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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032313
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】建設物の施工管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230302BHJP
   G16Y 10/30 20200101ALI20230302BHJP
【FI】
G06Q50/08
G16Y10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138362
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(71)【出願人】
【識別番号】397045758
【氏名又は名称】株式会社ビーイング
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】平井 崇
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 善一
(72)【発明者】
【氏名】堀川 和利
(72)【発明者】
【氏名】穴久保 剛
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】予算の執行状況を容易に把握して、効率良く施工できるよう工程を調整可能とする建設物の施工管理装置を提供する。
【解決手段】建設物30の3次元設計モデルの設計データと、建設物30を建設する際の工程データと、積算データとから、建設物30の施工状況をシミュレートするシミュレート部15を含んで構成されている。シミュレート部15は、建設物30の設計データと工程データとを関連付けして、建設物30の施工状況が画面上に明示されるように紐付けすると共に、シミュレーション表示部17により施工状況を表示させる。シミュレーション表示部17は、工程積算データに基づいて、建設物30の施工状況をシミュレート表示すると共に、施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理装置であって、
3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の積算データとから、建設物の施工状況をシミュレートするシミュレート部を含んで構成されており、
該シミュレート部は、
建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付け部と、
建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示部と、を備えており、
前記シミュレーション表示部は、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示できるようになっていると共に、建設物の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示できるようになっており、シミュレート表示された建設物の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、前記工程データの見直しを行えるようにする建設物の施工管理装置。
【請求項2】
前記設計データと前記工程データと前記積算データの全部またはいずれかを取得するデータ取得部を、さらに備えている請求項1記載の建設物の施工管理装置。
【請求項3】
前記積算データを前記工程データに関連付けして工程積算データを作成する工程積算データ作成部を、さらに備えている請求項1又は2記載の建設物の施工管理装置。
【請求項4】
前記積算出来高情報は、施工部位毎に分割された各々の小ブロックを建設物の所定の部位として、各々の小ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合により、前記シミュレーション表示部によって画面上にシミュレート表示されるようになっている請求項1~3のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項5】
前記小ブロックを構成する施工部位は、鉄筋コンクリート工により形成されるコンクリート躯体となっており、該鉄筋コンクリート工によるコンクリート躯体の積算出来高は、材料費としてコンクリート及び鉄筋の費用を、仮設費用として足場工、型枠工、及び支保工の費用を、人件費として人工の費用を含んだものとなっている請求項4記載の建設物の施工管理装置。
【請求項6】
前記積算出来高情報は、施工単位毎に分割された各々の中ブロックを建設物の所定の部位として、各々の中ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合により、前記シミュレーション表示部によって画面上にシミュレート表示されるようになっている請求項1~3のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項7】
前記積算出来高情報は、工区分けされた1工区全体を複数の大ブロックに分割し、分割された各々の大ブロックを建設物の所定の部位として、各々の大ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合により、前記シミュレーション表示部によって画面上にシミュレート表示されるようになっている請求項1~3のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項8】
前記大ブロックは、1年毎に施工される施工領域として分割されている請求項7記載の建設物の施工管理装置。
【請求項9】
前記積算出来高情報は、前記シミュレーション表示部によって、円グラフとして画面上にシミュレート表示されるようになっている請求項1~8のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項10】
3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理方法であって、
3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の積算データとから、建設物の施工状況をシミュレートするシミュレートステップを含み、
該シミュレートステップにおいて、
建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付けステップと、
建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示ステップと、をさらに含み、
前記シミュレーション表示ステップにおいて、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示すると共に、建設物の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示し、シミュレート表示された建設物の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、前記工程データの見直しを行えるようにする建設物の施工管理方法。
【請求項11】
前記設計データと前記工程データと前記積算データの全部またはいずれかを取得するデータ取得ステップを、さらに含んでいる請求項10記載の建設物の施工管理方法。
【請求項12】
前記積算データを前記工程データに関連付けして工程積算データを作成する工程積算データ作成ステップを、さらに含んでいる請求項10又は11記載の建設物の施工管理方法。
【請求項13】
3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理プログラムであって、
3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の積算データとから、建設物の施工状況をシミュレートするシミュレートステップをコンピュータに実行させ、
該シミュレートステップにおいて、建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付けステップと、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示ステップと、をさらにコンピュータに実行させ、
前記シミュレーション表示ステップにおいて、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示すると共に、建設物の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示し、シミュレート表示された建設物の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、前記工程データの見直しを行えるようにする建設物の施工管理プログラム。
【請求項14】
前記設計データと前記工程データと前記積算データの全部またはいずれかを取得するデータ取得ステップを、さらに実行させる請求項13記載の建設物の施工管理プログラム。
【請求項15】
前記積算データを前記工程データに関連付けして工程積算データを作成する工程積算データ作成ステップを、さらに実行させる請求項13又は14記載の建設物の施工管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設物の施工管理装置に関し、特に、三次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理装置、建設物の施工管理方法、及び建設物の施工管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば橋梁、トンネル、ダム、土工、河川等の土木公共工事の分野では、各種の建設物を建設する際に、2次元図面から3次元モデルへの移行による業務変革や、或いは初期の工程(フロント)において負荷をかけて事前に集中的に検討し、後工程で生じそうな手戻りを未然に防いで、品質の向上や工期の短縮化を図ることを可能にするフロントローディングにより、合意形成の迅速化、業務の効率化、品質の向上、ひいては生産性の向上等を図ることを目的として、国土交通省では、CIM(Construction Information Modeling/Management)を円滑に導入できるように、ガイドラインを整備して、体系的な推進を試みている。このため、3次元のCIMモデルを作成するための種々の三次元モデル解析プログラムやソフトウェアが開発されている。
【0003】
また、主に、建築構造物を対象として、2次元の図面を作成してから3次元の形状を組み立て、CGでシミュレーションするといった従来の3DCADとは異なり、当初から3次元で設計して3次元モデルを作成することが可能な、BIM(Building Information Modeling)によって作成されるBIMモデルが開発されている。BIMモデルでは、3次元オブジェクトの集合体であることから、これらのオブジェクトにコストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加することが可能であり、建築物の設計、施工から維持管理に至るまでの、建築物のライフサイクルの全体で、モデルに蓄積された情報を活用することが可能になる。BIMモデルを作成可能なBIMツールとして、「ArchiCAD」や「Revit」等の、種々の3次元CADソフトが知られている。
【0004】
さらに、定められた工期内に工事が完了するように、例えば公共工事における工程の計画と実施を管理するための種々の工程管理ソフトが知られており、またBIMモデルを作成可能な3次元CADソフトと工程管理ソフトとを組み合わせることによって、例えば施工現場において、3Dグラフィック表示された建設物の3次元モデルに、時間軸の要素を加味して容易に4次元シミュレートすることを可能にする、建設物の施工管理装置も開発されている(例えば、特許文献1参照)。国土交通省では、これらの4次元シミュレートする機能を3次元のCIMモデルにも適用して、土木公共工事の分野にも広げる試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-21983号公報
【特許文献2】特開2018-198019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、例えば橋梁、トンネル、ダム、土工、河川等の土木公共工事では、工事の進捗に伴う予算の執行状況を、適切に把握しておくことが重要である。例えば特許文献2には、建物の施工管理支援システムや建物の施工管理支援方法として、施工完了部材の施工費の総額である出来高を算出し、モニタの画面に算出した出来高を表示することで、建物の構築の進捗状況を、視覚的だけではなく、金額面でも把握できるようにすることが記載されているが、特許文献2に記載の施工管理支援システムや施工管理支援方法では、単に施工が完了した部材の施工費の総額をモニタの画面に表示するものに過ぎないため、例えば年度毎の予算の執行状況や、施工単位毎、施工部位毎等の予算の執行状況を容易に把握して、さらに効率良く施工できるように、工程を組み替えたり修正したりしながら調整可能とすることは困難である。
【0007】
本発明は、例えば年度毎の予算の執行状況や、施工単位毎、施工部位毎等の予算の執行状況を容易に把握して、さらに効率良く施工できるように、工程を組み替えたり修正したりしながら調整することのできる建設物の施工管理装置、建設物の施工管理方法、及び建設物の施工管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理装置であって、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の積算データとから、建設物の施工状況をシミュレートするシミュレート部を含んで構成されており、該シミュレート部は、建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付け部と、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示部と、を備えており、前記シミュレーション表示部は、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示できるようになっていると共に、建設物の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示できるようになっており、シミュレート表示された建設物の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、前記工程データの見直しを行えるようにする建設物の施工管理装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の建設物の施工管理装置は、前記設計データと前記工程データと前記積算データの全部またはいずれかを取得するデータ取得部を、さらに備えていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の建設物の施工管理装置は、前記積算データを前記工程データに関連付けして工程積算データを作成する工程積算データ作成部を、さらに備えていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の建設物の施工管理装置は、前記積算出来高情報が、施工部位毎に分割された各々の小ブロックを建設物の所定の部位として、各々の小ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合により、前記シミュレーション表示部によって画面上にシミュレート表示されるようになっていることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の建設物の施工管理装置は、前記小ブロックを構成する施工部位が、鉄筋コンクリート工により形成されるコンクリート躯体となっており、該鉄筋コンクリート工によるコンクリート躯体の積算出来高は、材料費としてコンクリート及び鉄筋の費用を、仮設費用として足場工、型枠工、及び支保工の費用を、人件費として人工の費用を含んだものとなっていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の建設物の施工管理装置は、前記積算出来高情報が、施工単位毎に分割された各々の中ブロックを建設物の所定の部位として、各々の中ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合により、前記シミュレーション表示部によって画面上にシミュレート表示されるようになっていることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の建設物の施工管理装置は、前記積算出来高情報が、工区分けされた1工区全体を複数の大ブロックに分割し、分割された各々の大ブロックを建設物の所定の部位として、各々の大ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合により、前記シミュレーション表示部によって画面上にシミュレート表示されるようになっていることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の建設物の施工管理装置は、前記大ブロックが、1年毎に施工される施工領域として分割されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の建設物の施工管理装置は、前記積算出来高情報が、前記シミュレーション表示部によって、円グラフとして画面上にシミュレート表示されるようになっていることが好ましい。
【0017】
そして、本発明は、3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理方法であって、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の積算データとから、建設物の施工状況をシミュレートするシミュレートステップを含み、該シミュレートステップにおいて、建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付けステップと、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示ステップと、をさらに含み、前記シミュレーション表示ステップにおいて、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示すると共に、建設物の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示し、シミュレート表示された建設物の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、前記工程データの見直しを行えるようにする建設物の施工管理方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0018】
また、本発明の建設物の施工管理方法は、前記設計データと前記工程データと前記積算データの全部またはいずれかを取得するデータ取得ステップを、さらに含んでいることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の建設物の施工管理方法は、前記積算データを前記工程データに関連付けして工程積算データを作成する工程積算データ作成ステップを、さらに含んでいることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理プログラムであって、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の積算データとから、建設物の施工状況をシミュレートするシミュレートステップをコンピュータに実行させ、該シミュレートステップにおいて、建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付けステップと、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示ステップと、をさらにコンピュータに実行させ、前記シミュレーション表示ステップにおいて、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示すると共に、建設物の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示し、シミュレート表示された建設物の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、前記工程データの見直しを行えるようにする建設物の施工管理プログラムを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0021】
そして、本発明の建設物の施工管理プログラムは、前記設計データと前記工程データと前記積算データの全部またはいずれかを取得するデータ取得ステップを、さらに実行させるようになっていることが好ましい。
【0022】
また、本発明の建設物の施工管理プログラムは、前記積算データを前記工程データに関連付けして工程積算データを作成する工程積算データ作成ステップを、さらに実行させるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の建設物の施工管理装置、建設物の施工管理方法、又は建設物の施工管理プログラムによれば、例えば年度毎の予算の執行状況や、施工単位毎、施工部位毎等の予算の執行状況を容易に把握して、さらに効率良く施工できるように、工程を組み替えたり修正したりしながら調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置の構成を説明するブロック図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置のシミュレート部による処理手順を説明するフローチャートである。
図3】本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置の工程積算データ作成部による処理状況の説明図である。
図4】施工紐付け部の工程・ステータス紐付け部による処理手順を説明するフローチャートである。
図5】施工紐付け部の工程・モデル紐付け部による処理手順を説明するフローチャートである。
図6】シミュレーション表示部によって積算出来高情報と共に表示された建設物の所定の部位の施工状況を例示する説明図である。
図7】円グラフとして画面上にシミュレート表示された積算出来高情報の拡大図である。
図8】施工紐付け部において、建設物の所定の部位を建設する際の工程項目毎に、工程期間中および工程期間経過後の部材ステータスを設定する画面を例示する説明図である。
図9】(a)、(b)は、施工紐付け部において、建設物の3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、工程データとを関連付けする画面を例示する説明図である。
図10】簡易工程調整部において工程データを見直す画面を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置10は、建設物30として、例えば鉄道路線を敷設するための、RC(鉄筋コンクリート)からなるラーメン高架橋構造物を、コンクリート躯体として建設する工事(図6参照)において、例えば施工現場の管理事務所で、3Dグラフィック表示された建設物30の3次元設計モデルに、時間軸及び予算の執行状況の要素を加味して容易にシミュレート表示できるようにすると共に、現場に応じた施工条件等の変更を反映させながら工程項目を組み替えたり修正したりして、工程データを容易に調整できるようにすることで、建設物30を建設する工事が、適正な予算の執行の下で所定の工期内に終了するように、建設物30の施工状況を効率良く適切に管理できるようにするための、例えばコンピュータからなる装置として用いられる。
【0026】
すなわち、建設物30として、例えば鉄道路線を敷設するためのRCラーメン高架橋構造物を建設する工事では、施工延長が長く、工事期間も数年に及ぶことから、好ましくは各年度毎に適正に予算を執行することが必要になると共に、関連業者などへの工事費の支払いも滞りなく適正に行うことが必要になり、これに伴って工程データもまた、必要に応じて適宜見直す必要があることから、本実施形態では、建設物の施工管理装置10を用いることにより、時間軸の要素を加味してシミュレートされた3次元設計モデルを観察すると共に、予算の執行状況を工程積算データに基づいてシミュレートされた積算出来高情報により把握することで、工程項目を組み替えたり修正したりしながら工程データを調整することを可能にして、建設物の施工を効率良く適切に管理できるようになっている。
【0027】
そして、本実施形態の建設物の施工管理装置10は、コンピュータに組み込まれた3次元モデル解析プログラムを用いて建設物30の施工を管理する建設物の管理装置であって、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物30の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物30を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物30を建設する際の積算データとから、建設物30であるRCラーメン高架橋構造物の施工状況をシミュレートするシミュレート部15を含んで構成されている。建設物の施工管理装置10は、好ましくは設計データと工程データと積算データの全部またはいずれかを取得するデータ取得部23を、さらに備えていても良く、また、好ましくは積算データを工程データに関連付けして工程積算データを作成する、工程積算データ作成部14を、さらに備えていても良い。
【0028】
シミュレート部15は、建設物30の3次元設計モデルの、例えば工区分けされた施工領域の所定の部位の設計データと、建設物30の所定の部位を建設する際の工程データや工程積算データとを関連付けして、建設物の例えば1工区の施工領域の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が、画面上に明示されるように紐付けする施工紐付け部16と、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示部17とを備えている。シミュレーション表示部17は、時間軸の進行に伴って、建設物30の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示できるようになっていると共に、建設物30の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示できるようになっており(図6参照)、シミュレート表示された建設物30の所定の部位の施工状況及び工程積算データに基づく積算出来高情報を見て、工程データの見直しを行えるようになっている。
【0029】
また、本実施形態では、建設物30の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報は、好ましくは工区分けされた1工区全体を複数の大ブロックに分割し、分割された各々の大ブロックを建設物の所定の部位として、各々の大ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合により、シミュレーション表示部17によって画面上にシミュレート表示されるようになっており、大ブロックは、好ましくは1年(年度)毎に施工される施工領域として分割されている。
【0030】
さらに、本実施形態では、建設物30の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報は、好ましくは各々の大ブロックを施工単位毎の複数の中ブロックに分割し、分割された各々の中ブロックを建設物の所定の部位として、各々の中ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合により、前記シミュレーション表示部によって画面上にシミュレート表示することもできる。中ブロックを形成する施工単位は、例えば工事の種類や、施工上の区切り良さや、1か月単位の工期等に応じて、適宜設定することができる。また、RCラーメン高架橋構造物における複数の施工スパンにおいて、施工済みの側から所定スパン毎に施工する際の当該所定スパン毎や、基礎から順次建設される建築物の場合には、杭工事、基礎工事、各階の工事といった工種毎として、適宜設定することもできる。
【0031】
さらにまた、本実施形態では、積算出来高情報は、シミュレーション表示部17によって、好ましくは円グラフとして画面上にシミュレート表示されるようになっている(図6図7参照)。
【0032】
また、本実施形態では、施工管理装置10は、3次元CADプログラムを用いて建設物30の3次元設計モデルの設計データを作成する、3次元設計モデル作成部18を備えることができる(図1参照)。3次元設計モデル作成部18は、施工管理装置10内に、3次元設計データ記憶部11を持つプログラムや、シミュレート部15等とは別のプログラムによって設けることもできるし、また施工管理装置10とは別の、3次元CADプログラムが組み込まれた他のコンピュータ等に設けることもできる。3次元設計モデル作成部18に組み込まれる3次元CADプログラム(3次元CADソフト)としては、例えばBIMモデルを作成可能なBIMツールである、Autodesk社製の「Revit」を好ましく用いることができる。この3次元設計モデル作成部18は、作成した建設物30の3次元設計モデルの設計データを、3次元設計データ記憶部11に記憶させるようになっていると共に、作成した建設物30の3次元設計モデルを修正した、建設物30の3次元修正設計モデルを作成できるようになっている。
【0033】
さらに、本実施形態では、施工管理装置10は、工程管理プログラムを用いて建設物30を建設する際の工程データを作成する、工程データ作成部19を備えることができる(図1参照)。工程データ作成部19で作成される工程データは、例えば各々の施工部位を施工する際の複数の工程項目について、少なくともそれぞれの工程順序、または、工程の開始予定日と終了予定日からなる工程期間の情報を含んでいる。工程項目は、施工部位毎の、例えば鉄筋組立、足場組立、支保工組立、型枠組立、仮設材(足場、支保工、型枠)の撤去等の項目からなる。工程データ作成部19は、施工管理装置10内に、工程データ記憶部12を持つプログラムや、シミュレート部15等とは別のプログラムによって設けることもできるし、また施工管理装置10とは別の、工程管理ソフトが組み込まれた他のコンピュータ等に設けることもできる。工程データ作成部19に組み込まれる工程管理プログラムとしては、例えばCCPM(Critical Chain Project Management)機能を備える、株式会社ビーイング製の「Being Project-CCPM」を好ましく用いることができる。この工程データ作成部19は、作成した工程データを工程データ記憶部12に記憶させるようになっていると共に、工程データを調整して、建設物30を建設する際の修正工程データを作成できるようになっている。
【0034】
ここで、好ましくはCCPM機能を備える工程管理プログラムは、制約条件の理論であるTOC(Theory of Constraints)の考えに基づいて、全体最適の視点で開発されたクリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)を採用した工程管理ソフト(工程管理プログラム)である。クリティカルチェーンは、プロジェクトにおいて各タスクの実行順序を考えた時に、作業工程上の従属関係を考慮するクリティカルパス法による従来の手法に加えて、必要リソースが限られているために発生する従属関係をも考慮する手法である。プロジェクトマネジメントは、要員の人間心理や行動特性、及び社会的・組織的問題も考慮して、工期の短縮、納期の順守を目的としてプロジエクト管理を行う実践的手法であり、各々のタスクから除去した安全余裕を、「バッファ」に集約して管理するようになっている。CCPM機能を備える工程管理プログラムは、好ましくは積算情報を反映させたり、一日当たりの施工量や休工日を設定したり、CP(クリティカル・パス)を設定したりする機能も備えている。工程管理プログラムとして、CCPM機能を備えていない工程管理プログラムを用いることもできる。
【0035】
さらにまた、本実施形態では、施工管理装置10は、工事費積算プログラムを用いて建設物30を建設する際の積算データを作成する、積算データ作成部20を備えることができる(図1参照)。積算データ作成部20で作成される積算データは、少なくとも各々の施工部位を施工する際の工程項目毎のコスト情報を含んでおり、例えば、鉄筋組立、足場組立、支保工組立、型枠組立、仮設材(足場、支保工、型枠)の撤去等の工程項目毎に発生するコスト情報を、施工部位毎に積算したものである。積算データ作成部20は、施工管理装置10内に、積算データ記憶部13を持つプログラムや、シミュレート部15等とは別のプログラムによって設けることもできるし、また施工管理装置10とは別の、工事費積算ソフトが組み込まれた他のコンピュータ等に設けることもできる。積算データ作成部20に組み込まれる工事費積算プログラム(工事費積算ソフト)としては、例えば株式会社ビーイング製の「Gaia」を好ましく用いることができる。この積算データ作成部20は、作成した積算データを積算データ記憶部13に記憶させるようになっていると共に、積算データを調整して、建設物30を建設する際の修正積算データを作成できるようになっている。
【0036】
本実施形態では、施工管理装置10は、情報処理装置として、例えばパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータを含んで構成されている。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)、HDD(Hard Disk Drive)、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を備えている。CPUは、ROMに組み込まれた各種の制御プログラムに従って、RAMをワークエリアとして使用しながら、施工管理装置10の全体の動作を制御する。また、CPUは、各種のコンピュータプログラムがROMに組み込まれていることにより、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を機能させると共に、建設物30の3次元設計モデルの設計データや、工程データや、積算データ等を含む各種のデータを、例えばデータベース部に記憶させたり、所定の情報としてディスプレイ等の画面上に表示させたり、プリンタから出力させたりできるようになっている。
【0037】
また、本実施形態では、施工管理装置10は、3次元設計データ記憶部11を備えており、3次元設計データ記憶部11は、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物30であるRCラーメン高架橋構造物の3次元設計モデルの設計データを記憶する。本実施形態では、施工管理装置10は、好ましくは3次元CADプログラムを用いて建設物30の3次元設計モデルの設計データを作成する、3次元設計モデル作成部18を備えており、この3次元設計モデル作成部18に組み込まれた公知の各種の3次元CADプログラムによって作成された3次元設計モデルの設計データを、3次元設計データ記憶部11に記憶させることができるようになっている。建設物30の3次元設計モデルの設計データは、施工管理装置10とは別の装置において3次元CADプログラムを用いて作成されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、3次元設計データ記憶部11に記憶させることもできる。好ましくはデータ取得部23は、この3次元設計データ記憶部11から、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物30の3次元設計モデルの設計データを取得できるようになっている。
【0038】
本実施形態の施工管理装置10は、工程データ記憶部12を備えており、工程データ記憶部12は、建設物30であるRCラーメン高架橋構造物を構築する際の工程データを記憶する。本実施形態では、施工管理装置10は、好ましくはCCPM(Critical Chain Project Management)機能を備える工程管理プログラムを用いて建設物30を建設する際の工程データを作成する、工程データ作成部19を備えており、この工程データ作成部19に組み込まれた公知のCCPM機能を備える工程管理プログラムによって作成された工程データを、工程データ記憶部12に記憶させることができるようになっている。建設物30を建設する際の工程データは、施工管理装置10とは別の装置において工程管理プログラムを用いて作成されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、工程データ記憶部12に記憶させることもできる。好ましくはデータ取得部23は、この工程データ記憶部12から、工程管理プログラムを用いて作成された建設物30を建設する際の工程データを取得できるようになっている。
【0039】
さらにまた、本実施形態では、施工管理装置10は、積算データ記憶部13を備えており、積算データ記憶部13は、工事費積算プログラムを用いて作成された、建設物30であるRCラーメン高架橋構造物を建設する際の積算データを記憶する。本実施形態では、施工管理装置10は、好ましくは工事費積算プログラムを用いて建設物30の積算データを作成する、積算データ作成部20を備えており、この積算データ作成部20に組み込まれた公知の各種の工事費積算プログラムによって作成された建設物30を建設する際の積算データを、積算データ記憶部13に記憶させることができるようになっている。建設物30の積算データは、施工管理装置10とは別の装置において工事費積算プログラムを用いて作成されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、積算データ記憶部13に記憶させることもできる。好ましくはデータ取得部23は、この積算データ記憶部13から、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物30を建設する際の積算データを取得できるようになっている。
【0040】
さらに、本実施形態では、施工管理装置10は、工程管理プログラムを用いて建設物30を建設する際の積算データを工程データに関連付けることで工程積算データを作成する、工程積算データ作成部14を備えることができる(図1参照)。工程積算データ作成部14は、好ましくは工程データ作成部19に組み込まれた工程管理プログラム(工程管理ソフト)によって、工程データ作成部19に併設して設けられるようになっている。工程積算データ作成部14は、好ましくはデータ取得部23によって取得された、積算データ記憶部13に記憶された積算データを、工程管理ソフトによって、工程データ記憶部12に記憶された工程データに関連付け(紐付け)して、工程積算データを作成する。このような工程積算データ作成部14による積算データの工程データへの関連付けは、例えば施工管理装置10が備える工程データ作成部19に組み込まれた工程管理ソフトによる機能によって(図3参照)、後述する工程データを構成する工程項目毎に、各々の工程項目に関連するコスト情報(積算データ)を、付加(追加)して持たせることにより行うことができるようになっている。工程積算データ作成部14は、施工管理装置10とは別の、工程管理ソフトまたは工事費積算プログラム等が組み込まれた他のコンピュータ等に設けることもできる。さらに、施工部位毎の積算データを、3次元設計モデル作成部18で作成した建設物30の3次元設計モデルの該当する各施工部位に、予め関連付けておき、3次元設計モデルが工程データと関連付けられることで、工程データと積算データとが関連付けられるようになってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、工程積算データ作成部14による積算データの工程データへの関連付けは、好ましくは工区分けされた1工区全体を分割した各々の大ブロック、又はこれらの大ブロックをさらに分割した中ブロックを、例えばコンクリート躯体による建設物30であるラーメン高架橋構造物を構成する、杭、柱、梁、床版等の施工部位毎の小ブロックにさらに細かく分割し、小ブロックによる各々の施工部位を施工する際の工程データを構成する工程項目として、例えば鉄筋組立、足場組立、支保工組立、型枠組立、仮設材(足場、支保工、型枠)の撤去等の項目毎に、対応する積算データによる工程項目毎のコスト情報を、これらの工程データの工程項目に追加して付加することにより行うことができる。これによって、小ブロックによる各々の施工部位を施工する際の工程データに、積算データが紐付けされた、工程積算データを作成することが可能になる。
【0042】
また工程積算データを作成することによって、後述するシミュレート部15において、時間軸の進行に伴なう、工程積算データに基づいた建設物30の所定の部位の積算出来高を算出できるようになる。建設物30の所定の部位の積算出来高は、該当する期間内の工程積算データの工程項目に付加されている、例えば材料費や仮設費、人件費等からなるコスト情報を積算することで算出できる。建設物30であるラーメン高架橋構造物における小ブロックを形成する所定の施工部位が、例えば鉄筋コンクリート工による柱、梁、床版等のコンクリート躯体である場合に、これらの鉄筋コンクリート工によるコンクリート躯体の工程積算データに基づく積算出来高は、材料費だけではなく、材料費としてコンクリート及び鉄筋の費用を、仮設費用として足場工、型枠工、及び支保工の費用を、人件費として人工の費用を含んだものとなっている。このような積算出来高は、これらの費用又は費用の合計を部材の体積で割った値を用いて(例えば、材料費+仮設費+人件費の合計を部材の体積で割った値:単位は円/m3)、小ブロックの中で所定の範囲の工事が完了する毎に、その体積分の費用が出来高として加算されるようにすることが好ましい。
【0043】
さらに、本実施形態では、施工管理装置10は、工程積算データ記憶部24を備えており、工程積算データ記憶部24は、工事費積算プログラムを用いて作成された、建設物30であるRCラーメン高架橋構造物を建設する際の工程積算データを記憶する。本実施形態では、施工管理装置10は、好ましくは工事費積算プログラムを用いて建設物30の工程積算データを作成する、工程積算データ作成部14を備えており、この工程積算データ作成部14に組み込まれた公知の各種の工事費積算プログラムによって作成された、建設物30を建設する際の工程積算データを、工程積算データ記憶部24に記憶させることができるようになっている。建設物30を建設する際の工程積算データは、施工管理装置10とは別の装置において作成されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、工程積算データ記憶部24に記憶させることもできる。好ましくはデータ取得部23は、この工程積算データ記憶部24から、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物30を建設する際の工程積算データを取得できるようになっている。
【0044】
本実施形態では、施工管理装置10のシミュレート部15は、3次元設計データ記憶部11に記憶されている3次元設計データ及び工程積算データ作成部14で作成されて工程積算データ記憶部24に記憶されている工程積算データから、建設物30であるRCラーメン高架橋構造物の施工状況をシミュレートして、例えばディスプレイの画面上に表示させる(図6参照)。
【0045】
また、シミュレート部15は、図1に示すように、施工紐付け部16と、建設物30の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させる、シミュレーション表示部17とを備えている。施工紐付け部16は、3次元設計データ記憶部11に記憶された建設物30の3次元設計モデルの、例えば1工区の施工領域の所定の部位の設計データと、工程積算データ作成部14で作成された工程積算データとを関連付けして、建設物30の例えば1工区の施工領域の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が、積算出来高情報と共に画面上に明示されるように紐付けする。シミュレーション表示部17は、時間軸の進行に伴って、工程積算データに基づいて、建設物30の所定の部位の施工状況を三次元モデルとして画面上にシミュレート表示できるようになっていると共に、建設物30の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示できるようになっている(図6参照)。またシミュレート表示された建設物30の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、好ましくは工程積算データ作成部14で作成した工程積算データや、工程データ作成部19で作成した工程データの見直しを、簡易工程調整部21において行えるようになっている。
【0046】
シミュレート部15は、公知の三次元モデル解析プログラムを、コンピュータである施工管理装置10に組み込むことによって形成されている。三次元モデル解析プログラムは、三次元モデルの作成や点群表示、情報の取得や解析等を行なう機能を備えている。三次元モデル解析プログラムは、後述する施工紐付け部16や、シミュレーション表示部17や、簡易工程調整部21等を実装するための開発環境を、ソフトウェア側に提供できるものとなっている。このような開発環境をソフトウェア側に提供できる三次元モデル解析プログラム(三次元モデル解析ソフト)として、例えばパスコ社製ソフト「PADMS」を用いることができる。
【0047】
シミュレート部15の施工紐付け部16は、工程・ステータス紐付け部16bと、工程・モデル紐付け部16aとを備えている。工程・ステータス紐付け部16bでは、図8に示すように、部材ステータス32として、例えば「鉄筋」、「型枠」、「コンクリ打設」、「養生」、「施工中」、「完成」、「仮設」、「撤去中」、「撤去済み」、「未着手」、「待ち」、「完成後非表示」、「ケレン処理」、「施工中―透かし」等の項目に、例えば作業員が異なる色32aを与えて編集する。編集結果は、施工管理装置10の部材ステータス記憶部22に記憶されるようになっている。工程・ステータス紐付け部16bでは、建設物30の1工区の施工領域の所定の部位を建設する際の工程積算データとなる、積算データが付加された工程項目33毎に、例えば工程期間中の部材ステータス33aと工程期間経過後の部材ステータス33bとを、異なる色32aを与えて編集された部材ステータス32により色分けした状態で設定して、これらの積算データが付加された工程項目33と工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a,33bとを紐付けする。工程・ステータス紐付け部16bでは、後述する部材ステータス編集ステップS4及び工程・ステータス紐付けステップS5が行われるようになっている。
【0048】
工程・モデル紐付け部16aでは、作業員が、図9(a)、(b)に示すように、画面上に階層構造をとった状態で表示されている、建設物30の3次元設計モデルの小ブロックを形成する所定の施工部位30aのデータ毎に、工程表として表示されている、工程積算データである積算データが付加された工程項目33のうちの、一または複数を選択し、これらの建設物30の3次元設計モデルの所定の部位30aの設計データと、これらの積算データが付加された工程項目33とを紐付けする。さらに、積算データが付加された工程項目33は、工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33aおよび33bと紐付けられているため(図8参照)、所定の部位30aの設計データ毎に、各工程項目における工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータスが紐付けられる。また、ここで所定の部位30aの工程着手前における初期ステータスも併せて設定する。その結果、各工程の経過に伴い、建設物30の3次元設計モデルの所定の各部位30aにおける施工状況の進捗がそれぞれ設定される。工程・モデル紐付け部16aでは、後述する工程・モデル紐付けステップS6が行われるようになっている。
【0049】
シミュレート部15のシミュレーション表示部17は、建設物30の所定の部位における、施工の開始から終了までの施工状況を画面上にシミュレート表示すると共に、建設物30の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示する機能を備えている(図7参照)。すなわち、建設物30の所定の部位毎に設定されている、積算データが付加された各工程項目における工程着手前、工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33aおよび33bに基づき、シミュレーション表示部17は、積算データが付加された工程項目の進捗による時間軸の進行に伴って、所定の部位における建設物30の3次元設計モデルの施工状況を、積算出来高情報と共に画面上にシミュレート表示できるようになっている。作業員は、シミュレーション表示部17によって画面上にシミュレート表示された、建設物30の所定の部位の、時間軸の進行に伴なう経時的な施工状況及び積算出来高情報を見て、工程積算データ作成部14で作成した工程積算データの細かな見直しを、例えば後述する簡易工程調整部21において適切に行うことが可能になる。
【0050】
ここで、シミュレーション表示部17は、小ブロックによる各施工部位を施工する際の工程データを構成する各々の工程項目に、積算データが付加されて工程積算データが形成されているので、全工程における積算データを合算することで積算総工事費用を算出することができる。図6及び図7に示すように、例えば表示された建設物30の小ブロックを形成する所定の施工部位を画面上でクリックすることにより、各々の小ブロックの積算総工事費用に対する施工状況に応じた積算出来高の割合として、画面上に、例えば小ブロック毎の積算総工事費用に対する、今月分の積算出来高や、先月までに累積した積算出来高、あるいは、竣工までの工程期間内に発生する積算データを合算した残りの工事費が識別できるように明示された、好ましくは円グラフとして、積算出来高情報をシミュレート表示できるようになっている。
【0051】
また、シミュレーション表示部17は、分割された複数の小ブロックの積算出来高や積算総工事費用を合算することで、大ブロック又は中ブロックの積算出来高や積算総工事費用を算出することができ、大ブロック又は中ブロックの積算総工事費用に対する、施工状況に応じた積算出来高の割合として、画面上に、例えば大ブロック又は中ブロック毎の積算総工事費用に対する、今月分の積算工事費や、先月まで累積した積算工事費や、残りの工事費が識別できるように明示された、好ましくは円グラフとして、画面上に積算出来高情報をシミュレート表示することもできるようになっている。図7には、例えば大ブロックの積算総工事費用(本設工事費用)に対する、前月までの累計と、今月までの累計が、今月の進捗率や金額と共に、円グラフによって表示されている。
【0052】
さらに、シミュレーション表示部17は、例えば簡易工程調整部21において見直された見直し後の工程積算データと関連付けされた、建設物30の所定の部位の時間軸の進行に伴なう見直し後の経時的な施工状況を、積算出来高情報と共にシミュレート表示できるようになっている。シミュレーション表示部17では、後述するシミュレーション表示ステップS7が行われるようになっている。
【0053】
シミュレート部15の簡易工程調整部21は、シミュレーション表示部17によって画面上にシミュレート表示された、工程積算データに基づく、建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の経時的な施工状況や積算出来高情報を見た作業員が、例えば工程データ作成部19で作成した工程データの見直しを、当該シミュレート部15において行えるようにする機能を備えている。簡易工程調整部21は、工程積算データ作成部14で作成した工程積算データを修正可能な、簡易なプログラムによるものとなっている。簡易工程調整部21は、簡易な工程管理プログラムを施工管理装置10に組み込んで、シミュレート部15に設けることができる。簡易工程調整部21で修正した工程積算データを、工程データ作成部19にフィードバックして、工程データの見直しが行われるようになっている。
【0054】
簡易工程調整部21では、シミュレーション表示部17により画面上にシミュレート表示された、工程積算データに基づく、建設物30の所定の部位の3次元設計モデル30の経時的な施工状況や積算出来高情報を見た作業員が、例えば図10に示す画面において、現場の状況に応じた施工条件等の変更に伴う、積算データが付加された工程項目33の修正や、順序の組み替えや削除等による工程データの調整を、例えば工程データ作成部19の工程管理プログラムに工程データを送り返すことなく、当該簡易工程調整部21において、工程積算データ基づいて簡易に且つ容易に行なうことができるようになっている。簡易工程調整部21で調整された見直し後の工程積算データは、施工紐付け部16に送られて、建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の設計データと関連付けし直されることで、建設物30の所定の部位の施工の開始から終了までの見直された施工状況が、積算出来高情報と共に画面上にシミュレート表示できるように紐付けされるようになっている。
【0055】
上述の構成を備える本実施形態の建設物の施工管理装置10では、シミュレート部15において、図2のフローチャートに示す処理手順に従って、時間軸の進行に伴なう建設物30の1工区の施工領域の所定の部位の施工状況を、積算出来高情報と共に建設物30の3次元設計モデルを画面上にシミュレート表示することで、これを見た作業員に評価させることができるようになっている。すなわち、作業員は、シミュレート表示された建設物30の所定の部位の3次元設計モデルの、時間軸の進行に伴なう施工状況を、積算出来高情報と共に見ることで、当該1工区の施工領域の所定の部位における施工方法や施工期間等について評価を実施し、評価の結果に応じて、工程積算データ作成部14で作成された工程積算データの見直しや、3次元設計データ記憶部11から取り込んだ建設物30の3次元設計モデルの修正等を、適宜行うことができるようになっている。シミュレート部15では、好ましくは3次元設計モデル取込みステップS1と、工程積算データ取込みステップS3と、部材ステータス編集ステップS4と、工程・ステータス紐付けステップS5と、工程・モデル紐付けステップS6と、シミュレーション表示ステップS7とによる処理手順を経て、時間軸の進行に伴なう建設物30の1工区の施工領域の所定の部位の施工状況を、建設物30の3次元設計モデル及び積算出来高情報を画面上に表示することによって(図6参照)、シミュレート表示できるようになっている。また、工程管理ソフトによる工程積算データ作成部14では、工程積算データ取込みステップS3に先立って、上述のように、積算データ記憶部13に記憶された積算データを工程データ記憶部12に記憶された工程データに関連付け(紐付け)して、工程積算データを作成する、工程積算データ作成ステップS2が行われる(図3参照)。
【0056】
3次元設計モデル取込みステップS1では、3次元設計データ記憶部11に記憶されている、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物30であるラーメン高架橋構造物の、好ましくは工区分けされた1工区全体の施工領域の3次元設計モデルの設計データを、シミュレート部15に取り込む。
【0057】
工程積算データ取込みステップS3では、これに先立つ工程積算データ作成ステップS2で作成された、建設物30であるラーメン高架橋構造物を構築する際の、好ましくは1工区の施工領域を施工する際の、積算データが付加された全ての工程項目33を、工程積算データとしてシミュレート部15に取り込む。
【0058】
部材ステータス編集ステップS4では、上述の施工紐付け部16の工程・ステータス紐付け部16bにおいて、図8に示すように、部材ステータス32として、例えば「鉄筋」、「型枠」、「コンクリ打設」、「養生」、「施工中」、「完成」、「仮設」、「撤去中」、「撤去済み」、「未着手」、「待ち」、「完成後非表示」、「ケレン処理」、「施工中―透かし」等の項目に、作業員が画面を見ながら操作することで、異なる色を与えることによって、建設物の所定の部位の施工状況を画面上に3次元設計モデルとしてシミュレート表示する際の、部材ステータス32に応じて表示される色を設定して、これらの部材ステータス32を編集することができる。
【0059】
工程・ステータス紐付けステップS5では、上述の施工紐付け部16の工程・ステータス紐付け部16bにおいて、図4に示す処理手順に従って、建設物30の1工区の施工領域の所定の部位を建設する際の工程積算データを構成する工程項目33毎に、部材ステータス32を設定する。すなわち、工程・ステータス紐付けステップS5では、作業員は、各々の工程項目33を指定して、これらの指定された工程項目33毎に、工程期間中の部材ステータス33aを設定し(図8参照)、さらに工程期間経過後の部材ステータス33bを設定することによって、これらの積算データが付加された工程項目33と工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a,33bとを紐付けする。
【0060】
工程・モデル紐付けステップS6では、上述の施工紐付け部16の工程・モデル紐付け部16aにおいて、図5に示す処理手順に従って、選択した建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の設計データ毎に、積算データが付加された工程項目の割り当てを実施する。すなわち、工程・モデル紐付けステップS6では、シミュレート部15に取り込んだ、複数の積算データが付加された工程項目33からなる工程積算データを読み込むと共に、建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の設計データを読み込む。これらのデータを読み込んだら、読み込んだ3次元設計モデル30の所定の部位の設計データから、作業員は、積算データが付加された工程項目33を紐付けしたい建設物30の部位を選択し、積算データが付加された工程項目33の割り当てを実施すると共に、該当する工程項目33の施工前における、割当工程になる前の初期状態である初期の部材ステータスを設定する。建設物30の全ての3次元設計モデルの所定の部位に対して、積算データが付加された工程項目33の割り当てが、繰り返し実施されることになる。
【0061】
シミュレーション表示ステップS7は、シミュレーション表示部17によって実施されるようになっており、建設物30の1工区の施工領域の所定の部位における、積算工程データと関連付けされた施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう施工状況を、建設物30の3次元設計モデルを再生して、積算出来高情報と共に画面上にシミュレート表示できるようになっている(図6参照)。また、シミュレーション表示ステップS7では、例えば簡易工程調整部21において見直された見直し後の工程積算データと関連付けされた、建設物30の1工区の施工領域の所定の部位の時間軸の進行に伴なう見直し後の経時的な施工状況を、積算出来高情報と共に建設物30の3次元設計モデルを再生して、シミュレート表示できるようになっている。
【0062】
したがって、本実施形態の3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理方法は、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の積算データとから、建設物の施工状況をシミュレートするシミュレートステップを含み、シミュレートステップにおいて、建設物の3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付けステップ(S4,S5、S6)と、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示ステップ(S7)と、をさらに含み、シミュレーション表示ステップ(S7)において、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示すると共に、建設物の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示し、シミュレート表示された建設物の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、工程データの見直しを行えるようになっている。また、建設物の施工管理方法は、好ましくは設計データと工程データと積算データとを取得するデータ取得ステップ(S1,S3)を、さらに含んでいても良く、好ましくは積算データを工程データに関連付けして工程積算データを作成する工程積算データ作成ステップ(S2)を、さらに含んでいても良い。
【0063】
また、本実施形態の3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理プログラムは、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データと、工事費積算プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の積算データとから、建設物の施工状況をシミュレートするシミュレーション表示ステップ(S7)をコンピュータに実行させ、シミュレートステップにおいて、建設物の3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、建設物の所定の部位を建設する際の工程積算データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付けステップ(S4,S5、S6)と、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させるシミュレーション表示ステップ(S7)と、をさらにコンピュータに実行させ、シミュレーション表示ステップ(S7)において、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を画面上にシミュレート表示すると共に、建設物の所定の部位の施工状況に応じた積算出来高情報を画面上にシミュレート表示し、シミュレート表示された建設物の所定の部位の施工状況及び積算出来高情報を見て、工程データの見直しを行えるようにするようになっている。また、建設物の施工管理プログラムは、好ましくは設計データと工程データと積算データとを取得するデータ取得ステップ(S1,S3)を、さらに実行させるようになっていても良く、好ましくは積算データを工程データに関連付けして工程積算データを作成する工程積算データ作成ステップ(S2)を、さらに実行させるようになっていても良い。
【0064】
そして、作業員は、シミュレーション表示ステップS7で建設物30の3次元設計モデルを積算出来高情報と共に再生することにより画面にシミュレート表示された、工程積算データと関連付けされた施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況や、見直し後の工程積算データと関連付けされた施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況を見ながら、工程積算データを通して工程データや積算データ等に関する評価を実施することが可能になる。
【0065】
すなわち、作業員は、画面にシミュレート表示された、施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況を、積算出来高情報を見ることで、その都度、予算の執行状況を確認しながら、例えば目標の工期内に建設物30の施工を完了することができるか否か、設定され順序通りに各々の工程項目33を施工できるか否か、機械や資材の搬入が可能か否か、施工の順序が間違っていない否か、投入リリース(人、資材、建機)の平準化が可能な否か等の評価項目について評価を実施する。これによって、例えば工程データの改善点や、足場材などの仮設材の改善点や、3次元設計モデル30の改善点等を、予算の執行状況を考慮しながら、洗い出すことが可能になる。また、工事の施工計画段階のみならず、実際に工事が始まった後に、工事の進捗に合わせて必要なデータを入力して、全体の日数と積算出来高を比較することで、その後の工程の調整に利用することが可能になる。
【0066】
したがって、本実施形態の建設物の施工管理装置10によれば、例えば年度毎の予算の執行状況や、施工単位毎、施工部位毎等の予算の執行状況を容易に把握して、さらに効率良く施工できるように、工程を組み替えたり修正したりしながら調整することが可能になる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば積算出来高情報は、円グラフとして画面上にシミュレート表示される必要は必ずしも無く、棒グラフや折れ線グラフ等の、その他の種々の表示方法によって画面上に表示することもできる。小ブロックを構成する施工部位は、鉄筋コンクリート工によるコンクリート躯体である必要は必ずしも無く、鋼製部材や土質材料等の、その他の種々の部材や材料による、工事費積算ソフトによって積算可能な施工部位であっても良い。
【0068】
シミュレート部15は、3次元設計データ記憶部11や工程積算データ記憶部24を経由せずに、3次元設計モデル作成部18と工程積算データ作成部14から直接データを取得してもよい。また、工程管理ソフトに工程積算データ作成部14がなく、工程データと積算データは、それぞれ工程データ記憶部12と積算データ記憶部13に取得された後に、シミュレート部15内で紐付けされても良い。
【符号の説明】
【0069】
10 建設物の施工管理装置
11 3次元設計データ記憶部
12 工程データ記憶部
13 積算データ記憶部
14 工程積算データ作成部
15 シミュレート部
16 施工紐付け部
16a 工程・モデル紐付け部
16b 工程・ステータス紐付け部
17 シミュレーション表示部
18 3次元設計モデル作成部
19 工程データ作成部
20 積算データ作成部
21 簡易工程調整部
22 部材ステータス記憶部
23 データ取得部
24 工程積算データ記憶部
30 建設物
32 部材ステータス
33 工程項目
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10