IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ねじ締め装置 図1
  • 特開-ねじ締め装置 図2
  • 特開-ねじ締め装置 図3
  • 特開-ねじ締め装置 図4
  • 特開-ねじ締め装置 図5
  • 特開-ねじ締め装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032368
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ねじ締め装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
B23P19/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138456
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】楠田 悠子
(57)【要約】
【課題】チャックユニットおよびスクリューガイドの破損を防止可能なねじ締め装置を提供する。
【解決手段】
回転駆動源の駆動を受けて回転可能なドライバビット34およびこのドライバビット34を内包するとともにドライバビット34に対して摺動自在に構成されるスクリューガイド36を備えるねじ締めツール30と、前記ねじ締めツール30を往復移動させる位置制御機構20と、前記ドライバビット34の軸線上に配置されるチャックユニット40と、前記スクリューガイド36あるはドライバビット34が前記チャックユニット40を過度に押圧していることを検出する破損防止手段と、前記破損防止手段からの信号に基づき前記位置制御機構20の駆動を制御するよう構成された制御部50とを有していることを特徴とするねじ締め装置10による。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の駆動を受けて回転可能なドライバビットおよびこのドライバビットを内包するとともにドライバビットに対して摺動自在に構成されるスクリューガイドを備えるねじ締めツールと、
前記ねじ締めツールを往復移動させる位置制御機構と、
前記ドライバビットの軸線上に配置されるチャックユニットと、
前記位置制御機構の駆動を受けて移動するねじ締めツールあるいは、チャックユニットの破損を防止する破損防止手段と、
前記破損防止手段からの信号に基づき前記位置制御機構の駆動を制御するよう構成された制御部とを有していることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項2】
前記チャックユニットは、前記スクリューガイドを案内する案内穴が形成されたチャック本体と、このチャック本体に揺動自在に装着されるとともに前記案内穴の延長線上にねじを保持する保持穴を分割形成する一対のチャック爪と、このチャック爪の揺動面に交差しかつ斜め後方に向かって延びるホース取付金具と、このホース取付金具と前記チャック爪との間に配され、前記チャック爪の揺動面から離反する方向へ揺動自在な供給パイプとを有することを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。
【請求項3】
前記破損防止手段は、前記位置制御機構の駆動を受けて移動するねじ締めツールのスクリューガイドあるはドライバビットの前記チャックユニットに対する過度な押圧を検出するように構成されており、
前記制御部は、破損防止手段が過度な押圧を検出したら、前記位置制御機構の駆動を中断させるよう構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のねじ締め装置。
【請求項4】
前記位置制御機構は、昇降モータと、この昇降モータに連結されたボールねじとを備えており、
前記破損防止手段は、前記昇降モータの負荷電流値を測定し、当該負荷電流値があらかじめ設定される所定の衝突電流値に到達すればねじ締めツールがチャックユニットを押圧していると判断して、前記昇降モータの駆動を中断させるよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のねじ締め装置。
【請求項5】
前記破損防止手段は、チャック爪、供給パイプ、スクリューガイド、ドライバビットの何れかに取り付けられた接触式センサであることを特徴とする請求項2ないし請求項3の何れかに記載のねじ締め装置。
【請求項6】
前記破損防止手段は、前記スクリューガイドの下端が前記供給パイプに当接する高さより上側に設定される衝突確認開始位置と、前記スクリューガイドがチャック爪に正常に供給されたねじの頭部に当接する高さより下側に設定される衝突確認終了位置との間にて作動するように構成されていることを特徴とする請求項2にないし請求項5に記載のねじ締め装置。
【請求項7】
前記破損防止手段は、前記保持穴に供給されたねじの姿勢を判定するように構成されており、
前記制御部は、破損防止手段が保持穴内のねじの姿勢が正常であと判定したら、前記位置制御機構を駆動させるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載のねじ締め装置。
【請求項8】
前記破損防止手段は、前記保持穴内の正常に供給されたねじの頭部より供給パイプ側に設定されるねじ通過域に検出範囲がくるように配設された非接触式のセンサあるいは、ねじ通過域を撮像するように配設された撮像手段であることを特徴とする請求項7に記載のねじ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークにねじを締結するねじ締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のねじ締め装置として、特許文献1に示すように、ねじと嵌合可能なドライバビットと、このドライバビットの軸線上に配置され、外部のねじ供給装置から供給されたねじを一旦保持するチャックユニットとを備えたねじ締め装置が知られている。このねじ締め装置のチャックユニットは、前記スクリューガイド36を軸方向の往復移動可能に案内する案内穴が形成されたチャック本体と、このチャック本体に揺動自在に装着され、前記ドライバビットの軸線上に保持穴を分割形成するチャック爪と、チャック爪の揺動を規制する揺動規制機構の一例である開閉シリンダとを備えている。また、開閉シリンダは、ねじの供給時および、ねじをドライバビットと嵌合させる時にチャック爪を強制的に閉めるよう構成されており、圧送されてきた勢いでねじがチャックの外部に飛び出すことや、ドライバビットと嵌合する前にねじがチャックから脱落すること等を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-052164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のねじ締め装置は、揺動規制機構により、チャック爪の揺動を規制するよう構成されていたため、チャック内にねじが2個存在する等の供給不良が発生した際、ねじとの嵌合位置まで下降しようとするドライバが2個目のねじと衝突するということがあった。この衝突後、さらに下降するドライバビットやスクリューガイドが2個目のねじを過度に押圧することにより、ドライバビットやスクリューガイドあるいはねじや当該ねじと当接するチャック爪等が破損するといった問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、チャックや、ドライバビット等の破損を防止可能ねじ締め装置の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は回転駆動源の駆動を受けて回転可能なドライバビットおよびこのドライバビットを内包するとともにドライバビットに対して摺動自在に構成されるスクリューガイドを備えるねじ締めツールと、前記ねじ締めツールを往復移動させる位置制御機構と、前記ドライバビットの軸線上に配置されるチャックユニットと、前記位置制御機構の駆動を受けて移動するねじ締めツールあるいは、チャックユニットの破損を防止する破損防止手段と、前記破損防止手段からの信号に基づき前記位置制御機構の駆動を制御するよう構成された制御部とを有していることを特徴とする。なお、前記チャックユニットは、前記スクリューガイドを案内する案内穴が形成されたチャック本体と、このチャック本体に揺動自在に装着されるとともに前記案内穴の延長線上にねじを保持する保持穴を分割形成する一対のチャック爪と、このチャック爪の揺動面に交差しかつ斜め後方に向かって延びるホース取付金具と、このホース取付金具と前記チャック爪との間に配され、前記チャック爪の揺動面から離反する方向へ揺動自在な供給パイプとを有することを特徴とする。また、前記破損防止手段は、前記位置制御機構の駆動を受けて移動するねじ締めツールのスクリューガイドあるはドライバビットの前記チャックユニットに対する過度な押圧を検出するように構成されており、前記制御部は、破損防止手段が過度な押圧を検出したら、前記位置制御機構の駆動を中断させるよう構成されていることが好ましい。さらに、前記位置制御機構は、昇降モータと、この昇降モータに連結されたボールねじとを備えており、前記破損防止手段は、前記昇降モータの負荷電流値を測定し、当該負荷電流値があらかじめ設定される所定の衝突電流値に到達すればねじ締めツールがチャックユニットを押圧していると判断して、前記昇降モータの駆動を中断させるよう構成されていることが好ましい。しかも、前記破損防止手段は、チャック爪、供給パイプ、スクリューガイド、ドライバビットの何れかに取り付けられた接触式センサであることが好ましい。
【0006】
また、前記破損防止手段は、前記スクリューガイドの下端が前記供給パイプに当接する高さより上側に設定される衝突確認開始位置と、前記スクリューガイドがチャック爪に正常に供給されたねじの頭部に当接する高さより下側に設定される衝突確認終了位置との間にて作動するように構成されていることが好ましい。さらに、前記破損防止手段は、前記保持穴に供給されたねじの姿勢を判定するように構成されており、前記制御部は、破損防止手段が保持穴内のねじの姿勢が正常であと判定したら、前記位置制御機構を駆動させるよう構成されていることが好ましい。しかも、前記破損防止手段は、前記保持穴内の正常に供給されたねじの頭部より供給パイプ側に設定されるねじ通過域に検出範囲がくるように配設された非接触式のセンサあるいは、ねじ通過域を撮像するように配設された撮像手段であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記破損防止手段の信号に基づき位置制御機構が駆動するため、当該位置制御機構の駆動を受けて移動するねじ締めツールおよび当該ねじ締めツールと接触するチャックユニットの破損を防止することが可能となる。また、を過度に押圧することを防止するため、当該押圧によりスクリューガイドおよびチャックユニット等の破損を防止可能等の利点がある。特にチャックユニットがスクリューガイドの移動経路状にチャック爪や供給パイプ等を備えるものである時、これらの破損を防止可能等の利点もある。また、前記破損防止手段は、スクリューガイドが前記供給パイプに当接する前から供給されたねじに当接する直前まで作動するよう構成されているため、不要な所で破損防止手段が作動することがなく、サイクルタイムが向上する等の利点もある。さらに、破損防止手段が昇降モータの負荷電流を測定して、負荷電流の大きさにより押圧力を測定する構成であるため、スクリューガイドがチャックユニットを押圧した力を即座に取得できる等の利点もある。一方、破損防止手段が位置制御機構と別に設けられた接触式センサである場合、位置制御機構がボールねじ機構以外の構成で良い等の利点を有する。
【0008】
また、破損防止手段が保持穴内のねじの姿勢を検出可能に構成されており、制御部が当該破損防止手段からの信号に基づき前記位置制御機構の駆動を制御するよう構成されている場合、スクリューガイドがチャックユニットに向かい移動し始める前にねじの供給不良を検出できる。このため、供給不良のねじ等がスクリューガイド衝突して破損することを防止可能等の利点がある。さらに、前記破損防止手段がねじ通過域を検出する非接触式のセンサあるいは、ねじ通過域を撮像する撮像手段であれば、ねじとセンサが接触することがなく、ねじの通過を阻害しない等の利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るねじ締め装置の側面図である。
図2】本発明に係るチャックユニットの構造を示す斜視図であり、(a)は、待機状態を示す要部拡大斜視図であり、(b)は、ねじ締め時の状態を示す要部拡大斜視図である。
図3】本発明に係るねじ締め装置の動作を説明する説明図であり、(a)は、待機状態を示す要部拡大一部切欠き断面図であり、(b)は、スクリューガイドが吸着パイプに接触する直前の状態を示す要部拡大一部切欠き断面図であり、(c)は、スクリューガイドが保持穴内のねじに接触する直前の状態を示す要部拡大一部切欠き断面図である。
図4】供給不良の発生状態を説明する説明図であり、(a)は、ねじが供給途中で停止した状態を示す要部拡大一部切欠き断面図であり、(b)は、ねじが2個同時に供給された状態を示す要部拡大一部切欠き断面図であり、(c)は、比較的短いねじが2個同時に供給されてきた状態を示す要部拡大一部切欠き断面図である。
図5】本発明に係るチャックユニットの第2の実施形態の構造を締めす側面断面図であり、(a)は、ねじが正常に供給された状態を示す要部拡大一部切欠き断面図であり、(b)は、ねじが2個同時に供給された状態を示す要部拡大一部切欠き断面図である。
図6】本発明に係るねじ締め装置の制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、10は、ワークに対して頭部および軸部を備えたねじSを締め付けるねじ締め装置である。このねじ締め装置10は、位置制御機構20と、この位置制御機構20の駆動を受けて昇降するねじ締めツール30と、ねじ締めツール30の移動経路上に配置されるチャックユニット40と、位置制御機構20およびねじ締めツール30の駆動を制御する制御部50を備える。
【0011】
前記位置制御機構20は、鉛直方向に延びるフレーム21を備えており、このフレーム21の上下端部には、水平方向に延びる上板211および下板212が一体に固定されている。この上板211および下板212の間には、フレーム21と平行に延びるガイドロッド22が設けられており、このガイドロッド22には、摺動自在に構成されたドライバ台23が昇降自在に装着されている。また、前記上板211には、昇降駆動源の一例である昇降用ACサーボモータ24(以下、昇降モータ24という)が載置されており、この昇降モータ24は、その出力軸にボールねじ25が一体に回転可能に連結されている。このボールねじ25は、前記上板211および下板212の間に設けられており、このボールねじ25には、その回転によって昇降する駆動ナット(図示せず)を介して前記ドライバ台23が連結されている。これら構造により、前記ドライバ台23は、前記昇降モータ24の回転駆動を受けて、ガイドロッド22に沿って昇降可能となる。なお、前記昇降モータ24には、その出力軸の回転量を検出可能な位置検出手段の一例であるエンコーダ(図示せず)が備えられている。
【0012】
前記ドライバ台23には、ねじ締めツール30のハウジング31が連結されており、このハウジング31上には、回転駆動源の一例であるACサーボモータ32(以下、締付モータ32とする)がその出力軸(図示せず)を下方に向けて載置されている。この締付モータ32の出力軸には、前記ハウジング31を回転自在に貫通している連結軸33が連結されており、この連結軸33には、ドライバビット34が装着されている。このドライバビット34は、その下端が前記ねじSの頭部と嵌合可能に構成されている。また、前記ハウジング31の下部には、前記連結軸33およびドライバビット34を内包する中空円筒状のスクリューガイド36設置されている。このスクリューガイド36は、その上部にコンプレッサ等の吸気手段(図示せず)まで連続する吸気ホース(図示せず)が連結されるエアホース継手37が取り付けられており、吸気手段が駆動するにより、当該スクリューガイド36の下端開口部にねじSを吸着保持可能に構成されている。また、スクリューガイド36と前記ハウジング31との間には、クッションばね(図示せず)が設けられており、スクリューガイド36は、このクッションばねにより常時所定の力で下方に向けて付勢されている。つまり、スクリューガイド36は、クッションばねの伸縮に連動してハウジング31およびドライバビット34に対して軸方向に相対移動可能に構成されている。
【0013】
また、前記チャックユニット40は、前記下板212を貫通して固定されるチャック本体41を有する。このチャック本体41には、図2の(a)に示すように前記スクリューガイド36の最大径より大きい穴径の案内穴411が貫通形成されており、この案内穴411は、スクリューガイド36が軸方向に挿通自在に構成されている。このチャック本体41の両側面には、案内穴411を挟むように一対の前記チャック爪42,42が揺動自在に装着されており、このチャック爪42,42は、チャック本体41との間に挟設された爪ばね(図示せず)により、常時先端側が閉じるよう付勢されている。このチャック爪42,42の対向面には、前記案内穴411の延長線上に保持穴421が分割形成されている。この保持穴421は、前記ねじSの頭部径より大きい穴径に形成されており、その前方には、ねじSの軸部径より大きくかつ頭部径より小さい穴径を有するガイド穴422が連続している。これにより、チャック爪42,42は、図3の(a)に示すように保持穴421およびガイド穴422の境界部分に頭部座面を当接させてねじSを保持する。
【0014】
また、前記チャック本体41には、前記案内穴411に対して傾斜し、それぞれの延長線が交差する傾斜穴412が形成されており、この傾斜穴412には、外部のねじ供給装置(図示せず)から伸びる供給ホース61が接続されるホース取付金具43が設置されている。このホース取付金具43は、ねじSが通過可能に構成された円筒状部材であり、このホース取付金具43と前記チャック爪42,42との間には、前記供給パイプ44が連結されている。この供給パイプ44もねじSが通過可能に構成された円筒状部材であり、チャック本体41の両側面それぞれに配された止めねじ45を支軸として前記チャック爪42,42の揺動面から離反する方向へ揺動可能に装着されている。この供給パイプ44は、常時ホース取付金具43に連通し、なおかつその先端部がチャック爪42,42の保持穴421の後端部に連続するようねじりコイルばね46により付勢されており、このねじりコイルばね46は、その端部が前記止めねじ45に巻き付けられている。
【0015】
さらに、前記チャックユニット40は、チャック爪42の揺動を規制する揺動規制機構の一例として、前記供給パイプ44と連動する揺動板47を有している、この揺動板47は、前記供給パイプ44と同様、前記止めねじ45を支軸として揺動可能に構成されており、前記ねじりコイルばね46により、常時チャック爪42,42側に付勢されている。この揺動板47には、二又の嵌合部48,48が形成されている。この嵌合部48,48は、図2の(a)に示すように前記供給パイプ44が前記案内穴411の延長線上に位置する時、チャック爪42,42と嵌合し、チャック爪42,42の外側に当接し、開くことを強制的に規制可能かつ、図2の(b)に示すように前記チャック爪42,42が前記スクリューガイド36に押し開けられる前に当該チャック爪42,42から外れるように寸法設定されている。
【0016】
前記制御部50は、前記昇降モータ24、締付モータ32、前記スクリューガイド36に連続する吸気手段およびねじ供給装置等が接続されており、これらから出力される各種信号を受信してその信号に基づいて各ユニットの動作を制御するように構成されている。この制御部50は、前記昇降モータ24のエンコーダが出力するパルス信号を処理可能に構成されており、当該パルス信号(昇降モータ24の回転量)とボールねじ25のリードからねじ締めツール30の移動量すなわちドライバビット34およびスクリューガイド36の移動位置を算出可能に構成されている。
【0017】
また、制御部50には、制御データとして、図3の(a)に示すねじ締めツール30の待機位置と、待機位置から図3の(b)に示すスクリューガイド36が供給パイプ44に当接する直前の位置(以下、衝突判別開始位置という)までのねじ締めツール30の移動量のデータと、衝突判別開始位置から図3の(c)に示すドライバビット34あるいはスクリューガイド36がチャックの保持穴421内に正しい姿勢で供給されたねじSと当接する位置(以下、衝突判別終了位置という)までのねじ締めツール30の移動量のデータと、待機位置からスクリューガイド36がワークに当接する直前の位置(以下、ワーク直前位置という)までのねじ締めツール30の移動量のデータが予め設定されている。
【0018】
なお、前記昇降モータ24は、破損防止手段の一例である。この昇降モータ24は、前記衝突確認開始位置から衝突判別終了位置までの間、ねじ締めツール30が移動することで生じる荷重に応じた負荷電流値を前記制御部50に送信するように構成されている。また、制御部50は、ねじ締めツール30がチャックユニット40に衝突して停止することで発生する荷重に応じた昇降モータ24の負荷電流値(衝突電流値)もあらかじめ登録されており、昇降モータ24が駆動している時に負荷電流値が衝突電流値に達するとねじ締めツール30がチャックユニット40に衝突したと判断するように構成されている。
【0019】
制御部50は、図6に示すように、
S01:スタート信号の入力を待つ。
S02:昇降モータ24に下降駆動指令を送るとともに、吸気手段に駆動指令を出力する。
S03:ねじ締めツール30が衝突判別開始位置に到達するのを待つ。
S04:昇降モータ24の負荷電流値を取得する。
S05:昇降モータ24の負荷電流値が衝突電流値に達しているか否かを確認し、達している場合は異常信号を出力してS12に進む。
S06:ねじ締めツール30が衝突判別終了位置に到達しているか否かを確認し、到達していない場合はS04に戻る。
S07:ねじ締めツール30が衝突判別終了位置に到達するのを待つ。
S08:締付モータ32を駆動させる。
S09:締め付け完了するのを待つ。
S10:吸気手段および締付モータ32に駆動停止指令を出力し、昇降モータ24に上昇駆動指令を送る。
S11:ねじ締めツール30が待機位置に到達するのを待つ。
S12:エンド。
と処理するように構成されている。
なお、図6では省略しているが、制御部50は、スタート信号入力直後(図6のS01とS02との間)にねじ供給装置を作動させチャックユニット40に向けてねじSを圧送する工程を有する。
【0020】
次に、上記のように構成されたねじ締め装置10の作用を説明する。
スタート信号が入力されると制御部50は、ねじ供給装置を駆動させ、ねじSをチャックユニット40に向けて圧送する。この圧送されたねじSは、前記供給ホース61および供給パイプ44を通じて前記チャック爪42,42の保持穴421まで供給される。この時、チャック爪42,42が嵌合部48,に規制されており、ねじSを圧送するための圧送エア、供給パイプ44とチャック爪42との接続箇所等でねじSが方向変換する際の衝撃、および圧送されてきたねじSの頭部座面が前記保持穴421およびガイド穴422の境界部分に接触する衝撃等によってチャック爪42,42が大きく押し開けられることが防止されている。このようにチャック爪42,42の揺動が防止されているため、ねじSは、図に示すようにその頭部が前記保持穴421およびガイド穴422の境界部分に当接して停止する。結果、ねじSは、頭部が保持穴421にガイドされ、軸部がガイド穴422にガイドされる正しい姿勢でチャック爪42,42の内部に保持される。
【0021】
上述のように保持穴421にねじSが供給されると制御部50は、前記昇降モータ24を駆動させ、ねじ締めツール30を下降させるとともに、前記吸気手段を駆動させ、前記スクリューガイド36の先端開口部から吸気を開始する。その後、ねじ締めツール30が衝突判別開始位置に達すると破損防止手段が起動する。このように下降するねじ締めツール30のスクリューガイド36に押されて前記供給パイプ44がチャック爪42,42の揺動面から離反する方向に揺動すると、前記揺動板47も供給パイプ44に連動してチャック爪42,42の揺動面から離反する方向に揺動する。これにより、揺動板47の嵌合部48,48がチャック爪42,42から外れるため、チャック爪42,42が自在に揺動可能となる。その後、さらに下降したねじ締めツール30のスクリューガイド36は、その先端部が前記保持穴421内に侵入後、前記衝突判別終了位置に到達する。この時、前述のように吸気手段が既に駆動しているため、保持穴421内のねじSがスクリューガイド36の先端開口部に吸着保持される。また、前述のようにねじSが保持穴421内に正しい姿勢で保持されているため、スクリューガイド36の先端に確実にねじSを吸着保持することが可能となる。その後、スクリューガイド36がさらに下降することで、チャック爪42が押し開けられる。
【0022】
上述のようにチャックユニット40を通過したスクリューガイド36がワーク直前位置に達すると、制御部50は、締付モータ32を正転駆動させる。これにより、前記ドライバビット34が回転を開始する。その後、さらに下降したスクリューガイド36がワークの表面に当接すると、前記クッションばねが撓み、ドライバビット34のみ前進することとなる。この時、ドライバビット34が締付モータ32の駆動を受けて回転しているため、スクリューガイド36内でドライバビット34とねじSが嵌合し、ねじSがワークに締結される。ねじ締結終了後、制御部50は、吸気手段および前記締付モータ32を停止させるとともに、昇降モータ24を逆転駆動させ、ねじ締めツール30を待機位置まで復帰させる。
【0023】
上述したスクリューガイド36へのねじSの供給において、図4の(a)に示すように圧送されたねじSが供給パイプ44と保持穴421との境界にまたがる位置で停止するあるいは、図4の(b)に示すように同時に2個のねじS,Sが供給される等により、ねじSが供給パイプ44に噛み込み、供給パイプ44の揺動を阻害することがある。この際、スクリューガイド36は、揺動できない状態の供給パイプ44と衝突後も衝突判別終了位置に向かい下降するため、供給パイプ44を押圧する。この押圧時、揺動板47の揺動量が小さく、嵌合部48がチャック爪42から外れていない場合、スクリューガイド36が衝突判別終了位置に向かい下降しようとすることで供給パイプ44およびねじSを介してチャック爪42まで押圧することとなる。このように供給不良が発生した際、従来のねじ締め装置は、下降しようとするスクリューガイド36が供給パイプ44を過度に押圧するため、スクリューガイド36の下端および供給パイプ44やねじS、チャック爪42に強い力が掛かり、これら部品が破損する可能性があった。しかしながら、本願発明は、制御部50が昇降モータ24の負荷電流値を監視しており、昇降モータ24の負荷電流値が衝突電流値に達すると、制御部50が昇降モータ24を逆転駆動させてねじ締めツール30を待機位置まで復帰させるように構成されている。この結果、スクリューガイド36が供給パイプ44やねじSおよびチャック爪42等を過度に押圧する前に昇降モータ24によるねじ締めツール30の下降を中断させることができ、各種部品の破損を防止できる。なお、スクリューガイド36と供給パイプ44およびねじS等との衝突時、スクリューガイド36を付勢する前記クッションばねが撓み、当該衝突による衝撃を吸収しており、各種部品の破損が防止されている。また、ねじSの長さによっては、上述のように同時な供給不良が生じても供給パイプ44が揺動できる場合があり、この場合、スクリューガイド36は、図4の(c)に示すように衝突判別終了位置に到達する前にねじSと衝突する。この時、ねじSの姿勢によっては、チャック爪42が揺動しない方向に力が加わり、ねじSを間に挟んだ状態でチャック爪42とスクリューガイド36とが押し合う状態となる。このような状態であっても前述したように昇降モータ24の負荷電流値が衝突電流値に達した時点でスクリューガイド36の下降を停止させるため、各部品の破損を防止できる。なお、ねじ締めツール30が衝突判別開始位置から衝突判別終了位置まで移動する間、破損防止手段が作動するように設定されていることにより、作業時間が短縮され、サイクルタイムを向上できる。
【0024】
なお、本発明に係るねじ締め装置10は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ねじ締め装置10においてチャックユニット40は、揺動規制機構の一例として揺動板47を備えていたがチャック爪42の揺動を規制可能な構成であれば、特許3718349号に示されるように側面に円柱状の突起が形成されたチャック爪と、チャック爪の突起に噛み合う八の字状の穴が形成された操作板と、この操作板を上下させるエアシリンダとを備えるチャックユニット等であっても良い。また、前記図6に示す制御部50の処理手順は、あくまで一例であり、ねじ締めツール30の初期位置等により適宜変更可能である。例えば、ねじ締めツール30の待機位置が衝突判別開始位置と非常に近い場合、スタート信号が入力され、昇降モータ24が起動すると同時にその負荷電流値の監視を開始する構成であってもよい。また、衝突判別終了位置の位置は、揺動板47の嵌合部48がチャック爪42から外れ、スクリューガイド36がねじSを介してチャック爪42を過度な押圧した場合、チャック爪42が揺動してねじSを外部に排出可能な位置または、保持穴421の下端からスクリューガイド36の下端までの寸法がねじSの寸法以下となり、ねじSが正常に供給されていると判断できる位置の少なくとも一方を満たすように設定されており、ねじSの長さや形状、あるいは揺動板47の嵌合部48の長さ等に合わせて適宜変更可能である。
【0025】
また、前述のように昇降モータ24の負荷電流値を監視する構成は、破損防止手段の一例であり、その他の構成であっても何ら問題ない。例えば、スクリューガイド36とドライバビット34との相対移動を検出可能な変位センサであり、スクリューガイド36に対してドライバビット34の相対的な下降量が正常時の下降量より大きければ、スクリューガイド36が供給パイプ44等に当接して停止している状態でドライバビット34が下降している、つまりスクリューガイド36が供給パイプ44等を過度に押圧していると判断する構成等であってもよい。他にも、前記チャックユニット40のチャック爪42、供給パイプ44、あるいはねじ締めツール30のスクリューガイド36、ドライバビット34の何れかに取り付けられた圧力センサ(図示せず)により、所定の圧力以上であれば、ねじ締めツール30がチャックユニット40を過度に押圧していると判断する構成等であってもよい。これらのように前記ねじ締めツール30が衝突判別開始位置から衝突判別終了位置まで移動する間、ねじ締めツール30がチャックユニット40を過度に押圧しているか監視する構成の場合、前記制御部50は、図6のS04の処理で所定の破損防止手段の出力信号を受け取り、図6のS05の処理で当該出力信号の値が正常値か否かを判別するよう構成されていれば良い。
【0026】
さらに、破損防止手段は、スクリューガイド36が供給パイプ44等に衝突したことを検出する構成にかぎらず、保持穴421内のねじSの姿勢を検出する構成であっても良い。例えば、図5の(a)および(b)の2点鎖線に示すように前記保持穴421内の正常に供給されたねじSの頭部より上側に位置する空間423(以下、ねじ通過域423という)をねじSが通過したことを検出可能な光学センサや近接センサ等のセンサ424あるいは当該ねじ通過域423を撮影可能なカメラ(図示せず)であっても良い。このようにスクリューガイド36が下降する前に異常を検出する破損防止手段は、制御部50が前記位置制御機構20に駆動信号を出力する前(前記図6のS01とS02の間)に前記ねじ通過域423にねじSが存在するか否かを検出できる。また、制御部50は当該破損防止手段からの検出信号を受信後に前記位置制御機構20を駆動させるように構成されており、図5の(a)に示すようにねじSが保持穴421に正常に供給されている時は前記位置制御機構20を駆動させる一方、図5の(b)に示すようにねじSが2本供給される等の供給不良が生じている時は位置制御機構20を駆動させることなく異常信号を出力する。結果、前述のように位置制御機構20の駆動を受けたスクリューガイド36が供給不良のねじSによって揺動できない状態の供給パイプ44等に衝突することがなく、各種部品の破損が防止される。
【符号の説明】
【0027】
10 … ねじ締め装置
20 … 位置制御機構
24 … 昇降モータ
25 … ボールねじ
30 … ねじ締めツール
34 … ドライバビット
36 … スクリューガイド
40 … チャックユニット
41 … チャック本体
411… 案内穴
42 … チャック爪
421… 保持穴
44 … 供給パイプ
50 … 制御部
S … ねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6