IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本分光株式会社の特許一覧

特開2023-32387ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法
<>
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図1
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図2
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図3
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図4
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図5
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図6
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図7
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図8
  • 特開-ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032387
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20230302BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G01N21/65
G01N21/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138499
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232689
【氏名又は名称】日本分光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】樋口 祐士
(72)【発明者】
【氏名】井上 勉
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043CA05
2G043EA01
2G043EA03
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA09
2G043JA02
2G043LA01
2G043MA01
2G043NA01
2G043NA05
(57)【要約】
【課題】スペクトルデータから蛍光の影響を効果的に除去・軽減可能な分光装置の提供。
【解決手段】ラマン分光装置は、試料上での励起光の照射領域を設定する手段11と、試料上での光の取り込み領域を設定する手段16と、取り込み領域からの光を分光検出する分光器17と、スペクトルデータの処理手段30とを備える。取り込み領域設定手段16は、本測定では試料上の空間分解能が高くなるように、また、ベース測定では試料上の空間分解能が低くなるように、取り込み領域をそれぞれ設定する。データ処理手段30は、測定条件の違いに応じたベース測定のスペクトルデータの蛍光成分の強度の変化に基づいてベースライン係数を算出する係数算出部35と、ベース測定のスペクトルデータにベースライン係数を掛けたものと本測定のスペクトルデータとの差スペクトルを算出する差スペクトル算出部34とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一波長の励起光の光源と、試料を載置するステージと、試料上での励起光の照射領域を設定する照射領域設定手段と、試料上での光の取り込み領域を設定する取り込み領域設定手段と、前記取り込み領域からの光を分光検出する分光器と、前記分光器からの検出値に基づくスペクトルデータを処理するデータ処理手段と、を備えるラマン分光装置であって、
前記光源、前記照射領域設定手段、前記取り込み領域設定手段のうちの少なくとも1つが、本測定の測定条件として、前記スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的大きくなるように、前記取り込み領域、前記照射領域、および励起光強度のうちの少なくとも1つを設定し、および
ベース測定の測定条件として、前記スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的小さくなるように、前記取り込み領域、前記照射領域、および励起光強度のうちの少なくとも1つを設定するように構成され、
前記データ処理手段は、
測定条件の違いに応じたベース測定のスペクトルデータの蛍光成分の強度変化率を算出し、当該強度変化率に基づくベースライン係数を算出する係数算出部、および
前記ベース測定のスペクトルデータに前記ベースライン係数を付与したものと、前記本測定のスペクトルデータと、の差スペクトルを算出する差スペクトル算出部と、を含む、
ことを特徴とするラマン分光装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、前記取り込み領域設定手段は、前記本測定の測定条件として、前記取り込み領域の面積を狭くし、前記ベース測定の測定条件として、前記取り込み領域の面積を広くするように構成されていることを特徴とするラマン分光装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、前記取り込み領域設定手段は、前記分光器が取り込む光を制限する開口部を有し、当該開口部の形状または大きさを変更するように構成されていることを特徴とするラマン分光装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の装置において、前記照射領域設定手段は、前記本測定の測定条件として、前記照射領域の中心と前記取り込み領域の中心とのオフセット量を零または小さくし、前記ベース測定の測定条件として、前記照射領域の中心と前記取り込み領域の中心とのオフセット量を大きくするように構成されていることを特徴とするラマン分光装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の装置において、前記光源は、前記本測定の測定条件として、励起光の強度を小さくし、前記ベース測定の測定条件として、励起光の強度を大きくするように構成されていることを特徴とするラマン分光装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の装置において、さらに、試料への励起光の露光時間を設定する露光時間設定手段を備え、前記露光時間設定手段は、前記本測定の測定条件として、前記露光時間を長く設定し、前記ベース測定の測定条件として、前記露光時間を短く設定するように構成されている、ことを特徴とするラマン分光装置。
【請求項7】
単一波長の励起光で励起された試料からの光を分光器に取り込んでラマンスペクトルを測定する方法であって、
試料上での励起光の照射領域を設定する照射領域設定手順と、試料上での光の取り込み領域を設定する取り込み領域設定手順と、励起光を照射する照射手順と、分光器からの検出値に基づいてスペクトルデータを取得する手順と、前記スペクトルデータを処理するデータ処理手順と、を含み、
前記照射領域設定手順、前記取り込み領域設定手順および前記照射手順のうちの少なくとも1つの手順では、
本測定の測定条件として、前記スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的大きくなるように、前記取り込み領域、前記照射領域、および励起光強度のうちの少なくとも1つを設定すること、および
ベース測定の測定条件として、前記スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的小さくなるように、前記取り込み領域、前記照射領域、および励起光強度のうちの少なくとも1つを設定すること、の2通りをおこない、
前記データ処理手順は、
測定条件の違いに応じたベース測定のスペクトルデータの蛍光成分の強度変化率を算出し、当該強度変化率に基づくベースライン係数を算出する係数算出手順、および
前記ベース測定のスペクトルデータに前記ベースライン係数を付与したものと、前記本測定のスペクトルデータと、の差スペクトルを算出する差スペクトル算出手順、を含む、
ことを特徴とするラマンスペクトルの測定方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記係数算出手順は、測定条件の異なる複数回のベース測定によるスペクトルデータに基づいて前記ベースライン係数を算出する、ことを特徴とするラマンスペクトルの測定方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の方法において、前記データ処理手順は、
前記差スペクトル算出手順の後、前記差スペクトルのベースラインを平坦化するベースライン平坦化手順を含む、ことを特徴とするラマンスペクトルの測定方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の方法は、励起光の波長を長波長側に変更してラマンスペクトルを測定した後に、実行することを特徴とするラマンスペクトルの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラマンスペクトルの測定方法に関し、特に、測定スペクトルデータのベースラインを補正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質は、特定の波長の光によって励起されると、その励起光の波長とは異なる幾つかの波長の光を散乱する(ラマン散乱光)。励起光の波数とラマンピークの波数との差は、ラマンシフトと呼ばれ、物質中の分子の振動や回転等に応じて定まる。そのため、横軸にラマンシフトをとり、縦軸にラマンピーク強度をとったラマンスペクトルは、その物質の同定に利用することができる。
【0003】
一方で、ラマン散乱光は、励起光と同じ波長のレイリー散乱光よりも10-6倍ほど微弱な光であり、ラマン散乱光のスペクトル測定においては物質からの蛍光の影響を大きく受けることになる。
【0004】
従来のラマンスペクトル測定における蛍光の影響を次の2つに分けて説明する。1つ目は、蛍光成分が比較的広帯域にわたるために、スペクトルのベースラインが上昇してしまい、微弱なラマンピークが埋もれてしまうことである。2つ目は、蛍光成分が分析装置内のフィルム等の光学素子によって干渉縞を形成し、これがベースラインを波状に変形してしまうことである。これらのベースラインの上昇や変形は、試料の定性分析のためのスペクトルサーチにおいて正答率を下げる原因になると考えられる。
【0005】
従って、ラマンスペクトル測定においては、蛍光の影響の除去・軽減、すなわち、ベースラインの適切な補正が特に重要になる。
【0006】
蛍光回避のための一般的な手法として、励起光の波長を長波長側に変更するという手法がある。例えば532nm励起光の場合、物質によっては蛍光成分が大きく生じて、ラマンピークが埋もれてしまう場合がある。この励起光の波長を例えば1064nmに変更することで、蛍光成分の発生を抑えることができ、ラマンピークを確認することができる場合がある。
【0007】
また、測定したスペクトルのベースラインを補正する方法についても、様々な提案があり、特許文献1の例では、測定スペクトルデータに対して半円や半楕円等の形状データを設定して、ベースラインをソフトウェア的に推定することにより、ベースラインが平坦になるように補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許4966337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の手法においても、蛍光成分によるベースラインの上昇を十分に除去しきれない場合もあり、また、蛍光の干渉縞によるベースラインの変形を十分に除去しきれない場合がある。本発明の目的は、これまでの手法とは異なる新規な手法で、測定スペクトルへの蛍光の影響を効果的に除去・軽減することが可能なラマン分光装置、およびラマンスペクトルの測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係るラマン分光装置は、
単一波長の励起光の光源と、試料を載置するステージと、試料上での励起光の照射領域を設定する照射領域設定手段と、試料上での光の取り込み領域を設定する取り込み領域設定手段と、前記取り込み領域からの光を分光検出する分光器と、前記分光器からの検出値に基づくスペクトルデータを処理するデータ処理手段と、を備えるラマン分光装置であって、
前記光源、前記照射領域設定手段、前記取り込み領域設定手段のうちの少なくとも1つが、本測定の測定条件として、前記スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的大きくなるように、前記取り込み領域、前記照射領域、および励起光強度のうちの少なくとも1つを設定し、および
ベース測定の測定条件として、前記スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的小さくなるように、前記取り込み領域、前記照射領域、および励起光強度のうちの少なくとも1つを設定するように構成され、
前記データ処理手段は、
測定条件の違いに応じたベース測定のスペクトルデータの蛍光成分の強度変化率を算出し、当該強度変化率に基づくベースライン係数を算出する係数算出部、および
前記ベース測定のスペクトルデータに前記ベースライン係数を付与したものと、前記本測定のスペクトルデータと、の差スペクトルを算出する差スペクトル算出部と、を含む、ことを特徴とする。
【0011】
前記取り込み領域設定手段は、前記本測定の測定条件として、前記取り込み領域の面積を狭くし、前記ベース測定の測定条件として、前記取り込み領域の面積を広くするように構成されていてもよい。
【0012】
前記取り込み領域設定手段は、前記分光器が取り込む光を制限する開口部を有し、当該開口部の形状または大きさを変更するように構成されていていてもよい。
【0013】
前記照射領域設定手段は、前記本測定の測定条件として、前記照射領域の中心と前記取り込み領域の中心とのオフセット量を零または小さくし、前記ベース測定の測定条件として、前記照射領域の中心と前記取り込み領域の中心とのオフセット量を大きくするように構成されていてもよい。
【0014】
前記光源は、前記本測定の測定条件として、励起光の強度を小さくし、前記ベース測定の測定条件として、励起光の強度を大きくするように構成されていてもよい。
【0015】
さらに、試料への励起光の露光時間を設定する露光時間設定手段を備え、前記露光時間設定手段は、前記本測定の測定条件として、前記露光時間を長く設定し、前記ベース測定の測定条件として、前記露光時間を短く設定するように構成されていてもよい。
【0016】
また、本発明に係るラマンスペクトルの測定方法は、
単一波長の励起光で励起された試料からの光を分光器に取り込んでラマンスペクトルを測定する方法であって、
試料上での励起光の照射領域を設定する照射領域設定手順と、試料上での光の取り込み領域を設定する取り込み領域設定手順と、励起光を照射する照射手順と、分光器からの検出値に基づいてスペクトルデータを取得する手順と、前記スペクトルデータを処理するデータ処理手順と、を含み、
前記照射領域設定手順、前記取り込み領域設定手順および前記照射手順のうちの少なくとも1つの手順では、
本測定の測定条件として、前記スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的大きくなるように、前記取り込み領域、前記照射領域、および励起光強度のうちの少なくとも1つを設定すること、および
ベース測定の測定条件として、前記スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的小さくなるように、前記取り込み領域、前記照射領域、および励起光強度のうちの少なくとも1つを設定すること、の2通りをおこない、
前記データ処理手順は、
測定条件の違いに応じたベース測定のスペクトルデータの蛍光成分の強度変化率を算出し、当該強度変化率に基づくベースライン係数を算出する係数算出手順、および
前記ベース測定のスペクトルデータに前記ベースライン係数を付与したものと、前記本測定のスペクトルデータと、の差スペクトルを算出する差スペクトル算出手順、を含む、
ことを特徴とする。
【0017】
前記係数算出手順は、測定条件の異なる複数回のベース測定によるスペクトルデータに基づいて前記ベースライン係数を算出するようにしてもよい。
【0018】
前記データ処理手順は、前記差スペクトル算出手順の後、前記差スペクトルのベースラインを平坦化するベースライン平坦化手順を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の測定方法は、励起光の波長を長波長側に変更してラマンスペクトルを測定した後に、実行するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
以上に示すようにラマンスペクトル測定を実行すれば、ベースラインの上昇(広い波数域にわたる蛍光成分の影響)、およびベースラインの変形(蛍光による干渉縞成分の影響)が補正されたラマンスペクトルデータを取得することができて、このようなラマンスペクトルデータを用いた物質分析の正答率の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係るラマン分光装置の概略構成図である。
図2】前記装置にて2種類の開口部による取り込み領域の違いを示す図である。
図3】前記装置を用いたラマンスペクトル測定の手順を示す図である。
図4】第1の測定条件で実際に測定したラマンスペクトル図である。
図5】第2の測定条件で実際に測定したラマンスペクトルの図である。
図6】第3の測定条件で実際に測定したラマンスペクトルの図である。
図7】空間的オフセットによる検証についての説明図である。
図8】前記検証において、蛍光面積とラマン面積の分布を算出した結果を示す図。
図9】矩形スリットおよびピンホールスリットを使ってそれぞれ測定したスペクトルデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明のラマン分光装置の一実施形態である顕微レーザーラマン分光光度計(以下、ラマン分光装置と呼ぶ。)の概略構成図である。ラマン分光装置は、励起光(レーザー光)の照射に伴う試料Sからのラマン散乱光を分光検出し、ラマンスペクトルを取得するための装置である。本実施形態における測定対象は、固形サンプル(PEEK樹脂など)、粉体サンプル(セルロース粉末など)、液体サンプル(ウイスキーなどの色のついた液体など)など幅広い。
【0023】
図1には、ラマン分光装置の骨格になる構成を示す。すなわち、ラマン分光装置は、共焦点光学系の構成として、試料用の可動ステージ11と、対物レンズ12と、励起光を試料側へ反射するとともに試料Sからの光を透過するビームスプリッタ(BS)13(またはダイクロイックミラーDM)と、レイリー光をカットするためのリジェクションフィルター14と、結像レンズ15と、開口部切換装置16と、分光器17と、CCD検出器18とを備えている。
【0024】
また、ラマン分光装置は、励起光学系の構成として、レーザー波長切換装置21と、ビームスポット位置変更装置22と、レーザー制御装置23とを備える。レーザー制御装置23は、露光時間設定部24およびレーザー強度設定部25を含んでいる。
【0025】
また、ラマン分光装置は、スペクトルデータ処理装置30と記憶装置40とを備える。スペクトルデータ処理装置30は、例えばコンピューター等の演算処理装置で構成され、機能ブロックとして、ベースライン補正部31と、ベースライン平坦化処理部32と、ノイズ除去部33とを有する。そして、このベースライン補正部31に、本発明に特徴的な差スペクトル算出部34とベースライン係数算出部35とが含まれている。
【0026】
なお、記憶装置40には、スペクトルデータ処理装置30にこれらの機能ブロックを実現させるためのデータ処理プログラムが記憶されており、スペクトルデータ処理装置30が適宜、このデータ処理プログラムを実行することによってこれらの機能が発揮されるようになっている。
【0027】
<励起光学系の詳細>
レーザー波長切換装置21は、波長の異なる複数の光源26,27を切換可能に搭載している。選択された波長の光源26,27からの励起光がビームスポット位置変更装置22に向けて出力されるように構成されている。ビームスポット位置変更装置22は、例えば一対のアライメントミラーで構成することができる。一対のアライメントミラーは、光源26,27からの励起光の光軸を調整することが可能で、試料Sと対物レンズ12の位置関係を変えずに、試料上のビームスポットの位置を移動させることができる。
【0028】
レーザー制御装置23は、選択された光源26,27を制御する。露光時間設定部24は、設定された露光時間に応じて光源26,27の出力をオン/オフさせる。あるいは、光源26,27の出力窓に設けたシャッターを開閉させてもよい。また、レーザー強度設定部25は、励起光の強度条件にあわせて、光源26,27の出力強度を調整する。あるいは、励起光の光路上に設置された減光フィルターのオン/オフを切り換えて励起光の強度を変更するように構成されている。
【0029】
励起光は、試料上に対物レンズ12を介してスペクトル測定の目的部である微小なビームスポットを形成する。
【0030】
<共焦点光学系の詳細>
可動ステージ11は、X-Y平面に平行な載置面を有するX-Yの2軸ステージであり、載置される試料上のビームスポットの位置を対物レンズ12の集光位置に位置決めできる。
【0031】
対物レンズ12は、カセグレン鏡など本発明の集光光学素子の一例である。対物レンズ12は、励起光のビームスポットを試料上に形成する役目と、ビームスポットおよびその周辺部からの光を集光する役目とを担う。試料Sからの光に含まれるレイリー散乱光はリジェクションフィルター14で取り除かれる。結像レンズ15は、集光された光を、後段の開口部切換装置16に搭載された矩形スリット板16Aやピンホールスリット板16Bなどの開口部で結像し、ビームスポットの中間像を形成する役目がある。なお、図1は、反射光学系の例示であるが、カセグレン鏡などを使用して透過光学系の測定装置を構成してもよい。
【0032】
開口部切換装置16は、少なくとも2種類の開口部を切換可能に構成されている。図1には、一例として、細長形の開口部を有する矩形スリット板16Aと、円形の開口部を有するピンホールスリット板16Bと、をスライド式の共通フレームに保持させて、選択された開口部をオンラインに設置できるように構成したものを示す。開口部の板には、細長形や円形以外にも様々な形状の開口部を形成できる。また、それぞれの形状について大きさの異なる複数の開口部を形成してもよい。
【0033】
分光器17には、一般的な回折格子による分散型分光器を用いている。回折格子からの回折光は、後段のCCD検出器18で結像され、CCD検出器18の2次元に配置された受光素子群によって、帯域ごとのスペクトル値が検出されて、スペクトルデータ処理装置30に出力される。
【0034】
ここで、図2を用いて、2種類の開口部(矩形スリット板16Aおよびピンホールスリット板16B)による取り込み領域の違いを示す。ここで、ビームスポットを試料上の黒丸の領域で示す。その周辺部を、黒丸よりも大きい白丸の領域で示す。
【0035】
分光器17に取り込まれる光は、矩形スリット板16Aやピンホールスリット板16Bの開口部によって制限される。つまり、試料上の光の取り込み領域は、この開口部の形状や大きさによって定められる。
【0036】
図2では、矩形スリット板16Aのスリット幅がビームスポットの結像の大きさと略同じであるが、矩形スリット板16Aの場合、ビームスポットからの光だけでなく、その周辺部からの光の多くも一緒に分光器17に取り込まれる。一方、ピンホールスリット板16Bの場合、特に、その開口部がビームスポットの結像と略同じである場合には、共焦点効果によってビームスポットからの光のみが効率的に分光器17に取り込まれ、矩形スリット板16Aよりも空間分解能の高い状態での測定ができる。
【0037】
本実施形態では、以上のラマン分光装置を使って、測定条件の異なる少なくとも2通りのスペクトル測定(ベース測定、本測定)を実行することに特徴がある。次の表1に測定条件の例を列挙した。
【0038】
【表1】
【0039】
条件1では、ベース測定を空間分解能の低い状態で測定し、本測定を空間分解能の高い状態で測定する。例えば、試料上の同じ測定位置に対し、広い取り込み領域と狭い取り込み領域をそれぞれ設定する。表1の条件1A~1Cは、矩形スリットやピンホールスリットの開口部を利用して、光を取り込む領域を試料上に設定する場合である。
【0040】
条件1Aは、例えばスリット幅200μmの矩形スリットと、例えば直径100μmのピンホールスリットとを用いる。矩形スリットを使用する場合は、試料上の取り込み領域でのビームスポットの占める比率が小さくなるようにして、ピンホールスリットを使用する場合は、逆に、その比率が矩形スリットよりも大きくなるようにするとよい。または、ピンホールスリットの直径が、矩形スリットのスリット幅と同じかそれ未満になるようにするとよい。
【0041】
条件1B、1Cでは、矩形スリットやピンホールスリットのサイズを変更する。例えば、試料上の同じ測定位置に対し、ベース測定では開口部の大きいものを使用し、本測定では開口部の小さいものを使用する。
【0042】
なお、本測定でピンホールスリットを用いる場合は、ピンホールスリットによる光の取り込み領域をビームスポットに一致させてもよいし、あるいは、光の取り込み領域をビームスポットの領域に完全に入れてもよい。本実施形態では、これらの条件設定が開口部切換装置16の動作によって実行される。
【0043】
条件2では、ビームスポットおよび光の取り込み領域との間隔を変更することによって、空間的オフセットを変える。ベース測定ではオフセット状態とし、上記の間隔を大きくする。本測定では、一致状態、つまり上記の間隔を零とするか、オフセット状態であっても間隔を小さくする。なお、ビームスポットを固定して、取り込み領域の位置を移動させてもよい。あるいは、取り込み領域を固定して、図1のビームスポット位置変更装置22の動作によってビームスポットの位置を移動させてもよい。
【0044】
条件3は、ベース測定において励起光の強度を大きくし、本測定においては励起光の強度を小さくする。この条件設定は、図1のレーザー強度設定部25の動作によって実行される。
【0045】
なお、それぞれの条件に共通する事項として、図1の露光時間設定部24を使って、本測定での励起光の露光時間を、適当な高さのラマンピークが得られるように、ベース測定の際の露光時間よりも長くするとよい。
【0046】
<ラマンスペクトルの測定方法>
図3に、空間分解能を変更してラマンスペクトルを測定する場合(例えば、表1の条件1B)の手順を示す。なお、図4~6に、具体的な3つの測定条件で粉末セルロースのサンプルのラマンスペクトルを測定した結果を示す。
【0047】
本実施形態に係る測定方法は、従来の蛍光回避の手法である励起光の波長の最適化を実行した後に、さらに続けて開始するようにしてもよい。励起光の波長切換は、図1のレーザー波長切換装置21を使う。励起光の波長を長波長側に変更してラマンスペクトルを測定しても、蛍光の影響を十分に除去できない場合があるが、本実施形態の測定方法を実行することによって、そのような蛍光の影響を除去・軽減させることができる場合がある。
【0048】
まず、可動ステージ11に載置した試料上の測定位置を指定する(手順S10)。次に、可動ステージ11を動作させて、測定位置にビームスポット位置を合わせることによって、ビームスポットを設定する(手順S12)。次に、幅広の矩形スリット板と幅狭の矩形スリット板を搭載した開口部切換装置16を動作させて、幅広の矩形スリットを光路上に設定する(手順S14)。
【0049】
ベース測定を実行する(手順S16)。ベース測定では、まず、光源26,27からの励起光をビームスポット位置に照射すると、試料からの光のうちの幅広の矩形スリット板の開口部を通過した光のみが分光器17に取り込まれる。分光器17は、帯域ごとのスペクトル値を検出するので、その検出値をスペクトルデータ処理装置30に読み込ませる。なお、ベース測定での露光は短い時間にする。
【0050】
ベース測定の完了後、開口部切換装置16を動作させて、幅狭の矩形スリット板を光路上に設定し(手順S18)、ベース測定と同様に、本測定を実行する(手順S20)。本測定では、露光時間をベース測定よりも長くする。
【0051】
以上の手順によって、スペクトルデータ処理装置30が、ベース測定および本測定のそれぞれの検出値の読み取りを終えた後、スペクトルデータ処理装置30によるデータ処理が実行される。
【0052】
図4中の左上に、ベース測定および本測定のスペクトルデータSP10,SP12を示す。ベース測定では、幅200μmの矩形スリットを使い、露光時間を1秒間にした。本測定では、幅100μmの矩形スリットを使い、露光時間を10秒間にした。
【0053】
図3のデータ処理(手順S22~S40)では、まず、ベースライン係数算出部35の機能によって、ベースライン係数Aが算出される(手順S22)。ここでは、2種類の測定スペクトルのどちらにもラマン散乱光が生じていない波数域を選択し、その波数域に生じている蛍光成分(例えば蛍光成分に該当するスペクトル面積)の強度変化率を算出する。そして、この強度変化率に基づいてベースライン係数Aを算出する。
【0054】
次に、ベースライン係数Aを使って、本測定のスペクトルデータとベース測定のスペクトルデータの差スペクトルを算出する(手順S24)。ここでは、ベース測定のスペクトルデータにベースライン係数Aを掛け合わせて、本測定のスペクトルデータとの差分を取る。以上までの処理が、本実施形態に係るベースライン補正である。
【0055】
ここまでの処理によって、従来の手法では除去が困難であった蛍光の影響(干渉縞など)が除去されるが、蛍光成分が若干残る場合もある。この段階で残存する蛍光成分は、例えば、特許文献1の従来のソフトウェア的なベースラインの平坦化処理によって容易に除去される(手順S30)。
【0056】
図4の測定例では、2つのスペクトルデータSP10,SP12の2500~2000 cm-1の波数域に、いずれにもラマンピークが生じていない。この波数域の蛍光面積A10,A12をそれぞれ算出し、2つの蛍光面積の差分が零になるようなベースライン係数Aを算出した(手順S22)。この係数Aを使った差スペクトルSP14を図4中の右上に示す(手順S24)。この差スペクトルSP14は、差スペクトルの算出後に既存のソフトウェアによるベースライン平坦化処理(手順S30)を施したものである。図4の右上には、比較のために、本測定のスペクトルデータにベースラインの平坦化処理だけを施した比較データRef14を一緒に示す。差スペクトルSP14の方が、ノイズ・干渉縞が少ないことがわかる。
【0057】
図3のデータ処理では、最後に、必要に応じて、既存のソフトウェア的なノイズ除去処理(手順S40)を実行してもよい。例えば、スペクトルデータをフーリエ逆変換し、得られるパワースペクトルにローパスフィルターを施して、スペクトルデータのベースライン上に生じている高周波数成分のスペクトルの変動をノイズとして除去することができる。
【0058】
図4の測定例では、本実施形態の差スペクトルSP14に対して、ベースライン平坦化処理後にノイズ除去処理(手順S40)を実行した。ノイズ除去によってSN比が向上した差スペクトルSP16を図4の下側に示す。また、比較データRef14に対しては、既存のノイズ除去処理と干渉縞除去処理の両方を施した。その結果を比較データRef16として一緒に示す。比較データRef16には既存のデータ処理によっては除去されない干渉縞(ベースラインの波状の変形)が残存しているのに対し、本実施形態の差スペクトルSP16にはそのような干渉縞が大きく軽減されていることがわかる。
【0059】
図5に、幅50μmの矩形スリットを使った本測定のスペクトルデータSP22を示す。ベース測定のデータは図4と同じである。これらのスペクトルデータから算出した差スペクトルSP24およびSP26と、比較データRef24およびRef26とを比べると、やはり、本実施形態による差スペクトルSP24の方が比較データRef24よりもノイズ・干渉縞が少なく、また、ノイズ除去後の差スペクトルSP26の方が比較データRef26よりも干渉縞が大きく軽減されていることがわかる。
【0060】
さらに、図6には、直径100μmのピンホールスリットを使った本測定のスペクトルデータSP32に基づく、差スペクトルSP34およびSP36を比較データRef34およびRef36と一緒に示す。図5と同様に、本実施形態による差スペクトルの方が、ノイズ・干渉縞の点で、比較データRef34およびRef36に勝っていることがわかる。
【0061】
なお、図3の手順では、ベース測定(手順S16)を1回だけ実行する場合を説明したが、異なる測定条件を設定してベース測定を複数回実行し、複数個のスペクトルデータに基づいて、ベースライン係数Aを算出するようにしてもよい(手順S22)。
【0062】
<空間的オフセットによる検証>
本発明の1つ目の特徴は、本発明のラマンスペクトルの測定方法では、同一の試料に対して測定条件の異なる2通りのスペクトル測定(本測定、ベース測定)を実行することである。本測定では、「スペクトルデータにおける蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的大きく」なるような測定条件を設定し、ベース測定では、「上記の割合が比較的小さく」なるように測定条件を設定する。
【0063】
具体例としては、測定条件1は、試料上の光の取り込み領域(測定視野)の面積を変更すること、測定条件2は、試料上の励起光の照射領域(ビームスポット)と取り込み領域との位置関係を変更すること、測定条件3は、励起光の強度の変更である。
【0064】
2つ目の特徴は、2通りの測定条件で得たスペクトルデータの差分を取って、本測定のスペクトルデータに含まれている蛍光成分を相殺することである。ここで、同一試料のスペクトルデータであるから、測定条件を変更しても、蛍光成分だけを相殺することは難しいのではないか(所望するラマンピークも一緒に相殺されるのではないか)、という疑問もあるかもしれない。
【0065】
このことに対し、発明者らは、図7に示すような「空間的オフセットによる検証」をおこなった。ここでは、サンプルとしてPEEK樹脂を用いた。波長532nmの励起光が試料上で約1μmの直径のビームスポットになるように倍率100の対物レンズ12を用いた。また、試料上での空間分解能が1μm相当(取り込み領域)になるようにした。試料上のビームスポットの中心と光の取り込み領域(いずれも同じ直径1μmの円形領域とした)の中心のオフセット量を0μmから5μmまで徐々に増やしてそれぞれのスペクトルを測定したところ、ラマンピークのピーク高さの変化の仕方と、蛍光成分の高さの変化の仕方とに相違があった。オフセットは、図7のように、試料Sと対物レンズ12との位置関係を変えずに、測定光の光軸に対して、励起光(黒塗りの範囲)の光軸を0~5μmだけ移動させる方法によった。
【0066】
オフセット量が3μmや5μmであっても、広い波数範囲におよぶ蛍光成分(ベースラインの広範囲の上昇)を確認することができるが、ラマンピークは3μmのオフセット量であってもほとんど確認できない。オフセット量が1μmまでであればラマンピークを確認することができる。
【0067】
そこで、図8のように、1600 cm-1付近のラマンピークについて、オフセット量毎のピーク面積の変化と、ラマンピークの生じていない帯域(2500~2000 cm-1)の蛍光成分のスペクトル面積の変化とを調べたところ、蛍光成分(蛍光面積)はビームスポットを頂点に緩やかに減少するが、一方、ラマンピーク(ラマン面積)はビームスポットを頂点に急激に減少することを確認した。なお、図8のオフセット量毎の面積を示すグラフは、0μmにおける蛍光面積とラマン面積をそれぞれ100にして、規格化されたものである。
【0068】
そして発明者らは、蛍光の強度分布が、ビームスポットを頂点とする比較的緩やかな山型になるのに対して、ラマン散乱光の強度分布は、ビームスポットを頂点とするガウス分布型になると推定した。ラマン散乱光は、ビームスポットの位置から離れると急激に減少し、少し離れたあとはほとんど零になるからである。
【0069】
なお、ラマン散乱光は、非弾性的な散乱光であり、励起光の強度に比例することから、ラマン光の分布は、励起光(レーザー光)と同様にガウス分布型になるものと言える。これに対して、蛍光は、物質の吸光に伴って発光する光であり、一定以上の励起光で飽和しやすい性質がある。そのため、蛍光の分布は、ガウス分布型にはならず、山型になるものと考えられる。別の言い方をすれば、試料に同じ励起光を当てた場合に、ラマン散乱光が検出される試料の体積が、蛍光が検出される試料の体積よりも小さいのである。
【0070】
発明者らは、試料上でのこのような蛍光とラマン光の分布の違いがあることから、同一試料に対して、条件の異なる2通りのスペクトル測定を実行して、両スペクトルの差分を取ることで、蛍光の影響が相殺され、かつ所望のラマンピークが残された、良好なラマンスペクトルを取得できることを見出したのである。
【0071】
測定条件は何通りか設定できる。共通することは、スペクトルデータにおいて蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的大きくなるような測定条件と、比較的小さくなるような測定条件と、をそれぞれ設定することである。
【0072】
ここで、図8の光の分布に示されるように、ビームスポット付近は、蛍光に対するラマン光の割合が比較的大きく、「ラマン光リッチな領域」と呼べる。そして、ビームスポットから離れたところは、蛍光に対するラマン光の割合がほとんど零に近く、「蛍光リッチな領域」と呼べる。
【0073】
例えば、測定条件1として、本測定では、主に「ラマン光リッチな領域」を含む比較的狭い領域を、光の取り込み領域に設定する。そして、ベース測定では、主に「蛍光リッチな領域」を含む比較的広い領域を、光の取り込み領域に設定する。つまり、光の取り込み領域の面積を変えることによって、空間分解能が異なるようにする。
【0074】
また、例えば、測定条件2として、図7に示したように、本測定では、「ラマン光リッチな領域」を光の取り込み領域に設定し、ベース測定では、「蛍光リッチな領域」を光の取り込み領域に設定する。つまり、ビームスポットと取り込み領域の位置関係を変更する。
【0075】
また、例えば、測定条件3として、励起光の強度を変更する。本測定では、「ラマン光リッチな領域」に光の取り込み領域を設定して、蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的大きいスペクトルデータを得る。そして、ベース測定では、同じ取り込み領域のスペクトルを測定するが、励起光の強度を強くすることで蛍光を飽和させ、蛍光成分に対するラマンピークの割合が比較的小さいスペクトルデータを得る。
【0076】
なお、図7のように複数通りのオフセット量の条件で測定したスペクトルデータは、それぞれの蛍光成分が互いに相似形(スペクトルデータの縦軸方向に対しての相似形である)になっている。また、図9に示すように空間分解能の条件(矩形スリット、ピンホールスリット)を変えて測定したスペクトルデータにおいても、それぞれの蛍光成分が互いに相似形になっている。従って、差スペクトルの算出においては、ベース測定のスペクトルデータに適当なベースライン係数を付与して、本測定のスペクトルデータとの差を取れば、蛍光成分をきれいにキャンセルできる。本発明では、測定条件の変化に伴った蛍光成分の強度変化率をそれぞれの蛍光面積などから算出し、この強度変化率に基づくベースライン係数を算出することにした。
【0077】
このような理由で、本実施形態のスペクトル測定方法によれば、蛍光の影響によるベースラインの上昇および変形が補正されたラマンスペクトルデータを取得することができる。
【符号の説明】
【0078】
11 可動ステージ(照射領域設定手段),12 対物レンズ,13 ビームスプリッタ,14 リジェクションフィルター,15 結像レンズ,16 開口部切換装置(取り込み領域設定手段),16A 矩形スリット板,16B ピンホールスリット板,17 分光器,18 CCD検出器,21 レーザー波長切換装置,22 ビームスポット位置変更装置(照射領域設定手段),23 レーザー制御装置,24 露光時間設定部,25 レーザー強度設定部,26,27 光源,30 スペクトルデータ処理装置,31 ベースライン補正部,32 ベースライン平坦化処理部,33 ノイズ除去部,34 差スペクトル算出部,35 ベースライン係数算出部,40 記憶装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9