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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032282
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】リテーナー及びリテーナー製作方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138318
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】521379274
【氏名又は名称】株式会社オーラルデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】谷 智之
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ01
(57)【要約】
【課題】噛み合わせの調整をすることができ、しかも審美性や耐久性に優れ、なおかつ矯正治療後の歯並びをしっかりと保定することのできるリテーナーを提供する。
【解決手段】矯正治療後の歯並びを保定するものであって、歯牙Tの咬合面T1を露出させた状態で装着されるリテーナー100であり、唇頬側から歯牙Tの表面に装着される表側フィット部10と、口蓋側又は舌側から歯牙Tの裏面に装着される裏側フィット部20とを有し、表側フィット部10が、透明なものであり、歯茎Aの表面をも覆うようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矯正治療後の歯並びを保定するものであって、歯牙の咬合面を露出させた状態で装着されるリテーナーであり、
唇頬側から歯牙の表面に装着される表側フィット部と、
口蓋側又は舌側から歯牙の裏面に装着される裏側フィット部とを有し、
前記表側フィット部が、透明なものであり、歯茎の表面をも覆うことを特徴とするリテーナー。
【請求項2】
前記表側フィット部及び前記裏側フィット部が、熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のリテーナー。
【請求項3】
前記表側フィット部の奥側と前記裏側フィット部の奥側と間に設けられるとともに、これらのフィット部よりも強度の高い連結具をさらに有することを特徴とする請求項1又は2記載のリテーナー。
【請求項4】
前記ワイヤーの前記表側フィット部との接合部が、奥歯表面に位置することを特徴とする請求項3記載のリテーナー。
【請求項5】
矯正治療後の歯並びを保定するものであって、歯牙の咬合面を露出させた状態で装着されるリテーナーを製作する方法であって、
複数本の模擬歯牙及びこれらを支える模擬歯茎を備える歯型を作成し、
前記歯型に嵌め合わされるとともに、この歯型との間に隙間を介在させる成形型を作成し、
前記歯型と前記成形型とを嵌め合わせることで形成される前記隙間に、樹脂を流し込んで固めることで、唇頬側から歯牙の表面に装着される表側フィット部と、口蓋側又は舌側から歯牙の裏面に装着される裏側フィット部とを作成し、
前記表側フィット部が、透明なものであり、歯茎の表面をも覆うことを特徴とするリテーナー製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矯正治療後の歯並びを保定するためのリテーナー及びこのリテーナーの製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、リテーナーを説明する前に、その前提となる矯正治療について簡単に説明する。
【0003】
従来の矯正治療としては、ワイヤーを用いて歯牙を徐々に移動させて歯並びを整えるワイヤー矯正があるが、この矯正方法は、審美性に欠くといった欠点や、矯正中にワイヤーを外せず口内の清掃が大変であるといった欠点がある。
【0004】
そこで、近年では、審美性も良く、取り外しが可能な透明なマウスピースを用いて歯並びを整えるアライナー矯正が増加傾向にある。
【0005】
こうした矯正治療を終えた後、放っておくと矯正後の歯並びが元に戻ろうとするたに、リテーナーを用いて歯並びを保定する必要がある。
【0006】
既存のリテーナーとしては、プレスリテーナーと称されるマウスピース型のものがある。このものは、全体が透明な樹脂で成形されており、審美性は良いという利点があるものの、歯牙の咬合面を覆うので、矯正治療後の咬合調整をすることができないといった欠点がある。
【0007】
当業者にとっては当然に理解されようが、矯正治療後に咬合調整することは極めて重要である。何故ならば、咬合学においても唱えられているように、噛み合わせが悪い状態(不正咬合)は、歯牙に加わる力が不均一となり、例えば歯牙のヒビ割れ、その割れに細菌が入ることによる虫歯、歯牙のたわみなど、種々の問題を引き起こす要因となるからである。そのことから、矯正治療後も咬合調整がしっかりと行えず、各歯牙に加わる咬合力が不均一な状態で、夜間に生理的現象のブラキシズム、歯ぎしり等の大きな咬合力が加わることで、歯並びが後戻りするなどの問題を引き起こす要因となる。
【0008】
そこで、矯正治療後に噛み合わせを調整できるリテーナーとして、歯牙の咬合面を露出させた状態で装着されるものがあり、具体的にはラップアラウンドリテーナーと称されるものや、QCMリテーナーと称されるものがある。
【0009】
前者のラップアラウンドリテーナーは、図7に示すように、主として金属製のワイヤーを用いて歯並びを保定するものであり、ワイヤーを前歯から奥歯にかけて唇頬側に亘らせたものである(特許文献1)。
【0010】
しかしながら、上述したように、審美性を重要視したアライナー矯正が増加傾向にある中、このアライナー矯正の後にワイヤーを用いて保定することは、近似の傾向に沿わず、そもそもラップアラウンドリテーナーは、積極的に受け入れられ難い。
【0011】
そのうえ、ラップアラウンドリテーナーは、耐久性を有するものの、ワイヤーの屈曲が多くなることで技工士の熟練度を要したりするといった課題がある。さらに、このラップアラウンドリテーナーは、上述したプレスリテーナーに比べると、歯牙との接触面積が少なく、矯正治療後の歯並びをしっかりと保定する保持力が弱いといった課題もある。
【0012】
これに対して、後者のQCMリテーナーは、図8に示すように、少なくとも前歯の唇頬側に、ワイヤーの代わりに透明な樹脂ベルトを亘らせたものであり、ラップアラウンドリテーナーに比べて審美性が良く、ワイヤーの屈曲も少なくなる。
【0013】
しかしながら、ラップアラウンドリテーナーよりも耐久性が非常に劣り、破損による交換が必要となるといった課題があり、なおかつ、プレスリテーナーに比べると、歯牙との接触面積が少ない点はラップアラウンドリテーナーと共通しており、やはり矯正治療後の歯並びをしっかりと保定する保持力が弱い。
【0014】
このように、各種リテーナーには、どれもデメリットが付き纏う。
そこで、これらのデメリットを補うよう、異種のリテーナーを併用する提案もなされている。具体的には、例えば日中はマウスピース型のプレスリテーナーを使い、就寝中はラップアラウンドリテーナーを使うといった態様である。
【0015】
ところが、この場合は、就寝中にラップアラウンドリテーナーにより歯牙の咬合面を露出させて保定されている歯並びが、日中に歯牙の咬合面を覆うプレスリテーナーへと取り替えることで、歯並びがやや元に戻ろうとしてしまう。つまり、異種のリテーナーを併用すると、それぞれのリテーナーを着用している際の保定のされ方が変わってしまい、本来発揮させようとする保定機能が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005-270618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明は、既存の各種リテーナーに付き纏う種々のデメリットを一挙に解決すべくなされたものであり、噛み合わせの調整をすることができ、しかも審美性や耐久性に優れ、なおかつ矯正治療後の歯並びをしっかりと保定することのできるリテーナーを提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち本願発明にかかるリテーナーは、矯正治療後の歯並びを保定するものであって、歯牙の咬合面を露出させた状態で装着されるリテーナーであり、唇頬側から歯牙の表面に装着される表側フィット部と、口蓋側又は舌側から歯牙の裏面に装着される裏側フィット部とを有し、前記表側フィット部が、透明なものであり、歯茎の表面をも覆うことを特徴とするものである。
【0019】
このように構成されたリテーナーによれば、歯牙の咬合面を露出させた状態で装着されるので、矯正治療後に噛み合わせを調整することができ、しかも、表側フィット部が透明なものであるので、審美性に優れる。
そのうえ、表側フィット部が、唇頬側から歯牙の表面に装着されるとともに、歯茎の表面をも覆うので、耐久性に優れ、なおかつ、既存のラップアラウンドリテーナーやQCMリテーナーに比べて歯牙との接触面積が顕著に増すので、矯正治療後の歯並びをしっかりと保定することができ、さらには、これまでになくフィット感があって外れにくいものとなるといった副次的な効果をも得られる。
このように、本発明に係るリテーナーは、謂わば既存のリテーナーの種々の利点を兼ね備えたものとなる。
【0020】
前記表側フィット部及び前記裏側フィット部が、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
これならば、樹脂ベルトを用いたQCMリテーナーに比べて耐久性が優れ、少なくとも2年間に亘り使い続けることができる。
【0021】
ところで、表側フィット部の奥側と裏側フィット部の奥側との連結部分は、最も奥にある歯牙のさらに奥側のクリアランスの狭い箇所を通る部分となる。従って、この連結部分は、設計上、細くせざるを得ず、フィット部と同様に樹脂で製作すると、機械的強度を担保することができない。
そこで、前記表側フィット部の奥側と前記裏側フィット部の奥側と間に設けられるとともに、これらのフィット部よりも強度の高い連結具をさらに有することが好ましい。
これならば、表側フィット部の奥側と裏側フィット部の奥側との連結部分の強度を担保することができる。
【0022】
前記連結具と前記表側フィット部との接合部が、奥歯表面に位置することが好ましい。
これならば、口を開いても連結具が隠れるので、優れた審美性を保つことができる。
【0023】
また、本発明に係るリテーナー製作方法は、矯正治療後の歯並びを保定するリテーナーを製作する方法であって、複数本の模擬歯牙及びこれらを支える模擬歯茎を備える歯型を作成し、前記歯型に嵌め合わされるとともに、この歯型との間に隙間を介在させる成形型を作成し、前記歯型と前記成形型とを嵌め合わせることで形成される前記隙間に、樹脂を流し込んで固めることで、唇頬側から歯牙の表面に装着される表側フィット部と、口蓋側又は舌側から歯牙の裏面に装着される裏側フィット部とを作成し、前記表側フィット部が、透明なものであり、歯茎の表面をも覆うことを特徴とする方法である。
このようなリテーナー製作方法によれば、上述したリテーナーによる作用効果を奏し得る。すなわち、噛み合わせの調整をすることができ、しかも審美性や耐久性に優れ、なおかつ矯正治療後の歯並びをしっかりと保定することのできるリテーナーを提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
このように構成した本願発明によれば、噛み合わせの調整をすることができ、しかも審美性や耐久性に優れ、なおかつ矯正治療後の歯並びをしっかりと保定することのできるといった、既存のリテーナーの種々の利点を兼ね備えたリテーナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態のリテーナーの使用状態を示す模式図。
図2】同実施形態のリテーナーの装着前の状態を示す模式図。
図3】同実施形態のリテーナーの製作方法を説明するための模式図。
図4】同実施形態のリテーナーの製作方法を説明するための模式図。
図5】同実施形態のリテーナーの製作方法を説明するための模式図。
図6】同実施形態のリテーナーの製作方法を説明するための模式図。
図7】従来のラップアラウンドリテーナーを示す模式図。
図8】従来のQCMリテーナーを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本願発明に係るリテーナーの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
<構成>
本実施形態に係るリテーナー100は、矯正治療後の歯並びを保定するものであり、図1に示すように、歯牙Tの咬合面T1を露出させた状態で歯牙Tに装着されるものである。なお、以下では、説明の便宜上、予め用意した模型の歯牙や歯茎を、矯正治療後の実際の歯牙Tや歯茎Aとして説明する。
【0028】
具体的にこのリテーナー100は、図1に示すように、表側フィット部10と、裏側フィット部20と、これらのフィット部の間に介在する一対の連結具30とを有している。
【0029】
表側フィット部10は、図1及び図2に示すように、唇頬側から歯牙Tの表面に装着されるものである。
【0030】
この表側フィット部10は、矯正治療後の歯牙Tの唇頬側の面(唇面及び頬面)に沿った形状をなすものであり、この実施形態では、矯正治療後の歯並びの表面を型どりしたものである。
【0031】
より具体的に説明すると、この表側フィット部10は、樹脂製の透明なものであり、片側の最も奥の歯牙Tから前歯を通って反対側の最も奥の歯牙Tに亘り連続的に設けられる。この実施形態では、義歯床に使用可能な熱可塑性樹脂からなるものであり、例えばアクリル樹脂、ポリアミド系樹脂、又はポリエステル系樹脂を主成分とした無色透明なものである。
【0032】
そして、この表側フィット部10は、図1に示すように、歯牙Tの表面とともに、歯茎Aの表面をも覆うことを特徴とするものである。
【0033】
すなわち、この表側フィット部10は、歯牙Tの表面のみならず、歯茎Aの表面にも沿った形状をなしており、この実施形態では、歯牙Tの表面とともに歯茎Aの表面をも型どりしたものである。
【0034】
より具体的に説明すると、この表側フィット部10は、歯茎Aのうち、片側の最も奥の歯牙Tを支える箇所の表面から、前歯を支える箇所の表面を通って、反対側の最も奥の歯牙Tを支える箇所の表面に亘り連続的に設けられている。
【0035】
裏側フィット部20は、図1及び図2に示すように、口蓋側又は舌側から歯牙Tの裏面に装着されるものであり、上述した表側フィット部10とは別体である。
【0036】
この裏側フィット部20は、矯正治療後の歯牙Tの口蓋側の面(口蓋面)又は舌側の面(舌面)に沿った形状をなすものであり、この実施形態では矯正治療後の歯並びの裏面を型どりしたものである。
【0037】
より具体的に説明すると、この裏側フィット部20は、樹脂製の透明なものであり、片側の最も奥の歯牙Tから前歯を通って反対側の最も奥の歯牙Tに亘り連続的に設けられる。この実施形態では、義歯床に使用可能な熱可塑性樹脂からなるものであり、例えばアクリル樹脂、ポリアミド系樹脂、又はポリエステル系樹脂を主成分とした無色透明なものであり、ここでは上述した表側フィット部10と同じ材質からなる。
【0038】
そして、この裏側フィット部20は、図1に示すように、歯牙Tの裏面とともに、歯茎Aの裏面をも覆うものである。
【0039】
すなわち、この裏側フィット部20は、歯牙Tの裏面のみならず、歯茎Aの裏面にも沿った形状をなしており、この実施形態では、歯牙Tの裏面とともに歯茎Aの裏面をも型どりしたものである。
【0040】
より具体的に説明すると、この裏側フィット部20は、歯茎Aのうち、片側の最も奥の歯牙Tを支える箇所の裏面から、前歯を支える箇所の裏面を通って、反対側の最も奥の歯牙Tを支える箇所の裏面に亘り連続的に設けられている。
【0041】
連結具30は、表側フィット部10の奥側と裏側フィット部20の奥側との間に架け渡されて、これらのフィット部10、20を連結するものであり、この実施形態では最も奥の歯牙Tのさらに奥側に通されている。
【0042】
この連結具30は、表側フィット部10や裏側フィット部20よりも強度の高い材質からなり、具体的には金属製のワイヤーを用いている。
【0043】
連結具30の一端部は、表側フィット部10の奥側に接合される表側接合部31であり、連結具30の他端部が裏側フィット部20の奥側に接合される裏側接合部32である。
【0044】
表側接合部31は、奥歯の表面に位置しており、より具体的には最も奥の歯牙Tの表面、又は、その1つ或いは2つ手前の歯牙Tの表面に位置しており、口を開いても視認されない位置に設けられている。
【0045】
裏側接合部32は、奥歯の裏面に位置しており、より具体的には最も奥の歯牙Tの表面、又は、その1つ或いは2つ手前の歯牙Tの裏面に位置している。
【0046】
<製作方法>
次に、上述したリテーナー100の製作方法の一例について説明する。
【0047】
まず、図3の上段に示すように、矯正治療後の歯牙Tを模した複数本の模擬歯牙41やこれらを支える模擬歯茎42を備える歯型40を予め作成し、その歯型40をワックスアップするとともにフラスコ50に埋没する。
【0048】
次いで、図3の下段に示すように、上述した歯型40よりもひと回り大きい成形型60を作成するべく、ワックスを用いて歯型40にスプルーイングする。
【0049】
そして、図4の上段に示すように、このスプルーイングした歯型40の表面を石膏等で型取りすることで、図4の下段に示すように、上述した成形型60を作成する。
【0050】
この成形型60は、脱ロウしてワックスを取り除いた歯型40に嵌め合わされるものであり、上述した通り、歯型40よりもひと回り大きいので、歯型40に嵌め合わせると、歯型40を構成する模擬歯牙41の表面、模擬歯牙41の裏面、模擬歯茎42の表面、及び模擬歯茎42の裏面との間に隙間を生じさせる。
【0051】
そこで、図5の上段に示すように、歯型40の例えば最も奥の模擬歯牙41のさらに奥側に予め連結具30を通して取り付けるとともに、この歯型40に図5の下段に示す成形型60を嵌め合わせ、これにより生じる隙間に樹脂を流し込んで固める。
【0052】
これにより、図6の示すように、連結具30により連結された表側フィット部10及び裏側フィット部20の原型70が作成される。
【0053】
その後、表側フィット部10及び裏側フィット部20の原型70を研磨するなどして、表側フィット部10及び裏側フィット部20を所望の形状に製作する。
【0054】
<作用効果>
このように構成されたリテーナー100によれば、歯牙Tの咬合面T1を露出させた状態で装着されるので、矯正治療後に噛み合わせを調整することができ、しかも、表側フィット部10が透明なものであるので、審美性に優れる。
そのうえ、表側フィット部10が、唇頬側から歯牙Tの表面に装着されるとともに、歯茎Aの表面をも覆うので、耐久性に優れ、なおかつ、既存のラップアラウンドリテーナーやQCMリテーナーに比べて歯牙Tとの接触面積が顕著に増すので、矯正治療後の歯並びをしっかりと保定することができ、さらには、これまでになくフィット感があって外れにくいものとなるといった副次的な効果をも得られる。
このように、本実施形態のリテーナー100は、謂わば既存のリテーナーの種々の利点を兼ね備えたものとなる。
【0055】
また、表側フィット部10及び裏側フィット部20が、熱可塑性樹脂からなるので、樹脂ベルトを用いたQCMリテーナーに比べて耐久性が優れ、少なくとも2年間に亘り使い続けることができる。
【0056】
ここで、表側フィット部10の奥側と裏側フィット部20の奥側とを連結する連結具30は、本実施形態では、最も奥にある歯牙Tのさらに奥側のクリアランスの狭い箇所を通る部分であり、設計上、細くせざるを得ず、フィット部と同様に樹脂で製作すると、機械的強度を担保することができない。
これに対して、本実施形態では、連結具30として金属製のワイヤーを用いているので、表側フィット部10の奥側と裏側フィット部20の奥側との連結部分の強度を担保することができる。
【0057】
しかも、連結具30の表側フィット部10に接合される表側接合部31が、奥歯表面に位置するので、口を開いても連結具30が隠れ、優れた審美性を保つことができる。
【0058】
<その他の実施形態>
なお、本願発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0059】
例えば、表側フィット部10及び裏側フィット部20は、前記実施形態では、互いに同じ材質からなるものであったが、互いに異なる材質からなるものであっても構わない。
【0060】
また、表側フィット部10及び裏側フィット部20の一方又は双方は、前記実施形態で述べた無色透明なものに限らず、例えば有色透明なものであっても良い。
【0061】
連結具30は、前記実施形態では、最も奥の歯牙Tのさらに奥側に通されるものであったが、例えば最も奥の歯牙Tとその1つ手前の歯牙Tとの間に通されていても良い。
【0062】
また、連結具30としては、金属製のワイヤーに限らず、例えばガラス繊維や炭素繊維などの補強材を利用したものであっても良い。
【0063】
表側フィット部10及び裏側フィット部20の製作方法としては、前記実施形態で述べた方法に限らず、3Dプリンタを利用して製作しても構わない。
【0064】
その他、本願発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
T ・・・歯牙
T1 ・・・咬合面
A ・・・歯茎
100・・・リテーナー
10 ・・・表側フィット部
20 ・・・裏側フィット部
30 ・・・連結具
31 ・・・表側接合部
32 ・・・裏側接合部
40 ・・・歯型
41 ・・・模擬歯牙
42 ・・・模擬歯茎
50 ・・・フラスコ
60 ・・・成形型
70 ・・・原型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8