(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032308
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】刺繍ユニット着脱装置及びミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 73/04 20060101AFI20230302BHJP
D05B 39/00 20060101ALI20230302BHJP
D05C 13/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
D05B73/04
D05B39/00
D05C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138356
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】尾家 武志
(72)【発明者】
【氏名】沢田 拓也
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150CB04
3B150CE02
3B150CE22
3B150CE25
3B150CE26
3B150CE27
3B150EB03
3B150EB09
3B150EB13
3B150GA03
3B150GA26
(57)【要約】
【課題】刺繍ユニットがミシンから脱落することを防止でき、また刺繍ユニットがミシンに対して捩られるようなモーメント荷重が作用する場合にも、刺繍ユニットとミシンとを接続する部位の破損を防止することが可能な刺繍ユニット着脱装置を提供する。
【解決手段】刺繍ユニット着脱装置1は、装着方向への刺繍ユニット2の移動に連動して作動し、ミシン3に対する刺繍ユニット2の離脱方向への移動を抑制するロック機構と、凹部25、26、27と凸部19、23、28とが係合することでミシン3と刺繍ユニット2との上下方向の相対移動を抑制する支持機構と、を備え、支持機構は、3つ以上設けられるとともに一平面を形成するように配置されることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺繍ユニットとミシンとを着脱可能にする刺繍ユニット着脱装置であって、
装着方向への前記刺繍ユニットの移動に連動して作動し、前記ミシンに対する前記刺繍ユニットの離脱方向への移動を抑制するロック機構と、
前記ミシンと前記刺繍ユニットの何れか一方に設けられる凹部と、前記ミシンと前記刺繍ユニットの何れか他方に設けられる凸部と、を備え、前記凹部と前記凸部とが係合することで前記ミシンと前記刺繍ユニットとの上下方向の相対移動を抑制する支持機構と、
を備え、
前記支持機構は、3つ以上設けられるとともに一平面を形成するように配置されることを特徴とする刺繍ユニット着脱装置。
【請求項2】
前記凸部を内部に収納可能な凸部出没機構を更に備え、
前記装着方向へ前記刺繍ユニットを移動させることで前記凸部が前記凹部側へ突出することを特徴とする請求項1に記載の刺繍ユニット着脱装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、
前記刺繍ユニットに対して前記離脱方向に移動可能なロック解除レバーと、
前記ミシンに設けられるミシン側ロック部と、
前記刺繍ユニットに設けられる刺繍ユニット側ロック部とを備え、
前記刺繍ユニット側ロック部は、前記ミシン側ロック部に係合する一方、前記ロック解除レバーの前記離脱方向への移動に連動して作動し、前記ミシン側ロック部との係合を解除する請求項1又は2に記載の刺繍ユニット着脱装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の刺繍ユニット着脱装置と刺繍ユニットとを備えるミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍機能を持つミシンと刺繍ユニットとを着脱可能にするための刺繍ユニット着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍枠をX軸方向及びY軸方向に駆動制御する刺繍ユニットを装着することにより、自動刺繍縫いを行うことができるミシンが知られている。この種のミシンでは、布等の縫製対象物を刺繍枠に固定し、ミシンの縫製動作と連動させて刺繍枠をX軸方向及びY軸方向に駆動制御することにより、縫製対象物に刺繍を施すことができる。刺繍ユニットは、刺繍縫いを行わない場合はミシンから取り外すことが可能であって、そのための着脱装置が種々提案されている。
【0003】
このような刺繍ユニット着脱装置として特許文献1には、ミシン底部が作業台から離れると脱落防止用のロックが作動する着脱装置が示されている。特許文献1に示されたミシンは、これを持ち上げる際は刺繍ユニットを取り外すことが正規の取り扱い方法であるが、この着脱装置によれば、使用者が刺繍ユニットを取り付けたままミシンを持ち上げてしまった場合でも、上記のロックによって刺繍ユニットがミシンから脱落するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで刺繍ユニットには、刺繍枠をX軸方向及びY軸方向に駆動制御するためのモータが設けられている。またモータは、刺繍ユニットに設けたコネクタ等によってミシンに対して電気的に接続されている。ここで特許文献1の着脱装置によれば、上述したロックによって、持ち上げられたミシンから刺繍ユニットが抜け落ちることは防止できるものの、このロックは刺繍ユニットを点支持又は線支持するものであって、刺繍ユニットがミシンに対して捩られるようなモーメント荷重への抗力は期待することができない。このため、このようなモーメント荷重が刺繍ユニットに加わると、その力はコネクタにも付加され、その結果コネクタが破損するおそれがあった。
【0006】
このような問題点に鑑み、本発明は、刺繍ユニットを取り付けたままミシンが持ち上げられることがあっても刺繍ユニットがミシンから脱落することを防止でき、また刺繍ユニットがミシンに対して捩られるようなモーメント荷重が作用する場合にも、コネクタ等の刺繍ユニットとミシンとを接続する部位の破損を防止することが可能な刺繍ユニット着脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、刺繍ユニットとミシンとを着脱可能にする刺繍ユニット着脱装置であって、装着方向への前記刺繍ユニットの移動に連動して作動し、前記ミシンに対する前記刺繍ユニットの離脱方向への移動を抑制するロック機構と、前記ミシンと前記刺繍ユニットの何れか一方に設けられる凹部と、前記ミシンと前記刺繍ユニットの何れか他方に設けられる凸部と、を備え、前記凹部と前記凸部とが係合することで前記ミシンと前記刺繍ユニットとの上下方向の相対移動を抑制する支持機構と、を備え、前記支持機構は、3つ以上設けられるとともに一平面を形成するように配置されることを特徴とする。
【0008】
このような刺繍ユニット着脱装置は、前記凸部を内部に収納可能な凸部出没機構を更に備え、前記装着方向へ前記刺繍ユニットを移動させることで前記凸部が前記凹部側へ突出することが好ましい。
【0009】
またこのような刺繍ユニット着脱装置において、前記ロック機構は、前記刺繍ユニットに対して前記離脱方向に移動可能なロック解除レバーと、前記ミシンに設けられるミシン側ロック部と、前記刺繍ユニットに設けられる刺繍ユニット側ロック部とを備え、前記刺繍ユニット側ロック部は、前記ミシン側ロック部に係合する一方、前記ロック解除レバーの前記離脱方向への移動に連動して作動し、前記ミシン側ロック部との係合を解除することが好ましい。
【0010】
また本発明は、上述した何れかの刺繍ユニット着脱装置と刺繍ユニットとを備えるミシンでもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の刺繍ユニット着脱装置によれば、刺繍ユニットを取り付けたままミシンが持ち上げられることがあっても、支持機構とロック機構によって刺繍ユニットの脱落を防止することができる。また支持機構は、3つ以上設けられるとともに一平面を形成するように配置されるため、刺繍ユニットはミシンに対し、ロール方向、ピッチ方向、ヨー方向にも強固に固定される。このため、刺繍ユニットを取り付けた状態でミシンのみが持ち上げられる場合でも、上記のコネクタのような刺繍ユニットとミシンとを接続する部位の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る刺繍ユニット着脱装置の一実施形態を備える刺繍ユニットとミシンの斜視図である。
【
図2】
図1に示したミシンから刺繍ユニットを離脱させた状態での斜視図である。
【
図3】
図1に示した刺繍ユニット着脱装置の部分断面図である。
【
図4】
図1に示した刺繍ユニット着脱装置の分解図である。
【
図5】
図1に示した装着装置とミシンとの着脱動作に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る刺繍ユニット着脱装置の一実施形態、及びこの刺繍ユニット着脱装置を備える刺繍ユニットとミシンの一実施形態について説明する。なお本明細書における右、左、前、後、上、下の向きは、本実施形態のミシン3を作業台に設置した状態において、ミシン3を使用する使用者から見た向きである。また以下の説明におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とは、図面に示したように、前後方向、左右方向、上下方向である。またロール方向、ピッチ方向、ヨー方向とは、図面に示したように、Y軸を周回する方向、X軸を周回する方向、Z軸を周回する方向である。
【0014】
まず、
図1、
図2を参照しながら本実施形態の刺繍ユニット着脱装置1を備える刺繍ユニット2とミシン3の概要について説明する。刺繍ユニット2は、刺繍ユニット着脱装置1によってミシン3に着脱可能である。ここで
図1は、ミシン3に対して刺繍ユニット2を装着した状態を示した図であり、
図2は、ミシン3から刺繍ユニット2を離脱させた状態を示した図である。このように本実施形態では、刺繍ユニット2をミシン3に装着する際に刺繍ユニット2はミシン3に対して左から右に向かって動かされ、刺繍ユニット2をミシン3から離脱させる際に刺繍ユニット2はミシン3に対して右から左に向かって動かされる。なお、ミシン3に対する刺繍ユニット2の着脱動作に関して「装着方向」と「離脱方向」を使って説明することがあるが、「装着方向」とは左から右に向かう方向であり、「離脱方向」とは右から左に向かう方向である。
【0015】
本実施形態の刺繍ユニット2は、刺繍ユニット2に内蔵された不図示のモータによって、YX駆動アーム4を介してキャリッジ5をX軸方向及びY軸方向に移動させることができる。またこのモータは、
図2に示したコネクタユニット6によってミシン3と電気的に接続される。そして、
図1に示すように刺繍ユニット2をミシン3に装着し、また布等の縫製対象物を刺繍枠7により固定するとともに刺繍枠7をキャリッジ5に装着した状態で刺繍作業を実行すると、ミシン3の縫製動作と連動して刺繍枠7がX軸方向及びY軸方向に駆動制御され、縫製対象物に刺繍が施される。
【0016】
次に、
図3、
図4を参照しながら刺繍ユニット着脱装置1について詳細に説明する。なお
図3は、刺繍ユニット着脱装置1の内部を示すために刺繍ユニット2とミシン3をXY平面で切断した部分断面図(切断する際のXY平面の位置(高さ)は
図2に示した線Aでの高さを基本とするが、説明の都合上、適宜変更している)である。また
図4は、
図3をもとにした分解図である。
【0017】
本実施形態の刺繍ユニット着脱装置1は、上述したコネクタユニット6を備える。コネクタユニット6は、本実施形態では刺繍ユニット底部8に設けられるメスコネクタ9と、ミシン底部10に設けられるオスコネクタ11で構成される。なおメスコネクタ9は、上述したキャリッジ5を移動させる不図示のモータと電気的に接続され、またオスコネクタ11は、ミシン3の制御部と電気的に接続される。図示したように刺繍ユニット底部8には、ミシン底部10が収まる凹状部12が設けられ、ミシン底部10の左端部には開口部13が設けられている。そして装着方向に刺繍ユニット2を移動させることにより、ミシン底部10は凹状部12に内側に収まり、メスコネクタ9は開口部13を挿通してオスコネクタ11と電気的に接続される。
【0018】
また刺繍ユニット着脱装置1は、
図4に示すように刺繍ユニット底部8に設けられ、上方に向けて突出する円柱状のロック爪回転軸14を備える。ロック爪回転軸14には、ロック爪15が回動可能に取り付けられる。本実施形態のロック爪15は、ロック爪回転軸14に挿通される円形状の穴を有するとともに、一端部には前方から後方に向けて突出する爪状部を有し、他端部には上方に向けて突出する突起を有する。なおロック爪15は、不図示のばねによって、平面視で時計回り(
図3に示した矢印の向き)に付勢される。また本実施形態のロック爪15は、
図3に示すようにメスコネクタ9の左側において、コネクタユニット6に内蔵された状態で設けられる。
【0019】
更に刺繍ユニット着脱装置1は、一端部がロック爪15の突起に係合するロック解除レバー16を備え、ロック解除レバー16は刺繍ユニット2に対して左右方向に移動可能である。本実施形態においては、ロック解除レバー16を右から左へ移動させると、この移動に連動してロック爪15が平面視で反時計回りに回動する。更に刺繍ユニット着脱装置1は、ロック受け部17を備える。本実施形態のロック受け部17は、ミシン3のミシン底部10に設けられ、ロック爪15が平面視で時計回りに回動することにより、ロック爪15に係合する。
【0020】
なお上述したロック爪回転軸14、ロック爪15、ロック解除レバー16、ロック受け部17は、本明細書の「ロック機構」に相当する。またロック爪15は、本明細書の「刺繍ユニット側ロック部」に相当し、ロック受け部17は、本明細書の「ミシン側ロック部」に相当する。
【0021】
更に刺繍ユニット着脱装置1は、ミシン底部10の前側に設けられる第一リンクベース18を備える。本実施形態の第一リンクベース18は、Y軸方向に沿う視点でコ字状をなしていて、その前部と後部に円形の貫通穴を備える。また刺繍ユニット着脱装置1は、円柱状をなしていて第一リンクベース18の貫通穴に挿通され、前後方向に移動可能な第一支えピン19と、コイル状の第一圧縮ばね20と、第一支えピン19に取り付けられ、第一リンクベース18に対して第一支えピン19と第一圧縮ばね20を抜け止めするEリング21とを備える。本実施形態の第一支えピン19は、第一リンクベース18に取り付けられた際に第一圧縮ばね20によって前方から後方に向かって付勢されていて、付勢された状態において第一支えピン19の先端部は、ミシン底部10の前側端部に揃う位置にある、又はミシン底部10の前側端部よりも後方に位置する。すなわち第一支えピン19は、第一圧縮ばね20によって付勢されてミシン底部10の内側に収納される。
【0022】
刺繍ユニット着脱装置1は、第一リンクベース18、第一支えピン19、第一圧縮ばね20と同様の形状の第二リンクベース22、第二支えピン23、第二圧縮ばね24を備える。図示したように第二リンクベース22は、ミシン底部10の後側に設けられ、第二支えピン23は、第二リンクベース22に対して前後方向に移動可能に支持される。なお本実施形態において、第二リンクベース22に支持された第二支えピン23の中心軸は、第一リンクベース18に支持された第一支えピン19の中心軸上に位置する。また第二支えピン23は、Eリング21によって第二リンクベース22に取り付けられた状態において、第二圧縮ばね24によって後方から前方に向かって付勢されていて、付勢された状態において第二支えピン23の先端部は、ミシン底部10の後側端部に揃う位置にある、又はミシン底部10の後側端部よりも前方に位置する。すなわち第二支えピン23は、第二圧縮ばね24によって付勢されてミシン底部10の内側に収納される。
【0023】
なお、第一圧縮ばね20と第二圧縮ばね24を含めて第一支えピン19と第二支えピン23をミシン底部10の内側に収納する上述した機構は、本明細書の「凸部出没機構」に相当する。
【0024】
また刺繍ユニット着脱装置1は、ミシン底部10の左側面に設けられる円形の穴(第三支え穴25)を備える。なお第三支え穴25における中心軸の上下方向の位置(高さ)は、第一支えピン19と第二支えピン23の中心軸高さと同一であって、
図2に示した線Aでの高さである。
【0025】
このような第一支えピン19、第二支えピン23、及び第三支え穴25に係合するものとして、本実施形態の刺繍ユニット着脱装置1は、刺繍ユニット底部8に設けられる第一支え穴26、第二支え穴27、第三支えピン28を備える。第一支え穴26は、
図3に示すように刺繍ユニット底部8における凹状部12の前側端部に設けられ、第二支え穴27は、凹状部12の後側端部に設けられる。なお第一支え穴26と第二支え穴27は、上下方向の隙間は第一支えピン19と第二支えピン23の外径と略同一である一方、左右方向の隙間は第一支えピン19と第二支えピン23の外径よりも大きくなっていて、長穴形状(トラック形状)である。また第三支えピン28は、円柱状をなしていて凹状部12の左側端部から右側に突出するものである。なお第三支えピン28の外径は、第三支え穴25の内径と略同一である。また第三支えピン28の先端部は、テーパ状になるように形作られている。
【0026】
なお詳細については後述するが、ミシン3に対して刺繍ユニット2を装着方向に移動させる(左から右に向かって移動させる)と、第一支えピン19は第一支え穴26に挿入され、第二支えピン23は第二支え穴27に挿入され、第三支えピン28は第三支え穴25に挿入される。すなわちミシン3に装着された刺繍ユニット2は、これら3つのピンと支え穴によって、ミシン3に対して上下方向の相対移動が抑制された(上下方向に殆ど移動しない)状態になる。また刺繍ユニット2は、第三支えピン28と第三支え穴25によって、ミシン3に対して前後方向の相対移動も抑制された状態になる。更に第三支えピン28が第三支え穴25に挿入されてこれに係合する係合位置は、第一支えピン19が第一支え穴26に係合する係合位置と第二支えピン23が第二支え穴27に係合する係合位置とに対して左側にずれている(換言すると、第一支えピン19の係合位置と第二支えピン23の係合位置を結ぶ直線に対して、第三支えピン28の係合位置はこの直線からずれている)。すなわち、これら3つの係合位置は、一直線上に並ぶ配置ではなく、一平面を形成するように配置されている。
【0027】
なお、第一支えピン19と第一支え穴26、第二支えピン23と第二支え穴27、及び第三支えピン28と第三支え穴25は、本明細書の「支持機構」に相当する。また第一支えピン19、第二支えピン23、及び第三支えピン28は、本明細書の「凸部」に相当し、第一支え穴26、第二支え穴27、及び第三支え穴25は、本明細書の「凹部」に相当する。
【0028】
また
図4に示すように刺繍ユニット着脱装置1は、ミシン底部10から上方に向けて突出する円柱状の第一リンク回転軸29と、第二リンク回転軸30を備える。第一リンク回転軸29には、第一リンク31が回動可能に取り付けられ、第二リンク回転軸30には、第二リンク32が回動可能に取り付けられる。本実施形態の第一リンク31は、図示したように板状であって、第一リンク回転軸29に挿通される円形状の穴を有するとともに、一端部には第一支えピン19から突出する突起が挿入される穴を有し、他端部には第二リンク32と係合する穴を有する。また第一リンク31の他端部には、下方に向けて折り曲げるようにして形成した受け部33が設けられている。なお受け部33は、
図3に示すように第一リンク31を第二リンク回転軸30に取り付けた状態において、オスコネクタ11の後側に位置してオスコネクタ11と隣り合うように設けられる。そして本実施形態の第二リンク32は、図示したように板状であって、第二リンク回転軸30に挿通される円形状の穴を有するとともに、一端部には第二支えピン23から突出する突起が挿入される穴を有し、他端部には第一リンク31の他端部に設けた穴に挿入されて第一リンク31と係合する突起を有する。
【0029】
このような受け部33に対応するものとして、本実施形態の刺繍ユニット着脱装置1は、刺繍ユニット底部8に設けられる押圧部34を備える。押圧部34は、メスコネクタ9の後側に位置してメスコネクタ9と隣り合うように設けられる。
【0030】
次に、上述した刺繍ユニット着脱装置1による刺繍ユニット2とミシン3との着脱動作について、
図2~
図5を参照しながら説明する。
【0031】
まず刺繍ユニット2がミシン3から取り外された状態において、
図3に示すように第一支えピン19と第二支えピン23は、第一圧縮ばね20と第二圧縮ばね24によって付勢されてミシン底部10の内側に収納されている。
【0032】
そして使用者が、凹状部12に対してミシン底部10が入り込む位置で刺繍ユニット2を装着方向に移動させる(左から右に向かって移動させる)と、
図5(a)に示すようにメスコネクタ9は開口部13に挿入され、またロック受け部17に押し当たったロック爪15は、不図示のばねによる付勢力に抗して、平面視で反時計回りに回動する。
【0033】
更に使用者が刺繍ユニット2を装着方向に移動させると、第三支えピン28が第三支え穴25に挿入される。上述したように第三支えピン28の先端部はテーパ状であるため、Y軸方向に対してやや傾いて刺繍ユニット2を移動させることがあっても、第三支えピン28の先端部を第三支え穴25に挿入させることができる。すなわち第三支えピン28の先端部は、刺繍ユニット2を装着方向に移動させる際にミシン3に対する位置決めガイドとして機能する。
【0034】
そして第三支えピン28が第三支え穴25に完全に挿入される程度まで刺繍ユニット2を装着方向に移動させると、不図示のばねによって付勢されているロック爪15は、
図5(b)に示すように平面視で時計回りに回転してロック受け部17に係合する。またこの状態においては、メスコネクタ9にオスコネクタ11が挿入されて両者は電気的に接続される。更にこの状態においては、押圧部34が受け部33に押し当たり、これにより第一リンク31と第二リンク32が回動して、第一支えピン19と第二支えピン23は、ミシン底部10から外側に出没する。なお、第一支え穴26と第二支え穴27は、上下方向の隙間に対して左右方向の隙間が長い長穴形状であるため、刺繍ユニット2を装着方向に移動させる際に第一支えピン19と第二支えピン23が徐々に出没する場合でも、第一支えピン19と第二支えピン23はスムーズに第一支え穴26と第二支え穴27に挿入される。また第一支え穴26と第二支え穴27が長穴形状であるため、第一支えピン19と第二支えピン23を支持する第一リンクベース18と第二リンクベース22の位置がミシン底部10に対して左右方向に多少ずれていても、第一支えピン19と第二支えピン23は確実に第一支え穴26と第二支え穴27に挿入される。
【0035】
このように刺繍ユニット2を最後まで装着方向に移動させると、
図5(b)に示すようにロック爪15がロック受け部17に係合するため、ミシン3に対する刺繍ユニット2の左側への相対移動が抑制される。またこの状態において、第一支えピン19は第一支え穴26に係合し、第二支えピン23は第二支え穴27に係合し、第三支えピン28は第三支え穴25に係合する。すなわち刺繍ユニット2は、上述したようにミシン3に対して上下方向及び前後方向の相対移動が抑制された状態になる。従って、この状態でミシン3のみが持ち上げられる場合でも、刺繍ユニット2がミシン3から脱落することを防止することができる。またこれら3つのピンと3つの穴が係合する係合位置は、上述したように一平面を形成するように配置されているため、刺繍ユニット2は、ロール方向、ピッチ方向、ヨー方向にも強固に固定される。従って、この状態でミシン3のみが持ち上げられる場合でも、メスコネクタ9とオスコネクタ11に対して過大なモーメント荷重が加わることがないため、メスコネクタ9とオスコネクタ11の破損を防止することができる。
【0036】
ミシン3に装着した刺繍ユニット2を取り外すにあたっては、
図3に示したロック解除レバー16を左側に引っ張る動作を行う。これにより、ロック解除レバー16に連結するロック爪15が平面視で反時計回りに回動し、ロック爪15とロック受け部17との係合が解除されるため、刺繍ユニット2はミシン3に対して左側に移動できる状態になる。なお、使用者がロック解除レバー16を左側に引っ張ると、このロック解除レバー16を介して刺繍ユニット2も左側に引っ張られるため、ロック爪15とロック受け部17との係合解除にあわせて刺繍ユニット2が左側に移動する。これにより第三支えピン28は、第三支え穴25から抜去される。また刺繍ユニット2が左側に移動することによって押圧部34が受け部33から離反し、これにより第一リンク31と第二リンク32が回動して、第一支えピン19は第一支え穴26から抜去され、第二支えピン23は第二支え穴27から抜去される。従って、刺繍ユニット2をミシン3から取り外すことができる。
【0037】
以上、本発明を具現化した一実施形態について例示したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0038】
例えば上述した実施形態では、ミシン3に第一支えピン19、第二支えピン23、及び第三支え穴25を設け、刺繍ユニット2に第一支え穴26、第二支え穴27、及び第三支えピン28を設けたが、ピンと支え穴の配置は逆であってもよい。またピンと支え穴の数は、4つ以上でもよい。そして第一支えピン19と第二支えピン23を刺繍ユニット2に設ける場合、上述した凸部出没機構は刺繍ユニット2に設けてもよい。また、支持機構は上述したピン形状となるものに限られず、ブロックや板といった部材により構成してもよい。
【0039】
また上述した実施形態において、第一支えピン19、第二支えピン23、及び第三支えピン28は、何れも中心軸が同じ高さ(線Aの高さ)になるように設けられていたが、高さはそれぞれ異なっていてもよい。
【0040】
またロック爪15は、上述した実施形態ではコネクタユニット6に内蔵されたものであったが、コネクタユニット6の近傍に単独で設けられていてもよいし、第三支えピン28の内部に設けられていてもよい。またロック爪15をミシン3に設け、ロック受け部17を刺繍ユニット2に設けてもよい。そしてこの場合においては、ロック解除レバー16を動作させることによってロック受け部17がロック爪15から離隔し、これによりロック爪15とロック受け部17との係合が解除されるように構成してもよい。
【0041】
また第一支え穴26と第二支え穴27を長穴形状にすることによって、上述したように第一支えピン19と第二支えピン23が徐々に出没する場合にも有利に作用するが、第一支えピン19と第二支えピン23が出没するタイミングを適宜調整することにより、第一支え穴26と第二支え穴27を丸穴形状にすることも可能である。
【0042】
また第一支え穴26と第二支え穴27は、刺繍ユニット2を左右方向に切り欠く溝であってもよい。また第一支え穴26と第二支え穴27が溝である場合、第一支えピン19と第二支えピン23がミシン底部10の外側へ常に突出する(すなわち上述した凸部出没機構は廃止する)ように構成してもよい。
【0043】
またミシン3に対して刺繍ユニット2を着脱する方向は、左右方向に限られず前後方向であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:刺繍ユニット着脱装置
2:刺繍ユニット
3:ミシン
14:ロック爪回転軸(ロック機構)
15:ロック爪(ロック機構、刺繍ユニット側ロック部)
16:ロック解除レバー(ロック機構)
17:ロック受け部(ロック機構、ミシン側ロック部)
19:第一支えピン(支持機構、凸部)
20:第一圧縮ばね(凸部出没機構)
23:第二支えピン(支持機構、凸部)
24:第二圧縮ばね(凸部出没機構)
25:第三支え穴(支持機構、凹部)
26:第一支え穴(支持機構、凹部)
27:第二支え穴(支持機構、凹部)
28:第三支えピン(支持機構、凸部)