(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032424
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】車両の走行支援情報表示装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20230302BHJP
B60W 40/072 20120101ALI20230302BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20230302BHJP
B60W 40/109 20120101ALI20230302BHJP
B60W 40/13 20120101ALI20230302BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W40/072
B60W40/105
B60W40/109
B60W40/13
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138550
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】朱 家立
【テーマコード(参考)】
3D241
3D344
【Fターム(参考)】
3D241BA19
3D241BA57
3D241BA60
3D241BB27
3D241CA13
3D241CD09
3D241CE04
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB46Z
3D241DB48A
3D241DB48Z
3D241DC43Z
3D344AA19
3D344AA20
3D344AA26
3D344AA30
3D344AD01
(57)【要約】
【課題】荷物の積載状態の危険度と進行経路について走行状態に応じた通知や警告を継続的に知らせることにより安全運転を支援する車両の走行支援情報表示装置を提供する。
【解決手段】車速検知部23と、積荷重量検知部21と、横加速度を検知する加速度検知部22と、車両の位置情報を取得し、車両の進行経路の曲率半径を取得する走行経路算出部25と、進行経路に関する走行支援情報を表示する表示部26と、積荷重量及び横加速度から車両重心を算出し、積荷重量と車両重心とに基づいて積載状態の危険度を判定する積載状態判定部31と、曲率半径前記危険度に基づいて進行経路における安全限界速度を算出する安全限界速度算出部32と、車速、位置情報、及び安全限界速度に基づいて、表示優先度が設定された走行支援情報の表示時期を決定し、表示優先度に応じて走行支援情報を表示する提示情報制御部33と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速を検知する車速検知部と、
前記車両の積荷の積荷重量を検知する積荷重量検知部と
前記車両の車幅方向の横加速度を検知する加速度検知部と、
前記車両の位置情報を取得し、前記車両の進行経路の曲率半径を取得する、走行経路算出部と、
前記進行経路に関する走行支援情報を表示する表示部と、
前記積荷重量及び前記横加速度から車両重心を算出し、前記積荷重量と前記車両重心とに基づいて前記積荷の積載状態の危険度を判定する積載状態判定部と、
前記曲率半径及び前記危険度に基づいて前記進行経路における安全限界速度を算出する安全限界速度算出部と、
前記車速、前記位置情報、及び前記安全限界速度に基づいて、表示優先度が設定された複数の前記走行支援情報の表示時期を決定し、前記表示優先度に応じて前記走行支援情報を前記表示部に表示させる提示情報制御部と、
を備える車両の走行支援情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行支援情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用車のように荷物を運ぶ貨物用車両では、荷物の量や積載方法に応じて、荷重や車両重心が変動する。従って、積載状態によっては、カーブ走行時に横転の危険性が高まることがある。
【0003】
そこで、車両横転の危険性を判断し、警告発生手段で運転者に対して警告を発する車両のロールオーバ防止装置が開示されている。当該車両のロールオーバ防止装置は、ロール角度演算部で車両のロール角度を検出し、この検出されたロール角度並びにエンジンの運転状態信号、車両の走行速度及び車両走行中に発生する横加速度を入力して積み荷状態推定部により車両の積み荷状態を演算する。そして、演算された積み荷状態のデータ及び車両の走行経路上の位置信号並びにその走行経路上の特定位置での曲線路の曲率半径のデータを入力して安全通過車速演算部で特定位置の走行時の安全通過速度を演算する。さらに、上記求めた各々のデータを入力して横転危険性判断部により走行時の車両横転の危険性の有無について判断し、車両横転の危険性ありと判断されたときに、警告発生手段で運転者に対して警告を発する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように特許文献1では、カーブや交差点等へ進入する前に車両横転の危険性の有無について判断して運転者に警告することで、横転を回避可能とする。しかし、カーブが連続する場合も含め、警告をどのように表示するかについては開示されていない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、荷物の積載状態に応じてどの程度の車両横転の危険があるかを運転者に認識させるともに、現在、走行に注意を要する状況にあるか、危険な状況が迫っているか等を継続的に知らせることにより、安全運転を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
本適用例に係る車両の走行支援情報表示装置は、車両の車速を検知する車速検知部と、前記車両の積荷の積荷重量を検知する積荷重量検知部と前記車両の車幅方向の横加速度を検知する加速度検知部と、前記車両の位置情報を取得し、前記車両の進行経路の曲率半径を取得する、走行経路算出部と、前記進行経路に関する走行支援情報を表示する表示部と、前記積荷重量及び前記横加速度から車両重心を算出し、前記積荷重量と前記車両重心とに基づいて前記積荷の積載状態の危険度を判定する積載状態判定部と、前記曲率半径及び前記危険度に基づいて前記進行経路における安全限界速度を算出する安全限界速度算出部と、前記車速、前記位置情報、及び前記安全限界速度に基づいて、表示優先度が設定された複数の前記走行支援情報の表示時期を決定し、前記表示優先度に応じて前記走行支援情報を前記表示部に表示させる提示情報制御部と、を備える。
【0009】
このように構成された車両の走行支援情報表示装置は、車両の積載状態と、現在の位置情報及び車速とに基づいて、表示優先度の高い走行支援情報を表示する。これにより、荷物の積載状態に応じてどの程度の危険があるかを運転者に認識させるともに、現在、走行に注意を要する状況にあるか、危険な状況が迫っているか等を継続的に知らせて、安全運転を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置を適用した車両の(a)左側面視の概略図、(b)背面視の概略図、である。
【
図2】(a)表示部の画面のレイアウト例、(b)表示部の走行支援情報の表示例、をそれぞれ示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置の制御システムのブロック図である。
【
図4】カーブの曲率半径と車両の積載状態からカーブにおける安全限界速度を算出するための参照テーブルの例である。
【
図6】車両の積載状態と危険度を示す走行支援情報の表示例である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置が実行する危険度判定ルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置が実行する表示時期算出ルーチンを示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置が実行する表示制御ルーチンの前半を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置が実行する表示制御ルーチンの後半を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、前後とは車両の進行方向、上下とは車両の車高方向、左右とは車両の車幅方向を示しているものとして、以下説明する。
【0012】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置を適用した車両を左側方から見た概略図である。
図1(b)は、
図1(a)の車両を後方から見た概略図である。
【0013】
図1(a)に示すように、車両1は、車両本体2の車両後部に箱型の荷室3を架装した貨物用車両である。車両本体2の前部には図示しないエンジンを搭載し、その上に運転席を含むキャブ4が配置されている。車両本体2は、前後に延びる左右一対のサイドレールに左右方向に延びる複数のクロスメンバが連結されたラダーフレーム(以下、単にフレーム5という)を有している。また、車両本体2では、前後左右にそれぞれタイヤ6が懸架されている。
【0014】
車両1には、車両の走行支援情報表示装置10(以下、単に走行支援情報表示装置10という)として、積荷重量センサ21、加速度センサ22、車速センサ23、GPS24に接続された走行経路算出部25、表示部26、及び制御部30が搭載される。
【0015】
積荷重量センサ21は、フレーム5とタイヤ6とを弾性体で結合する左右のサスペンション(不図示)にそれぞれ設けられている。積荷重量センサ21は、例えばベローズ圧力センサであり、荷室3に積載される積荷の左右の積荷重量LL、LRをそれぞれ検出し、出力する機能を有する。
【0016】
加速度センサ22は、車両1の左右方向に生じる横加速度GLを検出し出力する機能を有する。
【0017】
車速センサ23は、車両1の車速Vaを検出し出力する。車速センサ23としては、従動輪の回転速度を検出するものやエンジンのクランクシャフトの回転速度を検出するものを適用することができる。
【0018】
走行経路算出部25は、道路情報として少なくとも所定のポイント間の距離やカーブの曲率半径Rc及びカーブの長さ等を含む地図情報を備え、キャブ4の屋根等に設けられたGPSアンテナを介してGPS24から車両1の現在地を示す位置情報Psや付随する道路情報等を取得する。なお、道路情報はインターネット等を経由して取得しても良い。
【0019】
ここで、
図2(a)は、表示部26のモニタ画面内の走行支援情報表示領域26aのレイアウト例、
図2(b)は、走行支援情報表示領域26aに表示された走行支援情報の例、をそれぞれ示す図である。
【0020】
表示部26は、例えば運転席のインストルメントパネルに設けられる。表示部26は、液晶パネル等のモニタ画面及びスピーカーを備え、走行経路算出部25が生成する地図案内情報や、後述する走行支援情報を画像として表示し、必要に応じて音声を出力する機能を有する。
図2(a)に示すように、モニタ画面内の走行支援情報表示領域26aにおける表示レイアウトは、定常表示領域26bと、定常表示領域26bに重ねて手前にポップアップ表示する追加表示領域26cを有する。これにより、
図2(b)に示すように、走行支援情報を最大2つ同時に表示できると共に、表示優先度の高い情報を手前に表示することでより注意を喚起することができる。
【0021】
このように構成された車両1の各部は、車両1に搭載された制御部30に接続されている。制御部30は、電子演算装置から構成される制御ユニットで、例えばECU(Electronic Control Unit)であり、走行支援情報表示装置10の各コンポーネントや各種センサとCAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークや直接配線を介して通信可能である。本実施形態では、制御部30は、主に予めインストールされた所定のプログラムに従って動作し積荷状態の危険度や車両1の位置情報Ps及び車速Vaに応じて走行支援情報の表示を制御する機能を有する。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置の制御システムのブロック図である。本図を参照して、走行支援情報表示装置10の構成と機能を以下に説明する。
【0023】
走行支援情報表示装置10は、積荷重量センサ21、加速度センサ22、車速センサ23、GPS24が接続された走行経路算出部25、及び表示部26と、これらと通信可能に接続された制御部30を備える。また、制御部30は、相互に通信可能に接続された、積載状態判定部31、安全限界速度算出部32、及び、提示情報制御部33を備える。
【0024】
制御部30は、積荷重量センサ21、加速度センサ22、車速センサ23、及び、走行経路算出部25から情報を取得する機能を有している。具体的には制御部30は、積荷重量センサ21からは左右それぞれの積荷重量LL、LRを、加速度センサ22からは横加速度GLを、車速センサ23からは車速Vaを、走行経路算出部25からは進行経路の道路情報及び位置情報Psを取得する。さらに、制御部30は、走行支援情報の表示要求が発生している場合は、後述する提示情報制御部33の表示制御機能により選択された走行支援情報を、その表示優先度に応じて表示部26に走行支援情報を送信して表示させる機能を有する。
【0025】
積載状態判定部31は、積荷重量LL、LR及び横加速度GLから車両重心CoGを算出し、走行中の横転に関する危険度を判定する機能を有する。具体的には、積載状態判定部31は、まず、左右の積荷重量LL、LR及び空荷状態における既知の車両1の重量に基づいて、総車両重量Lcを算出する。次に、積載状態判定部31は、左右の積荷重量LL、LR及び横加速度GLに基づいて車両1の車両重心CoGの位置を算出する。
【0026】
そして、積載状態判定部31は、算出した車両重心CoGについて、車両重心CoGが車両1の左右中央から左右いずれかに寄っている「片側重心」、車両重心CoGが車両上下方向の上方にある「高位重心」、それ以外の場合を「通常重心」、のいずれかに分類する。このうち、片側重心と高位重心は、車両横転に関して危険度の高い異常重心、通常重心は危険度が比較的低い正常重心であると分類される(重心分類判定)。
【0027】
さらに、積載状態判定部31は、総車両重量Lc及び車両重心CoGに基づいて、車両横転に対する危険度を「危険度0」から「危険度3」の4段階のいずれかに分類する判定を行う(危険度判定)。具体的には、車両重心CoGが片側重心又は高位重心である場合、即ち重心分類判定の結果が異常重心の場合には、総車両重量Lcに関わらず、現在の車両1は車両横転に対して最も危険性が高い危険度3と判定する。一方、車両重心CoGが通常重心である場合、即ち重心分類判定で正常重心と分類された場合は、総車両重量Lcの大きさに応じて危険度0から2のいずれかと判定する。本実施形態では、正常重心の場合、車両1の定格最大総車両重量をLmaxとしたときに、算出した総車両重量LcがLmaxの10%未満である時は危険度0と、10%以上50%未満である時は危険度1と、50%以上である時は危険度2と、判定される。
【0028】
また、積載状態判定部31は、4段階分類の上記危険度とは別に、積荷重量LL、LRと車両重心CoGに基づいて、積載状態を車両横転リスクとの関係でさらに細かい分類で判定する機能を有する。具体的には、積載状態判定部31は、「均等高重量積載」、「均等準高重量積載」、「均等準低重量積載」、「前方寄高重量積載」、「後部寄準高重量積載」、「高位高重量積載」、「右寄高重量積載」、「無積載」等に分類する判定を行う(積載状態判定)。積載状態判定の結果は、後述するカーブにおける安全限界速度Vsを算出する際に用いられる。なお、積載状態判定は危険度判定で代用してもよい。
【0029】
また、積載状態判定部31は、車両1のキーオン後、走行開始直後に危険度判定及び積載状態判定を実行し、判定結果に応じた後述する支援情報D1の表示要求を発生する。判定に要する時間は数秒程度である。また、積載状態判定部31は、走行中や停車中のアイドリング状態であっても、積荷重量LL、LR又は車両重心CoGに変化があった場合には、走行再開直後に再度、危険度判定及び積載状態判定を実行し、判定結果に応じた支援情報D1の表示要求を発生する。支援情報D1の表示要求は、発生時点で提示情報制御部33の表示制御ルーチンに割り込むことができる。
【0030】
ここで、
図4は、カーブの曲率半径Rcと車両の積載状態からカーブ安全限界速度を算出するための参照テーブルの例である。
【0031】
安全限界速度算出部32は、進行経路のカーブの曲率半径Rc、積荷重量L
L、L
R、及び車両重心CoGに基づいて進行経路の各カーブにおける安全限界速度Vsを算出する。具体的には、安全限界速度算出部32は、まず、走行経路算出部25から、位置情報Psに基づく予定されている進行経路の進行方向について、1番目からn番目(nは自然数)までのカーブC(n)について、それぞれ曲率半径Rc(n)を取得する。以下、「(n)」付きの符号はカーブC(n)に関するものであるとして説明する。そして、安全限界速度算出部32は、曲率半径Rc(n)と、積載状態判定部31で判定した現在の車両1の積載状態とをキーとして、安全限界速度算出部32が保有する
図4に示す参照テーブルを参照し、カーブC(n)ごとに安全限界速度Vs(n)を算出する。参照テーブルは、各積載状態に対して、カーブの曲率半径Rcと安全限界速度Vsの関係を1対1の関係で保持している。さらに参照テーブルは、積載状態の危険度が大きいほど、また、カーブの曲率半径Rcが小さいほど、安全限界速度Vsが小さく傾向に設定されている。例えば、
図4ではV61の方がV14よりも安全限界速度が小さい。このようにして、安全限界速度Vs(n)を算出することにより、積載状態の危険度が大きいほど、また、カーブの曲率半径Rcが小さいほど(いわゆる急カーブ)、安全限界速度Vsが小さく算出されるため、後述する警告表示の時期をより早めることができる。
【0032】
提示情報制御部33は、車速Va、位置情報Ps、及び安全限界速度Vsに基づいて、走行支援情報の内容と表示時期を決定し、走行支援情報を表示部26に表示させる機能を有する。
【0033】
図5は、走行支援情報の表示例とその説明である。
図6は、車両の積載状態と危険度を示す走行支援情報の表示例である。
【0034】
まず、
図5及び
図6を参照しながら、提示情報制御部33が、表示部26に表示する走行支援情報について説明する。走行支援情報は、
図5に示すように、支援情報D1、支援情報D2、支援情報D3、支援情報D4の4つに分類されている。支援情報D1は、危険度判定及び積載状態判定の直後に一定時間、例えば数十秒間の表示が要求される通知情報で、表示優先度1である。支援情報D2は、車両1がカーブを走行中であることを示す通知情報で、表示優先度2である。支援情報D3は、車両1がカーブに接近中であることを示す通知情報で、表示優先度3である。支援情報D4は、車両1の減速が必要であることを警告として示す警告情報で、表示優先度4である。なお、表示優先度は1が最も低く4が最も高い。
【0035】
図6に示すように、支援情報D1は、危険度判定の結果に応じて、危険度0から危険度3のいずれかと、「高位高重量積載」等の積載状態の情報を含んでいる。本実施形態では、
図6に示すように、危険度に関する情報について、3つの星印に対して白と黒等、色を変えることで危険度0から危険度3を直観的に把握できるように表示される。また、車両1の積載状態判定の結果についても模式図で積荷の位置や量を直観的に把握できるように表示される。
【0036】
図5に示すように、支援情報D2は、車両1がカーブを走行中であることを示す模式図と共に、「カーブ走行中」のバナー形式の文字と、「カーブ残り300m」といった現在走行中のカーブに関する内容の文字が表示される。支援情報D3は、車両1がカーブに接近していることを示す模式図と共に、「カーブ接近中」のバナー形式の文字と、「カーブまで150m」や「カーブ曲率半径250m」といった接近しているカーブに関する内容の文字が表示される。支援情報D4は、車両1が走行中又は接近中のカーブにおいて、横転の危険性があることを示す模式図と共に、「減速してください!」のバナー形式の文字と、「カーブ長さ300m」や「カーブ曲率半径250m」といった走行中又は接近中のカーブに関する内容の文字が表示される。支援情報D2は現在走行中のカーブについてのみ生成さる。なお、上述した支援情報D1、D2、D3、D4の表示内容は一例であり、より詳細な車両の積載状態、カーブに関するその他の情報、安全限界速度に関する情報等を表示内容に含んでいてもかまわない。
【0037】
提示情報制御部33は、車両1の位置情報Psと車速Vaに応じて走行支援情報のうち支援情報D2、支援情報D3、及び支援情報D4の表示要求を発生する。提示情報制御部33は、同時にこれら複数の走行支援情報の表示要求を発生することができる。
【0038】
次に、支援情報D2、支援情報D3、支援情報D4の表示時期としての、表示要求の発生タイミングについて説明する。
【0039】
提示情報制御部33は、まず、道路情報及び位置情報Psに基づいて、車両1から進行経路前方の各カーブ入口までの距離Xc(以下、単にカーブ相対距離Xcという)を算出する。そして、車両1が次の(1番目の)カーブC(1)の表示開始距離Xsに到達するまでの間は原則、表示部26には何も表示されない(
図5のD0に該当)。但し、支援情報1の表示要求が割り込み発生している場合、又は、表示開始距離Xsより前に後述する警告表示距離Xa(n)に到達する場合にはそれに応じた走行支援表示がされる場合がある。そして、提示情報制御部33は、次の(1番目の)カーブC(1)の表示開始距離XsからカーブC(1)の入口までの間を車両1が走行している間は、カーブC(1)が接近したことを示す支援情報D3の表示要求を発生する。表示開始距離Xsは、次の(1番目の)カーブC(1)の入口から所定の長さ手前までの距離であり、例えば、カーブ入口から300m手前に設定される。また、提示情報制御部33は、カーブC(1)の入口から出口までの間を車両1が走行している間は、現在カーブC(1)を走行中であることを示す支援情報D2の表示要求を発生する。
【0040】
次に、提示情報制御部33が支援情報D4の表示要求を発生させるタイミング(表示時期)としての警告表示距離Xa(n)の算出について説明する。車両1がカーブC(n)に向かって減速度aで走行する場合に、現在の車速Vaから安全限界速度Vs(n)まで減速するのに必要な距離Xdは、下記に示す式1により算出される。
Xd(n)=(Vs(n)2-Va2)*k/(2*a) ・・・(式1)
【0041】
式1のaは車両1の減速度を表し、本実施形態では例えば、gを重力加速度とすると0.1gから0.2gの間で予め設定され記憶されている。また、式1のkは係数であり、本実施形態においては1としている。提示情報制御部33は、式1で算出された距離Xd(n)を、警告表示距離Xa(n)として設定する。即ち、式2の関係となる。
Xa(n)=Xd(n)・・・(式2)
式1及び式2から、安全限界速度Vs(n)と現在の車速Vaとの差が大きいほど警告表示距離Xa(n)が大きくなり、より早期に支援情報D4の表示を開始できることがわかる。そして、提示情報制御部33は、カーブ相対距離Xc(n)が後述する警告表示距離Xa(n)より短い場合、カーブC(n)に関する支援情報D4の表示要求を発生する。この条件が複数のカーブについて当てはまる場合は、車両1により近いカーブについての支援情報D4が優先される。
【0042】
次に、提示情報制御部33が実行する走行支援情報の表示制御について説明する。提示情報制御部33は、表示要求が発生した走行支援情報の表示優先度に基づいて、走行支援表示を表示部26に表示する。同時に複数の走行支援情報の表示要求が発生した場合には、提示情報制御部33は、表示優先度の高いものを表示部26に表示するよう制御する。本実施形態では、表示部26は定常表示領域26bと追加表示領域26cを有するため、その時点で表示優先度の高い2つの走行支援情報が選択されて、そのうち表示優先度の高いほうが手前の追加表示領域26cに、低い方は定常表示領域26bに表示される。また、走行支援情報の発生要求が更新されれば、表示優先度に応じて表示が入れ替わったり、非表示になったりする。
【0043】
図7は、本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置が実行する危険度判定ルーチンを示すフローチャートである。
図8は、本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置が実行する表示時期算出ルーチンを示すフローチャートである。
図9は、本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置が実行する表示制御ルーチンの前半を示すフローチャートである。
図10は、本発明の一実施形態に係る車両の走行支援情報表示装置が実行する表示制御ルーチンの後半を示すフローチャートである。以下これらのフローチャートに沿って説明する。説明の簡略化のため、ここでは、nは最大2、すなわち現在地から見て次のカーブC(1)とその次のカーブC(2)について提示情報制御部33が表示制御を実行する場合について説明する。
【0044】
まず、
図7に示す危険度判定ルーチンについて説明する。当該ルーチンは車両1のキーオン時、又は、走行中に荷崩れ等による積荷重量L
L、L
Rの変化を検出した時に実行される。
【0045】
まず、ステップS101として、制御部30は、左右の積荷重量センサ21からそれぞれ積荷重量LL、LRを取得して、積載状態判定部31において、積荷重量LL、LRと既知の車両本体重量の合計である総車両重量Lcを算出し、ステップS102に進む。
【0046】
続くステップS102として、制御部30は、加速度センサ22から、横加速度GLを取得し、積載状態判定部31において車両重心CoGを算出してステップS103に進む。
【0047】
続くステップS103として、制御部30は、積載状態判定部31において、総車両重量Lcと横加速度GLとから積載状態の危険度を判定(危険度判定)して、ステップS104に進む。
【0048】
続くステップS104として、制御部30は、積載状態判定部31において、積荷重量LL、LRと車両重心CoGとから積載状態の分類を判定(積載状態判定)して、ステップS105に進む。
【0049】
続くステップS105として、制御部30は、ステップS103の危険度判定とステップS104の積載状態判定のそれぞれの判定結果に対応する支援情報D1の表示要求を発生して当該ルーチンを終了する。
【0050】
次に、
図8に示す表示時期算出ルーチンについて説明する。当該ルーチンは車両1の進行経路上の移動に伴い例えばカーブから所定の距離に到達した時やカーブの出口に到達した時等、所定のポイントごとに実行される。また、走行経路算出部25において、進行経路に変更が生じた場合にも実行される。
【0051】
まず、ステップS201として、制御部30は、走行経路算出部25から車両1の現在地に対して進行経路上のn番目までのカーブC(n)について各カーブの情報(カーブ相対距離Xc(n)、カーブの継続長さ、カーブの曲率半径Rc(n)等)を取得して、ステップS202に進む。具体的には、1番目のカーブC(1)と2番目のカーブC(2)についてカーブ情報を取得する。
【0052】
続くステップS202として、制御部30は、安全限界速度算出部32において、進行経路上のカーブC(n)の曲率半径Rc(n)及び積載状態判定の結果に基づいて、カーブC(n)における安全限界速度Vs(n)を算出してステップS203に進む。具体的には、1番目のカーブC(1)の安全限界速度Vs(1)及び2番目のカーブC(2)の安全限界速度Vs(2)が算出される。
【0053】
続くステップS203として、制御部30は、提示情報制御部33において、安全限界速度Vs(n)、及び現在の車速Vaに基づいて、警告表示距離Xa(n)を算出して当該ルーチンを終了する。具体的には、1番目のカーブC(1)の警告表示距離Xa(1)及び2番目のカーブC(2)の警告表示距離Xa(2)が算出されて当該ルーチンが終了する。
【0054】
次に、
図9及び
図10に示す表示制御ルーチンについて説明する。まず、
図9を用いて、車両1が最初(1番目)のカーブC(1)の入口に到達するまでのフローを説明する。
【0055】
ステップS301では、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブ相対距離Xc(1)が警告表示距離Xa(1)以下か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合、即ちカーブ相対距離Xc(1)が警告表示距離Xa(1)以下と判定された場合はステップS302に進む。一方、当該判定結果が偽(No)の場合、即ちカーブ相対距離Xc(1)が警告表示距離Xa(1)より大きいと判定された場合は、ステップS303に進む。
【0056】
ステップS302では、即ち、ステップS301の判定結果が真(Yes)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(1)の支援情報D4の表示要求を発生して、ステップS306に進む。つまり、制御部30は、車両1がこのままの速度で最初のカーブC(1)に進入すると、横転の可能性があることから警告表示である支援情報D4の表示要求を行う。
【0057】
ステップS303では、即ち、ステップS301判定結果が偽(No)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(1)の支援情報D4の表示要求が発生していた場合はその表示要求を解除してステップS304に進む。
【0058】
一方、ステップS304では、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブ相対距離Xc(1)が表示開始距離Xs以下か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合、即ちカーブ相対距離Xc(1)が表示開始距離Xs以下と判定された場合はステップS305に進む。一方、当該判定結果が偽(No)の場合、即ちカーブ相対距離Xc(1)が表示開始距離Xsより大きいと判定された場合は、ステップS306に進む。
【0059】
ステップS305では、即ち、ステップS304の判定結果が真(Yes)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(1)の支援情報D3の表示要求が発生していない場合は表示要求を発生して、ステップS306に進む。
【0060】
続くステップS306では、制御部30は、表示要求が発生した走行支援情報の表示優先度に応じて、表示部26に走行支援情報を表示して、ステップS307に進む。
【0061】
続くステップS307では、制御部30は、走行経路算出部25から取得した車両1の位置情報Psに基づいて車両1がカーブC(1)の入口に到達したこと(カーブ相対距離Xc(1)=0)を検出して、ステップS308に進む。
【0062】
ステップS308では、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(1)の支援情報D3の表示要求が発生している場合はその表示要求を解除して、ステップS309に進む。
【0063】
ステップS309では、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(1)の支援情報D2の表示要求を発生して、
図10のステップS310に進む。
【0064】
次に、
図10を用いて、車両1が最初(1番目)のカーブC(1)の入口に到達してからのフローを説明する。
【0065】
ステップS310では、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブ相対距離Xc(2)が表示開始距離Xs以下か否かを判定する。当該判定結果が偽(No)の場合、即ちカーブ相対距離Xc(2)が表示開始距離Xsより大きいと判定された場合は、ステップS311に進む。一方、当該判定結果が真(Yes)の場合、即ちカーブ相対距離Xc(2)が表示開始距離Xs以下と判定された場合はステップS312に進む。
【0066】
ステップS311では、即ち、ステップS310の判定結果が偽(No)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(2)の支援情報D3の表示要求が発生している場合には解除して、ステップS313に進む。
【0067】
一方、ステップS312では、即ち、ステップS310の判定結果が真(Yes)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(2)の支援情報D3の表示要求が発生していない場合はその表示要求を発生して、ステップS313に進む。
【0068】
ステップS313では、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブ相対距離Xc(2)が警告表示距離Xa(2)以下か否かを判定する。当該判定結果が偽(No)の場合、即ちカーブ相対距離Xc(2)が警告表示距離Xa(2)より大きいと判定された場合は、ステップS314に進む。一方、当該判定結果が真(Yes)の場合、即ちカーブ相対距離Xc(2)が警告表示距離Xa(2)以下と判定された場合はステップS315に進む。
【0069】
ステップS314では、即ち、ステップS313の判定結果が偽(No)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(2)の支援情報D4の表示要求が発生していた場合はその表示要求を解除して、ステップS316に進む。
【0070】
一方、ステップS315では、即ち、ステップS313の判定結果が真(Yes)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(2)の支援情報D4の表示要求が発生していない場合はその表示要求を発生して、ステップS316に進む。
【0071】
ステップS316では、制御部30は、提示情報制御部33において、現在の車速Vaから安全限界速度Vs(1)を引いた差分が0より大きいか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)の場合、即ち現在の車速Vaが安全限界速度Vs(1)以下と判定された場合は、ステップS317に進む。一方、当該判定結果が真(Yes)の場合、即ち現在の車速Vaが安全限界速度Vs(1)より大きいと判定された場合はステップS318に進む。
【0072】
ステップS317では、即ち、ステップS316の判定結果が偽(No)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(1)の支援情報D4の表示要求が発生していた場合はその表示要求を解除して、ステップS319に進む。
【0073】
一方、ステップS318では、即ち、ステップS316の判定結果が真(Yes)の場合、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(1)の支援情報D4の表示要求が発生していない場合はその表示要求を発生して、ステップS319に進む。
【0074】
続くステップS319では、制御部30は、表示要求が発生した走行支援情報の表示優先度に応じて、表示部26に走行支援情報を表示して、ステップS320に進む。
【0075】
ステップS320では、制御部30は、走行経路算出部25から取得した車両1の位置情報Psに基づいて車両1がカーブC(1)の出口に到達したか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合、即ち車両1がカーブC(1)の出口に到達したと判定された場合はステップS321に進む。一方、当該判定結果が偽(No)の場合、即ち車両1がカーブC(1)の出口に到達していないと判定された場合は、ステップS310に戻り、現在走行中のカーブC(1)及びその次のカーブC(2)について走行支援情報の表示制御を継続する。
【0076】
ステップS321では、制御部30は、提示情報制御部33において、カーブC(1)の支援情報D2の表示要求が発生している場合は解除して当該ルーチンを終了する。
【0077】
以上のように、本実施形態に係る走行支援情報表示装置10によれば、車両1の積載状態の危険度、位置情報Ps、及び車速Vaに基づいて、表示優先度の高い走行支援情報が表示される。これにより、荷物の積載状態に応じてどの程度の危険があるかを運転者に認識させるともに、現在、走行に注意を要する状況にあるか、危険な状況が迫っているか等を継続的に知らせて、安全運転を支援することができる。
【0078】
以上で本発明に係る車両1の走行支援情報表示装置10の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0079】
また、上記実施形態においては、表示部26のモニタ画面内の走行支援情報表示領域26aは、定常表示領域26b及び追加表示領域26cを有していたが、定常表示領域26bのみとし、車両1の走行状態に対し複数の走行支援情報が該当する場合には、最も表示優先度の高い走行支援情報のみを表示してもよい。これにより、モニタ画像の表示領域が小さい場合でも対応でき、プログラムが簡易化され処理速度が向上するため、表示のタイミング遅れを減少できる。
【0080】
また、上記実施形態においては、式1の係数kを1としていたが、例えば、車両1が下り傾斜を走行中の場合、或いは、雨天時の場合に制御部30が係数kを1以上に調整して、警告表示距離Xaを大きくし、より早いタイミングで支援情報D4の警告を表示するようにしても良い。これにより、外部環境を考慮した安全支援を行うことができる。
【0081】
また、上記実施形態においては、表示開始距離Xsを固定の数値としていたが、例えば、上記係数kと同様に、車両1が下り傾斜を走行中の場合、或いは、雨天時の場合には、制御部30がXsの値をより大きく調整してより早いタイミングで支援情報D3の通知を表示するようにしても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 :車両
2 :車両本体
3 :荷室
4 :キャブ
5 :フレーム
6 :タイヤ
10 :走行支援情報表示装置
21 :積荷重量センサ
22 :加速度センサ
23 :車速センサ
24 :GPS
25 :走行経路算出部
26 :表示部
26a :走行支援情報を表示する領域
26b :定常表示領域
26c :追加表示領域
30 :制御部
31 :積載状態判定部
32 :安全限界速度算出部
33 :提示情報制御部