的に示す符号が表示されたものである請求項1、2又は3記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等の建物内で使用される搬送システムに関するものであり、特にドローン(無人飛行体)を用いた搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、ドローンが搬送装置として注目されてきており、屋外のみならず、工場等の建物内でも、物品搬送にドローンを用いるというアイデアが特許文献1等に開示されている。
【0003】
しかしながら、建物内の場合、人がおり、かつ、屋外のように人を避ける飛行経路を選択しにくいため、ドローンやドローンによって搬送されている物品が落下して人や器物に衝突するといった事態が発生し得る。
【0004】
また、物品搬送時には、ドローンに搬送開始位置や搬送終了位置はもちろんのこと、その間の経路をも正確に認識させてそれに沿った飛行をさせる必要があるが、建物内の場合は、GPS信号が届きにくいという問題もある。
【0005】
これに対しては、特許文献2に示されているように、ドローンに複数のカメラを搭載して周囲を撮像し、その撮像画像を解析して自身の飛行位置を自動認識するといった技術を用いることも考えられる。しかし、このような構成であると、工場毎に画像解析のための異なるプログラムを開発しなければならないうえ、強力なCPUやメモリが必要になるし、さらには複数のカメラも搭載しなければならないなど、構成の複雑化やそれによる動作の不安定化、高価格化などを招きかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-179422号公報
【特許文献2】特開2020-176961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した課題を一挙に解決すべく図った画期的なものであって、ドローンの落下による事故を確実に防止するとともに、ドローンの正確な飛行を簡便な構成で安価に実現できる、ドローンを用いた自動搬送システムを提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る搬送システムは、建物内で物品を搬送するドローンと、該建物内の天井と床面との間であって、前記ドローンの飛行経路下に設けられたネット等の落下防止体と、前記落下防止体の複数箇所に付された、ドローンによる認識が可能な位置標識とを備えていることを特徴とする。
【0009】
前記落下防止体が、前記天井と床面との間に張り設けられたネット又はシートであれば、既存の建物にも簡便かつ安価に導入可能なうえ、張力による弾性があるので、ドローンやドローンが運ぶ物品が落下防止体上にいわば柔らかく落下し、破損防止に寄与し得る。
【0010】
前記位置標識が縦横マトリクス状に設けられていれば、ドローンの位置認識がより容易となる。特に位置標識が縦に等間隔、横に等間隔に並んでいればより好ましい。
【0011】
前記位置標識が、シート状をなし、その表面に自身の位置座標を直接的又は間接的に示す符号が表示されたものであれば、位置標識を簡便に作成できる。また、この位置標識を前記ネットの結束点に貼り付けるだけでよいので、本システムをより安価にかつ簡便に導入できる。なお、ここでいう符号とは、数字やバーコード、図形などを含む。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成によれば、落下防止体によってドローンやドローンによって搬送されている物品の落下を防止できるうえ、落下防止体上を飛行するドローンは、該落下防止体に付された位置標識によって自身の飛行位置を正確にかつ容易に把握することができるので、建物内のフリースペースである上方空間を有効活用して、ドローンによる安全かつ正確に物品の搬送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における搬送システムの斜視全体模式図である。
図2】同実施形態におけるネットと位置標識を示す部分拡大図である。
図3】同実施形態における搬送システムを側方から視たときのドローンの搬送態様を示す模式図である。
図4】本発明の他の実施形態における搬送システムの斜視全体模式図である。
図5】本発明のさらに他の実施形態における搬送システムを側方から視たときのドローンの搬送態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態にかかる自動搬送システム100は、図1に示すように、工場等の建物B内において物品を搬送するためのものであり、ドローン(無人飛行体)1と、建物B内における床と天井との間に張設されたドローン落下防止部材であるネット2とを備えている。
【0016】
ドローン1は、プロペラ、プロペラを駆動するモータ、モータを制御して飛行をコントロールする制御装置、カメラ等のセンサなどを備えた静止飛行可能なものであり、この実施形態では、図3に示すように、このドローン1に物品を搬送するためのホルダ11が取り付けられている。
【0017】
前記ネット2は、図1図2に示すように、例えば樹脂繊維製の複数の線条体21を縦横に織り込んで格子状にしたものであり、1つの格子(網目)の大きさがドローン1の最小外形寸法よりも小さくなるように構成してある。
【0018】
しかして、この実施形態では、ネット2上に、自身の位置座標を示す多数の位置標識3が縦横マトリクス状に配置されている。より具体的には、ネット2を構成する線条体21と線条体21との交点(結束点)に位置標識3がそれぞれ設けてある。
【0019】
この位置標識3は、ドローン1に搭載されたセンサーによって当該位置標識3の座標を認識できるように構成されたものである。ここでの位置標識3は、例えば図2に示すように、自身の位置座標を示すバーコードが表面に表記された円形や四角形のシートである。
【0020】
なお、位置標識3は、上述のように、座標が直接的に表示されているものには限られず、要するに、それぞれがユニークなものであればよい。例えば、各位置標識3に互いに異なる数字やコードが表示されていたり、各位置標識3の色や形状が互いに異なるように構成されていても構わない。この場合、各位置標識3のユニーク値(前記数字やコード、色、形状等)と位置座標との対応データを予めドローン1のメモリに記憶させておけばよい。ドローン1は、例えばカメラによって、前記位置標識3のユニーク値を読みとり、前記対応データを参照してそのユニーク値に紐づけられた座標を特定すればよい。
【0021】
次に、ドローン1による屋内物品搬送方法の一例を、図3を参照して説明する。
ここでの物品は、例えば流動体(液体や粉体)であり、所定の専用パッケージWに収容されている。
【0022】
まず、初期状態においてドローン1は、建物B内に設定された所定の待機位置S1で待機している。ここでの待機位置S1は、例えばネット2よりも上において建物Bの壁から突出した平板状の待機台4上に設定されている。
【0023】
また、建物B内には前記パッケージWが載置される上下動可能な台を備えたリフター5と、物品を受け取って処理する機器6(ここでは例えば打錠機)が互いに隔離した位置に設置されている。
【0024】
さて、外部から搬送されてきた1又は複数の前記パッケージWは、前記リフター5の台上に載置され、自動的に又はオペレータの操作によって、前記ネット2よりも上方に設定された所定の搬送開始位置P1にまで持ち上げられる。なお、該リフター5の上方は、台が通過可能なように、対応部分のネット2の網目が大きくしてあるか、又はこの部分にはネット2が張られていない。
【0025】
そして、パッケージWが前記搬送開始位置P1にまで持ち上げられると、ドローン1はこれを自動的に又はオペレータからの指示信号によって検知し、前記待機位置S1から離陸して、前記搬送開始位置P1にあるパッケージWを把持できる位置であるホールド位置S2に向かって飛行する。
【0026】
その飛行中、ドローン1は、前記カメラによって下方を撮影し、その画像中に映り込んだ1又は複数の位置標識3の座標を読み取る。そして、当該位置標識3が示す座標及び画像中の位置標識3の位置をパラメータとして、ドローン1は自身の飛行位置を特定するとともに、特定した自身の飛行位置が前記ホールド位置S2に近づくようにFB制御しながら飛行を続ける。
【0027】
前記ホールド位置S2に到達するとドローン1は前記ホルダ11でパッケージWを把持する。この把持方式は、ホルダ11の種類によって異なるが、ここでのホルダ11は、例えば、一対の開閉駆動可能なアームを備えており、ドローン1からの指示により、前記アームが開閉されてパッケージWの側面を把持できるようにしてある。もちろん、ホルダ11はこのような構成に限られるものではなく、例えばフックを利用してパッケージWを吊り上げるものなどでもよい。
【0028】
このようにしてホールド位置S2でパッケージWを把持したドローン1は、次に、所定のリリース位置S3まで自動飛行する。このリリース位置S3は、物品を受け入れ処理する前記機器6の直上に設定されている。なお、該機器6における物品受入部61は、ここでは、流体や粉状体が流し込まれるロート状のホッパーである。
【0029】
ドローン1は、前記リリース位置S3で静止飛行しながら、パッケージWに予め収容してあるチューブTを下方に繰り出して、その先端を、ホッパー61内かその上方近傍に位置づける。
【0030】
そして、パッケージWに設けられている図示しないバルブを開成駆動し、パッケージWに収容されている物品である粉状体乃至流体を、チューブTを介して前記ホッパー61に流し込む。
次に、ドローン1は、チューブTをネット2より上まで巻き上げるなどした後、図示しない引き取り位置にまで飛行し、そこでパッケージWを降ろす。
【0031】
その後、次のパッケージWが前記搬送開始位置P1に置かれていれば、ドローン1は再度、上述の手順を繰り返して該パッケージWを搬送し、そうでなければ、待機位置S1に戻る。
【0032】
以上の構成によれば、人や設備機器がないネット2より上方の空間を、ドローン1の飛行経路とし、ひいては物品の搬送空間としているので、飛行中にドローン1が人や設備機器に接触することはないし、仮に不測の事態によってドローン1や物品が搬送中に落下したとしても、ネット2によって止められるので、高い安全性を担保できる。
また、基本的には、ドローン1とネット2と簡単な位置標識3だけで構成できるので、既存の設備にも大きな改造を加えることなく低コストで導入できる。
【0033】
さらに、多数の位置標識3が規則性をもって配列されているので、ドローン1にとってみれば、例えば直下の1またはいくつかの位置標識3の座標を取得するだけで、自身の飛行位置の少なくとも平面座標は把握できるなど、飛行位置の算出が容易なため、ハイパワーCPUや多くのセンサ、複雑なプログラム等が不要となり、動作の確実性や低コスト性を担保できる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0034】
例えば、位置標識は、RFIDなどのように電波や光等の電磁波信号を発するものでもよい。この場合、ドローンのセンサとしてはカメラではなく、電磁波信号を受信するアンテナなどにすればよい。
【0035】
位置標識を設ける位置は、ネットの結束点だけに限られず、例えば結束点間にも位置標識を設けるなどしてその数を増やしてもよい。また、ネット以外の部位、例えば、建物の壁や天井等にさらに位置標識を設けてもよい。このようにすれば、ドローンの飛行精度を無理なく向上させることができる。
【0036】
落下防止部材は、ネットには限られない。例えば、布等の可撓性のあるシートや樹脂板などでも構わないが、ネットや布などのように、ある程度の伸展が可能な素材を用いれば、落下時でのドローンや物品の破損を最小限にできる。
【0037】
ネットは、建物(又は建物内の部屋)の全面に張り設ける必要はない。図4に示すように、ドローン1の空路が限られるのであれば、その空路に沿った部位にのみネット2を張設すればよい。
【0038】
例えば、図5に示すように、ドローン1にホルダとしてウィンチ11を取り付け、そのワイヤの先端のフック等によって部品や箱等の物品を吊り下げるようにしてもかまわない。この場合、前述したリフター5は不要となる。すなわち、搬送開始時には、ネット2上でホバリングするドローン1から繰り出されて降下してくるフックに、床面に載置された物品Wを、オペレータが乃至自動でひっかけるようにし、搬送終了時には、受け入れ位置に降下してくる物品Wに掛かっているフックをオペレータが乃至自動で外すようにすればよい。
その他、本発明は上述した各変形例の一部を組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲で変形可能してもよい。
【符号の説明】
【0039】
100・・・搬送システム
B・・・建物
W・・・物品
1・・・ドローン
2・・・ネット(落下防止体)
3・・・位置標識
図1
図2
図3
図4
図5