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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032377
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/70 20180101AFI20230302BHJP
   F24F 7/10 20060101ALN20230302BHJP
   F24F 3/00 20060101ALN20230302BHJP
   F24F 7/06 20060101ALN20230302BHJP
【FI】
F24F11/70
F24F7/10 Z
F24F3/00 Z
F24F7/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138482
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭人
(72)【発明者】
【氏名】小林 純哉
(72)【発明者】
【氏名】永田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】重森 正宏
【テーマコード(参考)】
3L053
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB10
3L058BB01
3L260AB07
3L260BA02
3L260CA12
3L260EA07
3L260FA03
3L260FB41
(57)【要約】
【課題】空調ユニット内に設置された空調機の発停運転を抑制し省エネ性を向上させることが可能な空調システムを提供する。
【解決手段】空調システムは、複数の被空調空間へ空調空気を供給する空調ユニット1と、空調ユニット1の外郭を形成するユニット本体2と、ユニット本体2に取り込んだ空気の温調を行う空調機3と、空調機3から吹き出された空気をユニット本体2外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機(送風機4a、送風機4b)と、空調機3を制御するコントローラ30と、を備える。そして、コントローラ30は、空調機3が吸引した空気の温度である吸込温度と空調機3に設定される空調機設定温度との温度差である空調機温度差が空調停止判定温度差よりも大きな値となるように空調機設定温度を決定し、決定した空調機設定温度によって空調機3を動作させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空間へ空調空気を供給する空調ユニットと、
前記空調ユニットの外郭を形成するユニット本体と、
前記ユニット本体に取り込んだ空気の温調を行う空調機と、
前記空調機から吹き出された空気を前記ユニット本体外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機と、
前記空調機を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記空調機が吸引した空気の温度である吸込温度と前記空調機に設定される空調機設定温度との温度差である空調機温度差が空調停止判定温度差よりも大きな値となるように前記空調機設定温度を決定し、決定した前記空調機設定温度によって前記空調機を動作させることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記複数の空間のそれぞれに対する空調要求量を、前記空間の温度と前記空間に設定される室内設定温度との温度差に基づいて決定し、決定した前記空調要求量がすべての前記空間において第一基準温度以下となる第一条件と、決定した前記空調要求量が少なくとも1つの前記空間において第二基準温度以下となる第二条件と、決定した前記空調要求量の平均値が第三基準温度以下となる状態において前記空調機の空調運転時間が所定の時間以上となる第三条件とをすべて満たす場合に、前記空調機の空調運転を停止させることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記空調機が空調運転を停止しているとき、前記空調要求量が、少なくとも1つの前記空間において第四基準温度より大きくなった場合に、前記空調機の空調運転を開始させることを特徴とする請求項2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の複数の部屋を1つの空気調和機で空調することを可能にする空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空調システムとして、住宅の一部の専用スペースにエアーコンディショナ(空調機)を設置し、エアーコンディショナによって専用スペース内に温調した空気(冷風もしくは温風)を吹き出し、この温調された空気を送風機によりダクトを介して各居室に送風し、各居室の空調を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の空調システムでは、各居室の室温と各居室に与えられる設定温度を用いて住宅全体の空調要求量を決定し、決定した空調要求量に基づいてエアーコンディショナに与える設定温度を調節するようにしている。エアーコンディショナは、与えられた設定温度とエアーコンディショナが吸い込む空気の温度(吸込温度)とに基づいて、吹出温度の調節と空調運転の開始/停止判断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-257399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の空調システムにおいては、季節の変わり目など外気負荷が小さい時期は、少しの空調運転で室温が居室の設定温度に近づくため、空調機の設定温度を室温と近い値とすることで空調機の空調運転の出力を抑えている。このとき、空調機の吸込温度と住宅の各居室の室温は必ずしも一致しておらず、また、空調機は居室より狭い空間である空調ユニット内に隠蔽されて利用されるため、空調機の空調出力によって吸込温度が変化してしまうことがある。このように空調機の吸込温度が変化する場合、空調機が空調運転と停止を繰り返す発停運転を行ってしまうことがある。一般に空調機が発停運転する状態はCOP(Coefficient of Performance)が悪い。すなわち、従来の空調システムは空調機の発停運転により省エネ性が悪化するという課題を有していた。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、空調ユニット内に設置された空調機の発停運転を抑制し省エネ性を向上させることが可能な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る空調システムは、複数の空間へ空調空気を供給する空調ユニットと、空調ユニットの外郭を形成するユニット本体と、ユニット本体に取り込んだ空気の温調を行う空調機と、空調機から吹き出された空気をユニット本体外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機と、空調機を制御するコントローラと、を備える。そして、コントローラは、空調機が吸引した空気の温度である吸込温度と空調機に設定される空調機設定温度との温度差である空調機温度差が空調停止判定温度差よりも大きな値となるように空調機設定温度を決定し、決定した空調機設定温度によって空調機を動作させることを特徴としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空調ユニット内に設置された空調機の発停運転を抑制し省エネ性を向上させることが可能な空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システムの構成図である。
図2図2は、空調システムにおける空調ユニットの正面模式図である。
図3図3は、空気の流れを示す空調ユニットの側断面図である。
図4図4は、空調システムにおけるコントローラの機能ブロック図である。
図5図5は、コントローラの基本処理動作を示すフローチャート図である。
図6図6は、コントローラの空調機の運転開始/停止の制御動作を示すフローチャート図である。
図7図7は、コントローラの空調機設定温度の決定動作を示すフローチャート図である。
図8図8は、空調機の運転動作を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る空調システムは、複数の空間へ空調空気を供給する空調ユニットと、空調ユニットの外郭を形成するユニット本体と、ユニット本体に取り込んだ空気の温調を行う空調機と、空調機から吹き出された空気をユニット本体外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機と、空調機を制御するコントローラと、を備える。そして、コントローラは、空調機が吸引した空気の温度である吸込温度と空調機に設定される空調機設定温度との温度差である空調機温度差が空調停止判定温度差よりも大きな値となるように空調機設定温度を決定し、決定した空調機設定温度によって空調機を動作させる。
【0011】
こうした構成によれば、空調機温度差が空調機設定温度よりも大きい状態で空調機が動作するため、空調機が停止せず継続運転することでCOPが向上し、省エネ性が向上する。
【0012】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、複数の空間のそれぞれに対する空調要求量を、空間の温度と空間に設定される室内設定温度との温度差に基づいて決定する。そして、決定した空調要求量がすべての空間において第一基準温度以下となる第一条件と、決定した空調要求量が少なくとも1つの空間において第二基準温度以下となる第二条件と、決定した空調要求量の平均値が第三基準温度以下となる状態において空調機の空調運転時間が所定の時間以上となる第三条件とをすべて満たす場合に、空調機の空調運転を停止させる。これにより、すべての空間が十分空調された場合、かつ、少なくとも1つの空間において空調が過剰となった場合、かつ、空調機の空調運転の出力が最小の状態が所定の時間継続した場合に限り、空調機の空調運転が停止する。このため、空調システムは、過剰に空調することが抑制されるとともに、空調運転が開始してから空調運転が停止するまで所定の時間空調運転が継続するため、発停運転が抑制され、省エネ性が向上する。
【0013】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、空調機が空調運転を停止しているとき、空調要求量が、少なくとも1つの空間において第四基準温度より大きくなった場合に、空調機の空調運転を開始させる。これにより、空調システムは、少なくとも1つの空間で空調が不足した場合にすぐさま空調が開始するため、快適性を損ねることなく省エネを実現できる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る空調システム101の概略について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システム101の構成図である。
【0016】
空調システム101は、建物内の複数の空間を1つの空気調和機で空調するためのシステムである。空調システム101は、図1に示すように、空調ユニット1と、複数のダクト11(ダクト11a、11b)と、複数の分岐チャンバ12(分岐チャンバ12a、12b)と、室内温度センサ14(室内温度センサ14a~14d)と、給気口15(給気口15a~15d)と、コントローラ30と、を備えて構成される。そして、空調システム101は、空調ユニット1において温調した空気を用いて後述する被空調空間16の空調を行う。
【0017】
具体的には、空調システム101は、建物の一例である住宅100に設置される。住宅100は、例えば、居間、寝室、食堂、書斎等の居室に相当する被空調空間16(被空調空間16a~16d)と、廊下、階段、吹き抜けなどに相当する共用スペース17(共用スペース17a、17b)と、被空調空間16及び共用スペース17とは独立して空調ユニット1が設置される専用設置スペース20とを有している。
【0018】
被空調空間16は、空調システム101において空調の対象となる空間である。被空調空間16は、住宅100の二階に位置する被空調空間16a、16bと、住宅100の一階に位置する被空調空間16c、16dと、を含む。被空調空間16a~16dには、後述する空調ユニット1から温調された空気がそれぞれ給気される。
【0019】
共用スペース17は、空調システム101において空調の対象となっていない空間である。共用スペース17は、住宅100の二階に位置する共用スペース17aと、住宅100の一階に位置する共用スペース17bと、を含む。また、共用スペース17aと共用スペース17bとは、図示しない階段等を介して互いにつながっている。なお、共用スペース17に対して、被空調空間16と同様、後述する空調ユニット1から温調された空気が給気されるようにしてもよい。
【0020】
専用設置スペース20は、空調ユニット1が収納・設置される空間である。また、専用設置スペース20には、扉(図示せず)が設けられており、扉は、例えば、共用スペース17に面している。これにより、専用設置スペース20内の空調ユニット1のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0021】
空調ユニット1は、専用設置スペース20内に設置され、住宅100内の空気を内部に吸い込み、吸い込んだ空気を温調(冷却または昇温)して送出するユニットである。詳細は後述する。
【0022】
ダクト11は、屋根裏18あるいは天井裏19の壁内空間等に設けられ、空調ユニット1と被空調空間16との間を連通接続する部材である。ダクト11は、例えば、その内壁面または外壁面にグラスウールなどで断熱加工が施されている。そして、ダクト11には、ダクト11の空調ユニット1側に分岐チャンバ12が設けられ、ダクト11の被空調空間16側に給気口15が設けられている。より詳細には、ダクト11は、二階の屋根裏18に設けられたダクト11aと、一階の天井裏19に設けられたダクト11bと、を含む。そして、ダクト11aには、ダクト11aの空調ユニット1側に分岐チャンバ12aが設けられ、ダクト11aの被空調空間16側に給気口15a、15bがそれぞれ設けられている。また、ダクト11bには、ダクト11bの空調ユニット1側に分岐チャンバ12bが設けられ、ダクト11bの被空調空間16側に給気口15c、15dがそれぞれ設けられている。
【0023】
分岐チャンバ12は、ダクト11の空調ユニット1側に設置され、空調ユニット1から送出される空気(温調された空気)を複数の被空調空間16に分岐するチャンバである。分岐チャンバ12は、ダクト11aに設けられた分岐チャンバ12aと、ダクト11bに設けられた分岐チャンバ12bと、を含む。そして、分岐チャンバ12aは、空調ユニット1から送出される空気を被空調空間16a及び被空調空間16bの2系統に分岐する。分岐チャンバ12bは、空調ユニット1から送出される空気を被空調空間16c及び被空調空間16dの2系統に分岐する。
【0024】
給気口15は、被空調空間16の床または壁または天井に設置され、空調ユニット1からの空気(空調空気)を、ダクト11を介して被空調空間16に吹き出す開口である。より詳細には、給気口15は、被空調空間16aに設置される給気口15aと、被空調空間16bに設置される給気口15bと、被空調空間16cに設置される給気口15cと、被空調空間16dに設置される給気口15dと、を含む。そして、給気口15a及び給気口15bは、空調ユニット1からの空気を、ダクト11aを介して被空調空間16a及び被空調空間16bにそれぞれ吹き出す。また、給気口15c及び給気口15dは、空調ユニット1からの空気を、ダクト11bを介して被空調空間16c及び被空調空間16dにそれぞれ吹き出す。
【0025】
また、室内温度センサ14は、被空調空間16内に設置され、被空調空間16の空気の温度(室内温度)を検出する。室内温度センサ14は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、検出した室内温度に関する情報をコントローラ30に出力する。より詳細には、室内温度センサ14は、被空調空間16aに設置される室内温度センサ14aと、被空調空間16bに設置される室内温度センサ14bと、被空調空間16cに設置される室内温度センサ14cと、被空調空間16dに設置される室内温度センサ14dと、を含む。そして、室内温度センサ14aは、被空調空間16aの室内温度を検出してコントローラ30に出力する。室内温度センサ14bは、被空調空間16bの室内温度を検出してコントローラ30に出力する。室内温度センサ14cは、被空調空間16cの室内温度を検出してコントローラ30に出力する。室内温度センサ14dは、被空調空間16dの室内温度を検出してコントローラ30に出力する。
【0026】
コントローラ30は、リビング等の生活の主となる居室(例えば、被空調空間16b)内の壁面に設置され、利用者が入力設定した設定情報に基づいた空調システム101の制御として、空調ユニット1の動作を制御する。詳細は後述する。
【0027】
次に、図2を参照して、空調ユニット1の構成について説明する。図2は、空調システム101の空調ユニット1の正面模式図である。
【0028】
空調ユニット1は、上述した通り、専用設置スペース20内に設置され、住宅100内の空気を内部に吸い込み、吸い込んだ空気を温調(冷却または昇温)して送出するユニットである。
【0029】
具体的には、空調ユニット1は、図2に示すように、ユニット本体2と、空調機3と、送風機4と、吸込口5と、空調機設置空間6と、送風機設置空間7と、吹出口8(図3参照)と、フィルタ9と、吸込温度センサ40と、を有している。
【0030】
ユニット本体2は、空調ユニット1の外郭を形成する筐体である。ユニット本体2は、その上面側に吸込口5が形成され、その背面側に吹出口8(図3参照)が形成されている。そして、ユニット本体2は、その内部に空調機3、送風機4、及びフィルタ9が設置されている。
【0031】
空調機3は、ユニット本体2の上部側に位置する空調機設置空間6に設置され、吸込口5を介して内部に吸い込んだ空気の空調を行う機器である。空調機3は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、コントローラ30からの制御信号をもとに、空調動作(暖房運転動作または冷房運転動作)を行う。そして、空調機3は、暖房運転の際には、吸い込んだ空気を昇温させて吹き出し、冷房運転の際には、吸い込んだ空気を冷却して吹き出す。また、空調機3は、その内部に吸い込んだ空気の温度を検出する吸込温度センサ40を備える。
【0032】
送風機4は、ユニット本体2の下部側に位置する送風機設置空間7に設置され、空調機3によって温調した空気を、吹出口8から送出するための機器である。送風機4は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、コントローラ30からの制御信号によって送風動作が制御される。そして、送風機4が動作することによって、空調ユニット1による空気の一連の流れが形成される。つまり、住宅100内の空気は、送風機4、吹出口8、ダクト11(分岐チャンバ12を含む)、給気口15、被空調空間16、共用スペース17、専用設置スペース20、吸込口5、空調機設置空間6(空調機3)、フィルタ9、送風機設置空間7の順に流れるようになる(図1図3を参照)。より詳細には、送風機4は、二階の被空調空間16(被空調空間16a、16b)に空気を送出する送風機4aと、一階の被空調空間16(被空調空間16c、16d)に空気を送出する送風機4bと、を含む。送風機4aは、ユニット本体2の背面側に設けられた吹出口8aと連通し、空調機3によって温調された空気を、吹出口8a及びダクト11aを介して給気口15a、15bから被空調空間16a、16bに送出する。送風機4bは、ユニット本体2の背面側に設けられた吹出口8bと連通し、空調機3によって温調された空気を、吹出口8b及びダクト11bを介して給気口15c、15dから被空調空間16c、16dに送出する。
【0033】
吸込口5は、ユニット本体2の上面に設けられた矩形形状の開口である。吸込口5の矩形幅は、ユニット本体2の幅と同等である。そして、吸込口5は、送風機4が動作することで、専用設置スペース20内の空気を吸い込む。なお、吸込口5が設けられるのは、上面に限らず、空調機3の空気吸込口近傍であればよい。
【0034】
空調機設置空間6は、ユニット本体2の内部の上部側において、空調機3が設置される空間である。
【0035】
送風機設置空間7は、ユニット本体2の内部の下部側において、送風機4が設置される空間である。
【0036】
吹出口8は、後述する図3に示すように、ユニット本体2の背面側に設けられ、ユニット本体2の内部で温調された空気が吹き出す開口である。吹出口8は、ダクト11と連通接続されている。より詳細には、吹出口8は、ダクト11aと連通接続される吹出口8aと、ダクト11bと連通接続される吹出口8bと、を含む。また、吹出口8aは、ユニット本体2の上方に向けて開口され、吹出口8bは、ユニット本体の下方に向けて開口されている。
【0037】
フィルタ9は、空調機設置空間6と送風機設置空間7との間に設置され、通過する空気内のゴミ及び塵埃などの微粒子を取り除き、吹出口8からダクト11を通じて被空調空間16へ供給される空気の浄化を行う部材である。フィルタ9は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタなどのエアフィルタである。フィルタ9は、ユニット本体2の内部において集塵面積を確保するため、所定の厚さのHEPAフィルタをM字状に配置している。
【0038】
吸込温度センサ40は、空調機3の吸込口内部に設置され、空調機3が吸い込む空気の温度(請求項1の「吸込温度」)を検出する。吸込温度センサ40は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、検出した吸込温度に関する情報をコントローラ30に出力する。
【0039】
以上のように、空調ユニット1は、各部材によって構成され、吸込口5から吸い込んだ空気を温調して吹出口8から送出する。
【0040】
次に、図3を用いて、空調ユニット1による空気の流れについて説明する。図3は、空気の流れを示す空調ユニット1の側断面図である。
【0041】
空調ユニット1は、図3に示すように、被空調空間16からの空気Q1を吸込口5から内部に取り入れる。そして、取り入れた空気Q1は、空調機3に吸い込まれ、内部で温調(冷却または昇温)されて空気Q2として空調機設置空間6に吹き出される。吹き出された空気Q2は、フィルタ9を流通して送風機設置空間7に流れ込む。そして、空気Q2は、送風機4を介して吹出口8から空気Q3として送出される。より詳細には、空気Q2は、コントローラ30によって制御されるそれぞれの送風量にて、送風機4aを介して吹出口8aから空気Q3aとして送出され、送風機4bを介して吹出口8bから空気Q3bとして送出される。
【0042】
そして、送出された空気Q3は、ダクト11を介して被空調空間16のそれぞれに分岐して供給される(図1参照)。なお、送風機4の送風量が空調機3から吹き出される風量(吹出風量)よりも多い場合には、吸込口5から空調ユニット1の内部に取り入れた空気Q1は、空調機3を流通して空気Q2aとして空調機設置空間6に流れ込む空気Q1aと、空調機3を流通することなく、空気Q2bとして空調機設置空間6に流れ込む空気Q1bに分かれる。
【0043】
次に、図4を参照して、空調システム101におけるコントローラ30について説明する。図4は、空調システム101におけるコントローラ30の機能ブロック図である。
【0044】
コントローラ30は、住宅100のリビング等の生活の主となる居室内の壁面に設置され、空調ユニット1(空調機3、送風機4)の動作を制御する。また、コントローラ30は、利用者による操作を容易にするため、居室の床から人間の顔程度の高さに設置される。コントローラ30は、矩形形状を有し、本体の正面中央領域に表示パネル30j及び表示パネル30jの右側領域に操作パネル30aを備えている。
【0045】
表示パネル30jは、液晶モニタ等であり、表示画面に空調ユニット1の動作状況、設定温度、設定風量、及び被空調空間16の現在の室内温度、等を表示する。
【0046】
操作パネル30aは、利用者が被空調空間16に対する設定温度(以下、「室内設定温度」ともいう)及び設定風量等を入力するためのボタンスイッチ等である。
【0047】
そして、コントローラ30は、本体の内部にコンピュータのCPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を有する制御ユニットが収納されている。
【0048】
具体的には、コントローラ30の制御ユニットは、入力部30bと、処理部30cと、記憶部30dと、計時部30eと、風量決定部30gと、設定温度決定部30hと、出力部30iと、を備える。
【0049】
入力部30bは、室内温度センサ14からの被空調空間16の室内温度に関する情報(第一情報)と、吸込温度センサ40からの空調機3の吸込温度に関する情報(第二情報)と、操作パネル30aからの利用者の入力設定に関する情報(第三情報)とを受け付ける。入力部30bは、受け付けた第一情報~第三情報を処理部30cに出力する。
【0050】
記憶部30dは、処理部30cにより参照または更新されるデータを記憶する。例えば、記憶部30dは、空調機3及び送風機4の動作態様を決定するアルゴリズムを記憶している。また、記憶部30dは、入力部30bが受け付けた第一情報~第三情報を時系列に記憶している。そして、記憶部30dは、記憶したデータ(記憶データ)を、処理部30cからの要求に応じて処理部30cに出力する。
【0051】
計時部30eは、処理部30cが実行するプログラムの中で、必要に応じて時間の測定に使用される。そして、計時部30eは、現在時刻を示すデータ(時刻データ)を処理部30cに出力する。
【0052】
処理部30cは、入力部30bからの第一情報~第三情報と、記憶部30dからの記憶データと、計時部30eからの時刻データとを受け付ける。処理部30cは、受け付けた各情報を用いて、一定時間(例えば5分)ごとに、被空調空間16に必要とされる空調要求量を特定する。より詳細には、処理部30cは、計時部30eから取得する時刻データに基づいて一定時間ごとに、記憶部30dに記憶された室内設定温度と、被空調空間16a~16dに設置された室内温度センサ14a~14dで検知される室内温度との間の温度差に基づいて、被空調空間16a~16dごとに個別に必要とされる空調要求量を特定する。また、処理部30cは、表示パネル30jに表示される情報の変化に応じて、出力部30iを介して表示パネル30jの表示を更新する。
【0053】
風量決定部30gは、処理部30cから空調要求量に関する情報を取得し、空調要求量の平均値または合計値に基づいて空調機3の吹出風量を決定する。また、風量決定部30gは、一階と二階のそれぞれの空調要求量の平均値または合計値に基づいて送風機4(送風機4a、送風機4b)の送風量を決定する。そして、風量決定部30gは、決定した空調機3の吹出風量に関する情報(吹出風量情報)と、決定した送風機4の送風量に関する情報(送風量情報)を処理部30cに出力する。
【0054】
設定温度決定部30hは、処理部30cから空調要求量及び空調機3の吸込温度に関する情報(第二情報)を取得し、空調要求量の平均値または合計値と空調機3の吸込温度に基づいて空調機3の空調機設定温度を決定する。そして、設定温度決定部30hは、決定した空調機3の空調機設定温度に関する情報(空調機設定温度情報)を処理部30cに出力する。空調機設定温度の決定方法の詳細は後述する。
【0055】
処理部30cは、風量決定部30gからの吹出風量情報及び送風量情報と、設定温度決定部30hからの空調機設定温度情報とを受け付ける。処理部30cは、受け付けた各情報を用いて、空調機3、及び送風機4(送風機4a、送風機4b)の各動作に関する制御情報を特定する。そして、処理部30cは、特定した制御情報を出力部30iに出力する。
【0056】
出力部30iは、処理部30cから受け付けた制御情報を、空調機3、及び送風機4(送風機4a、送風機4b)にそれぞれ出力する。
【0057】
そして、空調機3は、出力部30iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいた空調設定温度及び吹出風量にて空調動作を実行する。また、送風機4(送風機4a、送風機4b)は、出力部30iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいたそれぞれの送風量にて送風動作を実行する。
【0058】
以上のようにして、コントローラ30は、空調ユニット1の機器の各動作を実行させる。
【0059】
次に、図5を参照して、コントローラ30の基本動作について説明する。図5は、コントローラ30の基本処理動作を示すフローチャート図である。
【0060】
まず、コントローラ30は、空調システム101の終了判定を実施する(ステップS01)。その結果、空調システム101の電源がオフ(または操作パネル30aからの空調システム101の動作停止指示の入力)の場合(ステップS01のYES)、空調システム101の動作を終了する。一方、空調システム101の電源オンの場合(ステップS01のNO)、時間経過の判定を実施する(ステップS02)。その結果、コントローラ30は、前回の処理から一定時間(例えば3分)が経過していない場合(ステップS02のNO)、ステップS01へ戻る。一方、前回の処理から一定時間が経過した場合(ステップS02のYES)、ステップS03へ進み、空調機3、及び送風機4の出力決定処理を行う。
【0061】
まず、コントローラ30は、被空調空間16a~16dのそれぞれに対する空調要求量を算出する(ステップS03)。ステップS03の処理について被空調空間16aを例としてより詳細に説明する。ステップS03では、コントローラ30は、被空調空間16aの空調要求量を、室内温度センサ14aから取得した室内温度と、被空調空間16aに設定された室内設定温度との間の温度差分として特定する。より詳細には、空調要求量は、暖房運転時には、室内設定温度から室内温度を引いた値に基づいて特定され、冷房運転時には、室内温度から室内設定温度を引いた値に基づいて特定される。これは、空調要求量が正の値で大きいほど、被空調空間16aに空調が必要とされていることを意味する。また、空調要求量には下限値と上限値を設け、室内温度と室内設定温度の温度差分が下限値を下回る場合は下限値を空調要求量とし、室内温度と室内設定温度の温度差分が上限値を上回る場合は上限値を空調要求量とする。本実施の形態では、下限値は-2℃、上限値は3℃としている。
【0062】
次に、コントローラ30は、被空調空間16のそれぞれの空調要求量をもとに、住宅100の全体の空調要求量(以後、全体空調要求量とも呼ぶ)を算出する(ステップS04)。本実施の形態では、住宅100の全体空調要求量は、被空調空間16のそれぞれの空調要求量の平均値に基づいて算出している。
【0063】
続いて、コントローラ30は、算出した住宅100の全体空調要求量に基づいて、空調機3の運転開始/停止の判定を実施する(ステップS05)。詳細は後述する。
【0064】
続いて、コントローラ30は、算出した住宅100の全体空調要求量及び空調機の吸込温度に基づいて空調機3の空調機設定温度を決定する(ステップS06)。詳細は後述する。
【0065】
次に、コントローラ30は、算出した住宅100の全体空調要求量に応じて空調機3の吹出風量を決定する(ステップS07)。コントローラ30は、空調機3の吹出風量を全体空調要求量が高いほど大きく制御する。本実施の形態では、全体空調要求量が0℃未満の場合は、吹出風量を500m/hとし、全体空調要求量が0℃以上1℃未満の場合は、吹出風量を700m/hとし、全体空調要求量が2℃以上の場合は、吹出風量を1200m/h、としている。
【0066】
続いて、コントローラ30は、送風機4の合計送風量を、空調機3の吹出風量と等しいか、吹出風量よりもわずかに多くなるように決定する(ステップS08)。言い換えれば、コントローラ30は、送風機4の合計送風量と空調機3の吹出風量との間の風量差が基準風量以下となるように決定する。これにより、コントローラ30は、送風機4の消費電力を抑制している。
【0067】
次に、コントローラ30は、一階と二階のそれぞれの空調要求量を算出する(ステップS09)。本実施の形態では、一階と二階のそれぞれの被空調空間16の空調要求量の平均値をその階の空調要求量としている。
【0068】
続いて、ステップS09で算出した空調要求量に基づいて、送風機4の送風量を決定する(ステップS10)。コントローラ30は、空調要求量の比に応じた風量比をつけるように一階と二階のそれぞれの送風機4の送風量を決定する。具体的には、コントローラ30は、二階の空調要求量が1℃で、一階の空調要求量が2℃であり、ステップS07で決定した送風機4の合計送風量が1200m/hの場合、送風機4間の風量比が1:2となるように、二階の送風機4aの送風量は400m/h、一階の送風機4bの風量は800m/hと決定する。これにより、一階と二階とで空調要求量に差がある場合でも、送風機4の送風量に差をつけることで、搬送される熱量に差がつき、一階と二階ともに空調要求量に見合った熱量を搬送することができる。なお、空調要求量が0.5℃を下回り、0に近い値や負の値をとる場合は、空調要求量を0.5℃として風量比の計算を行う。
【0069】
次に、図6を用いて、コントローラ30が空調機3の運転開始/停止制御を行う際の動作について説明する。図6は、コントローラ30の空調機3の運転開始/停止の制御動作を示すフローチャート図である。
【0070】
本実施の形態では、空調システム101は、後述する図8に示す空調機3自身の持つ空調運転/停止判定を使用せず、コントローラ30からの指示のみによって空調機3の運転/停止の制御を行う。そうすることで、意図せず空調機3が停止することを防ぎ、安定した空調機3の制御を行うことができる。
【0071】
コントローラ30は、以下の3つの停止条件がすべて満たされた場合に空調機3の空調運転を停止する制御を行う。
【0072】
<停止条件>
条件1:すべての被空調空間16の空調要求量が-0.5℃以下である。
【0073】
条件2:少なくとも1つの被空調空間16の空調要求量が-1.0℃以下である。
【0074】
条件3:全体空調要求量が-0.5℃以下である状態が30分以上継続する。
【0075】
ここで、条件1は、すべての被空調空間16が被空調空間16に設定された設定温度を十分満たしていることを意味する。条件1は、請求項の「第一条件」に相当し、-0.5℃は、請求項の「第一基準温度」に相当する。条件2は、1つ以上の被空調空間で設定温度を1℃以上超えて空調されていることを意味する。条件2は、請求項の「第二条件」に相当し、-1.0℃は、請求項の「第二基準温度」に相当する。条件3は、空調機3を、空調停止しないぎりぎりの最低出力で動作させることを意味する。条件3は、請求項の「第三条件」に相当し、-0.5℃は、請求項の「第三基準温度」に相当する。
【0076】
詳細は後述するが、全体空調要求量が-0.5℃以下のとき、空調機3は、空調機温度差が約-0.5℃で空調運転を行う。本実施の形態においては、空調機温度差が0℃以下の運転状態では、空調機3は空調出力が最小の状態で空調運転を行う。また、空調機3は、空調運転開始時に、最小出力ではなくやや高めの出力で空調運転を行う。そのため、条件3がなかった場合、空調運転開始時に高めの出力で空調運転することで、被空調空間16の温度変化が大きくなり、すぐに条件1と条件2を満たして空調運転を停止してしまい、発停運転を行ってしまう。条件3があることで、少なくとも30分は空調運転を継続する。さらに、最小出力での空調運転で被空調空間16の温度を一定に保てるような外気負荷である場合は、条件1もしくは条件2を満たさなくなるため、継続して空調運転を続けることができる。
【0077】
続いて、図6のフローチャート図を用いて運転開始/停止の制御動作についてより詳細に説明する。まず、コントローラ30は、現在空調機3が空調運転を行っているか、空調運転を停止しているかの判定を行う(ステップS21)。空調機3が運転状態である場合(ステップS21のYES)、上述した3つの停止条件(条件1~条件3)を満たすかどうかの判定を行う(ステップS22)。判定の結果、3つの停止条件を満たさない場合(ステップS22のNo)は、空調機3の空調運転を継続して、本制御動作を終了する。一方、3つの停止条件を満たす場合(ステップS22のYES)は、空調機3の空調運転を停止する(ステップS23)。そして、本制御動作を終了する。
【0078】
一方、空調機3が停止状態であった場合(ステップS21のNO)、空調開始条件を満たすかどうかの判定を行う(ステップS24)。より詳細には、少なくとも1つの被空調空間16の空調要求量が0℃(請求項の「第四基準温度」に相当)以上であるか否かを判定する。判定の結果、空調開始条件を満たす場合(ステップS24のYES)は、空調機3の空調運転を開始し(ステップS25)、本制御動作を終了する。一方、空調開始条件を満たさない場合(ステップS24のNO)は停止状態を継続して、本制御動作を終了する。なお、空調要求量は、空調不足の度合いを表すため、空調要求量が正であることは、空調が不足していることを意味する。すなわち、空調不足の部屋が1つでも生じたらコントローラ30は、空調機3の空調運転を開始する。そうすることで、空調不足の部屋を生じないため、快適性を損なわず運転を続けることができる。
【0079】
次に、図7を用いて、コントローラ30の空調機設定温度の特定方法を説明する。図7は、コントローラ30の空調機設定温度の決定動作を示すフローチャート図である。図7の(a)は、調機設定温度の決定動作を示すフローチャート図であり、図7の(b)は、空調要求量に基づいて空調機温度差設定値を決定するための判定テーブルである。
【0080】
空調システム101は、被空調空間16が複数あるため、空調機3の吸込温度とそれぞれの被空調空間16の温度とは、必ずしも一致しない。そのため、空調機設定温度は、被空調空間16に設定される室内設定温度と異なる設定をする必要がある。
【0081】
まず、コントローラ30は、吸込温度センサ40より、空調機3の吸込温度を取得する(ステップS31)。次に、図7の(b)に示す判定テーブルに従って、図5のステップS04で算出した全体空調要求量より空調機温度差設定値を決定する(ステップS32)。このとき、空調機温度差設定値が後述する空調機停止判定温度差(本実施の形態では-1.5℃)よりも大きい値となるような判定テーブルを用いる。続いて、吸込温度と空調機温度差設定値とにより、空調機設定温度を決定する(ステップS33)。より詳細には、暖房運転の場合には、吸込温度に空調機温度差設定値を加算した値を空調機設定温度とし、冷房運転の場合には、吸込温度から空調機温度差設定値を減算した値を空調機設定温度とする。本実施の形態では、空調機3を一般的なルームエアコンと想定しているため、空調機設定温度は、0.5℃刻みあるいは1.0℃刻みの値である場合が多い。その場合は、吸込温度と空調機温度差設定値とから計算された値が0.5℃刻みあるいは1.0℃刻みの値となるように値の切り捨てあるいは四捨五入を行う。本実施の形態では、0.5℃刻みで空調機設定温度を決定する。
【0082】
具体的な数字を用いて説明する。
【0083】
暖房運転時において、吸込温度が20.7℃、全体空調要求量が1.2℃であった場合を考える。空調機温度差設定値は、判定テーブルより1.0℃となる。このとき空調機設定温度は、20.7+1.0=21.7℃と計算される。空調機設定温度は、0.5℃刻みとするため、計算された値を0.5で除算し小数第1位で四捨五入した後、0.5を乗算することで0.5刻みの値に換算する。21.7/0.5=43.4であり、小数第1位で四捨五入すると43.0となる。43.0×0.5=21.5となり、空調機設定温度が21.5℃として決定される。以上のようにしてコントローラ30は、空調機設定温度を決定する。また、空調機設定温度を刻み幅に応じて換算する場合は、換算前後の空調機設定温度の差に対応するため、判定テーブルの空調機温度差設定値が空調停止判定温度差よりも、刻み幅以上に大きくなるように設定しておく必要がある。例えば刻み幅が0.5℃であれば、空調機温度差設定値は、空調停止判定温度差+0.5℃よりも大きな値になるような判定テーブルを用いる必要がある。そうすることで、空調機温度差設定値と後述する空調機温度差の値が異なる場合でも空調機温度差が空調停止判定温度差以下となることがなくなり、空調機3が空調運転を停止することを抑制できる。
【0084】
次に、図8を用いて、空調機3の運転動作の詳細を説明する。図8は、空調機3の運転動作を表すフローチャート図である。
【0085】
本実施の形態では、空調機3は、一般的なルームエアコンを想定しており、コントローラ30からの制御信号をもとに、空調機3自身で判断して空調動作の制御を行っている。具体的には、空調機3は、吸込温度センサ40により検知した吸込温度と、コントローラ30から与えられた空調機設定温度の差分(以下で「空調機温度差」と呼ぶ)を計算し、空調機温度差の値が大きいほど、冷房運転時は、空調機3の吹出温度を下げ、暖房運転時は、吹出温度を上げる制御を行う。こうすることで、空調機温度差が大きくなったとき、吸込温度、すなわち空調機3にとっての空調対象空間の温度が、よりすばやく設定温度に近づくようにしている。
【0086】
また、空調機3は、コントローラ30からの運転開始/停止の指示とは別に、空調機温度差の値に基づいて空調運転の開始/停止判定を行っている。これにより空調機温度差が小さくなった場合に、空調を停止し、空調が過剰となってしまうのを防いでいる。
【0087】
まず、空調機3は、時間経過の判定を実施する(ステップS41)。その結果、空調機3は、前回の処理から一定時間(例えば30秒)が経過していない場合(ステップS41のNO)、ステップS41へ戻る。一方、前回の処理から一定時間が経過した場合(ステップS41のYES)、ステップS42へ進み、空調運転の開始/停止判定と吹出温度・吹出風量の決定処理とを行う。
【0088】
まず、空調機3は、コントローラ30から空調機設定温度と吹出風量とを取得する(ステップS42)。空調システム101内ではなく、一般的なルームエアコンとして使用される場合は、コントローラ30からではなく使用者からのリモコン入力などによって空調機設定温度と吹出風量とを取得する。
【0089】
次に、空調機3は、空調機温度差を算出する(ステップS43)。より詳細には、空調機温度差は、冷房運転時には、吸込温度から空調機設定温度を引いた値に基づいて特定され、暖房運転時には、空調機設定温度から吸込温度を引いた値に基づいて特定される。これは、空調機温度差が正の値で大きいほど、空調が必要とされていることを意味する。
【0090】
次に、空調機3は、空調運転中かどうかの判定を行う(ステップS44)。その結果、空調運転中である場合(ステップS44のYES)、ステップS45へ進み、空調運転の停止判定を行う。一方、空調運転が停止している場合(ステップS44のNO)は、ステップS50へ進み、空調運転の開始判定を行う。
【0091】
ステップS45では、空調機3は、空調機温度差が空調停止判定温度差よりも大きいかどうかを判定する。その結果、空調機温度差が空調停止判定温度差以下である場合(ステップS45のYES)、空調停止フラグを1とする(ステップS46)。空調機温度差が空調停止判定温度差より大きい場合(ステップS45のNO)、空調停止フラグを0とする(ステップS47)。
【0092】
次に、空調機3は、ステップS48において空調運転の停止判定を行う。空調停止フラグが1である時間(継続時間)が空調停止判定時間以上長く継続していた場合(ステップS48のYES)、空調機3は、空調運転を停止する(ステップS49)。一方、空調停止フラグ=0である場合もしくは空調停止フラグ=1を継続した時間が空調停止判定時間より短い場合(ステップS48のNO)、空調機3は、空調運転を継続し、ステップS52へ進み、吹出温度の決定を行う(ステップS52)。なお、本実施の形態では、空調機停止判定温度差は-1.5℃、空調停止判定時間は3分としている。
【0093】
空調停止判定の動作について、暖房運転時を例に詳細に説明する。
【0094】
例えば、空調機設定温度が20℃で吸込温度が22℃の状態を3分継続した場合、空調機温度差は20℃-22℃=-2℃であり、空調機停止判定温度差-1.5℃以下であるため、空調停止フラグは「1」である。そして、空調停止フラグ=1の継続時間が空調停止判定時間3分以上となるため、空調機3は、空調運転を停止する。また、暖房運転中に、吸込温度が3分以内に22℃から21℃に変化した場合には、空調機温度差は20℃-21℃=-1℃となり、空調停止判定温度差を上回るため、空調停止フラグは「0」となるから、空調機3は、空調運転を継続する。また、暖房運転中の3分の間に、吸込温度は22℃から変わらず、空調機設定温度が20℃から21℃に変化した場合も、空調機温度差は21℃-22℃=-1℃となり、空調停止判定温度差を上回るため、空調停止フラグは「0」となるから、空調機3は、空調運転を継続する。
【0095】
また、ステップS44において空調機3が運転停止状態であった場合(ステップS44のNO)、空調機3は、空調運転の開始判定を行う(ステップS50)。詳細には空調機温度差が0以上であるかを判定する。判定の結果、空調機温度差が0以上の場合(ステップS50のYES)、空調機3は、空調運転を開始し(ステップS51)、ステップS52へ進み、吹出温度の決定を行う。一方、空調機温度差が0未満であった場合(ステップS50のNO)、空調機3は、空調停止状態を継続し、本制御動作を終了する。
【0096】
空調機3が運転状態であるとき、空調機3は、ステップS52において吹出温度の決定を行う。空調機温度差の値が大きいほど、冷房運転時は、空調機3の吹出温度を下げ、暖房運転時は、吹出温度を上げるように吹出温度を決定する。例えば、暖房運転時において空調機設定温度が23℃、吸込温度が22℃であった場合、空調機温度差は1℃となる。このとき、空調機3は、吹出温度を30℃として空調動作を行う。続いて、吸込温度が22℃から20℃に変化した場合、空調機温度差は1℃から3℃へあがることとなり、空調機3は、吹出温度を40℃に上げて空調を行う。
【0097】
次に、空調機3は、空調運転を実施し、ステップ42で取得した吹出風量にて、ステップ53で決定した吹出温度の空気を送風する(ステップS53)。
【0098】
続いて、空調機3を空調システム101で用いる場合の動作について、具体例を用いて説明する。
【0099】
図7のステップ32において、空調機温度差設定値が空調機停止判定温度差(本実施の形態では-1.5℃)よりも大きい値として決定することで、空調機温度差が常に空調機停止判定温度差よりも大きくなるように、空調機3を動作させることができる。すなわち、空調機温度差は常に空調機停止判定温度差を上回るため、図8のステップS45の判定は、常にNO判定(空調機温度差が空調停止判定温度差より大きいとの判定)となり、空調停止フラグが常に0となる。その結果、ステップS48の判定も常にNO判定となるため、ステップS49の停止判定に入ることがない。コントローラ30が空調機設定温度を決定する際は、空調機3は、必ずステップS45、ステップS47、ステップS48、ステップS52、及びステップS53の順で動作する。すなわち空調機3は、空調停止判定に入らず、常に空調運転を継続する。
【0100】
暖房運転時を例に具体的に説明する。
【0101】
被空調空間16の室内設定温度が20℃で、すべての被空調空間16の温度が20.6℃であったとする。このときの空調要求量は-0.6℃であり、図7の(b)に示す判定テーブルに従って空調機温度差設定値は-0.5℃となる。このとき空調機3の吸込温度が21.1℃であったとすると、コントローラ30は、空調機設定温度を21.1℃+(-0.5℃)=20.6℃と計算し、0.5℃刻みに換算して、空調機設定温度を20.5℃と決定する。空調機3は、コントローラ30より与えられた空調機設定温度と吸込温度とから空調機温度差を20.5℃-21.1℃=-0.6℃と決定する。このとき、吸込温度が21.1℃から変動し、22.0℃になった場合、コントローラ30は、ステップS33にしたがって空調機設定温度を更新し、22.0℃+(-0.5℃)=21.5℃とする。そのため、空調機温度差は21.5℃-22.0℃=-0.5℃となり、空調停止判定温度差(-1.5℃)以上の温度差が保たれる。
【0102】
吸込温度が21.0℃から変動し、22.0℃になった際に、仮にステップS33の制御が行われなかったら、空調機設定温度は20.5℃のままであり、空調機温度差は20.5℃-22.0℃=-1.5℃(=空調停止判定温度差)であり、この状態が空調停止判定時間(3分)以上継続すると、空調機3は空調運転を停止してしまう。
【0103】
このように、図7の制御を行わない従来の空調システムでは、吸込温度が変動した際に、空調機3が停止してしまうことがあり、空調機3が運転と停止を繰り返すような消費電力が大きい動作となってしまう。本実施の形態に示す空調システム101では、図7に示した制御を行うことで、吸込温度が変動しても空調機3を継続して運転させ続けることができ、消費電力の悪化を抑制することができる。
【0104】
以上、本実施の形態1に係る空調システム101によれば、以下の効果を享受することができる。
【0105】
(1)空調システム101は、複数の空間(被空調空間16)へ空調空気を供給する空調ユニット1と、空調ユニット1の外郭を形成するユニット本体2と、ユニット本体2に取り込んだ空気の温調を行う空調機3と、空調機3から吹き出された空気をユニット本体2外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機4と、空調機3を制御するコントローラ30とを備える。そして、コントローラ30は、空調機3が吸引した空気の温度である吸込温度と空調機3に設定される空調機設定温度との温度差である空調機温度差が空調停止判定温度差よりも大きな値となるように空調機設定温度を決定し、決定した空調機設定温度によって空調機3を動作させる。
【0106】
こうした構成によれば、空調機温度差が空調機設定温度よりも大きい状態で空調機3が動作するため、空調機が3停止せず継続運転することでCOPが向上し、省エネ性が向上する。
【0107】
(2)空調システム101では、コントローラ30は、複数の被空調空間16のそれぞれに対する空調要求量を、被空調空間16の温度と被空調空間16に設定される室内設定温度との温度差に基づいて決定する。そして、決定した空調要求量がすべての被空調空間16において第一基準温度(例えば-0.5℃)以下となる第一条件と、決定した空調要求量が少なくとも1つの被空調空間16(例えば、被空調空間16a)において第二基準温度(例えば-1.0℃)以下となる第二条件と、決定した空調要求量の平均値(全体空調要求量)が第三基準温度(例えば-0.5℃)以下となる状態において空調機3の空調運転時間が所定の時間(例えば30分)以上となる第三条件とをすべて満たす場合に、空調機3の運転を停止させるようにした。これにより、すべての被空調空間16が十分空調された場合、かつ、少なくとも1つの被空調空間16において空調が過剰となった場合、かつ、空調機3の空調運転の出力が最小の状態が所定の時間継続した場合に限り、空調機3の空調運転が停止する。このため、空調システム101は、過剰に空調することが抑制されるとともに、空調機3の空調運転が開始してから空調運転が停止するまで所定の時間空調運転が継続するため、発停運転が抑制され、省エネ性が向上する。
【0108】
(3)空調システム101では、コントローラ30は、空調機3が空調運転を停止しているとき、空調要求量が、少なくとも1つの被空調空間16において第四基準温度(例えば0℃)より大きくなった場合に、空調機3の空調運転を開始させる。これにより、空調システム101は、少なくとも1つの被空調空間16で空調が不足した場合にすぐさま空調が開始するため、快適性を損ねることなく省エネを実現できる。
【0109】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明に係る空調システムは、空調ユニット内に設置された空調機の発停運転を抑制し省エネ性を向上させることができ、住宅の複数の部屋を1つの空気調和機で空調することを可能にするシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0111】
1 空調ユニット
2 ユニット本体
3 空調機
4、4a、4b 送風機
5 吸込口
6 空調機設置空間
7 送風機設置空間
8、8a、8b 吹出口
9 フィルタ
11、11a、11b ダクト
12、12a、12b 分岐チャンバ
13、13a~13d ダンパ
14、14a~14d 室温センサ
15、15a~15d 給気口
16、16a~16d 被空調空間
17、17a、17b 共用スペース
18 屋根裏
19 天井裏
20 専用設置スペース
30 コントローラ
30a 操作パネル
30b 入力部
30c 処理部
30d 記憶部
30e 計時部
30g 風量決定部
30h 設定温度決定部
30i 出力部
30j 表示パネル
40 吸込温度センサ
100 住宅
101 空調システム
Q1~Q3、Q1a、Q1b、Q2a、Q2b、Q3a、Q3b 空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8