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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032378
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/06 20060101AFI20230302BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
F24C7/06 A
F24C7/02 531B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138483
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】高山 正宏
(72)【発明者】
【氏名】豊島 淳希
(72)【発明者】
【氏名】明石 孝之
(72)【発明者】
【氏名】水田 功
【テーマコード(参考)】
3L086
3L087
【Fターム(参考)】
3L086AA02
3L086AA12
3L086BD01
3L086DA06
3L087AA01
3L087AA02
3L087AC18
3L087CA06
3L087CC02
3L087DA05
(57)【要約】
【課題】ヒーター線どうしが接触しにくく、外側ヒーターの加熱効率を高めることができる加熱調理器を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の加熱調理器は、被調理物を加熱する加熱庫と、加熱庫の天井壁の上に配設された内側ヒーターおよび前記内側ヒーターを取り囲む外側ヒーターにより熱源を構成する平面ヒーターと、を備えた加熱調理器であって、前記外側ヒーターは外側マイカにヒーター線が巻き付けられ、かつ前記内側ヒーターは内側マイカにヒーター線が巻き付けられた構成とし、前記外側マイカは枠太部と枠細部を有し、前記枠細部の長手方向に沿って略直線的にヒーター線が敷かれ、前記枠細部に敷かれたヒーター線の少なくとも一部の上面側を覆う上側マイカをさらに備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を加熱する加熱庫と、
加熱庫の天井壁の上に配設された内側ヒーターおよび前記内側ヒーターを取り囲む外側ヒーターにより熱源を構成する平面ヒーターと、を備えた加熱調理器であって、
前記外側ヒーターは外側マイカにヒーター線が巻き付けられ、かつ前記内側ヒーターは内側マイカにヒーター線が巻き付けられた構成とし、
前記外側マイカは枠太部と枠細部を有し、
前記枠細部の長手方向に沿って略直線的にヒーター線が敷かれ、
前記枠細部に敷かれたヒーター線の少なくとも一部の上面側を覆う上側マイカをさらに備えた加熱調理器。
【請求項2】
前記枠細部の長手方向に沿って略直線的にヒーター線が複数敷かれ、前記上側マイカによって前記複数のヒーター線が離間されている請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記枠細部の長手方向に沿って略直線的に敷かれたヒーター線と、前記内側マイカに巻かれたヒーター線の一部が略平行かつ近傍に配置され、前記それぞれのヒーター線が前記枠細部により離間されている請求項1または2に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱庫内の被調理物である食品を加熱調理する加熱調理器に関し、特に加熱庫の天井壁上に設けた平面ヒーターにより加熱する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器における加熱調理手段としては、熱線を放射して食品を直接加熱する赤外線ヒーターユニット、マイクロ波を照射して食品を加熱するマイクロ波加熱ユニット、水蒸気により食品を加熱するスチーム加熱ユニット、および加熱庫の内部に熱風を循環させて食品を加熱する熱風循環ユニットなどが用いられている。
【0003】
また、加熱調理器における加熱調理手段としては、直方体形状の加熱庫の天井壁上に平面ヒーターを設けて、天井壁を加熱し、当該天井壁により加熱庫内部を間接的に加熱する構成がある(特許文献1および2参照)。
【0004】
また、天井壁の上に平面ヒーターを配置し、平面ヒーターを用いて庫内温度を上昇させる構成がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-103206号公報
【特許文献2】特開2010-54124号公報
【特許文献3】特開2017-161163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、平面ヒーターにおける内側ヒーターと外側ヒーターのうち、内側ヒーターだけでなく外側ヒーターの加熱効率を高めようとすると、外側ヒーターの外側マイカの略全体にわたってヒーター線を配置する必要が出てくる。
【0007】
本発明は、ヒーター線どうしが接触しにくく、外側ヒーターの加熱効率を高めることができる加熱調理器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の加熱調理器は、
被調理物を加熱する加熱庫と、
加熱庫の天井壁の上に配設された内側ヒーターおよび前記内側ヒーターを取り囲む外側ヒーターにより熱源を構成する平面ヒーターと、を備えた加熱調理器であって、
前記外側ヒーターは外側マイカにヒーター線が巻き付けられ、かつ前記内側ヒーターは内側マイカにヒーター線が巻き付けられた構成とし、
前記外側マイカは枠太部と枠細部を有し、
前記枠細部の長手方向に沿って略直線的にヒーター線が敷かれ、
前記枠細部に敷かれたヒーター線の少なくとも一部の上面側を覆う上側マイカをさらに備えた構成としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも平面ヒーターを加熱調理手段として用いた加熱調理を効率高く行うことができる構成を有する加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の加熱調理器の外観を示す斜視図
図2】本実施形態の加熱調理器における扉が開いた状態を示す斜視図
図3】本実施形態の加熱調理器の外カバーを外した状態を示す斜視図
図4】本実施形態の加熱調理器における平面ヒーターユニットの分解斜視図
図5】本実施形態の加熱調理器における平面ヒーターユニットの加熱庫上板を示す図
図6】本実施形態の加熱調理器における平面ヒーターを示す分解模式図
図7】本実施形態の加熱調理器における外側ヒーターの上面マイカ近傍を示す平面図
図8】本実施形態の加熱調理器における外側ヒーターの枠細部の一部平面図
図9】本実施形態の加熱調理器における平面ヒーターの平面図
図10】本実施形態の加熱調理器における平面ヒーターの裏面図
図11】本実施形態の加熱調理器における加熱調理手段を制御する回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る第1の態様の加熱調理器は、
被調理物を加熱する加熱庫と、
加熱庫の天井壁の上に配設された内側ヒーターおよび前記内側ヒーターを取り囲む外側ヒーターにより熱源を構成する平面ヒーターと、を備えた加熱調理器であって、
前記外側ヒーターは外側マイカにヒーター線が巻き付けられ、かつ前記内側ヒーターは内側マイカにヒーター線が巻き付けられた構成とし、
前記外側マイカは枠太部と枠細部を有し、
前記枠細部の長手方向に沿って略直線的にヒーター線が敷かれ、
前記枠細部に敷かれたヒーター線の少なくとも一部の上面側を覆う上側マイカをさらに備えた構成としている。このように構成された第1の態様の加熱調理器は、ヒーター線どうしが接触しにくく、外側ヒーターの加熱効率を高めることができる。
【0012】
本発明に係る第2の態様の加熱調理器は、前記の第1の態様における前記枠細部の永田方向に沿って略直線的にヒーター線が複数敷かれ、前記上側マイカによって前記複数のヒーター線が離間されているよう構成してもよい。
【0013】
本発明に係る第3の態様の加熱調理器は、前記の第1または第2の態様における前記枠細部の長手方向に沿って略直線的に敷かれたヒーター線と、前記内側マイカに巻かれたヒーター線の一部が略平行かつ近傍に配置され、前記それぞれのヒーター線が前記枠細部により離間されているよう構成してもよい。
【0014】
以下、本発明の加熱調理器に係る実施形態として、加熱調理手段として少なくとも平面ヒーターを用いた加熱調理器について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明の加熱調理器は、以下の実施形態に記載した加熱調理器の構成に限定されるものではなく、以下の実施形態において説明する技術的思想と同等の加熱調理器の構成を含むものである。以下で説明する実施形態は、本発明の一例を示すものであって、実施形態において示される構成、機能、動作などは、例示であり、本発明を限定するものではない。以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る本実施形態の加熱調理器について添付の図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の加熱調理器の外観を示す斜視図である。図2は、図1の本実施形態
の加熱調理器における扉が開いた状態を示す斜視図である。
【0016】
図1および図2に示すように、加熱調理器は、本体1の内部に設けられた加熱庫4の正面開口が扉2により開閉可能に構成されている。扉2の上方端部には把手3が設けられており、把手3を使用者が握持して扉2を回動し、加熱庫4の正面開口を上下開きに開閉する。加熱庫4の内部は扉2の閉成により実質的に密閉状態となり、加熱庫4の内部に配置された被加熱物である調理物が実質的な密閉状態で加熱調理される。
【0017】
図1に示すように、加熱調理器の正面には、上開きの扉2に加熱調理の調理温度設定、調理時間設定、などの各種調理条件を設定するためのダイヤル状つまみである設定部5が設けられている。また、加熱調理器の正面に設けられた設定部5は、各種調理条件および加熱調理中の加熱状態などを表示する表示部も有している。
【0018】
本実施形態の加熱調理器における加熱調理手段としては、平面ヒーターの他にマイクロ波を照射して食品を加熱するマイクロ波加熱ユニットが設けられている。また、水蒸気により食品を加熱するスチーム加熱ユニット、および加熱庫4の内部に熱風を循環させて食品を加熱する熱風循環ユニットが用いられていてもよい。マイクロ波加熱ユニットは、マイクロ波を放射するアンテナが加熱庫4の底面壁下に設けられており、指向性を有するアンテナによりマイクロ波が加熱庫4内部に対して所望の方向に放射される構成である。スチーム加熱ユニットが設けられる場合は、本体1の内部に水タンクを有し、水タンクから水をボイラーのスチームヒーターにより高温度に加熱して生成された水蒸気を加熱庫4の内部に集中的に噴射する構成である。熱風循環ユニットが設けられる場合は、加熱庫4の背面側に設けられた背面ヒーターにより加熱庫4からの吸引した空気を加熱し、熱風を加熱庫4の内部に給気する構成である。
【0019】
本実施形態の加熱調理器においては複数の加熱調理手段が設けられており、使用者が所望の加熱調理手段を選択することにより、または使用者が調理内容を選択することにより、適切な加熱調理手段が選択される構成である。使用者が加熱調理器の加熱庫4内に被調理物である食品を配置して扉2を閉じ、設定部5において加熱調理手段や調理内容などを設定して開始ボタンを押圧することにより調理動作が開始される。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の加熱調理器においては、加熱庫4の内部に被加熱物が載置される発熱皿6を収納できるように構成されている。発熱皿6は、加熱庫4の内部において上段、中段、または下段に配置されるように、加熱庫4の両側の側面壁には発熱皿6が摺動可能であり、発熱皿6を支持することができる段差が形成されている。発熱皿6における載置面には発熱体(図示なし)が埋設されている。発熱体は、マイクロ波を吸収して、発熱するものであり、フェライトなどが用いられている。
【0021】
なお、本実施形態においては、発熱体としてフェライトを発熱皿6に埋設した例で説明するが、発熱体としてはマイクロ波を吸収して発熱するものであればよく、発熱体を発熱皿の裏面に塗布して構成してもよい。また、発熱皿6の主要な材料としては、熱伝導が優れたものであればよく、金属またはセラミックで構成してもよい。
【0022】
また、本実施形態においては、発熱皿6が加熱庫4の側面壁の段差により支持される構成で説明するが、天井壁からの吊り下げ構成、発熱皿6に下方に突出する足を設けて加熱庫4の底面壁に載置する構成でもよい。
【0023】
なお、加熱庫4の内部にマイクロ波を放射するアンテナ(図示なし)は、加熱庫4の底面壁の略中央の直下に配設されている。本実施形態におけるアンテナは、マイクロ波の放射方向に指向性を有すると共に、アンテナの直上に円偏波を放射できる構成を有している
。従って、本実施形態におけるアンテナにおいては、加熱庫4の内部をマイクロ波を均一に放射するように、回転機構が設けられており、アンテナの放射口が回転するよう構成されていると共に、アンテナの直上に配置される発熱皿6の発熱体に対しても円偏波を放射して誘電加熱するよう構成されている。
【0024】
加熱庫4の底面壁は、アンテナからのマイクロ波が透過する材料で形成されており、加熱庫4におけるその他の壁面である、側面壁、背面壁、および天井壁は、鉄鋼、またはステンレス鋼(SUS)のアルミニウムメッキ鋼板が用いられる。また、それぞれの壁面には、例えばフッ素樹脂、シリコン樹脂などの非粘着性を有する被膜層が形成されていてもよい。このような被膜層を形成することにより、調理時に飛散した油脂分、調理かすなどの汚れの付着を防止することができるとともに、汚れが付着したとしても、汚れを拭き取りやすい構成となる。さらに、加熱庫4のそれぞれの壁面においては、調理時の加熱により、調理時に飛散した油脂分を分解し、自動的に清掃するセルフクリーニング機能を持つ被覆層を形成してもよい。被覆層にセルフクリーニング機能を持たす方法としては、例えば酸化分解作用を促進する酸化マンガン系の触媒種などを被膜層に配合する方法、低温度での酸化分解作用に顕著な効果を発揮する白金または中高温域での活性が高いパラジウムなどを添加する方法を用いてもよい。さらに、吸着作用のあるセリウムなどを添加する方法を用いてもよい。
【0025】
上記のように、加熱庫4の内部に収納された発熱皿6に載置された被加熱物(食品)は、マイクロ波により誘電加熱された発熱体の熱により高温度となった発熱皿6により加熱調理されるが、本実施形態においては、加熱庫4の天井壁の上部に設けられた平面ヒーターユニット8により発熱皿6に載置された被加熱物(食品)の上面が加熱される構成を有する。
【0026】
図3は、本実施形態の加熱調理器の本体1における外カバーを外した状態を示す斜視図である。図3に示すように、加熱調理器の本体1の天井側には、即ち加熱庫4の天井壁を含む部分には平面ヒーターユニット8が設けられている。図3に示すように、加熱調理器における加熱庫4の上部が平面ヒーターユニット8で構成されていることが示されている。加熱庫4の内部の庫内温度を検出するための庫内温度検出手段として庫内温度検出部9、例えばサーミスタが加熱庫4の右奥のコーナー部分に設けられている。庫内温度検出部9が検出した庫内温度情報は、後述する制御部7(図11参照)に伝送されて、各種加熱調理動作における制御に用いられる。なお、サーミスタが加熱庫4の右奥のコーナー部分に設けられているが、加熱庫4の内部の庫内温度を検出できる位置であれば左奥のコーナー部分、右手前や左手前のコーナー部分など、どこに設けてもよい。
【0027】
[平面ヒーターユニット]
図4は、平面ヒーターユニット8を分解して示す分解斜視図である。図4に示すように、平面ヒーターユニット8は、図4の下側から、加熱庫4の天井壁を構成する加熱庫上板10と、加熱庫上板10の上面に密着される平面ヒーター11と、平面ヒーター11から上方への熱伝導を遮断する第1断熱材13と、を有している。また、平面ヒーターユニット8には、平面ヒーター11の端子部24などを電気的に絶縁する絶縁シート15、および平面ヒーターユニット8の熱が本体1の外カバーへ伝熱されるのを遮断する遮熱板16と、が設けられている。このように、平面ヒーターユニット8は、積み上げ方式の組み立て構造であり、保守時には、各部品をすべて交換できるため、保守性の向上が図られている。さらに、平面ヒーターユニット8には、平面ヒーター11により直接的に加熱された加熱領域の温度を検出するヒーター温度検出手段であるヒーター温度検出部18が設けられている。以下、平面ヒーターユニット8における各構成物について詳細に説明する。
【0028】
[加熱庫上板]
図5は、平面ヒーターユニット8において加熱庫4の天井壁を構成する加熱庫上板10を示す図である。図6において、(a)は加熱庫上板10の平面図であり、(b)は(a)に示した加熱庫上板10における(b)-(b)線による端面図であり、(c)は(a)に示した加熱庫上板10における(c)-(c)線による端面図である。
【0029】
加熱庫上板10は加熱庫4の天井壁を構成するものであり、加熱庫上板10の外周縁以外の中央部分が平面視で略正方形状(10a)を有している。この正方形形状は加熱庫側(下側)が凹面となる曲面形状を有しており、平面ヒーター11が密着して配設される発熱領域10aとなる。本実施形態の加熱庫4は、正面視において、高さ方向に対して幅方向および奥行方向が長手となる直方体形状を有しており、発熱領域10aが加熱庫4の天井壁の略全面を覆っている。加熱庫4の形状に対応する長方形形状の平面ヒーター11は、曲面形状の発熱領域10aに密着して全面に配設されている。このため、加熱庫4の天井壁を構成する加熱庫上板10の実質的に全面が、平面ヒーター11により加熱される発熱体となる。
【0030】
図5の(b)の端面図に示すように、加熱庫上板10における発熱領域10aの横方向(図5の(a)の左右方向)の断面は、曲線で構成されている。同様に、図5の(c)の端面図に示すように、加熱庫上板10における発熱領域10aの縦方向(図5の(a)の上下方向)の断面も、曲線で構成されている。従って、加熱庫上板10における発熱領域10aは、加熱庫側が凹面となる3次元曲面を有している。
【0031】
図5の(a)の平面図に示すように、加熱庫上板10において、平面ヒーター11が密接して装着される発熱領域10aは、複数の正六角形形状(ハニカム形状)の領域(ハニカム領域)10bを有する。本実施形態においては、加熱庫上板10におけるハニカム領域10bの境界が加熱庫側に突出する溝により形成されており、それぞれのハニカム領域10bが実質的に同じ面積を有している。このように構成された加熱庫上板10はプレス加工により形成される。
【0032】
上記のように加熱庫上板10における発熱領域10aは、複数のハニカム領域10bを有して形成されている。このため、発熱領域10aは、平面ヒーター11の熱により膨張し、または平面ヒーター11が遮断されたオフ状態のとき収縮するが、そのとき生じる膨張/収縮の全方向の変形力がそれぞれのハニカム領域10b内において吸収され得る構成である。発熱領域10aは密着した平面ヒーター11により加熱されるが、発熱領域10aの全面が平面ヒーター11により均一に加熱されることはなく、発熱領域10aにおける発熱分布は不均一となる。このため、発熱領域10aにおける膨張/収縮の変形力はそれぞれの領域において異なる大きさとなる可能性がある。もし、加熱庫4の天井壁である加熱庫上板が平坦な形状であり、膨張/収縮の変形力を吸収できる領域がなければ、天井壁が局所的に加熱されて不均一に変形して歪み、加熱庫上板と平面ヒーターとの間に隙間ができて、平面ヒーターからの熱が伝わり難い構造となる。
【0033】
本実施形態の加熱調理器においては、加熱庫上板10における発熱領域10aに溝により区切られた複数の領域(ハニカム領域)10bが形成されている。このため、これらのハニカム領域毎に膨張/収縮の変形力が分散されて吸収され、天井壁としては、発熱領域10aが局所的に大きく変形して歪むことがなく、加熱庫側が凹面となる曲面形状が全体的に滑らかに盛り上がる状態となる。この結果、発熱領域10aは平面ヒーター11と密接した状態を維持し、平面ヒーター11からの熱を効率高く、確実に受け取ることができるものとなる。
【0034】
上記のように、本実施形態においては、加熱庫上板10における発熱領域10aが局所的に変形することが防止され、発熱領域10aが全体的に同様の形状を維持して全体的に
持ち上がる構成であるため、平面ヒーター11が発熱領域10aに密接した状態が確実に維持される構成となる。
【0035】
なお、本実施形態においては、加熱庫上板10における発熱領域10aを複数の正六角形形状(ハニカム形状)のハニカム領域10bで区切った構成で説明したが、そのハニカム領域10bとしてはハニカム形状に特定されるものではなく、発熱領域10aにおける局所的な膨張/収縮の変形力を分散して吸収できる複数の領域で構成されていればよい。膨張/収縮の変形力を吸収する複数の領域としては、三角、四角など多角形形状の領域、曲線で構成された領域などでも対応可能である。
【0036】
本実施形態における加熱庫上板10は、鉄鋼、またはステンレス鋼(SUS)のアルミニウムメッキ鋼板が用いられている。加熱庫上板10の両面には、例えばシリコン樹脂などによる黒色の膜体が形成されている。このように黒色の膜体が平面ヒーター側の面に形成することにより、平面ヒーター11からの熱を効率高く吸収できる構成となる。なお、本実施形態においては、加熱庫上板10の加熱庫側の面には、調理時の加熱により、調理時に飛散した油脂分を分解し、自動的に清掃するセルフクリーニング機能を持つ被覆層が形成されている。セルフクリーニング機能を有する被覆層の形成方法としては、前述したのでここでは省略する。なお、本実施形態においては、セルフクリーニング機能を持つ被覆層が、加熱庫4における両側面壁および背面壁にも形成されている。
【0037】
[平面ヒーター]
図6は、加熱庫上板10の発熱領域10aに密着して装着される平面ヒーター11を示す分解模式図である。図6に示すように、上側絶縁材22と下側絶縁材23の2枚のマイカの板材の間に外側ヒーター21と内側ヒーター20が配置され、上側絶縁材22と下側絶縁材23の辺Pに対応する位置に外側ヒーター21の辺Pの位置が配置される。平面ヒーター11における熱源であるヒーター25は、内側のヒーター(内側ヒーター)20と、外側のヒーター(外側ヒーター)21とに分かれている。内側ヒーター20と外側ヒーター21は、実質的に同一平面上に配置され、外側ヒーター21が内側ヒーター20を取り囲むように配置され、それぞれが個別に駆動制御される。
【0038】
内側ヒーター20が略長方形状、外側ヒーターが略正方形状で構成され、外側ヒーター21が内側ヒーター20を取り囲むように配置されているので、外側ヒーターは枠太部21dと枠細部21cとで構成される。本実施形態においては、内側ヒーター20が例えば300Wから900Wの範囲で無段階で可変制御される構成であり、外側ヒーター21が例えば700Wでオンオフ制御される構成である。
【0039】
内側ヒーター20および外側ヒーター21は、絶縁板である内側マイカ20aおよび外側マイカ21aに対して、それぞれヒーター線20bおよびヒーター線21bを巻き付けて形成されており、従来650Wであったヒーター出力を900Wにすることで、単位面積あたりのヒーター出力が1.6倍に大きくなっている。本実施形態においては、例えば、3.0W/cm(内側ヒーター)のヒーター出力が可能な構成となっている。なお、本実施形態においては、内側ヒーター20のヒーター線として厚み0.144mmの帯状のヒーター線を用い、外側ヒーター21のヒーター線として厚み0.10mmの帯状のヒーター線を用いた。ヒーター線を高密度に巻きつけて形成することにより、加熱庫上板10の温度上昇の均一化を図ることができる。
【0040】
外側ヒーター21の枠細部21cにも枠細部21cの長手方向に沿って略直線的に2本のヒーター線21b1が敷かれている。このように枠細部21cに複数のヒーター線21b1を敷くことにより、加熱庫4の平面視において、加熱庫4の中心付近から離れた加熱庫4の端部まで加熱することができるので、例えば加熱庫4内にてパンを2枚並べて加熱
する場合など、パンの端部まで十分に加熱することができる。
【0041】
また、枠細部21cは複数のマイカによって構成され、下側マイカ21a2の上に複数のヒーター線21b1が敷かれている構成となっている。さらに、ヒーター線21b1は下側マイカ21a2と、枠細部21cの中央付近に配置された上側マイカ21a1とで挟まれた構成となっている。
【0042】
図7において、上側マイカ21a1の両端部にはヒーター線21b1に固定するための切り込み孔40が設けられており、両端部の切り込み孔40にヒーター線21b1を通してヒーター線を上側マイカ21a1の下側かつ下側マイカ21a2の上側に配置することによって、2本のヒーター線21b1どうしを離間させ、2本のヒーター線21b1どうしが接触してショートすることを回避することができる。なお、切り込み孔40の構成に限ることなく、上側マイカ21a1や下側マイカ21a2に規制リブを設けるなどして、2本のヒーター線21b1どうしを離間させる構成としてもよいし、上側マイカ21a1や下側マイカ21a2に2本のヒーター線21b1を接着する構成としてもよい。
【0043】
図8において、ヒーター線21b1とマイカとの関係を説明する。複数のヒーター線21b1は、Q1の範囲において上側マイカ21a1の下側かつ下側マイカ21a2の上側に離間して配置されている。さらに複数のヒーター線21b1は、Rの範囲において下側マイカ21a2の上側に離間して配置されており、ヒーター線21b1の上側は上側マイカ21a1で覆われていない。さらに複数のヒーター線21b1は、Q2の範囲において枠太部21dの枠太部マイカ21a3の下側かつ下側マイカ21a2の上側に離間して配置されている。このように構成することにより、2本のヒーター線21b1どうしを離間させ、2本のヒーター線21b1どうしが接触してショートすることを回避することができる。ヒーター線21b1が1本しかない場合もしくは2本以上有する場合も同様の効果をえることができる。
【0044】
また、図6のとおり、内側ヒーター20において、外側ヒーターの一部のヒーター線であるヒーター線21b1と隣り合って略平行かつ近傍に略直線的に配置される内側ヒーター20の一部のヒーター線20b1について、ヒーター線20b1は、枠細部21cに配置される外側ヒーターのヒーター線21b1と離間させることができるので、ヒーター線21b1とヒーター線20b1とが接触してショートすることを回避することができる。また、ヒーター線20b1とヒーター線21b1を適切な距離に離間させることができるので、パンなどの被加熱物に対してヒーターの効率を落とすことなく適切に加熱することができる。なお、ヒーター線21b1が1本しかない場合もしくは2本以上有する場合も同様の効果をえることができる。
【0045】
また図6に示すように、平面ヒーター11は、内側ヒーター20と外側ヒーター21により1つの熱源として構成されたヒーター25を上側絶縁材22と下側絶縁材23の2枚のマイカの板材により両側から挟んで形成されている。図9は平面ヒーター11の平面図であり、上側絶縁材22が示されている。図10は平面ヒーター11の裏面図であり、下側絶縁材23が示されている。
【0046】
図9および図10に示すように、上側絶縁材22と下側絶縁材23においては、内側ヒーター20と外側ヒーター21のそれぞれのヒーター線を挟着した領域の一部が、スリット22a、23aにより区切られている。従って、内側ヒーター20と外側ヒーター21のそれぞれのヒーター線により加熱された上側絶縁材22と下側絶縁材23における互いの領域においては、他の領域からの伝熱が遮断される構成である。スリット22a、23aにより区切っている効果は、内側ヒーター20と外側ヒーター21を同時に通電した場合、お互いに膨張するため、加熱庫上板10の密着性が損なわれることを防止できること
である。なお、ヒーター25を挟着した上側絶縁材22と下側絶縁材23のそれぞれには、前述の加熱庫上板10に設けられた押え板係止部10cが挿入される開口22b、23bが形成されている。平面ヒーター11は端子部24を有しており、内側ヒーター20および外側ヒーター21のそれぞれのヒーター線に接続された端子が端子部24に設けられている。
【0047】
[第1断熱材]
図4に示したように、平面ヒーター11を覆うように第1断熱材13が配設されている。第1断熱材13は、平面ヒーター11の上面からの熱を遮断する機能を有しており、例えば、ガラスウールにより形成されている。第1断熱材13は、加熱庫上板10における少なくとも発熱領域10aの全面を覆うことができる形状を持ち、実質的に同一の厚みを有して、少なくとも厚み方向に弾性力(復元力)を有する。
【0048】
前述の図4に示したように、第1断熱材13には複数の開口が形成されている。第1断熱材13の中央に形成された開口は、加熱庫上板10に突設された押え板係止部10cが収納される係止部用開口13aである。また、第1断熱材13には、平面ヒーター11のヒーター線が通る端子用開口13cを含んでいる。
【0049】
[押え板]
図4に示すように、加熱庫上板10に装着される押え板14には、加熱庫上板10における曲面で形成された発熱領域10aと同様の曲面を有する曲面領域14aが形成されている。押え板14は、平面ヒーター11を第1断熱材13を介して加熱庫上板10の発熱領域10aに押し付ける機能を有しており、平面ヒーター11の全面を発熱領域10aに対して隙間なく密着させている。
【0050】
図5における加熱庫上板10に対応して、押え板14における曲面領域14aの横方向の断面は、実質的に曲線で構成されている。同様に、押え板14における曲面領域14aの縦方向の断面も、実質的に曲線で構成されている。従って、押え板14における曲面領域14aは、加熱庫側(下側)が凹面となる3次元曲面を有している。本実施形態においては、曲面領域14aの横方向の曲線の曲率は、曲面領域14aの縦方向の曲線の曲率とは異なっており、横方向の曲率が縦方向の曲率より小さくなっている。横方向と縦方向の曲線の曲率を略同一としてもよい。上記のように、押え板14の曲面領域14aは、加熱庫上板10の発熱領域10aと同様の曲面を有している。
【0051】
図4に示したように、押え板14には端子装着部14eおよびヒーター温度検出部18が設けられている。ヒーター温度検出部18は、平面ヒーター11からの熱により直接的に加熱される領域の温度を検出する部位である。端子装着部14eは、平面ヒーター11における内側ヒーター20と外側ヒーター21のそれぞれの端子を有する端子部24が装着される。端子部24の各端子は、当該加熱調理器における制御部7により駆動制御される電源部に接続されている。
【0052】
ヒーター温度検出部18は平面ヒーター11により直接的に加熱される加熱領域(加熱空間)に配置されている。本実施形態においては、加熱領域(加熱空間)が平面ヒーター11における内側ヒーター20の直上に形成されており、内側ヒーター20により直接的に加熱されている。ヒーター温度検出部18は、内側ヒーター20により直接的に加熱された加熱領域の温度を検出するため、このヒーター温度情報、および加熱庫4の内部の温度を検出する庫内温度検出部9からの庫内温度情報に基づいて、制御部7は平面ヒーター11などの当該加熱調理器に用いられている各種加熱調理手段の熱源を駆動制御する。
【0053】
[加熱制御]
本実施形態の加熱調理器においては、上記のように構成された平面ヒーターユニット8の他の加熱調理手段として、マイクロ波を形成するマグネトロンを備え、マグネトロンで形成されたマイクロ波を導波管を介してアンテナから放射するマイクロ波加熱ユニットが設けられている。マイクロ波を加熱庫4に放射するアンテナは、加熱庫4の底面壁の下方に配設されており、加熱庫4に対して下方から円偏波などのマイクロ波を放射する構成を有している。また、アンテナは指向性を有するマイクロ波を放射することが可能な構成を有しており、アンテナを回転させることにより加熱庫4の内部を均一に加熱することが可能な構成である。
【0054】
また、本実施形態の加熱調理器における他の加熱調理手段としては、加熱庫内に水蒸気を集中的に噴射して加熱調理するスチーム加熱ユニット、および加熱庫4の内部に熱風を循環させて食品を加熱調理する熱風循環ユニットが設けられてもよい。スチーム加熱ユニットは、本体1の内部に水タンクを有し、水タンクから水をボイラーのスチームヒーターにより高温度に加熱して生成された水蒸気を加熱庫4の内部に集中的に噴射する構成である。熱風循環ユニットは、加熱庫4の背面側に設けられた背面ヒーターにより加熱庫4からの吸引した空気を加熱し、熱風を加熱庫4の内部に給気する構成である。
【0055】
上記のように、本実施形態の加熱調理器における加熱調理手段としては、平面ヒーターユニット8、マイクロ波加熱ユニット、スチーム加熱ユニット、および熱風循環ユニットが設けられており、調理内容に応じて各加熱調理手段が選択され、場合によっては複数の加熱調理時間を同時に、または組み合わせて駆動制御される。なお、本実施形態においては、平面ヒーターユニット8による加熱制御を主として説明する。
【0056】
ヒーター温度検出部18の検出端部(図示せず)が平面ヒーター11の内側ヒーター20により直接的に加熱される加熱領域(加熱空間)に配置されている。ヒーター温度検出部18は、内側ヒーター20により直接的に加熱された空間の温度が検出して、検出した温度をヒーター温度情報として制御部7(図11参照)に送信する。制御部7においては、ヒーター温度情報と共に加熱庫4の庫内温度を検出する庫内温度検出部9からの庫内温度情報に基づいて、使用者が設定した調理内容などに応じて加熱調理動作における熱源および駆動源などを制御する。
【0057】
本実施形態においては、ヒーター温度検出部18が内側ヒーター20により直接的に加熱される加熱領域(加熱空間)の温度を検出する構成であるため、制御部7はヒーター温度検出部18からの高精度のヒーター温度情報に基づいて内側ヒーター20による加熱調理動作における温度制御を行うことができる。本実施形態においては、後述するように、ヒーター出力の大きな内側ヒーター20により加熱庫4を急激に温度上昇させるスピード加熱動作を行っているため、このスピード加熱動作においてはヒーター温度情報が有効となる。
【0058】
従来の加熱調理器においては、検出された庫内温度に基づいて、加熱庫内部が設定温度となるように、平面ヒーターに対するオンオフ制御を行う構成であった。このため、従来の加熱調理器においては、庫内温度が設定温度に到達するより遙かに前に平面ヒーターを一旦オフ状態として、それ以降は平面ヒーターのオンオフ動作を繰り返すことにより、庫内温度を徐々に設定温度に近づける構成であった。従って、平面ヒーターを用いて庫内温度を精度高く設定温度とすることが困難であり、また設定温度に到達するまでに時間を要していた。
【0059】
本実施形態の加熱調理器においては、制御部7がヒーター温度検出部18からのヒーター温度情報および庫内温度情報に基づいて加熱調理動作における温度制御を行う構成である。特に、加熱庫4を急激に温度上昇させて、設定温度に短時間で到達させるスピード加
熱動作においては、内側ヒーター20により加熱された加熱領域の温度を示すヒーター温度情報に基づいて制御動作が行われる構成である。このため、制御部7は、内側ヒーター20により加熱される加熱領域の温度を設定温度まで急激に加熱することが可能となり、加熱庫4の庫内温度を急激に温度上昇させることが可能となる。また、後述するように、本実施形態における内側ヒーター20は、入力する電流を所望の値に制御できる構成であり、ヒーター出力を所望の値とすることができる構成である。このため、制御部7においては、庫内温度が設定温度に到達した後においては、庫内温度情報およびヒーター温度情報に基づいて内側ヒーター20に対する入力電流制御を行うことにより、庫内温度を精度高く設定温度に維持することが可能となる。その結果、本実施形態の加熱調理器においては、庫内温度が設定温度に到達するまでの時間を大幅に短縮することができると共に、庫内温度を精度高く設定温度に所定時間維持することが可能となる。
【0060】
[加熱調理動作]
図11は、本実施形態の加熱調理器における加熱調理手段を制御する回路図の一例である。本実施形態の加熱調理器における加熱調理手段における熱源としては、平面ヒーターユニット8における内側ヒーター20および外側ヒーター21、スチーム加熱ユニットにおけるスチームヒーター26、熱風循環ユニットにおける背面ヒーター27、およびマイクロ波加熱ユニットにおけるマグネトロン28がある(図11参照)。また、熱風循環ユニットにおいては循環ファンモータ29が用いられている。
【0061】
図11の回路図に示すように、内側ヒーター20、外側ヒーター21、スチームヒーター26、背面ヒーター27、および循環ファンモータ29がオンオフ制御されるようにスイッチング素子に接続されている。また、マイクロ波加熱ユニットにおけるマイクロ波生成手段であるマグネトロンの駆動電源としてインバータ回路に接続されている。本実施形態においては、内側ヒーター20の駆動制御をスイッチング素子としてトライアック30を用いており、内側ヒーター20に入力する電流を所望の値に無段階で可変制御できる構成を有している。外側ヒーター21は、単純にオン/オフを切り替えるスイッチング素子としてリレーが用いられている。なお、本実施形態における外側ヒーター21は、単純にオン/オフを切り替えるスイッチング素子としてリレーを用いた構成で説明するが、内側ヒーター20と同様にスイッチング素子としてトライアックを用いて入力電力を無段階に可変制御できる構成でもよい。
【0062】
加熱調理器においては、予め決められた定格電力があり、その定格電力以上の電力を使用することはできない。本実施形態の加熱調理器において、複数の加熱調理手段を用いて加熱調理することが可能な構成であり、起動する熱源などの消費電力が常に定格電力以内となりように制御部7において制御される。特に、本実施形態の加熱調理器における平面ヒーターユニット8においては特徴的な制御を行っている。
【0063】
平面ヒーターユニット8におけるヒーター25は、内側ヒーター20と外側ヒーター21により1つの熱源を構成しているが、本実施形態においては内側ヒーター20の最大ヒーター出力が、例えば900Wであり、外側ヒーター21の最大ヒーター出力が、例えば700Wである。そのため、内側ヒーター20と外側ヒーター21の最大ヒーター出力の合計は、一般的な家庭における定格電力(1500W=15A(定格電流)×100V)を越えている。本実施形態の加熱調理器においては、図11に示したように、内側ヒーター20がスイッチング素子としてトライアック30により駆動制御される構成を有している。このため、内側ヒーター20は、トライアック30に入力する制御信号により300~900Wの範囲内で無段階で可変できるヒーター出力で駆動することが可能である。
【0064】
以下、本実施形態の加熱調理器における加熱調理手段を用いた具体的な加熱調理動作について例示を用いて説明する。
【0065】
平面ヒーターユニット8のみを用いて加熱庫4を天井壁の略全面を発熱体として加熱調理する場合には、例えば、平面ヒーター11の内側ヒーター20を700Wのヒーター出力に駆動制御し、外側ヒーター21をオン状態として700Wのヒーター出力とすることにより、平面ヒーター11として合計1400Wのヒーター出力により加熱庫4を加熱することができる。
【0066】
平面ヒーターユニット8およびマイクロ波加熱ユニットを用いて加熱庫4に対して天井壁面および底面壁の下側からのマイクロ波により加熱調理する場合には、例えば、平面ヒーター11の内側ヒーター20を900Wの最大ヒーター出力とし、外側ヒーター21をオフ状態(0W)として、平面ヒーター11として合計900Wのヒーター出力により加熱庫4を上方から加熱する。一方、他の加熱調理手段として用いるマイクロ波加熱ユニットにおいては、マグネトロン28などの消費電力として、例えば450Wを使用して、加熱庫4に収納された発熱皿6を加熱して、発熱皿6に載置された食品を加熱調理することができる。
【0067】
別の例示としては、外側ヒーター21をオフ状態(0W)、内側ヒーター20を430Wのヒーター出力とし、マイクロ波加熱ユニットにおけるマグネトロン28などの消費電力として550Wを使用して、発熱皿6に載置された食品を加熱調理することができる。上記のように、平面ヒーターユニット8およびマイクロ波加熱ユニットを用いて加熱調理を行う場合であっても、一般的な家庭における定格電力(1500W=15A(定格電流)×100V)以下の消費電力により、所望の調理動作を実行することができる。
【0068】
本実施形態の加熱調理器においては、平面ヒーターユニット8およびマイクロ波加熱ユニットを用いることにより、加熱庫4の中央部分に対して集中的な加熱が可能となる。平面ヒーター11においては、従来650Wであったヒーター出力を900Wにすることで、単位面積当たりのヒーター出力が1.6倍になっている。特に内側ヒーター20は外側ヒーター21に比べてヒーター出力が高く構成されている。従って、本実施形態の構成においては、ヒーター出力が大きな内側ヒーター20により加熱庫4の天井壁面の中央部分を急激に加熱することができるため、天井壁面の中央部分が発熱体となり、この発熱体が加熱庫4の中央部分に対して集中的に熱放射することができる。また、ヒーター線を高密度に巻きつけて形成することにより、加熱庫上板10の温度上昇の均一化を図ることができる。
【0069】
一方、本実施形態の構成においては、加熱庫4の下方からはマイクロ波加熱ユニットのアンテナからマイクロ波(円偏波)を加熱庫4の中央部分に向かって集中的に放射できる構成を有している。加熱庫4の内部には被加熱物である食品が載置される発熱皿6が収納されており、この発熱皿6の載置面にはマイクロ波を吸収して発熱する発熱体が埋設されている。この結果、発熱皿6の載置面上の食品に対しては、マイクロ波加熱ユニットにより、発熱体により加熱された発熱皿6により下方から加熱されると共に、平面ヒーターユニット8により、天井壁の中央部分が加熱されて、この中央部分からの熱放射を上方から受けて集中的に加熱される。即ち、本実施形態の加熱調理器においては、加熱庫4に収納された発熱皿6の食品に対して、上方および下方から急激に高温度で加熱することが可能な構成となっている。
【0070】
上記のように、本実施形態の加熱調理器においては、定格電力内において、少なくとも平面ヒーターを加熱調理手段として用いて加熱調理を効率高く行うことができる構成を有する。本実施形態の加熱調理器においては、合計の消費電力が定格電力を越える複数の電力機器を用いて、加熱庫内部を所望の高火力で急激に立ち上げて急速に加熱調理することが可能な構成を有している。
【0071】
また、本実施形態の加熱調理器は、庫内温度の立ち上がりを早くすることが可能であると同時に、庫内温度(加熱庫上板温度)を一定温度に維持することができる構成を有する。本実施形態の加熱調理器は、庫内温度(加熱庫上板温度)を精度高く設定温度とすることでき、庫内温度が設定温度に到達するまでの時間を短くすることができるため、調理時間の短縮を達成することができる構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の加熱調理器は、庫内温度を所望の温度に素早く立ち上げることが可能な構成を有して、調理時間を短縮をすることができ、市場価値の高い調理機器となる。
【符号の説明】
【0073】
1 本体
2 扉
3 把手
4 加熱庫
5 設定部
6 発熱皿
7 制御部
8 平面ヒーターユニット
9 庫内温度検出部
10 加熱庫上板(天井壁)
10a 発熱領域
10b ハニカム領域
10c 押え板係止部
11 平面ヒーター
13 第1断熱材
14 押え板
15 絶縁シート
16 遮熱板
18 ヒーター温度検出部(サーミスタ)
20 内側ヒーター
21 外側ヒーター
20a 内側マイカ
21a 外側マイカ
21a1 上側マイカ(枠細部マイカ)
21a2 下側マイカ(枠細部マイカ)
21a3 枠太部マイカ
20b、20b1、21b、21b1 ヒーター線
21c 枠細部
21d 枠太部
22 上側絶縁材
23 下側絶縁材
24 端子部
25 ヒーター
26 スチームヒーター
27 背面ヒーター
28 マグネトロン
29 循環ファンモータ
30 トライアック
31 スイッチ
40 切り込み孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11