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特開2023-32229鋳鉄の凝固潜熱算出方法及び凝固潜熱算出装置
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  • 特開-鋳鉄の凝固潜熱算出方法及び凝固潜熱算出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032229
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】鋳鉄の凝固潜熱算出方法及び凝固潜熱算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/06 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
G01N25/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138234
(22)【出願日】2021-08-26
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】591068609
【氏名又は名称】株式会社マツバラ
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】川島 浩一
(72)【発明者】
【氏名】重野 勝利
(72)【発明者】
【氏名】関口 理希
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB12
2G040BA08
2G040BA24
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA03
2G040DA14
2G040GA01
2G040HA16
2G040ZA01
(57)【要約】
【課題】片状黒鉛鋳鉄における凝固潜熱量を算出する技術を提供する。
【解決手段】鋳鉄の溶湯の温度を計測する温度センサ10(K熱電対10)と、鋳鉄の溶湯が凝固する際の温度を温度センサ10で所定時間計測して記録するデータロガー20と、鋳鉄の溶湯において相晶出がない場合の所定時間の冷却曲線であるゼロカーブを算出し、データロガー20で記録した所定期間の鋳鉄の溶湯の温度から鋳鉄の冷却曲線を作成し、作成した冷却曲線を時間微分して作成した冷却速度曲線Aとゼロカーブを時間微分して得たセロカーブ微分曲線Bとの時間毎の差を算出し、算出した差を積分した値に鋳鉄の比熱を乗ずることにより、鋳鉄の単位重量当たりの凝固潜熱を算出する潜熱算出部30と、を備えた鋳鉄の凝固潜熱算出装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳鉄の溶湯が凝固する際の温度を温度センサで所定時間計測して得られる冷却曲線を時間微分して冷却速度曲線を得る冷却速度曲線取得工程と、
前記溶湯において相晶出がない場合の前記冷却曲線取得工程における前記所定時間における冷却曲線であるゼロカーブの時間微分曲線を得るゼロカーブ微分曲線作成工程と、
前記冷却曲線取得工程で得た前記冷却速度曲線と前記ゼロカーブ微分曲線作成工程で作成したゼロカーブ微分曲線とを経過時間毎の差を積分した値に前記鋳鉄の比熱を乗ずることにより、前記鋳鉄の単位重量当たりの凝固潜熱を算出する凝固潜熱算出工程と
により、前記鋳鉄の凝固潜熱を算出することを特徴とする鋳鉄の凝固潜熱算出方法。
【請求項2】
鋳鉄の溶湯の温度を計測する温度センサと、
前記鋳鉄の溶湯が凝固する際の温度を前記温度センサで所定時間計測して記録するデータ記録部と、
前記鋳鉄の溶湯において相晶出がない場合の前記所定時間の冷却曲線であるゼロカーブを算出するゼロカーブ算出部と、
前記データ記録部で記録した前記所定期間の前記鋳鉄の溶湯の温度から前記鋳鉄の冷却曲線を作成し、該作成した冷却曲線を時間微分して作成したと前記冷却速度曲線ゼロカーブ算出部で算出した前記ゼロカーブを時間微分して得たセロカーブ微分曲線との時間毎の差を算出し、該算出した差を積分した値に前記鋳鉄の比熱を乗ずることにより、前記鋳鉄の単位重量当たりの凝固潜熱を算出する凝固潜熱算出部と、
を備えたことを特徴とする鋳鉄の凝固潜熱算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒鉛鋳鉄における凝固潜熱を算出する凝固潜熱算出方法及び凝固潜熱算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱電対を具備する鋳鉄の溶湯の熱分析用の3個の試料採取容器をそれぞれ冷却曲線作図装置に接続し、第1の試料採取容器にチル化剤を添加して溶湯を注入し、その熱分析よりそのセメンタイト共晶温度(TEC)を測定することと、第2の試料採取容器には何らの添加材を加えないで溶湯を注入し、その熱分析から溶湯自体の共晶凝固温度変化を測定することと、さらに第3の容器に溶湯を注入して、その熱分析によって黒鉛共晶温度(TEG)を測定することと、溶湯の共晶凝固温度変化の範囲に対するセメンタイト共晶温度(TEC)と黒鉛共晶温度(TEG)との関係から鋳鉄の溶湯の性状を判定する方法があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-313464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の技術では、黒鉛鋳鉄の鋳造の際に有効である黒鉛鋳鉄の溶湯の凝固潜熱を算出できないという課題があった。
本発明は、こうした課題に鑑みなされたもので、黒鉛鋳鉄における凝固潜熱を算出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0006】
[適用例1]
適用例1に記載の発明は、
鋳鉄の溶湯が凝固する際の温度を温度センサ(10)で所定時間計測して得られる冷却曲線を時間微分して冷却速度曲線(A)を得る冷却速度曲線取得工程(S110,S115)と、
前記溶湯において相晶出がない場合の前記冷却曲線取得工程(S110,S115)における前記所定時間における冷却曲線であるゼロカーブの時間微分曲線(B)を得るゼロカーブ微分曲線作成工程(S120)と、
前記冷却曲線取得工程(S110,S115)で得た前記冷却速度曲線(A)と前記ゼロカーブ微分曲線作成工程(S120)で作成したゼロカーブ微分曲線(B)とを経過時間毎の差を積分した値に前記鋳鉄の比熱を乗ずることにより、前記鋳鉄の単位重量当たりの凝固潜熱を算出する凝固潜熱算出工程(S125)と
により、前記鋳鉄の凝固潜熱を算出することを要旨とする鋳鉄の凝固潜熱算出方法である。
【0007】
このような鋳鉄の凝固潜熱算出方法では、鋳鉄の溶湯の凝固潜熱を算出することができる。
【0008】
[適用例2]
適用例2に記載の発明は、
鋳鉄の溶湯の温度を計測する温度センサ(10)と、
前記鋳鉄の溶湯が凝固する際の温度を前記温度センサ(10)で所定時間計測して記録するデータ記録部(20)と、
前記鋳鉄の溶湯において相晶出がない場合の前記所定時間の冷却曲線であるゼロカーブを算出するゼロカーブ算出部(30)と、
前記データ記録部(20)で記録した前記所定期間の前記鋳鉄の溶湯の温度から前記鋳鉄の冷却曲線を作成し、該作成した冷却曲線を時間微分して作成した冷却速度曲線(A)と前記ゼロカーブ算出部(30)で算出した前記ゼロカーブを時間微分して得たセロカーブ微分曲線(B)との時間毎の差を算出し、該算出した差を積分した値に前記鋳鉄の比熱を乗ずることにより、前記鋳鉄の単位重量当たりの凝固潜熱を算出する凝固潜熱算出部(30)と、
を備えたことを要旨とする鋳鉄の凝固潜熱算出装置(1)である。
【0009】
このような鋳鉄の凝固潜熱算出装置(1)では、鋳鉄の溶湯の凝固潜熱を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】凝固潜熱算出装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図2】潜熱算出処理の流れを示すフローチャートである。
図3】黒鉛鋳鉄の溶湯の凝固時の冷却曲線とその微分曲線の一例を示す図である。
図4】冷却曲線と凝固潜熱の相対値を算出する際の概念図である。
図5】溶湯の化学組織を示す図である。
図6】実測した冷却曲線とそこから得られた各種数値の一例を示す図である。
図7図6に示す実測範囲に続けて共析温度以下まで計測した冷却曲線の一例を示す図である。
図8】接種量の異なる溶湯におけるK熱電対10近傍の黒鉛組織の写真を二値化したものを示す図である。
図9図8において示すK熱電対10近傍の凝固中心から最外径部までの連続黒鉛組織を示す図である。
図10】潜熱の移動と最終凝固部の急冷を表すシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が適用された実施形態について適宜図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0012】
[凝固潜熱算出装置の構成]
図1に基づき、黒鉛鋳鉄の凝固潜熱算出装置1(以下、単に「凝固潜熱算出装置1」とも呼ぶ)の構成について説明する。図1は、凝固潜熱算出装置1の機能的な構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、凝固潜熱算出装置1は、温度センサ10、データロガー20、潜熱算出部30、入力部40及び出力部50を備えている
温度センサ10は、黒鉛鋳鉄の溶湯の温度を計測するための温度センサであり、本実施形態では、K熱電対を用いている。
【0014】
データロガー20は、温度センサ10で計測した温度をAD変換してデジタルデータとして記録(格納)するための温度計測用データロガーである。AD変換器として分解能20bitのものを用いている。
【0015】
潜熱算出部30、入力部40及び出力部50は、いわゆるパーソナルコンピュータで実現されており、何れも、図示しない演算装置(CPU、ROM、RAM、I/Oを含む)、ハードディスクなどの外部記憶装置、キーボードやマウスあるいはタッチセンサなどの入力装置(入力部40に相当)、ディスプレイやプリンタなどの出力装置(出力部50に相当)を備えている。
【0016】
[潜熱算出処理]
次に、図2に基づき凝固潜熱算出装置1で実行される潜熱算出処理について説明する。図2は、潜熱算出処理の流れを示すフローチャートである。潜熱算出処理は、プログラムとして潜熱算出部30のハードディスクに格納され、使用者による潜熱算出処理の開始操作で起動し、終了操作で終了する。
【0017】
図2に示すように、潜熱算出部30のCPUは、S100において、算出条件設定を行う。算出条件設定では、使用者が黒鉛の溶湯の潜熱算出を行う場合の算出条件を入力装置から設定する。
【0018】
具体的には、「計測時間」、「溶湯の化学組織(図5参照)」などの項目の入力を促す画面表示を出力装置(ディスプレイ)に表示させ、入力装置(キーボード、マウス)からの入力を待つ。
続くS105では、すべての項目が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(S105:Yes)、処理をS110へ移行し、入力されていないと判定した場合(S105:No)、処理をS100へ戻し、算出条件設定を繰り返す。
【0019】
S110では、S105において設定された算出条件(所定の計測時間)でデータロガー20によって溶湯の温度を計測させる(冷却速度曲線取得工程に相当)。
続くS115では、S110においてデータロガー20で計測した溶湯の温度の計測値を取得し、溶湯の冷却曲線を作成する(冷却速度曲線取得工程に相当)。
【0020】
ここで、黒鉛の溶湯の冷却曲線について説明する。
黒鉛鋳鉄の溶湯は凝固時に凝固潜熱の放出があり、その潜熱を時間経とともに所定時間に亘って計測して得られた曲線を冷却曲線と呼ぶ。
【0021】
この冷却曲線には、初晶・共晶等の変曲点が現れる。図3に、20bitの分解能を持つデータロガー20を使用して温度を計測した場合の冷却曲線とその微分(溶湯の冷却速度)曲線の例を示す。図3において、破線が冷却曲線を示し、実線が冷却速度を示している。
【0022】
続くS120では、S100において設定された算出条件における溶湯のゼロカーブをとその微分曲線Bを算出する(ゼロカーブ微分曲線作成工程に相当)。
【0023】
ここで、ゼロカーブと凝固潜熱量について説明する。
通常得られる冷却曲線は、系の自然冷却と相晶出時に放出された潜熱とが足し合わされたものである。溶湯の性状を評価する場合において、潜熱の放出タイミング及びその量が大きな要因となると考えられる。系の自然冷却による時間-温度曲線、つまり相晶出が内場合の冷却曲線をゼロカーブと呼び、温度と時間の関数で表される。
【0024】
ゼロカーブの微分曲線Bを式1で表す。式1のA、Bは、冷却曲線の相晶出がない部分(共晶凝固終了以降)の2点から求められる。溶湯の冷却曲線及びゼロカーブそれぞれの微分曲線Bの差を時間で積分した値、つまり、差の部分の面積は温度であり、潜熱量に比例する。冷却曲線の所定の区間(例えば、ピーク値や変曲点の間)で積分することにより、その区間における潜熱量の相対値が単位を℃として算出することができる。
dT/dt=-A・B・Exp(-B・t)・・・式1
【0025】
続くS125では、S115で作成した溶湯の冷却曲線とS120で算出したゼロカーブとを時間毎に対比することにより溶湯の潜熱を算出する(凝固潜熱算出工程に相当)。
【0026】
ここで、図4に基づき、溶湯の潜熱の算出方法について説明する。図4は、冷却曲線と凝固潜熱量の相対値を算出する際の概念図である。図3において、各変曲点間の面積は、周囲の熱影響もあり明確には分けられないが、概ね以下のように考えられる。
【0027】
凝固潜熱量は、図4において、冷却速度曲線(図4の中で「A」で示す)とゼロカーブの微分曲線(図4の中で「B」で示す)との時間毎の差を時間で積分した値となる。
【0028】
図4において、Sは初晶潜熱放出の初めから初晶凝固速度のピークまでを示し、初晶γの析出による潜熱を表している。具体的には、冷却速度曲線Aとゼロカーブの微分曲線Bとの差分を、冷却速度曲線Aとゼロカーブの微分曲線Bとが最初に交差する点(時間T)と冷却速度曲線Aの最初の極小値となる時間Tとの間で積分した値である。
【0029】
は過冷反転温度(TSC)までを計算したものである。Sは、S2PとS2eに分けて算出される。
【0030】
2Pは、冷却速度曲線Aとゼロカーブの微分曲線Bとの差分を、時間Tと、時間Tにおける冷却曲線の接線が後述する時間Tにおける冷却曲線の値となる時間T21との間で積分した値から、ゼロカーブの微分曲線Bを時間Tにおける冷却速度曲線Aの値まで平行移動させた線とゼロカーブの微分曲線Bとが、時間T21との間において形成する平行四辺形の面積を引いた値である。
【0031】
また、S2eは、冷却速度曲線Aとゼロカーブの微分曲線Bとの差分を、時間T21からTまでの間積分した値である。
【0032】
は再輝速度のピーク値までを計算し、S+Sで黒鉛核の生成による熱量を表している。具体的には、冷却速度曲線Aとゼロカーブの微分曲線Bとの差分を、冷却曲線が2番目の極小値となる時間Tと冷却速度曲線Aが2番目の極大値となる時間Tとの間で積分した値である。
【0033】
は共晶最高温度(TEM)までを計算したものである。具体的には、時間Tにおける冷却速度曲線Aとゼロカーブの微分曲線Bとの差分と、時間Tにおける冷却速度曲線Aの接線と冷却曲線とが交差する点(時間T)における冷却速度曲線Aとゼロカーブの微分曲線Bとの差分とで形成される台形の面積として算出される値である。
【0034】
は、冷却速度曲線Aとゼロカーブの微分曲線Bとの差分を時間Tと冷却速度微分値がゼロカーブ微分曲線Bと交差する点(時間T)までの間で積分した値であり、S+Sは黒鉛の成長と共晶γの凝固潜熱を表している。
【0035】
は冷却速度が自然冷却より早い部分を示し、潜熱量としてはマイナスとなっている。これは、S部の後半ではK熱電対10の近傍(最終凝固部)が周囲の潜熱の放出を受け、溶湯自身が持つ潜熱以上に共晶温度を維持している。つまり、オーバーヒート状態にあることを示している。凝固潜熱放出後、周囲の温度に合わせるため急冷しようとする。つまりこの急冷によりオーバーヒート分の熱収支を合わせていることを示している。
【0036】
そして、このようにして得られた相対的な凝固潜熱量に黒鉛の溶湯の比熱を乗じることによって凝固潜熱量を算出することができる。
続くS130では、S125において算出した溶湯の潜熱を出力部50(ディスプレイやプリンタ)に出力した後に処理を終了する。
【0037】
[実験結果]
(冷却曲線の計測)
8t/Hキュポラから約1580℃で連続出湯され、2tの前炉で平準化したFC250相当の溶湯を、1400℃で凝固曲線計測用カップに注湯した。カップは、テルル(Te)入り、接種なし及び各種接種入りを準備した。このとき使用した溶湯の化学組織を図5に示す。
【0038】
(実験結果)
図6に実測した冷却曲線とそこから得られた各種数値の一例を示す。セメンタイト共晶温度(TEC)、C%及びSi%を求めるため、Teでセメンタイト凝固をさせた冷却曲線も同時に表示している。凝固潜熱量としての各変曲点間の面積も同時に計算している。また、図7には、図6に示す実測範囲に続けて共析温度以下まで計測した冷却曲線の一例を示す。図7(a)は計測結果全体のグラフを示し、図7(b)は、共析温度付近を拡大したグラフを示している。共析温度付近でもパーライト析出による潜熱の放出がみられ、これをS図7(b))として表示した。
【0039】
(黒鉛組織観察)
図8に接種量の異なる溶湯におけるK熱電対10近傍の黒鉛組織の写真を二値化したものを示す。また、図9に、図8において示すK熱電対10近傍の凝固中心から最外径部までの連続黒鉛組織を示す。いずれのテストピースにおいても、最徐冷される最終凝固部はA型黒鉛中にD型黒鉛が斑に分布している。外径側に行くに従いD型黒鉛は減少し最外径部では冷却速度が大きいにも関わらずD型黒鉛は存在しない。最終凝固部のD型黒鉛は、液相が残っているにも関わらず凝固潜熱の放出が終了し、周囲との温度差により急冷され晶出したものであることを明示している。図10に潜熱の移動と最終凝固部の急冷を表すシミュレーション結果を示す。
【0040】
(凝固潜熱算出装置の特徴)
上述のような凝固潜熱算出装置1では、黒鉛の溶湯の温度の計測値から得られる冷却曲線から得られる冷却速度曲線Aとセロカーブ曲線の微分曲線Bに基づいて、溶湯の凝固潜熱を算出することができる。
【符号の説明】
【0041】
1… 凝固潜熱算出装置 10… 温度センサ(K熱電対) 20… データロガー 30… 潜熱算出部 40… 入力部 50… 出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10