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特開2023-32247電気剥離性粘着剤組成物、電気剥離性粘着シート、及び電気剥離性粘着シートの使用方法
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  • 特開-電気剥離性粘着剤組成物、電気剥離性粘着シート、及び電気剥離性粘着シートの使用方法 図1
  • 特開-電気剥離性粘着剤組成物、電気剥離性粘着シート、及び電気剥離性粘着シートの使用方法 図2
  • 特開-電気剥離性粘着剤組成物、電気剥離性粘着シート、及び電気剥離性粘着シートの使用方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032247
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】電気剥離性粘着剤組成物、電気剥離性粘着シート、及び電気剥離性粘着シートの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20230302BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230302BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230302BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138256
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】高岡 慎弥
(72)【発明者】
【氏名】宮田 壮
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J040DA102
4J040DF021
4J040HD01
4J040JB09
4J040KA16
4J040PA42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被着体の種類によらず、電圧印加によって粘着性をより効率的に低下させ得る電気剥離性粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】ベースポリマー(A)、イオン性化合物(B)、及び、数平均分子量が200~3500のポリプロピレングリコール(C)を配合してなる、電気剥離性粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマー(A)、イオン性化合物(B)、及び、数平均分子量が200~3500のポリプロピレングリコール(C)を配合してなる、電気剥離性粘着剤組成物。
【請求項2】
成分(B)の配合割合が、成分(A)の全量100質量部に対して、1.0質量部以上である、請求項1に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
【請求項3】
成分(C)の配合割合が、成分(A)の全量100質量部に対して、0.1質量部以上である、請求項1又は2に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
【請求項4】
成分(B)に対する成分(C)の配合量比〔(C)/(B)〕が、質量比で、0.01~10.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
【請求項5】
イオン性化合物(B)が、アルカリ金属塩(B1)、有機第四級アンモニウム塩(B2)、及びイオン液体(B3)から選ばれる1種以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
【請求項6】
さらに架橋剤(E)を配合してなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
【請求項7】
成分(E)の配合割合が、成分(A)の全量100質量部に対して、0.01質量部以上である、請求項6に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
【請求項8】
25℃で液体である有効成分の含有量が、前記粘着剤組成物中の有効成分の全量に対して、1~50質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、電気剥離性粘着シート。
【請求項10】
前記粘着剤層の厚さが40μm以下である、請求項9に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項11】
導電性基材を有し、当該導電性基材の少なくとも一方の表面側に前記粘着剤層を有する、請求項9又は10に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項12】
前記粘着剤層に電圧を印加した際、陰極側で剥離する、請求項9~11のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
【請求項13】
下記要件(I)を満たす、請求項9~12のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
・要件(I):10V、60秒間での電圧印加の前後における粘着力の変化を示す、下記式(i)から算出される粘着力減少率が、50%以上である。
式(i):〔粘着力減少率(%)〕=100-〔電圧印加後の粘着力〕/〔電圧印加前の粘着力〕×100
【請求項14】
請求項9~13のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シートを、導電性を有する被着体に貼付する、電気剥離性粘着シートの使用方法。
【請求項15】
前記電気剥離性粘着シートを、導電性を有する被着体に貼付した後、前記粘着剤層に電圧を印加して被着体から剥離する、請求項14に記載の電気剥離性粘着シートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気剥離性粘着剤組成物、及び、当該電気剥離性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する電気剥離性粘着シート、並びに、当該電気剥離性粘着シートの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートの特性の一つとして、例えば、仮固定用テープ、表面保護フィルム、塗装用又は装飾用マスキングテープ、再剥離可能なメモ等の用途において、再剥離性が求められる場合がある。
再剥離性粘着シートは、被着体に貼付された際に、運搬時、貯蔵時、加工時等においては被着体から剥離しない程度の粘着力が求められる一方、機能を果たし終えた後には、容易に除去し得る再剥離性が求められる。
【0003】
ところで、このような再剥離性粘着シートに用いられる粘着剤として、電圧を印加することにより粘着力が低下する粘着剤が知られている。
例えば、特許文献1には、使用後には被着体から容易に剥離可能な粘着剤として、イオン性液体を含む通電剥離用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007/018239号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、被着体の種類によらず、電圧印加によって粘着性の低下効率をより向上させた電気剥離性粘着剤組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベースポリマー、イオン性化合物、及び、所定の数平均分子量のポリプロピレングリコールを配合してなる電気剥離性粘着剤組成物、当該電気剥離性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する電気剥離性粘着シート、並びに、当該電気剥離性粘着シートの使用方法を提供する。
具体的な本発明の態様としては、下記[1]~[15]のとおりである。
[1]ベースポリマー(A)、イオン性化合物(B)、及び、数平均分子量が200~3500のポリプロピレングリコール(C)を配合してなる、電気剥離性粘着剤組成物。
[2]成分(B)の配合割合が、成分(A)の全量100質量部に対して、1.0質量部以上である、上記[1]に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
[3]成分(C)の配合割合が、成分(A)の全量100質量部に対して、0.1質量部以上である、上記[1]又は[2]に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
[4]成分(B)に対する成分(C)の配合量比〔(C)/(B)〕が、質量比で、0.01~10.0である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
[5]イオン性化合物(B)が、アルカリ金属塩(B1)、有機第四級アンモニウム塩(B2)、及びイオン液体(B3)から選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
[6]さらに架橋剤(E)を配合してなる、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
[7]成分(E)の配合割合が、成分(A)の全量100質量部に対して、0.01質量部以上である、上記[6]に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
[8]25℃で液体である有効成分の含有量が、前記粘着剤組成物中の有効成分の全量に対して、1~50質量%である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物。
[9]上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、電気剥離性粘着シート。
[10]前記粘着剤層の厚さが40μm以下である、上記[9]に記載の電気剥離性粘着シート。
[11]導電性基材を有し、当該導電性基材の少なくとも一方の表面側に前記粘着剤層を有する、上記[9]又は[10]に記載の電気剥離性粘着シート。
[12]前記粘着剤層に電圧を印加した際、陰極側で剥離する、上記[9]~[11]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
[13]下記要件(I)を満たす、上記[9]~[12]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シート。
・要件(I):10V、60秒間での電圧印加の前後における粘着力の変化を示す、下記式(i)から算出される粘着力減少率が、50%以上である。
式(i):〔粘着力減少率(%)〕=100-〔電圧印加後の粘着力〕/〔電圧印加前の粘着力〕×100
[14]上記[9]~[13]のいずれか一項に記載の電気剥離性粘着シートを、導電性を有する被着体に貼付する、電気剥離性粘着シートの使用方法。
[15]前記電気剥離性粘着シートを、導電性を有する被着体に貼付した後、前記粘着剤層に電圧を印加して被着体から剥離する、上記[14]に記載の電気剥離性粘着シートの使用方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の好適な一態様の電気剥離性粘着剤組成物は、被着体の種類によらず、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一態様の電気剥離性粘着シートの構成の一例を示した、当該粘着シートの模式断面図である。
図2】本発明の一態様の電気剥離性粘着シートに関し、(a)電圧印加前の当該粘着シート、(b)電圧印加後の当該粘着シートの違いを示す図である。
図3】本発明の一態様の電気剥離性粘着シートに関し、(a)電圧印加前の当該粘着シート、(b)電圧印加後の当該粘着シートの違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載された数値範囲は、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは20~120、より好ましくは40~90」と記載されている場合、「20~90」との範囲や「40~120」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは20以上、より好ましくは40以上であり、また、好ましくは120以下、より好ましくは90以下である」と記載されている場合、「20~90」との範囲や「40~120」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上、100以下」という範囲であることを意味する。
【0010】
本明細書において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
また、電気剥離性粘着剤組成物の「有効成分」とは、電気剥離性粘着剤組成物に含まれる成分のうち、水や有機溶媒の希釈溶媒を除いた成分を意味する。
【0011】
本明細書において、質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定された値である。
【0012】
〔電気剥離性粘着剤組成物〕
本発明の電気剥離性粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう)は、ベースポリマー(A)(以下、「成分(A)」ともいう)、イオン性化合物(B)(以下、「成分(B)」ともいう)、及び数平均分子量が200~3500のポリプロピレングリコール(C)(以下、「成分(C)」ともいう)を配合してなる。
なお、本明細書において、例えば、「成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を配合してなる粘着剤組成物」とは、当該粘着剤組成物の原料として、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を用いている旨を意味する。そのため、例えば、成分(B)が、粘着剤組成物中にてカチオンとアニオンに電離した態様等も含まれる。
【0013】
一般的な電気剥離性粘着剤組成物には、ベースポリマーに、イオン性化合物を配合して、電力印加によって粘着性を低下させる特性を付与する。しかしながら、イオン性化合物を配合してなる電気剥離性粘着剤組成物は、イオン性化合物を配合していない粘着剤組成物に比べて、電圧印加前における粘着性が不十分である。特に、ステンレス鋼板が被着体である場合、電圧印加前における粘着性の改善が求められている。
また、上記の電気剥離性粘着剤組成物から形成した粘着剤層を有する電気剥離性粘着シートは、電圧印加による粘着力の低下効率について改善の余地がある。本発明者らの検討によれば、特に、被着体がステンレス鋼板である場合や、粘着剤層の厚さを比較的薄くした場合に、電圧印加による粘着力の低下が不十分となることが分かった。電圧印加による粘着力の低下が不十分の場合、電圧印加の際に、高電圧とするか、もしくは電圧印加時間を長くする必要がある。しかしながら、高電圧にすることは、作業者の安全性の問題が生じ、電圧印加時間を長くすることは作業効率に問題が生じることになる。そのため、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物が求められている。
このような問題に対して、本発明者らは、様々な検討を行ったところ、ベースポリマー及びイオン性化合物と共に、数平均分子量が200~3500のポリプロピレングリコールを配合してなる粘着性組成物とすることで、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率を格段に向上させ得るとの知見を得た。この特性は、被着体がステンレス鋼板である場合や、粘着剤組成物から形成された粘着剤層の厚さを薄くした場合でも、十分に発現されることが分かった。本発明の一態様の粘着剤組成物は、当該知見に基づいて完成されたものである。
【0014】
本発明の一態様の粘着剤組成物は、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、さらにロジン含有ジオール(D)(以下、「成分(D)」ともいう)を配合してなる粘着剤組成物であることが好ましい。
また、本発明の一態様の粘着剤組成物は、上記と同様の観点から、さらに架橋剤(E)(以下、「成分(E)」ともいう)を配合してなる粘着剤組成物であることが好ましい。
さらに、本発明の一態様の粘着剤組成物は、成分(A)~(E)以外の他の添加剤を配合してなる粘着剤組成物であってもよい。
【0015】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計配合量は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下としてもよい。
【0016】
また、上記と同様の観点から、本発明の一態様の粘着剤組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)の合計配合量は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、また、100質量%以下、99.5質量%以下、99.0質量%以下、98.0質量%以下、又は97.0質量%以下としてもよい。
【0017】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、25℃で液体である有効成分(以下、「液体成分」ともいう)の含有量は、当該粘着剤組成物中の有効成分の全量(100質量%)に対して、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、より更に好ましくは7.0質量%以上、特に好ましくは10.0質量%以上であり、また、電圧印加前において高粘着性を有する粘着剤組成物とする観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
なお、上記の「液体成分」は、溶媒以外の25℃で液体の有効成分であり、具体的には、成分(B)として用いるイオン液体(B3)や、成分(C)等が挙げられる。
【0018】
以下、本発明の一態様の粘着剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0019】
<(A)成分:ベースポリマー>
本発明の一態様で用いるベースポリマー(A)としては、粘着性を有するポリマーであればよく、例えば、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ゴム系ポリマー、オレフィン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びこれらのポリマーに重合性官能基を有する硬化型ポリマー等が挙げられる。
これらのベースポリマー(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の一態様で用いるベースポリマー(A)は、エマルション型ポリマーであってもよく、非エマルション型ポリマーであってもよい。
【0020】
本発明の一態様で用いるベースポリマー(A)の質量平均分子量(Mw)は、電圧印加前において高粘着性を有する粘着剤組成物とする観点から、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~180万、更に好ましくは3万~150万である。
【0021】
これらの中でも、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、本発明の一態様で用いるベースポリマー(A)は、アクリル系ポリマー(A1)を含むことが好ましい。
上記観点から、本発明の一態様の粘着剤組成物において、成分(A)中のアクリル系ポリマー(A1)の含有割合としては、当該粘着剤組成物に含まれる成分(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0022】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)としては、アルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)を有するポリマーが挙げられるが、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、構成単位(a1)と共に、官能基含有モノマー(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有する共重合体であることが好ましい。
【0023】
アクリル系ポリマー(A1)が共重合体である場合、共重合の形態については、特に制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
アクリル系ポリマー(A1)の質量平均分子量(Mw)は、電圧印加前において高粘着性を有する粘着剤組成物とする観点から、好ましくは5万~200万、より好ましくは10万~150万、更に好ましくは20万~120万、より更に好ましくは30万~100万、特に好ましくは40万~70万である。
【0025】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)は、モノマー(a1’)及び(a2’)以外の他のモノマー(以下、「モノマー(a3’)」ともいう)に由来する構成単位(a3)を有する共重合体であってもよい。
【0026】
なお、本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)において、構成単位(a1)及び(a2)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A1)の構成単位の全量(100質量%)に対して、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上としてもよく、また、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、又は96質量%以下としてもよい。
以下、アクリル系ポリマー(A1)を構成するモノマー及び構成単位について説明する。
【0027】
[モノマー(a1’)、構成単位(a1)]
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、より好ましくは1~16、更に好ましくは1~12、より更に好ましくは1~8、特に好ましくは4~8である。
なお、モノマー(a1’)が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0028】
具体的なモノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート(n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート)、ブチル(メタ)アクリレート(n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート)、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、モノマー(a1’)は、炭素数4~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを少なくとも含むことが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを少なくとも含むことが更に好ましく、ブチル(メタ)アクリレートを少なくとも含むことがより更に好ましい。
【0029】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)は、構成単位(a1)として、炭素数4~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1-1)を有することが好ましく、また、構成単位(a1-1)と共に、炭素数1~3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1-2)を有してもよい。
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)において、構成単位(a1-1)の含有割合は、アクリル系ポリマー(A1)が有する構成単位(a1)の全量(100質量%)に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下である。
【0030】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)において、構成単位(a1)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A1)の構成単位の全量(100質量%)に対して、電圧印加前の粘着性をより良好とした粘着剤組成物とする観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、上述の構成単位(a2)の含有割合を確保し、凝集力をより向上させ得る粘着剤組成物とする観点から、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.90質量%以下、更に好ましくは99.0質量%以下、より更に好ましくは97.0質量%以下、特に好ましくは96.0質量%以下であり、さらに、95.0質量%以下、90.0質量%以下、又は85.0質量%以下としてもよい。
【0031】
[モノマー(a2’)、構成単位(a2)]
モノマー(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ヒドロキシ含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
なお、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~6、より更に好ましくは2~4であり、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0033】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;2-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
エポキシ含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エポキシシクロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)は、構成単位(a2)として、ヒドロキシ基含有モノマーに由来する構成単位(a2-1)を有する共重合体であることが好ましい。
【0036】
上記観点から、本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)において、構成単位(a2-1)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A1)が有する構成単位(a2)の全量(100質量%)に対して、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0037】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)において、構成単位(a2)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A1)の構成単位の全量(100質量%)に対して、凝集力をより向上させ得る粘着剤組成物とする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは4.0質量%以上であり、さらに、5.0質量%以上、7.0質量%以上、10.0質量%以上、12.0質量%以上、又は15.0質量%以上としてもよく、また、構成単位(a1)の含有量を確保し、電圧印加前の粘着性をより良好とした粘着剤組成物とする観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
【0038】
[モノマー(a3’)、構成単位(a3)]
モノマー(a1’)及び(a2’)以外のモノマー(a3’)としては、特に制限は無いが、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
これらのモノマー(a3’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明の一態様で用いるアクリル系ポリマー(A1)において、構成単位(a3)の含有割合としては、アクリル系ポリマー(A1)の構成単位の全量(100質量%)に対して、0質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上としてもよく、また、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下としてもよい。
【0040】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(A)の配合量(含有量)は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上であり、また、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは87質量%以下、更に好ましくは85質量%以下、より更に好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下であり、さらに、70質量%以下、67質量%以下、又は65質量%以下としてもよい。
【0041】
<成分(B):イオン性化合物>
本発明の一態様で用いるイオン性化合物(B)としては、例えば、アルカリ金属塩(B1)、有機第四級アンモニウム塩(B2)、及びイオン液体(B3)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる成分(B)は、アルカリ金属塩(B1)及びイオン液体(B3)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、本発明の一態様で用いる成分(B)は、主成分としてアルカリ金属塩(B1)又はイオン液体(B3)を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、上記「主成分」とは、成分(B)を構成する成分のうち、最も含有量が多い成分を意味する。
【0043】
成分(B)の主成分がアルカリ金属塩(B1)である場合、アルカリ金属塩(B1)以外の成分(B)の含有量は、アルカリ金属塩(B1)の全量100質量部に対して、100質量部未満、0~90質量部、0~50質量部、0~30質量部、0~20質量部、0~10質量部、0~5質量部、0~1質量部、0~0.1質量部、0~0.01質量部、0~0.001質量部、又は0~0.0001質量部であってもよい。
【0044】
成分(B)の主成分がイオン液体(B3)である場合、イオン液体(B3)以外の成分(B)の含有量は、イオン液体(B3)の全量100質量部に対して、100質量部未満、0~90質量部、0~50質量部、0~30質量部、0~20質量部、0~10質量部、0~5質量部、0~1質量部、0~0.1質量部、0~0.01質量部、0~0.001質量部、又は0~0.0001質量部であってもよい。
【0045】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、成分(A)の全量100質量部に対する、成分(B)の配合割合は、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、更に好ましくは7.0質量部以上、より更に好ましくは9.0質量部以上、特に好ましくは11.0質量部以上であり、さらに、13.0質量部以上、又は15.0質量部以上としてもよく、また、電圧印加前において高粘着性を有する粘着剤組成物とする観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下、より好ましくは160質量部以下、更に好ましくは150質量部以下、より更に好ましくは130量部以下、特に好ましくは120質量部以下であり、さらに、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、又は30質量部以下としてもよい。
【0046】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、成分(B)の配合量(含有量)は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは5.0質量%以上、特に好ましくは7.0質量%以上であり、また、電圧印加前において高粘着性を有する粘着剤組成物とする観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0047】
≪成分(B1):アルカリ金属塩≫
本発明の一態様で用いるアルカリ金属塩(B1)としては、常温(25℃)では固体であるが、液体中でカチオン(アルカリ金属イオン)とアニオンとに電離する化合物であればよい。
具体的なアルカリ金属塩(B1)としては、例えば、MCl、MBr、MI、MAlCl、MAlCl、MBF、MPF、MSCN、MClO、MNO、CHCOOM、C19COOM、CFCOOM、CCOOM、MCHSO、MCFSO、MCSO、MCOSO、MC13OSO、MC17OSO、M(CFSON、M(CSON、M(CSON、M(CSON、M(CFSOC、MAsF、MSbF、MNbF、MTaF、M(CN)N、M(CFSO)(CFCO)N、M(CHPO、M(CPO、MCH(OCOSO、MC(CH)SO、M(CPF、CHCH(OH)COOM、M(FSON等(ただし、Mは、アルカリ金属原子である)が挙げられる。Mは、Li、Na、又はKが好ましく、Na又はKがより好ましく、Naが更に好ましい。
これらのアルカリ金属塩(B1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
これらの中でも、本発明の一態様で成分(B)として用いるアルカリ金属塩(B1)は、下記一般式(b-1)で表されるアルカリ金属塩(B11)を含有することが好ましい。
【化1】
【0049】
上記式(b-1)中、Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、又はフッ素化アルキル基である。フッ素化アルキル基の炭素数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~3、特に好ましくは1~2である。本明細書において、「フッ素化アルキル基」とは、アルキル基が有する少なくとも一つの水素原子が、フッ素原子に置換された基を意味し、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。
フッ素化アルキル基の中でも、アルキル基が有するすべての水素原子がフッ素原子に置換された、パーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基の炭素数の好適な範囲は、上記のフッ素化アルキル基の炭素数の好適範囲と同じである。
本発明の一態様において、Rは、フッ素原子、又はパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子、-CF、-C、-C、又は-Cであることがより好ましく、フッ素原子又は-CFであることが更に好ましい。
【0050】
Mは、アルカリ金属原子(リチウム原子(Li)、ナトリウム原子(Na)、カリウム原子(K)、ルビジウム原子(Rb)、セシウム原子(Cs)、フランシウム原子(Fr))であるが、Li、Na又はKであることが好ましく、Na又はKであることがより好ましく、Naであることが更に好ましい。
【0051】
≪成分(B2):有機第四級アンモニウム塩≫
本発明の一態様で用いる有機第四級アンモニウム塩(B2)としては、常温(25℃)では固体であり、下記一般式(b-2)で表される化合物であればよい。
なお、有機第四級アンモニウム塩(B2)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化2】
【0052】
上記一般式(b-2)中、R11~R14は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。Xは、F、Cl、Br、I、ClO、BF、PF、又は[(R15N]SO(R15は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基)ある。
【0053】
具体的な有機第四級アンモニウム塩(B2)としては、例えば、テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムブロミド又はアンモニウムクロリド;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムテトラフルオロボレート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムパークロレート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムサルフェート;等が挙げられる。
【0054】
≪成分(B3):イオン液体≫
本発明の一態様で用いるイオン液体(B3)としては、常温(25℃)で液体である溶融塩であって、有機カチオンとその対イオンであるアニオンとから構成される化合物であればよい。
イオン液体(B3)を構成する有機カチオンとしては、例えば、下記一般式(b-3-i)~(b-3-viii)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。これらの中でも、イオン液体(B3)を構成する有機カチオンは、下記一般式(b-3-ii)で表されるカチオンが好ましい。
【化3】
【0055】
上記式(b-3-i)~(b-3-iv)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数1~20のアルケニル基である。
また、上記式(b-3-v)~(b-3-viii)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-(CO)-Rで表される基(nは1~20の整数、Rは炭素数1~20のアルキル基)、又はアミノ基である。
【0056】
、R及びRして選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0057】
及びRとして選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
当該アルケニル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0058】
なお、前記一般式(b-3-i)~(b-3-ii)のいずれかで表されるカチオンの炭素原子と結合している少なくとも1つの水素原子は、炭素数1~20のアルキル基に置換されていてもよい。具体的な当該アルキル基としては、上述のとおりである。
【0059】
前記一般式(b-3-i)で表されるカチオン、及び、当該カチオンの少なくとも1つの水素原子が前記アルキル基で置換されたカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-i-1)~(b-3-i-11)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化4】
【0060】
前記一般式(b-3-ii)で表されるカチオン、及び、当該カチオンの少なくとも1つの水素原子が前記アルキル基で置換されたカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-26)のいずれかで表されるカチオンが挙げられ、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-15)のいずれかで表されるカチオンが好ましく、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-3)及び(b-3-ii-9)~(b-3-ii-10)のいずれかで表されるカチオンがより好ましく、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-3)のいずれかで表されるカチオンが更に好ましく、下記式(b-3-ii-2)で表されるカチオンがより更に好ましい。
【化5】
【0061】
前記一般式(b-3-iii)で表されるカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-iii-1)~(b-3-iii-6)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化6】
【0062】
前記一般式(b-3-iv)で表されるカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-iv-1)~(b-3-iv-6)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化7】
【0063】
前記一般式(b-3-v)~(b-3-viii)のいずれかで表されるカチオンとしては、例えば、下記式のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化8】
【0064】
イオン液体(B3)を構成するアニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、SCN、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、CSO 、(CFSO、(CSO、(CSO、(CSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、C19COO、(CHPO 、(CPO 、CHOSO 、COSO 、COSO 、C13OSO 、C17OSO 、CH(OCOSO 、C(CH)SO 、(CPF 、CHCH(OH)COO、(FSO、B(CN) 、C(CN) 、N(CN) 、p-トルエンスルホネートアニオン、2-(2-メトキシエチル)エチルサルフェートアニオン等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の一態様で用いるイオン液体(B3)を構成するアニオンとしては、(CFSO又は(FSOが好ましい。
【0065】
<成分(C):ポリプロピレングリコール>
本発明の一態様の粘着剤組成物は、数平均分子量が200~3500のポリプロピレングリコール(C)を含有する。
本発明の一態様の粘着剤組成物は、成分(C)を配合しているため、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率を格段に向上させ得る。特に、被着体がステンレス鋼板である場合や、粘着剤組成物から形成された粘着剤層の厚さを薄くした場合でも、これらの特性を十分に発現されることができる。
【0066】
本発明の一態様で用いるポリプロピレングリコール(C)の数平均分子量(Mn)は、上記の観点の中でも、特に、電圧印加による粘着性の低下効率を格段に向上させ得る粘着剤組成物とする観点から、200以上であるが、好ましくは250以上、より好ましくは270以上、更に好ましくは300以上、より更に好ましくは320以上、特に好ましくは350以上であり、また、上記の観点の中でも、特に、電圧印加前において高粘着性を有する粘着剤組成物とする観点から、3500以下であるが、好ましくは3300以下、より好ましくは3100以下、より好ましくは3000以下、より好ましくは2700以下、更に好ましくは2500以下、更に好ましくは2300以下、更に好ましくは2000以下、より更に好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下であり、さらに、1300以下、1200以下、1100以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下としてもよい。
【0067】
本発明の一態様で用いるポリプロピレングリコール(C)は、主構成単位として、下記一般式(c-1)で表される構成単位(c1)を有する重合体であればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(c1)の含有割合より少ない割合で、構成単位(c1)以外の他の構成単位を有していてもよい。なお、本発明の一態様で用いるポリプロピレングリコール(C)は、両末端が水酸基であることが好ましい。
【化9】
【0068】
ただし、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、本発明の一態様で用いるポリプロピレングリコール(C)において、構成単位(c1)以外の他の構成単位の含有割合は少ないほど好ましい。
上記観点から、本発明の一態様で用いるポリプロピレングリコール(C)において、構成単位(c1)の含有割合は、ポリプロピレングリコール(C)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%、より更に好ましくは98~100質量%、特に好ましくは100質量%である。
【0069】
つまり、上記観点から、本発明の一態様で用いるポリプロピレングリコール(C)は、構成単位として前記一般式(c-1)で表される構成単位(c1)のみからなる単独重合体であることが好ましく、具体的には、下記式(c-2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化10】
上記式(c-2)中、nは1以上の整数であり、ポリプロピレングリコール(C)の数平均分子量(Mn)により設定される。
【0070】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(A)の全量100質量部に対する、成分(C)の配合割合は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.2質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは1.7質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上、より更に好ましくは2.2質量部以上、特に好ましくは2.5質量部以上であり、さらに、2.7質量部以上、3.0質量部以上、3.2質量部以上、3.5質量部以上、又は3.7質量部以上としてもよく、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下、より更に好ましくは20量部以下、特に好ましくは15質量部以下であり、さらに、13質量部以下、12質量部以下、11質量部以下、10質量部以下、9.5質量部以下、9.0質量部以下、8.5質量部以下、8.0質量部以下、7.5質量部以下、又は7.0質量部以下としてもよい。
【0071】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(C)の配合量(含有量)は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは1.7質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、より更に好ましくは2.2質量%以上、特に好ましくは2.5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、更に好ましくは11質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8.0質量%以下、特に好ましくは6.5質量%以下であり、さらに、6.0質量%以下、5.5質量%以下、5.0質量%以下、4.5質量%以下、4.0質量%以下、又は3.5質量%以下としてもよい。
【0072】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(B)に対する成分(C)の配合量比〔(C)/(B)〕は、質量比で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.12以上、更に好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.17以上、より更に好ましくは0.20以上、特に好ましくは0.22以上であり、また、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、より好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下であり、さらに、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、又は0.40以下としてもよい。
【0073】
<他のポリアルキレングリコール>
本発明の一態様の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレングリコール以外の他のポリアルキレングリコールを含有していてもよい。
このような他のポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0074】
ただし、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、他のポリアルキレングリコールの含有量は少ない程好ましい。
具体的な他のポリアルキレングリコールの含有量は、前記粘着剤組成物に含まれる成分(C)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは5質量部未満、更に好ましくは1質量部未満、より更に好ましくは0.1質量部未満、特に好ましくは0.01質量部未満である。
【0075】
<成分(D):ロジン含有ジオール>
本発明の一態様の粘着剤組成物は、さらにロジン含有ジオール(D)を配合してなる粘着剤組成物であることが好ましい。
ロジン含有ジオール(D)は、イオン性化合物(B)(特に、イオン液体)との相溶性に優れる。そのため、ベースポリマー(A)及びイオン性化合物(B)と共に、ロジン含有ジオール(D)を配合してなる粘着性組成物とすることで、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させ得る。
また、本発明の一態様の粘着剤組成物に含まれる液体成分の含有量が多い場合でも、液体成分との相溶性が良好であるロジン含有ジオール(D)を配合することで、粘着性をより向上させた粘着剤組成物とすることができる。
【0076】
本発明の一態様で用いるロジン含有ジオール(D)としては、ロジン由来の骨格を有するジオールであればよく、例えば、ロジンとエポキシ化合物との反応物が挙げられる。
なお、ロジン含有ジオール(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
ロジン含有ジオール(D)を構成するロジンとは、マツ科植物から得られる樹脂油を原料とし、精油などの揮発性物質を留去した後の残留樹脂のことを意味し、当該残留樹脂は、通常、アビエチン酸及びその類縁体を主成分とする樹脂酸と少量の中性成分とを含有する混合物である。上記樹脂酸としては、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ジアビエチン酸、ネオアビエチン酸、レボピマル酸、これらを水素添加した水添ロジン、これらを不均化した不均化ロジン等が挙げられる。
【0078】
前記エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の非環状脂肪族ジグリシジルエーテル類;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、2,2’-ビス(4-(β-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパンジグリシジルエーテル等の芳香族ジグリシジルエーテル類又は環状脂肪族ジグリシジルエーテル類;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド等の環状脂肪族環状オキシラン類;等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
本発明の一態様で用いるロジン含有ジオール(D)は、分子内に2個のロジン由来の骨格と2個の水酸基とを有する化合物であることが好ましい。
【0080】
本発明の一態様で用いるロジン含有ジオール(D)の軟化点は、成分(A)、(B)及び(C)との相溶性(特に、成分(B)及び(C)との相溶性)を良好とすることで、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上、より更に好ましくは75℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、また、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下、より更に好ましくは110℃以下、特に好ましくは104℃以下である。
なお、本明細書において、軟化点は、JIS K5902で規定の環球法に準拠して測定した値を意味する。
【0081】
本発明の一態様で用いるロジン含有ジオール(D)の酸価は、成分(A)、(B)及び(C)との相溶性(特に、成分(B)及び(C)との相溶性)を良好とすることで、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、好ましくは0~10.0mgKOH/g、より好ましくは0~4.9mgKOH/g、更に好ましくは0~1.9mgKOH/g、より更に好ましくは0~1.4mgKOH/g、特に好ましくは0~1.1mgKOH/gである。
また、本発明の一態様で用いるロジン含有ジオール(D)の水酸基価は、成分(A)、(B)及び(C)との相溶性(特に、成分(B)及び(C)との相溶性)を良好とすることで、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、好ましくは30mgKOH/g以上、より好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは70mgKOH/g以上、より更に好ましくは80mgKOH/g以上、特に好ましくは90mgKOH/g以上であり、また、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは250mgKOH/g以下、更に好ましくは200mgKOH/g以下、より更に好ましくは180mgKOH/g以下、特に好ましくは150mgKOH/g以下である。
なお、本明細書において、酸価及び水酸基価は、JIS K0070で規定の電位差滴定法に準拠して測定した値を意味する。
【0082】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(A)の全量100質量部に対する、成分(D)の配合割合は、好ましくは2.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、より好ましくは8.0質量部以上、更に好ましくは12.0質量部以上、より更に好ましくは18.0質量部以上、特に好ましくは22.0質量部以上であり、さらに、25.0質量部以上、又は30.0質量部以上としてもよく、また、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは130質量部以下、より更に好ましくは120量部以下、特に好ましくは110質量部以下であり、さらに、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、又は50質量部以下としてもよい。
【0083】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(D)の配合量(含有量)は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは9.0質量%以上、より更に好ましくは11.0質量%以上、特に好ましくは16.0質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。
【0084】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(B)に対する成分(D)の配合量比〔(D)/(B)〕は、質量比で、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.30以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.80以上、更に好ましくは1.00以上、より更に好ましくは1.20以上、特に好ましくは1.50以上であり、また、好ましくは20.0以下、より好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは8.0以下、更に好ましくは6.0以下、より更に好ましくは5.0以下、特に好ましくは4.0以下である。
【0085】
<他の粘着付与剤>
本発明の一態様の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(D)以外の他の粘着付与剤を含有してもよい。
そのような他の粘着付与剤としては、成分(D)以外のロジン系樹脂;成分(D)以外のロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂の水素化石油樹脂;等が挙げられる。
これらの他の粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
ただし、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、本発明の一態様の粘着剤組成物に含まれる成分(D)以外の他の粘着付与剤の含有量は少ない程好ましい。
具体的な成分(D)以外の他の粘着付与剤の含有量は、前記粘着剤組成物に含まれる成分(D)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは5質量部未満、更に好ましくは1質量部未満、より更に好ましくは0.1質量部未満、特に好ましくは0.01質量部未満である。
【0087】
<成分(E):架橋剤>
本発明の一態様の粘着剤組成物は、さらに架橋剤(E)を配合してなる粘着剤組成物であることが好ましい。架橋剤(E)を配合することで、電圧印加前は高粘着性を有すると共に、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物により調製し易くなる。
なお、架橋剤(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
本発明の一態様で用いる架橋剤(E)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0089】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。
なお、これらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、並びに、これらの有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応して得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等も使用することができる。
【0090】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)トルエン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0091】
イミン系架橋剤としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオナート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオナート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0092】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、トリスエチルアセトアセテートアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、トリスアセチルアセトナートアルミニウム等のアルミキレート系化合物等の多価金属の配位化合物が挙げられる。
【0093】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(A)の全量100質量部に対する、成分(E)の配合割合は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上、より好ましくは0.20質量部以上、更に好ましくは0.30質量部以上、更に好ましくは0.40質量部以上、更に好ましくは0.50質量部以上、より更に好ましくは0.55質量部以上、特に好ましくは0.60質量部以上であり、さらに、0.65質量部以上、0.70質量部以上、0.75質量部以上、0.80質量部以上、又は0.85質量部以上としてもよく、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下、より更に好ましくは2.0質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。
【0094】
本発明の一態様の粘着剤組成物において、電圧印加前は高粘着性を有する一方で、電圧印加による粘着性の低下効率をより向上させた粘着剤組成物とする観点から、成分(E)の配合量(含有量)は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上、より更に好ましくは0.35質量%以上、特に好ましくは0.40質量%以上であり、また、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、より更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。
【0095】
<他の添加剤>
本発明の一態様の粘着剤組成物は、成分(A)~(E)以外の他の添加剤を配合又は含有してもよい。
そのような他の添加剤としては、当該粘着剤組成物を用いた粘着シートの用途に応じて適宜選択されるが、例えば、相溶化剤、濡れ剤、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。
これらの他の添加剤としては、一般的な粘着剤組成物に使用される添加剤を用いることができる。
また、各添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
これらの他の添加剤のそれぞれの配合量は、添加剤の種類に応じて適宜設定されるが、成分(A)の全量100質量部に対して、好ましくは0.01~50質量部、より好ましくは0.05~40質量部、更に好ましくは0.1~30質量部、より更に好ましくは0.2~20質量部である。
【0097】
本発明の一態様の粘着剤組成物は、後述の基材等に塗布し易くし、作業性を向上させる観点から、更に有機溶媒で希釈して、溶液の形態としてもよい。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
なお、これらの有機溶媒は、成分(A)の合成時に使用された有機溶媒をそのまま用いてもよいし、成分(A)の合成時に使用された有機溶媒以外の1種以上の有機溶媒を加えてもよい。
【0098】
〔電気剥離性粘着シート〕
本発明の電気剥離性粘着シート(以下、単に「粘着シート」ともいう)は、上述の本発明の電気剥離性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。
本発明の一態様の粘着シートは、当該粘着剤層を有する構成であれば特に限定されず、例えば、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着シートであってもよく、粘着剤層が2枚の剥離シートにより挟持された構成を有する粘着シートであってもよい。
【0099】
図1は、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートの構成の一例を示した、当該粘着シートの模式断面図である。
本発明の一態様の粘着シートの具体的な構成として、例えば、図1(a)に示されたような、基材2の一方の表面側に粘着剤層3を有する、基材付き電気剥離性粘着シート1aが挙げられる。また、図1(b)に示されたような、基材2の双方の表面側に、それぞれ粘着剤層3及び粘着剤層3’を有する基材付き電気剥離性粘着シート1bのような構成であってもよい。
なお、本発明の一態様の粘着シートにおいて、図1(a)に示す電気剥離性粘着シート1aのように、基材2と粘着剤層3とが直接積層する構成であってもよく、基材2と粘着剤層3との間に他の層を有する構成としてもよい。これは、図1(b)に示す電気剥離性粘着シート1bにおける、基材2と粘着剤層3、及び、基材2と粘着剤層3’についても同様である。
【0100】
また、本発明の一態様の粘着シートは、図1(c)に示す、粘着剤層3の粘着表面上に、さらに剥離シート4が積層した基材付き電気剥離性粘着シート1cのような構成であってもよい。同様に、電気剥離性粘着シート1bにおいても、粘着剤層3及び粘着剤層3’の粘着表面上にも、それぞれ剥離シートを積層した構成とすることができる。
【0101】
他の態様として、本発明の一態様の粘着シートは、図1(d)に示す、基材を用いずに、粘着剤層3を2枚の剥離シート4、4’により挟持された構成を有する基材無し電気剥離性粘着シート1dのような構成であってもよい。
この電気剥離性粘着シート1dの剥離シート4、4’の素材は、同じものでもよく、異なるものでもよいが、剥離シート4と剥離シート4’との剥離力が異なるように調整された素材であることが好ましい。
他にも、表面が剥離処理された剥離シートの片面に粘着剤層を設けたものをロール状に巻いた構成を有する電気剥離性粘着シート等も挙げられる。
【0102】
以下、本発明の一態様の粘着シートを構成する粘着剤層、基材、及び剥離シートの詳細について説明する。
【0103】
<粘着剤層>
本発明の粘着シートが有する粘着剤層は、上述の本発明の電気剥離性粘着剤組成物から形成された層であって、電圧印加によって粘着力が低下し得る性質を有する。
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層の厚さは、用途等に応じて適宜調整されるが、好ましくは0.5~120μm、より好ましくは1~100μm、更に好ましくは3~80μm、より更に好ましくは5~80μm、特に好ましくは10~60μmである。
当該粘着剤層の厚さが0.5μm以上であれば、被着体の種類に依らずに、良好な粘着力を発現させることができる。一方、当該粘着剤層の厚さが120μm以下であれば、生産性の面で利点があると共に、取扱性の面でも良好な電気剥離性粘着シートとなり得る。
【0104】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層は、上述の本発明の一態様の粘着剤組成物から形成された層である。
そのため、本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層の厚さは、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下とすることができ、このように粘着剤層の厚さを比較的薄くしても、電圧印加前は高粘着力を有し、電圧印加による粘着力の低下効率が良好に保持され得る。
【0105】
<基材>
本発明の一態様の粘着シートが有する基材としては、被着体から剥離したい際に、粘着シートの粘着剤層に電圧印加を行う観点から、導電性基材であることが好ましい。
つまり、本発明の一態様の粘着シートは、導電性基材を有し、当該導電性基材の少なくとも一方の表面側に粘着剤層を有する構成であることが好ましい。
導電性基材を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、スズドープ酸化インジウム、銅、鉄、銀、白金、金等の金属及びこれら金属の合金等が挙げられる。
また、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムに、上記金属を蒸着させてなる金属蒸着体を基材として用いてもよい。樹脂フィルムに金属を蒸着させる場合は、粘着剤層と接する樹脂フィルムの面に金属を蒸着させることが好ましい。
【0106】
基材の厚さは、好ましくは5~300μm、より好ましくは10~150μm、更に好ましくは20~100μmである。
【0107】
<剥離シート>
本発明の一態様の粘着シートが有する剥離シートは、剥離シート用基材の片面又は両面に剥離剤を塗布して得ることができる。
剥離シート用基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0108】
本発明の一態様で用いる剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、イソプレン系樹脂やブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー等が挙げられる。
【0109】
剥離シートの厚さは、特に制限は無いが、好ましくは5~300μm、より好ましくは10~200μmである。なお、剥離シート用基材としてポリエステル系フィルムを用いる場合は、好ましくは10~100μmである。
【0110】
〔電気剥離性粘着シートの製造方法〕
本発明の電気剥離性粘着シートの製造方法としては、特に制限はなく、上記の方法により調製した本発明の一態様の粘着剤組成物を、上述の基材又は剥離シート上に公知の塗布方法により塗布して製造することができる。
なお、基材又は剥離シートに対する塗布性を良好とする観点から、本発明の一態様の粘着剤組成物は、有機溶媒で希釈して、溶液の形態として用いることが好ましい。
【0111】
粘着剤組成物を基材や剥離シート上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0112】
基材や剥離シート上に粘着剤組成物を塗布し塗布膜を形成した後、乾燥処理をすることが好ましい。
形成した塗布膜の乾燥条件としては、80℃~150℃の温度で、30秒~5分間(好ましくは40秒~3分間、より好ましくは45秒~2分間)加熱し、乾燥させることが好ましい。この乾燥工程を経て、基材又は剥離シート上に粘着剤層を形成することができる。
なお、粘着剤層の形成に用いた粘着剤組成物に架橋剤が配合されている場合には、架橋を完了させるために、一定期間(例えば、1日~14日程度)保持するシーズニング工程を経ることが好ましい。一方で、用いた粘着剤組成物に架橋剤が配合されていない場合には、当該シーズニングの工程を行う必要は無い。
【0113】
電気剥離性粘着シートの構成別の具体的な製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
まず、図1(a)のような基材2の片面に粘着剤層3を有する電気剥離性粘着シート1aは、例えば、基材2の一方の表面上に、上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して、粘着剤層3を形成して作製することができる。
また、剥離シートの剥離処理面上に、上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して、粘着剤層3を形成した後、その粘着剤層3と基材2とを貼り合わせ、剥離シートを除去して作製してもよい。
【0114】
図1(b)のような基材2の両面に粘着剤層3、3’を有する電気剥離性粘着シート1bは、例えば、基材2の両面に、上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して粘着剤層3、3’を形成し、作製することができる。
また、剥離シートの剥離処理面上に、上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して、粘着剤層を形成したものを2枚用意し、それぞれの粘着剤層を基材2の両面に貼り合わせて、剥離シートを除去して作製してもよい。
【0115】
図1(c)のような基材2上に粘着剤層3及び剥離シート4をこの順で有する電気剥離性粘着シート1cは、例えば、上述のようにして得られた電気剥離性粘着シート1aの粘着剤層3の面上に、剥離シート4をラミネートして作製することができる。
また、剥離シート4の剥離処理面上に、上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して、粘着剤層3を形成した後、その粘着剤層3と基材2とを貼り合わせて作製してもよい。
【0116】
図1(d)のような、基材を用いずに、粘着剤層3が2つの剥離シート4、4’により挟持された構成を有する電気剥離性粘着シート1dは、例えば、剥離シート4の剥離処理面上に、上述の粘着剤組成物の溶液を直接塗布して、粘着剤層3を形成した後、この粘着剤層3の面上に、別の剥離シート4’をラミネートして作製することができる。
なお、上述のとおり、剥離シート4と剥離シート4’とは、剥離力が異なるように調整することが好ましい。
【0117】
〔電気剥離性粘着シートの特性〕
本発明の一態様の粘着シートは、前記粘着剤層に電圧を印加した際、陰極側で剥離する特性を有する。つまり、陰極側に接続した粘着剤層の粘着表面と、当該粘着表面と貼付した被着体又は基材との間で剥離する。
例えば、図2の(a)のように、本発明の一態様の電気剥離性粘着シート1aを被着体11から剥離しようとする場合を考える。この図2(a)では、粘着剤層3は、被着体11及び基材2aに挟持されており、電圧印加装置50の陽極端子51を基材2aに接続し、陰極端子52を被着体11に接続することで、粘着剤層3の双方の表面間に電圧を印加することができる。
なお、図1の(d)のような基材無し電気剥離性粘着シート1dを用いる場合には、図2中の「基材2a」の構成が、別の「被着体」となり、粘着剤層3は、2枚の被着体に挟持された構成となり、電圧印加装置50の陽極端子51、陰極端子52とそれぞれの被着体に接続することで、粘着剤層3の両側の面の間に電圧を印加することができる。
この図2の(a)に示された状態で、電圧を印加すると、図2の(b)に示すように、陰極側に接続した粘着剤層の粘着表面3aと、当該粘着表面3aと貼付した被着体11との間で、粘着力が低下し、電気剥離性粘着シート1aを被着体から容易に剥離することができる。
【0118】
また、逆に図3の(a)のように、図2とは、陰極端子と陽極端子を逆に接続した場合、陰極側に接続した粘着剤層の粘着表面3a’と、当該陰極側に接続した粘着剤層の粘着表面3aと貼付した基材2aとの間で、粘着力が低下し、基材2aが粘着剤層3から剥離されることとなる。
【0119】
印加する電圧(印加電圧)は、好ましくは1~200V、より好ましくは3~140V、更に好ましくは6~120Vであり、当該範囲の電圧を印加する時間(印加時間)は、好ましくは1~180秒、より好ましくは5~120秒、更に好ましくは10~90秒である。
【0120】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層を、被着体であるステンレス鋼板に貼付した際の電圧印加前の粘着力は、好ましくは20.0N/25mm以上、より好ましくは22.0N/25mm以上、より好ましくは23.0N/25mm以上、更に好ましくは24.0N/25mm以上、更に好ましくは24.5N/25mm以上、より更に好ましくは26.0N/25mm以上、特に好ましくは29.0N/25mm以上である。
また、本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層を、被着体であるステンレス鋼板に貼付し、10V、60秒間で電圧印加した後における粘着力は、好ましくは2.0N/25mm以下、より好ましくは1.6N/25mm以下、より好ましくは1.4N/25mm以下、更に好ましくは1.3N/25mm以下、より更に好ましくは1.2N/25mm以下、特に好ましくは1.0N/25mm以下である。
【0121】
本発明の一態様の粘着シートを被着体に貼付して、10V、60秒間の電圧を印加した際の、電圧印加前後における下記式(i)
・式(i):〔粘着力減少率(%)〕=100-〔電圧印加後の試験シートの粘着力〕/〔電圧印加前の試験シートの粘着力〕×100
から算出される粘着力減少率は、好ましくは92.0%以上、より好ましくは94.0%以上、更に好ましくは95.0%以上、より更に好ましくは96.0%以上、特に好ましくは97.0%以上である。
なお、本明細書において、電圧印加前後における粘着シートの粘着力の測定方法については、後述の実施例に記載の方法に基づくものである。
【0122】
〔電気剥離性粘着シートの使用方法〕
本発明の一態様の電気剥離性粘着シートは、任意の被着体に貼付して使用することができる。
被着体としては、特に限定されず、導電性を有していても有さなくてもよいが、粘着剤層に電圧の印加を容易に行う観点から、被着体がそのまま電極となるように、導電性を有する被着体であることが好ましい。
導電性を有する被着体としては、例えば、アルミニウム、スズドープ酸化インジウム、銅、鉄、銀、白金、金等の金属やそれら金属の合金(例えば、ステンレス鋼)等が挙げられる。
特に、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートは、電圧印加前の粘着力や電圧印加による粘着力の低下効率が十分に発揮し難い、ステンレス鋼が被着体であっても、電圧印加前は高粘着力を有する一方で、電圧印加による粘着力の低下効率を格段に向上させることができる。そのため、本発明の一態様の電気剥離性粘着シートは、ステンレス鋼を被着体とする用途に用いられることが好ましい。
【0123】
以上から、本発明は、下記[i]の記載の使用方法も提供する。
[i]本発明の一態様の電気剥離性粘着シートを、導電性を有する被着体に貼付する、電気剥離性粘着シートの使用方法。
上記[i]に記載の使用方法において、前記電気剥離性粘着シートを、導電性を有する被着体に貼付した後、当該粘着シートを剥離したい際には、粘着剤層に電圧を印加することで、被着体から剥離することができる。
なお、粘着剤層に電圧を印加する際には、粘着シートを剥離する被着体側が陰極となるように接続して電圧を印加する。
また、上述のとおり、前記粘着シートは、ステンレス鋼が被着体であっても、電圧印加前は高粘着力を有する一方で、電圧印加による粘着力の低下効率を格段に向上させることができる。そのため、前記被着体はステンレス鋼であることが好ましい。
【実施例0124】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
また、各物性値については、以下に示す方法で測定した値である。
【0125】
(1)質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」、「TSK gel G2500HXL」、「TSK gel G2000HXL」及び「TSK gel G1000HXL」を順次連結したもの(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
(2)軟化点
JIS K5902で規定の環球法に準拠して測定した。
(3)酸価、水酸基価
JIS K0070で規定の電位差滴定法に準拠して測定した。
【0126】
実施例1~6、比較例1~2
(1)粘着剤組成物の調製
表1に示す種類及び配合量にて、各成分を添加し、希釈溶媒である酢酸エチルで希釈して粘着剤組成物を調製した。
表1に記載の実施例及び比較例の粘着剤組成物の調整に用いた各成分の詳細は以下のとおりである。
<成分(A):ベースポリマー>
・「アクリル系ポリマー」:n-ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)に由来する構成単位を有する共重合体(構成単位比:BA/MA/2-HEA=60/20/20(質量比))、Mw=60万。
<成分(B):イオン性化合物>
・「イオン液体」:第一工業製薬株式会社製、製品名「AS-210」、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、常温(25℃)で液体であるイオン液体。
<成分(C):ポリプロピレングリコール>
・「PPG400」:Mn=400のポリプロピレングリコール、前記一般式(c-1)で表される構成単位(c1)のみからなる単独重合体(前記一般式(c-2)で表される化合物)、常温(25℃)で液体。
・「PPG1000」:Mn=1000のポリプロピレングリコール、前記一般式(c-1)で表される構成単位(c1)のみからなる単独重合体(前記一般式(c-2)で表される化合物)、常温(25℃)で液体。
・「PPG3000」:Mn=3000のポリプロピレングリコール、前記一般式(c-1)で表される構成単位(c1)のみからなる単独重合体(前記一般式(c-2)で表される化合物)、常温(25℃)で液体。
<PAG:ポリアルキレングリコール>
・「PEG400」:Mn=400のポリエチレングリコール、エチレンオキシドに由来する構成単位のみからなる単独重合体、常温(25℃)で液体。
<成分(D):ロジン含有ジオール>
・「ロジン含有ジオール」:荒川化学工業株式会社製、製品名「パインクリスタルD-6011」、ロジン含有ジオール、軟化点=84~99℃、酸価=1mgKOH/g以下、水酸基価=110~125mgKOH/g。
<成分(E):架橋剤>
・「イソシアネート系架橋剤」:東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」、イソシアネート系架橋剤。
【0127】
(2)粘着シートの作製
剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、厚さ:38μm、表面がシリコーン剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが30μmになるように、実施例で調製した粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で2分間乾燥させて剥離シート上に粘着剤層を形成した。
その上で、形成した粘着剤層の表出している表面を、基材であるアルミニウム箔付PETフィルム(アジヤアルミ株式会社製、厚さ:23μm、PETフィルム、接着剤層、及びアルミニウム箔をこの順で積層した導電性基材)のアルミニウム箔側に貼付して、図1の(c)に示す電気剥離性粘着シート1cと同様の構成を有する、基材付き粘着シートを作製した。
【0128】
作製した粘着シートを用いて、以下の方法に基づいて、電力印加前後の試験シートの粘着力を測定し、粘着力低下率を算出した。これらの結果を表1に示す。
【0129】
[電圧印加前の試験シートの粘着力]
作製した基材付き粘着シートを、25mm×75mmの大きさに裁断したものを試験シートとした。
23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、当該試験シートが有する剥離シートを除去し、表出した粘着剤層の粘着表面に、被着体であるステンレス鋼板(SUS304、360番研磨)に貼付した。
なお、貼付に際しては、重さ2kgのローラーを用い、1往復させて、被着体に圧着し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、貼付後30分間放置したものを、粘着力測定用サンプルとした。
そして、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、粘着力測定用サンプルの試験シートを剥離した際に測定された値(単位:N/25mm)を電圧印加前の試験シートの粘着力とした。
【0130】
[電圧印加後の試験シートの粘着力]
上述の粘着力測定用サンプルを、図2の(a)に示すように、電圧印加装置50(株式会社高砂製作所製、製品名「KH-100H」)を用い、陽極端子51をアルミニウム箔の基材2aに、陰極端子52を被着体11に接続し、10Vの電圧を60秒間印加した。
電圧印加後、1分間放置した後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、粘着力測定用サンプルの試験シートを剥離した際に測定された値(単位:N/25mm)を電圧印加後の試験シートの粘着力とした。
その上で、電圧印加前後の試験シートの粘着力の値から、下記式により、粘着力減少率を算出した。
・〔粘着力減少率(%)〕=100-〔電圧印加後の試験シートの粘着力〕/〔電圧印加前の試験シートの粘着力〕×100
なお、粘着力減少率の値がマイナスとなった場合、電圧印加によって粘着力が上昇したことを示す。
【0131】
【表1】
【0132】
表1から、実施例1~6で作製した粘着シートは、粘着剤層が30μmと薄くし、被着体がステンレス鋼板であっても、電圧印加前の粘着力は20N/25mm以上と高粘着力である一方で、電圧印加による粘着力減少率が92%以上と高く、効率的に粘着力を低下し得る結果となった。
一方で、比較例1~2で作製した粘着シートは、実施例の粘着シートに比べて、電圧印加前の粘着力、及び、電圧印加による粘着力減少率が共に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0133】
1a、1b、1c、1d 電気剥離性粘着シート
2、2a 基材
3、3’ 粘着剤層
3a、3a’ 粘着表面
4、4’ 剥離シート
11 被着体
50 電圧印加装置
51 陽極端子
52 陰極端子
図1
図2
図3