(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032297
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】飲料用ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B67D 1/16 20060101AFI20230302BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B67D1/16
F25D11/00 102J
F25D11/00 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138337
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹也
【テーマコード(参考)】
3E082
3L045
【Fターム(参考)】
3E082AA01
3E082BB01
3E082BB07
3E082CC01
3E082DD01
3E082FF09
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA01
3L045DA02
3L045PA02
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】ドレンパンの清掃やメンテナンスを好適に行い得る飲料用ディスペンサを提供する。
【解決手段】飲料用ディスペンサは、筐体の前面側に設けられた放出部から飲料や氷等を下方に向けて放出可能であり、またその放出部の下方のドレンパネル50が筐体に対して着脱自在に構成されている。筐体に対するドレンパネル50の装着または離脱を検出する開閉センサ91を備えており、制御盤が、開閉センサ91の検出に基づいて所定の制御内容を変更する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料や氷等の放出対象を下方に向けて放出可能な放出部(25)が筐体(11)に設けられ、該放出部(25)の下方に離間してドレンパン(50)が設けられていると共に、各種制御を実行する制御手段(90)を備えた飲料用ディスペンサにおいて、
前記ドレンパン(50)が前記筐体(11)に対して着脱自在に構成され、
前記筐体(11)に対する前記ドレンパン(50)の装着または離脱を検出する着脱検出手段(91)を備え、
前記制御手段(90)は、前記着脱検出手段(91)の検出に基づいて所定の制御内容を変更するように構成されている
ことを特徴とする飲料用ディスペンサ。
【請求項2】
前記筐体(11)の前面に設けられる操作部(92)に対する人体の接触または近接を検出するセンサ(93)を備え、
前記制御手段(90)は、前記センサ(93)の検出に応じて前記放出部(25)による放出動作を制御すると共に、前記着脱検出手段(91)の検出に基づいて前記ドレンパン(50)の非装着状態を判別した場合に、該ドレンパン(50)の装着状態よりも前記放出動作の開始条件が成立し難くなるように前記センサ(93)の感度を設定する請求項1記載の飲料用ディスペンサ。
【請求項3】
前記筐体(11)の内部に収容された製氷機構(21)からの排水を誘導する内部排水管(95)に排水バルブ(96)を備え、
前記制御手段(90)は、前記着脱検出手段(91)の検出に基づいて前記ドレンパン(50)の非装着状態を判別した場合に、該ドレンパン(50)の装着状態よりも前記製氷機構(21)からの単位時間当たりの排水量が少なくなるように前記排水バルブ(96)を制御する請求項1または2記載の飲料用ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料や氷等を放出する放出部の下方にドレンパンが設けられている飲料用ディスペンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファミリーレストラン等の飲食店では、客に飲料や氷等の提供物を提供する飲料用ディスペンサが使用されている。この飲料用ディスペンサとしては例えば、筐体内部に製氷機構およびストッカを内蔵したアイスディスペンサがある。アイスディスペンサは、製氷機構で生成した氷をストッカに貯留し、その貯留した氷を、客等の操作に応じて、ストッカの前面側に設けられた放出部から筐体前側の受け取り位置(放出部の下方)にあるコップ(飲料容器)に提供する。氷を放出する放出部は、ストッカに連通する氷案内路や、氷の放出口を形成するスパウト、氷案内路の入口を開閉するシャッタ機構等から構成される。なお、氷の他に飲料水を提供する場合には、外部水道に繋がる注水ノズルや開閉弁を含むように放出部が構成される。
【0003】
筐体前面のフロントパネルには、ストッカ前面側の放出部を前側から覆うカバー部が設けられている。カバー部は、放出部からの氷や飲料水の放出を妨げない形状で設けられ、その下方には、飲料容器を受け取り位置に配置するためのスペースが確保されている。客等が操作する操作部として、飲料容器(コップ)を押し付けて操作する操作レバーが採用される場合、この操作レバーはカバー部の下方に配置される。そして、受け取り位置に飲料容器を配置することで操作レバーを後方へ押しのけるように操作すると、放出部から受け取り位置に向けて氷や飲料水が放出されるので、飲料容器内に氷や飲料水を受け取ることができる。なお、操作部としては、手指で押圧操作するボタン等も採用し得る。
【0004】
ここで、従来における一般的なアイスディスペンサ(氷のみを提供するタイプ)の概略構成について
図11に示す。なお、
図11において、符号11は筐体、符号15はフロントパネル、符号16はカバー部、符号18は操作レバー、符号20は受け取り位置、符号21は製氷機構、符号23はストッカ、符号25は放出部である。このアイスディスペンサは、受け取り位置20を挟んで放出部25と反対側(受け取り位置20の下方)に、ドレンパンDPが設けられている。ドレンパンDPは、器状(上方に開口する箱状)の部材であってその上方開口には網目板状のグリルGが蓋のように被せられ、また下面からはドレンパイプPが下方に延出している。ドレンパイプPの入口側はドレンパンDPの内部空間Sに連通しており、出口側には排出ホースHが接続されている。このため、ドレンパンDPで受けた氷は、グリルG上で溶けて水となりグリルGを通過するか、或いは小さな氷の状態でグリルGを通過し、ドレンパンDPの底壁に形成されている流出口54aからドレンパイプPへと流出して、排出ホースHにより外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドレンパンDPは、フロントパネル15と一体的に設けられているため、筐体11側から容易に取り外したり再び取り付けたりすることができない。従って、例えばドレンパンDPの清掃作業等は、店内におけるディスペンサの設置場所で行われることになる。この場合は水道水によるドレンパンDPの洗い流し等が行い難く、洗浄方法が濡らした雑巾による拭き取り等に限られることで、ドレンパンDPの細かな箇所まで汚れを取り除くのには非常に手間がかかる。そこで、ドレンパンDPを筐体11側から適時に取り外して独立的に扱えるようにすることが検討されている。しかしながら、
図11のドレンパンDPを筐体11に対して着脱自在とする場合、筐体11からドレンパンDPが取り外された状態で氷の放出操作が誤って行われると、放出された氷が周囲に散乱して水浸しになる虞がある。また例えば、筐体11からドレンパンDPが取り外された状態で排水ホースH内を排水が逆流するといった事象が生じると、その排水がドレンパンDPから分離された排水ホースHの入口から零れ易く、衛生面でも問題が生じ得る。すなわち、ドレンパンDPを筐体11に対する非装着状態とすることに関連して、排水処理に関する不具合が生じ得る。
【0007】
なお、氷のみを提供する前述した飲料用ディスペンサの他に、飲料水やジュース等の飲料のみ或いは氷および飲料を提供する飲料用ディスペンサ等があり、これら各種の飲料用ディスペンサにも前述した放出部およびドレンパンが設けられている。そして、前述した各種の飲料用ディスペンサにおいて、ドレンパンの清掃やメンテナンスに関し同様の問題がある。
【0008】
そこで本発明は、従来の飲料用ディスペンサに内在する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、ドレンパンの清掃やメンテナンスを好適に行うことができ、かつ排水処理に関する不具合の発生を抑制し得る飲料用ディスペンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
飲料や氷等の放出対象を下方に向けて放出可能な放出部が筐体に設けられ、該放出部の下方に離間してドレンパンが設けられていると共に、各種制御を実行する制御手段を備えた飲料用ディスペンサにおいて、
前記ドレンパンが前記筐体に対して着脱自在に構成され、
前記筐体に対する前記ドレンパンの装着または離脱を検出する着脱検出手段を備え、
前記制御手段は、前記着脱検出手段の検出に基づいて所定の制御内容を変更するように構成されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、筐体に対してドレンパンを着脱し得るので、ドレンパンの清掃やメンテナンスを行う際には当該ドレンパンを筐体から取り外した状態で作業を行うことができる。また、筐体に対するドレンパンの装着状態・非装着状態を判別して、ドレンパンの非装着状態での制御内容を該ドレンパンの装着状態での制御内容と異ならせることで、ドレンパンの非装着状態での排水処理に関する不具合の発生を抑制することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、
前記筐体の前面に設けられるタッチパネルに対する人体の接触または近接を検出するタッチセンサを備え、
前記制御手段は、前記タッチセンサの検出に応じて前記放出部による放出動作を制御すると共に、前記着脱検出手段の検出に基づいて前記ドレンパンの非装着状態を判別した場合に、該ドレンパンの装着状態よりも前記放出動作の開始条件が成立し難くなるように前記タッチセンサの感度を設定することを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、ドレンパンの非装着状態で意図せずタッチセンサに人体が接触または近接して放出部による放出動作が行われてしまう不具合の発生を抑制することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、
前記筐体の内部に収容された製氷機構からの排水を誘導する内部排水管に排水バルブを備え、
前記制御手段は、前記着脱検出手段の検出に基づいて前記ドレンパンの非装着状態を判別した場合に、該ドレンパンの装着状態よりも前記製氷機構からの単位時間当たりの排水量が少なくなるように前記排水バルブを制御することを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、制御盤は、着脱検出手段の検出に基づいてドレンパンの非装着状態を判別した場合に、該ドレンパンの装着状態よりも製氷機構からの単位時間当たりの排水量が少なくなるように排水バルブを制御する。従って、ドレンパンの非装着状態であっても、筐体側の排出経路から排水が溢れ出る不具合を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飲料用ディスペンサに備えられるドレンパンの清掃やメンテナンスを好適に行うと共に、排水処理に関する不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例に係る飲料用ディスペンサを左上前方から見た斜視図である。
【
図2】飲料用ディスペンサにおける筐体の内部構造に関する説明図である。
【
図3】飲料用ディスペンサを右下前方から見た斜視図である。
【
図4】(a)は、タッチパネルの正面図であり、(b)は、制御盤と他の電気部品との電気的な接続関係を示している。
【
図5】(a)は、ドレンパネルを右上前方から見た斜視図であり、(b)は、ドレンパネルを右下後方から見た斜視図である。
【
図6】中継管構成部が設けられる筐体下部の縦断側面図である。
【
図7】ドレンパネルが取り外された状態の筐体を右上前方から見た斜視拡大図である。
【
図8】(a)は、ドレンパネルを棚部の上方に位置させた状態を示しており、(b)は、ドレンパネルを装着待機位置に位置するように棚部に載置した状態を示している。
【
図9】ドレンパネルを装着位置に位置するように棚部に載置し、始端パイプ(第1経路)と中継管構成部(第2経路)とを接続した状態を示している。
【
図10】製氷機構、内部排水管、排水バルブおよび内部ドレンパンの位置関係を示している。
【
図11】従来のアイスディスペンサを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る飲料用ディスペンサにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。以下の各実施例では、放出対象として氷および飲料水を提供する飲料用ディスペンサについて説明し、前述した従来の飲料用ディスペンサ(
図11参照)と同一の構成に関しては、同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。なお、氷のみ或いは飲料のみを提供する飲料用ディスペンサ等にも本発明の構成を適用し得る。また以下の説明では、飲料用ディスペンサを正面側(前側)から見た状態を基準として、左右方向、上下方向および前後(手前・奥)方向を規定して説明する。
【実施例0015】
実施例の飲料用ディスペンサ10は、
図1および
図2に示すように、外郭を構成する縦長矩形状の筐体11の内側(機械室11a)に、チップアイス等の氷(提供物)を生成する製氷機構21や、生成された氷を貯留するストッカ23等が収容されている。筐体11は、前方に開口する箱形の筐体基部13と、この筐体基部13の前面開口を覆うように配置されたフロントパネル15とで基本的に構成されており、筐体基部13の下壁(筐体11の下壁)を構成する平板状のベース板31(
図3参照)から延びる4本の脚部33によって自立する。すなわち、飲料用ディスペンサ10(筐体11)を平面に設置する場合、その下壁であるベース板31の下方には脚部33の長さ分に相当する上下寸法の隙間が確保される。そして、その隙間に、後述する排出経路Rの下流側を形成する中継管構成部37が配置されている。
【0016】
図3に示すように、ベース板31は、前端側の一部が筐体基部13より前方に延出している。このベース板31のうち前方への延出部分は、フロントパネル15の下縁部から前方に延出する平板状の棚部19によって上面が覆われ、その上側には後述するドレンパネル50が配設されている。
【0017】
(放出部25について)
図2に示すように、ストッカ23の前面側には、氷および飲料水を放出口26から下方(コップ等の飲料容器による氷の受け取り位置20)に向けて放出する放出部25が設けられている。本実施例の放出部25は、ストッカ23内の氷を放出するための機構部分(氷案内路25a、スパウト25bおよびシャッタ機構25c)と、外部水道からの飲料水を放出するための機構部分(注水ノズル25dおよび図示しない開閉弁)とで構成される。これに対し、氷および飲料水の何れかを放出する機構部分のみで放出部25を構成してもよい。なおこの放出部25に関しては、従来公知の構造であるため詳細な説明を省略する。
【0018】
(カバー部16・凹面部17について)
図1~
図3に示すように、フロントパネル15の上部には、放出部25を前側から覆うカバー部16が設けられている。
図2に示すように、カバー部16は、開口側が後方を向く凹状となっており、この凹状部分に放出部25が収容されている。このカバー部16は、その一部がフロントパネル15に対して別部材16xとして着脱自在に配置されているので、当該別部材16xを取り外すことで放出部25が露出し、清掃やメンテナンス等を行うことができる。また、
図1および
図3に示すように、フロントパネル15の下部(カバー部16の装着位置の下側)は、前面が後方に凹むように形成されている(以下「凹面部17」という)。この凹面部17によってカバー部16の下方にスペースが確保されていることで、カバー部16(放出部25)の下方領域(受け取り位置20)への飲料容器の配置が容易(可能)となっている。このカバー部16の下壁16aには、
図3に示すように、放出部25の下端部の放出口26を露出する露出口16bが形成されている。
【0019】
図1に示すように、筐体11(カバー部16)の前面にタッチパネル(操作部)92が設けられている。タッチパネル92は、
図4(a)に示すように、飲料水および氷が入ったコップの表示が表面に施された第1選択操作部41と、氷のみが入ったコップの表示が表面に施された第2選択操作部42と、飲料水のみが入ったコップの表示が表面に施された第3選択操作部43と、空のコップおよび下向き矢印の表示が表面に施された放出操作部44とを有している。また、タッチパネル92にはタッチセンサ93が組み込まれている。タッチセンサ93は、第1~第3選択操作部41,42,43と一対一で対応するように第1~第3検出部93a,93b,93cが設けられており、放出操作部44と対応するように第4検出部93dが配置されている。
【0020】
タッチセンサ93(タッチパネル92)は、各種制御を実行する制御盤90(
図4(b)参照)と電気的に接続されている。そして、タッチセンサ93は、第1~第3選択操作部41,42,43や放出操作部44が前から押圧されると、対応する検出部93a,93b,93c,93dによりその押圧操作を検出し、検出信号を出力するように構成されている。制御盤90は、第1~第3検出部93a,93b,93cによる検出に基づいて放出対象(飲料水および氷、氷のみ、飲料水のみの3種類)の選択状態を切り換えると共に、第4検出部93dによる検出に基づいて、選択状態となっている放出対象を放出するように放出部25を制御するようになっている。
【0021】
ここで、タッチセンサ93は、タッチパネル92の表面(第1~第3選択操作部41,42,43または放出操作部44)に指等が触れることによる静電容量(電荷)の変化度に応じた検出信号を出力し、この検出信号が制御盤90に入力されるように構成されている。このため例えば、ユーザーがタッチパネル92の放出操作部44を指等で触れる或いは近づける動作を行うと、その動作を制御盤90が放出操作として認識し、放出部25を制御することで放出対象(氷や飲料水)が放出される。
【0022】
(操作レバー18について)
また、
図1~
図3に示すように、カバー部16の下壁16aと凹面部17の上縁部との間から下方に延出するように、放出対象(氷および飲料水)を放出部25から放出させる場合の操作の対象となる操作レバー18が設けられている。この操作レバー18は、飲料容器を前側から押し付けて操作するものである。なお、本実施例の飲料用ディスペンサ10は、ユーザー等による特定操作に応じた制御盤90の制御により、前述したタッチパネル92(放出操作部44)を操作することに応じて放出対象を放出するパネル操作モードと、操作レバー18を操作することに応じて放出対象を放出するレバー操作モードとに切り替え可能に構成されている。以下の記載では、パネル操作モードの設定状態を前提として説明を行うこととし、操作レバー18について詳細な説明を省略する。
【0023】
(ドレンパネル50について)
図1~
図3に示すように、フロントパネル15の凹面部17の前側であって放出部25の下方位置には、排水処理用のドレンパネル(ドレンパン)50が設けられている。このドレンパネル50は例えば、飲料容器が受け取り位置20に準備されていない状態で放出部25から放出された氷や飲料水を内部空間Sに受け容れ、底面の流出口54aから排出経路R(
図9参照)に流出させる。ドレンパネル50は、器状(箱状)の合成樹脂部材であり、上方開口には網目状の複数の開口を有するグリル(図示省略)が蓋状に被せられている。なお
図1は、グリルを取り外したドレンパネル50を斜め上方から見た状態である。
【0024】
図5に示すように、ドレンパネル50には、内部空間Sを形成する皿形成部52と、この皿形成部52の前面および左右の側面を被覆する被覆板53とが設けられている。皿形成部52は、
図5(a)に示すように、フロントパネル15の凹面部17(
図3参照)の形状に合わせて、後壁部55における左右方向の中央部が後方に向けて突出している。また、
図5(b)に示すように、被覆板53は、皿形成部52の上縁部から下方に向けて延出している。そして、ドレンパネル50は、フロントパネル15の棚部19の上側に設けられ、被覆板53の下端部が棚部19の前端面を前側から覆うように構成されている。
【0025】
ここで、実施例の飲料用ディスペンサ10では、ドレンパネル50が筐体11に対して着脱自在に構成されている。そして、この筐体11に対するドレンパネル50の着脱によって、始端パイプ60により形成される第1経路60aと、中継管構成部37(受容パイプ71、ドレンホース73および終端パイプ75)により形成される第2経路37aとが接続・分離するように構成されている。具体的に、ドレンパネル50は、棚部19の上方位置(
図8(a)参照)から棚部19上に載置し(
図8(b)参照)、更に棚部19上で後方に向けてスライドさせる(
図9参照)ことで、ドレンパネル50が
図9の位置に保持されて筐体11に装着される。また、ドレンパネル50は、
図9の位置での保持(係止)を解除して
図8(b)の位置まで前方にスライドさせることにより、筐体11からの分離(
図8(a)に示す上方位置への移動)が許容されるようになっている。このように、ドレンパネル50を着脱できるようにすることで、ドレンパネル50を筐体11から適時に取り外して独立的に清掃やメンテナンスを行うことが可能な構成としている。以下、
図8(b)に示すドレンパネル50の位置を「装着待機位置」と称し、
図9に示すドレンパネル50の位置を「装着位置」と称する。
【0026】
(ドレンパネル50による排出経路Rの形成について)
ドレンパネル50における皿形成部52の底壁54のうち側端部に偏った位置(左端側)には、内部空間Sに受け容れた排水を流出させる流出口54aが形成されている(
図8参照)。また、皿形成部52の底壁54のうち流出口54aの形成位置から下方に延出するように、流出口54aから流出した排水を流下させる始端パイプ60(
図5(b)および
図8参照)が設けられている。始端パイプ60は、流出口54aの形成位置から垂下する垂下部61と、この垂下部61の下端から後方に下り傾斜するように屈曲する屈曲部63とによりL字状に形成されている。始端パイプ60は、剛性のある(非可撓性の)合成樹脂管であり、ドレンパネル50の内部空間Sと、外部からの排出ホースHとを繋ぐ排出経路Rのうち、上流側(以下「第1経路60a」という)を形成している。
【0027】
(中継管構成部37による排出経路Rの形成について)
次に、
図6を参照し、排出経路Rの下流側(以下「第2経路37a」という)を形成する中継管構成部37について説明する。中継管構成部37は、筐体11(ベース板31)の下面側に設けられ、前述したドレンパネル50に設けられた始端パイプ60と、外部の排出先に繋がる排出ホースHとの間を中継する部位である。この中継管構成部37の内部に形成される第2経路37aは、筐体11の下面側で後方に下り傾斜する管路であり、ドレンパネル50側(第1経路60a)から流入する排水を排出ホースHに向けて流下させる。
【0028】
中継管構成部37は1つの部材(パイプ)でも構成可能であるが、本実施例では、ドレンパネル50からの排水の流入を受ける管路形成部位(受容パイプ71)と、内部ドレンパン27からの排水の流入を受ける管路形成部位(終端パイプ75)とを別部材とし、中継管構成部37の設置(形成)を容易にしている。具体的には、受容パイプ71が前述したフロントパネル15の棚部19と一体に形成され、筐体11の下面側に配置されている。また、終端パイプ75が内部ドレンパン27と一体に形成されている。そして、中継管構成部37は、剛性のある(非可撓性の)受容パイプ71および終端パイプ75の間を柔軟な(可撓性の)ドレンホース73で接続する構成となっている。ここで、本実施例の中継管構成部37は、機械室11aの底部に設けられている内部ドレンパン27(
図6参照)からの排水(製氷機構21で使用した製氷水・除氷水や、製氷機構21により生じた結露水)を第2経路37aの途中箇所で受け容れる構成となっている。
【0029】
(ドレンパネル50の着脱に伴うタッチセンサ93に関する変更制御について)
次に、ドレンパネル50が筐体11から取り外された状態における不具合の発生を抑制するための、タッチセンサ93に関する制御内容について説明する。
【0030】
実施例に係る飲料用ディスペンサ10は、筐体11(カバー部16)の前面に設けられたタッチパネル92に対する放出操作(指等による接触または近接)応じて放出部25の放出動作が行われる構成の場合、タッチセンサ93(第4検出部93d)が高感度で機能すると、タッチパネル92に人体が近づいたり軽く触れたりするだけで放出部25から氷や飲料水が放出されてしまう可能性がある。ドレンパネル50は筐体11に対して着脱自在になっているので、例えば清掃作業を行う作業者が筐体11からドレンパネル50を取り外して清掃を行う際、その作業中の作業者の人体の一部をタッチパネル92が検出してしまうと、意図せず放出される氷や飲料水をドレンパネル50で受けることができず、筐体11における棚部19の上面や筐体11の周囲に氷や飲料水が散乱して水浸しになる虞がある。このため、筐体11に対してドレンパネル50が非装着状態になっている期間を前述した開閉センサ91による検出に基づいて判別し、当該期間中、タッチパネル92に対する放出操作を検出し難い状態とする。
【0031】
先ず、タッチセンサ93による検出について説明する。制御盤90は、タッチセンサ93(第4検出部93d)により検出される静電容量の変化度が、例えばレベル0からレベル255までの256段階のうちどの段階に該当するかを判別するように構成されている。そして、制御盤90は、放出部25による放出動作が行われていない時に生じ得るタッチセンサ93の静電容量の変化度(段階)よりも高段階の変化度を第1の閾値として設定しており、当該第1の閾値以上に静電容量が変化した場合にタッチパネル92(操作部92)に対する放出操作が開始されたと判定する。また制御盤90は、放出部25による放出動作が行われている時に生じ得るタッチセンサ93の静電容量の変化度(段階)よりも低段階の変化度を第2の閾値として設定しており、当該第2の閾値以下に静電容量が変化した場合にタッチパネル92(操作部92)に対する放出操作が終了されたと判定する。ここで、制御盤90は、放出操作に関する制御内容を、後述する開閉センサ91による検出に基づいて変更するようになっている。
【0032】
図7、
図8(a)、
図8(b)および
図9に示すように、筐体11の前面におけるドレンパネル50と対向する位置に、当該ドレンパネル50の装着・離脱を検出する開閉センサ91が設けられている。この開閉センサ91は、磁石の接近または接触による磁界の変化を検出する磁気センサである。また、
図5(b)、
図8(a)、
図8(b)および
図9に示すように、ドレンパネル50の背面には、開閉センサ91による磁界に変化を付与可能な磁石からなる被検出部100が設けられている。開閉センサ91は、
図4(b)に示すように、制御盤90と電気的に接続されている。そして、筐体11の棚部19にドレンパネル50を載置して装着待機位置から後方の装着位置に向けてスライドさせることで、オフであった開閉センサ91が被検出部100を検出してオンとなり、検出信号が制御盤90に入力される。反対に、ドレンパネル50を装着位置から装着待機位置に向けて前方にスライドさせることで、オンであった開閉センサ91が被検出部100を検出しなくなることでオフとなり、制御盤90に対する検出信号の入力が停止される。すなわち制御盤90は、開閉センサ91からの検出信号を入力していることに基づき、ドレンパネル50が筐体11に対する装着状態にあることを判別(検出)し、開閉センサ91からの検出信号を入力していないことに基づき、ドレンパネル50が筐体11に対する非装着状態にあることを判別(検出)するように構成されている。なお、開閉センサ91としては磁気センサ以外に、外力を受けて機械的に接点のオンオフが切り替わるマイクロスイッチ等を採用可能である。
【0033】
ここで、制御盤90は、ドレンパネル50が非装着状態となっている期間中において、タッチセンサ93(第4検出部93d)における静電容量の変化度についての前述した第1の閾値および第2の閾値を変更するように構成されている。なお、第1の閾値は、静電容量の変化度の段階(レベル0~レベル255)を示す値のうち、放出操作が開始されたか否かの判定基準となる値であり、第2の閾値は、静電容量の変化度の段階(レベル0~レベル255)を示す値のうち、放出操作が終了されたか否かの判定基準となる値である。制御盤90は第1の閾値を、ドレンパネル50が装着状態にある場合にレベル200として設定するのに対し、ドレンパネル50が非装着状態となっている期間にはレベル220に設定変更してタッチセンサ93の感度を下げ(所定の制御内容)、放出操作の開始条件が成立し難くなるように制御する。また制御盤90は第2の閾値を、ドレンパネル50が装着状態にある場合にレベル150として設定するのに対し、ドレンパネル50が非装着状態となっている期間にはレベル100に設定変更してタッチセンサ93の感度を上げ(所定の制御内容)、放出操作の終了条件が成立し易くなるように制御する。
【0034】
すなわち、ドレンパネル50が筐体11に装着されていない状態では、意図しない放出動作が開始され難く、また、意図しない放出動作が開始されたとしても、放出操作の終了を直ちに検出してなるべく早期に放出動作を終了させ得るようになっている。
【0035】
(ドレンパネル50の着脱に伴う製氷機構21からの排水に関する変更制御について)
次に、ドレンパネル50が筐体11から取り外された状態における不具合の発生を抑制するための、製氷機構21からの排水に関する制御内容について説明する。
【0036】
先ず、製氷機構21からの排水構造について説明する。タッチセンサ93による検出について説明する。
図10に示すように、本実施例の飲料用ディスペンサ10は、筐体11の内部(機械室11a)に製氷機構21やストッカ23等が収容されており、機械室11aの底部には内部ドレンパン27が設けられている。ここで、製氷機構21の下部からは内部排水管95が延出している。内部排水管95は、内部に管路が形成された管状体であり、その入口は製氷機構21の内部に連通していると共に、出口が下方の内部ドレンパン27に向いている。また、内部排水管95の途中箇所に、当該内部排水管95の管路を開閉する排水バルブ96が設けられている。
【0037】
そして、制御盤90は、ユーザーによる設定時刻等の予め定められたタイミングで、排水バルブ96を開放する排水制御を実行することにより、製氷機構21で使用した製氷水や除氷水を排水として処理するように構成されている。この排水制御により、製氷機構21で用いられた製氷水や除氷水は、排水として内部排水管95を流下し、内部ドレンパン27および終端パイプ75を介して排水ホースHへと排出する。
【0038】
ここで、ドレンパネル50が筐体11に対して着脱自在となっているので、例えば排水ホースHの下り勾配が充分でないことや排水ホースHを他の細いホースで延長していること等によって外部の排出先への効率的な排水ができない状態となっていると、ドレンパネル50が筐体11にしっかり装着されていないまま排水制御が実行された際、排水が逆流し、排出経路Rのうち筐体11側の部分(棚部19に開口する第2経路37a)の入口から排水が溢れ出てしまう虞がある。しかも、夜間等の人がいない時間帯に排水制御が実行されるように設定してあると、溢れ出た排水を拭き取る等の作業が長い間行われないことになり不衛生である。このため、筐体11に対してドレンパネル50が非装着状態になっている期間を判別し、当該期間中、ドレンパネル50の装着状態よりも製氷機構21からの単位時間当たりの排水量が少なくなるように制御盤90が制御を実行する。
【0039】
具体的に、制御盤90は、製氷機構21からの製氷水や除氷水の排水制御を実行する場合に、開閉センサ91の検出に基づいてドレンパネル50が筐体11に対する装着状態にあることを判別(検出)することに応じて、排水バルブ96を当該排水制御の開始から終了まで常に開放状態に維持する一方、ドレンパネル50が筐体11に対する非装着状態にあることを判別(検出)することに応じて、排水バルブ96を当該排水制御の開始から終了まで間欠的に開放状態とする(排水バルブ96の制御内容を変更する)。すなわち、制御盤90は、ドレンパネル50の装着状態において製氷機構21の排水制御を行う場合よりも、ドレンパネル50の非装着状態において製氷機構21の排水制御を行う場合の方が排水バルブ96の開放時間が短く、単位時間当たりの排水量が少なくなるように制御する。ここで、制御盤90は、ドレンパン50の非装着状態での排水制御において、排水バルブ96の3秒間の開放と10秒間の閉成とを交互に繰り返すように排水バルブ96を駆動する。すなわち、開放状態よりも閉成状態の時間を長くすることで排水をより確実に処理できるようにし、ドレンパネル50の非装着状態であっても排水が溢れる不具合を抑制することが可能となっている。
【0040】
〔実施例の作用効果〕
実施例に係る飲料用ディスペンサ10に関する作用効果を以下に挙げる。
【0041】
実施例に係る飲料用ディスペンサ10は、ドレンパネル50を筐体11側に対して着脱できるので、ドレンパネル50の清掃やメンテナンスを行う際には当該ドレンパネル50を筐体11から取り外した状態で作業を行うことができる。しかしながら、ドレンパネル50の非装着状態においては、正常な排水処理を行うことができない。これに対し、筐体11に対するドレンパネル50の装着または離脱を検出する開閉センサ91を備え、当該開閉センサ91の検出に基づいて所定の制御内容を変更する。すなわち、筐体11に対してドレンパネル50が装着されているか否かを判別して、ドレンパネル50の非装着状態での制御内容を該ドレンパネル50の装着状態での制御内容と異ならせることで、ドレンパネル50の非装着状態で生じ得る不具合の発生を抑制することができる。
【0042】
具体的に、実施例に係る飲料用ディスペンサ10は、筐体11の前面に設けられて放出部25に放出動作を行わせる操作(放出操作)の対象となるタッチパネル92(放出操作部44)に対する操作がタッチセンサ93で検出される。このため、例えば清掃作業を行う作業者等の人体の一部が意図せずタッチセンサ93に接触または近接して、放出部25から氷や飲料水(放出対象)が放出されてしまう虞がある。この時、ドレンパネル50が非装着状態になっていると、放出された氷や飲料水をドレンパネル50で受け取ることができず、筐体11における棚部19の上面や筐体11の周囲が水浸しになる虞がある。これに対し、制御盤90は、ドレンパネル50の非装着状態を開閉センサ91の検出に基づいて判別した場合に、ドレンパネル50の装着状態よりも放出動作の開始条件が成立し難くなるようにタッチセンサ93の感度を設定する。これにより、ドレンパネル50の非装着状態でタッチパネル92に人体が意図せず接触または近接して放出部25による放出動作が行われてしまう不具合の発生を抑制することができる。
【0043】
また、実施例に係る飲料用ディスペンサ10は、筐体11の内部に収容された製氷機構21からの排水を誘導する内部排水管95に排水バルブ96を備えており、この排水バルブ96を制御盤90が開放することで、製氷機構21からの排水が、内部ドレンパン27、終端パイプ75、排水ホースHの順に流下して外部の排出先へと誘導される。ここで、ドレンパネル50が筐体11にしっかり装着されていない状態では、排水ホースHの下り勾配が充分でなかったり、排水ホースHを他の細いホースで延長していたりして外部の排出先への効率的な排水ができない場合に、筐体11の棚部19(受容パイプ71)における第2経路37aの入口から排水が溢れ出てしまう虞がある。これに対し、制御盤90が開閉センサ91の検出に基づいてドレンパネル50の非装着状態を判別した場合に、該ドレンパネル50の装着状態よりも製氷機構21からの単位時間当たりの排水量が少なくなるように排水バルブ96を制御する。従って、ドレンパネル50の非装着状態であっても、排出経路R(第2経路37a)から排水が溢れ出る不具合を抑制できる。
【0044】
〔変更例〕
本願は前述した実施例の構成に限定されるものではなく、例えば以下の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例では、筐体の前面に設けられるタッチパネルに対する操作に応じて放出部から複数種類の放出対象(氷および飲料水)を放出し得るように構成したが、氷、飲料水等のうち1種類の放出対象のみを放出し得るようにしてもよい。
(2) 実施例では、制御手段(制御盤)が、ドレンパン(ドレンパネル)の装着状態よりも非装着状態の方が放出操作の開始条件が成立し難くなるように第1の閾値を変更してタッチセンサの感度を下げると共に、ドレンパンの装着状態よりも非装着状態の方が放出操作の終了条件が成立し易くなるように第2の閾値を変更してタッチセンサの感度を上げるように構成したが、第1・第2の閾値のうち第1の閾値のみを変更するようにしてもよい。
(3) 実施例では、着脱検出手段(開閉センサ)の検出に基づいてドレンパン(ドレンパネル)の装着状態を判別した場合に、制御手段(制御盤)が排水バルブを排水制御の開始から終了まで常に開放状態に維持するように構成したが、ドレンパンの非装着状態よりも製氷機構からの排水量が多くなる範囲で排水バルブを間欠的に開放する制御を行う構成としてもよい。
(4) 実施例では、着脱検出手段(開閉センサ)の検出に基づいてドレンパン(ドレンパネル)の非装着状態を判別した場合に、制御手段(制御盤)が排水バルブを排水制御の開始から終了まで間欠的に開放状態とするように構成したが、排水バルブを閉成状態に維持して製氷機構からの排水を禁止するように構成してもよい。
(5) 実施例では、ドレンパネルの底壁から下方に延出するように始端パイプを形成し、この始端パイプに、筐体側の中継管構成部の第2経路に連通する第1経路を形成したが、始端パイプを備えず、ドレンパネルの流出口から第2経路の上流部(受容パイプ内)へと排水を直接流下させる構成としてもよい。なおこの場合には、ドレンパネルの流出口のみが第1経路として機能する。
(6) 実施例では、筐体側の中継管構成部を、受容パイプ、ドレンホースおよび終端パイプにより構成したが、ドレンホースを用いずに受容パイプおよび終端パイプを直接接続してもよいし、中継管構成部を1つのパイプのみで構成してもよい。